説明

画像処理装置、画像処理方法、および、画像処理プログラム

【課題】画像の質感を十分に向上させる。
【解決手段】画像処理装置は、画像を取得する画像取得部1と、画像取得部1によって取得された画像中の被写体表面の粗さ情報を取得する粗さ情報取得部2と、画像取得部1によって取得された画像中の被写体表面の凹凸情報を取得する凹凸情報取得部3と、画像取得部1によって取得された画像中の被写体表面の鏡面反射情報を取得する鏡面反射情報取得部4と、粗さ情報取得部2によって取得された粗さ情報、凹凸情報取得部3によって取得された凹凸情報、および、鏡面反射情報取得部4によって取得された鏡面反射情報に基づいて、画像取得部1によって取得された画像の画質を調整する画質調整部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の質感を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像のエッジ情報の分布に基づく値であるエッジ特徴量に応じた大きさのノイズを、画像に付加することによって、画像の質感を向上させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−331163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、画像のエッジ特徴量のみに基づいて、画像の質感を向上させる処理を行うため、画像の質感を十分に向上させることができなかった。
【0005】
本発明は、画像の質感を十分に向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る画像処理装置は、画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得された画像中の被写体表面の粗さ情報を取得する粗さ情報取得部と、前記画像取得部によって取得された画像中の被写体表面の凹凸情報を取得する凹凸情報取得部と、前記画像取得部によって取得された画像中の被写体表面の鏡面反射情報を取得する鏡面反射情報取得部と、前記粗さ情報取得部によって取得された粗さ情報、前記凹凸情報取得部によって取得された凹凸情報、および、前記鏡面反射情報取得部によって取得された鏡面反射情報に基づいて、前記画像取得部によって取得された画像の画質を調整する画質調整部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様に係る画像処理方法は、画像を取得するステップと、前記取得した画像中の被写体表面の粗さ情報を取得するステップと、前記取得した画像中の被写体表面の凹凸情報を取得するステップと、前記取得した画像中の被写体表面の鏡面反射情報を取得するステップと、前記取得した粗さ情報、前記取得した凹凸情報、および、前記取得した鏡面反射情報に基づいて、前記取得した画像の画質を調整するステップと、を有する。
【0008】
本発明のさらに別の態様に係る画像処理プログラムは、画像を取得するステップと、前記取得した画像中の被写体表面の粗さ情報を取得するステップと、前記取得した画像中の被写体表面の凹凸情報を取得するステップと、前記取得した画像中の被写体表面の鏡面反射情報を取得するステップと、前記取得した粗さ情報、前記取得した凹凸情報、および、前記取得した鏡面反射情報に基づいて、前記取得した画像の画質を調整するステップと、コンピュータに実行させるための画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像中の被写体表面の粗さ情報、凹凸情報、および、鏡面反射情報に基づいて、画像の画質を調整するので、画像の質感を十分に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態における画像処理装置のブロック構成図である。
【図2】図2の(a)〜(c)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを変数とする、コントラスト調整量を算出するための関数αc、βc、γcの一例を示す図であり、(d)〜(f)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを変数とする、シャープネス調整量を算出するための関数αs、βs、γsの一例を示す図であるり、(g)〜(i)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを変数とする、ノイズ量を算出するための関数αn、βn、γnの一例を示す図である。
【図3】図3は、第2の実施形態における画像処理装置のブロック構成図である。
【図4】図4(a)は、色情報Wを変数とする、コントラスト調整量を算出するための関数δcの一例を示す図、図4(b)は、色情報Wを変数とする、シャープネス調整量を算出するための関数δsの一例を示す図、図4(c)は、色情報Wを変数とする、ノイズ量を算出するための関数δnの一例を示す図である。
【図5】図5は、階調変換処理の方法を説明するための図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、画像取得部によって取得された画像データのR信号値、G信号値、B信号値の画素頻度分布の一例を示す図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、画像取得部1によって取得された画像データのR信号値、G信号値、B信号値の画素頻度分布の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
−第1の実施形態−
図1は、第1の実施形態における画像処理装置のブロック構成図である。第1の実施形態における画像処理装置は、画像取得部1と、粗さ情報取得部2と、凹凸情報取得部3と、鏡面反射情報取得部4と、画質調整部5とを備える。この画像処理装置は、例えばデジタルカメラに搭載されて使用される。
【0012】
画像取得部1は、撮影により生成された画像データを取得する。例えば、デジタルカメラでは、撮影により生成された画像データは、一時的にRAMに記憶されるので、画像取得部1は、RAMから画像データを取得する。
【0013】
粗さ情報取得部2は、画像取得部1によって取得された画像データの物理的特徴から、画像中の被写体表面の粗さ情報を取得する。粗さ情報とは、被写体表面の形状変化の細かさを示す情報であって、例えばフーリエ変換を施した画像に、コントラスト感度関数(Contrast Sensitivity Function)のような人間の視覚特性を掛け合わせて積算した情報である。また、画像データの物理的特徴とは、空間周波数、テクスチャ情報、エッジ特徴量等である。
【0014】
凹凸情報取得部3は、画像取得部1によって取得された画像データの物理的特徴から、画像中の被写体表面の凹凸情報を取得する。凹凸情報とは、被写体表面の形状変化の深さを示す情報であって、例えば輝度ヒストグラムの最大値から最小値を減算した情報である。また、画像の物理的特徴とは、輝度ヒストグラム、空間周波数、エッジ特徴量等である。
【0015】
鏡面反射情報取得部4は、画像取得部1によって取得された画像データの物理的特徴から、画像中の被写体表面の鏡面反射情報を取得する。鏡面反射情報とは、被写体表面での照明の反射度合いを示す情報であって、例えば輝度ヒストグラムの予め設定した閾値以上の高輝度部分の面積の情報である。また、画像の物理的特徴とは、ハイライト値、輝度ヒストグラム等である。
【0016】
画質調整部5は、粗さ情報取得部2によって取得された粗さ情報、凹凸情報取得部3によって取得された凹凸情報、および、鏡面反射情報取得部4によって取得された鏡面反射情報に基づいて、画像の画質を調整(画質を向上)する処理を行う。画質の調整は、トーンカーブ、輝度コントラスト、色コントラスト、シャープネス、エッジ強調、ボケ度合い、ノイズ付加度合い、明度、彩度、色相のうちの1つ以上を補正することによって行う。
【0017】
本実施形態では、画質調整部5は、まず、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zに基づいて、画像のコントラストを調整するためのコントラスト調整量、画像のシャープネスを調整するためのシャープネス調整量、および、画像に付加するノイズ量を決定する。そして、画像取得部1によって取得された画像データに対して、決定したコントラスト調整量に基づいたコントラスト調整、決定したシャープネス調整量に基づいたシャープネス調整、および、決定したノイズ量のノイズ付加を行う。なお、コントラストの調整には、輝度コントラストおよび色コントラストの調整が含まれる。
【0018】
なお、画質調整部5が行う画像の画質を調整する処理は、コントラスト調整、シャープネス調整、ノイズ付加に限定されることはない。
【0019】
画質調整部5は、次式(1)〜(3)により、コントラスト調整量、シャープネス調整量、および、ノイズ量を決定する。
コントラスト調整量=αc(X)+βc(Y)+γc(Z) …(1)
シャープネス調整量=αs(X)+βs(Y)+γs(Z) …(2)
ノイズ量=αn(X)+βn(Y)+γn(Z) …(3)
【0020】
式(1)において、αc(X)、βc(Y)、γc(Z)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを変数とする、コントラスト調整量を算出するための関数の関数値である。また、式(2)において、αs(X)、βs(Y)、γs(Z)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを変数とする、シャープネス調整量を算出するための関数の関数値である。さらに、式(3)において、αn(X)、βn(Y)、γn(Z)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを変数とする、ノイズ量を算出するための関数の関数値である。
【0021】
図2(a)〜(c)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを変数とする、コントラスト調整量を算出するための関数αc、βc、γcの一例を示す図である。図2(d)〜図2(f)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを変数とする、シャープネス調整量を算出するための関数αs、βs、γsの一例を示す図である。図2(g)〜(i)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを変数とする、ノイズ量を算出するための関数αn、βn、γnの一例を示す図である。ただし、関数αc、βc、γc、αs、βs、γs、αn、βn、γnが図2(a)〜(i)に示すものに限定されることはない。
【0022】
画質調整部5は、また、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zとコントラスト調整量との関係を定めたルックアップテーブルを予め記憶しておき、このルックアップテーブルを参照することにより、コントラスト調整量を算出するようにしてもよい。同様に、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zとシャープネス調整量との関係を定めたルックアップテーブルを予め記憶しておき、このルックアップテーブルを参照することにより、シャープネス調整量を算出するようにしてもよい。また、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zとノイズ量との関係を定めたルックアップテーブルを予め記憶しておき、このルックアップテーブルを参照することにより、ノイズ量を算出するようにしてもよい。
【0023】
ルックアップテーブルを用いる場合、コントラスト調整量、シャープネス調整量、および、ノイズ量はそれぞれ、次式(4)〜(6)で表される。ただし、式(4)中の3D−LUTc(X、Y、Z)は、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを入力とする、コントラスト調整量算出用のルックアップテーブルのテーブル値を意味し、式(5)中の3D−LUTs(X、Y、Z)は、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを入力とする、シャープネス調整量算出用のルックアップテーブルのテーブル値を意味する。また、式(6)中の3D−LUTn(X、Y、Z)は、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zを入力とする、ノイズ量算出用のルックアップテーブルのテーブル値を意味する。
コントラスト調整量=3D−LUTc(X、Y、Z) …(4)
シャープネス調整量=3D−LUTs(X、Y、Z) …(5)
ノイズ量=3D−LUTn(X、Y、Z) …(6)
【0024】
ここで、ルックアップテーブルの値は、粗さ情報Xが大きくなるほど(粗くなるほど)ノイズ量が大きくなるように、凹凸情報Yが大きくなるほど(凹凸度合いが大きくなるほど)コントラスト調整量が大きくなるように、鏡面反射情報Zが大きくなるほど(鏡面反射度合いが大きくなるほど)コントラスト調整量が大きくなるように設定しておく。なお、ルックアップテーブルの値として、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Zに対して任意の値を設定しておいてもよい。
【0025】
以上、第1の実施形態における画像処理装置によれば、画像中の被写体表面の粗さ情報、画像中の被写体表面の凹凸情報、および、画像中の被写体表面の鏡面反射情報を取得し、取得した粗さ情報、凹凸情報、および、鏡面反射情報に基づいて、画像の画質を調整するので、画像の質感を十分に向上させることができる。
【0026】
−第2の実施形態−
図3は、第2の実施形態における画像処理装置のブロック構成図である。第1の実施形態における画像処理装置と同じ構成部分については、同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。第2の実施形態における画像処理装置は、第1の実施形態における画像処理装置の構成に対して、色情報取得部10が追加されている。
【0027】
色情報取得部10は、画像取得部1によって取得された画像データの物理的特徴から、画像中の被写体表面の色情報を取得する。色情報とは、例えば、L*C*h*値、色コントラストの情報である。また、画像データの物理的特徴とは、RGB信号値、輝度信号値、色差信号値等である。
【0028】
画質調整部5は、粗さ情報取得部2によって取得された粗さ情報X、凹凸情報取得部3によって取得された凹凸情報Y、鏡面反射情報取得部4によって取得された鏡面反射情報Z、および、色情報取得部10によって取得された色情報Wに基づいて、画像の画質を調整(画質を向上)するための画像処理を行う。具体的には、まず、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Z、色情報Wに基づいて、画像のコントラストを調整するためのコントラスト調整量、画像のシャープネスを調整するためのシャープネス調整量、および、画像に付加するノイズ量を決定する。そして、画像取得部1によって取得された画像データに対して、決定したコントラスト調整量に基づいたコントラスト調整、決定したシャープネス調整量に基づいたシャープネス調整、および、決定したノイズ量のノイズ付加を行う。
【0029】
なお、第1の実施形態と同様に、画質調整部5が行う画像の画質を向上するための画像処理は、コントラスト調整、シャープネス調整、ノイズ付加に限定されることはない。
【0030】
画質調整部5は、次式(7)〜(9)により、コントラスト調整量、シャープネス調整量、および、ノイズ量を決定する。
コントラスト調整量=αc(X)+βc(Y)+γc(Z)+δc(W) …(7)
シャープネス調整量=αs(X)+βs(Y)+γs(Z)+δs(W) …(8)
ノイズ量=αn(X)+βn(Y)+γn(Z)+δn(W) …(9)
【0031】
式(7)において、αc(X)、βc(Y)、γc(Z)、δc(W)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Z、色情報Wを変数とする、コントラスト調整量を算出するための関数の関数値である。また、式(8)において、αs(X)、βs(Y)、γs(Z)、δs(W)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Z、色情報Wを変数とする、シャープネス調整量を算出するための関数の関数値である。さらに、式(9)において、αn(X)、βn(Y)、γn(Z)、δn(W)はそれぞれ、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Z、色情報Wを変数とする、ノイズ量を算出するための関数の関数値である。
【0032】
図4(a)は、色情報Wを変数とする、コントラスト調整量を算出するための関数δcの一例を示す図、図4(b)は、色情報Wを変数とする、シャープネス調整量を算出するための関数δsの一例を示す図、図4(c)は、色情報Wを変数とする、ノイズ量を算出するための関数δnの一例を示す図である。図4(a)に示すように、色情報Wが大きくなるほど(例えば、彩度が高くなるほど)、δcの値を大きくする。また、δsとδnは、色情報Wの値に関係なく一定の値とする。ただし、関数δc、δs、δnが図4(a)〜(c)に示すものに限定されることはない。
【0033】
画質調整部5は、また、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Z、色情報Wとコントラスト調整量との関係を定めたルックアップテーブルを予め記憶しておき、このルックアップテーブルを参照することにより、コントラスト調整量を算出するようにしてもよい。同様に、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Z、色情報Wとシャープネス調整量との関係を定めたルックアップテーブルを予め記憶しておき、このルックアップテーブルを参照することにより、シャープネス調整量を算出するようにしてもよい。また、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Z、色情報Wとノイズ量との関係を定めたルックアップテーブルを予め記憶しておき、このルックアップテーブルを参照することにより、ノイズ量を算出するようにしてもよい。
【0034】
ルックアップテーブルを用いる場合、コントラスト調整量、シャープネス調整量、および、ノイズ量はそれぞれ、次式(10)〜(12)で表される。ただし、式(10)中の4D−LUTc(X、Y、Z、W)は、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Z、色情報Wを入力とするコントラスト調整量算出用のルックアップテーブルのテーブル値を意味し、式(11)中の4D−LUTs(X、Y、Z、W)は、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Z、色情報Wを入力とするシャープネス調整量算出用のルックアップテーブルのテーブル値を意味する。また、式(12)中の4D−LUTn(X、Y、Z、W)は、粗さ情報X、凹凸情報Y、鏡面反射情報Z、色情報Wを入力とするノイズ量算出用のルックアップテーブルのテーブル値を意味する。
コントラスト調整量=4D−LUTc(X、Y、Z、W) …(10)
シャープネス調整量=4D−LUTs(X、Y、Z、W) …(11)
ノイズ量=4D−LUTn(X、Y、Z、W) …(12)
【0035】
以上、第2の実施形態における画像処理装置によれば、画像中の被写体表面の粗さ情報、画像中の被写体表面の凹凸情報、画像中の被写体表面の鏡面反射情報、および、画像中の被写体表面の色情報を取得し、取得した粗さ情報、凹凸情報、鏡面反射情報、および、色情報に基づいて、画像の画質を調整するので、画像の質感をより十分に向上させることができる。
【0036】
−第3の実施形態−
第3の実施形態における画像処理装置の構成は、図1に示す第1の実施形態における画像処理装置の構成と同じである。第3の実施形態における画像処理装置において、画質調整部5は、画像の画質を向上するための画像処理として、階調変換処理およびシャープネス調整処理を行う。ここでは、トーンカーブを用いて階調変換処理を行う。
【0037】
階調変換処理を行う際の階調調整量、および、シャープネス調整を行う際のシャープネス調整量はそれぞれ、次式(13)および(14)で表される。ただし、式(13)、(14)において、αは粗さ情報であり、所定の粗さS1より小さい値である。また、βは凹凸情報であり、所定の凹凸S2よりも小さい値である。さらに、γは鏡面反射情報であり、所定の鏡面反射度合いS3より大きい値である。また、式(13)におけるa1、b1、c1、および、式(14)におけるa2、b2、c2は、任意の値である。
階調調整量Co=a1×α+b1×β+c1×γ …(13)
シャープネス調整量Sh=a2×α+b2×β−c2×γ …(14)
【0038】
階調変換処理では、トーンカーブの任意の位置を、式(13)により求めた階調調整量Coだけ持ち上げる処理を行う。図5は、階調変換処理の方法を説明するための図である。ここでは、図5に示すように、トーンカーブの第一四分位点の出力が階調調整量Coだけ小さくなるように、また、第三四分位点の出力が階調調整量Coだけ大きくなるように、トーンカーブを修正する。これにより、例えば、艶があり、表面の粗さや凹凸が少ない物体については、階調調整によるコントラスト上昇と、弱いシャープネス強調によって艶感が強調され、画像の質感が向上する。さらに、トーンカーブを用いてコントラストを調整することにより、暗部のつぶれと明部の白飛びがない自然な階調で質感を向上させることができる。
【0039】
−第4の実施形態−
第4の実施形態における画像処理装置の構成は、図3に示す第2の実施形態における画像処理装置の構成と同じである。第4の実施形態における画像処理装置において、画質調整部5は、画像の画質を向上するための画像処理として、階調変換処理、シャープネス調整処理、および、色コントラスト調整処理を行う。
【0040】
色情報取得部10は、画像取得部1によって取得された画像データの物理的特徴から、画像中の被写体表面の色情報を取得する。色情報とは、例えば、L*C*h*値、色コントラスト、色分布の情報である。また、画像データの物理的特徴とは、RGB信号値、輝度信号値、色差信号値等である。以下では、色情報として、画素の色相別彩度分布を取得するものとして説明する。
【0041】
画質調整部5が階調変換処理を行う際の階調調整量、シャープネス調整を行う際のシャープネス調整量、および、色コントラスト調整を行う際の色コントラスト調整量はそれぞれ、次式(15)〜(17)で表される。ただし、式(15)〜(17)において、αは粗さ情報であり、所定の粗さS11より小さい値である。また、βは凹凸情報であり、所定の凹凸S12よりも小さい値である。さらに、γは鏡面反射情報であり、所定の鏡面反射度合いS13より大きい値である。また、式(15)におけるa11、b11、c11、および、式(16)におけるa12、b12、c12、式(17)におけるd3は、任意の値である。また、式(17)において、Hmは、色相別彩度分布量の最大値である。
階調調整量Co=a11×α+b11×β+c11×γ …(15)
シャープネス調整量Sh=a12×α+b12×β−c12×γ …(16)
色コントラスト調整量Cc=d3×Hm …(17)
【0042】
図6(a)〜(c)は、画像取得部1によって取得された画像データのR信号値、G信号値、B信号値の画素頻度分布の一例を示す図である。図6に示す例では、画像データ中のR信号値の頻度が非常に高く、G信号値およびB信号値の頻度は低い。従って、図6に示す例では、Hmは、R信号値の画素頻度の最大値となる。
【0043】
なお、上述した例では、色相をR、G、Bの3つとしたが、Cb、Crの2つとしてもよいし、Lab色空間のab平面を8分割するようにしてもよい。
【0044】
本実施形態によれば、例えば、艶があり、粗さと凹凸は少なく、色が赤い被写体が存在する場合に、階調調整とシャープネス調整によって艶が強調され、さらに、色コントラストが増すことにより、赤の高彩度部分はより鮮やかに、また、艶部分のように、彩度が低い部分はより彩度が低下するので、赤い艶感がより一層強調されて、画像の質感をさらに向上させることができる。
【0045】
−第5の実施形態−
第5の実施形態における画像処理装置の構成は、図3に示す第2の実施形態における画像処理装置の構成と同じである。第5の実施形態における画像処理装置は、第4の実施形態における画像処理装置と同様に、画質調整部5は、画像の画質を向上するための画像処理として、階調変換処理、シャープネス調整処理、および、色コントラスト調整処理を行う。
【0046】
画質調整部5が階調変換処理を行う際の階調調整量、シャープネス調整を行う際のシャープネス調整量、および、色コントラスト調整を行う際の色コントラスト調整量はそれぞれ、次式(18)〜(20)で表される。ただし、式(18)〜(20)において、αは粗さ情報であり、所定の粗さS21より大きい値である。また、βは凹凸情報であり、所定の凹凸S22よりも大きい値である。さらに、γは鏡面反射情報であり、所定の鏡面反射度合いS23より小さい値である。また、式(18)におけるa13、b13、c13、および、式(19)におけるa14、b14、c14、式(20)におけるd13は、任意の値である。また、式(20)において、Hmは、色相別彩度分布量の最大値である。
階調調整量Co=a13×α+b13×β+c13×γ …(18)
シャープネス調整量Sh=a14×α+b14×β−c14×γ …(19)
色コントラスト調整量Cc=d13×Hm …(20)
【0047】
図7(a)〜(c)は、画像取得部1によって取得された画像データのR信号値、G信号値、B信号値の画素頻度分布の一例を示す図である。図7に示す例では、画像データのR信号値、G信号値、B信号値のいずれも満遍なく分布しているため、色相別彩度分布量の最大値Hmは、図6に示す画素頻度分布に比べて小さい値となる。この場合、画像データは複数の色を有しているため、彩度調整量を大きくすることによって、彩度を強調する。例えば、艶がなく、粗さと凹凸が多く、かつ、色数がたくさんある場合、コントラストとシャープネスを増加させて粗さと凹凸を強調し、さらに、彩度を強調することによって、複数の色を有する被写体の質感を向上させることができる。
【0048】
なお、上述した第1〜第5の実施形態の説明では、画像処理装置が行う処理としてハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、コンピュータにてソフトウェア処理を行うことも可能である。この場合、コンピュータは、CPU、RAM等の主記憶装置、上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備えている。ここでは、このプログラムを画像処理プログラムと呼ぶ。そして、CPUが上記記憶媒体に記憶されている画像処理プログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の画像処理装置と同様の処理を実現させる。
【0049】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、この画像処理プログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該画像処理プログラムを実行するようにしても良い。
【0050】
本発明は、上記実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素の幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0051】
上述した実施形態では、画像処理装置をデジタルカメラに搭載する例を挙げて説明したが、ビデオカメラやムービーカメラに搭載してもよく、さらに、携帯電話や携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assist)、ゲーム機器、プリンタ、スキャナ等に搭載するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…画像取得部
2…粗さ情報取得部
3…凹凸情報取得部
4…鏡面反射情報取得部
5…画質調整部
10…色情報取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された画像中の被写体表面の粗さ情報を取得する粗さ情報取得部と、
前記画像取得部によって取得された画像中の被写体表面の凹凸情報を取得する凹凸情報取得部と、
前記画像取得部によって取得された画像中の被写体表面の鏡面反射情報を取得する鏡面反射情報取得部と、
前記粗さ情報取得部によって取得された粗さ情報、前記凹凸情報取得部によって取得された凹凸情報、および、前記鏡面反射情報取得部によって取得された鏡面反射情報に基づいて、前記画像取得部によって取得された画像の画質を調整する画質調整部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像取得部によって取得された画像中の被写体表面の色情報を取得する色情報取得部をさらに備え、
前記画質調整部は、前記粗さ情報取得部によって取得された粗さ情報、前記凹凸情報取得部によって取得された凹凸情報、前記鏡面反射情報取得部によって取得された鏡面反射情報、および、前記色情報取得部によって取得された色情報に基づいて、前記画像取得部によって取得された画像の画質を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画質調整部は、トーンカーブ、輝度コントラスト、色コントラスト、シャープネス、エッジ強調、ボケ度合い、ノイズ付加度合い、明度、彩度、色相のうちの1つ以上を補正することによって、前記画像の画質を調整する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画質調整部は、前記粗さ情報を変数とする関数、前記凹凸情報を変数とする関数、および、前記鏡面反射情報を変数とする関数から、前記画像の画質を調整するための調整量を求め、求めた調整量に基づいて、前記画像の画質を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記粗さ情報、前記凹凸情報、および、前記鏡面反射情報と、前記調整量との関係を定めたルックアップテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記画質調整部は、前記粗さ情報取得部によって取得された粗さ情報、前記凹凸情報取得部によって取得された凹凸情報、および、前記鏡面反射情報取得部によって取得された鏡面反射情報と、前記記憶部に記憶されているルックアップテーブルとに基づいて、前記調整量を算出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画質調整部は、前記画像取得部によって取得された画像へのノイズ付加、および、輝度コントラストおよび色コントラストの調整を行うことによって、前記画像の画質を調整するものであって、前記粗さ情報取得部によって取得された粗さ情報で示される画像の粗さが大きくなるほど、前記ノイズ付加時のノイズ付加量を多くし、前記凹凸情報取得部によって取得された凹凸情報で示される画像の凹凸が大きくなるほど、前記輝度コントラストおよび色コントラストの調整量を大きくし、前記鏡面反射情報取得部によって取得された鏡面反射情報で示される鏡面反射度合いが大きくなるほど、前記輝度コントラストおよび色コントラストの調整量を大きくする、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像を取得するステップと、
前記取得した画像中の被写体表面の粗さ情報を取得するステップと、
前記取得した画像中の被写体表面の凹凸情報を取得するステップと、
前記取得した画像中の被写体表面の鏡面反射情報を取得するステップと、
前記取得した粗さ情報、前記取得した凹凸情報、および、前記取得した鏡面反射情報に基づいて、前記取得した画像の画質を調整するステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
画像を取得するステップと、
前記取得した画像中の被写体表面の粗さ情報を取得するステップと、
前記取得した画像中の被写体表面の凹凸情報を取得するステップと、
前記取得した画像中の被写体表面の鏡面反射情報を取得するステップと、
前記取得した粗さ情報、前記取得した凹凸情報、および、前記取得した鏡面反射情報に基づいて、前記取得した画像の画質を調整するステップと、
をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−106314(P2013−106314A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250893(P2011−250893)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】