画像処理装置および方法、プログラム、並びに記録媒体
【課題】画像のノイズを低減させるために、正確にノイズを計測することができるようにする。
【解決手段】第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、NR画面に対する動き補償が行われ、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、入力画面の画素値と動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、入力画面のノイズが計測され、計測されたノイズに対応する加算比率が決定され、決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、入力画面の画素値および動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理が施される。
【解決手段】第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、NR画面に対する動き補償が行われ、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、入力画面の画素値と動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、入力画面のノイズが計測され、計測されたノイズに対応する加算比率が決定され、決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、入力画面の画素値および動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理が施される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、画像処理装置および方法、プログラム、並びに記録媒体に関し、特に、画像のノイズを低減させるために、正確にノイズを計測することができるようにする画像処理装置および方法、プログラム、並びに記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
動画の映像信号は、フレーム周期で類似の画像情報が繰り返される信号であり、フレーム間の相関が非常に強い。一方、映像信号は符号化歪やノイズ成分とは相関がないので、映像信号をフレーム単位で時間平均すると、信号成分はほとんど変化せず、歪やノイズ成分のみが小さくなるから、歪やノイズを低減することができる。
【0003】
このような映像信号の特性を利用してノイズを低減する装置として、画像の動きを検出するフレーム巡回型ノイズ低減装置がある。
【0004】
従来のノイズ低減装置は、動きベクトルを検出し、動きベクトルに基づいて動き成分を求め、画像の動き成分に応じて加算比率を変え、加算比率に基づいて現フレームの画素と前フレームの対応画素を加重平均して出力映像信号を生成する構成とされている。従って、動き補償した対応画素を累積的に加重平均することとなり、残像の発生を防止しながらノイズを低減できるようになされている。
【0005】
ノイズを低減する際には、例えば、入力画像に含まれるノイズ量を正しく計測し、ノイズ量に応じた処理を実行することが重要となる。例えば、時間加算ノイズ低減処理では、もともと入力画像のノイズが少ない場合、時間加算において本来足し込むべきでない動き補償の誤りまで足し込んでしまい、出力画像がかえって劣化してしまう場合がある。また、例えば、画面内ノイズ低減処理では、本来のノイズより強いノイズを想定してノイズ低減処理を施すと、解像感が低下してしまう場合がある。
【0006】
このように、ノイズを低減する際には、例えば、入力画像に含まれるノイズ量を正しく計測し、ノイズ量に応じた処理を実行する必要がある。
【0007】
また、検出された動きベクトルに基づいて、入力画素の動きが判定され、その判定結果に基づいて、その入力画素の静止している部分のノイズ量を推定し、ノイズ量に基づいて、その入力画素の信頼性を表す入力信頼度が計算され、入力画素と、その入力画素に対応する、1フレーム前の出力画素との重み付け加算が、それぞれの入力信頼度と出力信頼度から求められた値を重みとして行われるようにすることも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1によれば、データのS/Nが変動する場合であっても、S/Nの悪いデータが、S/Nの良いデータに影響することを抑止することができる。
【0009】
また、入力映像信号のシーンチェンジ信号に基づいてノイズレベル検出を制御すると共に、ノイズレベル検出結果に基づいて、非線形処理の強さを制御することで、2つ以上の異なる映像信号源から合成された映像信号が入力された場合でも、ノイズレベルを正確に検出できるようにする技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−126061号公報
【特許文献2】特開2001−061081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、従来の技術では、ノイズ低減処理が施されたNR画面と入力画面との差分値の分散を得ることで、入力画面のノイズ量を計測することが一般的であった。その際ノイズを正しく計測するためには、NR画面のノイズは完全に除去されていることが前提となる。
【0012】
しかしながら、時間加算ノイズ低減処理では、時系列で処理を重ねるにつれてノイズ低減効果が最大化されるため、特に最初のフレームではノイズ低減効果がまだ弱く、ノイズを正しく計測出来ないという問題がある。
【0013】
本技術はこのような状況に鑑みて開示するものであり、画像のノイズを低減させるために、正確にノイズを計測することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本技術の第1の側面は、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部とを備える画像処理装置である。
【0015】
前記ノイズ計測部は、前記入力画面の画素と、前記動き補償されたNR画面の画素との差分値を演算する差分演算部と、前記演算された差分値の分散値を算出して取得する分散取得部と、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて、前記取得された分散値を補正する補正部とを備えるようにすることができる。
【0016】
前記ノイズ計測部は、前記入力画面を構成する所定の画素数からなるブロック毎に前記ノイズを計測するとともに、前記入力画面のブロックの画素値と、前記動き補償されたNR画面において対応するブロックの画素値とに基づいて差分特徴量を算出し、前記差分特徴量が閾値以上となるブロックについて前記ノイズの計測の対象から除外するようにすることができる。
【0017】
前記ノイズ計測部により計測されたノイズに対応するフィルタ閾値に基づいて前記入力画面に面内ノイズ低減処理を施す面内ノイズ低減部をさらに備えるようにすることができる。
【0018】
本技術の一側面は、動き補償部が、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行い、ノイズ計測部が、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測し、加算比率決定部が、前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定し、時間加算ノイズ低減部が、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施すステップを含む画像処理方法である。
【0019】
本技術の一側面は、コンピュータを、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部とを備える画像処理装置として機能させるプログラムである。
【0020】
本技術の一側面においては、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償が行われ、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズが計測され、前記計測されたノイズに対応する加算比率が決定され、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理が施される。
【発明の効果】
【0021】
本技術によれば、画像のノイズを低減させるために、正確にノイズを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】時間加算ノイズ低減処理を説明する図である。
【図2】従来のIIRフィルタの構成例を示すブロック図である。
【図3】時系列で処理を重ねるにつれて大きくなるノイズ低減効果を説明する図である。
【図4】本技術を適用したノイズ低減装置の一実施の形態に係る構成例を示すブロック図である。
【図5】差分特徴量の算出の例を説明する図である。
【図6】時間加算ノイズ低減処理の例を説明するフローチャートである。
【図7】ノイズ計算処理の例を説明するフローチャートである。
【図8】本技術を適用したノイズ低減装置の別の実施の形態に係る構成例を示すブロック図である。
【図9】時間加算および画面内ノイズ低減処理の例を説明するフローチャートである。
【図10】本技術の効果を説明する図である。
【図11】パーソナルコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、ここで開示する技術の実施の形態について説明する。
【0024】
最初に時間加算ノイズ低減処理について説明する。時間加算ノイズ低減処理は、フレーム巡回型ノイズ低減処理とも称される。
【0025】
例えば、動画の映像信号(画像信号)は、フレーム周期で類似の画像情報が繰り返される信号であり、フレーム間の相関が非常に強い。一方、映像信号は符号化歪やノイズ成分とは相関がないので、画像信号をフレーム単位で時間平均すると、信号成分はほとんど変化せず、歪やノイズ成分のみが小さくなるから、歪やノイズを低減することができる。このような画像信号の特性を利用してノイズを低減する方式が、フレーム巡回型ノイズ低減処理である。フレーム巡回型ノイズ低減処理を行うノイズ低減装置は、IIR(Infinite impulse response)フィルタとも称される。
【0026】
いま、フレーム1、フレーム2、・・・フレームnにおけるノイズの標準偏差がσである場合を考える。
【0027】
フレーム1、フレーム2、・・・フレームnのそれぞれにおける画面内の全画素を、X1、X2、・・・Xnで表し、画素の分散を求める関数をVで表すと、各フレームの画面におけるノイズ量は、式(1)により表される。
【0028】
【数1】
・・・(1)
【0029】
なお、式(1)におけるσの二乗が各フレームの画面におけるノイズ量を表すことになる。
【0030】
また、フレーム1、フレーム2、・・・フレームnのそれぞれにおける画面内の画素値の平均値は、式(2)により表される。
【0031】
【数2】
・・・(2)
【0032】
そうすると、対数の法則より式(3)が導出される。
【0033】
【数3】
・・・(3)
【0034】
式(3)より、フレーム1、フレーム2、・・・フレームnの画素値を加算していくことによりノイズを低減できることが分かる。
【0035】
すなわち、図1に示されるように、例えば、動画像を構成するn枚の画面を時間方向に加算することにより、ノイズ量を1/nに低減した画面を生成することが可能となる。時間加算ノイズ低減処理では、このようにして画像のノイズを低減(Noise Reduction:NR)するようになされている。
【0036】
図2は、従来のIIRフィルタの構成例を示すブロック図である。同図におけるIIRフィルタ20は、入力端子31から入力された動画像のノイズを低減し、出力端子32から出力するようになされている。
【0037】
図2のIIRフィルタ20は、ノイズ計測部41、加算比率算出部42、ME(ME: Motion Estimation)/MC(MC: Motion Compensation)部43、乗算器44、乗算器45、加算器46、およびバッファ47を有する構成とされている。
【0038】
入力端子31から入力された第n番目のフレーム(以下、適宜入力画面と称することにする)ノイズ計測部41とME/MC部43に入力される。
【0039】
ノイズ計測部41は、入力画面のノイズの標準偏差σを算出し、加算比率算出部42に供給する。例えば、ノイズ計測部41は、後述するように、第n−1番目のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像(以下、適宜NR画面と称する)を動き補償した画像と、入力画面との差分をノイズと推定し、入力画面のノイズの標準偏差σを算出する。
【0040】
加算比率算出部42は、ノイズの標準偏差σに応じた加算比率αを算出する。そして、乗算器45には係数αが供給され、乗算器44には係数(1−α)が供給される。
【0041】
バッファ47には、第n−1番目のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像(NR画面)のデータが保持されている。
【0042】
ME/MC部43は、例えば、入力画面とNR画面とを用いたブロックマッチング処理などを行うことにより、画面の動きを予測する。これにより、動きベクトルが算出される。そして、ME/MC部43は、動きベクトルに基づいてNR画面の動き補償を行い、加算比率算出部42と乗算器45に出力する。
【0043】
乗算器44は、入力画面の画素xnのそれぞれに係数(1−α)を乗じる処理を行う。
【0044】
乗算器45は、動き補償されたNR画面の画素xn-1のそれぞれに係数αを乗じる処理を行う。
【0045】
加算器46は、乗算器44と乗算器45から出力される画素値を、対応する画素毎に加算して第n番目のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像のデータを生成する。そして、その画像のデータが出力端子32から出力される。
【0046】
このようにして、IIRフィルタ20による時間加算ノイズ低減処理が施される。上述したように、ノイズ計測部41は、入力画面のノイズの標準偏差σを算出し、加算比率算出部42に供給し、加算比率算出部42は、ノイズの標準偏差σに応じた加算比率αを算出するようになされている。
【0047】
このように、時間加算ノイズ低減処理によってノイズを低減する際には、入力画像に含まれるノイズ量を正しく計測し、ノイズ量に応じた処理を実行する必要がある。これは、例えば、もともと入力画像のノイズが少ない場合、時間加算において本来足し込むべきでない動き補償の誤りまで足し込んでしまい、出力画像がかえって劣化してしまう場合などがあるからである。
【0048】
また、上述したように、例えば、動画像を構成するn枚の画面を時間方向に加算することにより、ノイズ量を1/nに低減した画面を生成することが可能となる。
【0049】
いま、動画像の各フレームの画面におけるノイズの標準変化の値が一律にσであるとした場合、各フレームの画面におけるノイズ量はσの二乗で表される。
【0050】
そうすると、図3に示されるように、第1番目のフレームの画面(入力画面[1])に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画面(NR画面[1])のノイズ量はσの二乗となる。また、第2番目のフレームの画面(入力画面[2])に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画面(NR画面[2])のノイズ量はσの二乗を2で割った値となる。同様に、第3番目のフレームの画面(入力画面[3])に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画面(NR画面[3])のノイズ量はσの二乗を3で割った値となり、・・・第n番目のフレームの画面(入力画面[n])に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画面(NR画面[n])のノイズ量はσの二乗をnで割った値となる。
【0051】
すなわち、時間加算ノイズ低減処理では、時系列で処理を重ねるにつれてノイズ低減効果が大きくなるのである。ここで、時間加算ノイズ低減処理(フレーム巡回型ノイズ低減処理)における時系列の処理の回数nは巡回履歴とも称される。
【0052】
このことから、式(4)が導出される。なお、式(4)では、ノイズ低減処理が施されたNR画面と入力画面との差分値の分散を得ることで、入力画面のノイズ量を計測できるものとしている。
【0053】
【数4】
・・・(4)
【0054】
式(4)においては、画素の分散を求める関数をVで表し、ciは入力画面の各画素を表しており、miはNR画面の各画素を表している。なお、式(4)における巡回履歴nは、入力画面を処理するまでに施された時系列の処理の回数を意味し、例えば、入力画面が第4番目のフレームである場合、nは3となる。
【0055】
さらに、式(4)より式(5)を導出することができる。
【0056】
【数5】
・・・(5)
【0057】
式(5)より、NR画面と入力画面との差分値の分散を得ることで、入力画面のノイズ量を計測する場合、巡回履歴nを特定しなければ、正確なノイズを計測することができないことが分かる。
【0058】
そこで、本技術では、例えば、IIRフィルタのノイズ計測部におけるノイズの計測の際に巡回履歴を用いて計測値を補正するようにする。
【0059】
図4は、本技術を適用したノイズ低減装置の一実施の形態に係る構成例を示すブロック図である。同図に示されるノイズ低減装置120は、例えば、IIRフィルタとして構成される。
【0060】
図4のノイズ低減装置(IIRフィルタ)120は、ノイズ計測部141、時間加算NR部142、ME(ME: Motion Estimation)/MC(MC: Motion Compensation)部143、およびバッファ147を有する構成とされている。
【0061】
入力端子131から入力された時刻tのフレーム(入力画面)は、ノイズ計測部141、ME/MC部143、および時間加算NR部142に入力される。
【0062】
バッファ147には、時刻t−1のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像(NR画面)のデータが保持されている。
【0063】
ME/MC部143は、例えば、入力画面とNR画面とを用いたブロックマッチング処理などを行うことにより、画面の動きを予測する。これにより、動きベクトルが算出される。そして、ME/MC部143は、動きベクトルに基づいてNR画面の動き補償を行い、時間加算NR部142と減算器161に出力する。
【0064】
ノイズ計測部141は、入力画面のノイズの標準偏差σの二乗値をノイズ量として時間加算NR部142に供給する。ノイズ計測部141は、後述するように、NR画面を動き補償した画像と、入力画面との差分をノイズと推定し、入力画面のノイズの標準偏差σを算出する。
【0065】
ノイズ計測部141は、減算器161、分散取得部162、および補正部163を有する構成とされている。
【0066】
減算器161は、入力画面の各画素の値と、動き補償後のNR画面において対応する各画素の値の差分を算出する。すなわち、減算器161は、式(4)における(ci−mi)の演算を行う。
【0067】
分散取得部162は、減算器161から出力される差分値の分散を演算して取得する。すなわち、分散取得部162により、式(4)における最も左の項の演算が行われる。そして、分散取得部162は、演算結果を補正部163に出力する。
【0068】
補正部163は、時間加算NR部142から巡回履歴nを取得し、分散取得部162から出力される演算結果の値を補正する。補正部163は、n/(n+1)を分散取得部162から出力される演算結果の値に乗じることによって補正する。
【0069】
補正部163の処理結果の値が、入力画面のノイズ量としてノイズ計測部141から出力されることになる。
【0070】
なお、ノイズ計測部141が入力画面のノイズを計測する際には、所定の画素数からなるブロック毎に差分を算出し、差分値の分散の取得およびその補正を行うようになされている。
【0071】
例えば、図5に示されるように、動き補償後のNR画面と入力画面において、同じ位置の9×9画素の矩形のブロックを抽出し、それらのブロック内の画素値の差分を算出し、差分値の分散の取得およびその補正が行われる。
【0072】
図5に示されるようなブロックの抽出は、動き補償後のNR画面と入力画面のそれぞれにおいてブロックをラスタスキャンにより移動させ、ブロックを移動させる都度、抽出される。そして、抽出されたブロックのそれぞれについて、ブロック内の画素値の差分を算出し、差分値の分散の取得およびその補正が行われる。
【0073】
1画面分のブロックが抽出された後、ブロック毎のノイズ量を積算し、さらにその値が正規化されるなどして入力画面のノイズ量として出力される。
【0074】
また、ブロック毎のノイズ量を積算する際に、後述する差分特徴量を算出して閾値と比較することにより、閾値以上の差分特徴量が算出されたブロックのノイズ量を積算しないようになされている。閾値以上の差分特徴量を有するブロックでは、動き補償の誤りが生じていると考えられるからである。
【0075】
時間加算NR部142の構成は、図2を参照して上述した場合と同様である。すなわち、時間加算NR部142は、ノイズ量に応じた加算比率αを算出する加算比率算出部を有している。そして、入力画面の画素に係数(1−α)が乗じられ、動き補償されたNR画面の画素に係数αを乗じられて加算されるようになされている。
【0076】
すなわち、時間加算NR部142においては、入力画面の画素値および動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、入力画面の各画素に時間加算ノイズ低減処理が施される。これにより、時刻t+1のフレームの各画素に時間加算ノイズ低減処理が施す際に用いられるNR画面が生成されるのである。
【0077】
次に、図6のフローチャートを参照して、図4のノイズ低減装置120による時間加算ノイズ低減処理の例について説明する。
【0078】
ステップS21において、入力端子131から画像のデータが入力される。すなわち、ノイズを低減させるべき画像のデータが入力される。
【0079】
ステップS22において、ME/MC部143は、動きベクトルに基づいてNR画面の動き補償を行う。このとき、例えば、入力画面とNR画面(バッファ147に保持されている、時刻t−1のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像のデータ)とを用いたブロックマッチング処理などを行うことにより、画面の動きを予測し動きベクトルが算出され、動き補償が行われる。
【0080】
ステップS23において、ノイズ計測部141は、入力画面のノイズ量(σの二乗)を計算する。これにより後述するようにノイズ量が算出される。
【0081】
ステップS24において、時間加算NR部142は、ステップS23の処理で算出されたノイズ量に基づいて加算比率を決定する。このとき、例えば、ノイズ量に対応付けられて記憶されている加算比率の値が読み出されることにより、加算比率の値αが決定される。なお、ノイズ量に対応する加算比率は、時間加算NR部142に予め記憶されているものとする。
【0082】
ステップS25において、NR画面が生成される。すなわち、入力画面の画素に係数(1−α)を乗じる処理を行い、動き補償されたNR画面の画素に係数αを乗じる処理が行われ、対応する画素毎に加算して時刻tのフレームに対してノイズ低減処理が施された画像のデータが生成される。
【0083】
つまり、入力画面の画素値および動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、入力画面の各画素に時間加算ノイズ低減処理が施され、時刻tのフレームについてのNR画面が生成されるのである。
【0084】
なお、生成されたNR画面は、出力端子132から出力されるとともに、バッファ147に保持される。
【0085】
このようにして時間加算ノイズ低減処理が実行される。
【0086】
次に、図7のフローチャートを参照して、図6のステップS23のノイズ計算処理の詳細な例について説明する。
【0087】
ステップS41において、入力画面とNR画面から所定の画素数のブロックが抽出される。このとき、例えば、図5に示されるように、動き補償後のNR画面と入力画面において、同じ位置の9×9画素の矩形のブロックが抽出される。
【0088】
ステップS42において、差分特徴量dが演算される。ここで、差分特徴量dは、ステップS21の処理で抽出されたブロック内の画素の値の差分の平均値の絶対値として算出される。
【0089】
ステップS43において、ステップS42の処理で得られた差分特徴量dの値が予め設定された閾値と比較される。ステップS43において、差分特徴量dが閾値以上ではないと判定された場合、処理は、ステップS44に進む。
【0090】
ステップS44において、減算器161は、入力画面の各画素の値と、動き補償後のNR画面において対応する各画素の値の差分を算出する。すなわち、減算器161は、式(4)における(ci−mi)の演算を行う。
【0091】
なお、ステップS44の処理は、ステップS42の処理とともにまとめて1つの処理として同時に実行されるようにしてもよい。
【0092】
ステップS45において、分散取得部162は、ステップS44の処理で得られた差分値の分散を演算して取得する。これにより、式(4)における最も左の項の演算が行われる。
【0093】
ステップS46において、補正部163は、時間加算NR部142から巡回履歴nを取得し、nの値を特定する。
【0094】
ステップS47において、補正部163は、ステップS46の処理で特定された巡回履歴nの値に基づいて、ステップS45の処理結果として分散取得部162から出力される値を補正する。このとき、補正部163は、n/(n+1)を分散取得部162から出力される演算結果の値に乗じることによって補正する。
【0095】
ステップS48において、ステップS47の処理結果の値を、当該ブロックのノイズ量として足し込む。
【0096】
なお、ステップS43において、差分特徴量dが閾値以上であると判定された場合、ステップS44乃至ステップS48の処理はスキップされる。閾値以上の差分特徴量を有するブロックでは、動き補償の誤りが生じていると考えられるからである。つまり、差分特徴量dが閾値以上であるブロックは、ノイズの計測を行うにあたって無効なブロックとして無視されるようになされている。
【0097】
ステップS49において、1画面分の処理が終わったか否かが判定される。すなわち、例えば、図5に示されるように、動き補償後のNR画面と入力画面のそれぞれにおいてブロックをラスタスキャンにより移動させ、1画面分のブロックを抽出し、各ブロックについて上述した処理がなされたか否かが判定される。
【0098】
ステップS49において、まだ1画面分の処理が終わっていないと判定された場合、処理は、ステップS41に戻り、それ以降の処理が繰り返し実行される。
【0099】
ステップS49において、1画面分の処理が終わったと判定された場合、処理は、ステップS50に進む。
【0100】
ステップS50において、これまでにステップS48の処理で足し込まれたノイズ量が正規化される。すなわち、足し込まれたノイズ量が有効なブロック(差分特徴量dが閾値未満であるブロック)数で除されるなどして正規化される。
【0101】
ステップS51において、ステップS49の処理で正規化されたノイズ量が、入力画面のノイズ量として出力される。
【0102】
このようにして、ノイズ計算処理が実行される。
【0103】
従来の技術では、ノイズ低減処理が施されたNR画面と入力画面との差分値の分散を得ることで、入力画面のノイズ量を計測することが一般的であった。その際ノイズを正しく計測するためには、NR画面のノイズは完全に除去されていることが前提となる。
【0104】
しかしながら、時間加算ノイズ低減処理では、時系列で処理を重ねるにつれてノイズ低減効果が最大化されるため、特に最初のフレームではノイズ低減効果がまだ弱く、ノイズを正しく計測出来ないという問題があった。
【0105】
これに対して、本技術では、ノイズ量の値を得る際に、巡回履歴を取得して補正するようにした。従って、本技術によれば、画像のノイズを低減させるために、正確にノイズを計測することができる。
【0106】
ところで、以上においては、時間加算ノイズ低減処理によって入力画面のノイズを低減する際に、加算比率を決定するために必要となる情報として入力画面のノイズを計測する例について説明した。しかし、本技術により計測されたノイズを、例えば、時間加算ノイズ低減処理以外の方式によって入力画面のノイズを低減する際に必要となる情報として用いるようにしてもよい。
【0107】
図8は、本技術を適用したノイズ低減装置の別の実施の形態に係る構成例を示すブロック図である。同図に示されるノイズ低減装置220は、例えば、IIRフィルタとして構成されるが、ノイズ低減装置220は、時間加算ノイズ低減処理のみではなく、画面内ノイズ低減処理によって入力画面のノイズを低減するようになされている。
【0108】
図8のノイズ低減装置(IIRフィルタ)220は、ノイズ計測部241、時間加算NR部242、ME(ME: Motion Estimation)/MC(MC: Motion Compensation)部243、画面内NR部244、およびバッファ247を有する構成とされている。
【0109】
ノイズ低減装置220の場合、入力端子231から入力された時刻tのフレーム(入力画面)は、ノイズ計測部241、ME/MC部243、および画面内NR部244に入力される。
【0110】
画面内NR部244は、例えば、εフィルタにより入力画面のノイズを低減するようになされている。εフィルタは、非線形平滑化フィルタ、すなわち、画素値の急峻な変化を損なうことなく当該画素値を平滑化する際に有効なディジタルフィルタであり、画像のエッジを保存したまま平滑化し、その結果得られた平滑化画像を画面内ノイズ低減処理結果の画像として出力する。例えば、フィルタ窓の中心の値であるフィルタ中央値を基準レベルとし、基準レベルから±εの範囲外の値の画素の値を置き換えることで平滑化するとともに、フィルタ窓の位置をずらしながらこのような処理が繰り返され、画像が平滑化されていく。
【0111】
従って、画面内NR部244による画面内ノイズ低減処理では、時間加算NR部242による時間加算ノイズ低減処理の場合と異なり、1フレーム(または1時刻)前の入力画面のノイズを低減した画像(NR画面)を用いずに、現在の入力画面のノイズが低減される。
【0112】
εフィルタのフィルタ閾値εは、通常、処理対象の画像のノイズ量に基づいて計算される。このフィルタ閾値εを計算する際に、ノイズ計測部241により計測された入力画面のノイズ量が用いられるようになされている。
【0113】
図8におけるノイズ計測部241、時間加算NR部242、ME/MC部243、およびバッファ247は、それぞれ図4におけるノイズ計測部141、時間加算NR部142、ME/MC部143、およびバッファ147と同様の機能ブロックなので詳細な説明は省略する。ただし、時間加算NR部242は、時間加算NR部142の場合と異なり、画面内NR部244から出力された画像(画面内NR後の入力画面)の画素値と、NR画面の画素値とを用いた重み付け加算を行うようになされている。
【0114】
このように、ノイズ低減装置220の場合、時間加算ノイズ低減処理に先立って、画面内ノイズ低減処理が施されるようになされている。そして、時間加算ノイズ低減処理および画面内ノイズ低減処理の双方において、ノイズ計測部241により計測された入力画面のノイズ量が用いられるようになされている。
【0115】
次に、図9のフローチャートを参照して、図8のノイズ低減装置220による時間加算および画面内ノイズ低減処理の例について説明する。
【0116】
ステップS101において、入力端子231から画像のデータが入力される。すなわち、ノイズを低減させるべき画像のデータが入力される。
【0117】
ステップS102において、ME/MC部243は、動きベクトルに基づいてNR画面の動き補償を行う。このとき、例えば、入力画面とNR画面(バッファ247に保持されている、時刻t−1のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像のデータ)とを用いたブロックマッチング処理などを行うことにより、画面の動きを予測し動きベクトルが算出され、動き補償が行われる。
【0118】
ステップS103において、ノイズ計測部241は、入力画面のノイズ量(σの二乗)を計算する。これによりノイズ量が算出される。なお、図9のステップS103におけるノイズ計算処理は、図7を参照して上述した場合と同様の処理なので、詳細な説明は省略する。
【0119】
ステップS104において、画面内NR部244は、ステップS103の処理で計算されたノイズ量に基づいて、εフィルタのフィルタ閾値εを算出し、フィルタ閾値を決定する。
【0120】
ステップS105において、画面内NR部244は、ステップS104の処理で算出されたフィルタ閾値に基づいて入力画面を平滑化する。このとき、例えば、フィルタ窓の中心の値であるフィルタ中央値を基準レベルとし、基準レベルから±εの範囲外の値の画素の値を置き換えることで平滑化するとともに、フィルタ窓の位置をずらしながらこのような処理が繰り返され、入力画面が平滑化される。
【0121】
ステップS106において、時間加算NR部242は、ステップS103の処理で算出されたノイズ量に基づいて加算比率を決定する。このとき、例えば、ノイズ量に対応付けられて記憶されている加算比率の値が読み出されることにより、加算比率の値αが決定される。なお、ノイズ量に対応する加算比率は、時間加算NR部242に予め記憶されているものとする。
【0122】
ステップS107において、NR画面が生成される。すなわち、画面内NR後の入力画面の画素に係数(1−α)を乗じる処理を行い、動き補償されたNR画面の画素に係数αを乗じる処理が行われ、対応する画素毎に加算して時刻tのフレームに対してノイズ低減処理が施された画像のデータが生成される。
【0123】
つまり、画面内NR後の入力画面の画素値および動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、入力画面の各画素に時間加算ノイズ低減処理が施され、時刻tのフレームについてのNR画面が生成されるのである。
【0124】
なお、生成されたNR画面は、出力端子232から出力されるとともに、バッファ247に保持される。
【0125】
このようにして時間加算および画面内ノイズ低減処理が実行される。このようにすることで、より効果的に入力画面のノイズを低減させることができる。
【0126】
図10は、本技術の効果を説明する図である。同図は、縦軸が計測されたノイズの標準偏差σの値とされ、横軸が巡回履歴の値とされ、巡回履歴の変化に伴うノイズの計測結果の変化がグラフとして示されている。なお、図10における入力画面のノイズの標準編差は、どのフレーム(巡回履歴)においても一律にσ=10である。従って、正しくノイズが計測されている場合、計測結果は巡回履歴に関わらず常にσ=10である。
【0127】
図10の線301は、従来の方式により計測された計測結果を表している。なお、従来の方式は、例えば、図4のノイズ計測部141において補正部163が除去された構成とされ、ノイズ低減処理が施されたNR画面と入力画面との差分値の分散を算出し、その分散値をそのままノイズとして計測するものである。
【0128】
図10の線302は、本技術を用いた方式により計測された計測結果を表している。本技術を用いた方式では、例えば、図4のノイズ計測部141により、ノイズ低減処理が施されたNR画面と入力画面との差分値の分散を算出し、その分散値をさらに巡回履歴に基づいて補正した値をノイズとして計測する。
【0129】
図10に示されるように、線301の場合、巡回履歴が略1乃至10程度の部分において、計測結果σの値が10から大きく乖離している。これに対して、線302の場合、巡回履歴の値に関わらず、計測結果σの値がほぼ一様に10とされている。
【0130】
図10より、従来の方式では、巡回履歴が浅い場合、ノイズを正しく計測出来ないことが分かる。時間加算ノイズ低減処理では、時系列で処理を重ねるにつれてノイズ低減効果が最大化されるため、特に最初のフレームではノイズ低減効果がまだ弱く、ノイズを正しく計測出来ないからである。そして、本技術により従来の方式の問題点が改善されたことが分かる。
【0131】
なお、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。上述した一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば図11に示されるような汎用のパーソナルコンピュータ700などに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0132】
図11において、CPU(Central Processing Unit)701は、ROM(Read Only Memory)702に記憶されているプログラム、または記憶部708からRAM(Random Access Memory)703にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM703にはまた、CPU701が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0133】
CPU701、ROM702、およびRAM703は、バス704を介して相互に接続されている。このバス704にはまた、入出力インタフェース705も接続されている。
【0134】
入出力インタフェース705には、キーボード、マウスなどよりなる入力部706、LCD(Liquid Crystal display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部707、ハードディスクなどより構成される記憶部708、モデム、LANカードなどのネットワークインタフェースカードなどより構成される通信部709が接続されている。通信部709は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
【0135】
入出力インタフェース705にはまた、必要に応じてドライブ710が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア711が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部708にインストールされる。
【0136】
上述した一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、インターネットなどのネットワークや、リムーバブルメディア711などからなる記録媒体からインストールされる。
【0137】
なお、この記録媒体は、図11に示される、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フロッピディスク(登録商標)を含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)(登録商標)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア711により構成されるものだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROM702や、記憶部708に含まれるハードディスクなどで構成されるものも含む。
【0138】
なお、本明細書において上述した一連の処理は、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0139】
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0140】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
【0141】
(1)第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、
入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、
前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、
前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部と
を備える画像処理装置。
(2)前記ノイズ計測部は、
前記入力画面の画素と、前記動き補償されたNR画面の画素との差分値を演算する差分演算部と、
前記演算された差分値の分散値を算出して取得する分散取得部と、
前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて、前記取得された分散値を補正する補正部とを備える
(1)に記載の画像処理装置。
(3)前記ノイズ計測部は、
前記入力画面を構成する所定の画素数からなるブロック毎に前記ノイズを計測するとともに、
前記入力画面のブロックの画素値と、前記動き補償されたNR画面において対応するブロックの画素値とに基づいて差分特徴量を算出し、
前記差分特徴量が閾値以上となるブロックについて前記ノイズの計測の対象から除外する
(1)または(2)に記載の画像処理装置。
(4)前記ノイズ計測部により計測されたノイズに対応するフィルタ閾値に基づいて前記入力画面に面内ノイズ低減処理を施す面内ノイズ低減部をさらに備える
(1)乃至(3)のいずれかに記載の画像処理装置。
(5)動き補償部が、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行い、
ノイズ計測部が、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測し、
加算比率決定部が、前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定し、
時間加算ノイズ低減部が、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施すステップ
を含む画像処理方法。
(6)コンピュータを、
第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、
入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、
前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、
前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部とを備える画像処理装置として機能させる
プログラム。
(7)請求項6に記載のプログラムが記録されている記録媒体。
【符号の説明】
【0142】
120 ノイズ低減装置, 131 入力端子, 132 出力端子, 141 ノイズ計測部, 142 時間加算NR部, 143 ME/MC部, 147 バッファ, 161 減算器, 162 分散取得部, 163 補正部, 220 ノイズ低減装置, 231 入力端子, 232 出力端子, 241 ノイズ付加部, 242 時間加算NR部, 243 ME/MC部, 244 画面内NR部, 247 バッファ
【技術分野】
【0001】
本技術は、画像処理装置および方法、プログラム、並びに記録媒体に関し、特に、画像のノイズを低減させるために、正確にノイズを計測することができるようにする画像処理装置および方法、プログラム、並びに記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
動画の映像信号は、フレーム周期で類似の画像情報が繰り返される信号であり、フレーム間の相関が非常に強い。一方、映像信号は符号化歪やノイズ成分とは相関がないので、映像信号をフレーム単位で時間平均すると、信号成分はほとんど変化せず、歪やノイズ成分のみが小さくなるから、歪やノイズを低減することができる。
【0003】
このような映像信号の特性を利用してノイズを低減する装置として、画像の動きを検出するフレーム巡回型ノイズ低減装置がある。
【0004】
従来のノイズ低減装置は、動きベクトルを検出し、動きベクトルに基づいて動き成分を求め、画像の動き成分に応じて加算比率を変え、加算比率に基づいて現フレームの画素と前フレームの対応画素を加重平均して出力映像信号を生成する構成とされている。従って、動き補償した対応画素を累積的に加重平均することとなり、残像の発生を防止しながらノイズを低減できるようになされている。
【0005】
ノイズを低減する際には、例えば、入力画像に含まれるノイズ量を正しく計測し、ノイズ量に応じた処理を実行することが重要となる。例えば、時間加算ノイズ低減処理では、もともと入力画像のノイズが少ない場合、時間加算において本来足し込むべきでない動き補償の誤りまで足し込んでしまい、出力画像がかえって劣化してしまう場合がある。また、例えば、画面内ノイズ低減処理では、本来のノイズより強いノイズを想定してノイズ低減処理を施すと、解像感が低下してしまう場合がある。
【0006】
このように、ノイズを低減する際には、例えば、入力画像に含まれるノイズ量を正しく計測し、ノイズ量に応じた処理を実行する必要がある。
【0007】
また、検出された動きベクトルに基づいて、入力画素の動きが判定され、その判定結果に基づいて、その入力画素の静止している部分のノイズ量を推定し、ノイズ量に基づいて、その入力画素の信頼性を表す入力信頼度が計算され、入力画素と、その入力画素に対応する、1フレーム前の出力画素との重み付け加算が、それぞれの入力信頼度と出力信頼度から求められた値を重みとして行われるようにすることも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1によれば、データのS/Nが変動する場合であっても、S/Nの悪いデータが、S/Nの良いデータに影響することを抑止することができる。
【0009】
また、入力映像信号のシーンチェンジ信号に基づいてノイズレベル検出を制御すると共に、ノイズレベル検出結果に基づいて、非線形処理の強さを制御することで、2つ以上の異なる映像信号源から合成された映像信号が入力された場合でも、ノイズレベルを正確に検出できるようにする技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−126061号公報
【特許文献2】特開2001−061081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、従来の技術では、ノイズ低減処理が施されたNR画面と入力画面との差分値の分散を得ることで、入力画面のノイズ量を計測することが一般的であった。その際ノイズを正しく計測するためには、NR画面のノイズは完全に除去されていることが前提となる。
【0012】
しかしながら、時間加算ノイズ低減処理では、時系列で処理を重ねるにつれてノイズ低減効果が最大化されるため、特に最初のフレームではノイズ低減効果がまだ弱く、ノイズを正しく計測出来ないという問題がある。
【0013】
本技術はこのような状況に鑑みて開示するものであり、画像のノイズを低減させるために、正確にノイズを計測することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本技術の第1の側面は、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部とを備える画像処理装置である。
【0015】
前記ノイズ計測部は、前記入力画面の画素と、前記動き補償されたNR画面の画素との差分値を演算する差分演算部と、前記演算された差分値の分散値を算出して取得する分散取得部と、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて、前記取得された分散値を補正する補正部とを備えるようにすることができる。
【0016】
前記ノイズ計測部は、前記入力画面を構成する所定の画素数からなるブロック毎に前記ノイズを計測するとともに、前記入力画面のブロックの画素値と、前記動き補償されたNR画面において対応するブロックの画素値とに基づいて差分特徴量を算出し、前記差分特徴量が閾値以上となるブロックについて前記ノイズの計測の対象から除外するようにすることができる。
【0017】
前記ノイズ計測部により計測されたノイズに対応するフィルタ閾値に基づいて前記入力画面に面内ノイズ低減処理を施す面内ノイズ低減部をさらに備えるようにすることができる。
【0018】
本技術の一側面は、動き補償部が、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行い、ノイズ計測部が、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測し、加算比率決定部が、前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定し、時間加算ノイズ低減部が、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施すステップを含む画像処理方法である。
【0019】
本技術の一側面は、コンピュータを、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部とを備える画像処理装置として機能させるプログラムである。
【0020】
本技術の一側面においては、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償が行われ、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズが計測され、前記計測されたノイズに対応する加算比率が決定され、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理が施される。
【発明の効果】
【0021】
本技術によれば、画像のノイズを低減させるために、正確にノイズを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】時間加算ノイズ低減処理を説明する図である。
【図2】従来のIIRフィルタの構成例を示すブロック図である。
【図3】時系列で処理を重ねるにつれて大きくなるノイズ低減効果を説明する図である。
【図4】本技術を適用したノイズ低減装置の一実施の形態に係る構成例を示すブロック図である。
【図5】差分特徴量の算出の例を説明する図である。
【図6】時間加算ノイズ低減処理の例を説明するフローチャートである。
【図7】ノイズ計算処理の例を説明するフローチャートである。
【図8】本技術を適用したノイズ低減装置の別の実施の形態に係る構成例を示すブロック図である。
【図9】時間加算および画面内ノイズ低減処理の例を説明するフローチャートである。
【図10】本技術の効果を説明する図である。
【図11】パーソナルコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、ここで開示する技術の実施の形態について説明する。
【0024】
最初に時間加算ノイズ低減処理について説明する。時間加算ノイズ低減処理は、フレーム巡回型ノイズ低減処理とも称される。
【0025】
例えば、動画の映像信号(画像信号)は、フレーム周期で類似の画像情報が繰り返される信号であり、フレーム間の相関が非常に強い。一方、映像信号は符号化歪やノイズ成分とは相関がないので、画像信号をフレーム単位で時間平均すると、信号成分はほとんど変化せず、歪やノイズ成分のみが小さくなるから、歪やノイズを低減することができる。このような画像信号の特性を利用してノイズを低減する方式が、フレーム巡回型ノイズ低減処理である。フレーム巡回型ノイズ低減処理を行うノイズ低減装置は、IIR(Infinite impulse response)フィルタとも称される。
【0026】
いま、フレーム1、フレーム2、・・・フレームnにおけるノイズの標準偏差がσである場合を考える。
【0027】
フレーム1、フレーム2、・・・フレームnのそれぞれにおける画面内の全画素を、X1、X2、・・・Xnで表し、画素の分散を求める関数をVで表すと、各フレームの画面におけるノイズ量は、式(1)により表される。
【0028】
【数1】
・・・(1)
【0029】
なお、式(1)におけるσの二乗が各フレームの画面におけるノイズ量を表すことになる。
【0030】
また、フレーム1、フレーム2、・・・フレームnのそれぞれにおける画面内の画素値の平均値は、式(2)により表される。
【0031】
【数2】
・・・(2)
【0032】
そうすると、対数の法則より式(3)が導出される。
【0033】
【数3】
・・・(3)
【0034】
式(3)より、フレーム1、フレーム2、・・・フレームnの画素値を加算していくことによりノイズを低減できることが分かる。
【0035】
すなわち、図1に示されるように、例えば、動画像を構成するn枚の画面を時間方向に加算することにより、ノイズ量を1/nに低減した画面を生成することが可能となる。時間加算ノイズ低減処理では、このようにして画像のノイズを低減(Noise Reduction:NR)するようになされている。
【0036】
図2は、従来のIIRフィルタの構成例を示すブロック図である。同図におけるIIRフィルタ20は、入力端子31から入力された動画像のノイズを低減し、出力端子32から出力するようになされている。
【0037】
図2のIIRフィルタ20は、ノイズ計測部41、加算比率算出部42、ME(ME: Motion Estimation)/MC(MC: Motion Compensation)部43、乗算器44、乗算器45、加算器46、およびバッファ47を有する構成とされている。
【0038】
入力端子31から入力された第n番目のフレーム(以下、適宜入力画面と称することにする)ノイズ計測部41とME/MC部43に入力される。
【0039】
ノイズ計測部41は、入力画面のノイズの標準偏差σを算出し、加算比率算出部42に供給する。例えば、ノイズ計測部41は、後述するように、第n−1番目のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像(以下、適宜NR画面と称する)を動き補償した画像と、入力画面との差分をノイズと推定し、入力画面のノイズの標準偏差σを算出する。
【0040】
加算比率算出部42は、ノイズの標準偏差σに応じた加算比率αを算出する。そして、乗算器45には係数αが供給され、乗算器44には係数(1−α)が供給される。
【0041】
バッファ47には、第n−1番目のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像(NR画面)のデータが保持されている。
【0042】
ME/MC部43は、例えば、入力画面とNR画面とを用いたブロックマッチング処理などを行うことにより、画面の動きを予測する。これにより、動きベクトルが算出される。そして、ME/MC部43は、動きベクトルに基づいてNR画面の動き補償を行い、加算比率算出部42と乗算器45に出力する。
【0043】
乗算器44は、入力画面の画素xnのそれぞれに係数(1−α)を乗じる処理を行う。
【0044】
乗算器45は、動き補償されたNR画面の画素xn-1のそれぞれに係数αを乗じる処理を行う。
【0045】
加算器46は、乗算器44と乗算器45から出力される画素値を、対応する画素毎に加算して第n番目のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像のデータを生成する。そして、その画像のデータが出力端子32から出力される。
【0046】
このようにして、IIRフィルタ20による時間加算ノイズ低減処理が施される。上述したように、ノイズ計測部41は、入力画面のノイズの標準偏差σを算出し、加算比率算出部42に供給し、加算比率算出部42は、ノイズの標準偏差σに応じた加算比率αを算出するようになされている。
【0047】
このように、時間加算ノイズ低減処理によってノイズを低減する際には、入力画像に含まれるノイズ量を正しく計測し、ノイズ量に応じた処理を実行する必要がある。これは、例えば、もともと入力画像のノイズが少ない場合、時間加算において本来足し込むべきでない動き補償の誤りまで足し込んでしまい、出力画像がかえって劣化してしまう場合などがあるからである。
【0048】
また、上述したように、例えば、動画像を構成するn枚の画面を時間方向に加算することにより、ノイズ量を1/nに低減した画面を生成することが可能となる。
【0049】
いま、動画像の各フレームの画面におけるノイズの標準変化の値が一律にσであるとした場合、各フレームの画面におけるノイズ量はσの二乗で表される。
【0050】
そうすると、図3に示されるように、第1番目のフレームの画面(入力画面[1])に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画面(NR画面[1])のノイズ量はσの二乗となる。また、第2番目のフレームの画面(入力画面[2])に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画面(NR画面[2])のノイズ量はσの二乗を2で割った値となる。同様に、第3番目のフレームの画面(入力画面[3])に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画面(NR画面[3])のノイズ量はσの二乗を3で割った値となり、・・・第n番目のフレームの画面(入力画面[n])に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画面(NR画面[n])のノイズ量はσの二乗をnで割った値となる。
【0051】
すなわち、時間加算ノイズ低減処理では、時系列で処理を重ねるにつれてノイズ低減効果が大きくなるのである。ここで、時間加算ノイズ低減処理(フレーム巡回型ノイズ低減処理)における時系列の処理の回数nは巡回履歴とも称される。
【0052】
このことから、式(4)が導出される。なお、式(4)では、ノイズ低減処理が施されたNR画面と入力画面との差分値の分散を得ることで、入力画面のノイズ量を計測できるものとしている。
【0053】
【数4】
・・・(4)
【0054】
式(4)においては、画素の分散を求める関数をVで表し、ciは入力画面の各画素を表しており、miはNR画面の各画素を表している。なお、式(4)における巡回履歴nは、入力画面を処理するまでに施された時系列の処理の回数を意味し、例えば、入力画面が第4番目のフレームである場合、nは3となる。
【0055】
さらに、式(4)より式(5)を導出することができる。
【0056】
【数5】
・・・(5)
【0057】
式(5)より、NR画面と入力画面との差分値の分散を得ることで、入力画面のノイズ量を計測する場合、巡回履歴nを特定しなければ、正確なノイズを計測することができないことが分かる。
【0058】
そこで、本技術では、例えば、IIRフィルタのノイズ計測部におけるノイズの計測の際に巡回履歴を用いて計測値を補正するようにする。
【0059】
図4は、本技術を適用したノイズ低減装置の一実施の形態に係る構成例を示すブロック図である。同図に示されるノイズ低減装置120は、例えば、IIRフィルタとして構成される。
【0060】
図4のノイズ低減装置(IIRフィルタ)120は、ノイズ計測部141、時間加算NR部142、ME(ME: Motion Estimation)/MC(MC: Motion Compensation)部143、およびバッファ147を有する構成とされている。
【0061】
入力端子131から入力された時刻tのフレーム(入力画面)は、ノイズ計測部141、ME/MC部143、および時間加算NR部142に入力される。
【0062】
バッファ147には、時刻t−1のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像(NR画面)のデータが保持されている。
【0063】
ME/MC部143は、例えば、入力画面とNR画面とを用いたブロックマッチング処理などを行うことにより、画面の動きを予測する。これにより、動きベクトルが算出される。そして、ME/MC部143は、動きベクトルに基づいてNR画面の動き補償を行い、時間加算NR部142と減算器161に出力する。
【0064】
ノイズ計測部141は、入力画面のノイズの標準偏差σの二乗値をノイズ量として時間加算NR部142に供給する。ノイズ計測部141は、後述するように、NR画面を動き補償した画像と、入力画面との差分をノイズと推定し、入力画面のノイズの標準偏差σを算出する。
【0065】
ノイズ計測部141は、減算器161、分散取得部162、および補正部163を有する構成とされている。
【0066】
減算器161は、入力画面の各画素の値と、動き補償後のNR画面において対応する各画素の値の差分を算出する。すなわち、減算器161は、式(4)における(ci−mi)の演算を行う。
【0067】
分散取得部162は、減算器161から出力される差分値の分散を演算して取得する。すなわち、分散取得部162により、式(4)における最も左の項の演算が行われる。そして、分散取得部162は、演算結果を補正部163に出力する。
【0068】
補正部163は、時間加算NR部142から巡回履歴nを取得し、分散取得部162から出力される演算結果の値を補正する。補正部163は、n/(n+1)を分散取得部162から出力される演算結果の値に乗じることによって補正する。
【0069】
補正部163の処理結果の値が、入力画面のノイズ量としてノイズ計測部141から出力されることになる。
【0070】
なお、ノイズ計測部141が入力画面のノイズを計測する際には、所定の画素数からなるブロック毎に差分を算出し、差分値の分散の取得およびその補正を行うようになされている。
【0071】
例えば、図5に示されるように、動き補償後のNR画面と入力画面において、同じ位置の9×9画素の矩形のブロックを抽出し、それらのブロック内の画素値の差分を算出し、差分値の分散の取得およびその補正が行われる。
【0072】
図5に示されるようなブロックの抽出は、動き補償後のNR画面と入力画面のそれぞれにおいてブロックをラスタスキャンにより移動させ、ブロックを移動させる都度、抽出される。そして、抽出されたブロックのそれぞれについて、ブロック内の画素値の差分を算出し、差分値の分散の取得およびその補正が行われる。
【0073】
1画面分のブロックが抽出された後、ブロック毎のノイズ量を積算し、さらにその値が正規化されるなどして入力画面のノイズ量として出力される。
【0074】
また、ブロック毎のノイズ量を積算する際に、後述する差分特徴量を算出して閾値と比較することにより、閾値以上の差分特徴量が算出されたブロックのノイズ量を積算しないようになされている。閾値以上の差分特徴量を有するブロックでは、動き補償の誤りが生じていると考えられるからである。
【0075】
時間加算NR部142の構成は、図2を参照して上述した場合と同様である。すなわち、時間加算NR部142は、ノイズ量に応じた加算比率αを算出する加算比率算出部を有している。そして、入力画面の画素に係数(1−α)が乗じられ、動き補償されたNR画面の画素に係数αを乗じられて加算されるようになされている。
【0076】
すなわち、時間加算NR部142においては、入力画面の画素値および動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、入力画面の各画素に時間加算ノイズ低減処理が施される。これにより、時刻t+1のフレームの各画素に時間加算ノイズ低減処理が施す際に用いられるNR画面が生成されるのである。
【0077】
次に、図6のフローチャートを参照して、図4のノイズ低減装置120による時間加算ノイズ低減処理の例について説明する。
【0078】
ステップS21において、入力端子131から画像のデータが入力される。すなわち、ノイズを低減させるべき画像のデータが入力される。
【0079】
ステップS22において、ME/MC部143は、動きベクトルに基づいてNR画面の動き補償を行う。このとき、例えば、入力画面とNR画面(バッファ147に保持されている、時刻t−1のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像のデータ)とを用いたブロックマッチング処理などを行うことにより、画面の動きを予測し動きベクトルが算出され、動き補償が行われる。
【0080】
ステップS23において、ノイズ計測部141は、入力画面のノイズ量(σの二乗)を計算する。これにより後述するようにノイズ量が算出される。
【0081】
ステップS24において、時間加算NR部142は、ステップS23の処理で算出されたノイズ量に基づいて加算比率を決定する。このとき、例えば、ノイズ量に対応付けられて記憶されている加算比率の値が読み出されることにより、加算比率の値αが決定される。なお、ノイズ量に対応する加算比率は、時間加算NR部142に予め記憶されているものとする。
【0082】
ステップS25において、NR画面が生成される。すなわち、入力画面の画素に係数(1−α)を乗じる処理を行い、動き補償されたNR画面の画素に係数αを乗じる処理が行われ、対応する画素毎に加算して時刻tのフレームに対してノイズ低減処理が施された画像のデータが生成される。
【0083】
つまり、入力画面の画素値および動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、入力画面の各画素に時間加算ノイズ低減処理が施され、時刻tのフレームについてのNR画面が生成されるのである。
【0084】
なお、生成されたNR画面は、出力端子132から出力されるとともに、バッファ147に保持される。
【0085】
このようにして時間加算ノイズ低減処理が実行される。
【0086】
次に、図7のフローチャートを参照して、図6のステップS23のノイズ計算処理の詳細な例について説明する。
【0087】
ステップS41において、入力画面とNR画面から所定の画素数のブロックが抽出される。このとき、例えば、図5に示されるように、動き補償後のNR画面と入力画面において、同じ位置の9×9画素の矩形のブロックが抽出される。
【0088】
ステップS42において、差分特徴量dが演算される。ここで、差分特徴量dは、ステップS21の処理で抽出されたブロック内の画素の値の差分の平均値の絶対値として算出される。
【0089】
ステップS43において、ステップS42の処理で得られた差分特徴量dの値が予め設定された閾値と比較される。ステップS43において、差分特徴量dが閾値以上ではないと判定された場合、処理は、ステップS44に進む。
【0090】
ステップS44において、減算器161は、入力画面の各画素の値と、動き補償後のNR画面において対応する各画素の値の差分を算出する。すなわち、減算器161は、式(4)における(ci−mi)の演算を行う。
【0091】
なお、ステップS44の処理は、ステップS42の処理とともにまとめて1つの処理として同時に実行されるようにしてもよい。
【0092】
ステップS45において、分散取得部162は、ステップS44の処理で得られた差分値の分散を演算して取得する。これにより、式(4)における最も左の項の演算が行われる。
【0093】
ステップS46において、補正部163は、時間加算NR部142から巡回履歴nを取得し、nの値を特定する。
【0094】
ステップS47において、補正部163は、ステップS46の処理で特定された巡回履歴nの値に基づいて、ステップS45の処理結果として分散取得部162から出力される値を補正する。このとき、補正部163は、n/(n+1)を分散取得部162から出力される演算結果の値に乗じることによって補正する。
【0095】
ステップS48において、ステップS47の処理結果の値を、当該ブロックのノイズ量として足し込む。
【0096】
なお、ステップS43において、差分特徴量dが閾値以上であると判定された場合、ステップS44乃至ステップS48の処理はスキップされる。閾値以上の差分特徴量を有するブロックでは、動き補償の誤りが生じていると考えられるからである。つまり、差分特徴量dが閾値以上であるブロックは、ノイズの計測を行うにあたって無効なブロックとして無視されるようになされている。
【0097】
ステップS49において、1画面分の処理が終わったか否かが判定される。すなわち、例えば、図5に示されるように、動き補償後のNR画面と入力画面のそれぞれにおいてブロックをラスタスキャンにより移動させ、1画面分のブロックを抽出し、各ブロックについて上述した処理がなされたか否かが判定される。
【0098】
ステップS49において、まだ1画面分の処理が終わっていないと判定された場合、処理は、ステップS41に戻り、それ以降の処理が繰り返し実行される。
【0099】
ステップS49において、1画面分の処理が終わったと判定された場合、処理は、ステップS50に進む。
【0100】
ステップS50において、これまでにステップS48の処理で足し込まれたノイズ量が正規化される。すなわち、足し込まれたノイズ量が有効なブロック(差分特徴量dが閾値未満であるブロック)数で除されるなどして正規化される。
【0101】
ステップS51において、ステップS49の処理で正規化されたノイズ量が、入力画面のノイズ量として出力される。
【0102】
このようにして、ノイズ計算処理が実行される。
【0103】
従来の技術では、ノイズ低減処理が施されたNR画面と入力画面との差分値の分散を得ることで、入力画面のノイズ量を計測することが一般的であった。その際ノイズを正しく計測するためには、NR画面のノイズは完全に除去されていることが前提となる。
【0104】
しかしながら、時間加算ノイズ低減処理では、時系列で処理を重ねるにつれてノイズ低減効果が最大化されるため、特に最初のフレームではノイズ低減効果がまだ弱く、ノイズを正しく計測出来ないという問題があった。
【0105】
これに対して、本技術では、ノイズ量の値を得る際に、巡回履歴を取得して補正するようにした。従って、本技術によれば、画像のノイズを低減させるために、正確にノイズを計測することができる。
【0106】
ところで、以上においては、時間加算ノイズ低減処理によって入力画面のノイズを低減する際に、加算比率を決定するために必要となる情報として入力画面のノイズを計測する例について説明した。しかし、本技術により計測されたノイズを、例えば、時間加算ノイズ低減処理以外の方式によって入力画面のノイズを低減する際に必要となる情報として用いるようにしてもよい。
【0107】
図8は、本技術を適用したノイズ低減装置の別の実施の形態に係る構成例を示すブロック図である。同図に示されるノイズ低減装置220は、例えば、IIRフィルタとして構成されるが、ノイズ低減装置220は、時間加算ノイズ低減処理のみではなく、画面内ノイズ低減処理によって入力画面のノイズを低減するようになされている。
【0108】
図8のノイズ低減装置(IIRフィルタ)220は、ノイズ計測部241、時間加算NR部242、ME(ME: Motion Estimation)/MC(MC: Motion Compensation)部243、画面内NR部244、およびバッファ247を有する構成とされている。
【0109】
ノイズ低減装置220の場合、入力端子231から入力された時刻tのフレーム(入力画面)は、ノイズ計測部241、ME/MC部243、および画面内NR部244に入力される。
【0110】
画面内NR部244は、例えば、εフィルタにより入力画面のノイズを低減するようになされている。εフィルタは、非線形平滑化フィルタ、すなわち、画素値の急峻な変化を損なうことなく当該画素値を平滑化する際に有効なディジタルフィルタであり、画像のエッジを保存したまま平滑化し、その結果得られた平滑化画像を画面内ノイズ低減処理結果の画像として出力する。例えば、フィルタ窓の中心の値であるフィルタ中央値を基準レベルとし、基準レベルから±εの範囲外の値の画素の値を置き換えることで平滑化するとともに、フィルタ窓の位置をずらしながらこのような処理が繰り返され、画像が平滑化されていく。
【0111】
従って、画面内NR部244による画面内ノイズ低減処理では、時間加算NR部242による時間加算ノイズ低減処理の場合と異なり、1フレーム(または1時刻)前の入力画面のノイズを低減した画像(NR画面)を用いずに、現在の入力画面のノイズが低減される。
【0112】
εフィルタのフィルタ閾値εは、通常、処理対象の画像のノイズ量に基づいて計算される。このフィルタ閾値εを計算する際に、ノイズ計測部241により計測された入力画面のノイズ量が用いられるようになされている。
【0113】
図8におけるノイズ計測部241、時間加算NR部242、ME/MC部243、およびバッファ247は、それぞれ図4におけるノイズ計測部141、時間加算NR部142、ME/MC部143、およびバッファ147と同様の機能ブロックなので詳細な説明は省略する。ただし、時間加算NR部242は、時間加算NR部142の場合と異なり、画面内NR部244から出力された画像(画面内NR後の入力画面)の画素値と、NR画面の画素値とを用いた重み付け加算を行うようになされている。
【0114】
このように、ノイズ低減装置220の場合、時間加算ノイズ低減処理に先立って、画面内ノイズ低減処理が施されるようになされている。そして、時間加算ノイズ低減処理および画面内ノイズ低減処理の双方において、ノイズ計測部241により計測された入力画面のノイズ量が用いられるようになされている。
【0115】
次に、図9のフローチャートを参照して、図8のノイズ低減装置220による時間加算および画面内ノイズ低減処理の例について説明する。
【0116】
ステップS101において、入力端子231から画像のデータが入力される。すなわち、ノイズを低減させるべき画像のデータが入力される。
【0117】
ステップS102において、ME/MC部243は、動きベクトルに基づいてNR画面の動き補償を行う。このとき、例えば、入力画面とNR画面(バッファ247に保持されている、時刻t−1のフレームに対してノイズ低減処理が施された画像のデータ)とを用いたブロックマッチング処理などを行うことにより、画面の動きを予測し動きベクトルが算出され、動き補償が行われる。
【0118】
ステップS103において、ノイズ計測部241は、入力画面のノイズ量(σの二乗)を計算する。これによりノイズ量が算出される。なお、図9のステップS103におけるノイズ計算処理は、図7を参照して上述した場合と同様の処理なので、詳細な説明は省略する。
【0119】
ステップS104において、画面内NR部244は、ステップS103の処理で計算されたノイズ量に基づいて、εフィルタのフィルタ閾値εを算出し、フィルタ閾値を決定する。
【0120】
ステップS105において、画面内NR部244は、ステップS104の処理で算出されたフィルタ閾値に基づいて入力画面を平滑化する。このとき、例えば、フィルタ窓の中心の値であるフィルタ中央値を基準レベルとし、基準レベルから±εの範囲外の値の画素の値を置き換えることで平滑化するとともに、フィルタ窓の位置をずらしながらこのような処理が繰り返され、入力画面が平滑化される。
【0121】
ステップS106において、時間加算NR部242は、ステップS103の処理で算出されたノイズ量に基づいて加算比率を決定する。このとき、例えば、ノイズ量に対応付けられて記憶されている加算比率の値が読み出されることにより、加算比率の値αが決定される。なお、ノイズ量に対応する加算比率は、時間加算NR部242に予め記憶されているものとする。
【0122】
ステップS107において、NR画面が生成される。すなわち、画面内NR後の入力画面の画素に係数(1−α)を乗じる処理を行い、動き補償されたNR画面の画素に係数αを乗じる処理が行われ、対応する画素毎に加算して時刻tのフレームに対してノイズ低減処理が施された画像のデータが生成される。
【0123】
つまり、画面内NR後の入力画面の画素値および動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、入力画面の各画素に時間加算ノイズ低減処理が施され、時刻tのフレームについてのNR画面が生成されるのである。
【0124】
なお、生成されたNR画面は、出力端子232から出力されるとともに、バッファ247に保持される。
【0125】
このようにして時間加算および画面内ノイズ低減処理が実行される。このようにすることで、より効果的に入力画面のノイズを低減させることができる。
【0126】
図10は、本技術の効果を説明する図である。同図は、縦軸が計測されたノイズの標準偏差σの値とされ、横軸が巡回履歴の値とされ、巡回履歴の変化に伴うノイズの計測結果の変化がグラフとして示されている。なお、図10における入力画面のノイズの標準編差は、どのフレーム(巡回履歴)においても一律にσ=10である。従って、正しくノイズが計測されている場合、計測結果は巡回履歴に関わらず常にσ=10である。
【0127】
図10の線301は、従来の方式により計測された計測結果を表している。なお、従来の方式は、例えば、図4のノイズ計測部141において補正部163が除去された構成とされ、ノイズ低減処理が施されたNR画面と入力画面との差分値の分散を算出し、その分散値をそのままノイズとして計測するものである。
【0128】
図10の線302は、本技術を用いた方式により計測された計測結果を表している。本技術を用いた方式では、例えば、図4のノイズ計測部141により、ノイズ低減処理が施されたNR画面と入力画面との差分値の分散を算出し、その分散値をさらに巡回履歴に基づいて補正した値をノイズとして計測する。
【0129】
図10に示されるように、線301の場合、巡回履歴が略1乃至10程度の部分において、計測結果σの値が10から大きく乖離している。これに対して、線302の場合、巡回履歴の値に関わらず、計測結果σの値がほぼ一様に10とされている。
【0130】
図10より、従来の方式では、巡回履歴が浅い場合、ノイズを正しく計測出来ないことが分かる。時間加算ノイズ低減処理では、時系列で処理を重ねるにつれてノイズ低減効果が最大化されるため、特に最初のフレームではノイズ低減効果がまだ弱く、ノイズを正しく計測出来ないからである。そして、本技術により従来の方式の問題点が改善されたことが分かる。
【0131】
なお、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。上述した一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば図11に示されるような汎用のパーソナルコンピュータ700などに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0132】
図11において、CPU(Central Processing Unit)701は、ROM(Read Only Memory)702に記憶されているプログラム、または記憶部708からRAM(Random Access Memory)703にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM703にはまた、CPU701が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0133】
CPU701、ROM702、およびRAM703は、バス704を介して相互に接続されている。このバス704にはまた、入出力インタフェース705も接続されている。
【0134】
入出力インタフェース705には、キーボード、マウスなどよりなる入力部706、LCD(Liquid Crystal display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部707、ハードディスクなどより構成される記憶部708、モデム、LANカードなどのネットワークインタフェースカードなどより構成される通信部709が接続されている。通信部709は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
【0135】
入出力インタフェース705にはまた、必要に応じてドライブ710が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア711が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部708にインストールされる。
【0136】
上述した一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、インターネットなどのネットワークや、リムーバブルメディア711などからなる記録媒体からインストールされる。
【0137】
なお、この記録媒体は、図11に示される、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フロッピディスク(登録商標)を含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)(登録商標)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア711により構成されるものだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROM702や、記憶部708に含まれるハードディスクなどで構成されるものも含む。
【0138】
なお、本明細書において上述した一連の処理は、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0139】
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0140】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
【0141】
(1)第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、
入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、
前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、
前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部と
を備える画像処理装置。
(2)前記ノイズ計測部は、
前記入力画面の画素と、前記動き補償されたNR画面の画素との差分値を演算する差分演算部と、
前記演算された差分値の分散値を算出して取得する分散取得部と、
前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて、前記取得された分散値を補正する補正部とを備える
(1)に記載の画像処理装置。
(3)前記ノイズ計測部は、
前記入力画面を構成する所定の画素数からなるブロック毎に前記ノイズを計測するとともに、
前記入力画面のブロックの画素値と、前記動き補償されたNR画面において対応するブロックの画素値とに基づいて差分特徴量を算出し、
前記差分特徴量が閾値以上となるブロックについて前記ノイズの計測の対象から除外する
(1)または(2)に記載の画像処理装置。
(4)前記ノイズ計測部により計測されたノイズに対応するフィルタ閾値に基づいて前記入力画面に面内ノイズ低減処理を施す面内ノイズ低減部をさらに備える
(1)乃至(3)のいずれかに記載の画像処理装置。
(5)動き補償部が、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行い、
ノイズ計測部が、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測し、
加算比率決定部が、前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定し、
時間加算ノイズ低減部が、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施すステップ
を含む画像処理方法。
(6)コンピュータを、
第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、
入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、
前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、
前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部とを備える画像処理装置として機能させる
プログラム。
(7)請求項6に記載のプログラムが記録されている記録媒体。
【符号の説明】
【0142】
120 ノイズ低減装置, 131 入力端子, 132 出力端子, 141 ノイズ計測部, 142 時間加算NR部, 143 ME/MC部, 147 バッファ, 161 減算器, 162 分散取得部, 163 補正部, 220 ノイズ低減装置, 231 入力端子, 232 出力端子, 241 ノイズ付加部, 242 時間加算NR部, 243 ME/MC部, 244 画面内NR部, 247 バッファ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、
入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、
前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、
前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記ノイズ計測部は、
前記入力画面の画素と、前記動き補償されたNR画面の画素との差分値を演算する差分演算部と、
前記演算された差分値の分散値を算出して取得する分散取得部と、
前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて、前記取得された分散値を補正する補正部とを備える
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ノイズ計測部は、
前記入力画面を構成する所定の画素数からなるブロック毎に前記ノイズを計測するとともに、
前記入力画面のブロックの画素値と、前記動き補償されたNR画面において対応するブロックの画素値とに基づいて差分特徴量を算出し、
前記差分特徴量が閾値以上となるブロックについて前記ノイズの計測の対象から除外する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ノイズ計測部により計測されたノイズに対応するフィルタ閾値に基づいて前記入力画面に面内ノイズ低減処理を施す面内ノイズ低減部をさらに備える
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
動き補償部が、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行い、
ノイズ計測部が、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測し、
加算比率決定部が、前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定し、
時間加算ノイズ低減部が、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施すステップ
を含む画像処理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、
入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、
前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、
前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部とを備える画像処理装置として機能させる
プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムが記録されている記録媒体。
【請求項1】
第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、
入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、
前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、
前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記ノイズ計測部は、
前記入力画面の画素と、前記動き補償されたNR画面の画素との差分値を演算する差分演算部と、
前記演算された差分値の分散値を算出して取得する分散取得部と、
前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて、前記取得された分散値を補正する補正部とを備える
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ノイズ計測部は、
前記入力画面を構成する所定の画素数からなるブロック毎に前記ノイズを計測するとともに、
前記入力画面のブロックの画素値と、前記動き補償されたNR画面において対応するブロックの画素値とに基づいて差分特徴量を算出し、
前記差分特徴量が閾値以上となるブロックについて前記ノイズの計測の対象から除外する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ノイズ計測部により計測されたノイズに対応するフィルタ閾値に基づいて前記入力画面に面内ノイズ低減処理を施す面内ノイズ低減部をさらに備える
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
動き補償部が、第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行い、
ノイズ計測部が、入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測し、
加算比率決定部が、前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定し、
時間加算ノイズ低減部が、前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施すステップ
を含む画像処理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
第n−1番目のフレームの画像に対して時間加算ノイズ低減処理が施された画像をNR画面とし、前記NR画面に対する動き補償を行う動き補償部と、
入力された画像のデータにおいて第n番目のフレームの画像を入力画面とし、前記入力画面の画素値と前記動き補償されたNR画面の画素値から得られる所定の値を、前記時間加算ノイズ低減処理における巡回履歴に基づいて補正することで、前記入力画面のノイズを計測するノイズ計測部と、
前記計測されたノイズに対応する加算比率を決定する加算比率決定部と、
前記決定された加算比率に応じて定まる係数を乗じることにより、前記入力画面の画素値および前記動き補償されたNR画面において対応する画素値とを重み付け加算することで、前記入力画面に前記時間加算ノイズ低減処理を施す時間加算ノイズ低減部とを備える画像処理装置として機能させる
プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムが記録されている記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−227791(P2012−227791A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94456(P2011−94456)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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