説明

画像処理装置

【課題】RFIDタグへのアクセスエラーを低減させることが可能な画像処理装置を提供すること。
【解決手段】MFP100は,印刷対象の画像および書込み対象のデータを取得する(S101)。その後,画像形成条件を取得し(S102),印刷要求速度Vpを取得する(S103)。また,RFIDタグへの書込条件を取得し(S105),書込要求速度Vrを取得する(S106)。そして,Vr<Vpの関係にあるか否か,すなわちRFIDタグにアクセスするにあたって,アクセス時間が長いか否かを判断し(S107),アクセス時間が長いと判断された場合(S107:YES)には,用紙搬送速度VcをVrに,すなわち通過時間が増大するように搬送制御を変更する(S108)。その後,その用紙搬送速度にてRFIDタグにデータを書き込む(S109)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像の読み取り機能と画像の形成機能との少なくとも一方を有する画像処理装置に関する。さらに詳細には,RFID(Radio Frequency IDentification)タグ等の記憶媒体(以下,便宜上「RFIDタグ」と称する)にアクセス可能な画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,RFIDタグが添付された用紙(以下,「RFID用紙」とする)が提供されている。RFID用紙を利用する画像処理装置は,RFIDタグから情報を読み取る,あるいはRFIDタグに情報を書き込む,すなわちRFIDタグにアクセス可能なアクセス装置を内蔵し,画像処理が行われるRFID用紙の搬送過程でRFIDタグにアクセスする。
【0003】
RFIDタグにアクセス可能な画像処理装置では,RFIDタグへの読み書きが失敗することも考えられる。そこで,例えば,特許文献1には,非接触ICチップにデータの読み書きを行うリーダライタを備え,非接触ICチップに正常に読み書きできなかった場合に,用紙を反転して再給紙する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−110802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の画像処理装置には,次のような問題があった。すなわち,特許文献1のように,RFID用紙を再給紙してリトライしたとしても必ずしも成功するとは限らない。例えば,大量のデータ処理に伴う処理遅れについては,同じ条件でリトライしても再度エラーになることが予測される。
【0006】
本発明は,前記した従来の画像処理装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,RFIDタグへのアクセスエラーを低減させることが可能な画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた画像処理装置は,シートを搬送する搬送手段と,搬送手段にて搬送されるシートに添付された記憶媒体にアクセスするアクセス手段と,アクセス手段のアクセス開始からアクセス完了までに要する時間であるアクセス時間の長短を判断する判断手段と,判断手段にてその記憶媒体へのアクセス時間の長短を判断し,アクセス時間が長いと判断された場合には,アクセス時間が短いと判断される場合と比較して,記憶媒体を有するシートがアクセス手段のアクセス範囲を通過する時間である通過時間が増大するように,搬送手段の制御を変更する変更手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の画像処理装置は,シートに添付された記憶媒体(RFIDタグ等)にアクセスする機能を有している。「シート」には,読み取り対象の原稿,被書込み対象の用紙が含まれる。また,「アクセス」には,記憶媒体からの情報の読出し,記憶媒体への情報の書込み,あるいはその両方が含まれる。そして,本発明の画像処理装置は,記憶媒体にアクセスするにあたって,アクセス時間の長短を判断し,アクセス時間が長いと判断された場合には通過時間が増大するように搬送制御を変更する。アクセス時間の長短は,例えば,記憶媒体にアクセスするデータ量,通信能力(通信速度,通信範囲等)を基に判断できる。つまり,アクセス時間の長短は,アクセス時間を取得して,その時間の長短を直接的に判断してもよいし,シート搬送速度等のアクセス時間の長短を判断するのと等価なパラメータを取得して,そのパラメータの値から間接的に判断してもよい。
【0009】
すなわち,本発明の画像処理装置は,アクセス時間が長いと判断される場合に,シートの通過時間が長くなるように搬送制御を変更する。これにより,アクセス手段が実際に記憶媒体にアクセス可能な時間が長くなり,処理遅れによるアクセス失敗を低減することが期待できる。なお,通過時間が長くなる搬送制御の変更には,シートの搬送速度の変更や,レジストローラでの待機時間の変更が適用可能である。
【0010】
また,本発明の画像処理装置の判断手段は,判断要素として,アクセスするデータ量,記憶媒体の通信速度,アクセス手段の通信速度のうち,少なくとも1つを用いるとよい。これらを判断要素とすることで,より適切な判断が期待できる。なお,判断要素の取得は,自動であっても手動であってもよい。
【0011】
また,本発明の画像処理装置は,アクセス手段によるアクセス結果を,判断要素と関連付けて履歴情報として記憶する記憶手段を有し,判断手段は,履歴情報を用いてアクセス時間の長短を判断するとよい。すなわち,アクセス結果(例えば,アクセス完了の有無,アクセス時間の実測値)を記憶し,後続のシートでの判断で利用することで,実際の環境に即したより適切な判断ができる。
【0012】
また,本発明の画像処理装置の変更手段は,通過時間がアクセス時間と等しくなるように搬送手段の制御を変更するとよい。このように搬送手段の制御を変更することで,時間の無駄が少なく,スループットの向上が期待できる。
【0013】
また,本発明の画像処理装置は,変更手段が前記搬送手段の制御を変更する際に参照する補正情報を記憶する補正記憶手段と,記憶媒体へのアクセスが正常に完了しなかった場合に,後続のシートについて通過時間がさらに増大するように,補正情報を更新する更新手段とを有するとよい。すなわち,搬送制御の変更後,必ずしもアクセスが正常完了するとは限らない。そのため,アクセスに失敗した際に,補正情報を更新し,以降の搬送では更新された補正情報を使って通過時間をより長くする。これにより,より確実にアクセス失敗を低減できる。
【0014】
また,上記の画像処理装置は,アクセス手段のアクセスが正常に完了しなかった理由がアクセス時間の不足によるものであるか否かを判断する理由判断手段を備え,更新手段は,理由判断手段にてアクセス時間の不足によるものと肯定判断された場合に補正情報を更新し,否定判断された場合には補正情報を更新しないとよい。すなわち,記憶媒体の記憶容量不足等が原因の場合には,搬送制御を変更しても意味がない。そのため,アクセス時間の不足に限り搬送制御を実施することで,より適切な運用を図ることができる。アクセス時間の不足の判断は,例えば,アクセス完了後に記憶媒体から発信される正常完了信号を受信したか否かによって判断できる。
【0015】
また,本発明の画像処理装置の搬送手段は,アクセス手段のアクセス範囲を通過したシートを再度そのアクセス範囲に戻すことが可能であり,変更手段は,シートがアクセス手段のアクセス範囲を通過する回数を考慮して,搬送手段の制御を変更するとよい。例えば,両面印刷や両面読み取りのように,アクセス範囲を通過したシートを再度そのアクセス範囲に戻す構成を有する場合には,記憶媒体へのアクセス機会が複数回ある。そこで,記憶媒体への分割書込みあるいは分割読出しを行うことで搬送制御を変更しなくてもアクセスが完了する可能性がある場合には,アクセス回数を考慮して搬送制御の変更を行うか否かを決定し,無駄に搬送性能を低下させない構成とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,RFIDタグへのアクセスエラーを低減させることが可能な画像処理装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態にかかる複合機の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態にかかる複合機の,画像読取部の概略構成を示す図である。
【図3】実施の形態にかかる複合機の,画像形成部の概略構成を示す図である。
【図4】実施の形態にかかる複合機の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】プリント処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】データ量と搬送速度との関係を記憶するデータベースの一例である。
【図7】補正回数と補正係数との関係を記憶するデータベースの一例である。
【図8】データ量と補正回数との関係を記憶するデータベースの一例である。
【図9】補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】RFIDタグからデータを読み出す際の,想定データ量の設定画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明にかかる画像処理装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,RFIDタグにアクセスする機能を有する複合機(MFP:Multi Function Peripheral )に本発明を適用したものである。
【0019】
[MFPの全体構成]
実施の形態のMFP100は,図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部10と,原稿の画像を読み取る画像読取部20とを備えている。また,画像読取部20の前面側には,液晶ディスプレイからなる表示部41と,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群42とを備えた操作パネル40が設けられ,この操作パネル40により動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。
【0020】
[画像読取部の構成]
画像読取部20は,原稿を読み取って画像データを作成する。具体的に本形態の画像読取部20は,図2に示すように,原稿の画像を読み取るスキャナ部21と,原稿の自動搬送を行うADF(Auto Document Feeder:自動原稿供給装置)22(搬送手段の一例)とを備えている。スキャナ部21は,その上面に位置する透明なプラテンガラス23,24と,その内部に位置するイメージセンサ25とを備えている。
【0021】
ADF22は,読み取り前の原稿を載置する原稿トレイ221と,読み取り後の原稿を載置する排出トレイ222とを備えている。ADF22は,原稿トレイ221に載置された原稿を1枚ずつ取り出し,その原稿の読み取りが行われた後,その原稿を排出トレイ222上に排出する。なお,ADF22は,スキャナ部21の上方を開閉可能に覆い,プラテンガラス24を含む原稿載置台26上に原稿が載置された場合に,その原稿に対する原稿押さえカバーとしての機能も兼ねる。
【0022】
原稿の読取方式としては,フラットベッド(原稿固定走査)方式と,ADF(原稿移動走査)方式とがある。フラットベッド方式の場合,原稿を1枚ずつプラテンガラス24(以下,「FBガラス24」とする)上に載置する。その状態で,イメージセンサ25が副走査方向(主走査方向に直交する方向,図2の矢印A方向)に移動し,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。一方,ADF方式の場合,原稿を纏めて原稿トレイ221に載置する。そして,イメージセンサ25がプラテンガラス23(以下,「ADFガラス23」とする)に対向する位置に移動し,固定される。その状態で,原稿がADFガラス23に対向する位置(読取位置)に搬送され,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。
【0023】
続いて,ADF22について詳説する。ADF22の内部には,各種のローラよって原稿トレイ221と排出トレイ222とを連結する略U字形状の搬送路27が設けられている。具体的に,搬送路27は,原稿トレイ221からADF22内に取り込まれ,幾つものローラを経由してUターンし,ADFガラス23上を通って排出トレイ222に向かう経路を構成している。そして,ADFガラス23上の通過時に,イメージセンサ25によって原稿の画像が読み取られる。
【0024】
さらに,ADF22内には,原稿の両面の画像を読み取るための両面読取機構が備えられている。搬送路28は,一方の面の画像読み取りが行われた原稿の,他方の面の画像読み取りが行われるように,原稿を反転して読取位置に再搬送するための搬送経路である。また,ADF22のケースに設けられたスリット29は,原稿の一部をADF22外に送り出し,原稿を反転させるために設けられている。
【0025】
具体的に,ADF22の内部には,スイッチバックローラ281と,第1案内フラップ282と,第2案内フラップ283とが設けられ,搬送路28を構成している。すなわち,搬送路28は,第1案内フラップ282から第2案内フラップ283を経由してスイッチバックローラ281に向かう経路になる。
【0026】
ADF22による両面読み取りでは,原稿トレイ221から送り出され,各種のローラを経由し,読取位置にて表面の画像が読み取られる。その後,原稿を,第1案内フラップ282によって搬送路28に案内し,第2案内フラップ283を経由してスイッチバックローラ281まで搬送する。そして,スイッチバックローラ281にて,原稿の搬送方向を反転させる。このとき,第1案内フラップ282および第2案内フラップ283の向きを切り換える。そして,原稿を,第2案内フラップ283にて再び搬送路27に搬送する。これにより,原稿は,表裏が反転され,裏面の画像が読み取られることになる。その後,原稿を,第1案内フラップ282を経由して排出トレイ222に排出する。
【0027】
また,ADF22は,所定範囲内に存在するRFIDタグを検知し,そのRFIDタグに対してデータの読出しおよび書込みを行うことが可能なリード/ライト装置51(以下,「R/W装置51」とする。アクセス手段の一例)を備えている。R/W装置51は,用紙搬送路27を通過する原稿に添付されたRFIDタグにアクセス可能な範囲に配置される。言い換えると,用紙搬送路27は,その一部がR/W装置51のアクセス範囲に含まれる。また,R/W装置51は,反転前の原稿の他,反転後の原稿にもアクセス可能な範囲に配置される。そのため,両面読み取りを行う場合には,原稿に添付されたRFIDタグにアクセスする機会が2回ある。
【0028】
[画像形成部の構成]
画像形成部10は,パーソナルコンピュータ(PC)等の情報端末装置から送られてくる画像データや画像読取部20で読み取った原稿の画像データを基に画像を形成し,当該画像を用紙に転写する。本形態の画像形成部10は,周知の電子写真方式によって画像を形成するものであり,図3に示すように,画像を形成するプロセス部50と,未定着のトナー像を定着させる定着装置8と,画像形成前の用紙を載置する給紙カセット91と,画像形成後の用紙を載置する排紙トレイ92,93とを備えている。
【0029】
画像形成部10(搬送手段の一例)内には,底部に位置する給紙カセット91に収容された用紙が,給紙ローラ73,レジストローラ76,プロセス部50,定着装置8を通り,排紙ローラ74を介して上部の排紙トレイ92へ,あるいは排紙ローラ75を介して排紙トレイ93へ導かれるように,略S字形状の搬送経路71が設けられている。すなわち,画像形成部10は,給紙カセット91に載置されている用紙を1枚ずつ取り出し,その用紙をプロセス部50に搬送し,プロセス部50にて形成されたトナー像をその用紙に転写する。さらに,トナー像が転写された用紙を定着装置8に搬送し,トナー像をその用紙に熱定着させる。そして,定着後の用紙を排紙トレイ92あるいは排紙トレイ93に排出する。
【0030】
プロセス部50は,感光体1と,感光体1の表面を一様に帯電する帯電装置2と,感光体1の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光装置3と,静電潜像に対してトナーによる現像を行う現像装置4と,感光体1上のトナー像を用紙に転写させる転写装置5と,感光体1上の残留トナーを除去するクリーニングブレード6とを有している。
【0031】
プロセス部50では,感光体1の表面が帯電装置2によって一様に帯電される。その後,露光装置3からの光により露光され,用紙に形成すべき画像の静電潜像が形成される。次いで,現像装置4を介して,トナーが感光体1に供給される。これにより,感光体1上の静電潜像は,トナー像として可視像化される。
【0032】
さらに,画像形成部10内には,用紙の両面に印刷を行うための両面印刷機構が備えられている。搬送路72は,一方の面に印刷が行われた用紙の,他方の面にも印刷が行われるように,用紙を反転してプロセス部50に再搬送するための搬送経路である。
【0033】
画像形成部10による両面印刷では,表面の搬送路(正搬送路)である搬送路71を経由して表面に画像形成された用紙を排紙ローラ74で停止させ,用紙の搬送方向を反転させる。そして,その用紙を排紙ローラ74から再搬送路である搬送路72に搬送し,プロセス部50と給紙カセット91との間の位置を通過させ,再度プロセス部50まで導く。これにより,用紙の表裏が反転され,裏面に画像形成されることになる。
【0034】
また,画像形成部10は,所定範囲内に存在するRFIDタグを検知し,そのRFIDタグに対してデータの読出しおよび書込みを行うことが可能なR/W装置52(アクセス手段の一例)を備えている。R/W装置52は,搬送路71を通過するRFID用紙のRFIDタグにアクセス可能な範囲に配置される。言い換えると,搬送路71は,その一部がR/W装置52のアクセス範囲に含まれる。また,R/W装置52は,反転前の用紙の他,反転後の用紙にもアクセス可能な範囲に配置されている。そのため,両面印刷を行う場合には,用紙に添付されたRFIDタグにアクセスする機会が2回ある。
【0035】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,図4に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM34と,ASIC35と,ネットワークインタフェース36と,FAXインタフェース37とを備えた制御部30を有している。
【0036】
CPU31は,MFP100における画像読取機能,画像形成機能等の各種機能を実現するための演算を実行し,制御の中枢となるものである。ROM32には,MFP100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。NVRAM(Non Volatile RAM)34は,不揮発性を有する記憶手段であって,各種設定ないし画像データ等を保存する記憶領域として利用される。
【0037】
CPU31は,ROM32から読出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,MFP100の各構成要素(例えば,画像形成部10を構成する露光装置の点灯タイミング,用紙の搬送路を構成する各種ローラの駆動モータ(不図示),画像読取部20を構成するイメージセンサユニットの移動用モータ(不図示))を,ASIC35を介して制御する。
【0038】
ネットワークインターフェース36は,インターネット等のネットワークに接続され,PC等の情報処理装置との接続を可能にしている。FAXインターフェース37は,電話回線に接続され,相手先のFAX装置との接続を可能にしている。そして,ネットワークインターフェース36やFAXインターフェース37を介してジョブのやりとりを行うことができる。
【0039】
[プリント処理]
続いて,MFP100におけるプリント処理(搬送手段,アクセス手段,判断手段,変更手段,更新手段,理由判断手段の一例)について,図5のフローチャートを参照しつつ説明する。本プリント処理では,用紙への画像形成に加え,その用紙に添付されたRFIDタグへデータの書込みを行うことができる。なお,本処理は,印刷指示を契機に実行される。
【0040】
まず,印刷対象となるジョブの画像データやRFIDタグに書き込むデータを取得する(S101)。画像データは,画像読取部20のスキャナ部21で読み取ったものであってもよいし,PC等から送られてきたものであってもよい。また,RFIDタグに書き込むデータは,画像読取部20のR/W装置51で読出したものであってもよいし,PC等から送られてきたものであってもよく,必要に応じて取得する。
【0041】
次に,印刷対象となるジョブの画像形成条件を取得する(S102)。画像形成条件は,用紙上に画像を記録するための各種条件であり,例えば,用紙タイプ,印刷品質,カラーかモノクロかの設定が該当する。
【0042】
次に,S102で取得した画像形成条件を基に,画像形成に必要な用紙搬送速度である印刷要求速度Vpを取得する(S103)。MFP100では,画像形成条件に対応する用紙搬送速度が記憶されているデータベースを備え,S102で取得した画像形成条件に応じて適切な用紙搬送速度を取得し,補正係数を掛けたものを印刷要求速度とする。この他,S102で取得した画像形成条件をパラメータとして,演算によって印刷要求速度を取得してもよい。
【0043】
次に,RFIDタグへの書込みが必要なジョブであるか否かを判断する(S104)。RFIDタグへの書込みが必要なければ(S104:NO),用紙搬送速度Vcを印刷要求速度Vpに設定し,用紙の搬送を開始する(S121)。そして,プロセス部50にてその用紙上に画像を形成し(S111),本処理を終了する。
【0044】
一方,RFIDタグへの書込みが必要であれば(S104:YES),RFID書込条件を取得する(S105)。RFID書込条件は,R/W装置52によってRFIDタグにデータを書き込むための各種条件であり,例えば,R/W装置52やRFIDタグの通信性能,書込みデータ量が該当する。
【0045】
次に,S105で取得したRFID書込条件を基に,RFIDタグへの書込みに必要な用紙搬送速度である書込要求速度Vrを取得する(S106)。具体的にS106では,R/W装置52の通信性能,RFIDタグの通信性能,書込みデータ量のうち,少なくとも1つを利用して,書込要求速度Vrを取得する。
【0046】
例えば,MFP100では,図6に示すような,データ量とそのデータ量を書き終えるために要する用紙搬送速度との関係を記憶するデータベース321と,図7に示すような,補正回数と補正係数との関係を記憶するデータベース322とをROM32に備え,さらに図8に示すような,データ量と補正回数との関係を記憶するデータベース341(記憶手段,補正記憶手段の一例)をNVRAM34に備えている。データベース321,322は,R/W装置52のあらかじめ記憶されているものであり,データベース341は,運用中に補正回数が随時更新される。出荷段階での補正回数はすべて0が記憶されている。
【0047】
そして,書込要求速度Vrを取得する際には,S105で取得した書込みデータ量を基にデータベース321から用紙搬送速度を取得する。また,同じくS105で取得した書込みデータ量を基にデータベース341から補正回数を取得し,その補正回数を基にデータベース322から補正係数を取得する。そして,用紙搬送速度と補正係数とを掛け合わせ,その結果を書込要求速度Vrとする。この他,S105で取得したRFID書込条件をパラメータとして,演算によって書込要求速度を取得してもよい。
【0048】
次に,S103にて取得した印刷要求速度Vpと,S106にて取得した書込要求速度Vrとを比較し,次の式(1)の関係を満たすか否かを判断する(S107)。
Vr<Vp (1)
【0049】
式(1)の関係を満たす場合には(S107:YES),用紙搬送速度Vcを書込要求速度Vrに設定する(S108)。すなわち,書込要求速度Vrが印刷要求速度Vpよりも遅いことから,仮に用紙搬送速度Vcを印刷要求速度Vpに設定してしまうと,RFIDタグへのアクセス時間が十分に確保されず,処理遅れが発生することが予測される。そこで,用紙搬送速度Vcを書込要求速度Vrに設定し,RFIDタグへのアクセス時間を確保し,処理遅れを回避する。
【0050】
一方,式(1)の関係を満たさない場合には(S107:NO),用紙搬送速度Vcを印刷要求速度Vpに設定する(S131)。すなわち,書込要求速度Vrが印刷要求速度Vpよりも速いことから,用紙搬送速度Vcを印刷要求速度Vpに設定したとしても,アクセス時間は十分に確保される。そこで,用紙搬送速度Vcを印刷要求速度Vpに設定し,スループットを低下させない。
【0051】
S108あるいはS131にて用紙搬送速度Vcを設定した後,RFID用紙の搬送を開始し,RFIDタグへのデータ書込みを開始する(S109)。具体的には,RFID用紙の搬送が開始されると,R/W装置52からアクセス許可信号が発信され,RFID用紙がR/W装置52のアクセス範囲に進入すると,RFIDタグがそのアクセス許可信号に対する応答信号を発信する。この応答信号の受信を契機に,RFIDタグへのデータの書込みを開始する。
【0052】
RFIDタグへのデータ書込みを開始した後,S106の書込要求速度Vrの取得時に利用した補正係数を更新する補正処理を行う(S110)。補正処理後は,プロセス部50にてその用紙上に画像を形成し(S111),本処理を終了する。
【0053】
図9は,S110の補正処理の手順を示すフローチャートである。まず,S109での全データの書込みが完了したか否かを判断する(S151)。書込みの完了は,例えば書込み完了時にRFIDタグから発信される完了信号を受信したか否かによって判断する。書込みが完了した場合には(S151:YES),補正係数の更新は行わず,本補正処理を終了する。
【0054】
書込みが完了しなかった場合には(S151:NO),書込みが完了しなかった原因がRFIDタグへのアクセス開始からアクセス完了までに要する時間であるアクセス時間の不足であるか否かを判断する(S161)。アクセス時間の不足は,所定時間内にRFIDタグから発信される完了信号を受信したか否かによって判断する。例えば,通信エラーの場合にはRFIDタグから発信されるエラー信号を受信することがある。また,例えば,RFIDタグが故障している場合には最初から書込許可信号に対する応答がない。このため,アクセス時間の不足と他のエラーとを区別することができる。
【0055】
アクセス時間の不足と判断した場合には(S161:YES),補正係数を更新する(S162)。具体的には,図8に示したデータベース341のうち,データの書込みを失敗したデータ量に対応する補正回数を1加算する。補正係数は,図7に示したように,補正回数が多くなるにつれて小さくなるように設定されている。そのため,補正回数を加算することにより,次回から同等のデータ量をRFIDタグに書き込む際には,今回よりも補正係数が小さくなる。その結果,書込要求速度Vrが遅くなる。つまり,より長いアクセス時間が確保される。よって,次回に同等のデータ量を書き込む際には,今回よりもRFIDタグの書込みが完了する確率が高まることが期待できる。
【0056】
一方,RFIDタグ容量不足,通信異常,RFIDタグ破損等,アクセス時間の不足以外と判断した場合には(S161:NO),アクセス時間を長くしたところでRFIDタグの書込みが完了する確率が高まることが期待できない。そのため,補正係数の更新は行わず,本補正処理を終了する。
【0057】
なお,本形態では,RFIDタグへのデータ書込み時に,用紙搬送速度Vcを調節しているが,データ読出し時であっても適用可能である。例えば,画像読取部20にて原稿を読み取る際にR/W装置51にて原稿に添付されているRFIDタグのデータを読み出す場合には,原稿の搬送開始前に,原稿読取に必要な原稿搬送速度である読取要求速度と,RFIDタグへの読出しに必要な原稿搬送速度である読出要求速度とを取得する。読出要求速度は,例えば,図10に示すような設定画面によってユーザにあらかじめ想定データ量を選択させ,そのデータ量に対応する原稿搬送速度を抽出することで取得できる。そして,S107以降の処理と同様に読取要求速度と読出要求速度を比較し,原稿搬送速度を設定する。これにより,RFIDタグへのアクセス時間を確保し,処理遅れを回避することが期待できる。
【0058】
また,MFP100は,両面印刷や両面読み取りが可能であり,これら両面処理が選択された場合には,RFIDタグに対してアクセス機会が2回ある。そのため,RFIDタグへの書込みあるいは読出しを2回に分割して行うことが可能であれば,分割したデータ量を基に書込要求速度Vrを取得するようにしてもよい。すなわち,アクセス回数を考慮して搬送制御を変更してもよい。
【0059】
以上詳細に説明したように本形態のMFP100は,画像形成条件を取得し,印刷要求速度Vpを取得している。また,RFIDタグへの書込条件を取得し,書込要求速度Vrを取得している。そして,RFIDタグにアクセスする前に,Vr<Vpの関係にあるか否かを判断している。すなわち,印刷要求速度Vpと書込要求速度Vrとを比較することで,アクセス時間が確保されているか否かを判断している。アクセス時間が確保されていないということはアクセス時間が長いということであり,VpとVrとを比較することはアクセス時間の長短を判断していることと等価である。そして,アクセス時間が長いと判断された場合には,用紙搬送速度VcをVrに,すなわち通過時間が増大するように搬送制御を変更している。これにより,R/W装置52がRFIDタグにアクセス可能な時間が長くなり,処理遅れによるアクセス失敗を低減することが期待できる。
【0060】
また,MFP100は,RFIDタグへの書込みが完了しなかった場合にカウントアップされる補正回数を,データベース341に記憶している。そして,この補正回数を基に,搬送制御の変更量を決定している。すなわち,先行するジョブのアクセス結果を記憶し,そのアクセス結果を後続のジョブで利用することで,実際の環境に即したより適切な判断ができる。また,補正回数に比例して用紙搬送速度を遅くしていることから,より確実にアクセス失敗を低減できる。
【0061】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,複合機(MFP)に限らず,コピー機,プリンタ,スキャナ,FAX装置等,画像処理機能を備えるものであれば適用可能である。また,画像形成部の画像形成方式は,電子写真方式に限らず,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0062】
また,実施の形態では,画像読取部20と画像形成部10とでともに両面での画像読み取りないし画像形成を可能にしているが,これに限るものではない。すなわち,片面の画像読み取りないし画像形成をサポートするのみであっても適用可能である。
【0063】
また,実施の形態では,画像形成とRFIDタグ書込みとの組み合わせや,原稿読取とRFIDタグ読出しとの組み合わせについて説明したが,画像形成とRFIDタグ読出しとの組み合わせや,原稿読取とRFIDタグ書込みとの組み合わせについても適用可能である。
【0064】
また,実施の形態では,アクセス時間の長短の判断として,印刷要求速度Vpと書込要求速度Vrとを算出して両者を比較しているが,これに限るものではない。例えば,アクセスするデータ量を取得し,そのデータ量が閾値よりも大きければアクセス時間が長いと判断してもよい。また,データ量,通信能力(通信速度,通信範囲等)を基にアクセス完了までに要するアクセス時間を算出した上でそのアクセス時間の長短を判断してもよい。また,アクセス時間の実測値をアクセスしたデータ量に関連付けて記憶し,後続のジョブでは記憶したデータ量を利用してアクセス時間の長短を判断してもよい。
【0065】
また,実施の形態では,書込プリント処理での用紙の通過時間を増大させる処理として,用紙の搬送速度を変更しているが,これに限るものではない。例えば,本形態の画像形成部10のように,用紙をレジストローラ76で一旦停止させ,用紙の搬送タイミングを調節するものであれば,レジストローラ76で停止する時間を長くするように変更してもよい。この場合,レジストローラ76での停止位置が,R/W装置52のアクセス範囲に含まれる。
【0066】
また,実施の形態では,RFIDタグへの書込みの後に用紙への画像形成を行っているが,順序は逆であってもよい。また,RFIDタグへの書込みと用紙への画像形成とを並行して行ってもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 画像形成部
20 画像読取部
30 制御部
40 操作パネル
41 表示部
51 R/W装置
52 R/W装置
100 MFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送手段と,
前記搬送手段にて搬送されるシートに添付された記憶媒体にアクセスするアクセス手段と,
前記アクセス手段のアクセス開始からアクセス完了までに要する時間であるアクセス時間の長短を判断する判断手段と,
前記判断手段にてその記憶媒体へのアクセス時間の長短を判断し,アクセス時間が長いと判断された場合には,アクセス時間が短いと判断される場合と比較して,記憶媒体を有するシートが前記アクセス手段のアクセス範囲を通過する時間である通過時間が増大するように,前記搬送手段の制御を変更する変更手段と,
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載する画像処理装置において,
前記判断手段は,判断要素として,アクセスするデータ量,記憶媒体の通信速度,前記アクセス手段の通信速度のうち,少なくとも1つを用いることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する画像処理装置において,
前記アクセス手段によるアクセス結果を,判断要素と関連付けて履歴情報として記憶する記憶手段を有し,
前記判断手段は,前記履歴情報を用いてアクセス時間の長短を判断することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記変更手段は,前記通過時間が前記アクセス時間と等しくなるように前記搬送手段の制御を変更することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記変更手段が前記搬送手段の制御を変更する際に参照する補正情報を記憶する補正記憶手段と,
前記記憶媒体へのアクセスが正常に完了しなかった場合に,後続のシートについて通過時間がさらに増大するように,前記補正情報を更新する更新手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載する画像処理装置において,
前記アクセス手段のアクセスが正常に完了しなかった理由がアクセス時間の不足によるものであるか否かを判断する理由判断手段を備え,
前記更新手段は,前記理由判断手段にてアクセス時間の不足によるものと肯定判断された場合に前記補正情報を更新し,否定判断された場合には前記補正情報を更新しないことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記搬送手段は,前記アクセス手段のアクセス範囲を通過したシートを再度そのアクセス範囲に戻すことが可能であり,
前記変更手段は,シートが前記アクセス手段のアクセス範囲を通過する回数を考慮して,前記搬送手段の制御を変更することを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−191147(P2010−191147A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34973(P2009−34973)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】