説明

画像処理装置、表示装置及び画像処理方法

【課題】視覚的に望ましい解像度を得つつモアレが目立ちにくい画像表示を実現する。
【解決手段】本発明は、ベイヤー配列のR(赤)、G(緑)、B(青)、Gの4色分のサブ画素によって1個の画素を表示する場合において、R、G、Bの3色の色成分を有する画像データにスケーリング処理を実行するときに、スケーリング処理の倍率を3/2倍とし、その後に3色の色成分から4色分の色成分を求める色変換処理を実行し、さらに画素数を間引く間引き処理を実行するものである。スケーリング処理の倍率を整数比とすることにより、スケーリング処理に起因するモアレが目立ちにくくなる。なお、スケーリング処理の倍率は、√2に近く、かつ、整数比の分母が小さいほど望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4個のサブ画素によって構成される画素によって画像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ベイヤー(Bayer)配列は、4個のサブ画素によって1画素を構成するものであって、G(緑)のサブ画素を2個、R(赤)、B(青)のサブ画素をそれぞれ1個用い、これらのサブ画素を縦方向及び横方向に2個ずつ並べた画素をマトリクス状に配置したものである。また、ベイヤー配列におけるGのサブ画素の一方を他の色(例えば白)に置き換える技術も知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方、このような画素を有する表示装置に入力される画像データは、一般的には、各画素がR、G、Bの3色によって表現されている。そのため、かかる表示装置においては、画像を表示するために、3色分の階調値から4色分の階調値を求める色変換処理や、表示できない画素のデータを間引く間引き処理などが実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−61724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベイヤー配列の表示装置において、人間の視覚的な解像感に最も影響を与えるGの色表示に着目した場合、当該色の縦方向及び横方向の解像度は、表示装置の画素数(すなわちサブ画素の総数)の1/√2(2の平方根の逆数)倍に相当する。したがって、Gの色表示について、入力される画像データと同等の解像度を実現するためには、スケーリング処理によって画像データのサイズ(すなわち画素数)を√2倍に増やし、解像度の減少を相殺することが考えられる。しかしながら、このように解像度のみに着目したスケーリング処理を実行すると、画像を表示したときにモアレが目立ってしまうという問題が生じる。
そこで、本発明は、視覚的に望ましい解像度を得つつモアレが目立ちにくい画像表示を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る画像処理装置は、第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される画素をマトリクス状に配置した表示パネルに画像を表示させるための画像処理装置であって、前記第1方向及び前記第2方向に配置される各画素が3色の階調値で表現された画像データを取得する取得部と、前記取得部により取得された画像データが表す画像の前記第1方向及び前記第2方向のサイズをそれぞれn/m倍(ただし、m及びnは1<n/m<2を満たすあらかじめ決められた整数)に拡大するスケーリング処理部と、前記スケーリング処理部により拡大された3色の画像データを前記4個のサブ画素に対応した4色分の画像データに変換する色変換処理部と、前記色変換処理部により変換された画像データの画素数を前記4個のサブ画素の配置に応じて間引く間引き処理部とを備える構成を有する。
この画像処理装置によれば、視覚的に望ましい解像度を得つつモアレが目立ちにくい画像表示を実現することが可能である。
【0007】
好ましい態様において、前記画像処理装置は、m≦10であり、より好ましくは、m=2であってn=3である。
この態様によれば、モアレをより目立ちにくくすることが可能である。
【0008】
本発明の他の態様に係る表示装置は、前記画像処理装置と、前記サブ画素の総数が前記画像データの画素数のn/m倍以上である表示パネルとを備える構成を有する。
この表示装置によれば、視覚的に望ましい解像度を得つつモアレが目立ちにくい画像表示を実現することが可能である。
【0009】
本発明の他の態様に係る画像処理方法は、第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される画素をマトリクス状に配置した表示パネルに画像を表示させるための画像処理方法であって、前記第1方向及び前記第2方向に配置される各画素が3色の階調値で表現された画像データを取得し、前記取得された画像データの前記第1方向及び前記第2方向のサイズをそれぞれn/m倍(ただし、m及びnは1<n/m<2を満たすあらかじめ決められた整数)に拡大するスケーリング処理を実行し、前記スケーリング処理により拡大された3色の画像データを前記4個のサブ画素に対応した4色分の画像データに変換する色変換処理を実行し、前記色変換処理により変換された画像データの各画素の色を前記4個のサブ画素の配置に応じて間引く間引き処理を実行するものである。
この画像処理方法によれば、視覚的に望ましい解像度を得つつモアレが目立ちにくい画像表示を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】プロジェクターのハードウェア構成を示すブロック図
【図2】液晶パネルのサブ画素の配置を示す図
【図3】画像処理部の構成をより詳細に示すブロック図
【図4】フィルター処理部によるフィルター特性の一例を示す図
【図5】ベイヤー配列のサブ画素によって形成される格子を示す図
【図6】画像処理部によるスケーリング処理、色変換処理及び間引き処理を説明するための図
【図7】繰り返しパターンの周期を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態であるプロジェクター10のハードウェア構成を示すブロック図である。プロジェクター10は、いわゆる単板方式のプロジェクターであり、ピコプロジェクターやマイクロプロジェクターと呼ばれるような、比較的小型のプロジェクターである。プロジェクター10は、取得部110と、画像処理部120と、表示部130とを備える。
【0012】
取得部110は、画像データを取得する手段である。取得部110は、例えば、USB(Universal Serial Bus)やIrDA(Infrared Data Association)などの所定の規格に準拠した通信インターフェースを備え、外部装置(パーソナルコンピュータなど)から送信された画像データを取得する。あるいは、取得部110は、いわゆるメモリーカードのような着脱可能な記録媒体のリーダーを備え、記録媒体に記憶された画像データを読み取る構成であってもよいし、1又は複数の通信インターフェースとリーダーとを兼ね備えた構成であってもよい。
【0013】
本実施形態の画像データは、カラー画像を表すデータであって、各画素がR、G、Bの3色の階調値で表現されたいわゆるnHDサイズの画像データである。この画像データは、640×360、すなわち、横方向(水平方向)に640画素、縦方向(垂直方向)に360画素の解像度を有する縦横比が16:9の画像データである。また、画像データの各色の階調数は、特に限定されるものではないが、ここでは256階調(すなわち階調値としては0〜255)であるとする。なお、ここでいう画像データは、静止画を表す画像データであってもよいし、動画を表す画像データであってもよい。
【0014】
画像処理部120は、取得部110により取得された画像データに対して画像処理を実行する手段である。画像処理部120は、画像のサイズ(すなわち画像データの画素数)を変換するスケーリング処理と、R、G、Bの3色の画像データを4色分の画像データに変換する色変換処理と、画像データの画素数を間引く間引き処理とを少なくとも実行する。これらの画像処理は、画像データを表示部130の構成的な特性に合わせるために実行されるものである。なお、画像処理部120は、これらの画像処理に加え、ガンマ変換などの周知の画像処理を実行してもよい。
【0015】
表示部130は、画像処理部120により画像処理が実行された画像データに応じた画像を表示する手段である。表示部130は、光をスクリーンに投射することによって画像を表示するものであり、光源131と、液晶パネル132と、投射光学系133とを備える。光源131は、LED(Light Emitting Diode)やレーザーダイオードを備え、白色光を照射する。液晶パネル132は、ベイヤー配列を有する透過型の表示パネルとその駆動回路とを有する。液晶パネル132は、4個のサブ画素によって1個の画素を構成する。液晶パネル132のサブ画素は、それぞれ、カラーフィルターなどによって光の透過状態が制御され、白色光のうちの特定の波長域の成分を透過するように構成された液晶素子(光変調素子)である。投射光学系133は、液晶パネル132を透過した光を投射するための部材を備える。なお、投射光学系133は、図1では簡略的に示されているが、複数のレンズによって構成されてもよいし、凸レンズ以外のレンズを含んでもよい。
【0016】
なお、液晶パネル132のサブ画素の総数は、ここでは横方向に960画素、縦方向に540画素であるとする。すなわち、液晶パネル132のサブ画素の総数は、プロジェクター10に入力される画像データの画素数の1.5×1.5倍(9/4倍)である。ただし、液晶パネル132は、4個のサブ画素によって1個の画素を構成するため、(サブ画素の数ではなく)画素の数としてはその1/4の画素数となる。
【0017】
図2は、液晶パネル132のサブ画素の配置を示す図である。同図において、X方向は横方向に相当し、Y方向は縦方向に相当する。液晶パネル132は、図中のX方向と、これに直交するY方向とにサブ画素が並んで配置されており、X方向に隣り合う2個のサブ画素と、この2個のサブ画素とY方向に隣り合う2個のサブ画素とによって1画素が構成される。液晶パネル132は、X方向に沿った奇数行にはGとRに対応するサブ画素が順番に並んでおり、X方向に沿った偶数行にはBとGに対応するサブ画素が順番に並んでいる。また、液晶パネル132は、Y方向に沿った奇数列にはGとBに対応するサブ画素が順番に並んでおり、Y方向に沿った偶数列にはRとGに対応するサブ画素が順番に並んでいる。なお、ここにおいて、X方向が本発明における第1方向に相当し、Y方向が本発明における第2方向に相当する。
【0018】
ここでは、各サブ画素は同サイズの正方形であり、それぞれの間隔がX方向及びY方向のいずれにも等しいとする。このようにすると、1画素を構成する4個のサブ画素は、正方形状に配置されていることになる。液晶パネル132は、このような正方形状の画素がX方向及びY方向にマトリクス状に配置されて構成される。ここにおいて、同一画素内のGのサブ画素は、対角線方向に位置する。
【0019】
液晶パネル132は、このようなサブ画素によってR、G、Bの各色の光を選択的に透過するとともに、その光の透過率を、表示する画像に応じてサブ画素毎に制御する。これにより、プロジェクター10は、加法混色(並置加法混色)による画像のカラー表示を実現する。
【0020】
図3は、画像処理部120の構成をより詳細に示すブロック図である。画像処理部120は、スケーリング処理部121と、色変換処理部122と、フィルター処理部123と、間引き処理部124と、DA変換部125とを少なくとも備える。画像処理部120は、図中の矢印で示された順番で各処理を実行する。
【0021】
スケーリング処理部121は、スケーリング処理を実行する。スケーリング処理部121が実行するスケーリング処理は、縦方向及び横方向の画素数をそれぞれ1.5倍(3/2倍)し、画像のサイズを1.5倍に拡大するものである。したがって、画像データは、スケーリング処理の前後で、640×360サイズから960×540サイズに変化する。スケーリング処理後の画像データの画素数は、液晶パネル132のサブ画素の総数と一致する。
【0022】
なお、スケーリング処理部121によるスケーリング処理の具体的な方法は、特に限定されない。例えば、スケーリング処理部121は、バイリニア法によって各画素の階調値を算出(すなわち補間)してもよいが、バイキュービック法や最近傍法を用いてもよいし、それ以外の方法を用いてもよい。
【0023】
色変換処理部122は、色変換処理を実行する、色変換処理部122が実行する色変換処理は、R、G、Bの3色の階調値で構成される画素をR、G、B、Gの4色分の階調値で構成される画素に変換するものである。色変換処理の具体的な方法は、ベイヤー配列における周知のもののいずれであってもよい。
【0024】
なお、ここでいう「4色分の階調値」とは、4個のサブ画素のそれぞれに割り当てられる階調値を意味し、互いに異なる4色のそれぞれに割り当てられる階調値であることを必ずしも要しない。本実施形態の場合、4色分の階調値のうちの2色分は、Gのサブ画素に割り当てられる階調値であり、色自体が相違するわけではない。ただし、後述する変形例に示すように、4個のサブ画素に対応する色がそれぞれ異なる場合であれば、互いに異なる4色のそれぞれに割り当てられる階調値が「4色分の階調値」に相当する。
【0025】
フィルター処理部123は、フィルター処理を実行する。フィルター処理部123が実行するフィルター処理は、間引き処理による画像データの解像度の減少に起因する折り返し雑音をカットするためのものであり、具体的には、画像データの空間周波数の帯域を所定の範囲に制限する処理である。このとき適用されるフィルターは、ローパスフィルターである。折り返し雑音は、モアレを生じさせるものであるが、このモアレはスケーリング処理に起因するモアレとは異なるものである。
【0026】
図4は、フィルター処理部123によるフィルター特性の一例を示す図である。図4(a)は、画像データのR成分又はB成分に適用されるフィルターの特性を示し、図4(b)は、画像データのG成分に適用されるフィルターの特性を示している。なお、同図において、横軸(fx)は、X方向の周波数を表し、縦軸(fy)は、Y方向の周波数を表している。また、同図においては、入力される画像データの周波数帯域を実線で示し、フィルターを通過する帯域(フィルターによってカットされない帯域)をハッチングで示している。
【0027】
図4(a)に示すように、ベイヤー配列においては、画像データのR成分とB成分についてはX方向とY方向の双方の帯域が低域側の半分に制限されるのが一般的である。なぜならば、RとBのサブ画素は、いずれも、X方向とY方向のいずれにも1個おきに配置されており、入力された画像データの半分の解像度でしか画像を表現できないからである。一方、Gのサブ画素に対するフィルターは、Gのサブ画素が1画素内に2個あるため、制限する帯域をR又はBのサブ画素の半分にすることができる。
【0028】
図5は、ベイヤー配列のサブ画素によって形成される格子を示す図である。同図に示すように、Gのサブ画素によって構成される格子は、R(又はB)のサブ画素によって構成される格子よりも1辺が短い正方形となり、かつ、Rのサブ画素により構成される格子に対して45°傾いた形状となる。また、各格子の辺の長さを、Gのサブ画素とRのサブ画素とで比較すると、前者は後者の√2/2(2の平方根を2で除した数)倍である。したがって、ベイヤー配列においては、Gのサブ画素ではより高解像度の表示が可能であり、G成分の通過帯域をR成分(又はB成分)の通過帯域よりも広くすることが可能である。
【0029】
間引き処理部124は、間引き処理を実行する。間引き処理部124が実行する間引き処理は、フィルター処理部123によって帯域制限された各色の画像データの画素数を1/4に減じるものである。つまり、画像データは、間引き処理の前後で、960×540サイズから480×270サイズに変化する。なお、間引き処理の具体的な方法も、周知の適当なものであればよい。
【0030】
DA変換部125は、デジタルデータである画像データにDA変換を実行し、アナログ信号に変換する。このアナログ信号のことを、以下においては「画像信号」という。画像信号は、R、G、B、Gの4色分の信号で各画素を表すものであり、4色分のサブ画素のそれぞれに対応するものである。液晶パネル132は、この画像信号によって各画素を駆動し、各画素の階調を制御する。
【0031】
図6は、画像処理部120によるスケーリング処理、色変換処理及び間引き処理を説明するための図である。同図において、実線で図示された正方形は、入力された画像データの画素をそれぞれ示し、破線で図示された正方形は、液晶パネル132のサブ画素をそれぞれ示す。
【0032】
スケーリング処理前の画像データは、各画素がR、G、Bの3色の情報を有している。スケーリング処理は、入力された画像データが表す画像と同等の画像を、縦方向及び横方向の画素数を1.5倍に増やして表現するものである。したがって、画素の総数は、スケーリング処理の前後で2.25倍(1.5×1.5倍)に増加する。よって、スケーリング処理前には2行2列の4画素で表現されていた画像は、スケーリング処理後に3行3列の9画素で表現されるようになる。なお、スケーリング処理は、画像データの画素数を増加させるが、各画素が有する情報量は変化させない(ただし、階調値自体は変化し得る。)。したがって、スケーリング処理後の画像データも、各画素がR、G、Bの3色の情報を有している。
【0033】
スケーリング処理後の画像データに対して色変換処理を実行すると、各画素の情報がR、G、Bの3色の情報からR、G、B、Gの4色分の情報に変化する。すなわち、色変換処理は、各画素の情報量を増加させる処理である。その後の間引き処理は、サブ画素の情報量を1/4に減じる処理である。すなわち、間引き処理は、それまで各サブ画素に対して4色分の情報が割り当てられていたものを、そのサブ画素に対応する1色分の情報のみに間引くものである。
【0034】
本実施形態の画像処理を実行すると、図6に示すように、入力された画像データの2画素分の辺の長さがスケーリング処理後の画素(サブ画素)の3画素分の辺の長さに一致し、以後、このパターンが繰り返されるようになる。このようなパターンのことを、以下においては「繰り返しパターン」という。スケーリング処理の倍率が1.5倍である場合の繰り返しパターンの周期は、スケーリング処理の倍率が約√2倍(例えば、1.4142倍)である場合の繰り返しパターンの周期よりも短くなる。なお、ここにおいて、「約√2倍」の意味するところは、無理数である√2に近似する所定の桁数の倍率のことである。
【0035】
本実施形態の画像処理によれば、スケーリング処理の倍率が1.5倍にすることにより、間引き処理に起因する解像度の減少を補うとともに、モアレが目立ちにくい画像表示を実現することが可能である。本実施形態の場合であっても、繰り返しパターンが周期性を有しているため、モアレが発生しないわけではない。しかしながら、本実施形態の場合、繰り返しパターンの周期が短いために、繰り返しパターンの周期性に起因するモアレを人間の視覚的に目立ちにくくすることが可能である。
【0036】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限らず、以下に例示するさまざまな態様でも実施可能である。また、本発明は、必要に応じて、以下に示す変形例を複数組み合わせた態様でも実施することができる。
【0037】
(1)本発明は、スケーリング処理の倍率が1.5倍(3/2倍)であるときに最大の効果を奏するものである。しかしながら、本発明は、スケーリング処理の倍率が1.5倍に限定されるものではなく、その倍率が2つの整数の比で表されるものであれば一定の効果を奏し得る。ただし、入力される画像データの解像度と実際に表示される画像の解像度のバランスをあわせて考慮すると、スケーリング処理の倍率は、m、nを整数としたときに1<n/m<2を満たす範囲内であることが望ましく、1.25≦n/m≦1.75であるとより望ましい。
【0038】
さらにいえば、スケーリング処理の倍率は、√2にできるだけ近く、かつ、上記n/mのmの値ができるだけ小さいことが望ましい。mの値は、例えば「10」以下であることが望ましく、この程度であればモアレが視覚的に目立ちにくくなるが、「4」以下であるとより望ましい。望ましい倍率の例としては、「5/4(=1.25)」、「7/5(=1.4)」、「10/7(≒1.42857)」、「8/5(=1.6)」、「7/4(=1.75)」などが挙げられる。このような倍率であれば、繰り返しパターンの周期が比較的短くなる。
【0039】
図7は、繰り返しパターンの周期を示す図であり、スケーリング処理の倍率が1.5倍(3/2倍)の場合と1.4倍(7/5倍)の場合の繰り返しパターンを対比して示す図である。同図に示すように、mの値が小さい方が、繰り返しパターンの周期が短くなる。そのため、mの値が小さい方が、繰り返しパターンの周期性に起因するモアレの周期も短くなる。一般的な画素のサイズを考慮すれば、繰り返しパターンの周期が短いほど、これに起因するモアレが知覚されにくくなる。
【0040】
(2)本発明の表示パネルは、透過型の液晶パネルに限定されない。例えば、本発明の表示パネルは、反射型の液晶素子を用いた液晶パネルであってもよいし、いわゆるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)型であってもよい。また、本発明の光変調素子は、液晶素子に限定されず、有機EL(electroluminescence)素子のような自発光型の光変調素子であってもよい。
【0041】
また、本発明の表示パネルは、入力される画像データの画素数のn/m倍以上のサブ画素を有していればよく、サブ画素の数が画像データの画素数のちょうどn/m倍である必要はない。サブ画素の数が画像データの画素数のn/m倍を超える場合には、画像データの画素数のn/m倍の個数のサブ画素を当該画像データが表す画像の表示に用いて、残りのサブ画素を当該画像の表示に用いないようにすればよい。また、本発明の表示パネルは、横長である必要はなく、縦長であってもよい。なお、本発明において入力される画像データも、nHDサイズに限定されず、表示パネルの解像度に応じて定められればよい。
【0042】
(3)本発明の表示パネルの画素は、上述した実施形態の配置に限定されない。例えば、本発明の表示パネルは、図2に示した構成において、Rのサブ画素の位置とBのサブ画素の位置を入れ替えたものであってもよいし、R、Bのサブ画素の位置とGのサブ画素の位置とを入れ替えたものであってもよい。
【0043】
また、本発明の表示パネルは、図2に示した構成において、2個あるGのサブ画素のうちの一方を他の色のサブ画素として構成することも可能である。ここでいう「他の色」は、例えば白であるが、Gのサブ画素と共通の色成分を有する色であれば、必ずしも白に限定されない。ただし、4個のサブ画素を互いに異なる4色に割り当てた場合のフィルター処理は、いずれも図4(a)に示した特性になる。
【0044】
(4)本発明の表示装置は、プロジェクター、すなわち光を投射面に投射することによって画像を表示する装置に限定されず、表示パネルに画像を表示してその画像を直視する、いわゆる直視型の表示装置であってもよい。また、本発明の表示装置は、プロジェクター付きの携帯電話機のように、他の電子機器の一部を構成するものであってもよい。
【0045】
また、本発明の表示装置は、必ずしも小型のプロジェクターに限られるものではないが、比較的少ない画素数の表示パネルでできるだけ明るい画像表示を行おうとするときに特に効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0046】
10…表示装置、110…取得部、120…画像処理部、121…スケーリング処理部、122…色変換処理部、123…フィルター処理部、124…間引き処理部、125…DA変換部、130…表示部、131…光源、132…液晶パネル、133…投射光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される画素をマトリクス状に配置した表示パネルに画像を表示させるための画像処理装置であって、
前記第1方向及び前記第2方向に配置される各画素が3色の階調値で表現された画像データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された画像データが表す画像の前記第1方向及び前記第2方向のサイズをそれぞれn/m倍(ただし、m及びnは1<n/m<2を満たすあらかじめ決められた整数)に拡大するスケーリング処理部と、
前記スケーリング処理部により拡大された3色の画像データを前記4個のサブ画素に対応した4色分の画像データに変換する色変換処理部と、
前記色変換処理部により変換された画像データの画素数を前記4個のサブ画素の配置に応じて間引く間引き処理部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
m≦10であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
m=2であってn=3であることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
請求項1に記載の表示パネルであって、前記サブ画素の総数が前記画像データの画素数のn/m倍以上である表示パネルと
を備える表示装置。
【請求項5】
第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される画素をマトリクス状に配置した表示パネルに画像を表示させるための画像処理方法であって、
前記第1方向及び前記第2方向に配置される各画素が3色の階調値で表現された画像データを取得し、
前記取得された画像データの前記第1方向及び前記第2方向のサイズをそれぞれn/m倍(ただし、m及びnは1<n/m<2を満たすあらかじめ決められた整数)に拡大するスケーリング処理を実行し、
前記スケーリング処理により拡大された3色の画像データを前記4個のサブ画素に対応した4色分の画像データに変換する色変換処理を実行し、
前記色変換処理により変換された画像データの各画素の色を前記4個のサブ画素の配置に応じて間引く間引き処理を実行する
画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−85027(P2013−85027A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221876(P2011−221876)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】