説明

画像処理装置及びその画像処理方法

【課題】 インクの主滴とサテライトが分離して記録される状況下において、画質劣化を抑制すること。
【解決手段】 記録ヘッドの各ノズルからの1回に吐出される主滴とサテライトのそれぞれによる被記録媒体上への記録に基づいて予め定められた、主滴とサテライトに関連つけられた値を着目画素と当該着目画素の近傍で未処理の画素との出力値として出力する出力画素値分配部と、出力画素値分配部からの制御を受けて、少なくともサテライトに関連つけられた値を、あるいは当該値を既に格納されている値に対して加算した値を格納する記憶部と、出力画素値分配部からの値及び/または記憶部に格納された着目画素位置における値から導かれる値と量子化器へ入力される多階調の画像データの示す値との差を着目画素の近傍の画素に拡散させ、更に着目画素分としての誤差を入力画像データに加算して、量子化器へ入力される多階調の画像データとする誤差拡散部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出することにより画像を被記録媒体に出力する画像形成装置のため画像処理装置及びその画像処理方法に関し、更に詳述すれば、インク滴を吐出することにより画像を被記録媒体に出力する記録素子の出力特性に応じて、入力画像データを補正し、補正した画像データを前記画像形成装置に供給する画像処理装置及びその画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワード・プロセッサ、パーソナル・コンピュータ、ファクシミリ等の情報処理装置で作成された文字や画像等の情報を、用紙やフィルム等シート状の被記録媒体に形成する画像出力装置として、様々な記録方式による記録装置が提供されている。中でも、記録剤としてのインクを、たとえば滴として、吐出することによって、被記録媒体にテキスト(文字や記号等)、図表(graphic/chart)、及びイメージ(photographic、image)のような画像を形成するインク・ジェット記録方式は、小型化やカラー記録への対応が比較的容易であり、且つ低価格に実現できることから、近年数多くのカラー・インクジェット記録装置が普及してきている。
【0003】
このようにインク・ジェット記録装置が多方面に利用されるにしたがって、次のような要求が近年更に高まっている。高画質な画像を得るためにインクの液滴量を小さくし、被記録媒体上に記録されたインク滴(以下、ドットを呼ぶ)の被覆面積を低下させることによりドットを目立ちにくくさせたり、印刷時間を短縮させるためにドットの吐出速度を速くしたりしている。被記録媒体上でのドットが目立つことは印刷画像のざらつき感(粒状感)に直結するため、昨今のインク・ジェット記録装置では2pl(ピコ・リットル)程度の吐出量に抑えることで、印刷画像のざらつき感を低減している。また、同時に記録の高速化する試みとしては、そのための駆動周波数を高くすること、ドットを吐出するノズル数を増すこと、またそのノズルを収容する記録ヘッドの走査速度を増加させたりすること、などが挙げられる。
【0004】
一方、インク・ジェット記録ヘッドからインク滴を吐出する際、その主滴の他にサテライトと呼ばれる液滴が、その主滴に遅れて吐出され、その主滴の周辺にサテライト・ドットとして記録されることも知られている。通常、この主滴とサテライトとが重畳して記録するように調整されているが、種々の条件の下で、これら主滴とサテライトとの位置がずれることが起り得る。特に、吐出量を小さくし、吐出速度を速くする構成においては、主滴とサテライトが被記録媒体上で離れて記録される傾向が強く、記録ヘッドの走査方向のうち、ある一定方向にのみサテライトが多い場合がある。
【0005】
図28には、2800で示すように、主滴とサテライト・ドットが重畳して記録される場合と、2801あるいは2805で示すように、両者が離れて記録される場合の被記録媒体上での記録状態を模式的に示している。符号2802で示す記録状態は、記録ヘッドの走査速度を遅くし、主滴とサテライト・ドットがほぼ同一箇所に着弾するように調整した上、形成されたドットを示している。この場合、これらの主液滴とサテライト液滴はほぼ同時に着弾されるため、1つの液滴による記録として表現しても特に問題はなく、符号2800に示す記録状態においても1ドットが形成されたように描画している。一方、記録ヘッドの走査速度を増加させて記録したのが符号2801で示す図である。1回のドット記録信号によるインク滴の吐出により、単ドットとして吐出された液滴が、被記録媒体上では主滴とサテライトに分離して記録されることになり、符号2803は、この場合の単ドットの主滴による記録であり、符号2804は同ドットのサテライトによる記録に相当する。サテライトによる記録は、主滴による記録に隣接する右画素位置に1個形成されている。記録ヘッドは、図中を左から右に走査されるため、サテライトは主滴の記録画素位置よりも移動方向に移動した位置、すなわち右側の位置に記録されている。
【0006】
記録ヘッドの走査速度を更に高めると、サテライトと主滴の記録位置は走査方向により離れていき、2805で示す記録状態のようになる。つまり、印刷時間を短縮する目的で記録ヘッドの走査速度を次第に増加させると、本来は同一箇所に着弾し、1ドットとして形成されるべき主滴とサテライトが、走査速度に比例して離れて記録されることになる。ドット記録信号に従って被記録媒体上に忠実なドット形成を実現できないこのような出力画像では、画質劣化を誘発することになる。
【0007】
そして、このようなサテライトによる画質劣化を抑制する方法としては、ドットの吐出工程においてインクを2ドット以上連続して吐出させ、孤立した単ドットの形成を行わない手法(例えば、特許文献1参照)がある。これにより、単ドットのみでは特に目立っていたサテライトのみのドットを低減させることにより、サテライトを目立たなくさせていた。
【0008】
ドットを吐出する記録ヘッドの走査速度を増加する以外で高速記録を行う技術としては、たとえば双方向記録方法がある。記録速度を高速化する方法として、記録素子数を多くした記録ヘッドを用いて記録を行う方法も考えられるが、これは記録ヘッドの大型化を招く。記録ヘッドを大型化せずに記録速度を高速化する方法として、記録ヘッドの往走査、復走査の両方で記録を行う双方向記録は有効な方法の1つである。記録装置では通常、給紙・排紙等の時間があるため単純な比例関係にはならないが、双方向記録は往走査だけで記録を行う片方向記録に比べて、約2倍の記録速度を得ることができる。
【0009】
また、多値の入力画像データをドットの記録信号にあたる二値画像(または二値以上で入力階調数より少ない階調数を有する画像)に変換する手段としてR.Floydらによって提案されている誤差拡散法(非特許文献1を参照)が知られている。この誤差拡散法は、ある画素で生じた二値化誤差を以降の複数画素へ拡散することにより、擬似的に階調表現を行うものである。これは、ドットの分散性が良好であり高品位な二値画像を生成できる長所を持つことが知られている。
【0010】
【特許文献1】特開2002−144608号公報
【非特許文献1】R. Floyd. et al. "An adaptive algorithm for spatial gray scale", SID International Symposium Digest of Technical Papers, vol. 4.3, 1975, pp. 36-37
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、単一ドットの場合に目立っていたサテライトを目立たなくするために、引用文献1で開示された技術を実行して、2ドット以上を連続して画像形成を行うと、被記録媒体上では2ドット分の液滴量に相当するドットが形成されることになって、この場合、ハイライト部分で分散されていた単ドットが、近傍の単ドットが組み合わされて連続の2ドットに置き換えられるので、その部分の濃度は高くなり、サテライトそのものを目立たなくする効果はあるものの、ハイライト部においてはそれぞれのドットに対する吐出量を抑えてざらつき感を低減させるという、本来の画質向上への効果が十分に発揮されないという欠点があった。
【0012】
図29は、特許文献1で開示される手法の効果を示す図であり、サテライトを伴うドットが記録される場合における、被記録媒体上でのドット形成を模式的に示した図である。同図には、特許文献1で開示される手法を適用した場合と適用しない場合の画質差が顕著に確認できる、濃度が一様なハイライト領域のドット・パターンを示している。符号2900はドットを非連続に配置する場合のドット記録信号のパターンを表し、符号2901はドット記録信号2900に従ってドット形成された被記録媒体上でのドット・パターンを表している。各升目に単ドットが1個形成される構成となっており、灰色で着色された升目2904はドットが記録される信号を意味し、白色の升目2905にはドットが記録されない信号を意味する。一方、符号2902は、2ドットを連続して形成する場合のドット記録信号のパターンを表し、符号2903はドット記録信号2902に従ってドット形成された被記録媒体上でのドット・パターンを表している。なお、符号2900と符号2902で示す記録状態は、単位面積当たりに記録するドット数は同じとしている。
【0013】
ドットを非連続で形成すると、各ドットに対して、主滴とサテライトに分離して記録され、サテライトのみの記録が発生する状態となるが、記録ドットが一様に分散するために、被記録媒体上における各ドットの大きさは小さく保つことができる。この場合のドットは目立ち難いため、この部分の記録としては、粒状性は良好であるといえる。
【0014】
しかしながら、ドットを連続して形成すると、先に記録されたドットのサテライト(或いは主滴)と後に記録されたドットの主滴(或いはサテライト)が、ほぼ同一の位置に記録されてしまうことになり、両者のインク液滴量を総和した大きなドットが紙面上に1個形成されることに等しくなる場合があることになる。符号2906は主滴2803とサテライト2804が同一位置に記録された結果、被記録媒体上に新たに形成された合成ドットである。合成ドット2906の形成に使用される液滴量は、主滴2803とサテライト2804の液滴量の和に等しくなるため、主滴とサテライトが分離して記録されない状況下での単一ドットの液滴量となる。被記録媒体上でのドット・サイズが大きくなるのは、上記の理由によるものである。更に、ドットを連続して記録すると、主滴2803、サテライト2804、合成ドット2906が隣接することになり、符号2901で示す記録状態に較べて、非常にドットが目立つことになる。図29に示されるようなハイライト領域でドットが目立ってしまうと粒状性の悪化に繋がるため、ドットは一様に分散するように形成してハイライト領域でドットが目立たないようにすることが望まれる。
【0015】
更に、サテライトを発生する記録ヘッドを使用して双方向記録を実施すると、往走査時に形成したドット・パターンと復走査時に形成したドット・パターンでは、被記録媒体上での形成状態が大きく異なる。図28のドット・パターン2801は往走査時に形成されたドット・パターンの一例であるが、このドット・パターンを形成する記録ヘッドにて復走査を行うと、図30に示されるドット・パターン3000が形成される。記録ヘッドが図中を右から左に走査するためサテライト2803は、主滴2804の左側に記録され、ドット・パターン2801と左右対称となって記録される。このように双方向記録では、注目画素に対して記録されるドット・パターンが往走査と復走査で一致しないため、被記録媒体上に形成されたドット・パターンが一様とはならず、新たな画質劣化を引き起こす要因となっている。先に述べた従来の技術では、双方向記録方法で新たに発生するサテライトの画質影響に対して全く考慮されていない問題点がある。
【0016】
また、従来の誤差拡散法による二値画像への変換処理では、1画素の記録信号に対して主滴の1ドットを形成するか否かの量子化処理を実施する構成であり、記録状態2801と記録状態2805に代表されるように、着目位置のドット形成がサテライトを伴うことで隣接する記録位置に画質影響を及ぼすようなインク・ジェット記録装置において、このような特殊な被記録媒体上での記録状態が考慮されていないという問題点がある。二値画像のドットの分散性が良好な誤差拡散法であるが、サテライトによってインクが記録される位置に粗密が発生し、粒状性を損なう結果となる。更に双方向記録方法を実施すると、サテライトと主滴との記録位置の関係が全ての画素で一様とはならないため(特に、往走査で記録される画素ラインと復走査で記録される画素ラインが隣接する部分では)、より一層、粒状性の悪化を導くことになる。本問題の解決には、被記録媒体上におけるドットの実際の記録状態を考慮し、着目位置のみならず隣接位置の画質影響、また、双方向印字を行う場合には着目画素における記録ヘッドの走査方向とサテライトの形成位置との関係を加味した誤差拡散法が必要である。
【0017】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な方法により画像形成装置の出力結果におけるサテライトの画質的な影響を考慮し、サテライトによって引き起こされる画質劣化、特にハイライト部分における粒状性の悪化を抑制する画像処理装置及びその画像処理方法を提供することにある。
【0018】
双方向記録方式を行う画像形成装置においては、往走査と復走査で形成されるドット・パターンの違いによって生じる画質劣化に対し、特にサテライトによって引き起こされる画質劣化を画質的な影響度合いを考慮しながら、簡便な方法によって抑制する画像処理装置及びその画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明は、画像形成装置に具備される、インク滴を吐出することにより画像を被記録媒体に出力する記録素子の出力特性に応じて、入力画像データを補正し、補正した画像データを前記画像形成装置に供給する画像処理装置であって、多階調の画像データを入力して、当該画像データの階調数よりも少ない階調数に変換する量子化手段と、記録ヘッドの各ノズルからの1回に吐出される主滴とサテライトのそれぞれによる被記録媒体上への記録に基づいて予め定められた、前記主滴とサテライトに関連つけられた値を着目画素と当該着目画素の近傍で未処理の画素との出力値として出力する出力画素値分配手段と、前記出力画素値分配手段からの制御を受けて、少なくとも前記サテライトに関連つけられた値を、あるいは当該値を既に格納されている値に対して加算した値を格納する記憶手段と、前記出力画素値分配手段からの値及び/または前記記憶手段に格納された着目画素位置における値から導かれる値と前記量子化手段へ入力される多階調の画像データの示す値との差を着目画素の近傍の画素に拡散させ、更に着目画素分としての誤差を前記入力画像データに加算して、前記量子化手段へ入力される多階調の画像データとする誤差拡散手段とを備え、前記量子化手段の出力を前記画像形成装置に出力することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明は、前記着目画素の位置における前記量子化手段の出力に対する前記記録素子の記録ノズルを特定する記録ノズル特定手段と、前記記録素子の前記記録ノズル毎の前記出力特性に関連つけられた値であって、各ノズルからの1回に吐出される主滴とサテライトのそれぞれによる被記録媒体上への記録に基づいて予め定められた、前記主滴とサテライトに関連つけられた値を記憶するノズル毎ドット出力値記憶手段を更に備え、前記出力値分配手段は、前記記録ノズル特定手段からの出力に基づく、前記ノズル毎ドット出力値記憶手段からの出力値を、着目画素と当該着目画素の近傍で未処理の画素との出力値として出力することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明は、前記着目画素の位置における前記量子化手段の出力に対する前記記録素子の走査方向を判定し、出力する記録素子走査方向判定手段を更に備え、前記出力値分配手段は、前記記録素子走査方向判定手段からの出力を受けて、前記着目画素の近傍で未処理の画素の位置として、前記着目画素を含む前記記録素子の走査方向のライン上の位置及びその他のライン上の位置のいずれか一方に決定し、決定した位置に対応する前記記憶手段の領域に対して出力することを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明は、前記記録素子の出力特性を考慮して、前記主滴とサテライトに関連つけられた値、及び前記着目画素の近傍で未処理の画素の位置とが決定されていることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明は、前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される被記録媒体上における記録材の被覆面積であることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明は、前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される被記録媒体上における記録材の濃度であることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明は、前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される被記録媒体上における記録材の明度であることを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明は、前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される記録材の液滴量であることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明は、画像形成装置に具備される、インク滴を吐出することにより画像を被記録媒体に出力する記録素子の出力特性に応じて、入力画像データを補正し、補正した画像データを前記画像形成装置に供給する画像処理装置の処理方法であって、多階調の画像データを入力して、当該画像データの階調数よりも少ない階調数に変換する量子化ステップと、記録ヘッドの各ノズルからの1回に吐出される主滴とサテライトのそれぞれによる被記録媒体上への記録に基づいて予め定められた、前記主滴とサテライトに関連つけられた値を着目画素と当該着目画素の近傍で未処理の画素との出力値として出力する出力画素値分配ステップと、前記出力画素値分配ステップの結果を受けて、少なくとも前記サテライトに関連つけられた値を、あるいは当該値を既に格納されている値に対して加算した値を記憶する記憶ステップと、前記出力画素値分配ステップの結果および/または前記記憶ステップ部の結果を受けて着目画素位置における値から導かれる値と前記量子化手段へ入力される多階調の画像データの示す値との差を着目画素の近傍の画素に拡散させ、更に着目画素分としての誤差を前記入力画像データに加算して、前記量子化手段へ入力される多階調の画像データとする誤差拡散ステップと、前記量子化ステップにおける出力を前記画像形成装置に出力するステップと、とを備えることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、前記着目画素の位置における前記量子化手段の出力に対する前記記録素子の記録ノズルを特定する記録ノズル特定ステップを更に備え、前記出力値分配ステップは、前記記録素子の前記記録ノズル毎の前記出力特性に関連つけられた値であって、各ノズルからの1回に吐出される主滴とサテライトのそれぞれによる被記録媒体上への記録に基づいて予め定められた、前記主滴とサテライトに関連つけられて予め記憶した値を、前記記録ノズル特定ステップからの出力に基づいて、着目画素と当該着目画素の近傍で未処理の画素との出力値として出力することを特徴とする
また、本発明は、前記着目画素の位置における前記量子化手段の出力に対する前記記録素子の走査方向を判定し、出力する記録素子走査方向判定ステップを更に備え、前記出力値分配ステップは、前記記録素子走査方向判定ステップの結果を受けて、前記着目画素の近傍で未処理の画素の位置として、前記着目画素を含む前記記録素子の走査方向のライン上の位置及びその他のライン上の位置のいずれか一方に決定し、決定した位置に対応する前記記憶部の領域に対して出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上の構成によれば、主滴に付随して発生するサテライトの画質的な影響度を考慮した誤差拡散法を行うことが可能になり、これにより、片方向印字の場合あるいは両方向印字の場合であっても、あるいは、記録ヘッドの個々の記録ノズルが個別の出力特性を有する場合であっても、簡便な方法にて、サテライトによって引き起こされる画質劣化を抑制することが、あるいは抑制した画像データを生成することが、可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1の実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態である画像処理装置と、画像形成装置であるプリンタとを接続した画像形成システムの構成を示したブロック図である。
【0031】
なお、図1は片方向印字の場合を、図2は両方向印字の場合の構成を示している。ここでは、主に片方向印字について説明し、両方向印字の場合は、片方向の説明に追記する形で説明することにする。なお、図において、同じ番号は、共通する機能等を示している。
【0032】
画像処理装置100とプリンタ110とは、図示しないプリンタ・インターフェースまたはネットワーク・インターフェースによって接続されている。
【0033】
図1及び図2において、符号101は画素データの入力端子、符号102は累積誤差加算部、符号103は量子化閾値を設定する閾値設定端子、符号104は量子化部、符号118は、量子化後の出力値を分配する出力画素値分配部、符号105は出力画素値分配部から入力されたデータを格納する内部出力値メモリ、符号106は量子化誤差を演算する誤差演算部、符号107は量子化誤差を拡散する誤差拡散部、符号108は累積誤差メモリ、符号109は一連の処理後に形成されたドット記録信号Sの出力端子、符号110はプリンタである。
【0034】
なお、図2においては、符号215は1走査内でのドット記録位置を規定するパターン・メモリ、符号216は画素位置のアドレス入力端子、符号217は各画素における記録ヘッドの走査方向を判定する走査方向判定部、符号218は量子化後の出力値を分配する出力画素値分配部である。なお、符号205は、図1の内部出力値メモリ105と同様な機能及び目的を有する内部出力値メモリであるが、細部の構成が図1と異なるために異なる符号を使用した。また、図1の符号118と図2の符号218も、同様な機能と目的を有するが、細部の構成が異なるために異なる符号を使用した。内部出力値分配部は、画素1回の吐出によるインク滴が主滴とサテライトに分離する場合における誤差を、すなわち主滴は吐出したドットに較べて減少した記録がなされること、また実際に吐出していない画素に対してサテライトによってドット記録されること、を補正するためのデータを操作する。
【0035】
プリンタ110は、記録ヘッド111を被記録媒体114に対して相対的に縦横に移動することにより、被記録媒体上に画像を形成する。記録ヘッドは、1つ以上のノズル(記録素子)から構成される。符号112は記録ヘッドを移動するための移動装置であり、符号113は被記録媒体を搬送する搬送部である。このようなプリンタにおいては、記録ヘッド111を構成するノズルから吐出されるドットの液滴量、インク吐出の制御を司る駆動条件や、移動装置及び搬送装置の機械的な制御速度等により、被記録媒体上に主滴とこの主滴に付随したサテライトの記録が発生する。
【0036】
図7は、記録ヘッド111の構成例を示す図である。図7においては、説明を簡単にするため用紙搬送方向にノズルが一列に配置された構成を有する記録ヘッドを示しているが、ノズルの数、配置は任意であり、たとえばノズルが複数列あっても、ノズルがジグザグに配置されているような構成であっても良い。図において、符号70は、ノズルであり、縦に一定間隔で16個配置されている。記録ヘッド111は、被記録媒体114に対し、片方向印字の場合には、左から右に移動しながら一定の駆動間隔で各ノズルを駆動し、被記録媒体上に画像を記録する。1回の走査が終了すると、記録ヘッドを左端に戻すと同時に、被記録媒体を片方向印字の場合は図中の搬送量Aを搬送する。以上の処理を繰り返すことにより片方向記録方法による画像の記録が行われる。
【0037】
また、両方向印字の場合は、記録ヘッド111は、被記録媒体114に対し、左から右への往走査と右から左への復走査を交互に行いながら一定の駆動間隔で各ノズルを駆動し、パターン・メモリ215に記録された画像形成パターンに従って被記録媒体上に画像を記録する。1回の走査が終了すると、記録ヘッドは走査が完了した直後の位置にて待機し、被記録媒体を一定量(図中の搬送量B)搬送する。次の走査では、前回の走査と反対の方向に記録ヘッドを移動させる。以上の処理を繰り返すことにより双方向記録方法による画像の記録が行われる。
【0038】
図8は、被記録媒体上におけるインクの、片方向印字の場合の被記録媒体上での記録状態を模式的に示した図であり、図9は、被記録媒体上におけるインクの、両方向印字の場合の被記録媒体上での記録状態を模式的に示した図である。符号80および90はドット記録信号Sを入力画像の画素配置に沿って2次元的に表しており、斜線部(画素A、B)で描画された位置で、インク滴が吐出されることを示している。図8の画素Aと画素B及び図9の画素Aは往走査によって画像形成する記録信号Sであり、図9の画素Bは復走査によって画像形成する記録信号Sである。
【0039】
符号81、91は、それぞれ符号80、90で示すドット記録信号Sによって形成された、被記録媒体上でのドット形成の状態を表している。符号82、92は単ドットの主滴であり、符号83、93は同ドットのサテライトに相当する。記録信号を発生させる画素位置に主滴が1個形成され、サテライトは主滴に隣接する右画素位置に1個形成されるようにドット記録が実施される。なお、本実施形態1では、サテライトの記録位置は、着目画素、すなわち主滴が記録される位置よりも走査方向に1画素分シフトする傾向を持ち、したがって片方向印字の場合、には左から右に記録ヘッドが移動するため、サテライトは主滴の記録画素位置よりも移動方向、すなわち右側に記録されるものとし、両方向印字の場合には、往走査では着目画素(主滴)の右隣の画素にサテライトが形成され、復走査では着目画素(主滴)の左隣の画素にサテライトが形成されるものとする。
【0040】
また、主滴とサテライトの相対的な記録位置関係も一定であるものとし、サテライトは常に主滴に隣接する走査方向に進んだ画素位置(片方向印字の場合には右画素のみ)に1個記録され、両者の記録位置の関係も画像形成中は一定であるとする。
【0041】
更に、主滴とサテライトの被記録媒体上における被覆面積は4対1とし、主滴の方がサテライトよりも被覆面積が大きい状態であるものとする。図7で説明した記録ヘッド111には複数個のノズルが配列されているが、主滴とサテライトの吐出量、両者の記録位置の相対関係、並びに被記録媒体上における被覆面積は、全てのノズルに対して一様に発生し、画像形成過程においてはノズル毎の差は発生しないものとする。また、記録ヘッドの走査方向によって主滴とサテライトの吐出量に変化は発生しないものとし、主滴とサテライトの記録位置の関係は往走査と復走査では、図9で示されるように対称となる。
【0042】
以下、図1及び図2の画像処理装置の動作について、それぞれ図3及び図4のフローチャートに従って説明する。主に、片方向の場合を示す図1と図3について説明し、両方向の場合に図2及び図4については、片方向の場合と異なる部分のみを説明する。
【0043】
まず、図示しない画像走査部により入力画像が順次走査され各画素データが入力端子101より入力される(ステップS300)。
【0044】
図5は、画像処理のための画像データの走査を示した図である。符号500は入力画像の左上端の画素、符号501は入力画像の右下端の画素である。画像の走査は、画像領域の左上端の画素500から開始し、右方向に1画素毎に進む。そして、画像データ列の右端に達したら1画素下の画像データ列の左端画素に移る。同処理を繰り返し行い右下端の画素501まで到達すると、画像の走査処理は完了する。
【0045】
次に、累積誤差加算部102において入力された画素データに累積誤差メモリの画素位置に対応する累積誤差値が加算される(ステップS301)。累積誤差メモリは1個の記憶領域E0と入力画像の横画素数Wと同数の記憶領域E(x)があり、後述する方法により量子化誤差が格納されている。なお、累積誤差メモリは処理開始前に全て初期値0で初期化されているものとする。
【0046】
図6は累積誤差メモリの詳細を示した図である。累積誤差加算部102では、入力画素データの横画素位置xに対応した誤差メモリE(x)の値が加算される。
【0047】
なお累積誤差メモリはメモリ量を抑えるため、注目画素を境に既処理領域は注目画素の一行下の累積誤差を格納し、未処理領域は注目画素と同行の累積誤差を格納する。また、注目画素の右下の累積誤差はE(0)に格納する。累積誤差メモリの詳細は後述する。
すなわち、累積誤差加算後の画素データI’は、入力画素データをIとすると、
I’=I+E(x) (1)
となる。
【0048】
ここで、誤差メモリE(x)の値は、後述するように、それまでの画素と印字結果との誤差分の拡散された値を表しており、この場合の印字結果については内部出力値メモリに格納された値を含む内部出力値が使用される。
【0049】
次に、累積誤差加算後の画素データI’と閾値設定端子103により定められた閾値とを比較し、記録信号Sを決定すると同時に、入力された画素データ位置に対応する内部出力値メモリの画素位置の記憶値を用いて量子化後の内部出力値Outを決定する(ステップS302)。内部出力値メモリは入力画像の横画素数Wと同数の記憶領域O(x)があり、後述する方法により内部出力値が格納されている。なお、内部出力値メモリは処理開始前に全て初期値0で初期化されているものとする。図10は内部出力値メモリの詳細を示した図である。本実施形態1では、量子化後のドット記録信号Sを0または1の二値とし、1つの閾値と累積誤差加算後の画素データI’との比較によりドット記録信号Sと、量子化処理における、着目画素位置xの内部出力値Outを決定するものとする。すなわち、入力画素データが0から255の範囲の整数値とすれば、ドット記録信号Sと内部出力値Outは次式により決定される。
S=0、Out=O(x) (I’<128) (2)
S=1、Out=O(x)+O_main (I’≧128) (3)
ここで、内部出力値Outは、上述したように、1回の吐出によるインク滴が主滴とサテライトに分離することに起因する、主滴のドット記録の誤差についての内部的な量子化演算を行う目的で使用され、外部(記録ヘッド)に出力する記録信号そのものとは異なるため、そのような表現を用いている、しかしながら、この内部出力値Outは、実際に被記録媒体上に記録されるドットの記録状態を表すように予め設定される。外部(記録ヘッド)に出力する最終的なドット記録する信号はドット記録信号Sが司る。なお、主滴の出力値O_mainの具体的な数値については後述する。
【0050】
次に、注目画素位置xの内部出力値Outが決定すると、当該画素位置に対応する内部出力値メモリO(x)の値をゼロに初期化する(ステップS303)。
O(x)=0 (4)
【0051】
次に、着目画素位置xについて、ステップS302にて決定した記録信号Sが1であるか否かを、ドット記録信号Sを参照して判定(ステップS304)する。ここで、記録信号Sが0の場合にはステップS306へ進み、記録信号Sが1の場合には、図3の片方向印字の場合、出力画素値分配部118が、記録信号Sが1であることによって生じるサテライトによって実際に記録されてしまうことを誤差拡散部に伝えるために、内部出力値メモリの対応する場所の対応するデータの値を更新(ステップS305)する。
【0052】
一方、両方向印字の場合は、図4において、ドット記録が行われた場合にはステップS401へ進む。ステップS401では、走査方向判定部217がアドレス入力端子216から与えられる着目画素の位置(x,y)とパターン・メモリ215に記録された画像形成パターンに基づいて、注目画素位置(x,y)を形成する時の記録ヘッドの走査方向を判定する。このとき、往走査であった場合には、ステップS402へ進み、復走査であった場合には、ステップS403へ進む。図12はパターン・メモリの一例を示した図である。縦方向の記憶領域はノズル数分あり、横方向は入力画像の横画素数Wと同数の記憶領域P(ii,jj)を有している。記録ヘッドが1走査内で形成するドットの位置がパターン・メモリP(ii,jj)に記憶されており、P(ii,jj)=1に該当する位置にドットが形成され、P(ii,jj)=0に該当する位置にはドットが形成されないことを表している。このパターン・メモリに関連して、記録ヘッドの走査方向を判定する処理の詳細については後述する。次にステップS402では、出力画素値分配部218が、往走査時の内部出力値メモリ105の対応する場所に対応するデータ値を更新する。
【0053】
図3のS305、図4のS402では、出力画素値分配部118、あるいは218が、内部出力値メモリを以下のように更新する。すなわち、内部出力値メモリ内の量子化が未処理である着目画素の右隣の画素位置、すなわちサテライトが記録されている画素位置x+1の現在の値O(x+1)に対し、次式によりサテライトの出力値O_satteを加算する。
O(x+1)←O(x+1)+O_satte (5)
【0054】
両方向印字の往走査時の内部出力値メモリの更新(ステップS403)では、同じく出力画素値分配部218にて着目画素の左下の画素位置x−1に該当する内部出力値メモリ105の値に対し、次式によりサテライトの出力値O_satteを加算する。
O(x−1)←O(x−1)+O_satte (6)
【0055】
図11は、サテライトによる記録を反映させるために、内部出力値の変更をする画素位置の一例を示している。図9で既に説明したように本実施形態1では、往走査では着目画素の右隣の画素にサテライトが形成され、復走査では着目画素の左隣の画素にサテライトが形成されるものとしている。着目画素1100が往走査であれば右隣の画素1101は量子化が未処理であるため、サテライトによる影響を、実際にサテライトが記録される位置に反映させることができる。しかし、注目画素1100が復走査で印字されれる画素の場合、本来サテライトが記録される左隣の画素1103は量子化が既処理であるため、サテライトの出力値を反映させることができない。よって復走査の内部出力値の更新では、画素1103に隣接し未処理の画素である着目画素の左下の画素位置1102に反映させるような構成としている。
【0056】
すなわち、内部出力値メモリも累積誤差メモリと同様に、注目画素を境に既処理領域は注目画素の一行下の内部出力値を格納し、未処理領域は注目画素と同行の内部出力値を格納する。
【0057】
なお、主滴とサテライトの出力値は、予め測定によって計測された被記録媒体上における被覆面積の比率に基づき、次式のように決定される。
O_main=255×4/5=204 (7)
O_satte=255×1/5=51 (8)
【0058】
片方向印字の場合の図8、両方向印字の場合の図9に示されるように、本実施形態1では、主滴とサテライトの被覆面積の比率は4対1であるので、出力値の範囲(0から255の整数値)を鑑みて上記の通り設定した。このように主滴とサテライトの画質的な影響度に応じて内部出力値に重み付けをすることにより、主滴とサテライトが離れて記録される実状を忠実に反映した量子化処理を行うことが可能となる。
【0059】
次に、誤差演算部106において、累積誤差加算後の画素データI’と内部出力値Outとの差分、すなわち量子化誤差Errを計算する(ステップS306)。
Err=I’−Out (9)
【0060】
ここで、たとえば、着目画素の左隣の画素において記録信号Sが1の場合に、着目画素には、この画素への記録信号Sが0であっても、サテライトが記録されてしまうことになる。したがって、この場合に、実際にサテライトが記録されるために、誤差補正回路に対しては、その時の記録信号S如何に関わらず、サテライトが記録されたとするデータを送る必要が生じるが、上述したように、誤差演算部には、内部出力値メモリから、このサテライトの実際の記録を反映したデータ(前回の画素に対する図3のステップS305、図4のステップS402で更新されたデータ)が出力される。
【0061】
次に、誤差拡散部107において、着目している画素の横方向位置xに応じて以下のように誤差の拡散処理が行われる(ステップS307)。
E(x+1)←E(x+1)+Err×7/16 (x<W) (10)
E(x−1)←E(x−1)+Err×3/16 (x>1) (11)
E(x)←E0+Err×5/16 (1<x<W) (12)
E(x)←E0+Err×8/16 (x=1) (13)
E(x)←E0+Err×13/16 (x=W) (14)
E0←Err×1/16 (x<W) (15)
E0←0 (x=W) (16)
【0062】
ここで、累積誤差メモリについて説明する。式(10)〜(16)に示すように、本実施形態ではFloyd&Steinberg型の誤差拡散係数を使用する。図31にFloyd&Steinbergの誤差拡散係数を示す。図中4001に示す*は注目画素に相当する。このため、累積誤差メモリは入力画像の横幅分とさらに一つ用意すればよいため、本実施形態の累積誤差メモリは図6に示すようにE(x)(1≦x≦W)、E(0)を用いた。
【0063】
ここで、図32に、誤差拡散係数と累積誤差メモリの対応を示す。図32では、注目横画素位置がx(1≦x≦W)のとき、Floyd&Steinberg型の係数において、量子化誤差の7/16はE(x+1)(4002)に加算されることを示す。同様に量子化誤差の3/16はE(x−1)(4003)へ、5/16はE(x)(4004)へ、量子化誤差の1/16はE(0)(4005)へ加算される。このようにすると、累積誤差メモリは(入力画像の横画素+1)の数で済む。なお本実施形態では、式(10)〜(16)に示すように、着目画素位置に応じて拡散係数が変化する。
【0064】
ここで、改めて、内部出力メモリについて、累積誤差メモリとの関係を交えながら説明する。式(5)(6)に示すように、サテライトの位置は右隣か、左下のどちらかになるため、内部出力値メモリは入力画像の横幅分用意すればよい。そのため、本実施形態の内部出力値メモリは図10に示すようにO(x)(1≦x≦W)を用いた。ここで、注目横画素位置がx(1≦x≦W)のとき、式(5)のO(x+1)は注目画素の右隣画素であり、未処理領域である。また式(6)のO(x−1)は注目画素の左下画素であり、これも未処理領域である。すなわち、内部出力メモリは、着目画素を基準に左側は1行下の内部出力値であり、右側は着目画素と同行の内部出力値であることは、上述の累積誤差メモリと同じである。
【0065】
以上で、入力画像1画素分の誤差拡散処理が完了し、次にステップS302で決定したドット記録信号Sを出力端子109より出力する(ステップS308、プリンタ110では、ドット記録信号Sに従ってドットの記録、非記録を実施する)。
【0066】
最後に、前記処理を入力画像の全画素に対して施されたか否かを判定し(ステップS309)、全画素に対して以上の処理が行われたと判断された場合、入力画像の擬似中間調処理が完了する。
【0067】
なお、ステップS301〜302を除く他のステップは、サテライトの記録による誤差を未処理の画素に適用するためのステップと見なすことができる。
【0068】
片方方向印字の場合は以上であるが、次に、両方向印字の場合に、記録ヘッドの走査方向を判定する処理の詳細について以下に述べる。走査方向判定部217では、アドレス入力端子216より入力される入力画素データIの画素位置(x,y)と、パターン・メモリ215に格納された1走査内での画像形成パターンを参照して走査方向を判定する。図13には、記録ヘッド111を用いて画像形成する様子を例示した。なお、ノズルの配置間隔は1200dpi(約25.4μm)とする。図13では、主走査方向の画素列を異なる複数のノズルで画像形成する、いわゆるマルチ・パス印刷を例として、画像形成される過程を描画している。例示するマルチ・パス印刷では、主走査方向の画素列を異なる2つのノズルで形成する2パス印刷を実施し、スキャン毎の1紙送り量を8ノズル分(25.4μm×8=203.2μm)とすると、図で示されるような画像形成となる。記録ヘッドの第1スキャンは往走査を行い、第2スキャンでは復走査を行う。往走査と復走査をスキャン毎に切り替える双方向印刷方法を行っている。記録ヘッドの各ノズルには、説明の都合上0〜fまでの番号を16進数で記述しており、各画素を形成するノズルを分かり易く示した1300とノズル番号が対応している。また、1スキャン内でドットが記録される画素位置はパターン・メモリP(ii,jj)を参照し、下記の条件下を満たす画素位置(x,y)では当該スキャンでのドット記録を行う。
P(x,(y−1)%16+1)=1 (17)
なお、演算子%はモジュロであり、剰余の値を導く。また、上式を満たさない画素位置に対して当該スキャンではドット形成を実施しないが、異なるスキャンでドット記録が行えるように予め画像形成パターンを形成しおき、その結果のみがパターン・メモリに格納されているものとする。
【0069】
次に、各画素位置が往走査、復走査のどちらの走査でドット形成されるかについて説明する。符号1301はパターン・メモリP(ii,jj)と各スキャン時の走査方向を加味して、符号1300に番号明記されたノズルが各画素位置を記録する際に、記録ヘッドがどちらの方向で走査されたかを示している。往走査で形成される画素1302と復走査で形成される画素1303とで構成されている。走査方向判定部217では以下の式に基づいて、着目画素位置(x,y)に対する走査方向を判定する。
往走査:P(x,(y−1)%16+1)=0 (18)
復走査:P(x,(y−1)%16+1)=1 (19)
以上で、着目画素にドット形成する時に、記録ヘッドの走査方向を判定する処理が完了する。
【0070】
本実施形態1では、片方向印字の場合に主滴に隣接する右画素位置にサテライトが記録され、両方向印字の場合には主滴に隣接する右画素位置に往走査時のサテライトが記録され、左画素位置に復走査時のサテライトが記録されるものとして説明したが、サテライトの記録位置はこれに限定されるものではない。主滴とサテライトの記録位置が離れた場合には主滴の2画素先以上でも本実施形態1は実現可能である。
【0071】
主滴とサテライトの記録位置の間隔をL[mm]、プリンタのドット記録解像度をD[dot/mm]、主滴が記録される横画素位置をxとすると、サテライトが記録される画素位置は、片方向印字の場合はx+D×Lにて、両方向印字の場合は、往走査の時はx+D×L、復走査の時はx−D×Lにて表現することが可能である。ただし、先にも述べたように、両方向印字における復走査時で記録されるサテライト位置は既に量子化処理が完了しているため、縦方向に1画素分下った位置にサテライトの影響を反映させる、すなわち、出力画素値分配部で、その位置に対応する内部出力値メモリを更新する構成としている。
【0072】
なお、本実施形態1の両方向印字の場合に、主走査方向の画素列を異なる2つのノズルで形成する2パスのマルチ・パス印刷について言及したが、マルチ・パス印刷のパス数は2パスに限定されるものではない。図12に記述されるドット・パターン・メモリに格納される値を変更し、予め記憶しておくことでパス数の変更に伴う画像形成も実現可能である。異なる4つのノズルで主走査方向の画素列を形成する4パス印刷、異なる8つのノズルで主走査方向の画素列を形成する8パス印刷でも、本実施形態21は実現可能である。更には、主走査方向の画素列を1ノズルで形成する1パス印刷でも実現可能である。
【0073】
なお、本実施形態1では主滴とサテライトの出力値O_main及びO_satteを被記録媒体上での被覆面積に応じて決定したが、画質影響度を決定する要因であれば被服面積に限定されるものではない。インクの液滴量、光学的な反射濃度、あるいは透過濃度、積分濃度、明度などの画質影響度を考慮して出力値を決定しても本実施形態1は実現可能であることは言うまでも無い。たとえば、主滴とサテライトの相対的位置が、1ドット未満の場合は、その両者の被覆面積と両者のドットの相対的位置の両方の関数として決定することも可能である。
【0074】
また、説明を簡単化するために両方向印字の場合の内部出力値メモリについての説明を一部省略したが、両方向印字の場合の内部出力値メモリは、入力画像の横画素数Wの2倍の記憶領域O(x)がある。着目画素を含むラインの誤差演算を実行する場合は、対応するラインの内部出力値メモリからのサテライトのデータを反映したデータを出力し、出力画素値分配部は、着目画素に対するサテライトの寄与分を誤差として使用するために、上述したように、操作方向判定部からの信号に基づいて、所定のラインの内部出力値メモリの上述した位置のデータに対して、サテライトの寄与分を加算する動作を行う。
【0075】
また、上述した方法を採ることにより、記録信号Sが0の画素であっても、その画素に対応する内部出力値メモリに、O_satteのデータが書き込まれていた場合には、このデータ値とその画素に対応する累積誤差加算後の画素データI’が誤差演算部106に入力されて処理されることにより、その画素に対する記録信号Sを1としてインク滴を吐出しないにも係わらず、それ以前のインク滴の吐出によって実際に記録されるサテライトを見込んだ形で誤差が算出されることになる。
【0076】
以上の構成により、第1の実施形態によれば、片方向印字の場合、あるいは両方向印字の往走査と復走査で形成されるドット・パターンの違いによって生じる画質劣化に対し、主滴とサテライトの画質的な影響度を考慮した誤差拡散法を行うことが可能になり、これにより、誤差拡散法の利点である入力画像データの濃度保存特性を損なうことなく、サテライトの発生による画像劣化を低減することが可能となる。言い換えれば、誤差拡散において、主滴とサテライトに分離して記録されることを踏まえた誤差拡散を行うことが可能になるので、特に、ハイライト部分において、ドットが目立ってしまうという粒状性の悪化を避けて一様にドットが分散するように形成することが可能になる。
【0077】
(第2の実施形態)
本発明の実施形態1における片方向印字の場合、サテライトの記録位置が主滴に対し記録ヘッドの走査方向、すなわち右方向に着弾した場合について説明したが、そうではなく、図14に図示するようにサテライト141が主滴140の左側に記録される際には、画像処理装置の動作に変更が発生する。主滴とサテライトの記録位置が反転する理由としては、記録ヘッドの走査方向の反転、主滴とサテライトの液滴量の比率が異なるなどが挙げられる。本発明の第2の実施形態では主滴とサテライトが反転して記録された場合に対する画像処理方法について説明する。なお、以下の説明は、第1の実施形態における片方向印字の場合で、サテライトの記録位置が主滴に対し記録ヘッドの走査と逆方向、すなわち左方向に着弾した場合を説明する。
【0078】
以下、本実施形態2の画像処理装置の動作について図15のフローチャートに従って説明する。なお、前記画像処理装置の構成は前記実施形態1の図1と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
まず、図示しない画像走査部により入力画像が順次走査され各画素データが入力端子101より入力される(ステップS1500)。
【0080】
図16は、本実施形態2における画像処理のための画像データの走査を示した図である。符号1600は、入力画像の右上端の画素、符号1001は、入力画像の左下端の画素である。本実施形態2では、画像の走査は、画像領域の右上端の画素1600から開始し、左方向に1画素毎に進む。そして、画像データ列の左端に達したら1画素下の画像データ列の右端画素に移る。同処理を繰り返し行い左下端の画素1601まで到達すると、画像の走査処理は完了する。
【0081】
図15のステップS301〜、S304は、既に説明した図3のステップの動作と同じであるので説明を省略する。
【0082】
図15のステップ304において、着目画素位置xについて、ステップS302にて決定した記録信号Sが1であるか否かを、ドット記録信号Sを参照して判定する。ここで、記録信号Sが0の場合にはステップS306へ進み、記録信号が1の場合には、内部出力値メモリの値を更新する(ステップS1501)。
【0083】
ここで更新される内部出力値メモリは、量子化が未処理である着目画素の右隣の画素位置、すなわちサテライトが記録さている画素位置x−1に対し、次式によりサテライトの出力値O_satteを加算する。
O(x−1)←O(x−1)+O_satte (6)
【0084】
ステップS306、S308、S309は、図3のステップと同様であり、省略するが、本実施形態2のステップS1502では、誤差拡散部107において、着目している画素の横方向位置xに応じて以下のように誤差の拡散処理が行われる。
E(x−1)←E(x−1)+Err×7/16 (x<W) (20)
E(x+1)←E(x+1)+Err×3/16 (x>1) (21)
E(x)←E0+Err×5/16 (1<x<W) (12)
E(x)←E0+Err×13/16 (x=1) (22)
E(x)←E0+Err×8/16 (x=W) (23)
E0←Err×1/16 (x<W) (15)
E0←0 (x=W) (16)
【0085】
なお、本実施形態2においても主滴とサテライトの出力値O_main及びO_satteを被記録媒体上での被覆面積に応じて決定したが、画質影響度を決定する要因であれば被服面積に限定されるものではない。光学的な反射濃度、あるいは透過濃度、積分濃度、明度などの画質影響度を考慮して出力値を決定しても本実施形態2は実現可能であることは言うまでも無い。
【0086】
以上説明したように、第2の実施形態の場合の、主滴とサテライトの被記録媒体上における記録位置が反転した場合においても、第1の実施形態と同じように、主滴とサテライトの画質的な影響度を考慮した誤差拡散法を行うことが可能となる。
【0087】
(第3の実施形態)
本発明の第1の実施形態、第2の実施形態ではサテライト・ドットが1個だけ形成される場合について言及したが、本実施形態3は2個以上の複数のサテライト・ドットが形成される際の画像処理装置について、片方向印字の場合、及び両方向印字の場合を説明する。
【0088】
まず、片方向印字の場合を説明する。
【0089】
図17には、片方向印字の場合に主滴1ドットに対しサテライト・ドットが2個形成された記録状態を模式的に示した。
【0090】
符号1700は、ドット記録信号Sを入力画像の画素配置に沿って2次元的に展開した場合の1部分を表しており、斜線部で描画された位置に対して、インク滴が吐出されることを示している。符号1701は、符号1700で示されるドット記録信号Sによって形成された被記録媒体上でのドット形成の状態を表している。符号1702は単ドットの主滴であり、符号1703は同ドットの第1サテライト、符号1704は第2サテライトに相当する。記録信号を発生させる画素位置に対して主滴1702が1個形成され、第1サテライト1703は主滴に隣接する右画素位置に、第2サテライト1704は右2画素先の位置に、それぞれ形成されるようにドット記録が実施される。なお、本実施形態3では、左から右に記録ヘッドが移動するため、サテライトは主滴の記録画素位置よりも移動方向、すなわち右側に記録されるものとする。また、主滴とサテライトの相対的な記録位置関係も一定であるものとし、サテライトは常に主滴に隣接する右画素位置に1個、主滴の右2画素先の位置に1個記録され、これらドットの記録位置の関係も画像形成中は一定であるとする。更に、主滴とサテライトの被記録媒体上における被覆面積は3対1とし、主滴の方がサテライトよりも被覆面積が大きい状態であるものとする。つまり、主滴1702、第1サテライト1703、第2サテライト1704の被覆面積をS_main、S_satte1、S_satte2とすると、次式の関係となる。
S_main:S_satte1:S_satte2=3:1:1 (24)
【0091】
本発明の第3の実施形態は、サテライト・ドットが複数形成されることを除き前記第1の実施形態における画像処置装置の構成と同様である。本実施形態3では図2のフローチャートに対し、着目画素位置xにドット記録が実施された時にのみ行われる、着目画素位置x以外の内部出力値メモリの値の更新(ステップS305)を次式の通り変更する。
【0092】
O(x+1)←O(x+1)+O_satte1 (25)
O(x+2)←O(x+2)+O_satte2 (26)
つまり、内部出力メモリの値を更新する画素がサテライトの個数に応じて増加する構成としており、これが本実施形態3の特徴である。なお、各サテライトの出力値O_satte1、O_satte2は、予め測定によって計測された被記録媒体上における被覆面積に基づいて決定されており、式(24)を用いて次式のように決定される
O_main=255×3/5=153 (27)
O_satte1=255×1/5=51 (28)
O_satte2=255×1/5=51 (29)
ここで、O_mainは主滴の内部出力値であり、前記ステップS302の量子化後の、着目画素位置xの内部出力値Outを決定する際に使用される。
【0093】
次に両方向印字の場合を説明する。図18には、両方向印字の場合に主滴1ドットに対しサテライト・ドットが2個形成された記録状態を模式的に示した。
【0094】
符号1800はドット記録信号を入力画像の画素配置に沿って2次元的に表しており、斜線部(画素A、B)で描画された位置にドットが記録されることを示している。画素Aは往走査によって画像形成する画素であり、画素Bは復走査によって画像形成する画素である。符号1801はドット記録信号1800によって形成された、被記録媒体上でのドット形成の状態を表している。符号1802は単ドットの主滴であり、符号1803は同ドットの第1サテライト、符号1804は第2サテライトに相当する。記録信号を発生させる画素位置に主滴1802が1個形成され、第1サテライト1803は走査方向に沿って主滴に隣接する画素位置に、第2サテライト1804は2画素先の位置に、それぞれ形成されるようにドット記録が実施される。より具体的には、往走査では着目画素の右隣の画素に第1サテライトが形成され、右2画素先の位置に第2サテライトが形成される。復走査では着目画素の左隣の画素に第1サテライトが形成され、左2画素先の位置に第2サテライトが形成されるものとする。この場合も、上述した(式24)が成り立つものとする。
【0095】
本発明の第3の実施形態は、サテライト・ドットが複数形成されることを除き前記第1の実施形態における画像処置装置の構成と同様である。本実施形態2では図4のフローチャートに対し、着目画素位置xにドット記録が実施された時にのみ行われる往走査内部出力値の更新(ステップS402)を次式の通り変更する。
O(x+1)←O(x+1)+O_satte1 (30)
O(x+2)←O(x+2)+O_satte2 (31)
更に、復走査内部出力値の更新(ステップS403)を次式の通り変更する。
O(x−1)←O(x−1)+O_satte1 (32)
O(x−2)←O(x−2)+O_satte2 (33)
なお、式32、33で、画素位置x−1、およびx−2は、着目画素の下側のライン上にある画素である。つまり、内部出力メモリの値を更新する画素がサテライトの個数に応じて増加する構成としており、これが本実施形態3の特徴である。
【0096】
なお、本実施形態3では、単ドットに対し複数のサテライト・ドットが記録される一例として2個のサテライト・ドットが発生する場合について言及したが、サテライト・ドットの個数は2個に限定されるものではない。3個以上の場合も本実施形態3は適用可能である。
【0097】
また、本実施形態3においても主滴とサテライトの出力値を被記録媒体上媒体上での被覆面積に応じて決定したが、画質影響度を決定する要因であれば被服面積に限定されるものではない。インクの液滴量、光学的な反射濃度、あるいは透過濃度、積分濃度、明度などの画質影響度を考慮して出力値を決定しても本実施形態2は実現可能であることは言うまでも無い。
【0098】
以上の構成により、第3の実施形態によれば、単ドットの形成で被記録媒体上に記録されるサテライト・ドットが2個以上となった場合にも、個数の増大によって誘発されるサテライトの画質的な影響度を考慮した誤差拡散法を行うことが可能となる。
【0099】
(第4の実施形態)
既に説明した本発明の第1の実施形態から第3の実施形態では、各サテライト・ドットが1つの画素領域内に収まるように記録される場合(図8、図9、図14、図17、図18)について言及したが、本実施形態4では、サテライト・ドットが複数の画素領域にまたがって記録される状態での画像処理装置について説明する。
【0100】
図19は、片方向印字の場合の、サテライト・ドットが複数の画素領域にまたがって被記録媒体上に記録される状態を模式的に示した図であり、図22は、両方向印字の場合の、サテライト・ドットが複数の画素領域にまたがって被記録媒体上に記録される状態を模式的に示した図である。図19及び、図22において、符号1900および2200はドット記録信号Sを入力画像の画素配置に沿って2次元的に表しており、斜線部(画素A0、B0)で描画された位置に対してインク滴が吐出されることを示している。符号1901、2201はドット記録信号1900、2200のそれぞれによって形成された、被記録媒体上でのドット形成の状態を表している。符号1902、2202は単ドットの主滴であり、符号1903、2203は同ドットのサテライトに相当する。記録信号を発生させる画素位置(A0、B0)に主滴が1個形成され、サテライトは主滴に隣接する右画素位置(A1、B1)と右2画素先の位置(A2、B2)にまたがって1個形成されるようにドット記録が実施される。なお、本実施形態4では、片方向印字の場合に記録ヘッドが左から右に移動するものとし、サテライトは主滴の記録画素位置よりも移動方向、すなわち右側に記録される。また、両方向印字の場合の復方向の場合には、記録ヘッドが右から左に移動するものとし、サテライトは主滴の記録画素位置よりも移動方向、すなわち左側に記録される。また、主滴とサテライトの相対的な記録位置関係も一定であるものとし、サテライトは常に主滴に隣接する右画素位置(A1、B1)と右2画素先の位置(A2、B2)にまたがって1個記録され、両者の記録位置の関係も画像形成中は一定であるとする。更に、主滴とサテライトの被記録媒体上における被覆面積は4対1とし、主滴の方がサテライトよりも被覆面積が大きい状態であるものとする。更にサテライト・ドットは画素A1とA2(又は、B1とB2)に当該ドットの被覆面積を均等二分する状態で記録されている。すなわち、画素A0、A1、A2の各領域内におけるインクの被覆面積をS_A0、S_A1、S_A2とすると、その比率は次式の通りとなる。
【0101】
S−A0:S−A1:S−A2=8:1:1 (34)
なお、主滴とサテライトの吐出量、両社の記録位置の相対関係、並びに被記録媒体上における被覆面積は、全てのノズルに対して一様に発生し、画像形成過程においてはノズル毎の差は発生しないものとする。
【0102】
図20は、片方向印字の場合における本発明の第4の実施形態である画像処理装置と、画像形成装置であるプリンタとを接続した画像形成システムの構成を示したブロック図である。図1に示される前記実施形態1の画像システムの構成に対し、ドット出力値メモリ2000が追加された構成である。
【0103】
次に、本実施形態4の片方向印字の場合の画像処理装置の動作について図21のフローチャートに従って説明する。
【0104】
まず、図示しない画像走査部により入力画像が順次走査され各画素データが入力端子101より入力される(ステップS300)。なお、ステップS300〜S309は、前記実施形態1のステップと同様であり、画像処理のための画像データの走査は図5に示した通りである。
【0105】
次に、累積誤差加算部102において入力された画素データに累積誤差メモリの画素位置に対応する累積誤差値が加算される(ステップS301)。次に、ステップS2100で、累積誤差加算後の画素データI’と閾値設定端子103により定められた閾値とを比較し、記録信号Sを決定すると同時に、入力された画素データ位置に対応する内部出力値メモリの画素位置の記憶値と、ドット出力値メモリ2000に格納された注目画素の値とを用いて、量子化後の回部出力値Outを決定する(ステップS2100)。ここで、ドット記録信号Sと、着目画素位置xの内部出力値Outは次式により決定される。
S=0、Out=O(x) (I’ < 128) (2)
S=1、Out=O(x)+Sd(0) (I’ ≧ 128) (35)
ここで、Sd(0)はドット出力値メモリ2000の先頭に格納される値である。このドット出力値メモリには、単ドットの形成にてインクの被覆が行われる画素領域数Nと同数の記憶領域Sd(i)があり、単ドットの形成によって覆われる被記録媒体上の面積を、画素領域毎に対する影響度に変換した出力値が後述する方法により格納されている。ここで、先の図19にて説明したように、本実施形態4では単ドットの形成により、注目画素の他に隣接する2画素に対してもインクの記録が行われているので、N=3となりドット出力値メモリは3個の記憶領域を持っている。また、各領域に格納されている値は、出力値が0から255の範囲の整数値であれば、式(34)に対応する画素領域のインク被覆面積比に基づき、次式の通り決定されている。
Sd(0)=255×8/10=204 (36)
Sd(1)=255×8/10=25.5 (37)
Sd(2)=255×8/10=25.5 (38)
【0106】
次に、注目画素位置xの内部出力値が決定すると、当該画素位置に対応する内部出力値メモリO(x)の値をゼロに初期化する(ステップS303)。
【0107】
O(x)=0 (4)
次に、着目画素位置xについて、ステップS302にて決定した記録値Sが1であるか否かをドット信号Sを参照して判定し(ステップS304)、記録信号Sが0の場合にはステップS306へ進み、記録信号Sが1の場合には、ドット出力値メモリ2000を参照し、内部出力値メモリの値を更新する(ステップS2101)。ここで更新される内部出力値メモリの位置は、単ドットの形成にてインクの被覆が行われる画素領域の位置で、着目画素位置xを除く画素位置の値にドット出力値を加算して、加算結果を同じ位置に格納する。
O(x+a)←O(x+a)+Sd(a) a=1、・・・、N−1 (39)
このように各画素領域に記録される主滴とサテライトの画質的な影響度に応じて内部出力値に重み付けをすることにより、サテライトが複数の画素領域に渡って記録される場合にも、記録位置のずれを忠実に反映した量子化処理を行うことが可能となる。
【0108】
なお、ステップS306〜309は、図3と同様であり、説明を省略する。
【0109】
次に、同様に、両方向印字の場合を、同様に図23、図24を使用して説明する。なお、図2及び図4と同様な部分の説明は、省略する。図23は、両方向印字の場合における本発明の第4の実施形態である画像処理装置と、画像形成装置であるプリンタとを接続した画像形成システムの構成を示したブロック図である。図2に示される前記実施形態1の画像システムの構成に対し、ドット出力値メモリ2300が追加された構成である。
【0110】
次に、本実施形態4の片方向印字の場合の画像処理装置の動作について図24のフローチャートに従って説明する。図24において、画像データ入力(ステップS300)、累積誤差加算(ステップS301)の処理は、片方向印字の場合と同様であるため説明を省略する。
【0111】
ステップS300およびS301が実行されると、次に、累積誤差加算後の画素データI’と閾値設定端子103により定められた閾値とを比較し、記録信号Sを決定すると同時に、入力された画素データ位置に対応する内部出力値メモリの画素位置の記憶値と、ドット出力値メモリ2300に格納された注目画素の値とを用いて、量子化後の、着目画素位置xの内部出力値Outを決定する(ステップS2400)。なお、内部出力値メモリ205は、上述した構成を備え、同様な動作をするものとする。
【0112】
ステップS203からステップS401までの処理は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0113】
次に、往走査内部出力値の更新(ステップS2401)について説明する。往走査内部出力値の更新では、出力画素値分配部218が往走査時の内部出力値メモリ105に格納される値の更新を行う。ここで更新される内部出力値メモリは、単ドットの形成にてインクの被覆が行われる画素領域で、着目画素位置xを除く画素位置の値に対してドット出力値を加算して、上述した式39に示したように、加算結果を同じ位置に格納する。
【0114】
一方、往走査時の内部出力値メモリの更新(ステップS2402)では、同じく出力画素値分配部218にて、単ドットの形成にてインクの被覆が行われる画素領域で、着目画素の左下方向の画素位置の値に対してドット出力値を加算する。
O(x−a)←O(x−a)+Sd(a) a=1、・・・、N−1 (40)
このように各画素領域に記録される主滴とサテライトの画質的な影響度に応じて内部出力値に重み付けをすることにより、サテライトが複数の画素領域に渡って記録される場合にも、記録位置のずれを忠実に反映した量子化処理を行うことが可能となる。
【0115】
第1の実施形態と同様であるため説明を省略するが、ステップS306からステップS309までを実行し、最後に、前記誤差拡散処理を入力画像の全画素に対して施されたか否かを判定し(ステップS309)、全画素に対して以上の処理が行われたと判断された場合、入力画像の擬似中間調処理が完了する。
【0116】
なお、本実施形態4では単ドットの形成によって覆われる被記録媒体上の面積に応じて決定したが、画質影響度を決定する要因であれば被服面積に限定されるものではない。インクの液滴量、光学的な反射濃度、あるいは透過濃度、積分濃度、明度などの画質影響度を考慮して出力値を決定しても本実施形態4は実現可能であることは言うまでも無い。
【0117】
また、本実施形態4では、説明を簡単にするため単ドットに対し1個のサテライト・ドットが発生する場合について言及したが、発生するサテライト・ドットは1個に限定されるものではない。2個以上の場合も、上述した実施形態3で説明した方法で、本実施形態4を適用することが可能である。更に、サテライト・ドットの増加に伴いインクが被覆する画素領域が増大する可能性が考えられるが、ドット出力値メモリ2300の領域サイズを伸張し、各画素領域における画質影響度に応じた出力値を格納することで実現可能となる。すなわち、本実施形態4はサテライト・ドットの個数と記録位置に依存することなく実現が可能である。
【0118】
なお、両方向印字の場合に、上述した実施形態において、主走査方向の画素列を異なる2つのノズルで形成する2パスのマルチ・パス印刷について言及したが、マルチ・パス印刷のパス数は2パスに限定されるものではない。図12に記述されるドット・パターン・メモリに格納される値を変更し、予め記憶しておくことでパス数の変更に伴う画像形成も実現可能である。異なる4つのノズルで主走査方向の画素列を形成する4パス印刷、異なる8つのノズルで主走査方向の画素列を形成する8パス印刷でも、本実施形態3は実現可能である。更には、主走査方向の画素列を1ノズルで形成する1パス印刷でも実現可能である。
【0119】
以上の構成により、第4の実施形態によれば、サテライト・ドットの記録位置と記録個数に依存することなく、サテライトの画質的な影響度を考慮した誤差拡散法を行うことが可能となる。
【0120】
(第5の実施形態)
既に説明した本発明の第1の実施形態から第4の実施形態では、説明を分かり易くするために、記録ヘッドに具備される複数個のノズルにおいて、主滴とサテライトの吐出量、両者の記録位置の相対関係、並びに被記録媒体上における被覆面積は、全てのノズルに対して一様に発生し、画像形成過程においてはノズル毎の差は発生しないものとした。しかしながら、実際のプリンタに使用される記録ヘッドの各ノズルには製造上のバラツキによる品位差があり、全てのノズルに対して一様な液滴量として主滴とサテライトを発生させることは容易ではない。そこで、本実施形態5では、ノズル毎に主滴とサテライトの液滴量が異なる記録ヘッドを用いた場合の画像処理装置について説明する。
【0121】
図25には、記録ヘッド2500に対し縦方向に1列に並んだ16個のノズルによって形成される、ドット・パターン(片方向印字の場合、あるいは両方向印字の場合の往方向の場合のみを示す。両方向印字の場合の復方向の場合は、図25に示した場合と対象の関係になる)を示している。図13と同様に、記録ヘッド2500の各ノズルには、説明の都合上0〜fまでの番号を16進数で記述しており、ノズルの配置間隔は1200dpi(約25.4μm)とする。ノズル0からはサテライト・ドットが複数の画素領域にまたがって記録される前記実施形態4に該当するドット(主滴1902とサテライト1903,主滴2202とサテライト2203)が形成され、ノズル1からは主滴が記録される画素に隣接した画素領域にのみ、サテライト・ドットが記録される前記実施形態1に該当するドット(主滴82とサテライト83、主滴92とサテライト93)形成の状態である。更に、ノズル2から吐出されるドットにはサテライト・ドットが発生せず、注目記録画素にのみ主滴が形成されている。ノズル3からは、複数のサテライト・ドットが形成され、主滴に隣接する右画素位置と右2画素先の位置にサテライトが記録される状態である。この状態は、前記実施形態3に該当するドット(主滴1702と第1サテライト1703と第2サテライト1704、主滴1802と第1サテライト1803と第2サテライト1404)形成の状態である。
【0122】
図26は、本発明の第5の実施形態である画像処理装置と、画像形成装置であるプリンタとを接続した画像形成システムの構成を示したブロック図である。図23に示される前記実施形態4の画像システムの構成に対し、ドット出力値メモリ2300を、ノズル毎ドット出力値メモリ2600に変更し、記録ノズル特定部2601を追加した構成である。
【0123】
ノズル毎ドット出力メモリ1600には、ノズルnによって単ドットが形成された際に、インクの被覆が行われる画素領域数Nと同数の記憶領域Sd(i,j)があり、これら記録領域がノズル数分用意されている。ノズル毎ドット出力メモリSd(i,j)には、ノズルnの単ドットの形成によって覆われる被記録媒体上の面積を、画素領域毎に対する影響度に変換した出力値が格納されている。前記出力値の算出方法は既に、本発明の第1の実施形態から第4の実施形態にて言及しているため詳しい説明は避ける。図25に示される各ノズルに対する出力値は以下の式にて定義される。
【0124】
まず、ノズル0の出力値Sd(1,j)は式(36)から(38)に従い、次の通りとなる。
Sd(1,1)=204 (41)
Sd(1,2)=25.5 (42)
Sd(1,3)=25.5 (43)
ノズル1の出力値Sd(2,j)は式(7)(8)に従い、次の通りとなる。
Sd(2,1)=204 (44)
Sd(2,2)=51 (45)
Sd(2,3)=0 (46)
ノズル2はいずれもサテライトを伴わない主滴のみを形成するので、ノズル3の出力値Sd(3,j)は次の通りとなる。
Sd(3,1)=255 (47)
Sd(3,2)=0 (48)
Sd(3,3)=0 (49)
ノズル3の出力値Sd(4,j)の出力値Sd(4,j)は、式(24)から(26)に従い、次の通りとなる。
Sd(4,1)=153 (50)
Sd(4,2)=51 (51)
Sd(4,3)=51 (52)
なお、本実施形態5では単ドットの形成により、注目画素の他に隣接する2画素に対してもインクの記録が行われているのでN=3となり、記録ヘッド2500のノズル数は全体で16個であるため、ノズル毎ドット出力値メモリは48個の記憶領域を保持していることになる。
【0125】
次に、本実施形態5の画像処理装置の動作について図27のフローチャートに従って説明する。
【0126】
まず、画像データ入力(ステップS300)、累積誤差加算(ステップS301)であるが、本処理は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0127】
次に、記録ノズル特定部2601では、アドレス入力端子216より与えられる着目画素位置(x,y)と、パターン・メモリ215に記録される画像形成パターンを参照し、注目画素位置を形成する記録ノズルnを特定する(ステップS2700)。記録ノズルの特定方法に関する詳細は後述する。
【0128】
次に、累積誤差加算後の画素データI’と閾値設定端子103により定められた閾値とを比較し、記録ノズルnとノズル毎ドット出力メモリSd(i,j)とを対応させて、量子化後の出力値を決定する(ステップS2701)。ステップS303からステップS401までの処理は、既に説明した動作と同様であるため説明を省略する。
【0129】
次に、往走査内部出力値の更新(ステップS2702)について説明する。往走査内部出力値の更新では、出力画素値分配部218が往走査時の内部出力値メモリ105に格納される値の更新を行う。本実施形態5では、記録ノズル特定部2601で導出されるノズルnとノズル毎ドット出力メモリSd(i,j)とを対応させ、単ドットの形成にてインクの被覆が行われる画素領域に対して、着目画素位置xを除く画素位置の値にノズル毎ドット出力値を加算する。
O(x+a)←O(x+a)+Sd(n+1,a) a=1、・・・、N−1 (53)
【0130】
一方、往走査時の内部出力値メモリの更新(ステップS2702)では、同じく出力画素値分配部218にて、単ドットの形成にてインクの被覆が行われる画素領域で、着目画素の左下方向の画素位置の値にドット出力値を加算する。
O(x−a)←O(x−a)+Sd(n+1,a) a=1、・・・、N−1 (54)
【0131】
このように、ノズル毎に主滴とサテライトの液滴量が異なる記録ヘッドを用いた場合にも、各画素領域に記録される主滴とサテライトの画質的な影響度に応じて内部出力値を変化させることで、ノズル間の液滴バラツキによって生じる画像劣化を量子化処理にて抑制することが可能となる。
【0132】
第1の実施形態と同様であるため説明を省略するが、ステップS306からステップS308までを実行し、最後に、前記誤差拡散処理を入力画像の全画素に対して施されたか否かを判定し(ステップS309)、全画素に対して以上の処理が行われたと判断された場合、入力画像の擬似中間調処理が完了する。
【0133】
続いて、記録ノズルの特定方法の詳細について以下に述べる。記録ノズル特定部1601では、アドレス入力端子216より入力される入力画素データIの画素位置(x,y)とパターン・メモリ215に格納された1走査内での画像形成パターンを参照して着目画素位置(x,y)にドット形成するノズルを特定する。本実施形態5で使用する画像形成パターンは図12の通りであり、同値がパターン・メモリP(ii,jj)に格納されている。また、画像形成過程は図13に例示されるように、主走査方向の画素列を異なる複数のノズルで画像形成する、いわゆるマルチ・パス印刷を本実施形態5でも採用している。1スキャン内でドットが記録される画素位置はパターン・メモリP(ii,jj)を参照し、下記の条件に従って記録ノズルnを特定する。
P(x,(y−1)%8+1)=1 (55)
P(x,(y−1)%8+1)=0 (56)
式(55)を満たす場合 n=(y−1)/8 (57)
式(56)を満たす場合 n=(y−1)/8+8 (58)
以上で、着目画素に対しドット形成する記録ノズルを特定する処理が完了する。
【0134】
なお、本実施形態5では主走査方向の画素列を異なる2つのノズルで形成する2パスのマルチ・パス印刷について言及したが、マルチ・パス印刷のパス数は2パスに限定されるものではない。図12に記述されるドット・パターン・メモリに格納される値を変更し、予め記憶しておくことでパス数の変更に伴う画像形成も実現可能である。異なる4つのノズルで主走査方向の画素列を形成する4パス印刷、異なる8つのノズルで主走査方向の画素列を形成する8パス印刷でも、本実施形態5は実現可能である。更には、主走査方向の画素列を1ノズルで形成する1パス印刷でも実現可能である。
【0135】
また、本実施形態5では単ドットの形成によって覆われる被記録媒体上の面積に応じて決定したが、画質影響度を決定する要因であれば被服面積に限定されるものではない。インクの液滴量、光学的な反射濃度、あるいは透過濃度、積分濃度、明度などの画質影響度を考慮して出力値を決定しても本実施形態5は実現可能であることは言うまでも無い。
【0136】
以上の構成により、第5の実施形態によれば、記録ヘッドに配列されたノズル毎に主滴とサテライトの液滴量が一様でない場合にも、ノズル毎の吐出特性のバラツキによって引き起こされる画質的な劣化影響度を考慮した誤差拡散法を行うことが可能となる。
【0137】
なお、たとえば、片方向印字の場合に、内部出力値メモリとして、入力画像の横画素数Wと同数の記憶領域O(x)を有するとしたが、少なくとも片方向印字の場合は、たとえば想定されるサテライト数+α(α=1以上、サテライト数+α=偶数が望ましい)の記憶領域を設けて、この記憶領域をリング状にシフトして使用することも可能である、すなわち、着目画素x、x+1、x+2、x+3、x+4に相当するアドレスとして、たとえば、0、1、2、3とした場合に、次の画素が着目画素となった場合に、その着目画素xに対しては、アドレス2を対応させるように制御することができる。このようなことは、両方向印字の場合の、往走査の場合にも適用することが可能であり、復走査の場合のみ、上述したように、内部出力値メモリとして、入力画像の横画素数Wと同数の記憶領域O(x)を有することが必要になる。なお、この説明において、αとして1以上とするのは、たとえば図3のステップ302で、上述した式(3)を着目画素位置xで実行する必要があり、同時にサテライト分をサテライト数格納する必要があるためであり、サテライト数+α=偶数が望ましいとしたのは、内部出力値メモリをリング状にシフトする際のアドレス制御においてバイナリ演算が容易であるためである。
【0138】
(他の実施例)
なお本発明の目的は前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム・コードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラム読出し実行することによっても、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
【0139】
この場合、記憶媒体から読出されたプログラム・コード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラム・コードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0140】
プログラム・コードを供給するための記憶媒体としては、たとえば、フロッピー(登録商標)・ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリ・カード、ROMなどを用いることができる。
【0141】
また、コンピュータが読出したプログラム・コードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラム・コードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0142】
更に、記憶媒体から読出されたプログラム・コードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】片方向印字の場合の、本発明の第1の実施形態である画像処理装置のブロック図を示す図である。
【図2】両方向印字の場合の、本発明の第1の実施形態である画像処理装置のブロック図を示す図である。
【図3】片方向印字の場合の、第1の実施形態である画像処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】両方向印字の場合の、第1の実施形態である画像処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図5】第1の実施形態における、画像処理における画像の走査例を示す図である。
【図6】累積メモリの構成例を示す図である。
【図7】記録ヘッドの構成例を示す図である。
【図8】片方向印字の場合、あるいは両方向印字の往走査の場合のドット記録信号と被記録媒体上での主滴とサテライトの記録状態の一例を示す図である。
【図9】両方向印字の場合のドット記録信号と被記録媒体上での主滴とサテライトの記録状態の一例を示す図である。
【図10】内部出力値メモリの構成例を示す図である。
【図11】サテライトによる記録を反映させるため、内部出力値の変更をする画素位置の一例を示す図である。
【図12】パターン・メモリ215の一例を示す図である。
【図13】マルチ・パス印刷による画像形成過程の一例を示す図である。
【図14】片方向印字の場合で、図8に示した場合と逆方向に記録ヘッドが走査する場合の、すなわち第2の実施形態における被記録媒体上での主滴とサテライトの記録状態を示す図である。
【図15】第2の実施形態である画像処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図16】第2の実施形態における、画像処理における画像の走査例を示す図である。
【図17】被記録媒体上での主滴と複数のサテライトが記録される状態の1例を示す図である。
【図18】被記録媒体上での主滴と複数のサテライトが記録される状態の1例を示す図である。
【図19】片方向印字の場合の、サテライト・ドットが複数の画素領域にまたがって記録された状態の1例を示す図である。
【図20】片方向印字の場合の、本発明の第4の実施形態である画像処理装置のブロック図を示す図である。
【図21】片方向印字の場合の、第4の実施形態である画像処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図22】両方向印字の場合の、サテライト・ドットが複数の画素領域にまたがって記録された状態の1例を示す図である。
【図23】両方向印字の場合の、本発明の第4の実施形態である画像処理装置のブロック図を示す図である。
【図24】両方向印字の場合の、第4の実施形態である画像処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図25】本発明の第5の実施形態である記録ヘッドよって形成されるノズル毎の被記録媒体上での主滴とサテライトの記録状態の一例を示す図である。
【図26】第5の実施形態である画像処理装置のブロック図を示す図である。
【図27】第5の実施形態である画像処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図28】片方向印字、あるいは両方向印字の往方向における被記録媒体上での主滴とサテライトの記録状態の1例を示す図である。
【図29】従来手法による被記録媒体上での主滴とサテライトの記録状態の一例を示す図である。
【図30】両方向印字における復走査による被記録媒体上での主滴とサテライトの記録状態の一例を示す図である。
【図31】Floyd&Steinbergの誤差拡散係数を示す図である。
【図32】注目横画素位置がx(1≦x≦W)のとき、Floyd&Steinberg型の係数において、量子化誤差の7/16はE(x+1)(4002)に加算されることを説明する図である。
【符号の説明】
【0144】
100 画像処理装置。
【0145】
101 画像データ入力端子。
【0146】
102 累積誤差加算部。
【0147】
103 閾値設定端子。
【0148】
104 量子化部。
【0149】
105、205 内部出力値メモリ。
【0150】
106 誤差演算部。
【0151】
107 誤差拡散部。
【0152】
108 累積誤差メモリ。
【0153】
109 ドット記録信号出力端子。
【0154】
110 プリンタ
111 記録ヘッド
112 移動装置
113 記録媒体搬送部
114 被記録媒体
118、218 出力画素分配部
215 パターン・メモリ
216 アドレス入力端子
217 走査方向判定部
2000、2300 ドット出力値メモリ。
【0155】
2600 記録ノズル特定部
2601 ノズル毎ドット出力値メモリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に具備される、インク滴を吐出することにより画像を被記録媒体に出力する記録素子の出力特性に応じて、入力画像データを補正し、補正した画像データを前記画像形成装置に供給する画像処理装置であって、
多階調の画像データを入力して、当該画像データの階調数よりも少ない階調数に変換する量子化手段と、
記録ヘッドの各ノズルからの1回に吐出される主滴とサテライトのそれぞれによる被記録媒体上への記録に基づいて予め定められた、前記主滴とサテライトに関連つけられた値を着目画素と当該着目画素の近傍で未処理の画素との出力値として出力する出力画素値分配手段と、
前記出力画素値分配手段からの制御を受けて、少なくとも前記サテライトに関連つけられた値を、あるいは当該値を既に格納されている値に対して加算した値を格納する記憶手段と、
前記出力画素値分配手段からの値及び/または前記記憶手段に格納された着目画素位置における値から導かれる値と前記量子化手段へ入力される多階調の画像データの示す値との差を着目画素の近傍の画素に拡散させ、更に着目画素分としての誤差を前記入力画像データに加算して、前記量子化手段へ入力される多階調の画像データとする誤差拡散手段と
を備え、前記量子化手段の出力を前記画像形成装置に出力することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記着目画素の位置における前記量子化手段の出力に対する前記記録素子の記録ノズルを特定する記録ノズル特定手段と、
前記記録素子の前記記録ノズル毎の前記出力特性に関連つけられた値であって、各ノズルからの1回に吐出される主滴とサテライトのそれぞれによる被記録媒体上への記録に基づいて予め定められた、前記主滴とサテライトに関連つけられた値を記憶するノズル毎ドット出力値記憶手段と、
を更に備え、
前記出力値分配手段は、前記記録ノズル特定手段からの出力に基づく、前記ノズル毎ドット出力値記憶手段からの出力値を、着目画素と当該着目画素の近傍で未処理の画素との出力値として出力することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記着目画素の位置における前記量子化手段の出力に対する前記記録素子の走査方向を判定し、出力する記録素子走査方向判定手段を更に備え、
前記出力値分配手段は、前記記録素子走査方向判定手段からの出力を受けて、前記着目画素の近傍で未処理の画素の位置として、前記着目画素を含む前記記録素子の走査方向のライン上の位置及びその他のライン上の位置のいずれか一方に決定し、決定した位置に対応する前記記憶手段の領域に対して出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記記録素子の出力特性を考慮して、前記主滴とサテライトに関連つけられた値、及び前記着目画素の近傍で未処理の画素の位置とが決定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される被記録媒体上における記録材の被覆面積であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される被記録媒体上における記録材の濃度であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される被記録媒体上における記録材の明度であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される記録材の液滴量であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
画像形成装置に具備される、インク滴を吐出することにより画像を被記録媒体に出力する記録素子の出力特性に応じて、入力画像データを補正し、補正した画像データを前記画像形成装置に供給する画像処理装置の処理方法であって、
多階調の画像データを入力して、当該画像データの階調数よりも少ない階調数に変換する量子化ステップと、
記録ヘッドの各ノズルからの1回に吐出される主滴とサテライトのそれぞれによる被記録媒体上への記録に基づいて予め定められた、前記主滴とサテライトに関連つけられた値を着目画素と当該着目画素の近傍で未処理の画素との出力値として出力する出力画素値分配ステップと、
前記出力画素値分配ステップの結果を受けて、少なくとも前記サテライトに関連つけられた値を、あるいは当該値を既に格納されている値に対して加算した値を記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記出力画素値分配ステップの結果及び/または前記記憶ステップ部の結果を受けて着目画素位置における値から導かれる値と前記量子化手段へ入力される多階調の画像データの示す値との差を着目画素の近傍の画素に拡散させ、更に着目画素分としての誤差を前記入力画像データに加算して、前記量子化手段へ入力される多階調の画像データとする誤差拡散ステップと、
前記量子化ステップにおける出力を前記画像形成装置に出力するステップと、
を備えることを特徴とする画像処理装置の処理方法。
【請求項10】
前記着目画素の位置における前記量子化手段の出力に対する前記記録素子の記録ノズルを特定する記録ノズル特定ステップを更に備え、
前記出力値分配ステップは、前記記録素子の前記記録ノズル毎の前記出力特性に関連つけられた値であって、各ノズルからの1回に吐出される主滴とサテライトのそれぞれによる被記録媒体上への記録に基づいて予め定められた、前記主滴とサテライトに関連つけられて予め記憶した値を、前記記録ノズル特定ステップからの出力に基づいて、着目画素と当該着目画素の近傍で未処理の画素との出力値として出力することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置の処理方法。
【請求項11】
前記着目画素の位置における前記量子化手段の出力に対する前記記録素子の走査方向を判定し、出力する記録素子走査方向判定ステップを更に備え、
前記出力値分配ステップは、前記記録素子走査方向判定ステップの結果を受けて、前記着目画素の近傍で未処理の画素の位置として、前記着目画素を含む前記記録素子の走査方向のライン上の位置及びその他のライン上の位置のいずれか一方に決定し、決定した位置に対応する前記記憶部の領域に対して出力することを特徴とする請求項9又は10に記載の画像処理装置の処理方法。
【請求項12】
前記記録素子の出力特性を考慮して、前記主滴とサテライトに関連つけられた値、及び前記着目画素の近傍で未処理の画素の位置が決定されていることを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の画像処理装置の処理方法。
【請求項13】
前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される被記録媒体上における記録材の被覆面積であることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の画像処理装置の処理方法。
【請求項14】
前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される被記録媒体上における記録材の濃度であることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の画像処理装置の処理方法。
【請求項15】
前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される被記録媒体上における記録材の明度であることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の画像処理装置の処理方法。
【請求項16】
前記記録素子の出力特性の1つは、前記記録素子によって形成される記録材の液滴量であることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の画像処理装置方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2006−264077(P2006−264077A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84878(P2005−84878)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】