説明

画像処理装置、画像形成装置、及び画像処理プログラム

【課題】高階調のデータを減色せずに出力表現に変換可能としてより高品質な画像形成を可能とし、その際に主走査又は副走査方向のいずれか一方においては、スクリーンのサイズは画素の整数倍に制約されないようにする。
【解決手段】主走査方向及び副走査方向から選択された一方の方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値に基づいて、隣り合う閾値同士の一方の閾値から他方の閾値に到るまでの変化量に応じて当該閾値同士の間における各位置での閾値を算出する閾値算出部111と、前記選択された方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素値に基づいて、隣り合う画素同士の一方の画素値から他方の画素値に到るまでの変化量に応じて当該画素同士の間における各位置での画素値を算出する画素値算出部112と、前記算出された画素値が前記算出された閾値以上になる位置で示される領域をドット形成領域として算出するドット形成領域算出部113とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像形成装置、及び画像処理プログラムに関し、特に、ディザ処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷する画像について濃淡を表すために、大小の網点を一定の間隔で配列して濃淡の階調を再現するAMスクリーン(Amplitude Modulated Screen)が用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。そして、このAMスクリーンには、ディザ法が適用されることが多い。ディザ法は、ハーフトーン処理の技術の1つで、画像を小さいブロックに分割して、それに例えば4×4個の閾値からなるディザマトリクスでマスクを掛け、閾値以上か下回るかに応じて黒又は白にするように処理するものである。
【0003】
そして、例えば多値ディザ法は16段階程度の階調を有するが、1画素あたり256階調の情報を保持するために大きなメモリ容量が必要になり、ディザ処理前の画像を圧縮したとしても有利な圧縮効果が得られないといった理由から、当該メモリ容量の増加を解消すべく、電子写真方式の印刷では、256階調データを16階調(段階)に減色した状態で出力することが多い。
【特許文献1】特開平5−136962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ディザ法適用前の256階調データは、ディザを行なうために必ず用意されるものであり、当該256階調からなる高階調のデータを作成しておきながら出力時に減色するのは、256階調からなる高階調のデータを使用できる環境及び印刷装置の画像処理性能を使い切れておらず効率が悪い。
【0005】
また、スクリーンとしてみた場合に以下の課題がある。上記のように、ディザ法では画素単位で減色及び面積階調化を行なうために、スクリーンのサイズは画素の整数倍×画素の整数倍となる必要があるが、近年の電子写真技術の進歩により、スクリーン網点のサイズを小さくすることが可能となってきており、この整数倍という制約が大変な課題となっている。解決する方法としてサブスクリーン化などの方法があるが、この場合もサブスクリーン毎の挙動が異なるために、メインスクリーン周期が目立つ場合がある。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、高階調のデータを減色せずに出力表現に変換可能としてより高品質な画像形成を可能とし、その際に主走査又は副走査方向のいずれか一方においては、スクリーンのサイズは画素の整数倍に制約されないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の発明は、主走査方向及び副走査方向から選択された一方の方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値に基づいて、隣り合う閾値同士の一方の閾値から他方の閾値に到るまでの変化量に応じて当該閾値同士の間における各位置での閾値を算出する閾値算出部と、
前記選択された方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素値に基づいて、隣り合う画素同士の一方の画素値から他方の画素値に到るまでの変化量に応じて当該画素同士の間における各位置での画素値を算出する画素値算出部と、
前記算出された画素値が前記算出された閾値以上になる位置で示される領域をドット形成領域として算出するドット形成領域算出部と
を備える画像処理装置である。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、主走査方向及び副走査方向から選択された一方の方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値に基づいて、隣り合う閾値同士の一方の閾値から他方の閾値に到るまでの変化量に応じて当該閾値同士の間における各位置での閾値を算出する閾値算出部と、
前記選択された方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素値に基づいて、隣り合う画素同士の一方の画素値から他方の画素値に到るまでの変化量に応じて当該画素同士の間における各位置での画素値を算出する画素値算出部と、
前記算出された画素値が前記算出された閾値以上になる領域をドット形成領域として算出するドット形成領域算出部と
して機能するように、コンピュータを動作させる画像処理プログラムである。
【0009】
これらの発明によれば、ディザ法適用時に、閾値算出部が、主走査方向又は副走査方向から選択された一方の方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値に基づいて、隣り合う閾値同士の一方の閾値から他方の閾値に到るまでの変化量に応じて当該閾値同士の間における各位置での閾値を算出し、画素値算出部が、前記選択された方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素値に基づいて、隣り合う画素同士の一方の画素値から他方の画素値に到るまでの変化量に応じて当該画素同士の間における各位置での画素値を算出し、さらに、ドット形成領域算出部は、閾値算出部によって算出された画素値が画素値算出部によって算出された閾値以上になる領域をドット形成領域として算出するので、ディザ処理対象画像をなす各画素が存在しない当該各画素間においても、当該ディザマトリクスを用いてドットを形成するかしないかを決定することができる。
【0010】
これにより、例えば256階調からなる高階調のデータを減色せずにディザマトリクスによるフィルタ処理にかけて出力表現に変換できるので、当該高階調のデータが有する高品質での画像形成に貢献する情報を存分に活用可能となる。
【0011】
また、この際、主走査方向又は副走査方向から選択された一方の方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値の数と、当該選択された方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素の数は、一致していなくても、ディザマトリクスでのフィルタリングと同等の効果を得ることができるので、主走査又は副走査方向のいずれか一方においては、スクリーンのサイズは画素の整数倍に制約されない。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置であって、前記閾値算出部、前記画素値算出部及び前記ドット形成領域算出部は、前記一連の処理を、前記選択された方向とは異なる他方の方向に並ぶ前記ディザ処理対象画像をなす各画素値の数だけ行うものである。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像処理プログラムであって、前記閾値算出部、前記画素値算出部及び前記ドット形成領域算出部は、前記一連の処理を、前記選択された方向とは異なる他方の方向に並ぶ前記ディザ処理対象画像をなす各画素値の数だけ行うものとして更に機能するように、コンピュータを動作させる請求項4に記載の画像処理プログラムものである。
【0014】
これらの発明によれば、閾値算出部、画素値算出部及びドット形成領域算出部が、上記一連の処理を、前記選択された方向とは異なる他方の方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素値の数だけ行うので、ディザ処理対象画像をなす全ての画素に対して、上記閾値算出部、前記画素値算出部及び前記ドット形成領域算出部による前記一連の処理が可能である。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、電子写真方式による画像形成を行う画像形成機構と、
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置と、
前記画像形成機構の一部として、感光体に対して露光を行う露光部と、
前記画像形成機構の一部として、前記露光部を制御する露光制御部とを備え、
前記露光制御部は、前記ドット形成領域算出部によって算出されたドット形成領域において前記露光部に露光を行わせる画像形成装置である。
【0016】
この発明によれば、露光制御部は、ドット形成領域算出部によって算出されたドット形成領域において、露光部に、感光体に対して主走査方向に沿ってレーザ光を発光して露光を行わせるので、例えば、露光部が感光体に対して主走査方向に沿ってレーザ光を発光して露光を行うレーザ方式の露光を行う場合には、上記ドット形成領域算出部によって算出されたドット形成領域に基づいて、ディザ処理対象画像をなす各画素位置に拘わらず、当該主走査方向において連続してドット形成させるための露光を行うことが可能である。また、露光部が感光体に対して副走査方向に沿って発光の連続性を有して露光を行うLED(Light Emitting Diode)方式の露光を行う場合には、上記ドット形成領域算出部によって算出されたドット形成領域に基づいて、ディザ処理対象画像をなす各画素位置に拘わらず、当該副走査方向において連続してドット形成させるための露光を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高階調のデータを減色せずに出力表現に変換可能としてより高品質な画像形成が可能となり、その際に主走査又は副走査方向のいずれか一方においては、スクリーンのサイズは画素の整数倍に制約されないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一例として、プリンタ機能を備えた複合機について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置を備えた複合機1の内部構成例を概略的に示す断面図である。複合機1は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能等の機能を兼ね備えたものである。この複合機1は、本体部2と、本体部2の左方に配設されたスタックトレイ3と、本体部2の上部に配設された原稿読取部5と、原稿読取部5の上方に配設された原稿給送部6とを有している。
【0019】
また、複合機1のフロント部には、操作部47が設けられている。この操作部47には、ユーザが印刷実行指示を入力するためのスタートキー471と、印刷部数等を入力するためのテンキー472と、各種複写動作の操作ガイド情報等を表示し、これら各種設定入力用にタッチパネル機能を有する液晶ディスプレイ等からなる表示部473と、表示部473で設定された設定内容等をリセットするリセットキー474と、実行中の印刷(画像形成)動作を停止させるためのストップキー475と、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能を切り換えるための機能切換キー477が備えられている。
【0020】
原稿読取部5は、CCD(Charge Coupled Device)センサ及び露光ランプ等からなるスキャナ部51と、ガラス等の透明部材により構成された原稿台52及び原稿読取スリット53とを備える。スキャナ部51は、図略の駆動部によって移動可能に構成され、原稿台52に載置された原稿を読み取るときは、原稿台52に対向する位置で原稿面に沿って移動され、原稿画像を走査しつつ取得した画像データを制御部10(図2)へ出力する。また、原稿給送部6により給送された原稿を読み取るときは、原稿読取スリット53と対向する位置に移動され、原稿読取スリット53を介して原稿給送部6による原稿の搬送動作と同期して原稿の画像を取得し、その画像データを制御部10へ出力する。
【0021】
原稿給送部6は、原稿を載置するための原稿載置部61と、画像読み取り済みの原稿を排出するための原稿排出部62と、原稿載置部61に載置された原稿を1枚ずつ繰り出して原稿読取スリット53に対向する位置へ搬送し、原稿排出部62へ排出するための給紙ローラ(図略)、搬送ローラ(図略)等からなる原稿搬送機構63を備える。原稿搬送機構63は、さらに原稿を表裏反転させて原稿読取スリット53と対向する位置へ再搬送する用紙反転機構(図略)を備え、原稿の両面の画像を、原稿読取スリット53を介してスキャナ部51から読取可能にしている。
【0022】
また、原稿給送部6は、その前面側が上方に移動可能となるように本体部2に対して回動自在に設けられている。原稿給送部6の前面側を上方に移動させて原稿台52上面を開放することにより、原稿台52の上面に読み取り原稿、例えば見開き状態にされた書籍等を操作者が載置できるようになっている。
【0023】
本体部2は、複数の給紙カセット461と、給紙カセット461から記録紙を1枚ずつ繰り出して記録部40へ搬送する給紙ローラ462と、給紙カセット461から搬送されてきた記録紙に画像を形成する記録部40とを備える。
【0024】
記録部40は、感光体ドラム43の表面から残留電荷を除電する除電装置421と、除電後の感光体ドラム43の表面を帯電させる帯電装置422と、スキャナ部51で取得された画像データに基づいてレーザ光を出力して感光体ドラム43表面を露光し、当該感光体ドラム43の表面に静電潜像を形成する露光部423と、上記静電潜像に基づいて感光体ドラム43上に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色のトナー像を形成する現像装置44K,44Y,44M,44Cと、感光体ドラム43に形成された各色のトナー画像が転写されて重ね合わせされる転写ドラム49と、転写ドラム49上のトナー像を用紙に転写させる転写装置41と、トナー像が転写された用紙を加熱してトナー像を用紙に定着させる定着装置45とを備えている。なお、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色に対するトナーの供給は、図略のトナー供給容器(トナーカートリッジ)から行われる。また、記録部40を通過した記録紙をスタックトレイ3又は排出トレイ48まで搬送する搬送ローラ463,464等が設けられている。
【0025】
記録紙の両面に画像を形成する場合は、記録部40で記録紙の一方の面に画像を形成した後、この記録紙を排出トレイ48側の搬送ローラ463にニップされた状態とする。この状態で搬送ローラ463を反転させて記録紙をスイッチバックさせ、記録紙を用紙搬送路Lに送って記録部40の上流域に再度搬送し、記録部40により他方の面に画像を形成した後、記録紙をスタックトレイ3又は排出トレイ48に排出する。
【0026】
図2は、図1に示す複合機1の概略構成を示す機能ブロック図である。複合機1は、装置全体の動作制御を司る制御部10を備えており、この制御部10は、スキャナ部51等からなる原稿読取部5、原稿搬送機構63等からなる原稿給送部6、現像装置44等からなる記録部40、スタートキー471、テンキー472等の操作キーや表示部473等からなる操作部47、画像メモリ7、HDD8、ネットワークI/F部9及び画像処理部11が接続されている。
【0027】
画像メモリ7は、原稿読取部5によって読み取られた原稿(例えば網点原稿)の画像データ、あるいは、後述するネットワークI/F部9を介して図略の外部装置から送信されてきた画像データを一時的に記憶するメモリである。
【0028】
HDD(Hard Disk Drive)8は、原稿読取部5によって読み取られた原稿画像の画像データ及び外部装置から送信されてきた画像データ並びに当該画像データに設定されている出力形式等が記憶される記憶装置である。
【0029】
ネットワークI/F部9は、ネットワークインタフェース(例えば10/100Base-TX)等を用い、LANなどのネットワークを介して接続された外部装置との間における種々のデータの送受信を行うものである。
【0030】
画像処理部11は、原稿読取部5による原稿の読み取りによって得られた原稿画像(画像データ)に対する各種画像処理を行うものである。画像処理部11による画像処理として、ディザ法による画像処理がある。画像処理部11は、当該ディザ法での画像処理を行う場合、機能的に見て、閾値算出部111と、画素値算出部112と、ドット形成領域算出部113として機能する。
【0031】
閾値算出部111は、主走査方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値に基づいて、隣り合う閾値同士の一方の閾値から他方の閾値に到るまでの変化量に応じて、当該閾値同士の間における各位置での閾値を算出する。画像処理部11は、予め定められたN×Nの閾値からなるディザマトリクス(例えばBuyer型等)を記憶している。
【0032】
画素値算出部112は、上記主走査方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素値に基づいて、隣り合う画素同士の一方の画素値から他方の画素値に到るまでの変化量に応じて、当該画素同士の間における各位置での画素値を算出する。
【0033】
ドット形成領域算出部113は、上記画素値算出部112で算出された画素値が、上記閾値算出部111で算出された閾値以上になる位置で示される領域をドット形成領域として算出する。
【0034】
閾値算出部111、画素値算出部112及びドット形成領域算出部113は、上記一連の処理を、副走査方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素値の数だけ行う。
【0035】
制御部10は、複合機1の制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、一時的にデータを保管するRAM(Random Access Memory)、及び制御プログラム等を上記ROMから読み出して実行するマイクロ情報処理装置等からなり、操作部47において入力された指示情報や、本装置の各所に設けられた各種センサからの検出信号に応じて装置全体の制御を行う処理を実行する。
【0036】
なお、本発明の一実施形態に係る画像処理プログラムがHDD8に記憶されており、画像処理部11は、当該画像処理プログラムに従って動作することで、閾値算出部111と、画素値算出部112と、ドット形成領域算出部113として機能する。また、閾値算出部111、画素値算出部112、及びドット形成領域算出部113は、これら各部と同様の機能を発揮する個別の回路等で構成されていてもよいし、また、制御部10が、HDD8等に記憶されている上記画像処理プログラムに従って、上記閾値算出部111、画素値算出部112、及びドット形成領域算出部113と同様に機能するものとしてもよい。
【0037】
また、制御部10は、露光部423を制御する露光制御部として機能し、当該露光制御部は、上記ドット形成領域算出部によって算出されたドット形成領域において露光部423に露光を行わせる。
【0038】
図3(a)は、露光部423内に設けられているレーザ走査ユニットの機械的構成を概略的に示す図である。
【0039】
レーザ走査ユニット200は、レーザ光源の一例である半導体レーザ201と、コリメータレンズ202と、絞り203と、回転多面鏡204と、f−θレンズ205とを有している。レーザ走査ユニット200は、上記露光制御部による動作制御で、以下のように動作する。
【0040】
半導体レーザ201は、その内部にレーザダイオード(LD)が設けられている。半導体レーザ201から発せられたレーザ光は、コリメータレンズ202及び絞り203によって平行光とされ、この平行光が所定のビーム径で回転多面鏡204に入射するようになっている。回転多面鏡204は、矢印a方向に等速度で回転する。この回転多面鏡204の回転によって、入射光が連続的に角度を変える偏向ビームとなって反射される。偏向ビームとなったレーザ光は、f−θレンズ205によって集光されるが、f−θレンズ205は走査の時間的な直線性を保つように補正を行うため、上記偏向ビームは像担持体である感光体ドラム49上に矢印b方向(主走査方向)に等速で走査される。図3(b)に示すように、露光制御部は、半導体レーザ201に、主走査方向に延びる1走査ラインの露光が終了すると、次の1走査ラインの露光を行わせる。すなわち、半導体レーザ201から発せられたレーザ光により、感光体ドラム49上において主走査方向に連続性をもって露光が行われる。
【0041】
また、回転多面鏡204によって反射される偏向ビームは、f−θレンズ205を介して、BDセンサ206にも入射される。このBDセンサ206は、回転多面鏡204からの反射光を検出するセンサであり、BDセンサ206の検出信号は、回転多面鏡204の回転と、データの書き出しとの同期を取るための同期信号として用いられる。
【0042】
次に、画像処理部11によるディザ法での画像処理について説明する。図4はディザ処理対象画像をなす各画素の画素値とディザマトリクスの閾値との比較の概念を示す図、図5は画像処理部11によるディザ法での画像処理のフローチャートである。
【0043】
(ディザ閾値算出処理)
画像処理部11の閾値算出部111は、予め保有しているN×Nの閾値からなるディザマトリックス(例えばBuyer型等)を用いて、主走査方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値に基づいて、隣り合う閾値同士の一方の閾値から他方の閾値に到るまでの変化量に応じて、当該閾値同士の間における各位置での閾値を算出する。当該算出される各位置での閾値の集合は、図4にTC1〜TC3…として示すように、概念的に、ディザマトリクスをなす主走査方向に並ぶ各閾値同士を繋ぐ線分として理解できる。このため、当該算出される各位置での閾値の集合をThreshold curve TC1〜TC3…と称する。
【0044】
すなわち、閾値算出部111は、副走査方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値の数だけ、当該各閾値のそれぞれの副走査方向位置で主走査方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値に基づいて、当該Threshold curveを算出して保有している。そして、閾値算出部111は、画像処理部11により作成されたスクリーンのサイズ(主走査方向の画素数×副走査方向の画素数=Period H×Period V)に基づいて、各副走査方向位置において主走査方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値で形成されるThreshold curveを、当該副走査方向の第1番目の位置から最終位置まで順番に繰り返し用いて、Period Vが示す数だけThreshold curveを用意する。
【0045】
ここで、Period Vは、ディザ処理対象画像をなす画素が副走査方向に並ぶ数の整数倍であるが、Period Hは、ディザ処理対象画像をなす画素が主走査方向に並ぶ数の整数倍に限られない。すなわち、主走査方向におけるスクリーン周期は、整数、非整数のいずれでも構わない。閾値算出部111は、このようにして算出したPeriod Vの数に相当するThreshold curveを画像処理部11内のパラメータプールに保有しておく。
【0046】
(マスク処理)
上記Threshold curveで示される閾値を用いたマスク処理の対象となるスクリーンを、600dpi×600dpi×8bppのラスタ画像として説明する。
【0047】
ステップS1
まず、画像処理部11の画素値算出部112は、マスク処理の対象となる画像データからラスタ順に画素値を読み出し、当該時点の画素値d及び当該画素の座標(主走査方向位置x,副走査方向位置y)を記憶する。画像処理部11は、この時点の画素値d及び当該画素の座標(x,y)を、ラスタ順で次の画素値を読み出した時点でもなお保有しておく。すなわち、画素値算出部112は、当該時点の画素値d及び当該画素の座標(x,y)と、1画素前の画素の画素値d’及び当該画素値の座標(主走査方向位置x’,副走査方向位置y’)とを保有している。
【0048】
ステップS2
また、画素値算出部112は、内蔵する主走査方向位置カウンタに当該時点の画素の座標xを入力し、副走査方向位置カウンタに当該時点の画素の座標yを入力する。これにより、当該時点ではいずれの画素に対しての処理を行っているかが管理される。
【0049】
ステップS3
さらに、画素値算出部112は、副走査方向位置カウンタが示す副走査座標V(座標y)を、period Vを用いて剰余計算することで、Position Vを算出する(すなわち、PositionV = 副走査座標V (mod PeriodV))。このPosition Vは、閾値算出部111が保有している複数のThreshold curveのいずれを、当該時点の画素に対する処理に用いるかを示すものである。
【0050】
ステップS4
また、画素値算出部112は、主走査方向位置カウンタが示す主走査座標H(座標x)を、period Hを用いて剰余計算することで、Position Hを算出する。このPosition Hは、上記Position Vで示されるThreshold curveにおける特異点(後述)を決定するために用いられる。
【0051】
ステップS5
続いて、画素値算出部112は、上記パラメータプールからPosition Vに対応するThreshold curveを読み出し(パラメータプールに記憶されているThreshold curveには、副走査方向に並ぶ順にPositionVとして算出され得る値に対応する0〜PeriodV-1の番号が付与されている)、当該読み出したThreshold curveにおける上記Position Hが示す主走査方向位置を特異点とし、当該特異点における閾値を特定する。画素値算出部112は、この時点の当該特異点(Position H,Position V)及び当該特異点における閾値を、ラスタ順で次の画素の処理時にもなお保有しておく。すなわち、画素値算出部112は、当該時点の特異点(Position H,Position V)及び当該特異点における閾値と、1画素前の画素の処理時における特異点(Position H’,Position V’)及び当該特異点における閾値とを保有している。
【0052】
ステップS6
この後、画素値算出部112は、当該時点で処理対象とされている画素値d及び当該画素の座標(x,y)と、1画素前の画素の画素値d’及び当該画素値の座標(x’,y’)とを、内蔵する交点計算器に入力し、さらに、当該時点での上記特異点(Position H,Position V)及び当該特異点における閾値と、1画素前の画素の処理時における特異点(Position H’,Position V’)及び当該特異点における閾値とを交点計算器に入力する。
【0053】
交点計算器は、上記入力された座標(x,y)と座標(x’,y’)とで形成される線分Iと、さらに、当該時点での上記特異点(Position H,Position V)と(特異点Position H’,Position V’)とで形成される線分IIとの交点の座標を算出する。
【0054】
ステップS7
ここで、交点計算器が線分Iと線分IIの交点座標を算出したときは、ドット形成領域算出部113が、座標(x,y)の画素値dが特異点(Position H,Position V)の閾値TH以上であるか否かを判断し、座標(x,y)の画素値dが特異点(Position H,Position V)の閾値TH以上である場合は、当該交点座標位置を露光部423の半導体レーザ201を点灯開始させる位置に設定する。また、ドット形成領域算出部113は、座標(x,y)の画素値dが特異点(Position H,Position V)の閾値THを下回る場合は、当該交点座標位置を露光部423の半導体レーザ201の点灯を停止させる位置に設定する。すなわち、ドット形成領域算出部113は、交点計算器が線分Iと線分IIの交点座標を算出したときは、該交点から延びる線分Iが線分IIよりも+(正)の傾き(例えば、図4に示すA部分)を持った部分に存在するのであれば、当該交点以降は点灯させる方向、該交点から延びる線分Iが線分IIよりも−(負)の傾き(図4に示すB部分)を持った部分に存在するのであれば当該交点以降は消灯させる方向とする。
【0055】
すなわち、閾算出部111による主走査方向及び副走査方向から選択された一方の方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値同士の間における各位置での閾値の算出は、上記交点計算器によって計算される線分IIの概念を用いて行われ、画素値算出部112による当該選択された方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素同士の間における各位置での画素値の算出は、上記交点計算器によって計算される線分Iの概念を用いて行われ、ドット形成領域算出部113によるドット形成領域の算出は、上記交点計算器によって算出された線分Iと線分IIの交点座標に基づき、該交点から延びる線分Iの線分IIに対する傾きに応じて算出される。画像処理部11(閾値算出部111、画素値算出部112及びドット形成領域算出部113)は、上記各画素に対する処理を、上記ラスタ画像の全ての画素に対して行う。
【0056】
(露光制御)
ドット形成領域算出部113は、上記のようにして設定した半導体レーザ201の点灯開始位置及び点灯停止位置の情報を露光制御部に出力する。露光制御部は、半導体レーザ201を主走査方向に照射させるときに、当該点灯開始位置及び点灯停止位置に従って、例えばPWM制御により半導体レーザ201の点灯開始及び点灯停止の動作を制御する。これにより、例えば、図4に示すように、露光制御部は、当該フィルタ処理対象画像の主走査方向において、当該主走査方向に並ぶ各画素につき、隣り合う画素同士の一方の画素値から他方の画素値に到るまでの変化量に応じて当該画素同士の間における各位置での画素値が上記Threshold curve以上となる領域Rを露光部423に露光させる。
【0057】
なお、交点計算器が線分Iと線分IIの交点座標を算出しないときは、ドット形成領域算出部113は、上記点灯開始位置及び点灯停止位置の情報を露光制御部に出力しない。すなわち、露光制御部は、直前に得た点灯開始位置及び点灯停止位置の情報に従って、そのままの動作を露光部423に継続させる。
【0058】
このようなフィルタ処理により、例えば256階調からなる高階調のデータを減色せずにディザマトリクスによるフィルタ処理にかけて出力表現に変換できるので、当該高階調のデータが有する高品質での画像形成に貢献する情報を存分に活用可能となる。また、この際、主走査方向又は副走査方向から選択された一方の方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値の数と、当該選択された方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素の数は、一致していなくても、ディザマトリクスでのフィルタリングと同等の効果を得ることができるので、主走査又は副走査方向のいずれか一方においては、スクリーンのサイズは画素の整数倍に制約されない。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、複合機1がレーザ走査ユニット200による露光を行う露光部423を備え、画像処理部11の閾値算出部111は、主走査方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値に基づいて上記Threshold curveを算出して、上記フィルタ処理に用いるようにしているが、本発明は当該実施形態に限定されない。例えば、本発明は、複合機1が、図6に示すように、LED(Light Emitting Diode)方式の走査ユニットによる露光を行うレーザ走査ユニット200’を備え、LED光による露光の連続性を副走査方向に有する場合には、画像処理部11の閾値算出部111は、副走査方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値に基づいて上記Threshold curveを算出し、当該Threshold curveを用いて、各主走査方向位置において副走査方向に並ぶディザ処理対象画像の各画素に対して上記フィルタ処理を行うものであってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、本発明に係る画像処理装置の一例として、複合機を示したが、本発明に係る画像処理装置は複合機に限定されるものではなく、画像形成装置や、スキャナ、情報処理装置等、他の装置であってもよい。
【0061】
また、図1乃至図6に、本発明に係る画像処理装置、画像形成装置、及び画像処理プログラムの構成及び処理を示しているが、これらの構成及び処理はあくまでも一例であり、本発明に係る画像処理装置の構成及び処理は上記に限定されるものではない。
【0062】
例えば、上記実施形態では、閾算出部111による主走査方向及び副走査方向から選択された一方の方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値同士の間における各位置での閾値の算出は、上記交点計算器によって計算される線分IIの概念を用いて行われ、画素値算出部112による当該選択された方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素同士の間における各位置での画素値の算出は、上記交点計算器によって計算される線分Iの概念を用いて行われ、ドット形成領域算出部113によるドット形成領域の算出は、上記交点計算器によって算出された線分Iと線分IIの交点座標に基づき、該交点から延びる線分Iの線分IIに対する傾きに応じて算出されるが、閾算出部111、画素値算出部112及びドット形成領域算出部113による各算出は、他の算出方法によって行われるものであってもよく、上述した実施形態に限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置を備えた複合機の内部構成例を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示す複合機の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】(a)(b)は露光部内に設けられているレーザ走査ユニットの機械的構成を概略的に示す図である。
【図4】はディザ処理対象画像をなす各画素の画素値とディザマトリクスの閾値との比較の概念を示す図である。
【図5】画像処理部によるディザ法での画像処理のフローチャートである。
【図6】露光部内に設けられているレーザ走査ユニットの機械的構成の他の例を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 複合機
10 制御部
11 画像処理部
111 閾値算出部
112 画素値算出部
113 ドット形成領域算出部
200 レーザ走査ユニット
201 半導体レーザ
202 コリメータレンズ
204 回転多面鏡
205 f−θレンズ
206 BDセンサ
423 露光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向及び副走査方向から選択された一方の方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値に基づいて、隣り合う閾値同士の一方の閾値から他方の閾値に到るまでの変化量に応じて当該閾値同士の間における各位置での閾値を算出する閾値算出部と、
前記選択された方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素値に基づいて、隣り合う画素同士の一方の画素値から他方の画素値に到るまでの変化量に応じて当該画素同士の間における各位置での画素値を算出する画素値算出部と、
前記算出された画素値が前記算出された閾値以上になる位置で示される領域をドット形成領域として算出するドット形成領域算出部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記閾値算出部、前記画素値算出部及び前記ドット形成領域算出部は、前記一連の処理を、前記選択された方向とは異なる他方の方向に並ぶ前記ディザ処理対象画像をなす各画素値の数だけ行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
電子写真方式による画像形成を行う画像形成機構と、
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置と、
前記画像形成機構の一部として、感光体に対して露光を行う露光部と、
前記画像形成機構の一部として、前記露光部を制御する露光制御部とを備え、
前記露光制御部は、前記ドット形成領域算出部によって算出されたドット形成領域において前記露光部に露光を行わせる画像形成装置。
【請求項4】
主走査方向及び副走査方向から選択された一方の方向に並ぶディザマトリクスをなす各閾値に基づいて、隣り合う閾値同士の一方の閾値から他方の閾値に到るまでの変化量に応じて当該閾値同士の間における各位置での閾値を算出する閾値算出部と、
前記選択された方向に並ぶディザ処理対象画像をなす各画素値に基づいて、隣り合う画素同士の一方の画素値から他方の画素値に到るまでの変化量に応じて当該画素同士の間における各位置での画素値を算出する画素値算出部と、
前記算出された画素値が前記算出された閾値以上になる領域をドット形成領域として算出するドット形成領域算出部と
して機能するように、コンピュータを動作させる画像処理プログラム。
【請求項5】
前記閾値算出部、前記画素値算出部及び前記ドット形成領域算出部が、前記一連の処理を、前記選択された方向とは異なる他方の方向に並ぶ前記ディザ処理対象画像をなす各画素値の数だけ行うものとして更に機能するように、コンピュータを動作させる請求項4に記載の画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−28548(P2010−28548A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188805(P2008−188805)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】