説明

画像処理装置及び方法、並びにプログラム

【課題】 DPマッチングでの対応付けが困難な場合であっても、左右の画像から高品質の仮想視点画像を作成する。
【解決手段】 指定通過点探索部20は、DPマッチングでの対応付けが困難な特徴点、例えば眼鏡フレームの両端部分を検出し、その座標を指定通過点とする。DPマッチング部21のうち、コスト計算部22は、左画像のスキャンライン上の画素を縦軸、右画像のスキャンライン上の画素を横軸として、各対応点についてマッチングコストを計算する。パス探索部23は、右上の対応点からパス探索を始め、隣接する対応点のうち原則としてマッチングコストが最小の対応点を辿り、且つ、指定通過点を通過させながら、左下の対応点へと至るパスを探索する。仮想視点画像作成部104は、DPマッチング部21から供給された対応点情報に基づいて、左右の画像から仮想視点画像を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばステレオカメラシステムによって得られた左右の画像の対応付けを行い、あたかも左右のカメラ間の仮想カメラによって撮像したかのような仮想視点画像を作成する際に用いて好適な画像処理装置及びその方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ会議システム等に代表されるように、複数のユーザが互いに離れた場所で相手の表示像を視認しながら遠隔対話するシステムが提案されている。このようなシステムでは、相手の表示像をディスプレイ上に表示すると共に、当該ディスプレイを視認するユーザを被写体として撮像し、得られた画像信号を公衆回線、専用回線等のネットワークを介して相手側の画像処理装置に送信することにより、双方のユーザに対して臨場感を持たせることが可能となる。
【0003】
従来におけるテレビ会議システムでは、ディスプレイの中心付近に映し出される相手の表示像を視認するユーザを、ディスプレイ上部にあるカメラにより撮像していたため、ユーザが下を向いた状態の画像がディスプレイ上に表示されることになっていた。このため、実際にディスプレイを視認するユーザ間において視線が不一致の状態で対話がなされることになり、互いに違和感を与えてしまうという問題があった。
【0004】
理想的には、相手の表示像が映し出されるディスプレイの中心付近にカメラを設置すれば、双方のユーザの視線を一致させた状態で対話を実現することができる。しかしながら、このようにディスプレイの中心付近にカメラを設置することは物理的に困難である。
【0005】
そこで、このような視線不一致に関する問題を解決するために、ディスプレイの左右に設置された2台のカメラで撮影した左右の画像の対応付けを行うことにより、あたかも左右のカメラ間の仮想カメラによって撮像したかのような仮想視点画像を作成し、これを相手側のディスプレイに表示させる画像処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような画像処理装置では、あたかもディスプレイ中心付近の仮想カメラによって撮像したかのような仮想視点画像を作成して相手側のディスプレイに表示させることにより、ユーザの視線を一致させて臨場感の高いコミュニケーションを実現することができる。
【0006】
このように左右の画像の対応付けを行うことにより仮想視点画像を作成する画像処理装置では、左右の画像の対応付けを如何に正確に行うかが言うまでもなく重要である。左右の画像の対応付けには様々な手法があるが、その中でも、全体の最適化を図るDP(Dynamic Programming)マッチング(動的計画法)が、比較的良好な品質の仮想視点画像を作成するための対応付け手法として知られている。
【0007】
DPマッチングを利用して仮想視点画像を作成する従来の画像処理装置の概略構成を図11に示す。図11に示すように、画像処理装置100は、DPマッチング部101と、仮想視点画像作成部104とから構成されており、DPマッチング部101は、コスト計算部102とパス探索部103とから構成されている。
【0008】
この画像処理装置100において、DPマッチング部101は、例えば図12に示すような左右の画像が供給されると、スキャンライン(水平ライン)毎に画素同士の対応付けを行い、対応点情報を仮想視点画像作成部104に供給する。より詳細に説明すると、コスト計算部102は、図13に示すように、左画像のスキャンラインL1上の画素を縦軸(y軸)、右画像のスキャンラインL2上の画素を横軸(x軸)として、各対応点について左下の対応点から右上の対応点への順にマッチングコストを計算する。そして、パス探索部103は、右上の対応点からパス探索を始め、隣接する対応点のうちマッチングコストが最小の対応点を辿りながら、左下の対応点へと至るパス(経路)を探索する。このパス上の対応点がスキャンラインL1,L2上の画素同士の対応関係を表しているため、パス探索部103は、この対応点情報を仮想視点画像作成部104に供給する。仮想視点画像作成部104は、この対応点情報に基づいて仮想視点画像を作成する。
【0009】
【特許文献1】特開平2−53187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述したDPマッチングを利用すれば、左右の画像の対応付けを行うことにより比較的高品質の仮想視点画像を作成することができるが、本来ならば対応すべき左右の画像の特徴点が小さい場合やその画素付近における左右の画像の視差が急激に変化する場合には、必ずしも左右の画素が対応する保証はなく、対応付けの精度が周囲の画素との関係に大きく影響されるという問題がある。
【0011】
例えば、被写体であるユーザが眼鏡をかけていない場合、顔表面の左右視差の変化が比較的連続的であるため、作成される仮想視点画像について視覚的に大きな問題は生じないが、被写体であるユーザが眼鏡をかけている場合、眼鏡フレームは周囲の肌領域に対して十分細く、且つ顔表面から離れているため、左右の視差が顔表面から急激に変わったり視差の逆転が起こったりし、左右の画像の眼鏡フレーム同士が対応しないことが多い。具体的に、図12のスキャンラインL1,L2上の画素同士を対応付けた場合、理想的には図14(A)のような対応関係になるところが、図14(B)のように左右の眼鏡フレーム位置でミスマッチを起こしてしまう。このように眼鏡フレーム同士が対応していない状況で仮想視点画像を作成すると、理想的には図15(A)のような仮想視点画像が得られるところが、図15(B)のように眼鏡フレームが2重に大きく離れた仮想視点画像が得られてしまい、仮想視点映像の品質が大きく損なわれるという問題が生じる。
【0012】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、DPマッチングを利用して左右の画像の対応付けを行い、仮想視点画像を作成する際に、左右の画像の対応付けが困難な場合であっても高品質の仮想視点画像を作成することが可能な画像処理装置及びその方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は、2台のカメラにより互いに異なる視点から被写体を撮像して得られた第1の画像及び第2の画像に基づいて、動的計画法を利用して仮想視点画像を作成する画像処理装置であって、上記第1の画像中の特徴点と、当該特徴点に対応する上記第2の画像中の特徴点とを検出する特徴点検出手段と、上記第1の画像の任意の水平ラインを第1の軸、当該水平ラインに対応する上記第2の画像の水平ラインを上記第1の軸と垂直な第2の軸として、対応する画素を表す対応点を辿りながら、当該水平ライン上の画素同士の対応関係を表す経路を探索する経路探索手段と、水平ライン毎に求められた対応関係に基づいて上記仮想視点画像を作成する仮想視点画像作成手段とを備え、上記経路探索手段は、上記特徴点検出手段によって特徴点が検出された水平ライン上の画素同士の対応関係を求める場合、検出された上記第1の画像中の特徴点と上記第2の画像中の特徴点とを予め対応付けた指定通過点を通過するように、上記経路を作成することを特徴とする。
【0014】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る画像処理方法は、2台のカメラにより互いに異なる視点から被写体を撮像して得られた第1の画像及び第2の画像に基づいて、動的計画法を利用して仮想視点画像を作成する画像処理方法であって、上記第1の画像中の特徴点と、当該特徴点に対応する上記第2の画像中の特徴点とを検出する特徴点検出工程と、上記第1の画像の任意の水平ラインを第1の軸、当該水平ラインに対応する上記第2の画像の水平ラインを上記第1の軸と垂直な第2の軸として、対応する画素を表す対応点を辿りながら、当該水平ライン上の画素同士の対応関係を表す経路を探索する経路探索工程と、水平ライン毎に求められた対応関係に基づいて上記仮想視点画像を作成する仮想視点画像作成工程とを有し、上記経路探索工程では、上記特徴点検出工程にて特徴点が検出された水平ライン上の画素同士の対応関係を求める場合、検出された上記第1の画像中の特徴点と上記第2の画像中の特徴点とを予め対応付けた指定通過点を通過するように、上記経路を作成することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るプログラムは、上述した画像処理をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像処理装置及びその方法、並びにプログラムによれば、動的計画法を利用して第1の画像及び第2の画像の対応付けを行い、仮想視点画像を作成する際に、画像同士の対応付けが困難な場合であっても、指定通過点を設定しておくことで、高品質の仮想視点画像を作成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
先ず、本発明が適用された通信システムの概略構成を図1に示す。図1に示すように、本実施の形態における通信システム1は、A地点のユーザaとB地点のユーザbとが、互いに離れた場所で相手の表示像を視認しながら遠隔対話するものである。
【0019】
A地点には、被写体としてのユーザaを互いに異なる視点から撮像するカメラ11a,12aと、B地点側で撮像されたユーザbの画像をユーザaに対して表示するためのディスプレイ13aと、カメラ11a,12aによって撮像された各画像Pa1,Pa2に基づいて仮想視点画像Imaを作成する画像処理装置14aと、ネットワーク2を介して、作成された仮想視点画像ImaをB地点側に伝送する画像伝送装置15aとが配設されている。
【0020】
B地点には、被写体としてのユーザbを互いに異なる視点から撮像するカメラ11b,12bと、A地点側で撮像されたユーザaの画像をユーザbに対して表示するためのディスプレイ13bと、カメラ11b,12bによって撮像された各画像Pb1,Pb2に基づいて仮想視点画像Imbを作成する画像処理装置14bと、ネットワーク2を介して、作成された仮想視点画像ImbをA地点側に伝送する画像伝送装置15bとが配設されている。
【0021】
なお、この画像処理装置14a,14bによって作成される仮想視点画像Ima,Imbは、相手の表示像が映しだされるディスプレイ13a,13bの中心付近に仮想的に設置される仮想カメラによって撮像される画像に相当する。
【0022】
カメラ11a,11bは、それぞれユーザa,b側から見てディスプレイ13a,13bの左側面に設置されてなり、カメラ12a,12bは、それぞれユーザa,b側から見てディスプレイ13a,13bの右側面に設置されてなる。このカメラ11a,11b,12a,12bは、撮影方向、撮影画角が固定された状態で設置されるが、ユーザa,bから入力される情報に基づき、これらを自在に変更するようにしてもよい。
【0023】
ディスプレイ13a,13bは、それぞれネットワーク2を介して相手側地点から伝送される仮想視点画像Imb,Imaに基づく画像を、例えば液晶表示面を介して表示する。このディスプレイ13a,13bにおける液晶表示面は、多数の液晶表示素子等からなり、各仮想視点画像Imb,Imaに基づく出力信号に応じて液晶表示素子を光変調させてユーザに表示する画像を作り出す。
【0024】
画像処理装置14a,14bは、通常、パーソナルコンピュータ(PC)等の電子機器で構成される。画像処理装置14aは、DPマッチングを利用して画像Pa1,Pa2の対応付けを行い、仮想視点画像Imaを作成する。同様に、画像処理装置14bは、DPマッチングを利用して画像Pb1,Pb2の対応付けを行い、仮想視点画像Imbを作成する。なお、画像処理装置14a,14bについての詳細は後述する。画像伝送装置15a,15bは、ネットワーク2を介して互いに通信するための機能を備え、相手側からの要求に応じて仮想視点画像Ima,Imbや音声を送信する。
【0025】
ネットワーク2は、例えば画像伝送装置15a,15bと電話回線を介して接続されるインターネット網を始め、TA(Terminal Adapter)/モデムと接続されるISDN(Integrated Services Digital Network)/B(broadband)−ISDN等のように、情報の双方向送受信を可能とした公衆通信網である。なお、通信システム1を一定の狭いエリア内で運用する場合には、このネットワーク2をLAN(Local Area Network)で構成してもよい。ネットワーク2においては、動画像が伝送される場合には、インターネットプロトコル(IP)に基づき、例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)データを始めとする動画像がある1つのチャネルから継続的に伝送される。また、静止画像が伝送される場合には、例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)データを始めとする静止画像が動画像とは別のチャネルから一定時間毎に伝送される。なお、このネットワーク2には、さらに図示しないネットワークサーバを接続してもよい。この図示しないネットワークサーバは、例えばインターネット情報を管理し、画像伝送装置15a,15bによる要求を受けて、自身に格納してある所定の情報を送信する。
【0026】
次に、DPマッチングを利用して仮想視点画像Ima,Imbを作成する画像処理装置14a,14bについて詳細に説明する。
【0027】
前述したように、DPマッチングでは、対応すべき左右の画像の特徴点が小さい場合やその画素付近における左右の画像の視差が急激に変化する場合には、必ずしも左右の画素が対応する保証はない。例えば、被写体であるユーザが眼鏡をかけている場合、眼鏡フレームは周囲の肌領域に対して十分細く、且つ顔表面から離れているため、左右の視差が顔表面から急激に変わったり視差の逆転が起こったりし、左右の画像の眼鏡フレーム同士が対応しないことが多い。この結果、眼鏡フレームを通るスキャンラインについてパス探索を行った場合、図2に示すように、理想的には図中太実線で示すパスとなるところが、図中太波線で示すようなパスとなってしまう。
【0028】
そこで、本実施の形態における画像処理装置14a,14bは、このようにDPマッチングでの対応付けが困難な特徴点を予め検出し、その対応点を図3に示すように指定通過点として設定する。そして、画像処理装置14a,14bは、この指定通過点を強制的に通過するようにパス探索を行う。なお、図3における指定通過点T1,T2は、眼鏡フレームの両端を指定したものである。これは、眼鏡フレームは細く、且つその両端は顔表面から最も離れているため、図2に示したように理想的なパスを通らないことが多いからである。
【0029】
以下、画像処理装置14a,14bの構成について、画像処理装置14bを例にとり説明する。画像処理装置14bは、図4に示すように、指定通過点探索部20と、DPマッチング部21と、仮想視点画像作成部24とから構成されており、DPマッチング部21は、コスト計算部22とパス探索部23とから構成されている。
【0030】
この画像処理装置14bにおいて、指定通過点探索部20は、ユーザbを撮像した画像Pb1,Pb2が供給されると、DPマッチングでの対応付けが困難な特徴点、例えば眼鏡フレームの両端部分を検出し、その座標を指定通過点情報としてDPマッチング部21に供給する。なお、この指定通過点探索部20において眼鏡フレームの両端部分を検出する処理についての詳細は後述する。
【0031】
DPマッチング部21は、画像Pb1,Pb2が供給されるとスキャンライン毎に画素同士の対応付けを行い、対応点情報を仮想視点画像作成部24に供給する。以下、詳細に説明する。
【0032】
コスト計算部22は、左画像のスキャンライン上の画素を縦軸(y軸)、右画像のスキャンライン上の画素を横軸(x軸)として、各対応点について左下の対応点から右上の対応点への順にマッチングコストを計算する。
【0033】
パス探索部23は、右上の対応点からパス探索を始め、隣接する対応点のうち原則としてマッチングコストが最小の対応点を辿り、且つ、指定通過点を通過させながら、左下の対応点へと至るパスを探索する。一例として、指定通過点の座標を(p,q)とし、現在の対応点の座標を(x,y)とした場合について説明する。パス探索部23は、x>p、且つy>qである場合には、図5に示すように、左、左下、下に向かう3通りのパスのうち、マッチングコストが最小の対応点を辿るパスを選択する。この図5では、対応点上の丸の大小でマッチングコストの大小を概念的に表している。一方、現在の対応点のx座標、y座標の何れか一方でも指定通過点のx座標、y座標と一致した場合には、パス探索部23は、マッチングコストを考慮せず、一致していない方の座標を座標が(p,q)となるまで直線的にシフトさせる。図6は、x座標が先に指定通過点のx座標と一致した場合(x=p)のパスを示したものである。パス探索部23は、このようにして右上の対応点から左下の対応点へと至るパスを探索する。このパス上の対応点がスキャンライン上の画素同士の対応関係を表しているため、パス探索部23は、この対応点情報を仮想視点画像作成部24に供給する。
【0034】
なお、現在の対応点のx座標、y座標の何れか一方でも指定通過点のx座標、y座標と一致するまでは従来通りのパス探索を行い、何れか一方でも指定通過点のx座標、y座標と一致すると、一致していない方の座標を座標が(p,q)となるまで直線的にシフトさせるようにしているのは、指定通過点付近ではオクルージョンが生じることが多いためである。因みに、水平方向にシフトする場合には、視差が生じた結果、画像Pb1において示されている画素が画像Pb2において隠れてしまったことを示唆しており、垂直方向にシフトする場合には、視差が生じた結果、画像Pb2において示されている画素が画像Pb1において隠れてしまったことを示唆している。
【0035】
図4に戻って、仮想視点画像作成部104は、DPマッチング部21から供給された対応点情報に基づいて、画像Pb1,Pb2から仮想視点画像Imbを作成する。
【0036】
ここで、上述した指定通過点探索部20において眼鏡フレームの両端部分を検出する処理について具体的に説明する。眼鏡フレームの両端部分の座標は、画像Pb1,Pb2のそれぞれについて独立に、図7のフローチャートに示すような手順で行われる。
【0037】
先ずステップS1において、左右の画像から顔領域を大まかに抽出する。具体的には、各画像から肌色付近のHue値(色相値)の最大値から前後10°程度の範囲を抽出し、2値化画像を作成する。そして、この2値化画像をラベリングし、最大面積ラベルを顔の肌領域と推定する。さらに、最大面積ラベルのみを抽出し、ラベリング情報に基づいてラベル内の穴埋めを行う。その後、この最大面積ラベルに拡大フィルタをかけ、顔領域が十分含まれる単一領域を顔領域として抽出する。
【0038】
次にステップS2において、抽出された顔領域の2値化画像に対して図8に示すような積分値フィルタをかける。積分値フィルタとは、ある(x,y)と(x+a,y+b)とで指定される面積a×bの領域内の画素の平均値の組み合わせの大小関係を規定したものである。例えば、320×240の画像に十分大きく顔領域が写っている状態で、4×4の領域が6個合わさり、S1<S2&&S1<S4&&S3<S2&&S3<S6を満たす場合に真、満たさない場合に偽となるフィルタを用いることができる。抽出された顔領域に対してこのフィルタをかけると、結果が真である領域はクラスタ状の塊になる。このような積分値フィルタの結果をさらにラベリングし、さらに結果の左右に眼鏡領域候補が存在するという条件を加え、図9に示すような眼鏡領域を抽出する。
【0039】
続いてステップS3において、抽出された眼鏡領域に対してSobelフィルタをかけ、図10に示すような縦方向エッジを抽出する。
【0040】
そしてステップS4において、眼鏡フレームの両端部分T1,T2を検出する。例えば、顔が正面を向いている場合、左右の目の位置を合わせて左右の画像を重ね合わせると顔の輪郭線と眼鏡フレームとが大体重なるという経験則を利用し、左画像では、眼鏡フレームの右エッジは左画像の右輪郭線付近、左エッジは対応する右画像の左輪郭線付近となり、右画像では、眼鏡フレームの左エッジは右画像の左輪郭線付近、右エッジは対応する左画像の右輪郭線付近となるという条件により、眼鏡フレームの両端部分T1,T2を検出することができる。このようにして検出された眼鏡フレームの両端部分T1,T2の座標は、指定通過点情報としてDPマッチング部21に供給され、DPマッチング部21では、この指定通過点を強制的に通過するようにパス探索が行われる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態の通信システム1に用いられる画像処理装置14bによれば、被写体であるユーザbの画像Pb1,Pb2から、DPマッチングでの対応付けが困難な眼鏡フレームの両端部分T1,T2を予め検出しておき、パス探索における指定通過点とすることで、ユーザbが眼鏡をかけている場合であっても高品質の仮想視点画像Imbを作成することができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0043】
例えば、上述した実施の形態では、左右の画像の眼鏡フレーム同士を対応付けることが困難なことに鑑み、眼鏡フレームの両端部分を指定通過点として設定する場合について説明したが、本発明は、DPマッチングでの対応付けが困難な場合に広く適用可能である。一例として、サッカー場のフィールドを左右のカメラで撮像して得られた左右の画像から仮想視点画像を作成する場合、フィールド上の選手を指定対応点とすることで、高品質の仮想視点画像を作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施の形態における通信システムの概略構成を示す図である。
【図2】被写体であるユーザが眼鏡をかけている場合にDPマッチングで探索されるパスの一例と理想的なパスとを示す図である。
【図3】設定される指定通過点の一例を示す図である。
【図4】画像処理装置の概略構成を示す図である。
【図5】通常のパス探索を示す図である。
【図6】指定通過点を強制的に通過させるパス探索を示す図である。
【図7】指定通過点としての眼鏡フレームの両端部分を検出する処理を説明するフローチャートである。
【図8】積分値フィルタの一例を示す図である。
【図9】抽出された眼鏡領域を示す図である。
【図10】抽出された縦エッジと、眼鏡フレームの両端部分T1,T2とを示す図である。
【図11】従来の画像処理装置の概略構成を示す図である。
【図12】DPマッチング部に供給される左右の画像の一例を示す図である。
【図13】DPマッチングの手法を説明する図である。
【図14】スキャンライン上の画素同士の対応関係を示す図であり、同図(A)は理想的な対応関係を示し、同図(B)はミスマッチを起こした場合の対応関係を示す。
【図15】仮想視点画像の一例を示す図であり、同図(A)は理想的な仮想視点画像を示し、同図(B)はミスマッチを起こした場合の仮想視点画像を示す。
【符号の説明】
【0045】
1 通信システム、2 ネットワーク、11a,11b,12a,12b カメラ、13a,13b ディスプレイ、14a,14b 画像処理装置、15a,15b 画像伝送装置、20 指定通過点探索部、21 DPマッチング部、22 コスト計算部、23 パス探索部、24 仮想視点画像作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2台のカメラにより互いに異なる視点から被写体を撮像して得られた第1の画像及び第2の画像に基づいて、動的計画法を利用して仮想視点画像を作成する画像処理装置であって、
上記第1の画像中の特徴点と、当該特徴点に対応する上記第2の画像中の特徴点とを検出する特徴点検出手段と、
上記第1の画像の任意の水平ラインを第1の軸、当該水平ラインに対応する上記第2の画像の水平ラインを上記第1の軸と垂直な第2の軸として、対応する画素を表す対応点を辿りながら、当該水平ライン上の画素同士の対応関係を表す経路を探索する経路探索手段と、
水平ライン毎に求められた対応関係に基づいて上記仮想視点画像を作成する仮想視点画像作成手段とを備え、
上記経路探索手段は、上記特徴点検出手段によって特徴点が検出された水平ライン上の画素同士の対応関係を求める場合、検出された上記第1の画像中の特徴点と上記第2の画像中の特徴点とを予め対応付けた指定通過点を通過するように、上記経路を作成する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
上記経路探索手段は、経路探索途中の対応点の上記第1の軸上又は上記第2の軸上の座標が、上記指定通過点の上記第1の軸上又は上記第2の軸上の座標と一致した場合、一致していない方の座標が上記指定通過点の座標と一致するまで、経路を直線的にシフトさせることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記第1の画像及び上記第2の画像は、被写体である人物の顔を互いに異なる視点から撮像して得られたものであり、
上記特徴点は、眼鏡のフレーム部分である
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
2台のカメラにより互いに異なる視点から被写体を撮像して得られた第1の画像及び第2の画像に基づいて、動的計画法を利用して仮想視点画像を作成する画像処理方法であって、
上記第1の画像中の特徴点と、当該特徴点に対応する上記第2の画像中の特徴点とを検出する特徴点検出工程と、
上記第1の画像の任意の水平ラインを第1の軸、当該水平ラインに対応する上記第2の画像の水平ラインを上記第1の軸と垂直な第2の軸として、対応する画素を表す対応点を辿りながら、当該水平ライン上の画素同士の対応関係を表す経路を探索する経路探索工程と、
水平ライン毎に求められた対応関係に基づいて上記仮想視点画像を作成する仮想視点画像作成工程とを有し、
上記経路探索工程では、上記特徴点検出工程にて特徴点が検出された水平ライン上の画素同士の対応関係を求める場合、検出された上記第1の画像中の特徴点と上記第2の画像中の特徴点とを予め対応付けた指定通過点を通過するように、上記経路を作成する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
上記経路探索工程では、経路探索途中の対応点の上記第1の軸上又は上記第2の軸上の座標が、上記指定通過点の上記第1の軸上又は上記第2の軸上の座標と一致した場合、一致していない方の座標が上記指定通過点の座標と一致するまで、経路を直線的にシフトさせることを特徴とする請求項4記載の画像処理方法。
【請求項6】
上記第1の画像及び上記第2の画像は、被写体である人物の顔を互いに異なる視点から撮像して得られたものであり、
上記特徴点は、眼鏡のフレーム部分である
ことを特徴とする請求項4記載の画像処理方法。
【請求項7】
2台のカメラにより互いに異なる視点から被写体を撮像して得られた第1の画像及び第2の画像に基づいて、動的計画法を利用して仮想視点画像を作成する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
上記第1の画像中の特徴点と、当該特徴点に対応する上記第2の画像中の特徴点とを検出する特徴点検出工程と、
上記第1の画像の任意の水平ラインを第1の軸、当該水平ラインに対応する上記第2の画像の水平ラインを上記第1の軸と垂直な第2の軸として、対応する画素を表す対応点を辿りながら、当該水平ライン上の画素同士の対応関係を表す経路を探索する経路探索工程と、
水平ライン毎に求められた対応関係に基づいて上記仮想視点画像を作成する仮想視点画像作成工程とを有し、
上記経路探索工程では、上記特徴点検出工程にて特徴点が検出された水平ライン上の画素同士の対応関係を求める場合、検出された上記第1の画像中の特徴点と上記第2の画像中の特徴点とを予め対応付けた指定通過点を通過するように、上記経路を作成する
ことを特徴とする処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−243958(P2006−243958A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56352(P2005−56352)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】