説明

画像処理装置、印刷装置、画像処理方法および画像処理プログラム

【課題】カラー発色領域と特殊光沢領域とが隣接する印刷画像において、滲みを抑制する。
【解決手段】画像データに、カラーインクのインク色によって表現されるカラー発色領域と特殊光沢インクのインク色を用いて表現される特殊光沢領域とが画像平面方向に隣接する隣接領域が存在するか否かを判定する領域判定部と、隣接領域が存在する場合において、印刷装置が印刷画像データに基づいて印刷を行った際に、印刷装置が特殊光沢領域に付与する特殊光沢インクのインク量を、特殊光沢領域からカラー発色領域の方向に向かって漸減するように、入力した画像データを調整する特殊光沢境界処理部と、調整後の画像データに基づいて印刷画像データを生成して印刷装置に出力する出力部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、詳しくは、カラーインクと特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に、印刷用の印刷画像データを出力する画像処理装置及びこれに関連した印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金属光沢を有するメタリックインクや、ホワイトインク、パールホワイトインクなど、通常のカラー印刷には関与しない特殊光沢を有するインク(以下、特殊光沢インクとも呼ぶ)を用いて印刷を行う技術が知られている(例えば、特許文献1)。これらの印刷技術は、カラーインクのみを用いて画像を形成する領域(以下、カラー発色領域とも呼ぶ)と、特殊光沢インクを用いて画像を形成する領域(以下、特殊光沢領域とも呼ぶ)とを1つの印刷媒体上に印刷することが可能であるが、カラー発色領域と特殊光沢領域とを隣接して印刷媒体上に形成する場合、各色のインクを印刷媒体に付与して得られた印刷画像において、メタリックインクとカラーインクとの表面張力の違いや、極性の違いなどが原因で、特殊光沢領域を形成する特殊光沢インクがカラー発色領域に流れ出し、滲み(以下、ブリーディングとも言う)が発生すると言った問題が指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−166152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、カラー発色領域と特殊光沢領域とが隣接する印刷画像において、ブリーディングを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
カラーインクと、特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に、印刷用の印刷画像データを出力する画像処理装置であって、印刷対象画像の画像データを入力する入力部と、前入力した画像データに基づいて、前記画像データに、前記カラーインクのインク色によって表現されるカラー発色領域と前記特殊光沢インクのインク色を用いて表現される特殊光沢領域とが画像平面方向に隣接する隣接領域が存在するか否かを判定する領域判定部と、前記隣接領域が存在する場合において、前記印刷装置が前記印刷画像データに基づいて印刷を行った際に、前記印刷装置が前記特殊光沢領域に付与する前記特殊光沢インクのインク量を、前記特殊光沢領域から前記カラー発色領域の方向に向かって漸減するように、前記入力した画像データを調整する特殊光沢境界処理部と、前記調整後の画像データに基づいて前記印刷画像データを生成して前記印刷装置に出力する出力部とを備える画像処理装置。
【0006】
この画像処理装置は、印刷装置で印刷を行うことによって、印刷後の印刷画像において、特殊光沢領域とカラー発色領域の境界で特殊光沢インクがカラー発色領域に流れ出すことによる滲み(ブリーディング)を抑制することができる印刷画像データを出力することができる。
【0007】
[適用例2]
適用例1記載の画像処理装置であって、前記特殊光沢境界処理部は、前記入力した画像データの調整によっては、前記印刷用画像データに基づいて前記印刷装置が付与する前記カラーインクのインク量を変更しない画像処理装置。
この画像処理装置によると、調整によってカラーインクのインク量は変更しないため、画像の劣化を抑制することができる。
【0008】
[適用例3]
適用例1または適用例2記載の画像処理装置であって、前記特殊光沢境界処理部は、漸減する前記特殊光沢インクの減少の割合を所定の範囲内で設定可能する画像処理装置。
【0009】
この画像処理装置によると、印刷対象画像の特性やユーザーの好みなどに応じて、漸減する特殊光沢インクの減少の割合を設定変更することができる。
【0010】
[適用例4]
適用例3記載の画像処理装置であって、さらに、前記隣接領域を有する所定の画像データを対象に、複数種類の前記減少の割合と、前記複数種類の各減少の割合で前記調整後の各画像データに基づく各隣接領域の画像とを対応付けたカラーパッチを、前記印刷装置に印刷させるカラーパッチ出力部を備える画像処理装置。
【0011】
この画像処理装置によると、ユーザーが実際に印刷装置で印刷したカラーパッチを肉眼で確認しながら複数の減少の割合から選択することを可能にする。
【0012】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか記載の画像処理装置であって、前記特殊光沢インクは、金属光沢を有するメタリックインクである画像処理装置。
この画像処理装置によると、メタリックインクを用いた印刷に対応している。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、印刷処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムのほか、画像処理モジュール、プリンタードライバー、ラスターイメージプロセッサー(以下、RIPとも呼ぶ)等の態様で実現することができる。具体例を以下に示す。
【0014】
[適用例6]
カラーインクと、特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置であって、印刷対象画像の画像データを入力する入力部と、前入力した画像データに基づいて、前記画像データの少なくとも一部に、前記カラーインクのインク色によって表現されるカラー発色領域と前記特殊光沢インクのインク色を用いて表現される特殊光沢領域とが画像平面方向に隣接する隣接領域が存在するか否かを判定する領域判定部と、前記隣接領域が存在する場合において、前記特殊光沢領域に付与する前記特殊光沢インクのインク量を、前記特殊光沢領域から前記カラー発色領域の方向に向かって漸減するように、前記入力した画像データを調整する特殊光沢境界処理部と、前記調整後の画像データに基づいて印刷を実行する印刷部とを備える印刷装置。
【0015】
[適用例7]
カラーインクと、特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に、印刷用の印刷画像データを出力する画像処理方法であって、印刷対象画像の画像データを入力する入力し、前入力した画像データに基づいて、前記画像データの少なくとも一部に、前記カラーインクのインク色によって表現されるカラー発色領域と前記特殊光沢インクのインク色を用いて表現される特殊光沢領域とが画像平面方向に隣接する隣接領域が存在するか否かを判定し、前記隣接領域が存在する場合において、前記印刷装置が前記印刷画像データに基づいて印刷を行った際に、前記印刷装置が前記特殊光沢領域に付与する前記特殊光沢インクのインク量を、前記特殊光沢領域から前記カラー発色領域の方向に向かって漸減するように、前記入力した画像データを調整し、前記調整後の画像データに基づいて前記印刷画像データを生成して前記印刷装置に出力する画像処理方法。
【0016】
[適用例8]
カラーインクと、特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に、印刷用の印刷画像データを出力するための画像処理プログラムであって、印刷対象画像の画像データを入力する機能と、前入力した画像データに基づいて、前記画像データの少なくとも一部に、前記カラーインクのインク色によって表現されるカラー発色領域と前記特殊光沢インクのインク色を用いて表現される特殊光沢領域とが画像平面方向に隣接する隣接領域が存在するか否かを判定する機能と、前記隣接領域が存在する場合において、前記印刷装置が前記印刷画像データに基づいて印刷を行った際に、前記印刷装置が前記特殊光沢領域に付与する前記特殊光沢インクのインク量を、前記特殊光沢領域から前記カラー発色領域の方向に向かって漸減するように、前記入力した画像データを調整する機能と、前記調整後の画像データに基づいて前記印刷画像データを生成して前記印刷装置に出力する機能とをコンピューターに実現させる画像処理プログラム。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】印刷システム10の概略構成について説明した説明図である。
【図2】プリンター200の概略構成図である。
【図3】画像データORGについて説明する説明図である。
【図4】印刷処理の流れについて説明したフローチャートである。
【図5】C-LUTおよびMt-LUTについて説明する説明図である。
【図6】メタリック境界領域MBFについて説明する説明図である。
【図7】印刷画像の断面を模式的に示す説明図である。
【図8】領域判定処理の流れについて説明したフローチャートである。
【図9】領域判定処理の様子を示す説明図である。
【図10】境界処理について説明する説明図である。
【図11】境界処理法設定画面の一例を示す説明図である。
【図12】メタリック境界領域処理用のカラーパッチを示す説明図である。
【図13】透明印刷媒体におけるメタリック境界領域処理について説明した説明図である。
【図14】変形例3を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
(A1)システム構成:
図1は、本発明の第1実施例としての印刷システム10の概略構成について説明した説明図である。印刷システム10は、印刷制御装置としてのコンピューター100と、コンピューター100の制御の下で実際に画像を印刷するプリンター200とで構成されている。印刷システム10は、全体が一体となって広義の印刷装置として機能する。
【0019】
コンピューター100は、CPU20と、ROM60と、RAM62と、ハードディスク(HDD)66とを備える。また、コンピューター100は、ディスプレイ70、キーボード80、マウス82と、各ケーブルにより接続されている。コンピューター100には、所定のオペレーティングシステムがインストールされており、このオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム30、ビデオドライバー40、プリンタードライバー50が動作している。これらのプログラムの機能は、ROM60、又はRAM62、HDD66に記憶されており、CPU20が、各プログラムをこれらの記憶領域から読み出して実行することにより実現される。
【0020】
アプリケーションプログラム30は、ユーザーが画像を生成するためのプログラムである。アプリケーションプログラム30によって生成された画像(以下、印刷対象画像とも呼ぶ)の画像データを画像データORGとも呼ぶ。画像データORGは基本色の組み合わせで表現される領域(以下、カラー発色領域とも呼ぶ)と、金属光沢を用いて表現される領域(以下、メタリック領域とも呼ぶ)とを有している。ユーザーは、アプリケーションプログラム30上で、生成する画像の任意の領域をメタリック領域として指定することができる。
【0021】
ユーザーがアプリケーションプログラム30によって印刷対象画像を生成した際には、画像データORGの各画素のデータ(以下、画素データとも呼ぶ)における色成分値は、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の表色系で記録されている。さらに、画像データORGの各画素データには、当該画素がカラー発色領域に属する画素であるか、メタリック領域に属する画素であるかを示すチャネル(以下、αチャネルとも呼ぶ)が所定のビット数設けられている。
【0022】
プリンタードライバー50は、色変換モジュール51、領域判定モジュール52、境界処理モジュール53、ハーフトーンモジュール54、インターレースモジュール55、カラーパッチ出力モジュール56を備える。これらのモジュールは、CPU20がプリンタードライバー50のプログラムを起動した際に、HDD66からRAM62に読み込むことによって実行される。各モジュールの詳細については、後で詳しく説明する。
【0023】
RAM62は、カラー発色領域用ルックアップテーブル63(以下、C-LUT63とも呼ぶ)と、メタリック領域用ルックアップテーブル64(以下、Mt-LUT64とも呼ぶ)とを備える。これらのルックアップテーブルについても、後で詳しく説明する。
【0024】
図2は、プリンター200の構成図である。図2に示すように、プリンター200は、紙送りモーター235によって印刷媒体Pを搬送する機構と、キャリッジモーター230によってキャリッジ240をプラテン236の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ240に搭載された印刷ヘッド260を駆動してインクの吐出及びドット形成を行う機構と、これらの紙送りモーター235、キャリッジモーター230、印刷ヘッド260及び操作パネル225との信号のやり取りを司る制御回路220とから構成されている。
【0025】
キャリッジ240をプラテン236の軸方向に往復動させる機構は、プラテン236の軸と並行に架設され、キャリッジ240を摺動可能に保持する摺動軸233と、キャリッジモーター230との間に無端の駆動ベルト231を張設するプーリー232等から構成されている。
【0026】
キャリッジ240には、C(シアン)・M(マゼンダ)・Y(イエロー)・K(ブラック)・Lc(ライトシアン)・Lm(ライトマゼンダ)の各カラーインクに加え、金属光沢を有するメタリックインク(以下、Mtとも呼ぶ)からなる、合計7色のインクがそれぞれ収容されたインクカートリッジ241〜247が搭載されている。キャリッジ240の下部の印刷ヘッド260には、上述の各色のインクに対応する7種類のノズル列261〜267が形成されている。各ノズルにはピエゾ素子が備えられており、制御回路220がピエゾ素子の収縮運動を制御することによって、プリンター200は各インク色に対してドットを形成することが可能である。
【0027】
キャリッジ240にインクカートリッジ241〜247を上方から装着すると、各カートリッジから各ノズル列261〜267へのインクの供給が可能となる。本実施例では、インクカートリッジ241〜247は、図2に示すように、キャリッジ240の主走査方向にC,M,Y,K,Lc,Lm,Mtの順に配列されている。
【0028】
プリンター200は、印刷媒体Pとして、非透明の印刷媒体、及び透明の印刷媒体を選択して用いることが可能である。非透明印刷媒体としては例えば白色の普通紙や、所定の色をしたカラーの印刷媒体を用いることができる。透明の印刷媒体としては、例えば、透明または半透明のフィルムを用いることができる。
【0029】
カラーインク(C,M,Y,K,Lc,Lm)に加え、メタリックインク(Mt)を併用して印刷(以下、Mt印刷とも呼ぶ)を行う場合であって、非透明の印刷媒体を用いて印刷を行う場合には、図2の下方の左側に示すように、カラーインクを吐出する各ノズル列261〜266の副走査方向の後半部分と、メタリックインクを吐出するノズル列267の副走査方向の前半部分とを用いて印刷を行う。このように各ノズル列を用いて、印刷媒体Pに対して、先にメタリックインク(Mt)のドットを形成し、その上にカラーインクのドットを形成することによって、種々の色合いの金属光沢を印刷画像で表現することが可能である。
【0030】
一方、Mt印刷を行う場合であって、透明の印刷媒体を用いて印刷を行う場合には、図2の下方の右側に示すように、カラーインクを吐出する各ノズル列261〜266の副走査方向の前半部分と、メタリックインクを吐出するノズル列267の副走査方向の後半部分とを用いて印刷を行う。このように各ノズル列を用いて、印刷媒体Pに対して、先にカラーインクのドットを形成し、その上にメタリックインク(Mt)のドットを形成することによって、印刷媒体におけるインクドットを形成した面とは反対の面を印刷画像の観察面とした場合に、種々の色合いの金属光沢を印刷画像で表現することが可能である。
【0031】
プリンター200の制御回路220は、CPUや、ROM、RAM、PIF(周辺機器インターフェース)等がバスで相互に接続されて構成されており、キャリッジモーター230及び紙送りモーター235の動作を制御することによってキャリッジ240の主走査動作及び副走査動作の制御を行う。また、PIFを介してコンピューター100から出力された印刷データを受け取ると、制御回路220が、キャリッジ240の主走査あるいは副走査の動きに合わせて、印刷データに応じた駆動信号を印刷ヘッド260に供給し、各色のヘッドを駆動することが可能となっている。コンピューター100が出力する印刷データは、色に関するデータとして、7色(C,M,Y,K,Lc,Lm,Mt)のインク色に関するデータを含んでおり、プリンター200は、この7色のインク色に関するデータを含む印刷データを受け取る。
【0032】
以上のようなハードウェア構成を有するプリンター200は、キャリッジモーター230を駆動することによって、印刷ヘッド260(各色のノズル列261〜267)を印刷媒体Pに対して主走査方向に往復動させ、また紙送りモーター235を駆動することによって、印刷媒体Pを副走査方向に移動させる。制御回路220は、キャリッジ240が往復動する動き(主走査)や、印刷媒体の紙送りの動き(副走査)に合わせて、印刷データに基づいて適切なタイミングでノズルを駆動することにより、印刷媒体P上の適切な位置に適切な色のインクドットを形成する。こうすることによって、プリンター200は印刷媒体P上に画像を印刷することが可能となっている。なお、上述の構成では、各色のインクは、プリンター200に搭載される脱着可能なカートリッジに収容されているが、プリンター200とは分離して構成されたインク収容タンクなどに収容し、当該収容タンクとプリンター200とをインク供給用のチューブ等で接続するものとしてもよい。あるいは、脱着不可能にプリンター200と一体的に構成された収容容器に収容されていてもよい。
【0033】
(A2)印刷処理:
次に、印刷システム10においてCPU102が行う印刷処理について説明する。先に、印刷処理の対象である画像データORGについて説明する。図3は、印刷対象画像に対応する画像データORGについて説明する説明図である。画像データORGは、上述したように、画像生成アプリケーションプログラムによって生成された画像データである。印刷対象画像(画像データORG)の領域内には、基本色の組み合わせで表現可能な領域であるカラー発色領域CFと、基本色の組み合わせに加え金属光沢を用いて表現されている領域であるメタリック領域MFとが含まれる。画像データORGにおいて、カラー発色領域CFに属する画素の各画素データは、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色成分値(0〜255)で記録されている。さらに、当該画素データのαチャネルには、当該画素がカラー発色領域CFに属する画素であることを示す値が記録されている。以下、カラー発色領域CFに属する画素データのαチャネルに示されているデータをα=CFとも表記する。
【0034】
メタリック領域MFに属する画素の各画素データも、R、G、Bの各色成分値(0〜255)で記録されている。さらに、当該画素データのαチャネルには、当該画素がメタリック領域MFに属する画素であることを示す値が記録されている。以下、メタリック領域MFに属する画素データのαチャネルに示されているデータをα=MFとも表記する。以上説明した画像データORGを対象として、CPU102は画像処理を行う。
【0035】
図4は、CPU102が行う印刷処理の流れについて説明したフローチャートである。印刷処理は、ユーザーがアプリケーションプログラム30上で、印刷を指示することによって開始される。印刷処理が開始されると、CPU102は、アプリケーションプログラム30として、画像データORGをプリンタードライバー50に転送する(ステップS102)。その後、CPU102は、色変換モジュール51の機能として、画像データORGの各画素データに記録されているR、G、Bの各色成分値を、プリンター200が備えるインク色C、M、Y、K、Lc、Lm、Mtのインク量の組み合わせであるインク量セットに変換する色変換処理を行う(ステップS104)。
【0036】
ここで、色変換処理について説明する。色変換処理は、CPU102が、C-LUT63とMt-LUT64とを用いて行う。CPU102は、色変換を行う画素データのαチャネルを読み込み、α=CFの場合、すなわち当該画素がカラー発色領域CFに属する画素である場合には、C-LUT63を用いて画素データの1組の色成分値(R,G,B)を1組のインク量セット(C,M,Y,K,Lc,Lm)に変換する。すなわち、C-LUT63は、1組の色成分値(R,G,B)で定まる格子点に、1組のインク量セット(C,M,Y,K,Lc,Lm)が格納されている3次元ルックアップテーブルである。
【0037】
一方、色変換を行う画素データのαチャネルを読み込み、α=MFの場合、すなわち当該画素がメタリック領域MFに属する画素である場合には、CPU102は、Mt-LUT64を用いて画素データの1組の色成分値(R,G,B)を、1組のインク量セット(C,M,Y,K,Mt)に変換する。すなわち、Mt-LUT64は、1組の色成分値(R,G,B)で定まる格子点に、1組のインク量セット(C,M,Y,K,Mt)が格納されている3次元ルックアップテーブルである。以下、各LUTの特性について説明する。
【0038】
図5(A)は、C-LUT63の特性について、C、M、Y、K、Lc、Lmのインクのうち、シアン(C)およびライトシアン(Lc)のインク量を具体例にして説明する説明図である。図5(A)に示すように、C-LUT63は、RGBの色成分値に対して、濃色系インク(図5(A)ではシアン(C))と淡色系インク(図5(A)ではライトシアン(Lc))とを併用してインク量セットを定める。このため、画像データORGのカラー発色領域CFに属する画素データ(RGB、α=CF)が入力された場合、C-LUT63との照合により、濃色系インク(CMYK)に淡色系インク(LcLm)を加えたインク量セットに変換される。
【0039】
図5(B)は、Mt−LUT64の特性について説明する説明図である。図5(C)は、Mt−LUT64の概念図である。Mt−LUT64は、図5(B),図5(C)に示すように、RGBの階調値に対して、カラーインクについては濃色系インク(CMYK)についてのみインク量セットを定めると共に、メタリックインクのインク量については、RGBの階調値にかかわらず、一律に値(例えば、90)を定めている。このため、画像データORGのメタリック領域MFに属する画素データ(RGB、α=MF)が入力された場合、Mt−LUT64との照合により、濃色系インク(CMYK)のインク量に変換されると共に、メタリックインク(Mt)については、同一のインク量に変換される。
【0040】
また、C-LUT63とMt−LUT64とは、RGB形式における色成分値が同じであった場合、各LUTによって変換後のカラーインクのインク量の合計量は、Mt−LUT64の方が少なくなるように定められている。これは、メタリック領域はカラー発色領域と比較して、少ないカラーインクのインク量でカラー発色を達成できると言う知見によるものである。また、印刷媒体の単位面積当たりに吐出可能な最大インク量に制限があるため、カラーインクおよびメタリックインクが吐出されるコンテンツ画像の領域は、メタリックインクのインク量を考慮してカラーインクのインク量を定める必要があるからである。
【0041】
上記説明したC-LUT63とMt-LUT64とを用いて、CPU102は、画像データORGを、各画素データにインク量セットが記録されたインク量データに色変換する。また色変換を行った際、各画素データにおける色成分値はインク量セットに変換されるが、αチャネルのデータは消去されずに記録された状態を維持する。なお以後の説明において、説明の便宜上、色変換処理前の画像データORGを「画像データORG(0)」と表記し、色変換処理後のインク量データとして画像データORGを「画像データORG(1)」と表記することがある。
【0042】
以上、図4に示した色変換処理後(ステップS104)を完了すると、次に、CPU102は、画像データORG(1)に対して領域判定処理(ステップS120)、およびメタリック境界処理(ステップS150)を行う。領域判定処理およびメタリック境界処理については後で詳しく説明する。その後、CPU102は、ハーフトーンモジュール54の機能として、メタリック境界処理後のインク量データ(画像データORG(1))をドットの分布によって表すハーフトーン処理を行い、ドットデータを生成する(ステップS160)。本実施例においては、ディザマトリックスを用いたディザ法を採用してハーフトーン処理を行う。また、誤差拡散法など他のハーフトーン処理の方法を採用してもよい。ディザ法および誤差拡散法は、周知の技術であるので説明は省略する。
【0043】
ハーフトーン処理後、CPU102は、インターレースモジュール55の機能として、生成されたドットデータのドットの並びを、プリンター200に転送すべき順序に並べ替えて、印刷データとしてプリンター200に出力すると共に、印刷開始コマンドや印刷終了コマンドなどの種々のコマンドをプリンター200に出力し(ステップS170)、プリンター200において印刷を実行させる(ステップS180)。以上、印刷処理の流れについて説明した。
【0044】
(A3)領域判定処理・メタリック境界処理:
領域判定処理およびメタリック境界処理について説明をするにあたり、先に、メタリック境界領域MBFについて説明する。図6は、メタリック境界領域MBFについて説明する説明図である。メタリック境界領域MBFは、メタリック領域MFとカラー発色領域CFとが隣接する境界(以下、メタリック境界MLとも呼ぶ)近傍のメタリック領域MF側の領域を言う。画像データORGにおいて、領域P1では、メタリック領域MFとカラー発色領域CFとが隣接している。そして隣接している2つの領域の境界近傍のメタリック領域MF側の所定の幅の領域がメタリック境界領域MBFである。
【0045】
メタリック境界MLでは、印刷後の印刷画像において、印刷媒体P1の平面方向にメタリックインクとカラーインクとが隣接することとなる。このような領域においてブリーディングを抑制するために、印刷システム10におけるCPU102は、メタリック境界処理を行う。以下、メタリック境界処理について説明する。
【0046】
図7は、図6の領域P1に記載した矢印A方向から見た印刷画像の断面を模式的に示す説明図である。図7は、印刷媒体として非透明印刷媒体(例えば、白色の普通紙)を用いて印刷を行う場合について示している。上述したように(図2下方左参照)、印刷媒体が非透明印刷媒体である場合、プリンター200は、メタリック領域MFを形成するために、最初に印刷媒体にメタリックインクを付与し、その後カラーインクを付与する。このとき、CPU102は、メタリック境界処理として、画像データORG(1)を調整することにより、メタリック領域MFに付与するメタリックインクのインク量をカラー発色領域CFに近づくにつれて少なくしている。
【0047】
図7に示したように、メタリック領域MFにおいて、印刷媒体に付与するメタリックインクのインク量を減少させていく幅を処理幅と呼ぶ。本実施例では処理幅は0.5〜5mmの範囲で変更可能である。メタリック領域MFにおけるこの処理幅によって囲まれる領域がメタリック境界領域MBFである。そして、画像データORG(1)を構成する全ての画素を対象に、所定の処理幅でメタリックインクのインク量を減少させる領域(メタリック境界領域MBF)を判定する処理が領域判定処理である。以下、領域判定処理について説明する。
【0048】
説明の便宜上、処理幅を2画素、即ち、メタリック境界領域MBFとしてメタリック境界MLから2画素離れた画素から段階的にメタリックインクのインク量を減少させるメタリック境界処理を具体例として説明する。CPU102は、色変換処理がされインク量データとして記録されている画像データORG(1)に対して、領域判定用の画像処理フィルター(以下、領域判定フィルターFL)を用いて領域判定処理を行う。図8は、CPU102が、領域判定モジュールの機能として行う領域判定処理の流れについて示したフローチャートである。また、図9は、CPU102が、画像データORG(1)に対して領域判定フィルターFLによる処理を行う様子を示す説明図である。図8、図9を用いて領域判定処理の流れについて説明する。
【0049】
図9に示した領域判定フィルターFLは、5画素×5画素の画像処理フィルターである。領域判定フィルターFLの中心に位置する画素を注目画素Dnとも呼ぶ。注目画素Dnの1画素外側に位置する画素を周辺画素R1とも呼ぶ。注目画素Dnの2画素外側に位置する画素を周辺画素R2とも呼ぶ。このような領域判定フィルターFLを、図10に示すように、画像データORG(1)の左上の隅部の画素位置(初期画素位置)から順に、左から右へ、上から下へ順に移動させながら領域判定処理を行う。
【0050】
領域判定処理を開始すると(図8参照)、CPU102は、所定位置として、画像データORG(1)における初期画素位置に領域判定フィルターFLを設定する(ステップS122)。そして、CPU102は、注目画素Dn、周辺画素R1および周辺画素R2に位置する画像データORG(1)の画素データのαチャネルの情報を読み込んで取得する(ステップS124)。その後、CPU102は、取得したαチャネル情報のうち、注目画素Dnのαチャネル情報がα=MFであるか否かを判断する(ステップS126)。すなわち、注目画素がメタリック領域MFに属する画素であるか否かを判断する。注目画素Dnにおいてα=MFではない場合(ステップS126:No)、CPU102は、処理をステップS138に進める。
【0051】
一方、注目画素Dnにおいてα=MFである場合(ステップS126:Yes)、次に、領域判定フィルターFLの8個の周辺画素R1(図9参照)のうちのいずれか1つの画素においてα=CFであるか否かを判断する(ステップS128)。すなわち、周辺画素R1にカラー発色領域CFに属する画素が存在するか否かを判断する。周辺画素R1のいずれにもα=CFの画素が無い場合(ステップS128:No)、注目画素Dnの画素データにフラグ「2」(flag=2)を設定する(ステップS130)。すなわち、フラグ「2」が設定された注目画素は、メタリック領域MFに属する画素のうち、メタリック境界MLから2画素以上内側に位置する画素であることを示す。
【0052】
周辺画素R1のうちのいずれか1つの画素においてα=CFであった場合(ステップS128:Yes)、次にCPU102は、領域判定フィルターFLの16個の周辺画素R2(図9参照)のうちのいずれか1つの画素においてα=CFであるか否かを判断する(ステップS170)。すなわち、周辺画素R2にカラー発色領域CFに属する画素が存在するか否かを判断する。周辺画素R2のいずれにもα=CFの画素が無い場合(ステップS132:No)、注目画素Dnの画素データにフラグ「1」(flag=1)を設定する(ステップS134)。すなわち、フラグ「1」が設定された注目画素は、メタリック領域MFに属する画素のうち、メタリック境界MLからメタリック領域MF側に2画素目に位置する画素であることを示す。
【0053】
周辺画素R2のうちのいずれか1つの画素においてα=CFであった場合(ステップS132:Yes)、CPU102は、注目画素Dnの画素データにフラグ「0」(flag=0)を設定する(ステップS136)。すなわち、フラグ「0」が設定された注目画素は、メタリック領域MFに属する画素のうち、メタリック境界MLを形成する画素、すなわち、カラー発色領域CFと接して画素であることを示す。上記処理を画像データORG(1)の全画素について行い(ステップS138)、CPU102は、領域判定処理を終了する。
【0054】
このようにして領域判定処理を行った後、CPU102は、境界処理モジュール53の機能として、フラグが設定された画像データORG(1)に対してメタリック境界処理を行う。メタリック境界処理は、領域判定処理によってフラグが設定されている画素のメタリックインクのインク量の値を減少させる処理である。図10は、CPU102が行うメタリック境界処理について説明する説明図である。CPU102は、画像データORG(1)の各画素データをスキャンして、領域判定処理によって設定したフラグを検出し、フラグ「2」(flag=2)が設定されている画素に対しては、インク量セットにおけるメタリックインクのインク量を90のまま維持し、フラグ「1」(flag=1)が設定されている画素に対しては、インク量セットにおけるメタリックインクのインク量を90から60に減少させ、フラグ「0」(flag=0)が設定されている画素に対しては、インク量セットにおけるメタリックインクのインク量を90から30に減少させる。
【0055】
このようにメタリック境界処理をすることで、画像データORG(1)におけるメタリック境界領域MBFにおいて、メタリック境界MLに近づくにつれ、段階的にメタリックインクのインク量を減少させることができる。本実施例では、図10に示すようにメタリック境界領域MBFにおいてメタリック境界MLに1画素近づく毎にメタリックインクのインク量を30減らす例について説明したが、メタリックインクの減少率をさらに急にしたり緩やかにすることは、各フラグに対応付けるメタリックインクのインク量を変えて設定することにより可能である。また、処理幅を長くする場合には、領域判定フィルターFLを、例えば9画素×9画素、や15画素×15画素等にして領域判定処理を行い、その後、予め設定されている各フラグ毎のメタリックインクのインク量に応じて段階的にメタリックインクのインク量を減少させてメタリック境界処理を行うことにより、実現することができる。
【0056】
以上説明したように、印刷システム10におけるCPU102はメタリック境界処理を行うので、印刷後の印刷画像のメタリック境界MLにおいて、メタリック領域MFに付与されたメタリックインクがカラー発色領域CFに流れ出すことに起因するインクの滲み(ブリーディング)を抑制することができる。本実施例におけるメタリック境界処理においてCPU102は、メタリック境界領域MBFにおいてメタリックインクのインク量は減少させるが、カラーインクのインク量は減少させないため、画質の劣化を抑制することができる。
【0057】
メタリック境界領域MBFにおいてメタリックインクのインク量を減少させる際、メタリック境界MLに近づくにつれて滑らかにメタリックインクのインク量を減少させるので、メタリックインクの減少を開始した境界を印刷画像上で目立ちにくくすることができる。
【0058】
本発明の実施形態の一例について説明したが、さらに、メタリック境界処理の処理幅をユーザーが選択できるものとしてもよい。具体的には、印刷処理(図4)において、アプリケーションプログラム30からプリンタードライバー50に画像データORG転送後(図4:ステップS102)、プリンタードライバー50の機能として、ユーザーが処理幅を選択するための画面である境界処理法設定画面をディスプレイ70に表示する。
【0059】
ディスプレイ70に表示される境界処理法設定画面の一例を図11に示す。境界処理法設定画面71は、印刷対象画像をユーザーに示す印刷対象画像表示部72と、ユーザーが印刷に用いる印刷媒体(非透明印刷媒体または透明印刷媒体)を選択する印刷媒体選択部73と、ユーザーがメタリック境界領域MBFの処理方法について選択するメタリック境界処理法選択部74、および印刷実行ボタンPBを有する。これは、メタリック境界処理の処理幅を、4つの選択肢からユーザーが選択をして印刷を行うためのものである。ユーザーは4つの選択肢に割り振られた処理番号のひとつを選び、メタリック境界処理法選択部74にチェックを入れることにより、CPU102は、処理番号を取得し、ユーザーが印刷実行ボタンPBを操作することにより、取得した処理番号に対応した処理幅で領域判定処理およびメタリック境界処理を行う。
【0060】
また、メタリック境界処理後に印刷をして得た印刷画像は、処理幅と、メタリック境界MLにおけるメタリックインクの減少量(以下、メタリックインクの減少量とも呼ぶ)とでメタリック境界領域MBFにおける金属光沢感およびブリーディングの抑制の程度に違いが現れる。本実施例における印刷システム10は、さらに、メタリック境界MLを有するサンプル画像データを対象にして、メタリックインクの減少量を一定とし、4つの処理幅において印刷を行った場合のメタリック境界領域MBFにおける印刷画像の画質を、印刷見本(カラーパッチ)として実際に印刷をして再現しユーザーに示す態様をとることができる。
【0061】
ユーザーは予めカラーパッチを印刷システム10によって印刷し、カラーパッチを参照することにより、これら4つの処理幅から好みの処理幅を選択する。本実施例では、処理幅のみ変更させてカラーパッチとしてユーザーに示したが、メタリックインクの減少量のみを変更してカラーパッチとしてユーザーに示してもよいし、処理幅とメタリックインクの減少量で定まるメタリックインクの減少率を変更して、カラーパッチとしてユーザーに示すとしてもよい。
【0062】
図12は、メタリック境界処理用のサンプル画像データを用いたカラーパッチを示す説明図である。印刷システム10におけるCPU102は、カラーパッチ出力モジュール56(図1参照)の機能として、このカラーパッチに対応する画像データをプリンター200に出力し、プリンター200に印刷させることが可能である。カラーパッチには、4つの処理幅におけるメタリック境界領域MBFが実際に印刷されている。図12においては、付与されるメタリックインクのインク量が多いほど、カラーパッチ上で黒く表現している。このような態様を採用することで、印刷システム10は、ユーザーが実際に印刷されたカラーパッチを見ながら、メタリック境界領域MBFの境界処理方法を処理番号として選択することを可能にする。このような態様は、各処理番号と、適用する領域判定フィルターFLおよび領域判定処理で設定する各フラグに対応付けるメタリックインクのインク量を、1組にしてテーブルデータ(図示省略)として予めRAM62に格納しておき、必要に応じて、CPU102が参照して領域判定処理およびメタリック境界処理を行うことにより実現可能である。なお、特許請求の範囲との対応関係としては、境界処理モジュール53が特許請求の範囲に記載の特殊光沢境界処理部に対応する。
【0063】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
(B1)変形例1:
上記実施例では、印刷媒体が非透明媒体である場合について説明したが、印刷媒体として、透明印刷媒体を用いるとしてもよい。透明印刷媒体としては、透明または半透明のフィルムが挙げられる。図13は、印刷媒体として透明印刷媒体(例えば、透明フィルム)を用いて印刷を行う場合に、印刷システム10におけるCPU102が行うメタリック境界処理について説明した説明図である。印刷媒体が透明印刷媒体である場合、プリンター200は、メタリック領域MFを形成するために、最初に印刷媒体にカラーインクを付与し、その後メタリックインクを付与する。このようにすることで、観察面(インク付与側と反対側の面)においてメタリック感が再現される。このとき、印刷媒体Pが非透明印刷媒体である場合(図7)と同様に、CPU102は、メタリック境界処理として、画像データORG(1)を調整することにより、メタリック領域MFに付与するメタリックインクのインク量をカラー発色領域CFに近づくにつれて少なくする。このようにすることで、メタリック境界MLにおいてメタリックインクがカラー発色領域CFに流れ出にくくなり、ブリーディングが抑制される。なお、フィルム等への印刷を行う場合、予めフィルムにインク定着液等で表面処理を施してから、印刷を行うものとしてもよい。
(B2)変形例2:
上記実施例では、領域判定処理を色変換後のインク量データに対して行ったが、他の処理段階において行ってもよい。例えば、アプリケーションプログラム30からプリンタードライバー50に転送後の画像データORG、すなわち、各画素データの色成分値がRGBの表色系で記録されている画像データORGに対して、領域判定を行い、各画素データにフラグを設定してもよい。そして、その後に色変換処理を行いメタリック境界処理を行う。このようにしても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、上記実施例では、画像データORGにおけるメタリック領域MFに属する画素は、αチャネルによって規定されているが、画像データORGの各画素データにメタリックインクのインク量が直接記録されているとしてもよい。この場合、メタリック境界処理も、色変換処理の前段で行うことが可能である。色変換前の各画素データにメタリックインクのインク量が記録されているため、その段階で、領域判定処理を行い、設定されたフラグに従って、各画素データに記録されているメタリックインクのインク量に対してメタリック境界処理を行うことができる。
【0065】
(B3)変形例3:
上記実施例では、メタリック境界処理として、メタリック境界領域MBFにおいてメタリックインクのインク量をメタリック境界MLに近づくにつれて滑らかに減少させたが、それに限ることなく、種々の対応で、メタリックインクのインク量を減少させることができる。例えば、図14に示すように、段階的にメタリックインクのインク量を減少させるとしてもよい。また、メタリックインクのインク量を2段階以上、多段階に減少させてもよい。このようにしても、メタリックインクがカラー発色領域CFに流れ込むことによる滲み(ブリーディング)を抑制することができる。
【0066】
(B4)変形例4:
上記実施例では、特殊光沢インクとして金属光沢を有するメタリックインクを採用したが、ホワイトやパールホワイトや艶を表現するクリアインクなどの特殊光沢インクを採用するとしてもよい。このような特殊光沢インクを採用することにより、印刷画像において種々の質感を表現することができる。
【0067】
上記実施例では、メタリック境界処理としてメタリックインクのインク量のみ減少させるとしたが、同じ処理を、カラーインク(C,M,Y,K,Lc,Lm)にも適用してメタリック境界処理を行うとしてもよい。この場合、各インク色のインク量を割合で減少させる演算を行うことによってインク量を減少させることができる。例えば、メタリック境界領域MBFにおいて、メタリック境界MLに近づくにつれて、各インク色のインク量の減少割合を大きくすることにより、段階的にインク量を減少させることができる。このようにしても、ブリーディングを抑制することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、上述の実施形態で示したシリアル方式のインクジェットプリンターに限らず、インクジェット式のラインプリンタや、特殊光沢色のトナーを備えるレーザープリンターにも適用できる。また、本発明は、印刷システムとしての構成のほか、画像処理装置、印刷装置、印刷方法、プログラム、記憶媒体等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0069】
10…印刷システム
20…CPU
30…アプリケーションプログラム
40…ビデオドライバー
50…プリンタードライバー
51…色変換モジュール
52…領域判定モジュール
53…境界処理モジュール
54…ハーフトーンモジュール
55…インターレースモジュール
62…RAM
63…カラー発色領域用ルックアップテーブル
64…メタリック領域用ルックアップテーブル
70…ディスプレイ
71…境界処理法設定画面
72…印刷対象画像表示部
73…印刷媒体選択部
74…メタリック境界処理法選択部
80…キーボード
82…マウス
100…コンピューター
102…CPU
200…プリンター
220…制御回路
225…操作パネル
230…キャリッジモーター
231…駆動ベルト
232…プーリー
233…摺動軸
235…モーター
236…プラテン
240…キャリッジ
241…インクカートリッジ
260…印刷ヘッド
261〜267…ノズル列
P…印刷媒体
PB…印刷実行ボタン
CF…カラー発色領域
MF…メタリック領域
ML…メタリック境界
FL…領域判定フィルター
Dn…注目画素
MBF…メタリック境界領域
ORG…画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーインクと、特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に、印刷用の印刷画像データを出力する画像処理装置であって、
印刷対象画像の画像データを入力する入力部と、
前記入力した画像データに基づいて、前記画像データに、前記カラーインクのインク色によって表現されるカラー発色領域と前記特殊光沢インクのインク色を用いて表現される特殊光沢領域とが画像平面方向に隣接する隣接領域が存在するか否かを判定する領域判定部と、
前記隣接領域が存在する場合において、前記印刷装置が前記印刷画像データに基づいて印刷を行った際に、前記印刷装置が前記特殊光沢領域に付与する前記特殊光沢インクのインク量を、前記特殊光沢領域から前記カラー発色領域の方向に向かって漸減するように、前記入力した画像データを調整する特殊光沢境界処理部と、
前記調整後の画像データに基づいて前記印刷画像データを生成して前記印刷装置に出力する出力部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記特殊光沢境界処理部は、前記入力した画像データの調整によっては、前記印刷用画像データに基づいて前記印刷装置が付与する前記カラーインクのインク量を変更しない
画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の画像処理装置であって、
前記特殊光沢境界処理部は、漸減する前記特殊光沢インクの減少の割合を所定の範囲内で設定する
画像処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像処理装置であって、さらに、
前記隣接領域を有する所定の画像データを対象に、複数種類の前記減少の割合と、前記複数種類の各減少の割合で前記調整後の各画像データに基づく各隣接領域の画像とを対応付けたカラーパッチを、前記印刷装置に印刷させるカラーパッチ出力部を備える
画像処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか記載の画像処理装置であって、
前記特殊光沢インクは、金属光沢を有するメタリックインクである
画像処理装置。
【請求項6】
カラーインクと、特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置であって、
印刷対象画像を表す画像データを入力する入力部と、
前入力した画像データに基づいて、前記画像データの少なくとも一部に、前記カラーインクのインク色によって表現されるカラー発色領域と前記特殊光沢インクのインク色を用いて表現される特殊光沢領域とが画像平面方向に隣接する隣接領域が存在するか否かを判定する領域判定部と、
前記隣接領域が存在する場合において、前記特殊光沢領域に付与する前記特殊光沢インクのインク量を、前記特殊光沢領域から前記カラー発色領域の方向に向かって漸減するように、前記入力した画像データを調整する特殊光沢境界処理部と、
前記調整後の画像データに基づいて印刷を実行する印刷部と
を備える印刷装置。
【請求項7】
カラーインクと、特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に、印刷用の印刷画像データを出力する画像処理方法であって、
印刷対象画像を表す画像データを入力する入力し、
前入力した画像データに基づいて、前記画像データの少なくとも一部に、前記カラーインクのインク色によって表現されるカラー発色領域と前記特殊光沢インクのインク色を用いて表現される特殊光沢領域とが画像平面方向に隣接する隣接領域が存在するか否かを判定し、
前記隣接領域が存在する場合において、前記印刷装置が前記印刷画像データに基づいて印刷を行った際に、前記印刷装置が前記特殊光沢領域に付与する前記特殊光沢インクのインク量を、前記特殊光沢領域から前記カラー発色領域の方向に向かって漸減するように、前記入力した画像データを調整し、
前記調整後の画像データに基づいて前記印刷画像データを生成して前記印刷装置に出力する
画像処理方法。
【請求項8】
カラーインクと、特殊光沢を有する特殊光沢インクとを用いて印刷を行う印刷装置に、印刷用の印刷画像データを出力するための画像処理プログラムであって、
印刷対象画像を表す画像データを入力する機能と、
前入力した画像データに基づいて、前記画像データの少なくとも一部に、前記カラーインクのインク色によって表現されるカラー発色領域と前記特殊光沢インクのインク色を用いて表現される特殊光沢領域とが画像平面方向に隣接する隣接領域が存在するか否かを判定する機能と、
前記隣接領域が存在する場合において、前記印刷装置が前記印刷画像データに基づいて印刷を行った際に、前記印刷装置が前記特殊光沢領域に付与する前記特殊光沢インクのインク量を、前記特殊光沢領域から前記カラー発色領域の方向に向かって漸減するように、前記入力した画像データを調整する機能と、
前記調整後の画像データに基づいて前記印刷画像データを生成して前記印刷装置に出力する機能とを
コンピューターに実現させる画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−223931(P2012−223931A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91655(P2011−91655)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】