説明

画像処理装置、画像処理方法、画像形成装置、画像読取装置、コンピュータプログラム及び記録媒体

【課題】下地領域に分離された画像データに含まれる薄い文字を効果的に強調することができる画像処理装置、画像処理方法、画像形成装置、画像読取装置、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】低濃度文字判定部251は、入力された領域識別信号に基づいて、入力されたRGB信号から下地領域のRGB信号を抽出し、抽出したRGB信号中に薄い文字が含まれている領域が存在するか否かを検出する。空間周波数変換部252は、低濃度文字判定部251が検出した薄い文字の領域に対して空間周波数変換を行ない、得られた空間周波数成分を空間周波数解析部253が解析し、文字に相当する周波数領域を検出する。強調・平滑処理部254は、空間周波数解析部253が検出した文字に相当する周波数領域に対して強調処理を行ない、空間周波数逆変換部255が空間周波数逆変換を行なって画像データに戻して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字領域、網点領域、写真領域、下地領域等の複数の領域に分離する領域分離処理を画像データに対して行ない、それぞれに分離された領域毎に画像処理を行なうことによって、画像の再現性を向上させる画像処理装置、画像処理方法、前記画像処理装置を備える画像形成装置及び画像読取装置、前記画像処理装置をコンピュータによって実現するためのコンピュータプログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿を読み取って画像データを取得するスキャナ、スキャナを備えた複写機及び複合機等の画像形成装置は、原稿を読み取って得られた画像データを出力又は印刷する際に、画像データにおけるエッジ領域を検出し、検出したエッジ領域に対して強調処理を実行する。このような強調処理を行なうことにより、出力画像におけるエッジ領域の再現性を向上させることができるので、出力画像の画質を向上させることができる。
【0003】
しかし、例えば鉛筆で薄く書かれたような文字は、エッジの検出が困難であるので、エッジ領域に対して実行すべき強調処理を行なうことができない。従って、出力画像において、薄い文字の領域における再現性を向上させることが困難である。また、エッジ領域を検出できない場合には、画像データ全体に対して強調処理を行なえば、薄い文字の領域における再現性を向上させることはできるが、この場合、スキャンノイズのようなノイズ成分等も強調してしまい、出力画像全体としての画質を低下させる虞がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、ノイズ成分の強調を抑えつつ、薄い手書き文字及び細線等の領域における再現性を向上させる技術が開示されている。具体的には、特許文献1の装置は、所定のマトリクス内の画素単位で画像データに対してエッジ強調を行ない、エッジ強調された後の画像データを、エッジ強調される前の画像データの最大値以下に制限し、制限された画像データを出力データとする構成である。このような構成により、画像データ全体に対してエッジ強調を行なうので、出力画像における再現性を向上させることができると共に、エッジ強調された後の画像データのうちで、エッジ強調される前の画像データには無いレベルの振幅成分を抑制するので、ノイズ成分の強調を抑えることができる。
【0005】
また、特許文献2には、薄い文字を強調する技術が開示されている。具体的には、特許文献2の装置は、画像データにおける濃度が所定の濃度よりも薄い濃度領域を検出し、検出された薄い濃度領域中の画像データについては濃度を濃くする処理を行なう構成である。このような構成により、濃淡の画素が混在している画像データを読み取る際に、濃い文字及び薄い文字の両方を良好に読み取ることができる。
【特許文献1】特開平7−66977号公報
【特許文献2】特開平9−130610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された技術では、エッジ強調された後の画像データを、エッジ強調される前の画像データのデータ値内に制限するので、薄い文字の濃度を濃くする効果は得られないという問題を有する。また、特許文献2に開示された技術では、単純に薄い濃度領域の濃度を濃くするので、ノイズ成分も強調されてしまうという問題を有する。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エッジとして検出できないような薄い文字が存在する領域について、文字の領域を効率よく検出すると共に、ノイズ成分を強調することなく、文字のみを効果的に強調することが可能な画像処理装置、画像処理方法、前記画像処理装置を備える画像形成装置及び画像読取装置、前記画像処理装置をコンピュータによって実現するためのコンピュータプログラム及び記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、下地領域を含む複数の領域に画像を分離する領域分離処理を画像データに対して行なう領域分離処理部を備え、該領域分離処理部によって分離された領域毎に画像処理を行なう画像処理装置において、前記領域分離処理部によって下地領域に分離された画像データを空間周波数成分に変換する空間周波数変換部と、該空間周波数変換部によって変換された空間周波数成分を解析し、予め定められた周波数領域内に所定の閾値以上の値を有するピークが存在するか否かを判定する空間周波数解析部と、該空間周波数解析部によって前記ピークが存在すると判定された場合、前記ピークを含む所定の周波数領域内の周波数成分に対して強調処理を行なう強調処理部と、該強調処理部によって強調処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換する空間周波数逆変換部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る画像処理装置は、前記領域分離処理部によって下地領域に分離された画像データに含まれる画素データのデータ値に対する画素数を示す分布情報を算出する算出部と、該算出部によって算出された分布情報における所定のデータ値以下に、所定の閾値以上の画素数を有するデータ値が存在するか否かに基づいて、文字が含まれているか否かを判定する文字判定部とを備え、前記空間周波数変換部は、前記文字判定部によって文字が含まれていると判定された画像データを空間周波数成分に変換するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る画像処理装置は、前記領域分離処理部によって下地領域に分離された画像データに含まれる画素データの第1画素数を計数する第1計数部と、前記領域分離処理部によって下地領域に分離された画像データに含まれる所定のデータ値以下の画素データの第2画素数を計数する第2計数部と、前記第1計数部によって計数された第1画素数に対する、前記第2計数部によって計数された第2画素数の割合を算出する手段と、算出された割合が所定の閾値以上であるか否かに基づいて、文字が含まれているか否かを判定する文字判定部とを備え、前記空間周波数変換部は、前記文字判定部によって文字が含まれていると判定された画像データを空間周波数成分に変換するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る画像処理装置は、前記ピークを含む所定の周波数領域よりも高い周波数成分に対して平滑処理を行なう平滑処理部を備え、前記空間周波数逆変換部は、前記平滑処理部によって平滑処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る画像処理方法は、下地領域を含む複数の領域に画像を分離する領域分離処理を画像データに対して行ない、分離された領域毎に画像処理を行なう画像処理方法において、下地領域に分離された画像データを空間周波数成分に変換する空間周波数変換ステップと、該空間周波数変換ステップで変換された空間周波数成分を解析し、予め定められた周波数領域内に所定の閾値以上の値を有するピークが存在するか否かを判定する空間周波数解析ステップと、該空間周波数解析ステップで前記ピークが存在すると判定された場合、前記ピークを含む所定の周波数領域内の周波数成分に対して強調処理を行なう強調処理ステップと、該強調処理ステップで強調処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換する空間周波数逆変換ステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る画像処理方法は、下地領域に分離された画像データに含まれる画素データのデータ値に対する画素数を示す分布情報を算出する算出ステップと、該算出ステップで算出された分布情報における所定のデータ値以下に、所定の閾値以上の画素数を有するデータ値が存在するか否かに基づいて、文字が含まれているか否かを判定する文字判定ステップとを含み、前記空間周波数変換ステップは、前記文字判定ステップで文字が含まれていると判定された画像データを空間周波数成分に変換することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、上述したような画像処理装置と、該画像処理装置で処理された画像データに基づいて出力画像を形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る画像読取装置は、画像を読み取って画像データを取得する画像読取手段と、上述したような画像処理装置とを備え、前記画像読取手段で取得した画像データを前記画像処理装置で処理するように構成してあることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、下地領域を含む複数の領域に画像を分離する領域分離処理を画像データに対して行なわせ、分離された領域毎に画像処理を行なわせるためのコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、下地領域に分離された画像データを空間周波数成分に変換する空間周波数変換ステップと、該空間周波数変換ステップで変換された空間周波数成分を解析し、予め定められた周波数領域内に所定の閾値以上の値を有するピークが存在するか否かを判定する空間周波数解析ステップと、該空間周波数解析ステップで前記ピークが存在すると判定された場合、前記ピークを含む所定の周波数領域内の周波数成分に対して強調処理を行なう強調処理ステップと、該強調処理ステップで強調処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換する空間周波数逆変換ステップとを実行させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る記録媒体は、上述したコンピュータプログラムを記録してあることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、下地領域に分離された画像データを空間周波数成分に変換し、得られた空間周波数成分において、予め定められた周波数領域内に所定の閾値以上の値を有するピークが存在するか否かを判定する。このピークは、下地領域に分離された画像データ中の文字(薄い文字)の領域を示しており、空間周波数成分に変換することによって、薄い文字の領域を効率よく検出することが可能となる。また、ピークが存在すると判定された場合、このピークを含む所定の周波数領域内の周波数成分に対して強調処理を行なうことにより、薄い文字の領域に対してのみ効率よく強調処理を行なうことが可能となる。なお、本発明の画像処理装置は、このような強調処理を行なった後、空間周波数成分を画像データに逆変換することにより、得られた画像データに基づいて各種の処理を行なうことが可能となる。
【0019】
本発明によれば、下地領域に分離された画像データに含まれる画素データのデータ値に対する画素数を示す分布情報を算出し、算出された分布情報における所定のデータ値以下に、所定の閾値以上の画素数を有するデータ値が存在するか否かを判断する。ここで、下地領域に分離された画像データに薄い文字が含まれていない場合、下地領域に分離された画像データに基づいて生成された分布情報は、大きいデータ値(高い輝度値)付近にピークが発生する。一方、下地領域に分離された画像データに薄い文字が含まれている場合、下地領域に分離された画像データに基づいて生成された分布情報は、小さいデータ値(低い輝度値)の領域にピークが発生する。
【0020】
従って、算出された分布情報における所定のデータ値以下に、所定の閾値以上の画素数を有するデータ値(ピーク)が存在するか否かに基づいて、文字(薄い文字)が含まれているか否かを効率よく判定することが可能となる。また、文字が含まれていると判定された画像データに対してのみ空間周波数成分への変換処理を行ない、得られた空間周波数成分において、予め定められた周波数領域内に所定の閾値以上の値を有するピークが存在するか否かを判定することにより、下地領域に分離された画像データ中の文字の領域をより効率よく検出することが可能となる。また、このように効率よく検出した文字の領域に対して強調処理を効率よく行なうことが可能となる。
【0021】
本発明によれば、下地領域に分離された画像データに含まれる画素データの第1画素数と、下地領域に分離された画像データに含まれる所定のデータ値以下の画素データの第2画素数とを計数し、第1画素数に対する第2画素数の割合が所定の閾値以上であるか否かに基づいて、文字(薄い文字)が含まれているか否かを判定する。よって、下地領域に分離された画像データに含まれる画素数に対する、所定のデータ値以下の画素数の割合に基づいて、文字が含まれているか否かを効率よく判定することが可能となる。また、文字が含まれていると判定された画像データに対してのみ空間周波数成分への変換処理を行ない、得られた空間周波数成分において、予め定められた周波数領域内に所定の閾値以上の値を有するピークが存在するか否かを判定することにより、下地領域に分離された画像データ中の文字の領域をより効率よく検出することが可能となる。また、このように効率よく検出した文字の領域に対して強調処理を効率よく行なうことが可能となる。
【0022】
本発明によれば、下地領域に分離された画像データを変換して得られた空間周波数成分において検出された、予め定められた周波数領域内に所定の閾値以上の値を有するピークを含む所定の周波数領域よりも高い周波数成分に対して平滑処理を行なうことにより、下地領域に分離された画像データ中の文字の領域以外の高周波成分を平滑化することが可能となる。
【0023】
本発明によれば、上述のコンピュータプログラム、上述の記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータに読み取らせて実行させることにより、上述したような画像処理装置をコンピュータによって実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にあっては、下地領域に分離された画像データを空間周波数成分に変換し、得られた空間周波数成分に基づいて、文字の領域が存在するか否かを判定するので、下地領域中の文字(薄い文字)の領域を効率よく検出することができる。また、検出された文字に相当する周波数成分に対して強調処理を行なうことにより、文字に対してのみ効率よく強調処理を行なうことができる。これにより、下地領域に分離された画像データにおいて検出された文字は、エッジとして検出できないような濃度の薄い文字であるが、このような薄い文字が存在する領域についても、文字のみを効果的に強調させることができる。
【0025】
本発明にあっては、下地領域に分離された画像データに含まれる画素データのデータ値に対する画素数を示す分布情報を算出し、算出された分布情報に基づいて、文字が含まれているか否かを判定し、文字が含まれていると判定された場合、この画像データを空間周波数成分に変換し、得られた空間周波数成分に基づいて、文字の領域を検出するので、下地領域中の文字の領域を確実に且つ効率よく検出することができる。また、このように検出された文字に相当する周波数成分に対して強調処理を行なうことにより、文字に対して効率よく強調処理を行なうことができる。
【0026】
本発明にあっては、下地領域に分離された画像データに含まれる画素データの画素数に対する、下地領域に分離された画像データに含まれる所定のデータ値以下の画素データの画素数の割合に基づいて、文字が含まれているか否かを判定するので、下地領域の大きさに関係なく、前記割合が所定値以上であるか否かに基づいて、文字が含まれているか否かを効率よく判定することができる。また、文字が含まれていると判定された場合、この画像データを空間周波数成分に変換し、得られた空間周波数成分に基づいて、文字の領域を検出するので、下地領域中の文字の領域を確実に且つ効率よく検出することができる。
【0027】
本発明にあっては、下地領域に分離された画像データ中の文字の領域以外の高周波成分を平滑化することにより、例えば、スキャナによって原稿を読み取った際に生じたノイズ成分、孤立点及び用紙に存在する汚れ等に基づくノイズ成分を抑制することができる。よって、濃度の薄い文字が存在する下地領域において、ノイズ成分を強調することなく、文字だけを効果的に強調することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る画像処理装置を備える画像形成装置100の構成を示すブロック図である。画像形成装置100(例えば、デジタルカラー複写機)は、カラー画像入力装置1、カラー画像処理装置2(画像処理装置)、画像形成手段としてのカラー画像出力装置3、各種操作を行なうための操作パネル4などを備える。カラー画像入力装置1で原稿を読み込むことにより得られたRGB(R:赤、G:緑、B:青)のアナログ信号の画像データは、カラー画像処理装置2へ出力され、カラー画像処理装置2で所定の処理が行なわれ、CMYK(C:シアン、M:マゼンダ、Y:イエロー、K:黒)のデジタルカラー信号としてカラー画像出力装置3へ出力される。
【0029】
カラー画像入力装置1は、例えば、CCD(Charged Coupled Device)を備えたスキャナであり、原稿画像からの反射光像をRGBのアナログ信号として読み取り、読み取ったRGB信号をカラー画像処理装置2へ出力する。また、カラー画像出力装置3は、原稿画像の画像データを記録紙上に出力する電子写真方式又はインクジェット方式などのプリンタである。また、カラー画像出力装置3は、ディスプレイ等の表示装置であってもよい。
【0030】
カラー画像処理装置2は、A/D変換部20、シェーディング補正部21、原稿種別自動判別部22、入力階調補正部23、領域分離処理部24、低濃度文字処理部25、色補正部26、黒生成下色除去部27、空間フィルタ処理部28、出力階調補正部29、階調再現処理部30、これらのハードウェア各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit )等を備え、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などにより構成される。
【0031】
A/D(アナログ/デジタル)変換部20は、カラー画像入力装置1から入力されたRGB信号を、例えば、10ビットのデジタル信号に変換し、変換後のRGB信号をシェーディング補正部21へ出力する。
【0032】
シェーディング補正部21は、入力されたRGB信号に対して、カラー画像入力装置1の照明系、結像系、撮像系などで生じた各種の歪みを取り除く補正処理を行ない、補正後のRGB信号を原稿種別自動判別部22へ出力する。また、シェーディング補正部21は、カラーバランスを整える処理を行なう。
【0033】
原稿種別自動判別部22は、シェーディング補正部21にて各種の歪みが取り除かれ、カラーバランスの調整がなされたRGB信号(RGBの反射率信号)を濃度信号などカラー画像処理装置2に採用されている画像処理システムの扱い易い信号に変換するとともに、原稿種別の判別を行なう。原稿種別自動判別部22は、原稿種別の判別結果である原稿種別判定信号を入力階調補正部23、色補正部26、黒生成下色除去部27、空間フィルタ処理部28、階調再現処理部30へ出力する。また、原稿種別自動判別部22は、シェーディング補正部21から入力されたRGB信号をそのまま後段の入力階調補正部23へ出力する。
【0034】
原稿種別自動判別部22は無くても構わない。その場合、入力階調補正部23において、シェーディング補正部21から入力されたRGBの反射率信号を濃度信号に変換する処理が行なわれる。
【0035】
入力階調補正部23は、シェーディング補正部21にて各種の歪みが取り除かれたRGB信号(RGBの反射率信号)に対して、原稿種別自動判別部22から入力された原稿種別判定信号が示す原稿の種別に応じて、下地濃度の除去又はコントラストなどの画質調整処理を施し、処理後のRGB信号を領域分離処理部24へ出力する。
【0036】
領域分離処理部24は、入力されたRGB信号に基づき、入力された画像中の各画素を、文字領域、網点領域、写真領域、下地領域等の何れに属するかを判定し、各画素を分離する。領域分離処理部24は、分離結果に基づいて、各画素がどの領域に属しているかを示す領域識別信号を低濃度文字処理部25、黒生成下色除去部27、空間フィルタ処理部28、階調再現処理部30へ出力する。また、領域分離処理部24は、入力されたRGB信号をそのまま後段の低濃度文字処理部25へ出力する。
【0037】
低濃度文字処理部25は、領域分離処理部24から入力された領域識別信号に基づいて、入力されたRGB信号から下地領域に分離された領域を抽出し、この下地領域に、低濃度の文字が存在するか否かを判定する。低濃度文字処理部25は、低濃度の文字が存在すると判定した場合、低濃度の文字に対して強調処理を行ない、強調処理を行なったRGB信号を色補正部26へ出力する。なお、低濃度文字処理部25は、低濃度の文字が存在しないと判定した場合、入力されたRGB信号をそのまま後段の色補正部26へ出力する。なお、低濃度文字処理部25が行なう処理の詳細は後述する。
【0038】
色補正部26は、原稿種別自動判別部22から入力された原稿種別判定信号が示す原稿の種別に応じて、入力されたRGB信号をCMYの色空間に変換し、カラー画像出力装置3の特性に合わせて色補正を行ない、補正後のCMY信号を黒生成下色除去部27へ出力する。具体的には、色補正部26は、色再現の忠実化実現のため、不要吸収成分を含むCMY色材の分光特性に基づいた色濁りを取り除く処理を行なう。
【0039】
黒生成下色除去部27は、原稿種別自動判別部22から入力された原稿種別判定信号が示す原稿の種別、及び領域分離処理部24から入力された領域識別信号が示す各領域に応じて、色補正部26から入力されたCMY信号に基づいて、K(黒)信号を生成する黒生成処理を行なうとともに、入力されたCMY信号からK信号を差し引いて新たなCMY信号を生成する下色除去処理を行ない、生成したCMYK信号を空間フィルタ処理部28へ出力する。
【0040】
黒生成下色除去部27における黒生成処理の一例を示す。例えば、スケルトンブラックによる黒生成を行なう処理の場合、スケルトンカーブの入出力特性をy=f(x)とし、入力されるデータをC、M、Yとし、出力されるデータをC´、M´、Y´、K´とし、UCR(Under Color Removal)率をα(0<α<1)とすると、黒生成下色除去処理により出力されるデータ夫々は、K´=f{min(C、M、Y)}、C´=C−αK´、M´=M−αK´、Y´=Y−αK´で表される。
【0041】
空間フィルタ処理部28は、黒生成下色除去部27から入力されたCMYK信号に対して、原稿種別判定信号及び領域識別信号に基づいたデジタルフィルタによる空間フィルタ処理を行なう。これにより、画像データの空間周波数特性が補正され、カラー画像出力装置3における出力画像のぼやけ、又は粒状性劣化を防止する。例えば、空間フィルタ処理部28は、領域分離処理部24において文字領域に分離された領域を、特に黒文字又は色文字の再現性を高めるため、鮮鋭強調処理を施し高周波成分を強調する。また、空間フィルタ処理部28は、領域分離処理部24において網点領域に分離された領域を、入力網点成分を除去するためのローパス・フィルタ処理を施す。空間フィルタ処理部28は、処理後のCMYK信号を出力階調補正部29へ出力する。
【0042】
出力階調補正部29は、空間フィルタ処理部28から入力されたCMYK信号に対して、カラー画像出力装置3の特性値である網点面積率に変換する出力階調補正処理を行ない、出力階調補正処理後のCMYK信号を階調再現処理部30へ出力する。
【0043】
階調再現処理部30は、原稿種別自動判別部22から入力された原稿種別判定信号及び領域分離処理部24から入力された領域識別信号に基づいて、出力階調補正部29から入力されたCMYK信号に対して所定の処理を行なう。例えば、階調再現処理部30は、文字領域に分離された領域を、特に黒文字又は色文字の再現性を高めるため、カラー画像出力装置3における高周波成分の再現に適するように二値化処理又は多値化処理を行なう。
【0044】
また、階調再現処理部30は、領域分離処理部24において網点領域に分離された領域を、最終的に画像を画素に分離して、それぞれの階調を再現できるように階調再現処理(中間調生成)を行なう。さらに、階調再現処理部30は、領域分離処理部24において写真領域に分離された領域を、カラー画像出力装置3における階調再現性に適するように二値化処理又は多値化処理を行なう。
【0045】
カラー画像処理装置2は、階調再現処理部30で処理された画像データ(CMYK信号)を記憶部(不図示)に一旦記憶し、画像形成をする所定のタイミングで記憶部に記憶した画像データを読み出し、読み出した画像データをカラー画像出力装置3へ出力する。これらの制御は、例えば、CPU(不図示)により行なわれる。
【0046】
操作パネル4は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示部と設定ボタンなどにより構成され、操作パネル4より入力された情報に基づいてカラー画像入力装置1、カラー画像処理装置2、カラー画像出力装置3の動作が制御される。
【0047】
本実施の形態に係る画像形成装置100は、カラー画像入力装置1が原稿を読み取って取得した画像データを、領域分離処理部24にて領域毎に分離し、各領域の種類に応じて画像処理を行なうことによって、より高画質な原稿の複写を行なうことができるようにしてある。特に、下地領域に分離された画像データ中に薄い文字が含まれているか否かを判定し、薄い文字が含まれているか否かに応じた処理を行なうことによって、薄い文字が存在する領域においても、ノイズ成分を強調させることなく、薄い文字のみを効果的に強調させることができるようにしてある。
【0048】
なお、領域分離処理部24が、入力されたRGB信号中の各画素を、文字領域、網点領域、写真領域、下地領域の何れかに分離する際に行なう下地領域を検出する処理は、例えば、特開2002−232708号公報に開示された方法を用いることができる。
【0049】
具体的には、注目画素を含むK×L画素からなるブロック(例えば、15×15画素)毎に、それぞれのブロックにおける最小濃度値(最小画素値)及び最大濃度値(最大画素値)の差分である最大濃度差と、隣接する画素の濃度差の絶対値の総和である総和濃度繁雑度とを算出し、予め定められた複数の閾値と比較することにより、下地領域・印画紙(写真)領域と、文字領域・網点領域とに分離する処理である。なお、以下の条件により、注目画素が下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを判定することができる。
【0050】
(1)下地領域の濃度分布は、通常、濃度変化が少ないため、最大濃度差及び総和濃度繁雑度はともに非常に小さい値となる。
(2)写真領域の濃度分布は、滑らかに濃度変化するため、最大濃度差及び総和濃度繁雑度はともに小さい値となるが、下地領域の場合よりは多少大きい値となる。
(3)網点領域の濃度分布は、最大濃度差は網点の種類によりさまざまであるが、網点の数だけ濃度変化が存在するため、最大濃度差に対する総和濃度繁雑度の割合が大きくなる。よって、総和濃度繁雑度が、最大濃度差と文字・網点判定用の閾値(上記複数の閾値の1つ)との積よりも大きい場合には、注目画素が網点領域に含まれる画素であると判別することが可能である。
(4)文字領域の濃度分布は、最大濃度差が大きくなり、それに伴い総和濃度繁雑度も大きくなるが、網点領域よりも濃度変化が少ないため、網点領域よりも総和濃度繁雑度は小さくなる。よって、総和濃度繁雑度が、最大濃度差と文字・網点判定用の閾値との積よりも小さい場合には、注目画素が文字領域に含まれる画素であると判別することが可能である。
【0051】
次に、領域分離処理部24による具体的な処理方法について説明する。
領域分離処理部24は、注目画素を含むブロック毎に算出した最大濃度差と最大濃度差閾値との比較、及び、算出した総和濃度繁雑度と総和濃度繁雑度閾値との比較を行なう。そして、最大濃度差が最大濃度差閾値よりも小さく、且つ、総和濃度繁雑度が総和濃度繁雑度閾値よりも小さいと判断した場合は、領域分離処理部24は、注目画素は下地領域又は写真領域であると判定し、それ以外の場合は、注目画素は文字領域又は網点領域であると判定する。
【0052】
領域分離処理部24は、注目画素が下地領域又は写真領域であると判定した場合、算出した最大濃度差と下地・写真判定用の閾値との比較を行ない、最大濃度差が下地・写真判定用の閾値よりも小さければ下地領域であると判定し、最大濃度差が下地・写真判定用の閾値以上であれば写真領域であると判定する。下地・写真判定用の閾値は、薄い文字が検出できるように種々の画像サンプルを用いて設定しておく。場合によっては、写真のエッジが薄い文字として検出される場合もあり得るが、下地領域に分離された画素の画素値に対する画素数を示すヒストグラムを作成すると、薄い文字の場合、下地の濃度(画素値)に近い箇所にピークを有するので(図3参照)、写真のエッジと薄い文字とを区別することは可能である。
【0053】
また、領域分離処理部24は、注目画素が文字領域又は網点領域であると判定した場合、算出した総和濃度繁雑度と、最大濃度差に文字・網点判定用の閾値を掛けた値との比較を行ない、総和濃度繁雑度の方が小さければ文字領域であると判定し、総和濃度繁雑度の方が大きければ網点領域であると判定する。
【0054】
次に、低濃度文字処理部25が行なう処理の詳細について説明する。
図2は低濃度文字処理部25の構成を示すブロック図である。低濃度文字処理部25は、低濃度文字判定部251、空間周波数変換部252、空間周波数解析部253、強調・平滑処理部254、空間周波数逆変換部255などを備えている。
【0055】
低濃度文字判定部251は、領域分離処理部24から入力された領域識別信号に基づいて、領域分離処理部24から入力されたRGB信号から下地領域のRGB信号を抽出し、抽出したRGB信号に含まれる各画素データのR成分、G成分及びB成分を以下の式に代入することにより、各画素の輝度信号Y(データ値)を算出する。低濃度文字判定部251は、算出した輝度信号Yを、記憶部(不図示)に一旦格納する。
【0056】
Y = 0.27R+0.73G+0.001B
【0057】
低濃度文字判定部(算出部)251は、算出した各画素の輝度信号Yに基づいて、輝度信号Yに対する画素数を示す分布情報を算出し、図3に示すようなヒストグラムを生成する。具体的には、低濃度文字判定部251は、算出した輝度信号Yに対し、それぞれの信号値(Y成分の値)を有する画素数をカウントし、Y成分の値及びこの値を有する画素数のヒストグラムを生成する。図3は輝度信号Yのヒストグラムの例を示す図である。図3に示したヒストグラムにおいて、横軸はY成分の値(0〜255)を、縦軸は各値を有する画素数をそれぞれ示している。
【0058】
ここで、下地領域に分離された画素の中に薄い文字が含まれていない場合、生成されたヒストグラムは、Y成分の値が255に近い領域に単一のピークをするものとなる。しかし、下地領域に分離された画素の中に薄い文字が含まれている場合、生成されたヒストグラムは、Y成分の値が低い値(輝度値)の領域においてもピークを有するようになる、又は、Y成分の値が小さい領域の画素数が多くなる。従って、本実施の形態では、低濃度文字判定部251は、輝度値(Y成分の値)が閾値Ty1(例えば、200)以下の領域にピークが存在するか否かに基づいて、下地領域に分離された画素の中に薄い文字が含まれているか否かの判定を行なう。
【0059】
具体的には、低濃度文字判定部(文字判定部)251は、生成したヒストグラムにおいて、Y成分の値が閾値Ty1以下の領域に、所定値以上の画素数を有する輝度値が存在すると判断した場合、下地領域に分離された画素の中に薄い文字が含まれていると判定する。また、低濃度文字判定部251は、生成したヒストグラムにおいて、Y成分の値が閾値Ty1以下の領域に、所定値以上の画素数を有する輝度値が存在しないと判断した場合、下地領域に分離された画素の中に薄い文字が含まれていないと判定する。
【0060】
なお、低濃度文字判定部251は、生成したヒストグラムにおいて、Y成分の値が閾値Ty1以下で、閾値Ty2(例えば、150)以上である画素の画素数Nを算出し、算出した画素数Nが、閾値Tn(例えば、100)個以上であれば、下地領域に文字成分(薄い文字)が存在していると判定するようにしてもよい。また、低濃度文字判定部(第1計数部、第2計数部)251は、下地領域に含まれる全画素数(第1画素数)を計数し、画素数N(第2画素数)を、計数した全画素数で割って、全画素数に対する画素数Nの割合を算出し、算出した割合を閾値Tnと比較してもよい。
【0061】
このように、画素数Nを下地領域の全画素数で正規化することにより、下地領域の大きさに関係なく、一定の割合で低濃度文字が含まれていれば、低濃度文字が存在すると判定することができ、効率よく低濃度文字の有無を判定することができる。なお、上述した閾値Ty1,Ty2の各値は、目標とする薄い文字を検出できるように種々の画像サンプルを用いて設定すればよい。また、低濃度文字があるか否かを判定する際に、輝度信号Yを用いるほか、輝度信号Yに最も寄与率が高いG成分を用いてもよい。
【0062】
低濃度文字判定部251は、領域分離処理部24によって下地領域に分離された画素の中に薄い文字が含まれているか否かの判定結果と、領域分離処理部24から入力されたRGB信号とを空間周波数変換部252へ出力する。
【0063】
空間周波数変換部252は、低濃度文字判定部251によって低濃度の文字が含まれていると判定された下地領域に対し、R成分、G成分、B成分それぞれの各プレーン毎に、M×N画素(例えば、128×128画素)のマスクサイズで2次元離散フーリエ変換を行ない、フーリエ級数C(u,v)に変換する。なお、2次元離散フーリエ変換には、以下の式1を用いることができる。空間周波数変換部252は、得られたフーリエ級数C(u,v)を空間周波数解析部253へ出力する。
【0064】
【数1】

【0065】
空間周波数解析部253は、空間周波数変換部252によって算出されたフーリエ級数C(u,v)のパワースペクトルとして、フーリエ級数の絶対値(|C(u,v)|)を算出し、(u,v)を座標位置と考えた場合の座標(0,0)からのユークリッド距離が同じになるパワースペクトルの和P(f)を算出する。なお、fの範囲は、上記の式2に示す。図4は周波数成分の各値に対するパワースペクトルの和を示すグラフである。図4に示したグラフにおいて、横軸は周波数(フーリエ級数)を、縦軸は各周波数に対するパワースペクトルの和をそれぞれ示している。
【0066】
空間周波数解析部253は、図4に示すように、算出したパワースペクトルの和について、特定の周波数f1(例えば、20Hz)からf2(例えば、60Hz)までの周波数領域内におけるP(f)のピークを検出する。空間周波数解析部253は、検出したピークのピーク値P(f3)を求め、ピーク値P(f3)が閾値Tp(例えば、100)以上であるか否かの判定を行なう。
【0067】
空間周波数解析部253は、ピーク値P(f3)が閾値Tp以上であると判定した場合、そのときの周波数f3を中心とする一定の周波数範囲f3±fr(frは、例えば20)を、文字成分に相当する周波数成分として検出し、検出結果と、空間周波数変換部252から入力されたフーリエ級数C(u,v)とを強調・平滑処理部254へ出力する。
【0068】
なお、空間周波数解析部253は、ピーク値P(f3)が閾値Tp以上でないと判定した場合、空間周波数変換部252から入力されたフーリエ級数C(u,v)のみをそのまま強調・平滑処理部254へ出力する。なお、図4に示すようなパワースペクトルを解析し、予め定められた周波数(低周波数を除く)以上において、所定値以上のピーク値を有するピークが存在するか否かを判定し、ピークが存在する場合に、このピークの周波数に対して一定の範囲内の周波数を、文字成分に相当する周波数成分として検出するようにしてもよい。
【0069】
強調・平滑処理部(強調処理部)254は、空間周波数解析部253から入力された検出結果に基づいて、文字成分に相当する周波数成分であると検出された周波数範囲(f3±fr)に対して強調処理を行なう。図5は強調・平滑処理部254による強調処理を説明するための図である。図5に示すように、強調・平滑処理部254は、空間周波数変換部252によって算出されたM×N画素のフーリエ級数C(u,v)について、(u,v)を座標位置と考えた場合の座標(0,0)からのユークリッド距離がf3±frの範囲内のフーリエ級数に対して、定数K1(例えば、2)を掛けることによって強調処理を行なう。
【0070】
即ち、強調・平滑処理部254は、図5においてハッチングを付したフーリエ級数に対して強調処理を行ない、処理後のフーリエ級数を空間周波数逆変換部255へ出力する。なお、定数K1は、周波数毎に異なる値を用いてもよい。
【0071】
また、強調・平滑処理部(平滑処理部)254は、M×N画素のフーリエ級数C(u,v)について、(u,v)を座標位置と考えた場合の座標(0,0)からのユークリッド距離がf3+frよりも周波数が大きいフーリエ級数に対して、定数K2(例えば、0.5)を掛けることによって、平滑処理を行なって高周波ノイズを除去する。また、定数K2は、周波数毎に異なる値を用いてもよい。
【0072】
空間周波数逆変換部255は、強調・平滑処理部254によって強調処理又は平滑処理を行なわれたR成分、G成分、B成分それぞれの各プレーンのフーリエ級数に対し、2次元離散逆フーリエ変換を行ない、画像データに変換する。なお、2次元離散逆フーリエ変換には、上記の式3を用いることができる。空間周波数逆変換部255は、得られた画像データ(RGB信号)を色補正部26へ出力する。
【0073】
上述したように、本実施の形態の低濃度文字処理部25では、RGB信号の画像データを、離散フーリエ変換を用いて空間周波数領域の画像データに変換し、空間周波数領域の画像データに基づいて、低濃度の文字成分に相当する周波数成分が存在するか否かを判定する構成であるが、離散フーリエ変換のほかに、離散コサイン変換、離散サイン変換を用いてもよい。
【0074】
上述したように、本実施の形態の低濃度文字処理部25は、低濃度文字判定部251が下地領域に分離された画像データにおけるヒストグラムを生成し、生成したヒストグラムに基づいて、薄い文字が含まれているか否かの判定を行ない、薄い文字が含まれていると判定された場合に、画像データを空間周波数成分のデータに変換する構成である。
【0075】
これに対して、例えば、薄い文字が含まれる原稿に対する画像モードを設け(例えば、薄い文字が含まれる原稿モード)、画像形成装置100の操作パネル4を介して、薄い文字が含まれる原稿モードが選択された場合に、画像データを空間周波数成分のデータに変換し、上述したような各種処理を行なうように低濃度文字処理部25を構成してもよい。なお、この場合、薄い文字が含まれる原稿モードが選択されたか否かは制御部(CPU)で判定すればよい。また、このように構成した場合、低濃度文字判定部251は不要となり、領域分離処理部24から入力された画像データは、低濃度文字判定部251をスルーさせ、空間周波数変換部252へそのまま入力される。
【0076】
次に、カラー画像処理装置2の動作について説明する。図6は低濃度文字処理部25による低濃度文字処理の手順を示すフローチャートである。なお、低濃度文字処理は、低濃度文字処理部25等の専用のハードウェア回路で構成するだけでなく、CPU、RAM、ROMなどを備えたパーソナルコンピュータに、低濃度文字処理の手順を定めたコンピュータプログラムをロードすることによりCPU(いずれも不図示)で実行させることにより行なうこともできる。なお、以下の説明では、カラー画像処理装置2の低濃度文字処理部25を「処理部」という。
【0077】
カラー画像処理装置2が画像データを取得した場合、領域分離処理部24が、取得した画像データに対して領域分離処理を行ない、取得した画像データと、領域分離処理の結果である領域識別信号とを後段の低濃度文字処理部25へ出力する。なお、画像データは原稿を原稿読取装置で読み取ることにより取得してもよく、あるいは、パーソナルコンピュータ等の処理装置で作成された電子データを受信することにより取得してもよい。
【0078】
処理部は、領域分離処理部24から画像データ(RGB信号)及び領域識別信号を取得した場合(S1)、取得した領域識別信号に基づいて、下地領域の画像データを抽出し(S2)、抽出した画像データ中に低濃度の文字が有るか否かを判定する(S3)。なお、低濃度の文字が有るか否かの判定処理は、下地領域に分離された画像データ中の各画素データの輝度信号Yについての分布情報に基づいて行なうことができる。
【0079】
処理部は、低濃度の文字が無いと判定した場合(S3:NO)、低濃度文字処理を終了し、領域分離処理部24から取得した画像データを色補正部26へ出力する(S8)。また、処理部は、低濃度の文字が有ると判定した場合(S3:YES)、下地領域に分離された画像データに対して、例えば2次元離散フーリエ変換等の空間周波数変換を実行し(S4)、空間周波数成分に変換する。
【0080】
処理部は、変換された空間周波数成分を解析し(S5)、文字成分に相当する周波数領域の有無を検出する。処理部は、必要に応じて強調・平滑処理を実行し(S6)、文字成分に相当する周波数領域を検出した場合、検出した周波数領域に対して強調処理を行なうと共に、所定の周波数領域よりも大きい周波数成分に対して平滑処理を行なう。
【0081】
処理部は、ステップS6で必要に応じて強調・平滑処理が施された空間周波数成分に対して、例えば2次元離散逆フーリエ変換等の空間周波数逆変換を実行し(S7)、画像データに変換する。そして、処理部は、変換された画像データを色補正部26へ出力し(S8)、上述した低濃度文字処理を終了する。
【0082】
上述したように本実施の形態では、下地領域に分離された画像データ中の文字成分に対して強調処理を行なうので、通常ではエッジとして検出できないような濃度の薄い文字に対しても強調処理を行なうことができる。また、下地領域に分離された画像データを空間周波数成分に変換し、得られた空間周波数成分に基づいて文字成分に相当する空間周波数領域が存在するか否かを判定するので、下地領域中の文字の領域を効率よく検出することができる。更に、文字成分に相当する周波数成分を強調すると共に、所定値以上の高周波成分を平滑化することによって、ノイズ成分を抑制しつつ文字のみを効果的に強調することができる。
【0083】
上述の実施の形態で説明した画像形成装置100は、デジタルカラー複写機に限られず、コピー機能、プリンタ機能、ファクシミリ送受信機能、scan to e-mail機能等を備えるデジタルカラー複合機に適用しても良い。デジタルカラー複合機はさらに、例えば、モデムやネットワークカードよりなる通信装置を備えることもできる。この場合、例えばファクシミリの送信を行なうときは、モデムにて、相手先との送信手続きを行ない送信可能な状態が確保されると、所定の形式で圧縮された画像データ(スキャナで読み込まれた画像データ)をメモリから読み出し、圧縮形式の変更など必要な処理を施して、相手先に通信回線を介して順次送信する。また、ファクシミリを受信する場合、通信手続きを行ないながら相手先から送信されてくる画像データを受信してカラー画像処理装置2へ出力し、カラー画像処理装置2は受信した画像データを、不図示の圧縮/伸張処理部にて伸張処理を施す。伸張された画像データは、必要に応じて、回転処理や解像度変換処理が行なわれ、出力階調補正、階調再現処理が施され、カラー画像出力装置3より出力される。
【0084】
また、画像形成装置100を、ネットワークカード、LANケーブル等を介して、ネットワークに接続されたコンピュータ及び他のデジタル複合機等との間でデータ通信を行なうように構成してもよい。また、カラー複合機だけでなく、モノクロの画像を扱う複合機、ファクシミリ通信機能のみを有するファクシミリ通信装置単体においても本発明を適用することができる。
【0085】
図7は本発明に係る画像読取装置700の構成を示すブロック図である。図に示すように、画像読取装置700は、カラー画像入力装置(画像読取手段)1、カラー画像処理装置2及び操作パネル4を備える。また、カラー画像処理装置2は、A/D変換部20、シェーディング補正部21、原稿種別自動判別部22、入力階調補正部23、領域分離処理部24、低濃度文字処理部25などを備えている。カラー画像入力装置1及びカラー画像処理装置2の各構成部は、上述の画像形成装置100の場合と同様であるので説明は省略する。
【0086】
上述したように、本発明にあっては、原稿を読み取って取得した画像データにおいて、下地領域に分離された領域中に文字(薄い文字)が含まれていれば、この文字に対する強調処理を行なうので、文字領域に分離できないような薄い文字であっても効果的に強調することができる。
【0087】
画像読取装置700が出力する原稿識別判定信号及び領域識別信号は、読み込まれた原稿画像(画像データ)とともにネットワークを介してプリンタや複合機に送信され出力される。あるいは、コンピュータを介してプリンタに、もしくは、直接プリンタに入力される。この場合、プリンタや複合機、コンピュータ側で処理内容を表す信号を判断できるようにしておく必要がある。
【0088】
上述の実施の形態において、カラー画像入力装置1としては、例えば、フラットベッドスキャナ、フィルムスキャナ、デジタルカメラ、携帯電話機などが用いられる。なお、カラー画像入力装置1からカラー画像データを取得する代わりに、ネットワークを介して外部記憶装置、サーバ装置などからカラー画像データを取得する構成であってもよい。また、カラー画像出力装置3としては、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイなどの画像表示装置、処理結果を記録紙などに出力する電子写真方式又はインクジェット方式のプリンタなどが用いられる。
【0089】
本発明は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、カラー画像処理装置2は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(Central Processing Unit )、本発明のコンピュータプログラムを格納したROM(read only memory)、各種の制御プログラムを展開するRAM(random access memory)、各種の制御プログラム及び各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。
【0090】
そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである薄い文字に対する強調処理を行なうプログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)を記録したコンピュータでの読み取り可能な記録媒体をカラー画像処理装置2に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。この結果、上記低濃度文字処理の制御を行なうコンピュータプログラムコードを記録した記録媒体を持ち運び自在に提供することができる。
【0091】
記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理が行なわれるために図示しないメモリ、例えばROMのようなプログラムメディアであってもよく、図示しない外部記憶装置としてのプログラム読取装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することで読み取り可能なプログラムメディアであってもよい。
【0092】
いずれの場合においても、格納されているコンピュータプログラムコードはマイクロプロセッサがアクセスして実行させる構成であってもよいし、コンピュータプログラムコードを読み出し、読み出されたコンピュータプログラムコードは、マイクロコンピュータの図示されていないプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのコンピュータプログラムコードが実行される方式であってもよい。この場合、ダウンロード用のコンピュータプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0093】
ここで、上記プログラムメディアは、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク並びにCD−ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にコンピュータプログラムを担持する媒体であってもよい。
【0094】
また、カラー画像処理装置2を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介してダウンロードするように流動的にコンピュータプログラムコードを担持する媒体であってもよい。このように通信ネットワークからコンピュータプログラムコードをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のコンピュータプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別の記録媒体からインストールされるものであってもよい。なお、通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。
【0095】
また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る画像処理装置を備える画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】低濃度文字処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】輝度信号のヒストグラムの例を示す図である。
【図4】周波数成分の各値に対するパワースペクトルの和を示すグラフである。
【図5】強調・平滑処理部による強調処理を説明するための図である。
【図6】低濃度文字処理部による低濃度文字処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る画像読取装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0097】
1 カラー画像入力装置
2 カラー画像処理装置
3 カラー画像出力装置
24 領域分離処理部
25 低濃度文字処理部
251 低濃度文字判定部(算出部、文字判定部、第1計数部、第2計数部)
252 空間周波数変換部
253 空間周波数解析部
254 強調・平滑処理部(強調処理部、平滑処理部)
255 空間周波数逆変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地領域を含む複数の領域に画像を分離する領域分離処理を画像データに対して行なう領域分離処理部を備え、該領域分離処理部によって分離された領域毎に画像処理を行なう画像処理装置において、
前記領域分離処理部によって下地領域に分離された画像データを空間周波数成分に変換する空間周波数変換部と、
該空間周波数変換部によって変換された空間周波数成分を解析し、予め定められた周波数領域内に所定の閾値以上の値を有するピークが存在するか否かを判定する空間周波数解析部と、
該空間周波数解析部によって前記ピークが存在すると判定された場合、前記ピークを含む所定の周波数領域内の周波数成分に対して強調処理を行なう強調処理部と、
該強調処理部によって強調処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換する空間周波数逆変換部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記領域分離処理部によって下地領域に分離された画像データに含まれる画素データのデータ値に対する画素数を示す分布情報を算出する算出部と、
該算出部によって算出された分布情報における所定のデータ値以下に、所定の閾値以上の画素数を有するデータ値が存在するか否かに基づいて、文字が含まれているか否かを判定する文字判定部とを備え、
前記空間周波数変換部は、前記文字判定部によって文字が含まれていると判定された画像データを空間周波数成分に変換するように構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記領域分離処理部によって下地領域に分離された画像データに含まれる画素データの第1画素数を計数する第1計数部と、
前記領域分離処理部によって下地領域に分離された画像データに含まれる所定のデータ値以下の画素データの第2画素数を計数する第2計数部と、
前記第1計数部によって計数された第1画素数に対する、前記第2計数部によって計数された第2画素数の割合を算出する手段と、
算出された割合が所定の閾値以上であるか否かに基づいて、文字が含まれているか否かを判定する文字判定部とを備え、
前記空間周波数変換部は、前記文字判定部によって文字が含まれていると判定された画像データを空間周波数成分に変換するように構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ピークを含む所定の周波数領域よりも高い周波数成分に対して平滑処理を行なう平滑処理部を備え、
前記空間周波数逆変換部は、前記平滑処理部によって平滑処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換するように構成されていること
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかひとつに記載の画像処理装置。
【請求項5】
下地領域を含む複数の領域に画像を分離する領域分離処理を画像データに対して行ない、分離された領域毎に画像処理を行なう画像処理方法において、
下地領域に分離された画像データを空間周波数成分に変換する空間周波数変換ステップと、
該空間周波数変換ステップで変換された空間周波数成分を解析し、予め定められた周波数領域内に所定の閾値以上の値を有するピークが存在するか否かを判定する空間周波数解析ステップと、
該空間周波数解析ステップで前記ピークが存在すると判定された場合、前記ピークを含む所定の周波数領域内の周波数成分に対して強調処理を行なう強調処理ステップと、
該強調処理ステップで強調処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換する空間周波数逆変換ステップと
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
下地領域に分離された画像データに含まれる画素データのデータ値に対する画素数を示す分布情報を算出する算出ステップと、
該算出ステップで算出された分布情報における所定のデータ値以下に、所定の閾値以上の画素数を有するデータ値が存在するか否かに基づいて、文字が含まれているか否かを判定する文字判定ステップとを含み、
前記空間周波数変換ステップは、前記文字判定ステップで文字が含まれていると判定された画像データを空間周波数成分に変換すること
を特徴とする請求項5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれかひとつに記載の画像処理装置と、該画像処理装置で処理された画像データに基づいて出力画像を形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
画像を読み取って画像データを取得する画像読取手段と、請求項1から4までのいずれかひとつに記載の画像処理装置とを備え、前記画像読取手段で取得した画像データを前記画像処理装置で処理するように構成してあることを特徴とする画像読取装置。
【請求項9】
コンピュータに、下地領域を含む複数の領域に画像を分離する領域分離処理を画像データに対して行なわせ、分離された領域毎に画像処理を行なわせるためのコンピュータプログラムにおいて、
コンピュータに、
下地領域に分離された画像データを空間周波数成分に変換する空間周波数変換ステップと、
該空間周波数変換ステップで変換された空間周波数成分を解析し、予め定められた周波数領域内に所定の閾値以上の値を有するピークが存在するか否かを判定する空間周波数解析ステップと、
該空間周波数解析ステップで前記ピークが存在すると判定された場合、前記ピークを含む所定の周波数領域内の周波数成分に対して強調処理を行なう強調処理ステップと、
該強調処理ステップで強調処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換する空間周波数逆変換ステップと
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムを記録してあることを特徴とするコンピュータでの読み取りが可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−159089(P2009−159089A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332795(P2007−332795)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】