説明

画像処理装置および画像処理装置の制御方法

【課題】 デジタル複合機内のHDD15に障害が発生した場合であっても、HDD15が復旧するまでの間、機能を制限した状態で当該デジタル複合機を稼動させることができる。
【解決手段】 デジタル複合機内のHDD15に障害が発生し、HDD15に記憶されている第1のアプリケーション15aにより提供される種々の機能が提供できない場合、デジタル複合機1は、予めROM12に記憶されている第2のアプリケーション12cにより上記HDD15を使用しないで実行できる機能のみを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ハードディスクドライブなどの大容量の記憶装置を有するデジタル複合機などの画像処理装置と画像処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル複合機などの画像処理装置には、大容量の記憶装置としてハードディスクドライブ(HDD)が設けられている。このようなデジタル複合機に設けられているHDDには、当該デジタル複合機の種々の機能を提供するためのアプリケーションプログラムが記憶されている。また、上記のようなデジタル複合機のHDDには、処理対象となる画像データが記憶されることもある。このような構成では、HDDが使用不能となると、HDDに記憶されているアプリケーションプログラムが読み出せなくなる。このため、上記HDD内のアプリケーションプログラムが提供する当該デジタル複合機の種々の機能が実施できなくなってしまう。さらに、HDDに使用不能となると、処理対象とする画像データをHDDに保持することができなくなる。このため、HDDに画像データを記憶する必要がある機能は、実施できなくなる。
【0003】
これに対して、特開2003−84956号公報では、特定のハードウエアに障害が発生した場合、ハードウエア障害の影響がない機能を実行するものが記載されている。しかしながら、特開2003−84956号公報では、ハードウエア障害がない場合の機能を提供するアプリケーションとハードウエア障害が発生している場合の機能を提供するアプリケーションとが同一のものである。つまり、特開2003−84956号公報では、ハードウエア障害が発生した場合であっても、通常のアプリケーションを用いて実行できる機能のみを提供するようにしている。
【0004】
従って、特開2003−84956号公報のような制御方法では、アプリケーション自体が起動できない場合、当該装置を動作させることができない。具体的にいうと、特開2003−84956号公報では、アプリケーションを記憶している記憶装置に障害が発生した場合、当該記憶装置の障害の影響がない機能(当該記憶装置を使用しないで実行できる機能)も実行できないという問題がある。
【特許文献1】特開2003−84956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上記のような問題を解決するものであり、記憶装置に障害が発生した場合であっても、特定の機能を提供することができる画像処理装置と画像処理装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の画像処理装置は、種々の機能を提供する第1のアプリケーションプログラムが予め記憶され、上記第1のアプリケーションプログラムが提供する種々の機能において処理対象となる画像データを記憶する第1の記憶装置と、上記第1の記憶装置を使用せずに実行可能な機能のみを提供する第2のアプリケーションプログラムが予め記憶されている第2の記憶装置と、上記第1の記憶装置が使用可能である場合、上記第1の記憶装置に記憶されている第1のアプリケーションプログラムにより提供される機能を実行可能な状態とし、上記第1の記憶装置が使用不能な状態である場合、上記第2の記憶装置に記憶されている第2のアプリケーションプログラムにより提供される機能のみを実行可能な状態とする制御手段とを有する。
【0007】
この発明の画像処理装置の制御方法は、画像処理装置に用いられる方法であって、種々の機能を提供する第1のアプリケーションプログラムを予め第1の記憶装置に記憶しておき、上記第1の記憶装置を使用せずに実行可能な機能のみを提供する第2のアプリケーションプログラムを予め第2の記憶装置に記憶しておき、上記第1の記憶装置が使用可能である場合、上記第1の記憶装置に記憶されている第1のアプリケーションプログラムにより提供される機能を実行可能な状態とし、上記第1の記憶装置が使用不能な状態である場合、上記第2の記憶装置に記憶されている第2のアプリケーションプログラムにより提供される機能のみを実行可能な状態とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、記憶装置に障害が発生した場合であっても、特定の機能を提供することができる画像処理装置と画像処理装置の制御方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明を実施するための最良の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0010】
まず、この発明の第1、第2及び第3の実施の形態に係る画像処理装置としてのデジタル複合機1の構成について説明する。
図1は、デジタル複合機1の構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、上記デジタル複合機1は、システム制御部11、ROM(リードオンリーメモリ)12、RAM(ランダムアクセスメモリ)13、ハードディスクドライブ(HDD)制御部14、ハードディスクドライブ(HDD)15、操作パネル制御部17、操作パネル18、スキャナ制御部19、スキャナ20、プリンタ制御部21、プリンタ22、ネットワーク制御部23、ネットワーク通信部24、および外部装置インターフェース25などを有している。
【0011】
上記システム制御部11は、デジタル複合機1全体の制御を司るものである。上記ROM12は、不揮発性のメモリにより構成される。上記ROM12には、デジタル複合機1を制御するための制御プログラムあるいは制御データなどが格納される。例えば、ROM12には、ブートローダ12a、OS(オペレーティングシステム)12b、第2のアプリケーション12cなどが記憶される。上記ブートローダ12aは、デジタル複合機1を起動させるための制御プログラムである。上記OS12bは、デジタル複合機1を稼動させるための基本となる制御プログラムである。上記第2のアプリケーション12cは、デジタル複合機1の一部の機能を実行するためのアプリケーションプログラムである。この第2のアプリケーション12cについては、後で詳細に説明する。
【0012】
上記RAM13は、例えば、揮発性の汎用メモリにより構成される。上記RAM13には、動作上のプログラムやデータなどが格納される。例えば、RAM13には、起動時にOS、及び、第1のアプリケーション15a又は第2のアプリケーション12cなどがロードされる。
【0013】
上記HDD制御部14は、上記HDD15用のインターフェースであり、上記HDD15へのアクセスを制御する。上記HDD15は、大容量の記憶装置である。上記HDD15には、例えば、第1のアプリケーション15aが予め記憶されている。上記HDD15は、上記ROM12等に比べて大容量である。また、第1のアプリケーション15aはデジタル複合機1が実現する種々の機能を提供するプログラムであり、プログラムサイズ(データ量が)大きい。このため、本第1の実施の形態では、デジタル複合機1が実現する種々の機能を提供する第1のアプリケーション15aは、上記HDD15に記憶されるものとする。また、上記HDD15には、上記スキャナ20によりスキャンした画像データ、プリンタ22によりプリント処理する画像データなどの画像処理の対象となる画像データを記憶する記憶領域15bを有している。
【0014】
上記操作パネル制御部17は、操作パネル18の制御を司るものである。上記操作パネル18は、表示部と操作部とを有するユーザインターフェースである。上記操作パネル18では、表示部によりユーザに対する操作案内や当該デジタル複合機の動作設定の状態などを表示するとともに、操作部によりユーザからの操作指示が入力されるようになっている。例えば、上記操作パネル18は、タッチパネル内蔵の表示装置とテンキーなどのハードキーとにより構成される。
【0015】
上記スキャナ制御部19は、スキャナ20の制御を司るものである。上記スキャナ20は、原稿の画像を光学的に読み取って画像データに変換するものである。
上記プリンタ制御部21は、プリンタ22の制御を司るものである。上記プリンタ22は、被画像形成媒体に画像を形成するものである。上記プリンタ22は、例えば、上記スキャナ20により読み取った画像データあるいは外部から与えられた画像データに基づいて被画像形成媒体にプリントする。
【0016】
上記ネットワーク制御部23は、ネットワーク通信部24によるネットワーク5内のデータ通信を制御するものである。上記ネットワーク通信部24は、ネットワーク5内の各機器とのデータ通信を行うためのネットワークインターフェースである。
上記外部装置インターフェース25は、当該デジタル複合機1に直接接続されるリムーバルメディア用のインターフェースである。上記外部装置インターフェース25は、例えば、USB、SCSI、IEEE1394などのインターフェースである。上記外部装置インターフェース25により接続されるリムーバルメディアとしての外部装置は、例えば、USBメモリ、ハードディスクドライブ、CDドライブ、DVDドライブなどがある。
【0017】
次に、第1の実施の形態について説明する。
ここでは、上記のように構成されるデジタル複合機1の第1の実施の形態としての起動処理について説明する。
図2は、第1の実施の形態としてのデジタル複合機1の起動処理を説明するためのフローチャートである。また、図3は、第1の実施の形態としての起動処理におけるROM12、RAM13およびHDD15の関係を示す図である。
【0018】
まず、ユーザがデジタル複合機1の主電源をオンしたものとする。すると、デジタル複合機1内の各部には、図示しない電源部により電源が供給される(ステップS11)。電源が供給されると、上記システム制御部11は、ROM12に記憶されているブートローダ12aを起動する(ステップS12)。上記ブートローダ12aは、デジタル複合機の各部の動作チェックなどを行うプログラムである。なお、ブートローダ12aが不要である場合、上記ステップS12は省略される。
【0019】
上記ブートローダ12aを実行すると、上記システム制御部11は、図3に示すように、上記ROM12に記憶されているOS12bをRAM13にロードする(ステップS13)。上記OS12bは、HDD15に記憶されている第1のアプリケーション15aあるいはROM12に記憶されている第2のアプリケーション12cを実行するためのオペレーティングシステムである。言い換えると、第1のアプリケーション15aまたは第2のアプリケーション12cは、RAM13にロードされたOS12b上で動作する。
【0020】
上記OS12bをRAM13にロードすると、上記システム制御部11は、図3に示すように、上記HDD15に対するマウント処理を行う(ステップS14)。このマウント処理は、HDD15及びHDD15内のデータを識別するための処理である。このマウント処理では、例えば、HDD15内のファイルシステム(フォーマット)等をチェックする。
【0021】
上記のようなマウント処理において、上記システム制御部11は、上記HDD15が使用可能な否かを判断する(ステップS15)。この判断によりHDD15が使用可能な状態であると判断した場合(ステップS15、YES)、上記システム制御部11は、図3に示すように、上記HDD15から第1のアプリケーション15aを読み出し、上記RAM13にロードする(ステップS16)。
【0022】
上記HDD15に記憶されている第1のアプリケーション15aは、当該デジタル複合機1が提供する種々の機能を実現するための少なくとも1つ以上のプログラムから構成される。例えば、上記HDD15に記憶されている第1のアプリケーション15aは、当該デジタル複合機1が実行する全ての機能を提供する。上記第1のアプリケーション15aがRAM13にロードされると、上記デジタル複合機1は、上記第1のアプリケーション15aにより提供される種々の機能が可能な状態(つまり、通常動作状態)となる(ステップS17)。
【0023】
また、上記通常動作状態において、上記システム制御部11は、HDD15が使用可能な状態か否かを監視している(ステップS18)。これにより、通常動作状態においてHDD15に障害が発生してHDD15が使用不能な状態となった場合(ステップS18、NO)、上記システム制御部11は、後述するステップS19へ進み後述する処理を行うものとする。
【0024】
なお、第1のアプリケーション15aをRAM13にロードする過程において上記HDD15の障害が発生した場合にも(ステップS18、NO)、上記システム制御部11は、後述するステップS19へ進み後述する処理を行うものとする。
【0025】
また、上記判断によりHDD15が使用不能な状態であると判断した場合(ステップS15、NO)、上記システム制御部11は、図3に示すように、上記ROM12から第2のアプリケーション12cを読み出し、上記RAM13にロードする(ステップS19)。
【0026】
上記ROM12に記憶されている第2のアプリケーション12cは、当該デジタル複合機1が提供する種々の機能のうち、HDD15を使用しないで実行できる機能のみを行うプログラムから構成される。つまり、上記第2のアプリケーション12cでは、当該デジタル複合機1が本来有している機能を制限あるいは縮小して提供するプログラムである。なお、上記第2のアプリケーション12cが提供する機能の具体例については、後で説明する。
【0027】
上記ROM12に記憶されている第2のアプリケーション12cをRAM13にロードすると、上記システム制御部11は、上記操作パネル18の表示部により当該デジタル複合機が機能を制限あるいは縮小した状態(つまり、HDDを不使用)で使用可能である旨を表示する(ステップS20)。これにより、ユーザに対しては、当該デジタル複合機の状態を報知することができる。また、この際、上記システム制御部11は、ネットワーク等を介して当該デジタル複合機のメンテナンスを行うサービスマンへHDD15に障害が発生していることを通知するようにしても良い。
【0028】
上記第2のアプリケーション12cがRAM13にロードされると、上記デジタル複合機1は、上記第2のアプリケーション12cにより提供される機能のみが使用可能な状態(つまり、機能を制限した動作状態)となる(ステップS21)。
【0029】
上記のように、HDD15に障害が発生し、HDD15内の第1のアプリケーション15aにより提供されるHDD15を使用した機能が提供できない場合、ROM12に記憶している、HDD15を使用しないで実行できる機能のみを提供する第2のアプリケーション12cをRAM13にロードするようにしたものである。
【0030】
これにより、HDD15に障害が発生した場合であっても、HDDが復旧するまでの間、機能を制限した状態で当該デジタル複合機1を稼動させることができる。
【0031】
次に、上記第2のアプリケーション12cについて説明する。
上記のように、上記第2のアプリケーション12cは、大容量記憶装置としてのHDD15を使用しないで実行できる機能を提供することが前提となる。このため、上記第2のアプリケーション12cでは、上記HDD15に記憶される第1のアプリケーション15aが提供する機能を制限あるいは縮小した状態の機能を提供する。この第2のアプリケーションが提供する機能の例としては、以下のようなものがある。
【0032】
まず、第2のアプリケーション12cでは、コピー処理及びプリント処理において、HDD15に画像データを記憶しないで実行できる機能を提供する。
例えば、複数ページの画像データを複数部プリントする場合、通常の動作状態(第1のアプリケーションが提供する機能)では、複数ページ分の画像データを一旦HDDに保存し、複数ページからなる画像データの複数部のプリントを実現している。これに対して、HDD15が使用不能となると、画像データをHDD15に保存することができない。このため、第2のアプリケーション12cでは、複数ページの複数部のコピーあるいは複数ページのプリント機能は提供しない。
【0033】
また、HDD15以外の記憶装置(例えば、RAM13)などに画像データを保持できる場合、第2のアプリケーション12cでは、HDD15以外の記憶装置に保持できるページ数までのページ数からなる画像データの複数部のコピーあるいはプリントを提供するようにしても良い。この場合、第2のアプリケーション12cでは、画像データを保持する記憶装置をHDD以外の記憶装置として動作させる。つまり、上記第2のアプリケーション12cでは、第1のアプリケーション15aとは異なり、RAMなどのHDD以外の記憶装置に画像データを保持する制御ルーチンとなる。
【0034】
同様な理由により、上記第2のアプリケーション12cでは、画像データをHDDに一旦保持することにより実現されるソート機能も提供しない。例えば、マガジンソート機能では、印刷結果が本となるように、最初の用紙の表面に1番最初のページを印刷し、裏面に1番最後のページを印刷する。つまり、マガジンソート機能では、全てのページの画像データを取得した状態(保持した状態)でなければ、プリントを開始できない。
【0035】
このため、上記第2のアプリケーション12cでは、HDD15に画像データを保持する制御ルーチンではソート機能を提供しない。従って、上記第2のアプリケーションでは、ソート機能を提供しないか、あるいは、RAM13などのHDD15以外の記憶装置に保持できるページ数まででソート機能を提供する。
【0036】
また、HDD15が使用不能である場合、スキャンした画像データは、デジタル複合機1内のHDD15に保存することはできない。従って、上記第2のアプリケーション12cでは、スキャンした画像データをHDD15にファイリングする機能(画像ファイリング機能)は提供しない。
【0037】
ただし、上記第2のアプリケーション12cでは、スキャナ機能として、上記ネットワーク通信部24によりネットワーク経由でアクセス可能なPCあるいはMFPへのスキャンした画像データを記憶(転送)する機能、あるいは、上記外部装置インターフェース25により接続された外部装置にスキャンした画像データを記憶(転送)する機能は提供する。
【0038】
なお、当該デジタル複合機が上記ネットワーク通信部24によりネットワークに接続されている場合、上記第2のアプリケーション12cでは、HDD15の代わりにネットワーク上の外部装置の記憶部に画像データを記憶することにより、上記のような機能を提供するようにしても良い。さらに、当該デジタル複合機が上記外部装置インターフェース25により記憶部を有する外部装置が接続されている場合、上記第2のアプリケーションは、HDD15の代わりに外部装置の記憶部に画像データを記憶することにより、上記のような機能を提供するようにしても良い。
【0039】
次に、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、図1に示すようなハードウェア構成を有するデジタル複合機がネットワークを介して他の機器に接続されている画像処理システムで実現されるものである。
図4は、デジタル複合機1を含む画像処理システムの構成例を概略的に示す図である。
図4に示す画像処理システムでは、複数のデジタル複合機1(1a、1b)、ファイルサーバ2、及びクライアントPC3等がローカルエリアネットワークなどのネットワーク5により接続されている。
【0040】
上記デジタル複合機1a及び1bは、図1に示すようなハードウェア構成を有し、互いのネットワーク通信部24によりネットワーク5を介して相互に通信が可能であるものとする。また、第2の実施の形態では、上記デジタル複合機1a及び1bでは、上記第2のアプリケーション12cがROM12ではく、HDD15に記憶されているものとする。
【0041】
上記ファイルサーバ2は、上記ネットワーク5を介して上記デジタル複合機1a及び1bと通信可能なサーバコンピュータである。上記ファイルサーバ2は、例えば、大容量な記憶装置を具備する。上記クライアントPC3は、上記ネットワーク5を介して上記デジタル複合機1a及び1bと通信可能なコンピュータ(PC)である。上記クライアントPC3は、ユーザが使用するPCであるものとする。なお、ファイルサーバ2またはクライアントPC3には、第2のアプリケーション12cが記憶されているようにしても良い。
【0042】
次に、上記のような画像処理システムにおけるデジタル複合機1の第2の実施の形態としての起動処理について説明する。
図5は、第2の実施の形態としてのデジタル複合機1aの起動処理を説明するためのフローチャートである。
まず、上記HDD15に障害がない場合、つまり、HDD15が使用可能な状態である場合、上記ステップS11〜S18と同様な動作により、HDD15内の第1のアプリケーション15aがRAM13にロードされ、デジタル複合機1aは、通常動作状態となる(ステップS31〜S38)。
【0043】
また、電源オン時にHDD15が使用不能な状態であると判断した場合(ステップS35、NO)、または、通常動作時にHDD15に障害が発生した場合(ステップS38、NO)、上記デジタル複合機1aのシステム制御部11は、上記ネットワーク通信部24によりネットワーク5を介して接続されている他のデジタル複合機1bから第2のアプリケーション12cをダウンロードする。
【0044】
上記デジタル複合機1aがネットワーク経由で上記第2のアプリケーション12cをダウンロードする方法には、例えば、以下のような方法がある。
【0045】
まず、上記デジタル複合機1aは、当該デジタル複合機1aと同様な構成のデジタル複合機1bをネットワーク内が検索する。この検索結果に基づいて、上記デジタル複合機1aは、当該デジタル複合機1aと同様な構成のデジタル複合機1bにアクセスし、そのデジタル複合機1bから第2のアプリケーション12cをダウンロードする。
【0046】
また、デジタル複合機1aには、予め第2のアプリケーション12cをダウンロードするデジタル複合機1bを設定しておく。これにより、上記デジタル複合機1aは、予め設定されているデジタル複合機1bにアクセスし、デジタル複合機1bから第2のアプリケーション12cをダウンロードする。
【0047】
また、上記デジタル複合機1aとネットワーク5を介して通信可能なファイルサーバ2あるいはクライアントPC3には、上記第2のアプリケーション12cを記憶しておく。これとともに、デジタル複合機1aには、上記第2のアプリケーション12cを記憶したファイルサーバ2あるいはクライアントPC3を設定しておく。これにより、上記デジタル複合機1aは、予め設定されているファイルサーバ2あるいはクライアントPC3にアクセスし、ファイルサーバ2あるいはクライアントPC3から第2のアプリケーションをダウンロードする。
【0048】
上記のような処理によりネットワーク経由で第2のアプリケーション12cをダウンロードすると、上記システム制御部11は、ダウンロードした第2のアプリケーション12cを上記RAM13にロードする(ステップS39)。
【0049】
上記ネットワーク経由でダウンロードした第2のアプリケーション12cをRAM13にロードすると、上記システム制御部11は、上記ステップS20及びS21と同様に、上記操作パネル18の表示部に当該デジタル複合機が機能を制限あるいは縮小した状態(つまり、HDDを不使用)で使用可能である旨を表示し(ステップS40)、当該デジタル複合機1aを上記第2のアプリケーション12cにより提供される機能のみが使用可能な状態(つまり、機能を制限した動作状態)とする(ステップS41)。
【0050】
なお、第2の実施の形態では、上記第2のアプリケーション12cは、当該デジタル複合機1aのHDD15を使用しないで実行可能な機能のみを提供するものであっても良いし、当該デジタル複合機1aのHDD15の代わりにネットワーク経由で通信可能な外部装置の記憶部を用いて機能を提供するものであっても良い。
【0051】
上記のように、HDD15に障害が発生し、HDD15内の第1のアプリケーション15aにより提供されるHDD15を使用した機能が提供できない場合、ネットワーク経由でHDD15を使用しないで実行できる機能のみを提供する第2のアプリケーション12cをRAM13にロードするようにしたものである。
【0052】
これにより、ROM12に第2のアプリケーションを記憶しておくことなく(第2のアプリケーションがROM12の記憶領域を占有することなく)、HDD15に障害が発生した場合に機能を制限した状態で当該デジタル複合機1を稼動させることができる。
【0053】
次に、第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、図1に示すようなハードウエア構成を有するデジタル複合機に外部装置が接続された状態において実現されるものである。また、第3の実施の形態では、上記デジタル複合機1のROM12には、上記第2のアプリケーション12cが記憶されていないものとする。
【0054】
図6は、リムーバルメディアなどの外部装置Rが接続されたデジタル複合機を概略的に示す図である。図6に示す状態のデジタル複合機1では、外部装置Rの記憶部に記憶されているデータを取得することができるようになっている。また、外部装置Rとしては、例えば、USBメモリ、ハードディスクドライブ、CDドライブ、DVDドライブなどがある。
【0055】
次に、第3の実施の形態としての上記外部装置Rが接続された状態のデジタル複合機1の起動処理について説明する。
図7は、第3の実施の形態としてのデジタル複合機1の起動処理を説明するためのフローチャートである。
まず、上記HDD15に障害がない場合、つまり、HDD15が使用可能な状態である場合、上記ステップS11〜S18と同様な動作により、HDD15内の第1のアプリケーション15aがRAM13にロードされ、デジタル複合機1は、通常動作状態となる(ステップS51〜S58)。
【0056】
また、電源オン時にHDD15が使用不能な状態であると判断した場合(ステップS55、NO)、または、通常動作時にHDD15に障害が発生した場合(ステップS58、NO)、上記デジタル複合機1のシステム制御部11は、上記外部装置インターフェース25を介して接続されている外部装置Rから第2のアプリケーション12cを読み出し(ステップS58)、RAM13にロードする(ステップS59)。
【0057】
なお、外部装置Rが接続されていない場合、あるいは、外部装置Rから第2のアプリケーション12cが読み出せない場合、上記システム制御部11は、当該デジタル複合機1の動作を中止するようにしても良い。この場合、上記操作パネル18には、当該デジタル複合機1がHDDの障害及び外部装置の非装備により動作できない旨を表示するようにする。これに対して、ユーザが第2のアプリケーション12cを記憶した外部装置を接続し、再度電源をオンすることにより当該デジタル複合機1は、第2のアプリケーション12cによる動作が可能となる。
【0058】
上記のような処理により外部装置Rから読み出した第2のアプリケーション12cをRAM13にロードすると、上記システム制御部11は、上記ステップS20及びS21と同様に、上記操作パネル18の表示部に当該デジタル複合機が機能を制限あるいは縮小した状態(つまり、HDDを不使用)で使用可能である旨を表示し(ステップS60)、当該デジタル複合機1を上記第2のアプリケーション12cにより提供される機能のみが使用可能な状態(つまり、機能を制限した動作状態)とする(ステップS61)。
【0059】
なお、第3の実施の形態では、上記第2のアプリケーション12cは、当該デジタル複合機1のHDD15を使用しないで実行可能な機能のみを提供するものであっても良いし、当該デジタル複合機1のHDD15の代わりに外部装置Rの記憶部を用いて機能を提供するものであっても良い。
【0060】
上記のように、HDD15に障害が発生し、HDD15内の第1のアプリケーション15aにより提供されるHDD15を使用した機能が提供できない場合、当該デジタル複合機1に接続されている外部装置RからHDD15を使用しないで実行できる機能のみを提供する第2のアプリケーション12cをRAM13にロードするようにしたものである。
【0061】
これにより、ROM12に第2のアプリケーションを記憶しておくことなく(第2のアプリケーションがROMの記憶領域を占有することなく)、HDD15に障害が発生した場合に機能を制限した状態で当該デジタル複合機1を稼動させることができる。
【0062】
なお、上記第1、第2、第3の実施の形態では、大容量記憶装置としてのHDDにデジタル複合機1が提供するサービスや機能を実現するアプリケーション(第1のアプリケーション)を記憶していることを前提としている。これは、デジタル複合機1が提供するサービスや機能が非常に多種多様になってきているため、全ての機能(あるいは多くの機能)を実現する第1のアプリケーションのプログラムサイズ(データ量)が肥大化しているためである。
【0063】
このようなデータ量の大きな第1のアプリケーションは、容量あたりの単価が比較的安価なHDDなどの大容量記憶装置に記憶するのがコスト的に現実的である。例えば、上記のような第1のアプリケーションをHDDよりも記憶領域当たりの単価が高価なROMに記憶すると、デジタル複合機のコストが非常に高価になってしまう。
【0064】
これに対して、第1の実施の形態では、HDDに障害が発生した時に使用するアプリケーションのみをROMに記憶しておくようにしている。また、第2の実施の形態では、他のデジタル複合機などのネットワーク経由でアクセス可能な外部装置のHDDに第2のアプリケーションを記憶しておくようにしている。また、第3の実施の形態では、デジタル複合機に直接的に接続可能な外部装置に第2のアプリケーションを記憶するようにしている。
【0065】
これにより、第1、第2、第3の実施の形態では、第1のアプリケーションを記憶しているHDDが使用不能となった場合であっても、当該デジタル複合機の機能を制限あるいは縮小した状態で当該デジタル複合機を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係る画像処理装置としてのデジタル複合機の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態としてのデジタル複合機の起動処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】第1の実施の形態としての起動処理におけるROM、RAMおよびHDDの関係を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係るデジタル複合機を含む画像処理システムの構成例を概略的に示す図である。
【図5】第2の実施の形態としてのデジタル複合機の起動処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】第3の実施の形態に係るリムーバルメディアなどの外部装置が接続されたデジタル複合機を概略的に示す図である。
【図7】第3の実施の形態としてのデジタル複合機の起動処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
11…システム制御部、12…ROM、12a…ブートローダ、12b…OS(オペレーティングシステム)、12c…第2のアプリケーション、13…RAM、14…ハードディスクドライブ制御部、15…ハードディスクドライブ(HDD)、15a…第1のアプリケーション、15b…記憶領域、17…操作パネル制御部、18…操作パネル、19…スキャナ制御部、20…スキャナ、21…プリンタ制御部、22…プリンタ、23…ネットワーク制御部、24…ネットワーク通信部、25…外部装置インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種々の機能を提供する第1のアプリケーションプログラムが予め記憶され、上記第1のアプリケーションプログラムが提供する種々の機能において処理対象となる画像データを記憶する第1の記憶装置と、
上記第1の記憶装置を使用せずに実行可能な機能のみを提供する第2のアプリケーションプログラムが予め記憶されている第2の記憶装置と、
上記第1の記憶装置が使用可能である場合、上記第1の記憶装置に記憶されている第1のアプリケーションプログラムにより提供される機能を実行可能な状態とし、上記第1の記憶装置が使用不能な状態である場合、上記第2の記憶装置に記憶されている第2のアプリケーションプログラムにより提供される機能のみを実行可能な状態とする制御手段と、
を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の記憶装置は、ハードディスクドライブである、ことを特徴とする前記請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記第2の記憶装置は、リードオンリーメモリである、ことを特徴とする前記請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記制御手段は、当該画像処理装置の起動時に上記第1の記憶装置が使用可能か否かを判断する、ことを特徴とする前記請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
さらに、上記第2の記憶装置に記憶されている第2のアプリケーションプログラムにより提供される機能のみが実行可能な状態である場合、当該画像処理装置の機能が制限されている旨を報知する報知手段を有する、ことを特徴とする前記請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
さらに、第3の記憶装置を有し、
上記第2のアプリケーションは、上記第1の記憶装置の代わりとして第3の記憶装置を使用することにより実行可能な機能を提供する、ことを特徴とする前記請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
上記第3の記憶装置は、ランダムアクセスメモリである、ことを特徴とする前記請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
さらに、リムーバルメディアを接続するインターフェースを有し、
上記第2のアプリケーションプログラムは、上記インターフェースにより接続されるリムーバルメディアを上記第1の記憶装置の代わりとして使用することにより実行可能な機能を提供する、ことを特徴とする前記請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
さらに、リムーバルメディアを接続するインターフェースを有し、
上記第2の記憶装置は、上記インターフェースにより接続されるリムーバルメディアである、ことを特徴とする前記請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
さらに、ネットワークに接続するネットワークインターフェースを有し、
上記第2の記憶装置は、上記ネットワークインターフェースによりネットワークを介して接続される外部装置内の記憶装置である、ことを特徴とする前記請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
画像処理装置に用いられる制御方法であって、
種々の機能を提供する第1のアプリケーションプログラムを予め第1の記憶装置に記憶しておき、
上記第1の記憶装置を使用せずに実行可能な機能のみを提供する第2のアプリケーションプログラムを予め第2の記憶装置に記憶しておき、
上記第1の記憶装置が使用可能である場合、上記第1の記憶装置に記憶されている第1のアプリケーションプログラムにより提供される機能を実行可能な状態とし、
上記第1の記憶装置が使用不能な状態である場合、上記第2の記憶装置に記憶されている第2のアプリケーションプログラムにより提供される機能のみを実行可能な状態とする、
ことを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項12】
上記第1の記憶装置は、ハードディスクドライブである、ことを特徴とする前記請求項11に記載の画像処理装置の制御方法。
【請求項13】
上記第2の記憶装置は、リードオンリーメモリである、ことを特徴とする前記請求項11に記載の画像処理装置の制御方法。
【請求項14】
さらに、上記第1の記憶装置が使用可能か否かは、当該画像処理装置の起動時に判断する、ことを特徴とする前記請求項11に記載の画像処理装置の制御方法。
【請求項15】
さらに、上記第2の記憶装置に記憶されている第2のアプリケーションプログラムにより提供される機能のみが実行可能な状態である場合、当該画像処理装置の機能が制限されている旨を報知する、ことを特徴とする前記請求項11に記載の画像処理装置の制御方法。
【請求項16】
上記画像処理装置は、さらに、第3の記憶装置を有し、
上記第2のアプリケーションプログラムは、上記第1の記憶装置の代わりとして第3の記憶装置を使用することにより実行可能な機能を提供するものである、ことを特徴とする前記請求項11に記載の画像処理装置の制御方法。
【請求項17】
上記第3の記憶装置は、ランダムアクセスメモリである、ことを特徴とする前記請求項16に記載の画像処理装置の制御方法。
【請求項18】
上記第2のアプリケーションプログラムは、当該画像処理装置に接続されているリムーバルメディアを上記第1の記憶装置の代わりとして使用することにより実行可能な機能を提供するものである、ことを特徴とする前記請求項11に記載の画像処理装置の制御方法。
【請求項19】
上記第2のアプリケーションプログラムを記憶する第2の記憶装置は、当該画像処理装置に接続されているリムーバルメディアである、ことを特徴とする前記請求項11に記載の画像処理装置の制御方法。
【請求項20】
上記第2のアプリケーションプログラムを記憶する第2の記憶装置は、当該画像処理装置とネットワークを介して通信可能な外部装置内の記憶装置である、ことを特徴とする前記請求項11に記載の画像処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−113680(P2006−113680A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298016(P2004−298016)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】