説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】マルチパス記録において、1画素を複数のエリア(記録解像度)に対応させて階調表現する場合、低濃度部から高濃度部の全階調領域に亘って、粒状感や濃度むらのない一様な画像を出力することが可能な画像処理方法を提供する。
【解決手段】記録解像度に対応する個々の画素(エリア)へのドットの記録あるいは非記録が予め定められたドットパターンを参照することにより、量子化データをより高い解像度の2値データに変換する。この際、ドットパターンは、Mパスのマルチパス記録におけるM回の走査のそれぞれに対し異なるパターンとなるように用意する。これにより、各記録走査での記録位置ずれに伴う被覆率の変動を抑えることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の同一領域に対し、記録手段(記録ヘッド)を複数回相対移動させることによって同一領域に画像を記録するための、同一領域に対応する画像データを処理する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリアル型のインクジェット記録装置では、記録される画像の一様性を高めるために、記録媒体の同一領域を記録ヘッドの複数回の記録走査で記録するマルチパス記録方式が有用されている。しかしながら、マルチパス記録方式を採用したとしても、記録媒体の搬送誤差などによって、先行する記録走査でのドット記録位置と後続の記録走査でのドット記録位置にズレや濃度むら等の画像弊害が生じる場合がある。
【0003】
図1(a)および(b)は、2パスのマルチパス記録を行った際の上記画像弊害を説明するための模式図である。図において、黒丸401は第1の記録走査で記録されるドット、白丸402は第2の記録走査で記録されるドットをそれぞれ示している。従来、マルチパス記録方式では、記録ヘッドの複数回の記録走査において、互いに補完の関係にあるマスクパターンを用いて同一領域の記録を行っていた。よって、記録媒体上の同一領域では、図1(a)のようなドット配置が得られる。
【0004】
但し、第1の記録走査で記録されるドット群と第2の記録走査で記録されるドット群が、何らかの原因によりずれた場合、記録媒体上のドット配置は図1(b)のようになる。すなわち、第1の記録走査で記録されるドット群と第2の記録走査で記録されるドット群が互いに重なり合い、その分白紙領域が露出し、記録媒体に対するドットの被覆率すなわち画像濃度が低下する。そして、このような記録位置ずれが、記録媒体の搬送量の変動、キャリッジの速度変動、記録媒体と記録ヘッドとの距離(紙間距離)の変動等によって突発的に生じると、その箇所のみ濃度が低い領域が現れ、濃度むらとして認識される。
【0005】
特許文献1には、このような画像弊害を軽減するための技術として、2値化前の多値の段階で画像データを異なる記録走査に対応するように分配し、分配後の多値画像データを夫々に2値化する方法が開示されている。
【0006】
図2(a)および(b)は、特許文献1の方法を用いて、2パスのマルチパス記録を行った際のドットの記録位置を示す模式図である。図において、黒丸は第1の記録走査で記録されるドット、白丸は第2の記録走査で記録されるドット、斜線の丸は第1の記録走査と第2の記録走査によって重ねて記録される重複ドットである。特許文献1の方法では、多値の画像データを記録走査に対応するように分配した後に夫々に無相関に2値化しているので、第1の記録走査で記録されるドット群と第2の記録走査で記録されるドット群が補完関係にない。すなわち、第1の記録走査と第2の記録走査の両方でドットが記録される画素もあれば、第1の記録走査と第2の記録走査のどちらからもドットが記録されない画素もある。
【0007】
このようなドット配置によれば、第1の記録走査で記録されるドット群と第2の記録走査で記録されるドット群がずれたとしても、図2(b)に示すように記録媒体に対するドットの被覆率は然程変動しない。第1の記録走査で記録されるドットと第2の記録走査で記録されるドットが重なる部分も新たに現れるが、本来2つのドットが重ねて記録される領域が重ならなくなる部分も存在するからである。
【0008】
但し、このような記録走査間の記録位置ずれに伴う濃度変動は、記録媒体に記録されるドット数が元々少ない低濃度部では然程目立たない。低濃度部では、第1の記録走査で記録されるドット群と第2の記録走査で記録されるドット群が元々疎らであり、これらドット群が多少ずれたとしても、互いに重なり合ったり分離したりするほどドット間の距離が近くないからである。むしろ、低濃度部では、特許文献1の方法を採用することによってドットの粗密に偏りが生じ、これに伴う粒状感が問題視される場合がある。
【0009】
このような状況に対し、特許文献2では、多値の画像データを記録走査に対応して複数に分配した後、低濃度部に関しては夫々の記録走査で互いに排他となるように2値化する方法が開示されている。このような特許文献2の方法によれば、低濃度部では粒状感を抑えつつ中濃度以上では記録位置ずれに伴う濃度むらが抑えられるようなマルチパス記録を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−103088号公報
【特許文献2】特開2009−246730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで近年では、記録装置の高解像度化に伴い、量子化後の1つの画素に対し、画素領域内の異なる位置に複数のドットを記録する方法が採用されている。特許文献2でも、2つの記録走査に対応して分配された多値データの夫々を、0、1、または2のいずれかに量子化し、1つのレベルに対しドットを記録する位置や数を定めた図3に示すようなドットパターンを対応させて2値化処理する方法が開示されている。図3の場合、例えば量子化後のレベルが2の場合には、2×2エリアの対角の位置(左上と右下の位置)にドットが1つずつ記録されるようになっている。
【0012】
しかしながら、特許文献2の方法では、いずれの記録走査に対しても図3に示したような一定のドットパターンを使用するので、中高濃度部において、濃度不足が生じたり、記録位置ずれに伴う濃度むらが十分に回避出来なかったりする場合があった。その理由を以下に説明する。
【0013】
一般に、記録媒体におけるドットの大きさは、記録装置の記録解像度に対応する全ての画素にドットを記録した場合に、記録媒体の白紙領域が十分被覆されるように、記録解像度に関連付けて設計されている。特許文献2のように、画像処理の1画素を2×2の記録解像度エリアに対応させて階調表現する場合は、2×2エリアの全てに1つずつドットが記録されて(図4(a))、最高濃度が得られるようになっている。しかし、特許文献2のように、多値データを分配した後に、それぞれを量子化する構成においては、分配前の多値データが最高濃度を示す信号(255)であっても、個々の記録走査に対応する多値データは50%(128)に低減される。そして、2×2エリアに2つずつドットが記録される階調値(レベル2)に量子化される。その結果、図3のドットパターンに従うと、第1記録走査についても第2記録走査についてもこれら等しい階調値であるレベル2は、図4(b)のように2×2エリアの対角の位置(左上と右下の位置)にドットが1つずつ記録されることになる。つまり、同一画像領域の全ての画素に、最高濃度を示す信号(255)が入力された場合であっても、全てのエリアにドットが記録されることはなく、図4(c)に示すように、1つおきのエリアに2つのドットが重複して記録される状態となる。この場合、2×2エリアに対して記録されるドット数は、2×2エリアの全てに1つずつドットが記録される場合と等しいが、記録媒体には白紙領域が残る。すなわち、2×2エリアの全てに1つずつドットが記録される場合に比べて、濃度が不足する。
【0014】
また、このような記録状態で、第1の記録走査と第2の記録走査で記録位置ずれが発生した場合、ドットの記録状態は図4(d)のようになり、図4(c)の場合に比べて白紙領域が減少する。すなわち、特許文献2の構成では、低濃度領域の粒状感を低減することは出来たが、中高濃度部における濃度不足や濃度むらが十分に抑制することは出来なかった。
【0015】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。よって、その目的とするところは、1画素を複数のエリアに対応させて階調表現する場合において、低濃度部から高濃度部の全階調領域に亘って、粒状感や濃度むらのない一様な画像を出力することが可能な画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための本発明は、ドットを記録する記録ヘッドを記録媒体の同一領域に対しM回ずつ走査させることにより、前記記録媒体に画像を記録するための画像処理を実行する画像処理装置であって、前記同一領域に対応する多値の画像データをM個に分配してM個の多値データを生成する分配手段と、前記M個の多値データをそれぞれ量子化することによってM個の量子化データを生成する量子化手段と、記録解像度に対応する個々の画素へのドットの記録あるいは非記録が前記量子化データの値に応じて定められたドットパターンを参照することにより、前記M個の量子化データそれぞれを、前記量子化データよりも高い解像度の2値データに変換する2値化手段とを備え、前記ドットパターンは、前記量子化データの値が0の場合を除く少なくとも1つの値において、前記M個の量子化データのそれぞれに対し異なるパターンとなるように用意されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、1画素を複数のエリアに対応させて階調表現する画像をマルチパス記録で記録する場合であっても、各記録走査での記録位置ずれに伴う被覆率の変動を抑えることが出来るので、濃度むらのない一様な画像を出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)および(b)は、2パス記録の画像弊害を説明する模式図である。
【図2】(a)および(b)は、特許文献1のドットの記録位置を示す模式図である。
【図3】特許文献2に記載のドットパターンを示す図である。
【図4】(a)〜(d)は、ドットの記録位置と被覆率の関係を説明する図である。
【図5】本発明のインクジェット記録装置の記録部の概要を示す斜視図である。
【図6】(a)および(b)は、記録ヘッドを吐出口面から観察した概略図である。
【図7】記録装置の制御に係る主要部の構成を示すブロック図である。
【図8】第1の実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図9】画素が有するレベル値と、これに対応するドットの記録状態を示す図である。
【図10】(a)および(b)は、第1走査用と第2走査用のドットパターンを示す図である。
【図11】(a)および(b)は、同一領域に対する第1走査と第2走査のドットの記録状態を示す図である。
【図12】(a)および(b)は、第1走査用と第2走査用のドットパターンの別例を示す図である。
【図13】(a)および(b)は、同一領域に対する第1走査と第2走査のドットの記録状態を示す図である。
【図14】第2の実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図15】(a)および(b)は、記録位置ずれの際の重複ドットを示す図である。
【図16】第3の実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図17】(a)〜(c)は、第3実施形態における第1走査用、第2走査用および第3走査用のドットパターンを、それぞれ示す図である。
【図18】(a)および(b)は、記録媒体でのドットの記録状態を示す図である。
【図19】(a)〜(c)は、第3実施形態における第1走査用、第2走査用および第3走査用のドットパターンを、それぞれ示す図である。
【図20】第4の実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図21】(a)および(b)は第1走査用と第2走査用のテーブルを示す図である。
【図22】(a)および(b)はマスクデータと配置パターンの内容を示す図である。
【図23】(a)〜(c)は第4実施形態におけるデータ変換の様子を示す図である。
【図24】(a)〜(c)は第4実施形態におけるデータ変換の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図5は、本発明の実施の形態に係るシリアル型のインクジェット記録装置のプリンタエンジン部の記録部の概要を示す斜視図である。記録媒体Pは、搬送ローラ701の回転によって、プラテン703上に案内、支持されながら図中y方向(副走査方向)に搬送される。ピンチローラ702は、不図示のバネ等の押圧手段により、搬送ローラ701に対して弾性的に付勢されている。これら搬送ローラ701及びピンチローラ702が記録媒体搬送方向の上流側にある第1搬送手段の構成要素をなす。
【0020】
プラテン703は、インクジェット形態の記録ヘッド704の吐出口が形成された面(吐出面)と対向する記録位置に設けられ、記録媒体Pの裏面を支持することで、記録媒体Pの表面と吐出面との距離を一定の距離に維持する。プラテン703上に搬送されて記録が行われた記録媒体Pは、回転する排出ローラ705とこれに従動する回転体である拍車706との間に挟まれてA方向に搬送され、プラテン703から排紙トレイ707に排出される。排出ローラ705及び拍車706が記録媒体搬送方向の下流側にある第2搬送手段の構成要素をなす。
【0021】
記録ヘッド704は、その吐出口面をプラテン703ないし記録媒体Pに対向させた姿勢で、キャリッジ708に着脱可能に搭載されている。キャリッジ708は、キャリッジモータE0001の駆動力により2本のガイドレール709及び710に沿って往復移動され、その記録媒体に対する相対移動の過程で記録ヘッド704が記録信号に応じたインク吐出動作を実行する。キャリッジ708が移動する方向は、記録媒体が搬送される方向と交差するx方向であり、主走査方向と呼ばれる。キャリッジ708及び記録ヘッド704の主走査(記録を伴う移動)と、記録媒体の搬送(副走査)とを交互に繰り返すことにより、記録媒体Pに対する記録が行われる。
【0022】
図6(a)および(b)は、記録ヘッド704を吐出口形成面から観察した場合の概略図である。図中、1201はシアンノズル列(記録素子群)であり、1202はマゼンタノズル列、1203はイエローノズル列、1204はブラックノズル列である。各ノズル列のy方向における幅はdであり、1回の走査によってdの幅の記録が可能となっている。
【0023】
本実施形態の記録装置はマルチパス記録を実行するので、記録ヘッド704が1回の記録走査で記録可能な領域に対して、複数回の記録走査によって段階的に画像が形成される。この時、各記録走査の間に記録ヘッド704の幅dよりも小さな量の搬送動作を行うことにより、個々のノズルのばらつきに起因する濃度むらやすじを更に低減することが出来る。
【0024】
図6(b)は、一色分のノズル列1201における吐出口の配置図を示す。ノズル列1201は、2列の吐出口列1301および1302がx方向に並列して構成されている。それぞれの吐出口列にはおよそ2plのインク滴を吐出する吐出口がy方向に256個ずつ600dpiのピッチで配列しており、これら2列の吐出口列は、個々の吐出口がy方向に半ピッチずれるように配置されている。このような構成により、記録媒体には、記録ヘッドの1回の記録走査によってy方向に1200dpiの密度でドットを記録することが出来る。ノズル列1202〜1204についても同じ構成である。
【0025】
図7は本発明の実施の形態に係る記録装置の制御に係る主要部の構成を示すブロック図である。図において、3000は制御部(制御基板)を示し、3001は画像処理ASIC(専用カスタムLSI)を示している。3002はDSP(デジタル信号処理プロセッサ)で、内部にCPUを有し、後述する各種制御処理及び、各種画像処理等を担当している。3003はメモリで、DSP3002のCPUの制御プログラムを記憶するプログラムメモリ3003a、及び実行時のプログラムを記憶するRAMエリア、画像データなどを記憶するワークメモリとして機能するメモリエリアを有している。以下に説明する本発明の特徴的なドットパターンやテーブルパラメータは、メモリ3003に予め格納されている。3004はプリンタエンジンで、ここでは、複数色のカラーインクを用いてカラー画像を印刷するインクジェットプリンタのプリンタエンジンが搭載されている。3005はデジタルカメラ(DSC)3012を接続するためのポートとしてのUSBコネクタである。3006はビューワ1011を接続するためのコネクタである。3008はUSBハブ(USB HUB)で、PDプリンタ1000がPC3010からの画像データに基づいて印刷を行う際には、PC3010からのデータをそのままスルーし、USB3021を介してプリンタエンジン3004に出力する。これにより、接続されているPC3010は、プリンタエンジン3004と直接、データや信号のやり取りを行って印刷を実行することができる(一般的なPCプリンタとして機能する)。3009は電源コネクタで、電源3019により、商用ACから変換された直流電圧を入力している。PC3010は一般的なパーソナルコンピュータ、3011は前述したメモリカード(PCカード)、3012はデジタルカメラ(DSC)である。なお、この制御部3000とプリンタエンジン3004との間の信号のやり取りは、前述したUSB3021又はIEEE1284バス3022を介して行われる。
【0026】
(第1の実施形態)
図8は、第1の実施形態における2パスのマルチパス記録の際に制御部3000が行う画像処理を説明するためのブロック図である。以下に示す処理は、制御部3000がプログラムメモリ3003aに格納されているプログラムに従って、メモリ3003に格納されている各種パラメータなどを用いて実行するものである。
【0027】
PC3010のような外部機器から、多値画像データ入力部81によって、600dpiのRGBの多値の画像データ(256値)が入力される。この入力画像データ(多値のRGBデータ)に対しては、まず色処理A62において、原画像の色空間から記録装置で表現可能な色空間への色空間変換処理が行われる。その結果、各画素が有する256値のRGBデータは、やはり256値のR´G´B´に変換される。続く色処理BにおいてR´G´B´は、記録装置で使用するインク色(CMYK)に対応した4組の多値画像データ(CMYK)に変換される。色処理部A82や色処理部B83には、256値の入力信号と256値の出力信号値とが、一対一で対応付けられた3次元のルックアップテーブル(LUT)が用意されている。そして、このLUTを用いることにより、3組の多値データが、4組の多値データに一括して変換される。256値の全ての入力信号に対応して格子点を持たない小規模のテーブルの場合、テーブル格子点値から外れる入力値に対しては、近傍の格子点の出力値から補間によって出力値を算出してもよい。以下の処理は、CMYKの夫々について独立に並行して行われる。
【0028】
階調補正処理84では、入力される多値信号に対し記録媒体で表現される実際の濃度が線形性を有するように、入力信号値(CMYK)に補正をかけ256値の信号値(C´M´Y´K´)に変換する。
【0029】
画像データ分配部85では256値の多値データ(C´M´Y´K´)を、第1走査用多値データ(C1、M1、Y1、K1)と第2走査用多値データ(C2,M2,Y2,K2)に分配する。本実施形態において、このときの分配はほぼ等分に行うものとする。
【0030】
画像データ分配部85で生成された第1走査用多値データ(C1、M1、Y1、K1)は、第1走査用の量子化処理部86−1において量子化処理が行われ、0(非記録)または1(記録)のいずれかの量子化データに変換される。また、第2走査用多値データ(C2、M2、Y2、K2)は、第2走査用の量子化処理部86−2において量子化処理が行われ、0(非記録)または1(記録)のいずれかの量子化データに変換される。このとき、非記録(0)とは、その走査において600dpiの画素領域にドットが1つも記録されない状態を示す。一方、記録(1)とは、その走査において600dpiの画素領域にドットが1つ記録される状態を示す。このように、各色2種類ずつの多値データが、それぞれ量子化されて4色分8種類の量子化データ(2値データ)が生成される。本実施形態において、これら量子化処理部で採用される量子化方式は、一般的な誤差拡散方式とする。この際、同じインクに対する量子化処理部では、2回の走査でドットが記録される画素と一方の走査でのみドットが記録される画素とを適度に混在させるため、異なる拡散マトリクスを採用してもよい。
【0031】
第1走査用のドット配置パターン展開処理87−1は、予め用意された第1走査用のドットパターンを参照することにより、第1走査用の600dpi×600dpiの2値データをx方向600dpi×y方向1200dpiの2値データに変換する。また、第2走査用のドット配置パターン展開処理87−2は、予め用意された第2走査用のドットパターンを参照することにより、第2走査用の600dpi×600dpiの2値データをx方向600dpi×y方向1200dpiの2値データに変換する。本実施形態ではこのように、y方向(副走査方向)にのみ解像度を倍増する。
【0032】
図9は、600dpi×600dpiの画素が有する2値のレベル値と、これに対応する600dpi×1200dpiの画素へのドットの記録状態を示す図である。黒丸は、600dpi×1200dpiにおいて1つのドットを記録する画素を示している。600dpi×600dpiの1画素の領域は、600dpi×1200dpiでは、y方向2画素×x方向1画素の2画素分の画素領域に対応する。よって、600dpi×600dpiのレベル値が1のとき、ドットを記録する位置は、図のように2通り存在する。
【0033】
本実施形態において、ドットパターンとは、このような600dpi×1200dpiの各画素に対するドットの記録或いは非記録を、より広い画素領域(600dpi×600dpiの16画素分)について定めたパターンである。
【0034】
図10(a)および(b)は、本実施形態におけるレベル1に対する第1走査用のドットパターン(図10(a))と第2走査用のドットパターン(図10(b))を、それぞれ示した図である。個々の格子は600dpi×600dpi相当の1画素領域を示し、どちらのドットパターンも、600dpi×600dpiの4画素×4画素=16画素分の領域が用意されている。第1走査用のドットパターンは、2種類のパターンがx方向において1画素おきに交互に配列している。一方、第2走査用のドットパターンは、2種類のパターンがx方向において2画素おきに交互に配置している。そのため、第1走査用のドットパターンで指定されるドット位置のうち、半分のドット位置で第2走査用ドットパターンのドット重複するようになっている。このように本実施形態では、第1走査用のドットパターンと第2走査用のドットパターンとで、配列状態を異ならせている。本実施形態において、このようなドットパターンは、記録装置本体のメモリ3003に予め格納されている。
【0035】
再度図8を参照するに、ドット配置パターン展開処理87−1および87−2から出力された600dpi×1200dpiの2値データは各色の記録ヘッドに送信され、該当する記録走査で吐出が実行される。
【0036】
ここで、例えば第1走査用の量子化処理86−1後の2値データが一様にレベル1であり、且つ同一領域に対する量子化処理86−2後の2値データが一様にレベル1である場合を考える。この場合、同一領域には第1の走査で図10(a)に示すドットパターンが記録され、第2の走査で同図(b)に示すドットパターンが記録される。
【0037】
図11(a)および(b)は、同一領域に対する第1走査用と第2走査用の量子化処理後の2値データが一様にレベル1であった場合の、記録媒体でのドットの記録状態を示す図である。両図において、黒丸は第1走査で記録されるドット、白丸は第2走査で記録されるドット、斜線の丸は第1走査と第2走査で重ねて記録される重複ドットを示している。個々の格子は600dpi×600dpi相当の1画素領域を示し、個々のドットは約40μmの径で示している。図11(a)は第1走査で記録するドット群と第2走査で記録するドット群との間に記録位置ずれが発生していない状態を示し、同図(b)はy方向に20μm程度の記録位置ずれが発生した場合を示している。
【0038】
記録位置ずれが発生していない図11(a)では、図10(a)と同図(b)に従って、それぞれの走査でドットが配置されている。これに対し、記録位置ずれが発生している図11(b)では、同図(a)で斜線で示した重複ドットが分離し、互いに分離していた第1走査のドット(黒丸)と第2走査のドット(白丸)が重複している。そして、このような記録位置ずれに伴うドットが分離する数と重複する数は略同数になっている。その結果、両図を比較しても、記録媒体を被覆する面積は、記録位置ずれが発生していない場合(図11(a))と、記録位置ずれが発生している場合(図11(b))とで殆ど変わっていない。すなわち、本実施形態によれば、図10(a)および(b)で示したような異なるドットパターンを、第1の記録走査と第2の記録走査の夫々に宛がうことにより、記録位置ずれに伴う濃度むらが招致されない画像を出力することが可能となる。
【0039】
以上では第1走査用および第2走査用として図10(a)および(b)に示したドットパターンを用いたが、本実施形態はこのようなドットパターンに限定されるものではない。記録媒体に対する被覆面積が、第1走査と第2走査の記録位置ずれに係らず略一定に保たれるようなドットパターンであれば、有効に用いることが出来る。
【0040】
図12(a)および(b)は、本実施形態に採用可能な、レベル1に対する第1走査用のドットパターンと第2走査用のドットパターンの別例を、図10(a)および(b)と同様に示した図である。また、図13(a)および(b)は、図12(a)および(b)で示したドットパターンを使用した場合の記録媒体でのドットの記録状態を、図11(a)および(b)と同様に示す図である。図13(a)および(b)から判るように、本例においても、記録媒体を被覆する面積は、記録位置ずれが発生していない場合(図13(a))と、記録位置ずれが発生している場合(図13(b))で殆ど変わっていない。すなわち、図12(a)および(b)で示したような異なるドットパターンを、第1の記録走査と第2の記録走査の夫々に宛がうことによっても、記録位置ずれに伴う濃度むらが招致されない画像を出力することが可能となる。
【0041】
尚、本実施形態では、量子化処理部86−1、86−2が第1走査用多値データ、第2走査用多値データから、それぞれ2値の量子化データを生成する例を示したが、量子化処理部86−1、86−2が3値以上の量子化データを生成する構成であってもよい。その際、ドット配置パターン展開処理87−1及び87−2では、レベル0を除く全てのレベル値(4値の場合はレベル1、レベル2、レベル3)において、第1走査及び第2走査の記録位置ずれに係らず略一定に保たれるようなドットパターンを用いる必要はない。すなわち、少なくとも1つのレベル値において、第1走査と第2走査の記録位置ずれに係らず略一定に保たれるようなドットパターンを用いればよい。中濃度以上で記録位置ずれに伴う濃度むらの影響が大きいことから、特に、中濃度領域(例えば、4値データの場合はレベル2)では、第1走査と第2走査の記録位置ずれに係らず略一定に保たれるようなドットパターンを用いることが好適と考えられる。
【0042】
また、本実施形態では2パス記録の例を示したが、本実施形態の構成は3パス以上のマルチパス記録(Mパス記録)にも適用できることは勿論である。その際、3パス以上のマルチパス記録の各パス(各記録走査)のドットパターンが異なっている必要はない。M回の記録走査のうち、少なくとも2回の記録走査(第1の記録走査、第2の記録走査)に対応する第1の多値データと第2の多値データが、第1の量子化データと第2の量子化データに量子化され、それぞれに対応するドットパターンが異なっていればよい。そして、第1の量子化データと第2の量子化データが、それぞれのドットパターンを参照することにより、第1の2値データと第2の2値データに変換され、その結果、少なくとも1つのレベル値において、記録媒体に異なるドットパターンが記録されれば良い。
【0043】
(第2の実施形態)
図14は、第2の実施形態における2パスのマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。多値画像データ入力部1401〜階調補正処理1404までの処理は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0044】
本実施形態の画像データ分配部1405は、多値データ(C´M´Y´K´)を、第1走査用多値データ(C1、M1、Y1、K1)、第2走査用多値データ(C2,M2,Y2,K2)及び第1・第2走査共通多値データ(C3、M3、Y3、K3)に3分配する。このときの分配は、均等に3分割してもよいが、必ずしも均等でなくても良い。但し、例えばシアンを例に説明すると、分配前の多値データC´を、第1走査用の多値データC1、第2走査用の多値データC2、および第1・第2走査共通多値データC3、に分配するとき、C1+C2+2C3=C´が満たされることが好ましい。これは、入力値に対して出力される画像濃度を保存するためである。但し、例えば出力画像をより高濃度にしたい場合は、C1+C2+2C3>C´としてもよい。
【0045】
画像データ分配部1405で分配された第1走査用多値データ(C1、M1、Y1、K1)、第2走査用多値データ(C2、M2、Y2、K2)、および第1・第2走査共通多値データ(C3、M3、Y3、K3)は、それぞれ量子化処理部1406に入力される。本実施形態の量子化処理部1406では、第1走査用の2値データと、第2走査用の2値データと、第1・第2走査共通の2値データが、互いに排他になるように誤差拡散法による量子化処理を行う。排他になるようにとは、C1、C2およびC3が同じ画素で1(記録)とならないように処理することである。このような量子化処理により、量子化処理部1406からは、互いに排他な関係にある第1走査用の2値データ(量子化データ)、第2走査用の2値データ(量子化データ)および第1・第2走査共通の2値データ(量子化データ)が出力される。
【0046】
その後、第1走査用の2値データと第1・第2走査共通の2値データは、第1走査量子化データ合成部1407−1に入力され、加算(論理和)される。また、第2走査用の2値データと第1・第2走査共通の2値データは、第2走査量子化データ合成部1407−2に入力され、加算(論理和)される。このようにして得られる2つの2値データは、第1・第2走査共通の2値データで1(記録)とされた画素は互いに同値(記録)であるが、他の画素については排他な関係となる。
【0047】
その後、第1走査量子化データ合成部1407−1から出力された2値データは、ドット配置パターン展開処理1408−1に入力され、第1走査用のドットパターンを参照することにより、600dpi×1200dpiの2値データに変換される。また、第2走査量子化データ合成部1407−2から出力された2値データは、ドット配置パターン展開処理1408−2に入力され、第2走査用のドットパターンを参照することにより、600dpi×1200dpiの2値データに変換される。このとき参照するドットパターンは、図10(a)および(b)や図12(a)および(b)を利用することが出来る。
【0048】
ドット配置パターン展開処理1408−1および1408−2から出力された600dpi×1200dpiの2値データは各色の記録ヘッドに送信され、該当する記録走査で吐出が実行される。
【0049】
本実施形態によれば、画像データ分配部1405において多値データを第1・第2走査共通多値データへ分配する割合が、600dpi×600dpi単位での重複ドットを記録する画素の割合となる。つまり、画像データ分配部1405において第1・第2走査共通多値データへ分配する割合を調節することによって、重複ドットの割合をある程度制御することが出来る。
【0050】
一般に、記録位置ずれに伴う濃度の変動は、予め用意しておく重複ドットの数や割合に影響を受ける。例えば、重複ドットが予め全く用意されていない場合は、図1(a)および(b)で説明したように、画像濃度が低下する。しかし、例えば図15(a)のように全てのドットが重複ドットである状態で記録位置ずれが発生した場合は、図15(b)に示すように被覆面積は増え、画像濃度は上昇する。このように、記録位置ずれに伴う濃度の変動は予め用意する重複ドットの数や割合に影響を受ける。本実施形態によれば、記録位置ずれに伴って発生する濃度むらの程度に応じて重複ドットの数を調整することが可能となり、上記第1の実施形態に加え、更に積極的に記録位置ずれに伴う濃度むらを抑制することが可能となる。
【0051】
(第3の実施形態)
図16は、第3の実施形態における3パスのマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。多値画像データ入力部〜階調補正処理までの処理は、上記実施形態と同様であるのでここではブロックを省略している。
【0052】
本実施形態の画像データ分配部2301は、入力される多値データを7分割する。これより、第1走査多値データ、第2走査多値データ、第3走査多値データ、第1第2走査共通多値データ、第1第3走査共通多値データ、第2第3走査共通多値データ、第1第2第3走査共通多値データが生成される。このときの分配は、均等に7分割してもよいが、必ずしも均等でなくても良い。第2の実施形態と同様、入力値に対して出力される画像濃度を適度に調整するように多値データを分配すればよい。
【0053】
画像データ分配部2301で分配された7つの多値データは、互いに排他になるように誤差拡散法による量子化処理が行われる。その後、第1走査用の2値データ、第1・第2走査共通の2値データ、第1・第3走査共通の2値データおよび第1・第2・第3走査共通の2値データは、第1走査量子化データ合成部164−1に入力され、加算(論理和)される。また、第2走査用の2値データ、第1・第2走査共通の2値データ、第2・第3走査共通の2値データおよび第1・第2・第3走査共通の2値データは、第2走査量子化データ合成部164−2に入力され、加算(論理和)される。更に、第3走査用の2値データ、第1・第3走査共通の2値データ、第2・第3走査共通の2値データおよび第1・第2・第3走査共通の2値データは、第2走査量子化データ合成部164−3に入力され、加算(論理和)される。
【0054】
その後、第1走査量子化データ合成部164−1から出力された2値データは、ドット配置パターン展開処理165−1に入力され、第1走査用のドットパターンを参照することにより、600dpi×1200dpiの2値データに変換される。また、第2走査量子化データ合成部164−2から出力された2値データは、ドット配置パターン展開処理165−2に入力され、第2走査用のドットパターンを参照することにより、600dpi×1200dpiの2値データに変換される。更に、第3走査量子化データ合成部164−3から出力された2値データは、ドット配置パターン展開処理165−3に入力され、第3走査用のドットパターンを参照することにより、600dpi×1200dpiの2値データに変換される。
【0055】
図17(a)〜(c)は、本実施形態におけるレベル1に対する第1走査用のドットパターン(図17(a))、第2走査用のドットパターン(図17(b))および第3走査用のドットパターン(図17(c))を、それぞれ示す図である。第1走査用のドットパターンは、2種類のパターンがx方向において1画素おきに交互に配列している。第2走査用のドットパターンは、2種類のパターンがx方向において2画素おきに交互に配置している。第3走査用のドットパターンは、第2走査用のドットパターンと同様に2種類のパターンがx方向に2画素おきに交互に配置しているが、その位相が半周期ずれている。このように本実施形態では、第1走査〜第3走査用のドットパターンで、配列状態が異なっている。
【0056】
図18(a)および(b)は、同一領域に対する第1走査〜第3走査用の量子化処理後の2値データが一様にレベル1であった場合の、記録媒体でのドットの記録状態を示す図である。両図において、白丸は1つのドットが単独で記録される単独ドット、斜線の丸は2つのドットが重複して記録された重複ドット、黒丸は3つのドットが重複して記録される重複ドットを夫々示している。個々の格子は600dpi×600dpi相当の1画素領域を示し、個々のドットは約40μmの径を有している。図18(a)は第1走査〜第3走査で記録するドット群との間に記録位置ずれが発生していない状態を示し、同図(b)は第3走査が第1および第2走査に対し、y方向に20μm程度の記録位置ずれが発生した場合を示している。
【0057】
記録位置ずれが発生していない図18(a)では、図17(a)〜(c)に従って、3回の走査でドットが配置されている。これに対し、第3走査の記録位置ずれが発生している図18(b)では、同図(a)で黒丸で示した3ドットの重複ドットが2ドットと1ドットに分離している。そして、この分離する数と等しい数だけ、2ドット(斜線丸)と1ドット(白丸)に分離していたドットが重複し、3ドットの重複ドット(黒丸)が生成されている。その結果、両図を比較しても、記録媒体を被覆する面積は、記録位置ずれが発生していない場合(図18(a))と、記録位置ずれが発生している場合(図18(b))とで殆ど変わっていない。すなわち、本実施形態によれば、図17(a)〜(c)で示したような異なるドットパターンを、第1〜第3の記録走査の夫々に宛がうことにより、記録位置ずれに伴う濃度むらが招致されない画像を出力することが可能となる。なお、上記では、第1走査と第2走査に対し第3走査の記録位置がずれる場合を例に説明したが、いずれの走査がたの2つの走査に対してずれる場合であっても、同様の結果を得ることが出来る。
【0058】
本実施形態においても、上記実施形態と同様、記録媒体に対する被覆面積が、記録位置ずれに係らず略一定に保たれるようなドットパターンであれば、どのようなドットパターンでも有効に用いることが出来る。
【0059】
図19(a)〜(c)は、本実施形態に採用可能な、レベル1に対する第1〜第3走査の別例を、図17(a)〜(c)と同様に示した図である。本例では図17(a)〜(c)と異なり、ドットパターンの配列をx方向のみでなくy方向にも変化させている。このようなドットパターンを用いても、記録媒体を被覆する面積を、記録位置ずれが発生していない場合と、記録位置ずれが発生している場合で変化させないようにすることが出来る。
【0060】
以上説明した第1〜第3の実施形態では2パスおよび3パスのマルチパス記録を例に説明を行って来たが、上記実施形態は無論4パス以上のマルチパス記録にも応用することが出来る。一般に、M回(M≧2)の走査で同一領域の画像を記録するMパス記録において、量子化処理後のM個の量子化データのそれぞれについて異なるドットパターンが用意されていれば、上記実施形態の効果を発揮することが出来る。第2、第3実施形態の場合は、多値データをマルチパス数Mよりも大きな値であるN個に分割し、N個の多値データを夫々量子化した後にこれらを加算し合ってM個の量子化データを得ることになる。
【0061】
(第4の実施形態)
図20は、第4の実施形態における2パスのマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。多値画像データ入力部201〜階調補正処理204までの処理は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0062】
本実施形態において、階調補正処理が施された256値の多値データ(C´M´Y´K´)は、分配されることなく量子化処理205に入力され、レベル0〜レベル2の値を有する3値データ(C″M″Y″K″)に量子化される。このときの量子化の手法は一般的な多値誤差拡散処理を用いることが出来る。その後量子化された3値データ(C″M″Y″K″)は、パス分離+ドット配置パターン処理206へ入力される。
【0063】
パス分離+ドット配置パターン処理206では、予め用意した第1走査用のテーブルと第2走査用のテーブルを参照することにより、入力された3値データから各走査でドットを記録する位置を決定する。
【0064】
図21(a)および(b)は、本実施形態に使用可能な第1走査用のテーブル(図21(a))と第2走査用のテーブル(図21(b))を示す図である。図において、個々の格子は、600dpi×600dpiの1画素領域を示しており、各テーブルは、600dpi×600dpiの画素について4画素×4画素に対応する領域を有している。各テーブルは、1つの画素につき2ビットのパラメータで構成され、上位ビットがその画素のマスクデータを示し、下位ビットがその画素のドットパターンを示している。このようなテーブルは、予め装置内のメモリ3003に格納されている。
【0065】
図22(a)および(b)は、本実施例で使用する上位ビットが示すマスクデータの内容と、下位ビットが示す配置パターンの内容を夫々示す図である。図22(a)を参照するに、本実施例のマスクは、上位ビットが0である場合に設定されるマスク0と、上位ビットが1である場合に設定されるマスク1の2つが用意されている。そして、それぞれのマスクは、ドットの記録を許容する(1)あるいは許容しない(0)を、画素が有する3値データの値によって独立に定めている。例えば、3値データの値がレベル1の場合、マスク0ではドットの記録を許容しない(0)がマスク1では許容する(1)。3値データの値がレベル0の場合、マスク0およびマスク1共にドットの記録を許容しない(0)が、3値データの値がレベル2の場合、マスク0およびマスク1共にドットの記録を許容する(1)。
【0066】
一方、図22(b)は、ドットが記録される場合の記録位置を示すドットパターンである。テーブルパラメータの下位ビットが0である場合に設定されるパターン0は、y方向2画素×x方向1画素に並列する600dpi×1200dpiの2画素のうち、上の画素にドットを記録することを示す。一方、テーブルパラメータの下位ビットが1である場合に設定されるパターン1は、上記2画素のうち、下の画素にドットを記録することを示す。
【0067】
図23(a)〜(c)は、図21(a)および(b)で示したテーブルを用いた場合の、パス分離+ドット配置パターン処理206におけるデータ変換の様子を示す図である。図23(a)は量子化処理205から出力された3値データの例、同図(b)および(c)は当該3値データと図21(a)および(b)で示したテーブルから得られる第1および第2走査のドットパターンを夫々示している。量子化処理205から出力された3値データにおいて、レベル0〜レベル2が図21(a)のようにある程度均等に配置されている場合、第1走査のドットパターンも第2走査のドットパターンも適度にドットが分散される。その結果、所々に第1走査と第2走査の両方でドットが重複して記録される画素が生じ、上記時実施形態と同様、記録位置ずれが発生した場合であっても、記録媒体に対する被覆率を一定範囲に維持することが可能となる。
【0068】
図24(a)〜(c)は、図21(a)および(b)で示したテーブルを用いた場合の、パス分離+ドット配置パターン処理206におけるデータ変換の別例を示す図である。図24(a)は量子化処理205から出力された3値データの例であり、ここでは、全ての画素がレベル2の値を有している。このような入力値の場合、第1および第2走査のドットパターンは、図24(b)および(c)のようになる。このように、量子化処理205から出力された3値データが全てレベル2(最高濃度値)である場合、第1走査のドットパターンも第2走査のドットパターンも全ての画素にドットが記録される。但し、実際にドットが記録される1200dpi×600dpiの画素位置が、第1走査と第2走査で独立に定められているので、第1走査と第2走査の両方でドットが重複して記録される画素と、第1走査と第2走査の片方でドットが記録される画素が、混在する。その結果、上記時実施形態と同様、記録位置ずれが発生した場合であっても、記録媒体に対する被覆率を一定範囲に維持することが可能となり、記録位置ずれに伴う濃度むらを抑制することが出来る。
【0069】
以上説明した第4の実施形態では2パスのマルチパス記録を例に説明を行って来たが、上記実施形態は無論3パス以上のマルチパス記録にも応用することが出来る。M回(M≧3)の走査で同一領域の画像を記録するMパス記録の場合、パラメータの内容が互いに異なるM個のテーブルを予め用意し、このようなM個のテーブルのそれぞれを量子化処理後の量子化データに対応させてM個の2値データを生成すればよい。
【0070】
なお、以上の実施形態では、主に搬送方向(y方向)の記録位置ずれに強いドットパターンについて説明したが、本発明は主走査方向への記録位置ずれにも無論対応することが出来る。このとき、上記実施形態では、y方向にのみ記録解像度を1200dpiとする構成としたが、より主走査方向の記録位置ずれへの耐性を高めるために、はx方向の記録解像度も1200dpiとするのが効果的である。
【0071】
但しこのような解像度の値や記録するドットの大きさは、上記値に限定されるものではない。本発明の効果は、記録位置ずれが発生しない場合と発生した場合とで記録媒体に対する被覆率が然程変化しなければ、発揮できる。よって、解像度の値や記録するドットの大きさは、両者の値が互いに関連付けて定められていれば、特に限定されるものではない。無論、ドットパターンの大きさも、上記実施形態のように4画素×4画素領域に限るものではない。
【0072】
また、上記実施形態得では、量子化方法として誤差拡散を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、記録解像度に対応した最終的な2値化の際にドットパターンを用いるものであれば良く、それ以前の量子化処理については、誤差拡散のほか、ディザ法など様々な手法を用いることが出来る。
【符号の説明】
【0073】
85 画像データ分配部
86−1 86−2 量子化部
87−1 87−2 ドット配置パターン展開部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドットを記録する記録ヘッドを記録媒体の同一領域に対しM回ずつ走査させることにより、前記記録媒体に画像を記録するための画像処理を実行する画像処理装置であって、
前記同一領域に対応する多値の画像データをM個に分配してM個の多値データを生成する分配手段と、
前記M個の多値データをそれぞれ量子化することによってM個の量子化データを生成する量子化手段と、
記録解像度に対応する個々の画素へのドットの記録あるいは非記録が前記量子化データの値に応じて定められたドットパターンを参照することにより、前記M個の量子化データそれぞれを、前記量子化データよりも高い解像度の2値データに変換する2値化手段と
を備え、
前記ドットパターンは、前記量子化データの値が0の場合を除く少なくとも1つの値において、前記M個の量子化データのそれぞれに対し異なるパターンとなるように用意されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記量子化手段は、前記M個の多値データを誤差拡散法によって量子化することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記M回の走査のうち第1走査のための前記ドットパターンと第2走査のための前記ドットパターンは、前記第1走査と第2走査の記録位置ずれに係らず、ドットの被覆面積が略一定に保たれるドットパターンであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
ドットを記録する記録ヘッドを記録媒体の同一領域に対しM回ずつ走査させることにより、前記記録媒体に画像を記録するための画像処理を実行する画像処理装置であって、
前記同一領域に対応する多値の画像データをN(>M)個に分配してN個の多値データを生成する分配手段と、
前記N個の多値データをそれぞれ量子化することによってN個の量子化データを生成する量子化手段と、
前記N個の量子化データを加算してM個の量子化データを生成する手段と、
記録解像度に対応する個々の画素へのドットの記録あるいは非記録が前記量子化データの値に応じて定められたドットパターンを参照することにより、前記M個の量子化データそれぞれを、前記量子化データよりも高い解像度の2値データに変換する2値化手段と
を備え、
前記ドットパターンは、前記M個の量子化データのそれぞれに対し異なるパターンとなるように独立に用意されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
前記量子化手段は、前記N個の量子化データが互いに排他となるように前記N個の多値データをそれぞれ量子化することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
ドットを記録する記録ヘッドを記録媒体の同一領域に対しM回ずつ走査させることにより、前記記録媒体に画像を記録するための画像処理を実行する画像処理装置であって、
前記同一領域に対応する多値の画像データを量子化することによって量子化データを生成する量子化手段と、
前記M回の走査それぞれに対応して用意されたM個のテーブルを参照することにより、前記量子化データを、前記量子化データよりも高い解像度のM個の2値データに変換する2値化手段と
を備え、
前記テーブルは、記録解像度に対応する個々の画素へのドットの記録あるいは非記録が前記量子化データの値に応じて設定されるようなパラメータからなるテーブルであり、前記M個のテーブルは互いに異なる内容のパラメータから構成されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
前記量子化手段は、前記多値データを誤差拡散法によって量子化することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
ドットを記録する記録ヘッドを記録媒体の同一領域に対しM回ずつ走査させることにより、前記記録媒体に画像を記録するための画像処理方法であって、
前記同一領域に対応する多値の画像データをM個に分配してM個の多値データを生成する分配工程と、
前記M個の多値データをそれぞれ量子化することによってM個の量子化データを生成する量子化工程と、
記録解像度に対応する個々の画素へのドットの記録あるいは非記録が前記量子化データの値に応じて定められたドットパターンを参照することにより、前記M個の量子化データそれぞれを、前記量子化データよりも高い解像度の2値データに変換する2値化工程と
を有し、
前記ドットパターンは、前記M個の量子化データのそれぞれに対し異なるパターンとなるように独立に用意されていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
ドットを記録する記録ヘッドを記録媒体の同一領域に対しM回ずつ走査させることにより、前記記録媒体に画像を記録するための画像処理方法であって、
前記同一領域に対応する多値の画像データをN(>M)個に分配してN個の多値データを生成する分配工程と、
前記N個の多値データをそれぞれ量子化することによってN個の量子化データを生成する量子化工程と、
前記N個の量子化データを加算してM個の量子化データを生成する工程と、
記録解像度に対応する個々の画素へのドットの記録あるいは非記録が前記量子化データの値に応じて定められたドットパターンを参照することにより、前記M個の量子化データそれぞれを、前記量子化データよりも高い解像度の2値データに変換する2値化工程と
を有し、
前記ドットパターンは、前記M個の量子化データのそれぞれに対し異なるパターンとなるように独立に用意されていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
ドットを記録する記録ヘッドを記録媒体の同一領域に対しM回ずつ走査させることにより、前記記録媒体に画像を記録するための画像処理方法であって、
前記同一領域に対応する多値の画像データを量子化することによって量子化データを生成する量子化工程と、
前記M回の走査それぞれに対応して用意されたM個のテーブルを参照することにより、前記量子化データを、前記量子化データよりも高い解像度のM個の2値データに変換する2値化工程と
を有し、
前記テーブルは、記録解像度に対応する個々の画素へのドットの記録あるいは非記録が前記量子化データの値に応じて設定されるようなパラメータからなるテーブルであり、前記M個のテーブルは互いに異なる内容のパラメータから構成されていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
ドットを記録するための記録ヘッドを記録媒体の同一領域に対し少なくとも2回ずつ走査させることにより、前記記録媒体に画像を記録するための画像処理を実行する画像処理装置であって、
前記同一領域に対応する多値の画像データに基づいて第1の走査に対応する第1の多値データおよび第2の走査に対応する第2の多値データを生成する生成手段と、
前記第1の多値データおよび第2の多値データをそれぞれ量子化することによって第1の量子化データおよび第2の量子化データを生成する量子化手段と、
前記量子化データの値に応じて画素ごとにドットの記録あるいは非記録が定められたドットパターンを用いて、前記第1の量子化データおよび第2の量子化データを前記第1の2値データおよび第2の2値データに変換する2値化手段と
を備え、
前記第1の量子化データを前記第1の2値データに変換するための前記ドットパターンと前記第2の量子化データを前記第2の2値データに変換するための前記ドットパターンは、前記第1、第2の量子化データの値が0の場合を除く少なくとも1つの値において、異なるパターンであることを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−61667(P2012−61667A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206678(P2010−206678)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】