説明

画像処理装置及びプログラム

【課題】画像形成装置の色再現特性を反映していない可能性のある色較正情報の生成を防ぐことのできる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置が出力した色票を測色して得られる測色情報を取得し、画像形成装置により色票が出力された出力時期を示す情報を用いて、色較正情報生成の可否を判定し、当該判定の結果に応じて、取得した測色情報に基づいて画像形成装置に適用する色較正情報を生成する画像処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置が画像データに基づいて紙などの媒体上に画像を形成する場合、画像形成装置は画像データの持つ画素値等に応じて、媒体上に画像を形成する際の各成分色の濃度(例えば各成分色のトナー量など)を制御することで、画像データにおいて指定されている色の画像を媒体上に形成する。しかしながら、画像形成装置の状態は一般に使用環境や経時変化等により変動するため、同じ画素値に対して実際に媒体上に形成される画像の濃度が時間とともに変化してしまう場合がある。そこで、画像形成装置に接続されたプリンタコントローラ等の画像処理装置が、色較正情報を生成し、生成した色較正情報を用いて色較正を行う技術がある(例えば特許文献1,2及び3参照)。このような技術によれば、画像処理装置は、ある時点での画像形成装置の色再現特性を反映した色較正情報を生成する。そして、画像形成の指示を受け付けた場合には、生成した色較正情報に基づいて、指示された画像の色を較正する色較正処理を行う。この較正の結果に応じて画像形成装置が形成する画像の濃度を制御することによって、画像形成装置は、指示された画像の色を再現できるようになる。
【0003】
画像処理装置は、例えば以下のような方法で色較正情報を生成する。すなわち、画像処理装置は、色較正情報の生成を実行する作業担当者の指示により、画像形成装置に所定のパッチ画像が形成された色票を出力させる。その後、作業担当者は、色票に形成されているパッチ画像の形成濃度を、測色器を用いて測定する。画像処理装置は、この測色の結果得られる測色情報に基づいて、色較正情報を生成する。
【特許文献1】特開2001‐180090号公報
【特許文献2】特開2005‐328255号公報
【特許文献3】特開2005‐339185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像処理装置が、例えばこれまでの画像形成装置の色再現特性の変動を記録しておくなどの目的で、過去に出力された色票を測定して得られた測色情報を保存している場合、作業担当者のミスによって、このような古い測色情報を用いて色較正情報を生成してしまう場合がありうる。また、画像形成装置が色票を出力してから、作業担当者がすぐにこの色票を測色して色較正情報を生成する作業を実施しなかったり、誤って古い色票を測色して色較正情報を生成してしまったりすることもありうる。このように、色較正情報を生成する際に、作業担当者のミスなどによって、直近の画像形成装置の色再現特性を反映していない可能性のある色較正情報が生成されてしまうことが起こり得る。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的の一つは、画像形成装置の色再現特性を反映していない可能性のある色較正情報の生成を防ぐことのできる画像処理装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、画像処理装置であって、画像形成装置が出力した色票を測色して得られる測色情報を取得する測色情報取得手段と、前記画像形成装置により色票が出力された出力時期を示す情報を用いて、色較正情報生成の可否を判定する判定手段と、前記判定の結果に応じて、前記取得した測色情報に基づいて前記画像形成装置に適用する色較正情報を生成する色較正情報生成手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像処理装置であって、前記判定手段は、前記画像形成装置により色票が出力された出力時期と、前記取得した測色情報が生成された生成時期と、を比較して、前記取得した測色情報に基づく色較正情報生成の可否を判定することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の画像処理装置であって、前記判定手段は、前記画像形成装置により色票が出力された出力時期からの経過時間に基づいて、色較正情報生成の可否を判定することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項記載の画像処理装置であって、前記判定手段は、前記画像形成装置により色票が出力された出力時期より後の、前記画像形成装置が実行した画像形成処理の履歴情報に基づいて、色較正情報生成の可否を判定することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項記載の画像処理装置であって、前記判定手段は、前記画像形成装置により色票が出力された出力時期より後の、前記画像形成装置に対する消耗品交換の履歴情報に基づいて、色較正情報生成の可否を判定することを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、画像処理装置であって、画像形成装置が出力した色票を測色して得られる測色情報を取得する測色情報取得手段と、前記取得した測色情報に基づいて過去に行われた色較正情報生成の履歴情報を用いて、前記取得した測色情報に基づく色較正情報生成の可否を判定する判定手段と、前記判定の結果に応じて、前記取得した測色情報に基づいて前記画像形成装置に適用する色較正情報を生成する色較正情報生成手段と、を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、画像形成装置が出力した色票を測色して得られる測色情報を取得する測色情報取得手段、前記画像形成装置により色票が出力された出力時期を示す情報を用いて、色較正情報生成の可否を判定する判定手段、及び前記判定の結果に応じて、前記取得した測色情報に基づいて前記画像形成装置に適用する色較正情報を生成する色較正情報生成手段、としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び7記載の発明によれば、色票が画像形成装置により出力された出力時期の情報を利用した判定によって、直近の画像形成装置の色再現特性を反映していない可能性のある色較正情報の生成を防ぐことができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、色票の出力時期と測色情報の生成時期との間の矛盾をチェックすることにより、望ましくない測色情報に基づいて色較正情報を生成することを防ぐことができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、色票の出力から時間が経過してしまっている場合に、色較正情報の生成を制限することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、色票の出力後の画像形成装置の利用状況に応じて、色較正情報の生成を制限することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、色票の出力後の画像形成装置に対する消耗品交換の状況に応じて、色較正情報の生成を制限することができる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、過去の色較正情報生成の履歴情報を利用した判定によって、望ましくない測色情報に基づいて色較正情報を生成することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1を含む画像形成処理システムの構成例を示す図である。画像処理装置1は、プリンタコントローラ等であって、図1に示すように、制御部11と、記憶部12と、インタフェース部13と、通信部14と、を含んで構成されている。また、インタフェース部13を介して画像形成装置2と、通信部14を介して作業担当者端末3及び利用者端末5と、それぞれ接続されている。
【0021】
制御部11は、CPU等であって、記憶部12に格納されているプログラムに従って各種の情報処理を行う。本実施の形態において、制御部11は、作業担当者端末3から送信される測色データ(測色情報)Dmに基づいて、キャリブレーションデータ(色較正情報)Dcを生成する。また、利用者端末5から画像形成装置2に対する画像形成の指示を受け付けた場合に、生成したキャリブレーションデータDcを用いて指示の対象となった画像に対する色較正処理を実行する。そして、色較正がなされた画像のデータを画像形成装置2に対して出力し、画像の形成を実行させる。本実施形態において制御部11が実行する処理の具体例については、後述する。
【0022】
記憶部12は、RAMやROM等のメモリ素子、ハードディスクなどを含んで構成され、制御部11によって実行されるプログラムや、測色データDm、キャリブレーションデータDcなどの各種の情報を記憶する。また、記憶部12は、制御部11のワークメモリとしても動作する。
【0023】
インタフェース部13は、画像形成装置2との間でデータの送受信を行う。具体的に、インタフェース部13は、制御部11からの指示に従って、画像形成装置2に形成させる対象となる画像のデータを画像形成装置2に対して出力する。
【0024】
通信部14は、例えばLANカード等のネットワークインタフェースであって、LAN等の通信手段を介して作業担当者端末3及び利用者端末5との間でデータの送受信を行う。具体的に、本実施形態において通信部14は、作業担当者端末3から送信される測色データDmを受信し、記憶部12に格納する。また、利用者端末5から送信される、画像形成装置2に対する画像形成の指示情報(プリントジョブ)を受信する。
【0025】
画像形成装置2は、例えばプリンタ等であって、画像処理装置1の制御に基づいて、紙などの媒体上に画像を形成する。ここでは一例として、画像形成装置2はシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4つの成分色のトナーを用いて画像を形成する装置であることとする。
【0026】
作業担当者端末3は、例えばパーソナルコンピュータ等であって、キャリブレーションデータ生成の作業を担当する作業担当者が使用する。また、本実施形態において、作業担当者端末3には、測色器4が接続される。測色器4は、例えば分光光度計などであって、紙などの媒体上に形成された画像の色を測定し、測定結果を作業担当者端末3に出力する。
【0027】
利用者端末5は、例えばパーソナルコンピュータ等であって、画像形成装置2を利用する利用者が使用する。利用者端末5は、利用者の操作に応じて、画像処理装置1に対して、画像形成装置2に形成させる画像データを含んだプリントジョブを送信する。なお、利用者端末5は画像処理装置1に対して複数台接続されてもよい。
【0028】
ここで、本実施形態に係る画像形成処理システムによりキャリブレーションデータDcを生成する際の作業の流れについて、説明する。
【0029】
キャリブレーションデータDcの生成を行う場合、まず作業担当者は、画像処理装置1に対して、カラーチャート(色票)の出力指示を行う。この指示に応じて、画像処理装置1は、画像形成装置2に対して、複数のパッチ画像を含んだ所定のパターン画像を形成させる形成指示を出力する。この形成指示に応じて、画像形成装置2は所定のパターン画像が形成されたカラーチャートを出力する。
【0030】
カラーチャートは、画像形成装置2によって所定のパターン画像が形成された媒体である。作業担当者は、このパターン画像に含まれる各パッチ画像の色を、測色器4を用いて測定する。このカラーチャートを測色して得られる各パッチ画像の色を示すデータは、測色データDmとして作業担当者端末3に格納される。
【0031】
その後、作業担当者端末3は、作業担当者の指示により、測色データDmを画像処理装置1に対して送信する。続いて作業担当者は、画像処理装置1に対して、キャリブレーションデータ生成の指示を行う。ここで、画像処理装置1は、過去に作業担当者端末3から送信された複数の測色データDmを記憶部12内に格納している場合がある。そこで、作業担当者は、記憶部12に記憶されている測色データDmの中から、キャリブレーションデータ生成に使用する測色データDmを指定する。以下、作業担当者によってキャリブレーションデータ生成に使用するものとして指定された測色データDmを、指定測色データDmtという。
【0032】
画像処理装置1は、指定測色データDmtに基づいて、画像形成装置2に適用するキャリブレーションデータDcを生成する。このとき、画像処理装置1は、後に詳しく説明するように、キャリブレーションデータ生成の可否を判定する判定処理を行ったうえで、この判定の結果に応じてキャリブレーションデータDcの生成を行う。
【0033】
このキャリブレーションデータDcは、指定測色データDmtに含まれる各パッチ画像について測定された色と、当該パッチ画像によって本来形成されることが想定されている色(目標色)と、の差異を吸収するように、画像形成時に画像形成装置2に対して出力する画素ごとの出力指示値を補正するためのデータである。ここで出力指示値は、画像形成装置2が画像形成時に各成分色(ここではCMYKの4色)のトナー量を決定するために用いられる値である。画像処理装置1は、利用者端末5から画像形成装置2に対する画像形成の指示を受け付けた場合、指示された画像のデータに基づいて、当該画像内に含まれる各画素の色を形成するための出力指示値を決定する。そして、決定した出力指示値を、このキャリブレーションデータDcを用いて補正し、画像形成装置2に対して出力する。画像形成装置2は、この補正された出力指示値に応じて画素ごとのトナー量を調整し、画像の形成を行う。これにより、カラーチャート出力時点から画像形成装置2の色再現特性に変化が生じていなければ、媒体上に形成される画像は、画像形成指示の対象となった画像において指定されている色を再現した画像となる。
【0034】
なお、画像形成装置2の色再現特性は、時間の経過や画像形成装置2の使用状況の変化などによって変化する。そのため、通常、定期的に、または画像形成装置2が所定量の画像形成処理を行うごとに、作業担当者は以上説明した手順によるキャリブレーションデータDcの生成を行う。キャリブレーションデータDcの生成処理が行われると、記憶部12に格納されているキャリブレーションデータDcは新たに生成されたものにより置き換えられ、それ以降画像処理装置1が利用者端末5から画像形成の指示を受け付けた場合には、新たに生成されたキャリブレーションデータDcによる色較正処理が行われる。
【0035】
次に、画像処理装置1が、画像形成装置2に画像形成処理を実行させる際に記録する履歴情報について、説明する。本実施形態において、画像処理装置1は、画像形成装置2に対して画像形成の指示を行い、画像形成装置2に画像形成処理を実行させた場合に、この画像形成処理の履歴情報を、画像形成ログLfとして記録する。画像形成ログLfは、画像形成装置2が実行する画像形成処理ごとに、当該画像形成処理の種別と、当該画像形成処理が実行された実行時期を示す情報と、を関連づける情報である。画像形成ログLfは、記憶部12に格納される。
【0036】
図2は、このような画像形成ログLfの一例を示す説明図である。図2の例においては、画像形成処理の履歴情報として、画像形成処理の識別番号(ジョブID)と、当該画像形成処理の実行日時と、当該画像形成処理の種別情報と、当該画像形成処理によって画像形成装置2が出力した媒体の枚数(出力ページ数)と、が関連づけて記録されている。なお、画像形成処理の種別情報は、当該画像形成処理が利用者端末5からの画像形成指示(プリントジョブ)に応じた処理であるか、又は前述したように作業担当者端末3からの指示に応じて実行されたカラーチャート出力の処理であるか、を示す情報である。
【0037】
次に、本実施形態において、画像処理装置1がキャリブレーションデータを生成する際に実現する機能について、説明する。画像処理装置1は、機能的に、図3に示すように、測色データ取得部21と、判定部22と、キャリブレーションデータ生成部23と、を含んで構成される。これらの機能は、制御部11が記憶部12に格納されているプログラムを実行することにより、実現できる。なお、このプログラムは、例えばCD−ROMやDVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な各種情報記憶媒体に格納されて提供されてもよいし、例えばインターネット等の通信手段を介して提供されてもよい。
【0038】
測色データ取得部21は、キャリブレーションデータ生成に使用する測色データDmを取得する。前述したように、本実施形態において、作業担当者が測色器4を用いてカラーチャートを測色することにより得られる測色データDmは、作業担当者端末3から画像処理装置1に送信され、画像処理装置1の記憶部12に格納される。測色データ取得部21は、この記憶部12に格納されている1又は複数の測色データDmのうち、キャリブレーションデータ生成の際に作業担当者が指定した指定測色データDmtを、キャリブレーションデータ生成に使用する測色データDmとして取得する。
【0039】
判定部22は、作業担当者からキャリブレーションデータ生成の指示を受け付けた場合に、キャリブレーションデータ生成の可否を判定する。具体的に、例えば判定部22は、カラーチャートが画像形成装置2により出力された出力時期を示す情報(以下、出力時期情報という)を用いて、キャリブレーションデータ生成の可否を判定する。前述したように、画像処理装置1は、作業担当者の指示に応じて画像形成装置2にカラーチャートを出力させた場合に、当該カラーチャート出力処理の履歴を画像形成ログLfとして記録している。判定部22は、この記憶部12に格納された画像形成ログLfを読み出すことによって、出力時期情報を取得する。
【0040】
なお、通常は、画像形成装置2は過去に複数回カラーチャートの出力を行っており、これに応じて、画像形成ログLfには、この複数回のそれぞれについての出力時期情報が含まれている。この場合、判定部22は、最も新しい出力時期を示す出力時期情報を取得する。具体例として、図2の画像形成ログLfの例においては、ジョブID「1005」により識別される画像形成処理が、最も新しいカラーチャート出力処理であり、その出力時期は2007/2/3の15:00となる。判定部22は、この取得した出力時期情報を用いて、キャリブレーションデータ生成の可否を判定する。なお、判定部22が出力時期情報を用いてキャリブレーション生成の可否を判定する方法の具体例については、後述する。
【0041】
また、判定部22は、後述するキャリブレーションデータ生成部23がキャリブレーションデータDcを生成した際に記録するキャリブレーションデータ生成処理の履歴情報を用いて、測色データ取得部21が取得した指定測色データDmtに基づくキャリブレーションデータ生成の可否を判定してもよい。この場合の判定方法の具体例についても、後述する。
【0042】
キャリブレーションデータ生成部23は、判定部22による判定の結果に応じて、画像形成装置2に適用するキャリブレーションデータDcを、測色データ取得部21が取得した指定測色データDmtに基づいて生成する。具体的に、キャリブレーションデータ生成部23は、判定部22がキャリブレーションデータ生成を行うと判定した場合に、指定測色データDmtに基づいてキャリブレーションデータDcを生成する。このキャリブレーションデータ生成処理は、公知の方法によって実現できる。一方で、判定部22がキャリブレーションデータDcの生成を行わないと判定した場合、キャリブレーションデータ生成部23はキャリブレーションデータDcの生成を行わずに、処理を終了する。
【0043】
また、本実施形態において、キャリブレーションデータ生成部23は、キャリブレーションデータDcを生成した場合に、このキャリブレーションデータ生成処理の履歴情報を、キャリブレーションデータ生成ログLcとして記録する。キャリブレーションデータ生成ログLcは、キャリブレーションデータ生成部23が実行するキャリブレーションデータ生成処理ごとに、キャリブレーションデータ生成処理が行われた時期を示す情報と、キャリブレーションデータ生成に用いられた測色データDmを特定する情報と、を関連づける情報である。このキャリブレーションデータ生成ログLcは、記憶部12に格納され、後に新たなキャリブレーションデータ生成の指示が作業担当者によりなされた際の、判定部22による判定処理に用いられる。
【0044】
図4は、キャリブレーションデータ生成ログLcの一例を示す説明図である。図4の例においては、キャリブレーションデータ生成処理の履歴情報として、キャリブレーションデータ生成日時と、生成されたキャリブレーションデータDcを特定する情報(キャリブレーションデータDcの名称)と、キャリブレーションデータ生成に使用された測色データDmのファイル名と、使用された測色データDmの生成日時と、が関連づけて記録されている。
【0045】
次に、判定部22がキャリブレーションデータ生成の可否を判定する判定方法の具体例について、説明する。
【0046】
まず判定方法の第1の例として、カラーチャートの出力時期情報と、指定測色データDmtが生成された生成時期を示す情報と、を用いる例について説明する。この第1の例では、判定部22は、出力時期情報により示されるカラーチャートの出力時期と、指定測色データDmtが生成された生成時期と、を比較して、キャリブレーションデータ生成の可否を判定する。具体的に、判定部22は、例えばファイルシステムによって記録されている、指定測色データDmtのデータファイルの作成日時又は更新日時を参照することにより、指定測色データDmtが生成された生成時期を示す情報を取得する。あるいは、作業担当者端末3が指定測色データDmtを生成する際に、生成時期を示す情報を指定測色データDmtのデータファイル内に記録している場合、判定部22は、このデータファイル内に記録された情報を参照して、指定測色データDmtの生成時期を示す情報を取得してもよい。
【0047】
測色データDmは、画像形成装置2が出力したカラーチャートを測色することによって生成される。従って、指定測色データDmtの生成時期が直近のカラーチャートの出力時期よりも以前であれば、指定測色データDmtは最新のカラーチャートを測色して得られたものではないことになり、作業担当者が誤って画像処理装置1に記憶された複数の測色データDmのうち、古い測色データDmを指定してしまったなどの可能性が考えられる。そこで、判定部22は、指定測色データDmtの生成時期がカラーチャートの出力時期よりも後の場合、指定測色データDmtに基づくキャリブレーションデータ生成を行うと判定し、指定測色データDmtの生成時期がカラーチャートの出力時期よりも以前の場合には、指定測色データDmtに基づくキャリブレーションデータ生成を行わないと判定する。
【0048】
次に、判定方法の第2の例として、カラーチャートの出力時期からの経過時間に基づいて、キャリブレーションデータ生成の可否を判定する例について、説明する。この第2の例では、判定部22は、出力時期情報により示されるカラーチャートが出力された時期から判定を行う時点までの経過時間が、所定の時間(例えば2日)以下であるか否かに応じて、キャリブレーションデータ生成の可否を判定する。すなわち、カラーチャートの出力時期から判定を行う時点までの経過時間が所定時間を超えている場合には、キャリブレーションデータDcの生成を行わないと判定する。これにより、カラーチャートが最後に出力されてから所定時間を超える時間が経過してしまっている場合には、キャリブレーションデータDcの生成が制限されることとなる。
【0049】
次に、判定方法の第3の例として、カラーチャートの出力時期情報と、画像形成装置2が実行した画像形成処理の履歴情報と、を用いた判定の例について、説明する。この第3の例では、判定部22は、記憶部12に記憶されている画像形成ログLfを参照して、出力時期情報により示されるカラーチャートの出力時期より後の、画像形成装置2が実行した画像形成処理の履歴情報を取得する。例えば図2の画像形成ログLfの例においては、ジョブID「1005」により識別される画像形成処理が、直近のカラーチャート出力処理であり、ジョブID「1006」により識別される画像形成処理が、カラーチャートの出力時期より後に画像形成装置2が実行した画像形成処理である。判定部22は、この取得した履歴情報に基づいて、キャリブレーションデータ生成の可否を判定する。
【0050】
具体例として、判定部22は、カラーチャートの出力時期より後に実行された画像形成処理の量が所定量を超える場合に、キャリブレーションデータ生成を行わないと判定する。例えば判定部22は、カラーチャートの出力時期より後の画像形成処理の実行回数が所定回数を超える場合に、キャリブレーションデータ生成を行わないと判定してもよい。あるいは、カラーチャートの出力時期より後の画像形成処理によって画像が形成された媒体のページ数が所定枚数(例えば100枚)を超える場合に、キャリブレーションデータ生成を行わないと判定してもよい。これにより、カラーチャート出力以降に画像形成装置2が所定量以上使用され、画像形成装置2の色再現特性に変化が生じている可能性が高いと推定される場合に、キャリブレーションデータDcの生成が制限される。
【0051】
次に、判定方法の第4の例として、カラーチャートの出力時期情報と、画像形成装置2に対する消耗品交換の履歴情報と、を用いた判定の例について、説明する。この第4の例においては、画像処理装置1は、画像形成装置2に対して行われた消耗品交換の履歴を示す履歴情報(消耗品交換ログLe)を取得する。消耗品交換ログLeは、例えば消耗品の交換を行った作業者が画像処理装置1に対して入力した情報に基づいて、画像処理装置1に記録されてもよい。また、画像形成装置2が備えるセンサ等によって、消耗品の交換が行われたと判定される場合に、当該判定の結果が消耗品交換ログLeとして画像形成装置2に記録されてもよい。例えば、画像形成装置2がトナー残量を検知する検知手段を備えており、当該検知手段によりトナー残量が増えたことが検知された場合に、画像形成装置2は、トナーが交換されたと判定し、トナー交換が行われたことを示す情報を消耗品交換ログLeとして記録してもよい。図5は、このような消耗品交換ログLeの一例を示す図である。図5の例においては、消耗品交換の履歴情報として、交換された消耗品の名称と、交換が行われた時期を示す情報と、が関連づけて記録されている。消耗品ログLeが画像形成装置2に記録される場合、画像処理装置1は、この消耗品交換ログLeを、インタフェース部13を介して画像形成装置2から受信する。
【0052】
そして、判定部22は、この消耗品交換ログLeを参照して、出力時期情報により示されるカラーチャートの出力時期より後に、画像形成装置2に対する消耗品交換が行われたか否かを判定する。そして、この消耗品交換の有無に応じて、キャリブレーションデータ生成の可否を判定する。例えば判定部22は、カラーチャートの出力時期より後に、例えばドラムなどの所定の消耗品が交換されている場合に、キャリブレーションデータDcの生成を行わないと判定する。これにより、カラーチャート出力以降に所定の消耗品の交換が行われた結果、画像形成装置2の色再現特性に変化が生じている可能性が高いと推定される場合に、キャリブレーションデータDcの生成が制限される。
【0053】
次に、判定方法の第5の例として、キャリブレーションデータ生成部23により記録されるキャリブレーションデータ生成処理の履歴情報を用いた判定の例について、説明する。この第5の例では、判定部22は、記憶部12に記憶されているキャリブレーションデータ生成ログLcを参照して、キャリブレーションデータ生成に使用する測色データDmとして作業担当者に指定された指定測色データDmtに基づいて、過去にキャリブレーションデータ生成が行われた履歴が存在するかを確認する。そして、過去に指定測色データDmtに基づくキャリブレーションデータ生成処理が行われた履歴がキャリブレーションデータ生成ログLcに含まれている場合には、キャリブレーションデータDcの生成を行わないと判定する。これにより、既に過去にキャリブレーションデータ生成に使用された測色データDmを、作業担当者が誤って指定測色データDmtとして指定してしまった場合、指定測色データDmtに基づくキャリブレーションデータDcの生成が制限される。
【0054】
なお、以上説明した複数の判定方法の例は、組み合わせて用いられることとしてもよい。例えば判定部22は、これら複数の判定方法のうち、予め定められた1又は複数の判定方法による判定を行い、いずれの判定方法においてもキャリブレーションデータDcの生成を行うための条件を満たす場合に、キャリブレーションデータDcの生成を行うと判定する。
【0055】
また、以上説明した判定方法の例において、キャリブレーションデータDcの生成を行うための条件を満たさないという判定がなされる場合であっても、判定部22は、作業担当者の指示に応じて、キャリブレーションデータDcの生成を行うと判定してもよい。具体的に、例えば判定部22は、以上説明した判定方法の例による判定の結果、キャリブレーションデータDcの生成を行うための条件を満たさないと判定した場合、当該判定結果に応じて、所定の警告情報を出力し、作業担当者に提示する。この警告情報は、例えば前述した判定方法の第1の例の場合、「指定された測色データファイルは作成日時が古いため、最新でない可能性があります。処理を続行しますか?」などのメッセージ情報である。この警告情報に対して、作業担当者が処理の続行を指示した場合には、判定部22は、キャリブレーションデータDcの生成を行うと判定することとしてもよい。
【0056】
ここで、キャリブレーションデータ生成時に画像処理装置1が実行する処理の流れの一例について、図6及び図7のフロー図に基づいて説明する。
【0057】
まず、画像処理装置1は、作業担当者から、キャリブレーションデータ生成の指示を受け付ける(S1)。指示を受け付けると、画像処理装置1の判定部22は、出力時期情報と、消耗品交換ログLeと、を用いて、最後のカラーチャート出力時期より後に所定の消耗品の交換がなされているかを判定する(S2)。カラーチャート出力以降に消耗品交換がなされていると判定される場合には、作業担当者に対して所定の警告情報を出力し(S3)、当該警告情報に対する作業担当者の応答を受け付ける(S4)。作業担当者が処理の続行を指示した場合には、S5に進んで処理を続行する。一方、作業担当者が処理の中止を指示した場合には、処理を終了する。
【0058】
S2で消耗品交換がなされていないと判定された場合、又はS4で作業担当者が処理の続行を指示した場合、続いて判定部22は、出力時期情報と、画像形成ログLfと、を用いて、最後のカラーチャート出力時期以降の経過時間及び最後のカラーチャート出力時期以降の出力ページ数が、所定の値以下であるかを判定する(S5)。カラーチャートの出力以降、所定時間以上の時間が経過しているか、又は所定枚数以上の画像形成処理を画像形成装置2が実行している場合、判定部22は作業担当者に対して所定の警告情報を出力し(S6)、S4の場合と同様に、当該警告情報に対する作業担当者の応答を受け付ける(S7)。そして、当該応答に応じて、処理を続行するか中止するかを決定する。
【0059】
S5の条件を満たしている場合、又はS7で作業担当者が処理の続行を指示した場合、続いて、測色データ取得部21が、作業担当者からキャリブレーションデータ生成に使用する測色データDmの指定を受け付ける(S8)。S8で指定された測色データDmが、指定測色データDmtとなる。
【0060】
次に、判定部22は、キャリブレーションデータ生成ログLcを用いて、S8で指定された指定測色データDmtに基づくキャリブレーションデータ生成の履歴があるかを判定する(S9)。過去に指定測色データDmtに基づくキャリブレーションデータ生成処理が実行されている場合、判定部22は、所定の警告情報を出力し(S10)、S4の場合と同様に、当該警告情報に対する作業担当者の応答を受け付ける(S11)。S11において、指定測色データDmtに基づくキャリブレーションデータ生成を行わないという指示を作業担当者から受け付けた場合、画像処理装置1は、S8に戻って、別の測色データDmに対する指定を作業担当者から受け付ける。
【0061】
S9で指定測色データDmtに基づくキャリブレーションデータ生成の履歴がないと判定した場合、又はS11で作業担当者が処理の続行を指示した場合、判定部22は、指定測色データDmtの生成時期と、カラーチャートの出力時期と、を比較し、指定測色データDmtが最後のカラーチャート出力以降に生成されたかを判定する(S12)。判定の結果、指定測色データDmtの生成時期が最後のカラーチャート出力時期以前の場合、判定部22は、所定の警告情報を出力する(S13)。そして、S11の場合と同様に、当該警告情報に対する作業担当者の応答を受け付けて(S14)、S8に戻って別の測色データDmに対する指定を受け付けるか否かを判定する。
【0062】
S12で指定測色データDmtの生成時期が最後のカラーチャート出力時期より後であると判定された場合、又はS14で作業担当者が処理の続行を指示した場合、キャリブレーションデータ生成部23は、指定測色データDmtに基づいてキャリブレーションデータDcを生成する(S15)。そして、キャリブレーションデータ生成処理の履歴をキャリブレーションデータ生成ログLcとして記録し(S16)、処理を終了する。
【0063】
以上説明した本実施の形態によれば、画像処理装置1は、画像形成装置2がカラーチャートを出力した出力時期を示す情報や、指定測色データDmtに基づいて過去に行われたキャリブレーションデータ生成の履歴情報を用いた判定を行い、当該判定結果に応じてキャリブレーションデータDcの生成を行う。これにより、画像形成装置2の色再現特性を反映していない可能性のあるキャリブレーションデータDcの生成が制限される。
【0064】
なお、本発明の実施の形態は、以上説明したものに限られない。例えば、画像処理装置1は、複数の画像形成装置2と接続され、これら複数の画像形成装置2のそれぞれに適用する複数のキャリブレーションデータDcを生成してもよい。この場合、画像処理装置1は、作業担当者からキャリブレーションデータ生成の指示を受け付ける際に、併せてキャリブレーションデータDcを生成する対象となる画像形成装置2の指定を受け付ける。そして、指定された画像形成装置2がカラーチャートを出力した時期や、指定された画像形成装置2が過去に実行した画像形成処理の履歴、指定された画像形成装置2に対する消耗品交換の履歴などに基づいて、キャリブレーションデータ生成の可否を判定し、当該判定の結果に応じて、指定された画像形成装置2に適用するキャリブレーションデータDcを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理装置を含んだ画像形成処理システムの概略の構成例を表す概要図である。
【図2】画像形成装置が実行する画像形成処理の履歴情報の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の機能例を表す機能ブロック図である。
【図4】キャリブレーションデータ生成処理の履歴情報の一例を示す説明図である。
【図5】画像形成装置に対する消耗品交換の履歴情報の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る画像処理装置が実行する処理の一例を示すフロー図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る画像処理装置が実行する処理の一例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0066】
1 画像処理装置、2 画像形成装置、3 作業担当者端末、4 測色器、5 利用者端末、11 制御部、12 記憶部、13 インタフェース部、14 通信部、21 測色データ取得部、22 判定部、23 キャリブレーションデータ生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置が出力した色票を測色して得られる測色情報を取得する測色情報取得手段と、
前記画像形成装置により色票が出力された出力時期を示す情報を用いて、色較正情報生成の可否を判定する判定手段と、
前記判定の結果に応じて、前記取得した測色情報に基づいて前記画像形成装置に適用する色較正情報を生成する色較正情報生成手段と、
を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記画像形成装置により色票が出力された出力時期と、前記取得した測色情報が生成された生成時期と、を比較して、前記取得した測色情報に基づく色較正情報生成の可否を判定する
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記画像形成装置により色票が出力された出力時期からの経過時間に基づいて、色較正情報生成の可否を判定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記画像形成装置により色票が出力された出力時期より後の、前記画像形成装置が実行した画像形成処理の履歴情報に基づいて、色較正情報生成の可否を判定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記画像形成装置により色票が出力された出力時期より後の、前記画像形成装置に対する消耗品交換の履歴情報に基づいて、色較正情報生成の可否を判定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項6】
画像形成装置が出力した色票を測色して得られる測色情報を取得する測色情報取得手段と、
前記取得した測色情報に基づいて過去に行われた色較正情報生成の履歴情報を用いて、前記取得した測色情報に基づく色較正情報生成の可否を判定する判定手段と、
前記判定の結果に応じて、前記取得した測色情報に基づいて前記画像形成装置に適用する色較正情報を生成する色較正情報生成手段と、
を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
画像形成装置が出力した色票を測色して得られる測色情報を取得する測色情報取得手段、
前記画像形成装置により色票が出力された出力時期を示す情報を用いて、色較正情報生成の可否を判定する判定手段、及び
前記判定の結果に応じて、前記取得した測色情報に基づいて前記画像形成装置に適用する色較正情報を生成する色較正情報生成手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−75674(P2009−75674A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241567(P2007−241567)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】