説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】 処理速度が速く、カメラ台数を増やす際の対応が容易で、高い信頼性が得られる画像処理装置および画像処理方法を提供すること。
【解決手段】 検査対象物の欠陥を検出する画像処理装置1は、CPU2、メインメモリ3およびPCIバス4を備えたパーソナルコンピュータ5と、PCIバス4に接続された画像処理ボード6とを備える。画像処理ボード6は、大容量画像メモリ8を備え、4台のカメラ11〜14からの原画像データを大容量画像メモリ8に記憶させる処理、シェーディング補正処理、および原画像データを圧縮する画像圧縮処理等、原画像データの全てに関わる処理をハードウェアを使って行う。CPU2は、画像処理ボード6からPCIバス4を通じてメインメモリ3へ転送される圧縮画像データに対して、2値化処理、ラベリング処理等、欠陥検出のためのソフトウェア処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ガラスや磁気ディスク用のガラス基板等の板状ガラスの欠陥検出等に用いる画像処理装置及び画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板等の欠陥を検出するための画像処理をソフトウェアで行う、ソフトウェア処理方式の画像処理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この画像処理システムは、1台のカメラ(ラインセンサカメラ)に1台のパーソナルコンピュータ(以下、「PC]という)を割り当てて画像処理を行う。この画像処理は、複数台のPCの各々においてソフトウェアで行う。例えば、各PCにおいて、カメラからの画像データを、画像データを入力するためのだけの機能を有する画像入力ボードによりメモリに転送し、転送された画像データの処理をCPUによりソフトウェアで行う。そして、複数台のPCでそれぞれ画像処理した結果を、これらのPCとLAN結合されたホストコンピュータに転送し、ホストコンピュータが各PCからの画像処理結果を受けて全体での欠陥処理の結果を表示する。
【0003】
また、IC,LSIの実装に用いるフィルムキャリア等に形成されたパターンを検査するための画像処理をハードウェアで行う、ハードウェア処理方式の画像処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この画像処理装置は、1台のカメラからの画像データをメモリに格納し、この画像データを4つに分割した各分割画像データを4つの計測ユニットで同時に並行処理(ハードウェア処理)して検査し、各計測ユニットからの検査結果をホストコンピュータで統合判断するようになっている。
【0004】
また、ガラスや紙などの連続状シート物体の欠点検査のための画像処理をハードウェアで行うハードウェア方式の欠点検査装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。この欠点検査装置では、複数台のカメラ(ラインセンサカメラ)が1台ごとに対応する画像処理装置に接続され、複数台の画像処理装置はホストコンピュータに接続されている。各画像処理装置は、対応する各ラインセンサカメラからの入力画像を処理(ハードウェア処理)して検査情報を作成し、検査情報をホストコンピュータに送る。ホストコンピュータでは、検査情報を元に欠点を総合的に判断する。
【0005】
さらに、検査対象物から得られた原画像データを圧縮し、圧縮された画像データに対して2値化処理、ラベリング処理を行ってガラス基板等の欠陥の位置を検出し、その位置から欠陥位置周辺の原画像データを抽出し、抽出された原画像データに対して2値化処理、ラベリング処理を行う画像処理装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2002−24802号公報
【特許文献2】特開平06−341960号公報
【特許文献3】特開平08−327561号公報
【特許文献4】特開2002−83303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載された画像処理システムでは、安価なシステムを構築でき、大量の画像データのリアルタイム処理が可能になる。しかし、この画像処理システムでは、カメラの台数に応じた台数のPCが必要になるため、カメラ台数を増やす際に、カメラと同じ台数だけPCを増やす必要があり、対応が面倒である。また、PCが増えることに比例して内蔵のハードディスクが増えるため、ハードディスククラッシュの確率が
高くなり、結果として信頼性が低くなる、という問題がある。
【0007】
上記特許文献2に記載された画像処理装置および上記特許文献3に記載された欠点検査装置では、1台のカメラに対して複数の計測ユニットおよび画像処理装置がそれぞれ必要になり、カメラ台数を増やす際の対応が面倒である。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、処理速度が速く、カメラ台数を増やす際の対応が容易で、高い信頼性が得られる画像処理装置および画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、検査対象物の欠陥を検出する画像処理装置において、CPU、メインメモリおよびバスを備えたコンピュータと、前記バスに接続された画像処理ボードと、を備え、前記画像処理ボードは、画像メモリを備え、前記検査対象物を撮像する1台或いは複数台のカメラからの原画像データを前記画像メモリに記憶させる処理、シェーディング補正処理、および前記原画像データを圧縮して圧縮画像データを作成する画像圧縮処理等、前記原画像データの全てに関わる処理をハードウェアを使って行い、前記CPUは、前記画像処理ボードから前記バスを通じて前記メインメモリへ転送される前記圧縮画像データに対して、2値化処理、ラベリング処理等、欠陥検出のためのソフトウェア処理を行うことを要旨とする。
【0010】
これによれば、画像処理ボードが上記原画像データの全てに関わる処理をハードウェアを使って行い、CPUが、画像処理ボードからバスを通じてメインメモリへ転送される圧縮画像データに対して欠陥検出のためのソフトウェア処理を行う。つまり、大量のデータを処理する必要のある上記原画像データの全てに関わる処理を、画像処理ボードによるハードウェア処理で行い、CPUが圧縮画像データに対して欠陥検出のためのソフトウェア処理を行う。これにより、装置全体として処理速度を速くすることができる。また、CPUにかかる負担が低減されるので、CPU自体の信頼性が向上する。さらに、1つの画像処理ボードに対して複数台のカメラが使用可能であり、また、それ以上の台数のカメラが必要な場合には、バスに接続する画像処理ボードを増やだけで良く、上記従来技術のようにカメラ台数を増やす際に、カメラと同じ台数だけPCを増やす必要がない。このため、カメラ台数を増やす際の対応が容易になるとともに、ハードディスククラッシュの確率が低くなり、結果として装置全体の信頼性が向上する。したがって、処理速度が速く、カメラ台数を増やす際の対応が容易で、高い信頼性が得られる画像処理装置を実現することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記バスはPCIバスであり、前記画像処理ボードは、前記原画像データの全てを前記PCIバスの転送レートに制限されないデータ量まで、欠陥情報を残したままで圧縮することを要旨とする。
【0012】
これによれば、画像処理ボードは、原画像データの全てをPCIバスの転送レートに制限されないデータ量まで、欠陥情報を残したままで圧縮するので、PCIバスの速いデータ転送速度を生かして処理速度をさらに速くすることができる。
【0013】
なお、ここにいう「PCIバスの転送レートに制限されないデータ量」とは、PCIバスの最大データ転送速度である132MB/sに制限されないデータ量を意味する。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の画像処理装置において、前記画像処理ボードは、前記圧縮画像データを、前記PCIバスを通じて前記メインメモリへDMA転送することを要旨とする。
【0014】
これによれば、画像処理ボードは、圧縮画像データを、PCIバスを通じてメインメモリへDMA転送することで、CPUにかかる負担がさらに低減されるので、CPU自体の信頼性もさらに向上し、結果として信頼性がさらに向上する。
【0015】
なお、ここにいう「DMA」は「Direct Memory Access」のことで、「DMA転送」とは、システムのCPUを介することなく、メモリへのデータ転送を行う方法を意味する。
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の画像処理装置において、前記CPUは、前記原画像データのうち、前記欠陥検出のための処理により欠陥と判定された欠陥位置周辺の原画像データの転送要求を前記PCIバスを通じて前記画像処理ボードへ送り、前記CPUは、前記転送要求に応じて前記画像処理ボードから前記PCIバスを通じて転送される前記欠陥位置周辺の原画像データに対して、前記欠陥検出のための処理を再度行うことを要旨とする。
【0016】
これによれば、CPUは、原画像データのうち、欠陥検出のための処理により欠陥と判定された欠陥位置周辺の原画像データの転送要求をPCIバスを通じて画像処理ボードへ送る。また、CPUは、転送要求に応じて画像処理ボードからPCIバスを通じて転送される欠陥位置周辺の原画像データに対して、欠陥検出のための処理を再度行う。このため、検査対象物の欠陥検出を、短い検査時間でかつ高精度に行うことができる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像処理装置において、前記画像処理ボードは、前記カメラからの原画像データを取り込む画像入力手段を備えるとともに、前記原画像データの全てに関わる処理を行う前記ハードウェアとしてのFPGAを備えることを要旨とする。
【0018】
これによれば、原画像データの全てに関わる処理の内容が変更になる場合、或いはユーザによってその処理内容が異なる場合等において、FPGAに処理を実行するための回路構成を書き換えることで、対応が容易になり、ユーザ側でシステムを立ち上げる際の柔軟性が向上する。
【0019】
なお、ここにいう「FPGA」は、「Field Programmable Gate Array」のことで、所
望の処理を実行するための回路構成を書き換え可能な大規模集積回路である。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の画像処理装置において、前記画像処理ボードは、さらに、前記FPGAをコンフィギュレーションするコンフィギュレーション手段を備え、前記FPGAのコンフィギュレーション用データファイルを、前記メインメモリから前記PCIバスを通じて前記コンフィギュレーション手段にダウンロード可能に構成したことを要旨とする。
【0020】
これによれば、画像処理ボードは、FPGAをコンフィギュレーション手段としてのフラッシュメモリを備える。このフラッシュメモリには、VHDLプログラムをコンパイルしたコンフィギュレーション用データファイルを、メインメモリからダウンロードできるようになっている。これにより、FPGAの回路構成の書き換えが容易になり、ユーザ側でシステムを立ち上げる際の柔軟性がさらに向上する。
【0021】
なお、ここにいう「FPGAをコンフィギュレーションする」とは、FPGAに、上記「原画像データの全てに関わる処理」等の所望の処理を実行させるための回路を構成することを意味する。
【0022】
請求項7に係る発明は、検査対象物の欠陥を検出する画像処理方法において、CPU、メインメモリおよびバスを備えたコンピュータと、前記バスに接続され、画像メモリを有する画像処理ボードと、を備え、前記画像処理ボードにより、前記検査対象物を撮像する
1台或いは複数台のカメラからの原画像データを前記画像メモリに記憶させる処理、シェーディング補正処理、および前記原画像データを圧縮して圧縮画像データを作成する画像圧縮処理等、前記原画像データの全てに関わる処理をハードウェアを使って行い、前記CPU2により、前記バスを通じて前記メインメモリへ転送される前記圧縮画像データに対して、2値化処理、ラベリング処理等、欠陥検出のためのソフトウェア処理を行うことを要旨とする。
【0023】
これによれば、大量のデータを処理する必要のある上記原画像データの全てに関わる処理を、画像処理ボードによるハードウェア処理で行い、CPUが圧縮画像データに対して欠陥検出のためのソフトウェア処理を行う。したがって、処理速度が速く、カメラ台数を増やす際の対応が容易で、高い信頼性が得られる画像処理装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、処理速度が速く、カメラ台数を増やす際の対応が容易で、高い信頼性が得られる画像処理装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づいて説明する。
[一実施形態]
本発明の第1実施形態に係る画像処理装置を図1および図2に基づいて説明する。
【0026】
この画像処理装置は、板状ガラス等の検査対象物の欠陥を検出するのに用いられる。この画像処理装置1は、図1に示すように、CPU2、メインメモリ3およびPCIバス4を備えたパーソナルコンピュータ5と、パーソナルコンピュータ(以下、「PC]という)5内にPCIバス4に接続して実装した画像処理ボード6とを備えている。なお、図1では、画像処理ボード6と画像処理ボード7の2つを示してある。本実施形態では、一例として、1つの画像処理ボードに対して最大で4台のカメラを使用可能であり、1つの画像処理ボード6に対して4台のカメラ11〜14を用いる構成について説明する。
【0027】
画像処理ボード6は、大容量画像メモリ8を備え、検査対象物を撮像する4台のカメラ11〜14からの原画像データを画像メモリ8に記憶させる処理、シェーディング補正処理、原画像データを圧縮して圧縮画像データを作成する画像圧縮処理等、原画像データの全てに関わる処理をハードウェアを使って行うようになっている。さらに、画像処理ボード6は、圧縮画像データをPCIバス4を通じてDMA転送するようになっている。なお、大容量画像メモリ8は、4台のカメラ11〜14からの原画像データ全てを画素単位で格納できるだけの大容量を備えている。
【0028】
この画像処理ボード6は、大容量画像メモリ8の他に、画像入力手段としてのカメラコントローラ9と、上述した原画像データの全てに関わる処理を行うハードウェアとしてのFPGA10と、フラッシュメモリ20とを備えている。
【0029】
カメラコントローラ9は、4台のカメラ11〜14からの原画像データを取り込み、FPGA10に転送する、「原画像データの転送」を行うようになっている。なお、各カメラ11〜14は、ラインセンサカメラである。また、ここにいう「原画像データ」は、例えば、各カメラ11〜14から出力されるアナログ信号である画像信号をA/D変換した多階調のデジタル信号である。
【0030】
FPGA10は、上述したように、上記「原画像データの全てに関わる処理」等の所望の処理を書き換え可能な大規模集積回路である。本例におけるFPGA10は、「原画像データの全てに関わる処理」を行うハードウェアとして機能する。
【0031】
つまり、FPGA10は、カメラコントローラ9から転送される原画像データを大容量画像メモリ8に記憶させる処理、シェーディング補正処理、原画像データを圧縮する画像圧縮処理、原画像データの全てに関わるハードウェア処理を実行させるための回路に構成される(コンフィギュレーションされる)。
【0032】
フラッシュメモリ20は、FPGA10に、上述した原画像データの全てに関わる処理を実行させるための回路を構成する(コンフィギュレーションする)コンフィギュレーション手段である。このフラッシュメモリ20には、VHDLプログラムをコンパイルしたコンフィギュレーション用データファイルを、PC5のメインメモリ3からダウンロードできるようになっている。FPGA10は、フラッシュメモリ20にダウンロードされたコンフィギュレーション用データファイルによってコンフィギュレーションを完了する。
【0033】
なお、ここにいう「VHDL」は「VHSIC Hardware Description Language」のことで
、VHSIC(Very High Speed Integrated Circuit)開発のために、米国国防総省のプロジェクトとして開発がなされたハードウェア記述言語である。
【0034】
また、画像処理ボード6のFPGA10は、上記画像圧縮処理において、カメラコントローラ9により取り込んだ4台のカメラ11〜14からの原画像データの全てを、PCIバス4の転送レートに制限されないデータ量まで、欠陥情報を残したまま圧縮する。本例では、一例として、原画像データの全てを1/64に圧縮するようになっている。
【0035】
さらに、画像処理ボード6のFPGA10は、原画像データを圧縮すると同時に、圧縮画像データをPCIバス4を通じてメインメモリ3へDMA転送する処理と、大容量画像メモリ8への原画像データの格納及び同メモリに格納された原画像データの読出し等の画像データ管理とを行うように構成されている。
【0036】
CPU2は、画像処理ボード6のFPGA10からPCIバス4を通じてメインメモリ3へ転送される圧縮画像データに対して、2値化処理、ラベリング処理等、欠陥検出のためのソフトウェア処理を行うように構成されている。
【0037】
また、CPU2は、原画像データ、つまり大容量画像メモリ8に格納された原画像データの全てのうち、前記欠陥検出のための処理により欠陥と判定された欠陥位置周辺の原画像データの転送要求をPCIバス4を通じて画像処理ボード6へ送るようになっている。
【0038】
さらに、CPU2は、前記転送要求に応じて画像処理ボード6のFPGA10からPCIバス4を通じて転送される前記欠陥位置周辺の原画像データに対して、前記欠陥検出のための処理を再度行うように構成されている。
【0039】
次に、以上のように構成された画像処理装置1の動作を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。図2では、理解を容易にするために、画像処理ボード6が実行する処理(ボード内のハードウェア処理)と、CPU2が実行する処理(PC内のソフトウェア処理)とを1つのフローチャートに示してある。
【0040】
まず、画像処理ボード6のカメラコントローラ9により、カメラから原画像の入力と、FPGAへの転送とを行う(ステップS10参照)。つまり、カメラコントローラ9は、検査対象物を撮像する4台のカメラ11〜14からの原画像データを順次取り込むとともに、取り込んだ原画像データをFPGA10に順次転送する。
【0041】
次のステップS20では、FPGA内処理が実行される。ここでは、画像処理ボード6
のFPGA10は、カメラコントローラ9から順次転送される原画像データをシェーディング補正処理し、シェーディング補正後の原画像データの全てを大容量画像メモリ8に順次転送して同メモリに記憶させる処理を実行する。これらの処理と同時に、FPGA10は、カメラコントローラ9から順次転送される原画像データを圧縮して圧縮画像データを作成し、この圧縮画像データをPCIバス4を通じてPC5のメインメモリ3にDMA転送する。
【0042】
次のステップS30では、圧縮画像に対するPC内ソフトウェア画像処理が実行される。ここでは、PC5のCPU2は、FPGA10からPCIバス4を通じてメインメモリ3へ転送される圧縮画像データに対して、2値化処理、ラベリング処理等、欠陥判定処理、欠陥位置計算等、欠陥検出のためのソフトウェア処理を実行する。
【0043】
次のステップS40では、欠陥位置指定による欠陥画像転送要求が実行される。ここでは、CPU2は、原画像データ、つまり大容量画像メモリ8に格納された原画像データの全てのうち、欠陥検出のための処理により欠陥と判定された欠陥位置周辺の原画像データの転送要求をPCIバス4を通じて画像処理ボード6へ送る。
【0044】
次のステップS50では、画像処理ボード内にある欠陥画像(周辺も含む)のDMA転送が実行される。ここでは、画像処理ボード6のFPGA10は、前記欠陥位置周辺の原画像データの転送要求に応じて、欠陥位置周辺の原画像データ(欠陥画像データ)を大容量画像メモリ8から読出し(切り出し)、この切り出した欠陥画像データをPCIバス4を通じてメインメモリ3にDMA転送する。
【0045】
次のステップS60では、PC内ソフトウェア画像処理が再び実行される。ここでは、CPU2は、前記転送要求に応じて画像処理ボード6のFPGA10からPCIバス4を通じて転送される欠陥位置周辺の原画像データ(欠陥画像データ)に対して、前記欠陥検出のための処理を再度実行する。これとともに、CPU2は、前記欠陥画像データに対して行った欠陥検出のための処理によって判定された欠陥位置の画像(欠陥画像)を不図示のディスプレイに表示させる。
【0046】
そして、次のステップS70では、CPU2は、上記ステップS60で、前記欠陥画像データに対して行った欠陥検出のための処理によって判定される検査結果を出力する。
以上のように構成された一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0047】
○画像処理装置1では、画像処理ボード6が上記原画像データの全てに関わる処理をハードウェアを使って行い(ステップS20参照)、CPU2が、画像処理ボード6からPCIバス4を通じてメインメモリ3へ転送される圧縮画像データに対して、2値化処理、ラベリング処理等、欠陥検出のためのソフトウェア処理を行う(ステップS30参照)。つまり、大量のデータを処理する必要のある上記原画像データの全てに関わる処理を、画像処理ボード6によるハードウェア処理で行い、CPU2が圧縮画像データに対して欠陥検出のためのソフトウェア処理を行う。これにより、装置全体として処理速度を速くすることができる。
【0048】
○PC5のCPU2にかかる負担が低減されるので、CPU2自体の信頼性が向上する。
○1つの画像処理ボードに対して複数台のカメラ、例えば本例では最大4台のカメラが使用可能であり、また、それ以上の台数のカメラが必要な場合には、バスに接続する画像処理ボードを増やすだけで良い。このため、上記従来技術のようにカメラ台数を増やす際に、カメラと同じ台数だけPCを増やす必要がない。このため、カメラ台数を増やす際の対応が容易になるとともに、ハードディスククラッシュの確率が低くなり、結果として装
置全体の信頼性が向上する。
【0049】
○画像処理ボード6は、原画像データの全てをPCIバス4の転送レートに制限されないデータ量まで、欠陥情報を残したままで圧縮するので、PCIバスの速いデータ転送速度を生かして処理速度をさらに速くすることができる。
【0050】
○画像処理ボード6は、圧縮画像データを、PCIバス4を通じてメインメモリ3へDMA転送する(ステップS20参照)ことで、CPU2にかかる負担がさらに低減されるので、CPU自体の信頼性がさらに向上し、結果として装置全体の信頼性がさらに向上する。
【0051】
○CPU2は、原画像データのうち、欠陥検出のための処理により欠陥と判定された欠陥位置周辺の原画像データの転送要求をPCIバス4を通じて画像処理ボード6へ送る(ステップS40参照)。また、CPU2は、転送要求に応じて画像処理ボード6からPCIバス4を通じて転送される欠陥位置周辺の原画像データに対して、欠陥検出のための処理を再度行う(ステップS60参照)。このため、検査対象物の欠陥検出を、短い検査時間でかつ高精度に行うことができる。
【0052】
○画像処理ボード6は、カメラ11〜14からの原画像データの全てに関わる処理を行うハードウェアとしてのFPGA10を備える。これにより、原画像データの全てに関わる処理の内容が変更になる場合、或いはユーザによってその処理内容が異なる場合において、FPGAに処理を実行するための回路構成を書き換えることで、対応が容易になり、ユーザ側でシステムを立ち上げる際の柔軟性が向上する。
【0053】
○画像処理ボード6は、FPGA10をコンフィギュレーションするコンフィギュレーション手段としてのフラッシュメモリ20を備える。このフラッシュメモリ20は、FPGA10に、上述した原画像データの全てに関わる処理を実行させるための回路を構成する(コンフィギュレーションする)。このフラッシュメモリ20には、VHDLプログラムをコンパイルしたコンフィギュレーション用データファイルを、PC5のメインメモリ3からダウンロードできるようになっている。これにより、FPGA10の回路構成の書き換えが容易になり、ユーザ側でシステムを立ち上げる際の柔軟性がさらに向上する。
【0054】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記一実施形態では、一例として、1つの画像処理ボード6に4台のカメラ11〜14を使用した例について説明したが、画像処理ボード6に1台或いは複数台(2台又は3台)のカメラを使用する場合にも本発明は適用可能である。
【0055】
・上記一実施形態において、1つの画像処理ボードに対して最大で4台のカメラを使用可能とすると、5台以上のカメラを用いて画像処理を行う場合には、画像処理ボード6と同じ構成の画像処理ボード7を追加し、このボードをPCIバス4に接続するだけで良い。
【0056】
・上記一実施形態では、一例として、1つの画像処理ボードに対して最大で4台のカメラを使用可能としたが、本発明は1つの画像処理ボードに対して5台以上のカメラを使用する場合にも適用可能である。
【0057】
・上記一実施形態では、PCIバス4を有するPC5について説明したが、本発明は、PCIバス以外に、ISAバス、VLバス、汎用拡張バスを有するPCを使用する構成にも適用可能である。
【0058】
・上記一実施形態では、FPGA10をコンフィギュレーションするコンフィギュレーション手段としてフラッシュメモリ20を用いた構成について一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、そのコンフィギュレーション手段として、市販のコンフィギュレーションデバイスを用いても良い。
【0059】
・上記一実施形態において、FPGA10に複数の回路構成の1つを選択的に切り換えてコンフィギュレーションできる構成にしても良い。これにより、FPGA10に実行させる処理内容の変更がさらに容易になるとともに、ユーザ側でシステムを立ち上げる際の柔軟性がさらに向上する。なお、その切り換えは、PC5側で行うようにしても良いし、そのような切り換え機能をコンフィギュレーションデバイスに持たせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】一実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】同画像処理装置の画像処理動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0061】
1…画像処理装置、2…CPU、3…メインメモリ、4…PCIバス、5…パーソナルコンピュータ(PC)、6,7…画像処理ボード、8…画像メモリとしての大容量画像メモリ、9…画像入力手段としてのカメラコントローラ、10…FPGA、11〜14…カメラ、20…コンフィギュレーション手段としてのフラッシュメモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の欠陥を検出する画像処理装置において、
CPU、メインメモリおよびバスを備えたコンピュータと、
前記バスに接続された画像処理ボードと、を備え、
前記画像処理ボードは、画像メモリを備え、前記検査対象物を撮像する1台或いは複数台のカメラからの原画像データを前記画像メモリに記憶させる処理、シェーディング補正処理、および前記原画像データを圧縮して圧縮画像データを作成する画像圧縮処理等、前記原画像データの全てに関わる処理をハードウェアを使って行い、
前記CPUは、前記画像処理ボードから前記バスを通じて前記メインメモリへ転送される前記圧縮画像データに対して、2値化処理、ラベリング処理等、欠陥検出のためのソフトウェア処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記バスはPCIバスであり、前記画像処理ボードは、前記原画像データの全てを前記PCIバスの転送レートに制限されないデータ量まで、欠陥情報を残したままで圧縮することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記画像処理ボードは、前記圧縮画像データを、前記PCIバスを通じて前記メインメモリへDMA転送することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の画像処理装置において、
前記CPUは、前記原画像データのうち、前記欠陥検出のための処理により欠陥と判定された欠陥位置周辺の原画像データの転送要求を前記PCIバスを通じて前記画像処理ボードへ送り、
前記CPUは、前記転送要求に応じて前記画像処理ボードから前記PCIバスを通じて転送される前記欠陥位置周辺の原画像データに対して、前記欠陥検出のための処理を再度行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像処理装置において、
前記画像処理ボードは、前記カメラからの原画像データを取り込む画像入力手段を備えるとともに、前記原画像データの全てに関わる処理を行う前記ハードウェアとしてのFPGAを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置において、
前記画像処理ボードは、さらに、前記FPGAをコンフィギュレーションするコンフィギュレーション手段を備え、前記FPGAのコンフィギュレーション用データファイルを、前記メインメモリから前記PCIバスを通じて前記コンフィギュレーション手段にダウンロード可能に構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
検査対象物の欠陥を検出する画像処理方法において、
CPU、メインメモリおよびバスを備えたコンピュータと、
前記バスに接続され、画像メモリを有する画像処理ボードと、を備え、
前記画像処理ボードにより、前記検査対象物を撮像する1台或いは複数台のカメラからの原画像データを前記画像メモリに記憶させる処理、シェーディング補正処理、および前記原画像データを圧縮して圧縮画像データを作成する画像圧縮処理等、前記原画像データの全てに関わる処理をハードウェアを使って行い、
前記CPU2により、前記バスを通じて前記メインメモリへ転送される前記圧縮画像データに対して、2値化処理、ラベリング処理等、欠陥検出のためのソフトウェア処理を行
うことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2005−283280(P2005−283280A)
【公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−96664(P2004−96664)
【出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(503429939)株式会社 ナノスコープ (3)
【Fターム(参考)】