説明

画像処理装置及びその方法並びにプログラム

【課題】色の黒ずみが生ずるという弊害を解消し、色鮮鋭度を保ちながら、エッジ付近、特に、斜め方向のエッジ付近に発生する偽色を低減すること。
ことを目的とする。
【解決手段】 緑色成分画像の注目画素の周辺に位置する周辺画素の画素値を用いて、該注目画素周辺の構造判定を行い、偽色低減領域から除外する除外領域を特定する構造判定部303と、除外領域以外の領域において、斜め方向のエッジ領域を検出する高周波取得部304と、高周波取得部304によって検出された斜め方向のエッジ領域を偽色低減領域として特定する第1偽色低減領域特定部307とを具備する画像処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びその方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像素子とそれに付随するアナログ回路およびA/Dコンバータ等で構成される撮像系から得られるデジタル化された画像信号中に含まれる、本来あるはずのない画素からなる偽色画素を、色鮮鋭度を保ったまま低減する方法として、画像の高周波信号を取得し、取得した高周波信号に近接した画素の偽色画素判定を行った後、色差情報に対して平滑化処理を行うことが提案されている。
【0003】
例えば、特開2002−262299号公報には、エッジ検出フィルタ等を使用して輝度差の大きいエッジ領域を検出し、エッジ領域に近接した画素の色差(Cb,Cr)が任意の範囲にあるか否かを判定することで偽色画素を検出し、検出したエッジ領域のエッジ勾配の大きさおよびエッジ勾配の方向からなるエッジ情報を算出し、算出したエッジ情報に基づいて予め設定されている平滑化フィルタを使用して平滑化を行うことで偽色を低減する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−262299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、特許文献1に開示されている偽色低減方法では、エッジの方向を検出し、エッジ方向に沿った平滑化処理を行うことで、偽色を低減している。しかしながら、この方法では、エッジの角が丸まってしまい、色が黒ずむ等の問題があった。また、この問題は、上述したエッジ方向に沿って平滑化処理を行う方法に限られるものではなく、例えば、エッジ領域において等方向に平滑化処理を行う場合にも生じるものであった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、色の黒ずみが生ずるという弊害を解消し、色鮮鋭度を保ちながら、エッジ付近、特に、斜め方向のエッジ付近に発生する偽色を低減することが可能な画像処理装置及びその方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第1の態様は、カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、いずれかの色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行う画像処理装置であって、前記色成分画像の注目画素の周辺に位置する周辺画素の画素値を用いて、該注目画素周辺の構造判定を行い、偽色低減領域から除外する除外領域を特定する構造判定部と、前記除外領域以外の領域において、斜め方向のエッジ領域を検出する高周波取得部と、前記高周波取得部によって検出された斜め方向のエッジ領域から偽色低減領域を特定する偽色低減領域特定部とを具備する画像処理装置である。
【0007】
本発明の第2の態様は、カラー画像を構成する複数の色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行う画像処理装置であって、カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その構造情報から偽色低減領域の候補領域を特定する第1領域特定部と、カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その色情報から偽色低減領域の候補領域を特定する第2領域特定部と、前記第1領域特定部によって特定された前記偽色低減領域の候補領域と、前記第2領域特定部によって特定された前記偽色低減領域の候補領域とから、偽色低減領域を決定する偽色低減領域決定部とを具備する画像処理装置である。
【0008】
本発明の第3の態様は、カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、いずれかの色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行う画像処理方法であって、前記色成分画像の注目画素の周辺に位置する周辺画素の画素値を用いて、該注目画素周辺の構造判定を行い、偽色低減領域から除外する除外領域を特定する過程と、前記除外領域以外の領域において、斜め方向のエッジ領域を検出する過程と、検出された前記斜め方向のエッジ領域から偽色低減領域を特定する過程とを有する画像処理方法である。
【0009】
本発明の第4の態様は、カラー画像を構成する複数の色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行う画像処理方法であって、カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その構造情報から偽色低減領域の候補領域を特定する過程と、カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その色情報から偽色低減領域の候補領域を特定する過程と、構造情報から特定された前記偽色低減領域の候補領域と、色情報から特定された前記偽色低減領域の候補領域とから、偽色低減領域を決定する過程とを有する画像処理方法である。
【0010】
本発明の第5の態様は、カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、いずれかの色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行うための画像処理プログラムであって、前記色成分画像の注目画素の周辺に位置する周辺画素の画素値を用いて、該注目画素周辺の構造判定を行い、偽色低減領域から除外する除外領域を特定する処理と、前記除外領域以外の領域において、斜め方向のエッジ領域を検出する処理と、検出された前記斜め方向のエッジ領域から偽色低減領域を特定する処理とをコンピュータに実行させるための画像処理プログラムである。
【0011】
本発明の第6の態様は、カラー画像を構成する複数の色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行うための画像処理プログラムであって、カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その構造情報から偽色低減領域の候補領域を特定する処理と、カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その色情報から偽色低減領域の候補領域を特定する処理と、構造情報から特定された前記偽色低減領域の候補領域と、色情報から特定された前記偽色低減領域の候補領域とから、偽色低減領域を決定する処理とをコンピュータに実行させるための画像処理プログラムである。
本発明において、上記色成分画像は、例えば、RGBの各色成分画像、YCbCrの各成分画像等をいう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、色の黒ずみが生ずるという弊害を解消し、色鮮鋭度を保ちながら、エッジ付近、特に、斜め方向のエッジ付近に発生する偽色を低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る画像処理装置及びその方法並びにプログラムの各実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る撮像システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示されるように、本実施形態に係る撮像システム1は、撮像部2及び画像処理装置3を備えている。
【0015】
撮像部2は、不図示のレンズ系、IRカットフィルタ、光学ローパスフィルタ、RGB原色系の単板撮像素子(例えば、CCD、CMOS等)等を備えている。撮像部2において、レンズ系、IRカットフィルタ、光学ローパスフィルタを通じて単板撮像素子上に結像した光は、光電変換され、アナログ信号の画像信号が生成される。アナログ信号の画像信号は、画像処理装置3に転送される。
【0016】
画像処理装置3は、例えば、ASIC等を備え、アナログ/デジタル変換部(以下「A/D変換部」という。)101、信号処理部102、補間処理部103、偽色低減部104、エッジ強調部105、画質調整部106、加算部107、ノイズ低減部108、圧縮記録部109、撮影制御部110等を主な構成要素として備えている。また、画像処理装置3は、電源スイッチ、シャッターボタン、並びに撮影時の各種モードの切替を行うためのインターフェースを備えた外部I/F部(図示略)、出力部(図示略)等を備えている。
【0017】
A/D変換部101は、アナログ信号の画像信号をデジタル信号の画像信号に変換して出力する。ここで、本実施形態に係る撮像システムは、RGB原色系の単板撮像素子を想定しているため、A/D変換部101からは、Rs(赤)、Gs(緑)、Bs(青)の各色成分画像が出力されることとなる。
【0018】
A/D変換部101から出力された各色成分画像は、信号処理部102に転送される。信号処理部102は、Rs、Gs、Bsの各色成分画像に対してオプティカルブラック処理、ホワイトバランス処理等の公知の信号処理を施し、処理後の各色成分画像を補間処理部103に出力する。
【0019】
補間処理部103は、例えば、図2に示すように、高域生成部201、RGB生成部202、色差LPF部203、及び水平垂直偽色低減部204等を主な構成要素として備えている。
補間処理部103のRGB生成部202は、Rs、Bs、Gsの各色成分画像の各画素に対して、欠落している色成分を補うことにより、各画素に対してRGB(赤、緑、青)の各色が補間された各色成分画像を生成し、補間後の色成分画像を色差LPF部203に出力する。色差LPF部203は、各色成分画像の色差を平滑化処理し、水平垂直偽色低減部204に出力する。水平垂直偽色低減部204は、緑色成分画像を使用して赤色成分画像、青色成分画像の水平垂直方向のエッジ付近に発生する偽色を低減し、偽色低減処理後の各色成分画像を偽色低減部104(図1参照)に出力する。更に、補間処理部103は、入力されたRs、Bs、Gsの各色成分画像からエッジ強調用の高周波信号YHを生成し、高周波信号YHをエッジ強調部105に出力する。
【0020】
偽色低減部104では、補間処理部103から入力されたRGBの各色成分画像のうち、特に、画素配列方向に対して斜め方向のエッジ付近に発生する偽色を低減し、処理後の各色成分画像を画質調整部106へ出力する。ここで、偽色低減部104は本発明の特徴部分であり、その詳細については後述する。
【0021】
エッジ強調部105は、補間処理部103から入力された高周波信号YHに対して所定の強調処理を行うことにより、高周波信号YH´を求め、この高周波信号YH´を加算部107に出力する。
【0022】
画質調整部106は、図3に示されるように、カラーマトリックス処理部401、ガンマ補正部402,403,404、及び信号変換処理部405を主な構成要素として備えている。画質調整部106において、カラーマトリックス処理部401は、偽色低減部104から出力されたRBG色空間で表された各色成分画像をsRBG等の所定色空間に変換し、出力する。変換後の各成分画像は、それぞれγ補正部402、403、404に出力され、色毎にビット変換が行われる。例えば、12ビットの信号が8ビットの信号に変換される。γ補正後のRγ,Gγ,Bγの各色成分画像は、信号変換処理部405に出力される。信号変換処理部405は、以下の式を用いることにより、RγGγBγの各色成分画像をYCbCr色空間で表される各成分画像に変換し、出力する。
【0023】
Y=0.299R+0.587G+0.114B(0≦Y≦255)
Cb=−0.169R−0.331G+0.500B(−128≦Cb≦127)
Cr=0.500R−0.419G−0.081B(−128≦Cr≦127)
【0024】
画質調整部106から出力されたY成分画像は、加算部107においてエッジ強調部105から出力される高周波信号YH´と加算され、加算後のY´成分画像がノイズ低減部108に出力される。一方、画質調整部106から出力されたCb、Crの各成分画像については、そのままノイズ低減部108に出力される。
【0025】
ノイズ低減部108は、入力されたYCbCrの各成分画像から、カラー撮像系に起因するランダムノイズ、スパイクノイズ等を低減し、低減したYCbCrの各成分画像を圧縮記録部109に出力する。
圧縮記録部109はノイズ低減部107から入力されたYCbCrの各成分画像を画像圧縮し、フラッシュメモリやハードディスク、磁気テープ等の所定記録媒体に記録する。
【0026】
次に、本発明の特徴部分である上記偽色低減部104について図を用いて詳しく説明する。図4は、偽色低減部104の概略構成を示すブロック図である。図4に示すように、偽色低減部104は、緑色成分画像の注目画素の周辺に位置する周辺画素の画素値を用いて、該注目画素周辺の構造判定を行い、偽色低減領域から除外する除外領域を特定する構造判定部303と、除外領域以外の領域において、斜め方向のエッジ領域を検出する高周波取得部304と、高周波取得部304によって特定された斜め方向のエッジ領域を偽色低減領域として特定する第1偽色低減領域特定部(偽色低減領域特定部)307とを主な構成として備えている。更に、偽色低減部104は、色差生成部302、エッジ方向判別部309、色平滑化部310、及びRGB生成部311等を備えている。
【0027】
上記色差生成部302には、RGBの各色成分画像が入力される。色差生成部302は、R(赤)−G(緑)色差成分、B(青)−G(緑)色差成分を算出し、算出結果を色平滑化部310に出力する。
上記構造判定部303及び高周波取得部304には、補間処理部103から出力された緑色成分画像が入力される。構造判定部303は、補間処理部103から入力される緑色成分画像について、画素毎に構造判定値thrを求める。例えば、図5(a)に示すように、注目画素をa0、注目画素a0を中心として斜め方向に位置する4つの周辺画素をa1,a2,a3,a4とすると、注目画素a0の構造判定値thrは以下の(1)式で求められる。
【0028】
thr=||a1−a4|−|a2−a3|| (1)
【0029】
ここで、a1とa4、及びa2とa3は、注目画素を挟んで対角線上にそれぞれ位置している。例えば、注目画素a0、周辺画素a1〜a4が、図5(b)に示すような画素値を持っている場合には、注目画素a0における構造判定値thrは大きな値をとり、例えば、図5(c)に示すような画素値を持っている場合には、構造判定値thrは小さな値をとる。構造判定値が大きな値となる領域は、例えば、図6の領域Bで表されるような斜めのエッジ領域に属する各画素に相当し、構造判定値が小さな値となる領域は、例えば、図6の領域Aのようなエッジが交差する領域に属する各画素に相当する。
【0030】
ここで、図6に領域Aで示されるようなエッジが交差する領域は、等方向或いはエッジの方向に沿った単一方向に平滑化を行うと不安定になり、角を丸めて色を黒ずませる原因となる。従って、構造判定部303では、このような領域を除外領域として検出し、偽色低減領域から除外する。そのため、例えば、構造判定部303は、各画素について算出した構造判定値thrを予め設定されている所定の値slantTHとそれぞれ比較し、所定の値slantTHよりも小さな構造判定値thrを持つ画素を除外領域として特定する。除外領域として特定した画素についてはフラグを0に設定し、除外領域以外の領域については、フラグを1に設定する。
このフラグは、後段の高周波取得部304において、高周波信号を取得するか否か、つまり、エッジ検出処理を行うか否かを示すものであり、フラグ1の場合には、高周波信号を取得する旨を示し、フラグ0の場合には、高周波信号を取得しない旨を示している。
【0031】
高周波取得部304は、バンドパスフィルタを保有している。図7(a),(b)に、高周波取得部304が保有するバンドパスフィルタの一例を示す。バンドパスフィルタは、斜め方向のエッジを取得する周波数特性を持っていれば良く、係数やフィルタサイズは図7(a),(b)に示すフィルタに限られない。例えば、画素の微分値に基づいてエッジ領域を検出するGradient、Laplacian、Prewitt、Sobelオペレータ等のエッジ検出フィルタを用いてもよいし、注目画素と周辺画素との分散を評価する値に基づいてエッジ領域を検出しても良い。
【0032】
高周波取得部304は、構造判定部303から入力される各画素に与えられたフラグの状態を判別する。この結果、フラグが1であれば、バンドパスフィルタを用いて高周波信号を得る。一方、フラグが0である場合には、当該画素位置の高周波信号を0に設定する。更に、高周波取得部304は、バンドパスフィルタを用いて得られる高周波信号が負である場合には高周波信号を0に変更(クリップ)する。この結果、構造判定部303から入力される各画素に与えられたフラグが1である画素位置については、高周波信号が検出され、更に、その高周波信号の値が負である画素については高周波信号が0に設定される。また、構造判定部303から入力される各画素に与えられたフラグが0である画素位置については、その画素位置の高周波信号が0に設定されることとなる。フィルタリング処理後の高周波信号は、第1偽色低減領域特定部307に出力される。
【0033】
第1偽色低減領域特定部307は、高周波取得部304からの高周波信号において、各画素位置の高周波信号が予め設定されている所定の値以上であるか否か、例えば、0よりも大きいか否かを判断し、0の場合には非偽色低減領域と判断し、高周波信号が0よりも大きい場合に偽色低減領域であると判断する。この判断結果は、色平滑化部310に出力される。
【0034】
エッジ方向判別部309は、高周波取得部304からの色成分画像において、注目画素とその周辺画素との差分を複数方向に対して算出し、差分が最小の方向をエッジ方向として決定し、このエッジ方向を色平滑化部310へ出力する。具体的には、エッジ方向判別部309は、図8に示される例において、e0〜e7の8方向に対する差分を以下の式を用いて算出し、e0〜e7のうち差分が最小の値となる方向にエッジが存在すると判断して、エッジ方向を色平滑化部310へ出力する。図8では、Y22を注目画素とし、この注目画素を中心として5×5の画素範囲を周辺画素として設定している。
【0035】
e0=|Y22−Y23|+|Y22−Y24|+|Y22−Y21|+|Y22−Y20|
e1=|Y22−Y23|+|Y22−Y14|+|Y22−Y21|+|Y22−Y30|
e2=|Y22−Y13|+|Y22−Y04|+|Y22−Y31|+|Y22−Y40|
e3=|Y22−Y12|+|Y22−Y03|+|Y22−Y32|+|Y22−Y41|
e4=|Y22−Y12|+|Y22−Y02|+|Y22−Y32|+|Y22−Y42|
e5=|Y22−Y12|+|Y22−Y01|+|Y22−Y32|+|Y22−Y43|
e6=|Y22−Y11|+|Y22−Y00|+|Y22−Y33|+|Y22−Y44|
e7=|Y22−Y31|+|Y22−Y10|+|Y22−Y23|+|Y22−Y34|
【0036】
なお、図8では、注目画素の近傍5×5画素の範囲を周辺画素として、8方向についてエッジ方向を判別しているが、周辺画素の範囲は任意に設定することが可能である。エッジ方向の判別精度を向上させるためには、7×7画素や9×9画素の範囲で判別しても良いし、範囲を拡張させることに伴い、エッジ方向を16方向に設定して判別することも可能である。
【0037】
色平滑化部310には、上記色差生成部302からR−G色差成分及びB−G色差成分が、また、第1偽色低減領域特定部307から偽色低減領域に関する情報が入力される。色平滑化部310は、第1偽色低減領域特定部307によって偽色低減領域であると判定された領域に属する画素のR−G色差成分、B−G色差成分を抽出し、これらの色差成分に対して、エッジ方向判別部309によって判別されたエッジ方向(単一方向)に沿った相加平均又は加重平均処理を行うことで色平滑化処理を行い、その結果をRGB生成部311へ出力する。ここで、相加平均又は加重平均処理を行う範囲は、エッジ方向判別部309でエッジ方向を判別した周辺画素の範囲と同じサイズで処理することが好ましい。
【0038】
RGB生成部311は、色平滑化部310から入力されたR−G色差成分、B−G色差成分に対して補間処理部102から入力された緑色成分を加算することで、RGBの色成分画像を生成し、画質調整部105へ出力する。
【0039】
このような構成を備える偽色低減部104においては、構造判定部303による構造判定が緑色成分画像に基づいて行われることにより、偽色低減処理を施してしまうと黒ずみなどの弊害が生ずる領域、例えば、エッジが交差する領域等が除外領域として特定され、続く高周波取得部304において、除外領域以外の領域に対してバンドパスフィルタを用いた高周波取得処理が行われるとともに、除外領域については高周波信号に0を設定し、処理後の高周波信号が第1偽色低減領域特定部307に出力される。第1偽色低減領域特定部307は、各画素位置の高周波信号を予め設定されている所定の値と比較し、所定の値以上(或いは、所定の値よりも大きな値)を有する領域を偽色低減領域として決定し、この結果を色平滑化部311に出力する。一方、エッジ方向判別部309では、高周波取得部304から出力される高周波信号に基づいてエッジ方向が検出され、エッジ方向の情報が色平滑化部310に出力される。
【0040】
色平滑化部310では、第1偽色低減領域特定部307により偽色低減領域であると特定された領域に該当するR−G色差成分及びB−G色差成分に対してエッジ方向判別部309から取得したエッジ方向に基づく相加平均または加重平均処理が行われることにより、偽色低減処理が施され、処理後の色差成分がRGB生成部311に出力される。RGB生成部311では、偽色低減処理後の色差成分と緑色成分とに基づいてRGBの各色成分画像が生成され、画質調整部105に出力される。
【0041】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法によれば、偽色低減処理を施してしまうと黒ずみが発生してしまうような領域、例えば、エッジが交差するような領域を偽色低減処理の対象領域から除外し、黒ずみが発生しない領域のみ、例えば、斜めのエッジ領域に対してのみ偽色低減処理を実施するので、色の黒ずみを防止しながら、偽色の低減を実現させることが可能となる。
【0042】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法について説明する。本実施形態に係る画像処理装置は、図9に示すように、偽色低減部104Aにおいて、高周波取得部304の後段に安定化部306が設けられている点で、上述した第1の実施形態に係る画像処理装置と異なる。
以下、本実施形態において第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0043】
本実施形態に係る画像処理装置では、偽色低減部104Aの高周波取得部304によってフィルタリング処理が行われた後の高周波信号は、安定化部306に出力される。安定化部306は、例えば、ナイキスト周波数付近を制限する周波数特性を有するローパスフィルタを保有しており、このローパスフィルタを用いて、入力された高周波信号に対してフィルタリング処理を行う。図10に、安定化部306が保有するローパスフィルタの一例を示す。図10に示されるローパスフィルタの係数やフィルタサイズは一例であり、この例に限定されない。
【0044】
ここで、図11に示すように、偽色はエッジの外側付近に多く発生する。また、高周波信号を取得する元となる緑色成分画像にモアレが混入していた場合には、後段のエッジ方向判別部309におけるエッジの方向判別精度が低下し、処理が不安定となる。そこで、本実施形態では、エッジ方向判別部309の前段に安定化部306を設け、エッジ方向判別部309におけるエッジの方向判別の精度を向上させることとしている。また、第1偽色低減領域特定部307の前段に安定化部306を設け、偽色が発生しやすいエッジの外側を偽色低減領域に含めさせることとしている。
【0045】
以上説明してきたように、本実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法によれば、偽色低減部104Aにおいて、エッジ方向判別部309及び第1偽色低減領域特定部307の前段にローパスフィルタリングを行う安定化部306を備えているので、エッジの外側領域についても偽色低減領域に含めることが可能となる。これにより、エッジ方向判別等の精度を向上させることが可能となるとともに、偽色が発生する領域をより適切に特定することが可能となる。この結果、偽色低減処理の精度を向上させることができ、より品質の高い画像を取得することができる。
【0046】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法について説明する。
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態においては、画像の構造情報に基づいてのみ偽色低減領域を特定していたが、本実施形態においては、画像の構造情報に加えて、色情報も考慮し、構造情報及び色情報の両方から偽色低減領域を特定する。以下、上述した各実施形態と共通する部分については説明を省略し、異なる部分について主に説明する。
【0047】
図12は、本実施形態に係る画像処理装置における偽色低減部104Bの一構成例を示したブロック図である。図12に示されるように、本実施形態に係る偽色低減部104Bは、RGBカラー画像を構成する複数の各色成分画像のうち、緑色成分画像を用いてその構造情報から偽色低減領域の候補領域を特定する第1領域特定部5と、カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、赤色成分画像及び青色成分画像を用いて、その色情報から偽色低減領域の候補領域を特定する第2領域特定部6と、第1領域特定部5によって特定された偽色低減領域の候補領域と、第2領域特定部6によって特定された偽色低減領域の候補領域とから、偽色低減領域を決定する偽色低減領域決定部308とを主な構成要素として備えている。更に、偽色低減部104Bは、色差生成部302、エッジ方向判別部309、色平滑化部310、及びRGB生成部311等を備えている。
【0048】
第1領域特定部5は、構造判定部303、高周波取得部304、安定化部306、及び第1偽色低減領域特定部307を備えている。第2領域特定部6は、偽色指標算出部301、及び第2偽色低減領域特定部305を備えている。
第1領域特定部5において、各構成要素は上述したとおりであるが、上述した第3の実施形態における第1偽色低減領域特定部307において特定された偽色低減領域は、本実施形態においては、偽色低減領域の候補領域として偽色低減領域決定部308に出力される。
【0049】
第2領域特定部6において、偽色指標算出部301は、青色成分画像及び赤色成分画像からR(赤)−B(青)色差成分の絶対値|R−B|を偽色指標として算出し、第2偽色低減領域特定部305に出力する。
第2偽色低減領域特定部305は、偽色指標算出部301によって算出された偽色指標が、予め設定されている所定の値よりも小さい領域を偽色低減領域の候補領域として特定する。例えば、斜め方向のエッジ付近に発生する偽色は、グリーンとマゼンタが交互に色づくパターンが多い。グリーンもマゼンタもRGBで表現するとグリーン(0,255,0)、マゼンタ(255,0,255)となり、どちらもB−Rの絶対値が小さい値となる。従って、注目画素のB−Rの絶対値が小さい場合には、注目画素は偽色の可能性が高いと判断することができる。そこで、このような偽色低減領域を偽色低減領域の候補領域として特定すべく、第2偽色低減領域特定部305は、偽色指標算出部301から入力されたB−R色差成分の絶対値|R−B|を所定の値RmBTHと比較し、絶対値|R−B|が所定の値RmBTHよりも小さいとき、この領域を偽色低減領域の候補領域として特定し、その領域の情報を偽色低減領域決定部308に出力する。上記所定の値RmBTHは任意に設定可能である。
【0050】
偽色低減領域決定部308は、第1偽色低減領域特定部307及び第2偽色低減領域特定部305の両方によって偽色低減領域の候補領域であると特定された領域を偽色低減領域として決定し、この情報を色平滑化部310に出力する。この後の処理については、上述した第1実施形態等と同様である。
【0051】
このように、画像の構造情報だけでなく、色情報も加味して偽色低減領域を決定することにより、偽色低減処理を行うことによって黒ずみが発生してしまう領域のうち、第1偽色低減領域特定部307で除去しきれない領域についても、色低減処理の対象領域から除外することが可能となる。例えば、色情報に基づいて偽色低減領域を決定することにより、図13の領域Cで表されるような、鋭角のエッジ付近の領域を除外領域とすることができ、偽色低減処理に起因する当該領域の黒ずみ発生を更に防止することが可能となる。
【0052】
なお、上述した各実施形態では、偽色低減部104,104A,104Bとしてハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、別途ソフトウェアにて処理する構成も可能である。この場合、偽色低減部104,104A,104Bは、CPU、RAM等の主記憶装置、上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、CPUが上記記憶媒体に記録されているプログラム(画像処理プログラム)を読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の偽色低減部104等と同様の処理を実現させる。
【0053】
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0054】
以下、CPUが画像処理プログラムを実行することにより実現される画像処理方法のうち、偽色低減処理の処理手順について図14を参照して説明する。ここでは、上述した各実施形態のうち、第3の実施形態に係るノイズ低減部104B(図12参照)の処理手順について説明する。
【0055】
まず、欠落画素を補間した赤(R)、青(G)、緑(B)の各色成分画像に基づいて色差成分(R−G、B−G)を求める(図14のステップS1000)。続いて、R−B色差成分の絶対値|R−B|を算出する(ステップS1001)。次に、緑色成分画像について、注目画素の周辺に位置する周辺画素の画素値に基づいて構造判定値thrを求め、これを予め設定されている所定の値slantTHと比較し、除外領域を特定する(ステップS1002)。
【0056】
次に、上記ステップS1002において除外領域として特定されなかった領域(除外領域以外)に対して、バンドパスフィルタによるフィルタリング処理を行うことで高周波信号を取得し、更に、その高周波信号の値が負数であった場合には0でクリップする(ステップS1003)。一方、上記ステップS1002において、除外領域として特定された領域に関しては、フィルタリング処理を行わずに、その画素値をゼロに設定する(ステップS1004)。
【0057】
続くステップS1005では、エッジ方向判別を安定的に行うため、且つ、偽色低減を行う範囲を外側に広げるために、上記ステップS1003で得られた高周波信号に対して平滑化処理を行う。ステップS1006では、ステップS1005で平滑化した高周波信号の周辺画素を参照してエッジの方向判別を行う。続くステップS1007では、ステップS1005で平滑化した高周波信号の値が所定の値以上であるか否かを判断し(例えば、0よりも大きいか否かを判断し)、所定の値以上であった場合に、上記ステップS1001で求めたR−B色差成分の絶対値|R−B|と任意の閾値RmBTHを比較する(ステップS1008)。
【0058】
ステップS1008において、上記ステップS1001で求めたR−B色差成分の絶対値|R−B|が所定の値RmBTHよりも小さい場合には、上記ステップS1000で求めたR−G色差成分及びB−G色差成分に対して、ステップS1006で判別したエッジ方向に沿って単一方向に平滑化処理を行うことで偽色低減処理を実施する(ステップS1009)。続くステップS1010では、ステップS1009で偽色低減処理を行った後のR−G色差成分、B−G色差成分に、欠落画素を補完した緑色成分画像を加算してRGBの各色成分画像を生成する。
【0059】
一方、ステップS1007において、ステップS1005で平滑化した高周波信号の値が所定の値よりも小さかった場合、或いは、ステップS1008において、ステップS1001で求めたR−B色差成分の絶対値|R−B|が所定の値RmBTH以上であった場合には、その画素について偽色低減処理を行わずに、ステップS1010に進み、RGBの各色成分画像を生成する。そして、上記一連の処理を各画素について繰り返し行い、全ての画素について処理を実行すると、本処理を終了する。
【0060】
なお、本発明の画像処理方法及び画像処理プログラムに関する処理手順については、上記処理フローに限定されない。即ち、構造情報から特定される偽色低減領域の候補領域と、色情報から特定される偽色低減領域の候補領域の両方から偽色低減領域を決定できればよく、候補領域を特定する順序などには左右されない。
【0061】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法について説明する。上記実施形態の画像処理装置は、図15に示すように、上述した偽色低減部に代えて、偽色低減領域特定部507が設けられ、この偽色低減領域特定部507からノイズ低減部506に対して偽色低減領域マップが出力される点で、上述した各実施形態に係る画像処理装置と異なる。また、偽色低減領域特定部507は、画質調整部106の後段に設けられている、処理する色空間がRGB色空間ではなくYCbCr色空間である点で上述した各実施形態に係る画像処理装置と異なる。以下、本実施形態において第1〜第3の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0062】
図16は、偽色低減領域特定部507の概略構成を示したブロック図である。図16に示すように、偽色低減領域特定部507は、偽色指標算出部601、第2偽色低減領域特定部602、構造判定部603、高周波取得部604、安定化部605、第1偽色低減領域特定部606、及び偽色低減領域MAP作成部607を主な構成要素として備えている。
【0063】
偽色指標算出部601には、図15に示されるエッジ強調部105から出力された高周波成分YH´と画質調整部106から出力された輝度成分Yとが加算された輝度成分Y´と、画質調整部504から出力されたCb色差成分、Cr色差成分が入力される。
偽色指標算出部601は、以下に示す(2),(3)式を用いて、YCbCr色空間の各成分をRGB色空間の各成分に変換する。
【0064】
R=Y´+1.40200Cr (2)
B=Y´+1.77200Cb (3)
【0065】
そして、変換後の赤色成分画像及び青色成分画像を用いて、R−B色差成分の絶対値|R−B|を算出し、算出結果を第2偽色低減領域特定部602に出力する。
【0066】
第2偽色低減領域特定部602は、偽色指標算出部601から入力されたR−B色差成分の絶対値|R−B|を予め設定されている所定の値RmBTHと比較し、R−B色差成分の絶対値|R−B|が閾値RmBTHよりも小さいときに偽色低減領域の候補領域と特定し、この結果を偽色低減領域MAP作成部607に出力する。
【0067】
他方、構造判定部603は、輝度成分Y´を用いて上述した第1の実施形態と同様の算出方法によって、注目画素の構造判定値thr´を算出し、この構造判定値thr´と予め設定されている所定の値slantTH´と比較し、所定の値slantTH´よりも大きな値の構造判定値thr´をもつ画素を抽出する。そして、抽出した画素については、フラグを1に設定し、抽出されなかった画素についてはフラグを0に設定する。
【0068】
高周波取得部604は、構造判定部603から入力される各画素に与えられたフラグの状態を判別し、フラグが1であれば、バンドパスフィルタを用いたフィルタリング処理を実施した後、その画素値が負を示すものについては0にクリップし、それ以外、つまり除外領域であれば、画素値に0を設定し、処理後の輝度成分を安定化部605に出力する。
【0069】
安定化部605は、上述した第2の実施形態と同様に、例えば、ナイキスト周波数付近を制限する周波数特性を有するローパスフィルタを保有しており、このローパスフィルタを用いて、入力された輝度成分に対してフィルタリング処理を行う。フィルタリング処理後の輝度成分は、第1偽色低減領域特定部606に出力される。
【0070】
第1偽色低減領域特定部606は、安定化部605からの輝度成分において、各画素の画素値が所定の値よりも大きい画素を抽出し、この画素を偽色低減領域の候補領域と判断し、この判断結果を偽色低減領域MAP作成部607に出力する。
【0071】
偽色低減領域MAP作成部607は、第1偽色低減領域特定部606及び第2偽色低減領域特定部602の両方において、偽色低減領域の候補領域であると特定された領域を偽色低減領域として特定し、それ以外の領域を除外領域として特定する。そして、偽色低減領域として判断した画素については信号値1が、除外領域として判断した画素については信号値0が書き込まれた偽色低減領域MAPを作成し、これをノイズ低減部506へ出力する。
【0072】
図17は、ノイズ低減部506の概略構成を示したブロック図である。本実施形態において、ノイズ低減部506は、2段構成の多重解像度ノイズ低減法を採用している。ノイズ低減部506において、第1フィルタリング部701、708は、入力信号を特定の周波数帯域に分解するために用いられる任意のローパスフィルタである。縮小処理部702,709は入力信号を1/4に縮小するダウンサンプリングを行う。拡大部703,710,715は、入力信号を4倍に拡大するアップサンプリング処理を行う。
【0073】
第2フィルタリング部704,711,716は、入力信号の帯域を落とすローパスフィルタである。減算器705は、第1フィルタリング部701,縮小処理部702,拡大部703,第2フィルタリング部704を経由することにより所定の処理が行われた画像信号と、第1フィルタリング部701に入力される画像信号との差分を算出して、方向フィルタ706に出力する。減算部712も第1フィルタリング部708に入力される画像信号と第2フィルタリング部711からの画像信号との差分を算出して方向フィルタ713に出力する。
【0074】
方向フィルタ706、713は、入力された差分信号の方向判別を行い、判別した方向に沿って単一方向に近傍分散値から導き出される任意の強度で加重平均あるいは相加平均を行い、それぞれ、コアリング707、714へ出力する。コアリング707、714は方向フィルタからの入力信号に対して任意の閾値を用いてコアリング処理を行う。
【0075】
加算器717は、第1フィルタリング部701からコアリング707に至る入力信号の高帯域をノイズ低減処理した信号と第1フィルタリング部708からコアリング714に至る入力信号の低帯域をノイズ低減処理した信号とを加算することでノイズ低減済み信号Y’Cb’Cr’を生成し、出力する。
【0076】
上記構成を備えるノイズ低減部506において、入力信号であるY、Cb、Crの各成分画像は、それぞれ独立して処理される。ここで、Cb,Crの成分画像を処理するときのみ、偽色低減領域特定部507から偽色低減領域MAPがCb,Crと並列に入力される。
ノイズ低減部506において、Cb,Crの成分画像が処理される場合には、縮小処理部709のみCb,Cr成分画像と同様に縮小処理を行い、それ以外のブロックでは方向フィルタ706、713まで偽色低減領域MAPに関して処理を行わない。方向フィルタ706、713において処理対象画素に対応した位置の偽色低減領域MAPを参照し、信号値が1:偽色の場合には、方向フィルタ706、713において行われる加重平均或いは相加平均の強度を強くして、ノイズ低減処理を行う。
【0077】
これにより、偽色低減領域特定部507によって偽色低減領域として特定された領域に対しては、他の領域よりも強めのノイズ低減処理を実行することが可能となる。換言すれば、偽色低減領域として特定されなかった領域、例えば、偽色低減処理を実施してしまうと黒ずみが発生してしまう可能性の高い領域に関しては、弱めのノイズ低減処理を実行することにより、黒ずみの発生を防止することが可能となる。
【0078】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法によれば、色の黒ずみを回避することができるとともに、色鮮鋭度を保ったまま斜め方向のエッジ付近に発生する偽色を低減することができる。
【0079】
なお、本実施形態においては、ノイズ低減部506に、2段構成の多重解像度ノイズ低減法を適用した場合について説明したが、段数は2段に限られない。ここで、多重解像度の段数が多くなれば、より低帯域のノイズ低減処理も可能となり、また、偽色に関してもより低帯域の偽色を低減できるという利点がある。
また、ノイズ低減部506は、エッジに沿った単一方向へ平滑化する能力を持っていればよく、上述した多重解像度ノイズ低減法を採用する場合に限られない。
【0080】
また、上記実施形態においては、専用回路により各処理を実現する場合について述べたが、上述した第3の実施形態と同様、ソフトウェアによる処理で実現することも可能である。以下、本実施形態に係る偽色低減領域特定部507の処理手順を図18を参照して説明する。図18は、本実施形態に係る偽色低減領域特定部507の処理手順を示したフローチャートである。
【0081】
まず、YCbCr色空間で表されたY´,Cb,Crの各成分画像を上述した(2),(3)式を用いて、RGB色空間の各色成分画像に変換し(ステップS2000)、更に、R−B色差成分の絶対値|R−B|を求める(ステップS2001)。続いて、輝度成分Y´について、注目画素の周辺に位置する周辺画素の画素値を用いて構造判定値thr´を求め、所定の値slantTH´と比較し、除外領域を特定する(ステップS2002)。
【0082】
次に、上記ステップS2002において、除外領域として特定されなかった領域に対しては、バンドパスフィルタによるフィルタリング処理を行うことで高周波信号を取得し、更に高周波信号が負数の画素値に関しては0でクリップする(ステップS2003)、一方、上記ステップS2002において、除外領域として特定された領域に関しては、フィルタリング処理を行うことなく、その画素値をゼロに設定する(ステップS2004)。
【0083】
続くステップS2005では、エッジ方向判別を安定的に行うため、且つ、偽色低減を行う範囲を外側に広げるために、ステップS2003で得られた高周波信号に対して平滑化処理を行う。ステップS2006では、ステップS2005で平滑化した高周波信号が所定の値(例えば、0)よりも大きいか否か、かつ、ステップS2002で求めたR−B色差成分の絶対値|R−B|が所定の値RmBTH´よりも小さいかを判定することにより、偽色領域の判定を行う。この結果、ステップS2005で平滑化した高周波信号が所定の値よりも大きく、且つ、上記ステップS2002で求めたR−B色差成分の絶対値|R−B|が、所定の値RmBTH´よりも小さかった場合に、偽色低減領域MAPに偽色低減領域であることを示す1を設定する(ステップS2007)。一方、ステップS2006において、ステップS2005で平滑化した高周波信号が所定の値以下、又は、上記ステップS2002で求めたR−B色差成分の絶対値|R−B|が所定の値RmBTH´よりも大きかった場合には、偽色低減領域MAPに除外領域であることを示す0を設定する(ステップS2008)。そして、上記一連の処理を全ての画素に対して実行すると、作成した偽色低減領域MAPを出力する。
【0084】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る撮像システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した補間処理部の一構成例を示すブロック図である。
【図3】図1に示した画質調整部の一構成例を示すブロック図である。
【図4】図1に示した偽色低減部の一構成例を示すブロック図である。
【図5】構造判定部によって算出される構造評価値について説明するための図である。
【図6】除外領域と偽色低減領域とを説明するための図である。
【図7】高周波取得部によって用いられるバンドパスフィルタの一例を示した図である。
【図8】エッジ方向判定部によって判定されるエッジ方向について説明するための図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置が備える偽色低減部の一構成例を示すブロック図である。
【図10】安定化部で用いられるローパスフィルタの一例を示した図である。
【図11】安定化部の作用について説明するための図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る画像処理装置が備える偽色低減部の一構成例を示すブロック図である。
【図13】色情報に基づいて偽色低減領域を判断した場合に、除外領域として特定される領域について説明するための図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る画像処理装置が備える偽色低減部の処理フローを示した図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る撮像システムの全体構成を示すブロック図である。
【図16】図15に示した偽色低減領域判定部の一構成例を示したブロック図である。
【図17】図15に示したノイズ低減部の一構成例を示したブロック図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る画像処理装置が備える偽色低減領域判定部の処理フローを示した図である。
【符号の説明】
【0086】
1 撮像システム
2 撮像部
3 画像処理装置
5 第1領域特定部
6 第2領域特定部
104,104A,104B 偽色低減部
301,601 偽色指標算出部
302 色差生成部
303,603 構造判定部
304,604 高周波取得部
305,602 第2偽色低減領域特定部
306,605 安定化部
307,606 第1偽色低減領域特定部
308 偽色低減領域決定部
309 エッジ方向判別部
310 色平滑化部
311 RGB生成部
506 ノイズ低減部
507 偽色低減領域特定部
607 偽色低減領域MAP作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、いずれかの色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行う画像処理装置であって、
前記色成分画像の注目画素の周辺に位置する周辺画素の画素値を用いて、該注目画素周辺の構造判定を行い、偽色低減領域から除外する除外領域を特定する構造判定部と、
前記除外領域以外の領域において、斜め方向のエッジ領域を検出する高周波取得部と、
前記高周波取得部によって検出された斜め方向のエッジ領域から偽色低減領域を特定する偽色低減領域特定部と
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記構造判定部は、エッジが交差する領域を前記除外領域として特定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記高周波取得部は、前記除外領域以外の領域に対して斜め方向のエッジを検出する周波数特性を持つフィルタリング処理を施して高周波信号を得るとともに、前記除外領域に対しては前記フィルタリング処理を行うことなく前記偽色低減領域から除外する請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記高周波取得部から出力される高周波信号に対して、ローパスフィルタを用いたフィルタリング処理を行い、処理後の前記高周波信号を出力する安定化部を備え、
前記偽色低減領域特定部は、前記安定化部から出力される前記高周波信号の値が所定の値以上である領域を偽色低減領域として特定する請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記高周波取得部から出力される前記高周波信号に対して、ローパスフィルタを用いたフィルタリング処理を行い、処理後の前記高周波信号を出力する安定化部と、
前記安定化部の出力に基づいてエッジ方向を判別するエッジ方向判別部と、
前記偽色低減領域の色差信号に対して前記エッジ方向に沿った色平滑化処理を行う色平滑化部と
を具備する請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記偽色低減領域特定部は、前記斜め方向のエッジ領域において前記高周波取得部から出力される前記高周波信号が所定の値以上である領域を偽色低減領域として特定する請求項1から請求項3および請求項5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記カラー画像を処理する色空間がRGB色空間である場合において、前記色成分画像は緑色成分画像であり、前記カラー画像を処理する色空間がYUVまたはYCbCr色空間の場合には、前記色成分画像は輝度成分画像である請求項1から請求項6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記安定化部によって用いられる前記ローパスフィルタは、ナイキスト周波数付近を制限する周波数特性を有するフィルタである請求項4または請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項9】
カラー画像を構成する複数の色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行う画像処理装置であって、
カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その構造情報から偽色低減領域の候補領域を特定する第1領域特定部と、
カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その色情報から偽色低減領域の候補領域を特定する第2領域特定部と、
前記第1領域特定部によって特定された前記偽色低減領域の候補領域と、前記第2領域特定部によって特定された前記偽色低減領域の候補領域とから、偽色低減領域を決定する偽色低減領域決定部と
を具備する画像処理装置。
【請求項10】
前記第1領域特定部は、
前記色成分画像の注目画素の周辺に位置する周辺画素の画素値を用いて、該注目画素周辺の構造判定を行い、前記偽色低減領域の候補領域から除外する除外領域を特定する構造判定部と、
前記除外領域以外の領域において、斜め方向のエッジ領域を検出する高周波取得部と、
前記高周波取得部によって検出された斜め方向のエッジ領域から偽色低減領域の候補領域を特定する第1偽色低減領域特定部と
を具備する請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記高周波取得部は、前記除外領域以外の領域に対して斜め方向のエッジを検出する周波数特性を持つフィルタリング処理を施して高周波信号を得るとともに、前記除外領域に対しては前記フィルタリング処理を行うことなく前記偽色低減領域から除外する請求項9または請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記第1領域特定部は、前記高周波取得部から出力される高周波信号に対して、ローパスフィルタを用いたフィルタリング処理を行い、処理後の前記高周波信号を出力する安定化部を備え、
前記第1偽色低減領域特定部は、前記安定化部から出力される前記高周波信号の値が所定の値以上である領域を前記偽色低減領域の候補領域として特定する請求項10または請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記カラー画像を処理する色空間がRGB色空間である場合において、前記第1領域特定部が用いる前記色成分画像は緑色成分画像であり、前記カラー画像を処理する色空間がYUVまたはYCbCr色空間の場合には、前記第1領域特定部が用いる前記色成分画像は輝度成分画像である請求項9から請求項12のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記安定化部によって用いられる前記ローパスフィルタは、ナイキスト周波数付近を制限する周波数特性を有するフィルタである請求項12に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記第2領域特定部は、
いずれか二つの前記色成分画像の色差情報の絶対値を偽色指標として算出する偽色指標算出部と、
前記偽色指標が予め設定されている所定の値よりも小さい領域を前記偽色低減領域の候補領域として特定する第2偽色低減領域特定部と
を具備する請求項9から請求項14のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記偽色指標算出部は、赤色成分画像と青色成分画像との色差情報の絶対値を前記偽色指標として算出する請求項15に記載の画像処理装置。
【請求項17】
カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、いずれかの色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行う画像処理方法であって、
前記色成分画像の注目画素の周辺に位置する周辺画素の画素値を用いて、該注目画素周辺の構造判定を行い、偽色低減領域から除外する除外領域を特定する過程と、
前記除外領域以外の領域において、斜め方向のエッジ領域を検出する過程と、
検出された前記斜め方向のエッジ領域から偽色低減領域を特定する過程と
を有する画像処理方法。
【請求項18】
カラー画像を構成する複数の色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行う画像処理方法であって、
カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その構造情報から偽色低減領域の候補領域を特定する過程と、
カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その色情報から偽色低減領域の候補領域を特定する過程と、
構造情報から特定された前記偽色低減領域の候補領域と、色情報から特定された前記偽色低減領域の候補領域とから、偽色低減領域を決定する過程と
を有する画像処理方法。
【請求項19】
カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、いずれかの色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行うための画像処理プログラムであって、
前記色成分画像の注目画素の周辺に位置する周辺画素の画素値を用いて、該注目画素周辺の構造判定を行い、偽色低減領域から除外する除外領域を特定する処理と、
前記除外領域以外の領域において、斜め方向のエッジ領域を検出する処理と、
検出された前記斜め方向のエッジ領域から偽色低減領域を特定する処理と
をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【請求項20】
カラー画像を構成する複数の色成分画像を用いて偽色低減領域を特定し、特定した該偽色低減領域に対して偽色低減処理を行うための画像処理プログラムであって、
カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その構造情報から偽色低減領域の候補領域を特定する処理と、
カラー画像を構成する複数の色成分画像のうち、少なくとも一つの色成分画像を用いて、その色情報から偽色低減領域の候補領域を特定する処理と、
構造情報から特定された前記偽色低減領域の候補領域と、色情報から特定された前記偽色低減領域の候補領域とから、偽色低減領域を決定する処理と
をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−200635(P2009−200635A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37908(P2008−37908)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】