説明

画像処理装置および画像処理プログラム

【課題】多値画像データにおけるグレー領域の境界線のジャギーを抑制しながら二値化を行うこと。
【解決手段】本発明は、入力された多値画像データに対して閾値マトリクスを用いた二値画像データを生成する画像処理装置において、多値画像データを濃度によって高濃度領域と低濃度領域とに区分けしてその境界線を抽出する境界線抽出部1と、多値画像データにおける閾値マトリクスと対応した領域内に境界線抽出部1で抽出した境界線が含まれる場合、その境界線によって区分けされる高濃度領域側と低濃度領域側とで対応する閾値マトリクスの閾値の高低を反転して二値化を行う反転二値化部3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された多値画像データに対して閾値マトリクスを用いた二値画像データを生成する処理を行う画像処理装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
濃度データに擬似中間調処理を施したビットマップデータ(二値画像データ)をレーザプリンタなどの画像出力機で出力すると、異なる濃度領域同士の境界にジャギーが生じるという問題がある。このジャギーを軽減する技術としては、例えば、エッジ部と非エッジ部とで複数の閾値マトリクスを使い分ける方法(特許文献1〜4)、エッジ部を強調する方法(特許文献5)、エッジ部を誤差拡散,非エッジ部を網点で表現する方法(特許文献6)などが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−288564号公報
【特許文献2】特開昭61−288565号公報
【特許文献3】特開平1−243667号公報
【特許文献4】特開2002−223356号公報
【特許文献5】特開2002−77624号公報
【特許文献6】特開2003−224719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の従来技術ではエッジ部と非エッジ部とでスクリーン構造が変わるため、エッジ部の画像に違和感が生じる。また、エッジ部に線数の高い網点を適応することから階調再現性が不安定になる。さらに、複数の処理機構を組み込むことから、処理装置のコストアップになるという問題が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものである。すなわち、本発明は、入力された多値画像データに対して閾値マトリクスを用いた二値画像データを生成する画像処理装置において、多値画像データを濃度によって高濃度領域と低濃度領域とに区分けしてその境界線を抽出する境界線抽出手段と、多値画像データにおける閾値マトリクスと対応した領域内に境界線抽出手段で抽出した境界線が含まれる場合、その境界線によって区分けされる高濃度領域側と低濃度領域側とで対応する閾値マトリクスの閾値の高低を反転して二値化を行う反転二値化手段とを備えている。
【0006】
このような本発明では、多値画像データの閾値マトリクスを用いた二値化において、閾値マトリクスに対応した領域内に高濃度領域と低濃度領域との境界線があった場合、高濃度領域側と低濃度領域側とで対応する閾値マトリクスの閾値の高低を反転して二値化を行うため、境界線を間とした高濃度領域側と低濃度領域側とでドットの成長方向が反転し、高濃度領域と低濃度領域との間でドットの切り替わりが発生して、エッジを強調できるようになる。
【0007】
また、本発明は、入力された多値画像データに対して閾値マトリクスを用いた二値画像データを生成する処理をコンピュータによって実行するための画像処理プログラムにおいて、多値画像データを濃度によって高濃度領域と低濃度領域とに区分けしてその境界線を抽出する境界線抽出ステップと、多値画像データにおける閾値マトリクスと対応した領域内に境界線抽出ステップで抽出した境界線が含まれる場合、その境界線によって区分けされる高濃度領域側と低濃度領域側とで対応する閾値マトリクスの閾値の高低を反転して二値化を行う反転二値化ステップとをコンピュータによって実行するものである。
【0008】
このような本発明では、多値画像データの閾値マトリクスを用いた二値化において、閾値マトリクスに対応した領域内に高濃度領域と低濃度領域との境界線があった場合、高濃度領域側と低濃度領域側とで対応する閾値マトリクスの閾値の高低を反転して二値化を行うため、境界線を間とした高濃度領域側と低濃度領域側とでドットの成長方向が反転し、高濃度領域と低濃度領域との間でドットの切り替わりが発生して、エッジを強調できるようになる。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本発明によれば、グレー領域の境界線をジャギーを抑制しながら二値化することが可能となる。また、境界線の状態によって閾値の高低の反転操作を制御することにより、好ましくない疑似輪郭の発生を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図に基づき説明する。図1は、第1実施形態に係る画像処理装置を説明するブロック図である。すなわち、この画像処理装置は、多値画像データに対して閾値マトリクスを用いた二値化処理を実行するにあたり、画像データの境界線部分におけるジャギーを抑制し、高精細な二値化データを生成できる点に特徴がある。
【0011】
画像処理装置は、多値画像データの中の境界線部分を抽出する境界線抽出部1と、境界線を中心とした一方側と他方側とで高濃度領域であるか低濃度領域であるかを判断する領域分割部2と、高濃度領域と低濃度領域との一方について対応する閾値マトリクスの閾値の高低を反転して二値化を行う反転二値化部3と、高濃度領域と低濃度領域との他方について対応する閾値マトリクスの通常の閾値を用いて二値化を行う通常二値化部4と、いずれかの二値化部を選択するセレクタ5とを備えている。
【0012】
境界線抽出部1は、入力された多値画像データの濃度が大きく変化する個所を境界線の候補とする。また、領域分割部2は、境界線抽出部1で抽出された境界線候補から入力画像を低濃度領域と高濃度能領域とに区分けする処理を行う。領域分割部2は、この区分けに基づき閾値マトリクスを用いた二値化を行う際の注目画素が高濃度領域に属するか、低濃度領域に属するかの領域データを出力する。
【0013】
セレクタ5は、領域分割部2から出力される領域データに基づき、注目画素が低濃度領域である場合には反転二値化部3を、また注目画素が高濃度領域である場合には通常二値化部4を選択する処理を行う。
【0014】
反転二値化部3では、閾値マトリクスの閾値の高低を反転して二値化を行う部分である。つまり、閾値マトリクスの閾値が0〜254まで所定の並びで増加する場合、この閾値の増加方向を逆転させる。例えば、0〜254の閾値を254〜0に逆転させる。計算上は、「254−元の閾値」を行うことで新たな閾値を得ることができる。
【0015】
通常二値化部4では、閾値マトリクスの通常の閾値を用いた二値化を行う。
【0016】
次に、上記構成から成る画像処理装置を用いて、境界部(エッジ部)のジャギーを抑制する仕組みについて説明する。ここでは、図2に示すような境界(エッジ)を含む多値画像データを二値化する例を説明する。
【0017】
図2に示す多値画像では、濃度の薄い部分が背景、濃い部分が文字の一部であると仮定する。図1に示す境界線抽出部1は、濃度が急激に変化する部分を境界(エッジ)として抽出し、領域分割部2では、この境界を中心として濃度の低い方を低濃度領域、高い方を高濃度領域とする。
【0018】
図3は、通常の閾値マトリクスを用いて二値化する場合を説明する模式図である。図2に示すようなエッジを含む多値画像データについて図3(a)に示す閾値が用いられると、図3(b)に示すような二値画像データが得られる。このような二値画像データでは、本来エッジとなる部分が白データとなって抜けてしまう。これがジャギーの原因となる。
【0019】
図4は、閾値の高低を反転した閾値マトリクスを用いて二値化する場合を説明する模式図である。本実施形態では、図4(a)に示すように、エッジに対して高濃度領域側(図中エッジの左上側)となる閾値マトリクスの閾値の変化の方向性を反転し、低濃度領域側(図中エッジの右下側)となる閾値マトリクスの閾値の変化の方向性はそのままにしている。図4(a)における閾値マトリクス内の太字部分が反転された閾値を示す。このような閾値マトリクスを用いて二値化すると図4(b)に示すような結果となる。高濃度領域側の閾値マトリクスの閾値変化を反転させることで、図3(b)に示すような高濃度領域での白データの抜けが一部黒データとして生成され、結果としてエッジ部分の一部が再生されることになる。
【0020】
図5は、薄いグレー背景に濃いグレー文字が配置されている多値画像データの例である。この多値画像データを図3(a)に示す通常の閾値マトリクスによって二値化したものが図5(b)、図4(a)に示す高濃度領域側が反転した閾値マトリクスによって二値化したものが図5(c)となっている。通常の閾値マトリクスを用いる場合では、エッジ部分にドット抜けが生じているが、反転した閾値マトリクスを用いる場合では、エッジ部分に一部ドットが発生して、エッジ部を認識しやすい二値画像となる。
【0021】
なお、上記の例では境界線に対して高濃度領域側となる閾値マトリクスについて閾値の高低を反転させた閾値マトリクスを用いるようにしているが、反対に低濃度領域側の閾値マトリクスの閾値変化を反転させ、高濃度領域側となる閾値マトリクスを通常の閾値で二値化するようにしてもよい。図6は、低濃度領域側の閾値マトリクスの閾値変化を反転させた例で、図6(a)に示すような大小関係の閾値マトリクスを用いて二値化した例が図6(b)となる。このように、低濃度領域側の閾値マトリクスの閾値変化を反転させてもエッジ部分の一部にドットが発生して、エッジ部分を認識しやすい二値画像を得ることが可能となる。
【0022】
図7は、第2実施形態を説明するブロック図である。第2実施形態に係る画像処理装置は、境界線抽出部1、領域分割部2、セレクタ5、反転二値化部3および通常二値化部4を備える点で第1実施形態と同様であるが、境界線抽出部1によって抽出された境界線候補のうち、閾値反転処理が不要な境界線を除去する不要境界線除去部6を備える点で相違する。
【0023】
不要境界線除去部6は、境界線抽出部1で抽出した境界線候補の中から、疑似輪郭、短すぎる境界線、密集した境界線を境界線リストから除去する。つまり、全ての境界線領域に対して閾値反転処理を行うと、好ましくない線構造(疑似輪郭)が発生する可能性がある。例えば、人間の顔のように濃度が徐々に変化する領域にも疑似輪郭が発生してしまう。
【0024】
そこで、このような障害を抑制するために、不要境界線除去部6は、例えば画像構造から閾値反転処理を行わない部分を除外する判別を行う。具体的には、画像から絵柄と文字を分離してそれぞれに適した画像処理を行う手法が考えられる(例えば、特開平07−147641号公報参照)。
【0025】
または、出力モードによって処理を切り換えることも考えられる。例えば、疑似輪郭が発生しやすい写真画像を形成する出力モードの場合には抽出したエッジに対して閾値反転処理を行わないようにし、テキストデータを形成する出力モードの場合にはエッジに対して閾値反転処理を行うようにする。また、ユーザが閾値反転処理を行うか否かを選択するようにしてもよい。
【0026】
なお、上記説明した各実施形態における各構成は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像出力装置に組み込んで構成しても、また各構成をプログラムでの処理ステップとしてコンピュータで実行する画像処理プログラムにより実現してもよい。画像処理プログラムとして実現する場合には、グラフィックスソフトウェアやプリンタドライバの一機能として実現することが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る画像処理装置を説明するブロック図である。
【図2】境界(エッジ)を含む多値画像データの例を示す模式図である。
【図3】通常の閾値マトリクスを用いて二値化する場合を説明する模式図である。
【図4】閾値の高低を反転した閾値マトリクスを用いて二値化する場合を説明する模式図である。
【図5】薄いグレー背景に濃いグレー文字が配置されている多値画像データの例を説明する模式図である。
【図6】高濃度領域側の閾値マトリクスの閾値変化を反転させた例を示す模式図である。
【図7】第2実施形態を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
1…境界線抽出部、2…領域分割部、3…反転二値化部、4…通常二値化部、5…セレクタ、6…不要境界線除去部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された多値画像データに対して閾値マトリクスを用いた二値画像データを生成する画像処理装置において、
前記多値画像データを濃度によって高濃度領域と低濃度領域とに区分けしてその境界線を抽出する境界線抽出手段と、
前記多値画像データにおける前記閾値マトリクスと対応した領域内に前記境界線抽出手段で抽出した境界線が含まれる場合、該境界線によって区分けされる高濃度領域側と低濃度領域側とで対応する前記閾値マトリクスの閾値の高低を反転して二値化を行う反転二値化手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記境界線抽出手段によって抽出された境界線のうち、強調を行う必要があるか否かを判断する境界線判断手段と、
前記境界線判断手段で強調を行う必要があると判断した場合には前記反転二値化手段を選択し、必要がないと判断した場合には前記閾値マトリクスの通常の閾値の高低によって二値化を行う通常二値化手段を選択する選択手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記境界線判断手段は、前記多値画像データのうちテキスト領域については強調を行う必要があると判断する
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記境界線判断手段は、前記多値画像データのうちイメージ領域について強調を行う必要がないと判断する
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項5】
入力された多値画像データに対して閾値マトリクスを用いた二値画像データを生成する処理をコンピュータによって実行するための画像処理プログラムにおいて、
前記多値画像データを濃度によって高濃度領域と低濃度領域とに区分けしてその境界線を抽出する境界線抽出ステップと、
前記多値画像データにおける前記閾値マトリクスと対応した領域内に前記境界線抽出ステップで抽出した境界線が含まれる場合、該境界線によって区分けされる高濃度領域側と低濃度領域側とで対応する前記閾値マトリクスの閾値の高低を反転して二値化を行う反転二値化ステップと
をコンピュータによって実行するための画像処理プログラム。
【請求項6】
前記境界線抽出ステップによって抽出された境界線のうち、強調を行う必要があるか否かを判断する境界線判断ステップと、
前記境界線判断ステップで強調を行う必要があると判断した場合には前記反転二値化ステップを選択し、必要がないと判断した場合には前記閾値マトリクスの通常の閾値の高低によって二値化を行う通常二値化ステップを選択する選択ステップと
を備えることを特徴とする請求項5記載の画像処理プログラム。
【請求項7】
前記境界線判断ステップは、前記多値画像データのうちテキスト領域については強調を行う必要があると判断する
ことを特徴とする請求項5記載の画像処理プログラム。
【請求項8】
前記境界線判断ステップは、前記多値画像データのうちイメージ領域について強調を行う必要がないと判断する
ことを特徴とする請求項5記載の画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−246293(P2006−246293A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61948(P2005−61948)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】