説明

画像処理装置、画像表示システム、及び、画像処理方法

【課題】空間方向の平滑化と時間方向の平滑化との双方のノイズの低減効果を有効に得る。
【解決手段】画像表示システムにおいては、画像を空間方向に平滑化する空間ノイズ低減部4と、画像を時間方向に平滑化する時間ノイズ低減部5とが直列に接続される。したがって、同一の画像に対して空間方向の平滑化と時間方向の平滑化とが重ねて実行される。このため、空間方向の平滑化によるノイズの低減効果と、時間方向の平滑化によるノイズの低減効果との双方を有効に得ることができ、画像中のノイズを大きく低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を平滑化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像処理装置においては、画像中のノイズを低減するために画像を平滑化するフィルタが用いられている。このようなフィルタとして、空間フィルタと時間フィルタとが知られている。一般的には、画像処理装置の処理目的に応じていずれかのフィルタが採用される。
【0003】
空間フィルタは、同一の画像(フレーム)内の画素を利用して、画像を空間方向に平滑化するものである。空間フィルタは、比較的低コストに画像中のノイズを大きく低減することができる。ただし、空間フィルタは、ノイズとともに画像中のエッジ成分を低減する作用がある。このため、空間フィルタによるノイズの低減効果を高めようとすると、画像中のエッジ成分が大きく損なわれ、メリハリの無い画像となる。
【0004】
一方、時間フィルタは、時間的に連続する画像(フレーム)を利用して、画像を時間方向に平滑化するものである。時間フィルタは、画像中のエッジ成分を大きく損なうことなく、画像中のノイズを低減することができる。ただし、時間フィルタによるノイズの低減効果を高めようとすると、多くのフレームが必要となる。このため、使用するフレーム数に応じた映像遅延が生じるとともに、使用するフレーム数に応じた数のフレームメモリが必要となりコストが高くなる。
【0005】
このように空間フィルタと時間フィルタとは処理特性が異なっている。このため、これらフィルタの双方の特性のノイズの低減効果を得られるように、空間フィルタと時間フィルタとを並列に接続し、それぞれの出力結果を所定の割合で混合する技術も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−124321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、空間フィルタの出力結果と時間フィルタの出力結果とを混合した場合はそれぞれのノイズの低減効果を最大には得ることはできないため、全体としてノイズの低減効果が損なわれることになる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、空間方向の平滑化と時間方向の平滑化との双方のノイズの低減効果を有効に得ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、時間的に連続する複数の画像を処理する画像処理装置であって、前記画像を空間方向に平滑化する第1平滑化手段と、前記画像を時間方向に平滑化する第2平滑化手段と、を備え、前記第1平滑化手段と前記第2平滑化手段とは直列に接続される。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記第2平滑化手段は、前記第1平滑化手段の後段に接続される。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の画像処理装置において、平滑化前の前記画像のエッジ成分である第1エッジ成分を抽出する第1抽出手段と、前記第1エッジ成分を用いて、前記第1及び前記第2平滑化手段の双方により平滑化された前記画像である平滑化画像にエッジ成分を付加する付加手段と、を備えている。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の画像処理装置において、前記平滑化画像のエッジ成分である第2エッジ成分を抽出する第2抽出手段、をさらに備え、前記付加手段は、前記第1エッジ成分と前記第2エッジ成分との乗算結果を用いて、前記平滑化画像にエッジ成分を付加する。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像処理装置において、前記第1及び前記第2平滑化手段の少なくとも一つの平滑化の度合いを調整するパラメータの値を、前記第1及び前記第2平滑化手段の処理の対象となる前記画像の種類に応じて変更する変更手段、をさらに備えている。
【0014】
また、請求項6の発明は、画像表示システムであって、請求項1ないし5のいずれかに記載の画像処理装置と、前記画像処理装置で処理された画像を表示する表示装置と、を備えている。
【0015】
また、請求項7の発明は、時間的に連続する複数の画像を処理する画像処理方法であって、(a)前記画像を空間方向に平滑化する工程と、(b)前記画像を時間方向に平滑化する工程と、を備え、同一の画像に対して前記工程(a)と前記工程(b)とが直列に実行される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1ないし7の発明によれば、同一の画像に対して空間方向の平滑化と時間方向の平滑化とが重ねて実行される。このため、空間方向の平滑化によるノイズの低減効果と、時間方向の平滑化によるノイズの低減効果との双方を有効に得ることができ、画像中のノイズを大きく低減できる。
【0017】
また、特に請求項2の発明によれば、同一の画像に対して空間方向の平滑化がなされた後に、時間方向の平滑化がさらになされる。したがって、空間方向の平滑化でノイズのレベルを小さくしてから時間方向の平滑化がなされるため、時間方向の平滑化によるノイズの低減効果を効果的に得ることができる。
【0018】
また、特に請求項3の発明によれば、平滑化前の画像の第1エッジ成分を用いることで、平滑化画像に適切なエッジ成分を付加することができる。
【0019】
また、特に請求項4の発明によれば、第1エッジ成分と平滑化画像の第2エッジ成分との乗算結果を用いることで、平滑化画像にノイズの少ないエッジ成分を付加することができる。
【0020】
また、特に請求項5の発明によれば、画像の種類に応じて平滑化の度合いを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、画像表示システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、ノイズの低減に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図3】図3は、空間ノイズ低減部の詳細な構成を示す図である。
【図4】図4は、係数マトリクスの例を示す図である。
【図5】図5は、係数マトリクスの例を示す図である。
【図6】図6は、係数マトリクスの例を示す図である。
【図7】図7は、時間ノイズ低減部の詳細な構成を示す図である。
【図8】図8は、エッジ復元部の詳細な構成を示す図である。
【図9】図9は、係数マトリクスの例を示す図である。
【図10】図10は、係数マトリクスの例を示す図である。
【図11】図11は、係数マトリクスの例を示す図である。
【図12】図12は、画像の波形が変化する様子を示す図である。
【図13】図13は、画像処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
<1.全体構成>
図1は、本実施の形態の画像表示システム1の構成を示すブロック図である。画像表示システム1は、例えば、自動車などの車両で用いられ、各種の画像を表示可能なナビゲーションシステムである。画像表示システム1は、表示対象となる画像を処理し、処理した画像を車室内に設けられる表示装置12に表示する。
【0024】
画像表示システム1は、互いに表示する画像の種類が異なる複数の動作モードを備えている。この複数の動作モードには、テレビモード、カメラモード、ディスクモード及びナビモードが含まれている。
【0025】
テレビモードは、車両に搭載されるアンテナ91で受信したテレビジョン放送の放送内容を示す画像を表示する動作モードである。カメラモードは、車両に搭載される車載カメラ92で撮影された車両の周辺を示す画像を表示する動作モードである。ディスクモードは、DVDなどの映像ディスク93の記録内容を示す画像を表示する動作モードである。また、ナビモードは、ルート案内用の地図画像などナビゲーション機能に必要な画像を表示する動作モードである。
【0026】
図1に示すように、画像表示システム1は、システム全体を制御するシステム制御部10と、ユーザが操作する操作部11とを備えている。システム制御部10は、例えば、CPU、RAM及びROMなどを備えたマイクロコンピュータである。システム制御部10のCPUが所定のプログラムに従って演算処理を行うことで、システム全体を制御するための各種の制御機能が実現される。
【0027】
システム制御部10は、操作部11からのユーザの操作の内容を示す信号に応じて画像表示システム1の動作を制御する。これにより、画像表示システム1はユーザの操作に応じた動作を行う。画像表示システム1の動作モードは、ユーザの操作に基づいてシステム制御部10によって切り替えられる。
【0028】
また、画像表示システム1は、各種の画像を表示する表示装置12と、表示装置12の表示に係る制御を行う表示制御装置3と、表示装置12に表示するための画像を提供する映像提供部2とを備えている。これら映像提供部2、表示制御装置3、及び、表示装置12の動作は、システム制御部10によって統括的に制御される。
【0029】
映像提供部2は、表示装置12に表示すべき様々な映像ソースの映像信号を出力する。映像提供部2は、放送受信部21、カメラ処理部22、ディスク読取部23、及び、ナビゲーション部24を備えている。これらの映像提供部2の各部21,22,23,24は、所定の周期(例えば、1/30秒)で画像(フレーム)を含む映像信号を出力する。したがって、この映像信号には、時間的に連続して複数の画像(フレーム)が含まれている。
【0030】
放送受信部21は、テレビモードにおいて、アンテナ91で受信したテレビジョン放送の放送信号をデコードし、その放送内容を示す画像を取得して表示制御装置3に入力する。カメラ処理部22は、カメラモードにおいて、車載カメラ92で撮影された車両の周辺を示す画像を取得して表示制御装置3に入力する。ディスク読取部23は、ディスクモードにおいて、映像ディスク93を読み取り、映像ディスク93の記録内容を示す画像を取得して表示制御装置3に入力する。また、ナビゲーション部24は、ナビゲーション機能を提供する電子基板であり、ナビモードにおいて、ナビゲーション機能に必要な画像を表示制御装置3に入力する。表示制御装置3は、このようにして入力された画像を対象に処理を行う。したがって、表示制御装置3が処理の対象とする画像の種類は、動作モードに応じて異なることになる。
【0031】
カメラ処理部22は、車載カメラ92で撮影された画像の平均的な輝度をおよそ一定値まで増幅するゲイン処理を行う。このようなゲイン処理において、画像中のノイズが増幅される。特に夜間に取得された画像など輝度が比較的低い画像の場合は、このような画像中のノイズが大きく増幅される。このため、カメラモードにおいて処理の対象とする画像(車載カメラ92で取得された画像)は、他の動作モードにおいて処理の対象とする画像と比較してノイズが多く含まれている。
【0032】
表示装置12は、例えば、画像を表示する画面となる液晶パネルと、その液晶パネルを照明するバックライトとを備えた液晶ディスプレイである。液晶パネルがユーザ(車両の乗員)から視認できるように、表示装置12は車両のインストルメントパネルなどに設置される。表示装置12は、表示制御装置3から時間的に連続して出力される画像を表示する。
【0033】
表示制御装置3は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア回路であり、表示装置12の表示に係る制御を行う。表示制御装置3は、画像取得部31、画像処理装置32、及び、画像出力部33を備えている。
【0034】
画像取得部31は、画像を含む映像信号を映像提供部2から取得する。画像取得部31は、システム制御部10からの動作モードを示す信号に基づいてスイッチングを行い、映像提供部2の各部21,22,23,24から入力される映像信号のうち、その時点の動作モードに応じた一つの映像信号を取得する。そして、画像取得部31は、取得した映像信号を画像処理装置32に提供する。
【0035】
画像処理装置32は、画像取得部31から入力された映像信号に時間的に連続して含まれる複数の画像(フレーム)のそれぞれを対象に、各種の画像処理を行う。この画像処理の一つとして、画像を平滑化して画像中のノイズを低減する処理が含まれている。
【0036】
画像出力部33は、画像処理装置32で処理された画像を、表示装置12に出力して表示させる。これにより、画像処理装置32でノイズが低減された画像が表示装置12に表示される。
【0037】
<2.画像処理装置>
次に、画像処理装置32についてさらに詳細に説明する。図2は、ノイズの低減に係る画像処理装置32の構成を示す図である。
【0038】
図2に示すように、画像処理装置32は、空間ノイズ低減部4、時間ノイズ低減部5、エッジ復元部6、及び、パラメータ設定部7を備えている。空間ノイズ低減部4、時間ノイズ低減部5、及び、エッジ復元部6は、処理の対象となる画像に対して所定の画像処理を行う処理部である。
【0039】
一方、パラメータ設定部7は、画像処理の効果の度合いを調整するためのパラメータの値を設定し、設定した値を処理部4〜6に与える。パラメータ設定部7は、システム制御部10からの動作モードを示す信号に基づいて、その時点の動作モードに応じた値をパラメータに設定する。これにより、パラメータ設定部7は、処理の対象となる画像の種類に応じてパラメータの値を変更する。
【0040】
空間ノイズ低減部4、時間ノイズ低減部5、及び、エッジ復元部6は直列に接続されている。したがって、同一の画像に対して、空間ノイズ低減部4、時間ノイズ低減部5、及び、エッジ復元部6のそれぞれの処理が、直列に(換言すれば、時系列で順次に)実行される。空間ノイズ低減部4及び時間ノイズ低減部5は、画像を平滑化することにより、画像中のノイズを低減する。これに対して、エッジ復元部6は、平滑化によって損なわれた画像中のエッジ成分を復元する。
【0041】
空間ノイズ低減部4は、同一の画像(フレーム)内の画素を利用して、画像を空間方向に平滑化することで、画像中のノイズを低減する。空間ノイズ低減部4は、画像取得部31から入力された平滑化前の画像である入力画像Paを対象に、空間方向への平滑化を行って第1平滑化画像Pcを生成する。また、空間ノイズ低減部4は、入力画像Paのエッジ成分を抽出し、第1エッジ成分E1として出力する。
【0042】
時間ノイズ低減部5は、時間的に連続する画像(フレーム)を利用して、画像を時間方向に平滑化することで、画像中のノイズを低減する。すなわち、時間ノイズ低減部5は、その時点で処理の対象とする現フレームの情報と、現フレームより過去のフレームの情報とを利用することで、画像(現フレーム)を平滑化する。時間ノイズ低減部5は、空間ノイズ低減部4の後段に接続され、空間ノイズ低減部4から出力される第1平滑化画像Pcを対象に時間方向への平滑化を行って第2平滑化画像Pdを生成する。
【0043】
また、エッジ復元部6は、入力画像Paから抽出された第1エッジ成分E1を利用して、平滑化後の画像に対してエッジ成分を付加する。エッジ復元部6は、時間ノイズ低減部5の後段に接続され、空間ノイズ低減部4及び時間ノイズ低減部5の双方により平滑化された結果となる第2平滑化画像Pdを対象にエッジ成分の付加を行って、出力画像Pfを生成する。
【0044】
画像処理装置32では、これらの処理部4〜6の処理により、ノイズが大きく低減され、かつ、エッジ成分が損なわれていない画像を出力画像Pfとして生成することができる。本実施の形態では、処理部4〜6が処理の対象とする画素の値は、3つの色成分値(例えば、YUV)のうちの輝度(Y)のみとされる。なお、処理部4〜6が、3つの色成分値のそれぞれを処理の対象としてもよい。以下、これらの処理部4〜6のそれぞれについて詳細に説明する。
【0045】
<2−1.空間ノイズ低減部>
まず、空間ノイズ低減部4について説明する。空間ノイズ低減部4は、入力画像Paを空間方向に平滑化する。図3は、空間ノイズ低減部4の詳細な構成を示す図である。空間ノイズ低減部4は、空間フィルタ41とエッジ抽出部42とを備えている。これら空間フィルタ41及びエッジ抽出部42は、入力画像Pa中に含まれる各画素ごとに処理を行う。以下、その時点で処理の対象となっている画素を「注目画素」という。
【0046】
空間フィルタ41は、入力画像Paを空間方向に平滑化するものであり、フィルタ処理部43とブレンド部44とを備えている。
【0047】
フィルタ処理部43は、画像中の各画素の値を、当該画素を中心とした矩形領域内の画素の値を加重平均した結果とするものである。フィルタ処理部43は、このような演算により、入力画像Paの全体をぼかした、ぼかし画像Pbを生成する。ぼかし画像Pbでは、入力画像Paと比較して、ノイズが少なくなっている一方で、エッジ成分が損なわれている。
【0048】
フィルタ処理部43は、横5×縦5の重み係数を含む係数マトリクスを用いて、各画素の新たな値(ぼかし画像Pbにおける値)を演算する。フィルタ処理部43は、まず、入力画像Pa中における注目画素を中心とした横5×縦5の矩形領域を選択する。次に、フィルタ処理部43は、選択した矩形領域と係数マトリクスとが重なった位置で画素の値と重み係数とを乗算する。そして、フィルタ処理部43は、それらの乗算結果の合計値を「256」で除算した値を、ぼかし画像Pbの注目画素の値とする。
【0049】
図4ないし図6は、フィルタ処理部43で用いられる係数マトリクスM1〜M3の例を示す図である。図4に示す係数マトリクスM1を用いた場合は、注目画素を中心とした横3×縦3の領域のみが演算に用いられるため、平滑化の効果(ぼかし強さ)は比較的弱くなる。これに対して、図5,図6に示す係数マトリクスM2,M3を用いた場合は、注目画素を中心とした横5×縦5の領域が演算に用いられるため、平滑化の効果は比較的強くなる。そして、図6に示す係数マトリクスM3は図5に示す係数マトリクスM2と比較して周辺の画素に関する重み係数が大きいため、図6に示す係数マトリクスM3を用いた場合に平滑化の効果が最も強くなる。
【0050】
フィルタ処理部43が係数マトリクスM1〜M3のいずれを用いるかは、パラメータ設定部7からの信号により決定される。パラメータ設定部7は、係数マトリクスの重み係数の値を動作モードに応じて設定する。これにより、例えば、ノイズが多い画像を処理の対象にするカメラモードにおいては図6に示す係数マトリクスM3が用いられ、他の動作モードにおいては図4に示す係数マトリクスM1が用いられる。
【0051】
図3に戻り、ブレンド部44は、平滑化前の入力画像Paとフィルタ処理部43で得られたぼかし画像Pbとを混合して、第1平滑化画像Pcを生成する。ブレンド部44は、入力画像Paとぼかし画像Pbとともに係数Waを用いて、各画素ごとに次の式(1)に示す演算を実行する。なお、式(1)では、画像Pa,Pb,Pcの注目画素の値をそれぞれ記号Pa,Pb,Pcで表している。
【0052】
Pc = Pb * Wa + Pa * (1 − Wa) …(1)
式(1)に示す係数Waは、平滑化の度合いを調整するパラメータの一つであるブレンド係数である。このブレンド係数Waを大きくすればするほど、ぼかし画像Pbの混合割合が高くなるため、平滑化の効果(ぼかし強さ)が強くなる。ブレンド係数Waの値は、パラメータ設定部7によって設定される。パラメータ設定部7は、動作モードに応じた値をブレンド係数Waに設定する。例えば、パラメータ設定部7は、ノイズが多い画像を処理の対象にするカメラモードにおいてはブレンド係数Waに「0.75」を設定し、他の動作モードにおいてはブレンド係数Waに「0.25」を設定する。
【0053】
また、エッジ抽出部42は、平滑化前の入力画像Paのエッジ成分である第1エッジ成分E1を抽出する。エッジ抽出部42は、減算器52aを備えており、減算器52aにおいて各画素ごとに次の式(2)に示す演算を実行することにより、第1エッジ成分E1を導出する。すなわち、入力画像Paから第1平滑化画像Pcを減算した結果が、第1エッジ成分E1となる。なお、式(2)では、画像Pa,Pc及び第1エッジ成分E1の注目画素の値をそれぞれ記号Pa,Pc,E1で表している。
【0054】
E1 = Pa − Pc …(2)
<2−2.時間ノイズ低減部>
次に、時間ノイズ低減部5について説明する。時間ノイズ低減部5は、第1平滑化画像Pcを時間方向に平滑化する。図7は、時間ノイズ低減部5の詳細な構成を示す図である。時間ノイズ低減部5は、時間フィルタ51と、縮小処理部52と、フレームメモリ53と、拡大処理部54とを備えている。時間フィルタ51は、第1平滑化画像Pc中に含まれる各画素ごとに処理を行う。
【0055】
時間フィルタ51は、第1平滑化画像Pcを時間方向に平滑化して、第2平滑化画像Pdを生成する。このように画像を時間方向に平滑化することにより、画像中における画素の値の急激な変化が緩和されて画像中のノイズが低減される。時間フィルタ51は、このような時間方向への平滑化のために、過去画像Pnを利用する。この過去画像Pnは、その時点で処理の対象とする第1平滑化画像Pcである現フレームよりも過去のフレームに基づいて得られる画像である。
【0056】
時間フィルタ51は、減算器55と、誤差二乗部56と、加重平均部57とを備えている。減算器55は、各画素ごとに次の式(3)に示す演算を実行する。これにより、第1平滑化画像Pcと過去画像Pnとの差分値Daが各画素ごとに導出される。なお、式(3)では、画像Pc,Pnの注目画素の値をそれぞれ記号Pc,Pnで表している。
【0057】
Da = Pc − Pn …(3)
誤差二乗部56は、次の式(4)に示すように減算器55で導出された差分値Daを二乗して係数Dbを導出する。この係数Dbも、各画素ごとに導出される。係数Dbは、画像中において時間的な変化が大きい部分の画素ほど大きな値となる。
【0058】
Db = Da * Da …(4)
加重平均部57は、第1平滑化画像Pcと過去画像Pnとを加重平均して、第2平滑化画像Pdを生成する。加重平均部57は、第1平滑化画像Pcと過去画像Pnと係数Dbとともに係数Wbを用いて、各画素ごとに次の式(5)に示す演算を実行する。なお、式(5)では、画像Pc,Pn,Pdの注目画素の値を、それぞれ記号Pc,Pn,Pdで表している。
【0059】
Pd = (Pc * Db + Pn * Wb)/(Db + Wb) …(5)
式(5)に示す係数Wbは、平滑化の度合いを調整するパラメータの一つである重み係数である。この重み係数Wbを大きくすればするほど、過去画像Pnの混合割合が高くなるため、平滑化の効果(ぼかし強さ)が強くなる。重み係数Wbの値は、パラメータ設定部7によって設定される。パラメータ設定部7は、動作モードに応じた値を重み係数Wbに設定する。例えば、パラメータ設定部7は、ノイズが多い画像を処理の対象にするカメラモードにおいては重み係数Wbに「300」を設定し、他の動作モードにおいては重み係数Wbに「50」を設定する。
【0060】
また、前述のように係数Dbは、画像中において時間的な変化が大きい部分の画素ほど大きな値となる。したがって、画像中において被写体の像の動きの激しい部分については、他の部分と比較して過去画像Pnの混合割合を低くすることができる。これにより、動きのある被写体の像が、過去画像Pnの影響によって大きくぼけることが防止される。
【0061】
このようにして生成された第2平滑化画像Pdは、時間ノイズ低減部5から出力されるとともに、縮小処理部52にも入力される。
【0062】
縮小処理部52は、第2平滑化画像Pdを縮小して、縮小画像Pmを生成する。縮小処理部52が、画像を縮小する手法としては、二アレストネイバー方式、バイリニア方式及びバイキュービック方式など周知の手法を用いることができる。縮小処理部52で生成された縮小画像Pmは、フレームメモリ53に記憶される。フレームメモリ53は、映像信号の1フレーム分の周期に相当する期間(例えば、1/30秒間)、縮小画像Pmを記憶する。
【0063】
縮小処理部52は、例えば、横800×縦480(WVGA)の第2平滑化画像Pdを縮小して、横400×縦240(WQVGA)の縮小画像Pmを生成する。このように縮小した縮小画像Pmをフレームメモリ53に記憶することで、フレームメモリ53の記憶容量を小さくすることができ、フレームメモリ53のコストを低減できる。
【0064】
拡大処理部54は、フレームメモリ53に記憶された縮小画像Pmを読み出し、読み出した縮小画像Pmを拡大して画像Pnを生成する。縮小処理部52は、例えば、横400×縦240(WQVGA)の縮小画像Pmを拡大して、横800×縦480(WVGA)の画像Pnを生成する。このようにして生成された画像Pnが、時間フィルタ51の処理における過去画像Pnとして利用される。拡大処理部54が、画像を拡大する手法としては、二アレストネイバー方式、バイリニア方式及びバイキュービック方式など周知の手法を用いることができる。
【0065】
<2−3.エッジ復元部>
次に、エッジ復元部6について説明する。エッジ復元部6は、空間ノイズ低減部4及び時間ノイズ低減部5の双方に平滑化された第2平滑化画像Pdにエッジ成分を付加する。図8は、エッジ復元部6の詳細な構成を示す図である。エッジ復元部6は、エッジ強調部61と、エッジ調整部62と、エッジ付加部63とを備えている。これらエッジ強調部61、エッジ調整部62、及び、エッジ付加部63は各画素ごとに処理を行う。
【0066】
エッジ強調部61は、第2平滑化画像Pdのエッジ成分を強調するものであり、フィルタ処理部64とブレンド部65とを備えている。
【0067】
フィルタ処理部64は、第2平滑化画像Pdのエッジ成分である第2エッジ成分E2を抽出する。フィルタ処理部64は、図3のフィルタ処理部43と同様に、横5×縦5の重み係数を含む係数マトリクスを用いて各画素ごとに値を演算する。具体的には、フィルタ処理部64は、注目画素を中心とした横5×縦5の矩形領域と係数マトリクスとが重なった位置で画素の値と重み係数とを乗算し、それらの乗算結果の合計値を「256」で除算した値を導出する。
【0068】
ただし、フィルタ処理部64は、図9ないし図11で示すように、負の重み係数を含む係数マトリクスM4〜M6を用いる。これらの係数マトリクスM4〜M6においては、注目画素の重み係数に「256」が設定され、その周辺の画素の重み係数に負(−)の値が設定されている。したがって、フィルタ処理部64は、この演算により、第2平滑化画像Pdのエッジ成分である第2エッジ成分E2を抽出することができる。
【0069】
図9に示す係数マトリクスM4を用いた場合は、注目画素を中心とした横3×縦3の領域のみが演算に用いられるため、エッジ成分を抽出する効果は比較的弱くなる。これに対して、図10,図11に示す係数マトリクスM5,M6を用いた場合は、注目画素を中心とした横5×縦5の領域が演算に用いられるため、エッジ成分を抽出する効果は比較的強くなる。そして、図11に示す係数マトリクスM6は図10に示す係数マトリクスM5と比較して周辺の画素に関する重み係数の絶対値が大きいため、図11に示す係数マトリクスM6を用いた場合にエッジ成分を抽出する効果が最も強くなる。
【0070】
フィルタ処理部64が係数マトリクスM4〜M6のいずれを用いるかは、パラメータ設定部7からの信号により決定される。パラメータ設定部7は、係数マトリクスの重み係数の値を動作モードに応じて設定する。これにより、例えば、平滑化の効果が相対的に高く設定されるカメラモードにおいては図11に示す係数マトリクスM6が用いられ、他の動作モードにおいては図9に示す係数マトリクスM4が用いられる。
【0071】
図8に戻り、ブレンド部65は、第2平滑化画像Pdとフィルタ処理部64で得られた第2エッジ成分E2とを混合して、エッジ強調画像Peを生成する。ブレンド部65は、第2平滑化画像Pdと第2エッジ成分E2とともに係数Wcを用いて、各画素ごとに次の式(6)に示す演算を実行する。なお、式(6)では、画像Pd,Pe及び第2エッジ成分E2の注目画素の値をそれぞれ記号Pd,Pe,E2で表している。
【0072】
Pe = Pd + E2 * Wc …(6)
式(6)に示す係数Wcは、エッジ成分の強調の度合いを調整するパラメータの一つである強調係数である。この強調係数Wcを大きくすればするほど、第2エッジ成分E2の混合割合が高くなるため、エッジ成分の強調効果が強くなる。強調係数Wcの値は、パラメータ設定部7によって設定される。パラメータ設定部7は、動作モードに応じた値を強調係数Wcに設定する。例えば、パラメータ設定部7は、平滑化の効果が相対的に高く設定されるカメラモードにおいては強調係数Wcに「0.75」を設定し、他の動作モードにおいては強調係数Wcに「0.5」を設定する。
【0073】
このようにしてエッジ強調部61で生成されたエッジ強調画像Peは、エッジ付加部63に入力される。また、この生成過程でフィルタ処理部64で抽出された第2エッジ成分E2は、ブレンド部65とともに、エッジ調整部62にも入力される。
【0074】
エッジ調整部62は、空間ノイズ低減部4で抽出された第1エッジ成分E1と、ブレンド部65で抽出された第2エッジ成分E2とを乗算して、調整エッジ成分E3を導出する。エッジ調整部62は、各画素ごとに、当該画素の条件に応じて次の式(7)〜(9)に示す演算のいずれかを実行することにより、調整エッジ成分E3を導出する。なお、これらの式(7)〜(9)では、エッジ成分E1,E2,E3の注目画素の値をそれぞれ記号E1,E2,E3で表している。
【0075】
E3 = E1 * E2 * Wd …(7)
E3 = −(E1 * E2 * Wd) …(8)
E3 = 0 …(9)
式(7)は(E1>0 かつ E2>0)の条件を満足する場合に実行され、式(8)は(E1<0 かつ E2<0)の条件を満足する場合に実行される。また、式(9)は、いずれの条件も満足しない場合に実行される。したがって、第1エッジ成分E1の注目画素の値と第2エッジ成分E2の注目画素の値とで正負が一致する場合(すなわち、エッジ成分が同一方向に現れる場合)は、これら2つの注目画素の値、及び、係数Wdの乗算結果が調整エッジ成分E3の注目画素の値とされる。一方、第1エッジ成分E1の注目画素の値と第2エッジ成分E2の注目画素の値とで正負が異なる場合(すなわち、エッジ成分が逆方向に現れる場合)は、これらの値は本来のエッジ成分ではなくノイズを示しているとみなされ、調整エッジ成分E3が「0」とされる。このようにして導出された調整エッジ成分E3は、エッジ付加部63に入力される。
【0076】
エッジ付加部63は、エッジ強調部61で生成されたエッジ強調画像Peに、エッジ調整部62で導出された調整エッジ成分E3を付加して、出力画像Pfを生成する。エッジ付加部63は、加算器63aを備えており、加算器63aにおいて各画素ごとに次の式(10)に示す演算を実行することにより、出力画像Pfを生成する。すなわち、エッジ強調画像Peと調整エッジ成分E3とを加算した結果が、出力画像Pfとなる。なお、式(10)では、画像Pe,Pf及び調整エッジ成分E3の注目画素の値をそれぞれ記号Pe,Pf,E3で表している。
【0077】
Pf = Pe + E3 …(10)
上述した式(7)及び式(8)における係数Wdは、エッジ成分の強調の度合いを調整するパラメータの一つである調整係数である。調整係数Wdを大きくすればするほど、調整エッジ成分E3の強度が高くなるため、出力画像Pfにおけるエッジ成分の強調効果が強くなる。調整係数Wdの値は、パラメータ設定部7によって設定される。パラメータ設定部7は、動作モードに応じた値を調整係数Wdに設定する。例えば、パラメータ設定部7は、平滑化の効果が相対的に高く設定されるカメラモードにおいては調整係数Wdに「0.75」を設定し、他の動作モードにおいては調整係数Wdに「0.5」を設定する。
【0078】
このようにして得られた出力画像Pfは、空間方向への平滑化と時間方向への平滑化とが重ねて実行された結果である。したがって、空間方向の平滑化によるノイズの低減効果と時間方向の平滑化によるノイズの低減効果との双方が有効に得られるため、出力画像Pfはノイズが大きく低減された画像とすることができる。また、出力画像Pfは、平滑化前の入力画像Paのエッジ成分である第1エッジ成分E1に基づくエッジ成分が付加されている。したがって、出力画像Pfは、エッジ成分が損なわれておらず、メリハリのある画像とすることができる。
【0079】
<3.画像の波形の遷移>
図12は、処理の対象となる画像のレベル(輝度)を示す波形が、処理部4〜6の処理によって変化する様子を示す図である。図中の波形においては、入力画像Paのエッジ成分が存在していた部分(以下、「エッジ部分」という)を符号Seで示し、入力画像Paのノイズが存在していた部分(以下、「ノイズ部分」という)を符号Snで示している。
【0080】
すなわち、入力画像Paにおいては、エッジ部分Seにおいて比較的先鋭なエッジ成分が存在しているとともに、ノイズ部分Snにおいてエッジ成分よりレベルの小さいノイズが存在している。
【0081】
まず、空間ノイズ低減部4の空間フィルタ41により、入力画像Paが空間方向に平滑化され、第1平滑化画像Pcが生成される。第1平滑化画像Pcでは、ノイズ部分Snにおいてノイズが大きく低減されているが、細かなノイズが残存している。また、第1平滑化画像Pcでは、エッジ部分Seにおいてエッジ成分も低減され、エッジ成分の先鋭さが大きく緩和されている。
【0082】
また、空間ノイズ低減部4のエッジ抽出部42により、入力画像Paから第1平滑化画像Pcが減算されて、第1エッジ成分E1が導出される。第1エッジ成分E1では、エッジ部分Seにおいて入力画像Paのエッジ成分が抽出されているものの、ノイズ部分Snにおいてノイズも同時に抽出される。
【0083】
次に、時間ノイズ低減部5により、第1平滑化画像Pcが時間方向に平滑化され、第2平滑化画像Pdが生成される。第2平滑化画像Pdでは、エッジ部分Seにおいてエッジ成分が多少低減されるものの、ノイズ部分Snに存在していた細かなノイズがほぼ無くなっている。
【0084】
次に、エッジ復元部6のエッジ強調部61により、第2平滑化画像Pdのエッジ成分が強調されて、エッジ強調画像Peが生成される。エッジ強調画像Peでは、先鋭さが緩和された状態のままエッジ成分が強調される。
【0085】
また、エッジ復元部6のフィルタ処理部64により、第2平滑化画像Pdから第2エッジ成分E2が抽出される。第2エッジ成分E2では、エッジ部分Seにおいてエッジ成分が抽出される一方で、ノイズ部分Snにおいてはノイズがあまり抽出されない。
【0086】
そして、エッジ復元部6のエッジ調整部62により、第1エッジ成分E1と第2エッジ成分E2とが乗算されて、調整エッジ成分E3が生成される。調整エッジ成分E3では、第1エッジ成分E1のエッジ成分と第2エッジ成分E2のエッジ成分との乗算により、エッジ部分Seのレベルが大きくなる。一方で、調整エッジ成分E3では、第2エッジ成分E2のノイズが微小であるため、ノイズ部分Snのレベルはほぼ「0」とみなせる。
【0087】
次に、エッジ復元部6のエッジ付加部63により、エッジ強調画像Peに調整エッジ成分E3が加算され、出力画像Pfが生成される。出力画像Pfでは、調整エッジ成分E3の付加により、エッジ部分Seにおいてエッジ成分の先鋭さが復元されている。一方で、出力画像Pfでは、ノイズ部分Snにおけるノイズはほぼ無くなっている。
【0088】
<4.フローチャート>
次に、画像処理装置32の処理の流れについて説明する。図13は、画像処理装置32の処理の流れを示すフローチャートである。
【0089】
まず、パラメータ設定部7が、システム制御部10からの信号に基づいて、その時点の動作モードを判定する(ステップS12)。これにより、パラメータ設定部7は、処理の対象となる画像の種類を判定する。
【0090】
そして、パラメータ設定部7は、動作モードがノイズが多い画像を処理の対象にするカメラモードの場合は(ステップS12にてYes)、パラメータにカメラモードの専用値を設定する(ステップS13)。一方、パラメータ設定部7は、動作モードがカメラモード以外の場合は、パラメータに標準値を設定する(ステップS14)。
【0091】
このようにパラメータ設定部7が値を設定するパラメータには、上述したブレンド係数Wa、重み係数Wb、強調係数Wc、調整係数Wd、フィルタ処理部43が用いる係数マトリクスの重み係数、及び、フィルタ処理部64が用いる係数マトリクスの重み係数などが含まれる。パラメータ設定部7が、各パラメータに設定する値は上述したとおりである。これにより、カメラモードにおいては、他の動作モードと比較して、平滑化の効果が高く設定されるとともに、エッジ成分の強調効果が強く設定される。
【0092】
次に、空間ノイズ低減部4が画像を空間方向に平滑化し(ステップS15)、続いて、時間ノイズ低減部5が画像を時間方向に平滑化し(ステップS16)、さらに、エッジ復元部6が画像にエッジ成分を付加する(ステップS17)。同一の画像に注目すると、これらステップS15,S16,S17の処理が直列に(時系列で順次に)実行される。このようなステップS15,S16,S17の処理は、動作モードが変更されるまで繰り返される(ステップS18にてNo)。
【0093】
また、動作モードが変更されると(ステップS18にてYes)、処理はステップS11に戻る。これにより、パラメータ設定部7が、変更後の動作モードに応じてパラメータの値を変更する。すなわち、パラメータ設定部7は、処理の対象となる画像の種類に応じて、パラメータの値を変更することになる(ステップS11〜S14)。
【0094】
以上のように、画像表示システム1においては、画像を空間方向に平滑化する空間ノイズ低減部4と、画像を時間方向に平滑化する時間ノイズ低減部5とが直列に接続される。したがって、同一の画像に対して空間方向の平滑化と時間方向の平滑化とが重ねて実行される。このため、空間方向の平滑化によるノイズの低減効果と、時間方向の平滑化によるノイズの低減効果との双方を有効に得ることができ、画像中のノイズを大きく低減できる。
【0095】
また、画像表示システム1においては、時間ノイズ低減部5が、空間ノイズ低減部4の後段に接続されている。これにより、同一の画像に対して、空間ノイズ低減部4が空間方向の平滑化を行った後に、時間ノイズ低減部5が時間方向の平滑化を行うことになる。これに対して、空間ノイズ低減部4が、時間ノイズ低減部5の後段に接続されるようにしてもよい。この場合、同一の画像に対して、時間ノイズ低減部5が時間方向の平滑化を行った後に、空間ノイズ低減部4が空間方向の平滑化を行うことになる。ただし、空間方向の平滑化は比較的大きなレベルのノイズの低減に向いており、時間方向の平滑化は比較的小さなレベルのノイズの低減に向いている。したがって、上記の画像表示システム1のように構成することで、空間方向の平滑化でノイズのレベルを小さくしてから、時間方向の平滑化を行うことができるため、時間方向の平滑化によるノイズの低減効果を効果的に得ることができる。
【0096】
また、画像表示システム1においては、エッジ復元部6が、平滑化前の入力画像Paのエッジ成分である第1エッジ成分E1を用いて、空間ノイズ低減部4及び時間ノイズ低減部5の双方により平滑化された画像である第2平滑化画像Pdにエッジ成分を付加する。したがって、平滑化によりエッジ成分が損なわれた第2平滑化画像Pdに、適切なエッジ成分を付加することができる。
【0097】
また、エッジ復元部6は、第1エッジ成分E1と第2平滑化画像Pdのエッジ成分である第2エッジ成分E2との乗算結果を用いて、第2平滑化画像Pdにエッジ成分を付加する。このため、第2平滑化画像Pdにノイズの少ないエッジ成分を付加することができる。
【0098】
また、パラメータ設定部7が、平滑化の度合いを調整するパラメータの値を、空間ノイズ低減部4及び時間ノイズ低減部5の処理の対象となる画像の種類に応じて変更する。このため、画像の種類に応じて平滑化の度合いを調整することができる。
【0099】
<5.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。上記実施の形態及び以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
【0100】
上記実施の形態では、パラメータ設定部7は、カメラモードと他の動作モードとで異なる値をパラメータに設定していたが、動作モードごとの専用値をパラメータに設定するようにしてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態においては、パラメータ設定部7は、空間ノイズ低減部4及び時間ノイズ低減部5の双方のパラメータの値を変更して、平滑化の度合いを調整していた。これに対して、パラメータ設定部7は、空間ノイズ低減部4及び時間ノイズ低減部5のいずれかのみのパラメータの値を変更して、平滑化の度合いを調整するようにしてもよい。また、上記実施の形態においてパラメータ設定部7が値を設定するとしたパラメータの一部については、ユーザが所望の値に設定できるようにしてもよい。
【0102】
また、上記実施の形態では、パラメータ設定部7は、システム制御部10からの信号に基づいて処理の対象となる画像の種類を判定していたが、画像の特徴に基づいて画像の種類を判定してもよい。例えば、画像のヒストグラムに基づいて、画像の種類が、自然風景などの階調(輝度の段階)が相対的に多い多階調画像と、イラストなどの階調が相対的に少ない少階調画像とのいずれであるかを判定できる。多階調画像には車載カメラ92で撮影された画像が含まれ、少階調画像にはルート案内用の地図画像が含まれる。
【0103】
また、上記実施の形態では、時間ノイズ低減部5は、フレームメモリ53を一つのみ有していたが、複数のフレームメモリを有するようにしてもよい。この場合、複数のフレームメモリにそれぞれ記憶される過去のフレームの画像ごとに所定の重み係数を設定すればよい。時間ノイズ低減部5が有するフレームメモリの数を増やすほど、時間方向への平滑化の効果、すなわち、ノイズの低減の効果は大きくなる。
【0104】
また、上記実施の形態では、車両に搭載される画像表示システム1について説明を行ったが、例えば、携帯電話やスマートフォンなど各種の画像を表示する画像表示システムであればどのようなものであっても上記実施の形態で説明した技術を好適に適用可能である。
【0105】
また、上記実施の形態において、ハードウェア回路によって実現されるとした機能のうちの一部は、ソフトウェア的に実現されてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 画像表示システム
4 空間ノイズ低減部
5 時間ノイズ低減部
6 エッジ復元部
7 パラメータ設定部
12 表示装置
32 画像処理装置
53 フレームメモリ
92 車載カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間的に連続する複数の画像を処理する画像処理装置であって、
前記画像を空間方向に平滑化する第1平滑化手段と、
前記画像を時間方向に平滑化する第2平滑化手段と、
を備え、
前記第1平滑化手段と前記第2平滑化手段とは直列に接続されることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記第2平滑化手段は、前記第1平滑化手段の後段に接続されることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置において、
平滑化前の前記画像のエッジ成分である第1エッジ成分を抽出する第1抽出手段と、
前記第1エッジ成分を用いて、前記第1及び前記第2平滑化手段の双方により平滑化された前記画像である平滑化画像にエッジ成分を付加する付加手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置において、
前記平滑化画像のエッジ成分である第2エッジ成分を抽出する第2抽出手段、
をさらに備え、
前記付加手段は、前記第1エッジ成分と前記第2エッジ成分との乗算結果を用いて、前記平滑化画像にエッジ成分を付加することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記第1及び前記第2平滑化手段の少なくとも一つの平滑化の度合いを調整するパラメータの値を、前記第1及び前記第2平滑化手段の処理の対象となる前記画像の種類に応じて変更する変更手段、
をさらに備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置で処理された画像を表示する表示装置と、
を備えることを特徴とする画像表示システム。
【請求項7】
時間的に連続する複数の画像を処理する画像処理方法であって、
(a)前記画像を空間方向に平滑化する工程と、
(b)前記画像を時間方向に平滑化する工程と、
を備え、
同一の画像に対して前記工程(a)と前記工程(b)とが直列に実行されることを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−9091(P2013−9091A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139493(P2011−139493)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】