説明

画像処理装置

【課題】 カラースキャン機能を有する画像処理装置において、黒い文字/細線を純粋な黒信号に変換する黒文字処理機能や、読取った原稿がカラーかモノクロかを判定し、スキャンのカラーモードを切り替えるACS機能がある。単一の判定閾値では読取装置のばらつきに対して対応しきれないという課題がある。
【解決手段】 圧板読取り時ならびにADF読取り時それぞれにおいて、黒文字処理の感度とACS判定の感度をそれぞれ独立に設定できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原稿を読取り、原稿中の画素の有彩色/無彩色判定を行い、これを元に原稿中の黒い文字/細線に該当する画素信号を純粋な黒信号に変換する黒文字処理や、原稿のカラー/モノクロ判定を行う画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカラースキャン機能を有する画像処理装置においては
黒い文字/細線(以後黒文字)が記載されている原稿をカラースキャンする際に黒文字部分を判定し、該黒文字部分を純粋な黒信号に変換する黒文字処理機能がある。
【0003】
また、原稿をデジタル的に読取った読取画像の各画素について有彩色/無彩色の判定を行い、それらが原稿中(原稿の全体)に占める割合を元に、原稿のカラー/モノクロ判定を行うことでスキャンのカラーモードを切り替えるACS機能がある。ACSは、Auto Color Selectの略である。
【0004】
前者により、カラースキャン時の黒文字部の鮮鋭さが増し、高品質なカラースキャン画像を提供している。
【0005】
後者によりユーザーに煩雑なカラーモード設定をさせずとも最適なカラーモードでのスキャン画像を提供している。
【0006】
これらの機能はカラースキャンした画像データに対して、黒文字部分の判定や有彩色/無彩色の判定を画像処理によって実現している。
【0007】
しかし、これらの判定を特定の閾値に基づいて行っているが、ユーザーが所望する結果と必ずしも一致しないことがある。これは、原稿を読取るスキャナの光学特性や機械的なブレ等のデバイス特性のばらつきによるもの、また、閾値自体がユーザーの感覚に対して元々ずれているなどが要因となる。
【0008】
このようなユーザーの所望する結果と、画像処理結果とのずれを解消するために、特許文献1のような提案がなされている。
【0009】
この提案では、原稿上の文字領域、写真領域、網点領域といった画像属性を判定する画像処理装置に対して、所望の属性結果を操作部から入力する。そして原稿を読取って属性判定した結果が前記所望の属性結果になるまで判定パラメータを徐々に可変させてそれを繰り返している。これによりユーザーが所望する画像処理結果が施された画像を提供するものである。
【特許文献1】特開平10−271327
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の技術ではユーザーが所望する結果が得られるまで、判定処理を繰り返す必要があり、初期パラメータでの判定結果と所望の判定結果に大きな乖離がある場合は処理時間が多くかかってしまう。また、画像処理装置が提供した結果が充分でない場合は修正の手段がなく、ユーザーの所望する結果を得づらいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の画像処理装置は
操作部と注目画素について有彩色であるか無彩色であるかを判定する第一の無彩/有彩判定手段と第二の有彩/無彩判定手段と原稿上の文字部/線画部と非文字部/非線画部を分離する像域分離手段と前記像域分離手段により文字部/線画部と判定された画素に対して、前記第一の有彩/無彩判定手段の判定結果に基づいて黒文字処理を施す黒文字処理手段と前記第二の有彩/無彩判定手段の判定結果に基づいて、原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かを判定するカラー判定手段とを有しており前記第一の有彩/無彩判定手段の第一の閾値と第二の有彩/無彩判定手段の第二の閾値とを操作部からの入力にしたがってそれぞれ設定する設定手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
ACS機能の感度と黒文字処理機能の感度をADF読取り時と圧板読取り時でそれぞれ最適なものを設定することができる画像処理装置を実現できる。これらを実現することで、ユーザーが所望する画像処理結果を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
本提案の画像処理装置は図1に示すように、スキャナ102と画像処理部101と操作部111から構成されている。
【0015】
光学的に原稿上の画像を読取ることでデジタル画像データを取得するスキャナ102はデジタル画像データとして1画素毎にR1、G1、B1(赤、緑、青)の3チャンネルの信号を出力する。スキャナ102をより詳細に図解したものが図4である。これは圧板ガラス401、読取りユニット402、ADF(Auto Document Feeder)から構成されている。
【0016】
原稿404を圧板ガラス401においた場合は読取りユニットがBの位置からCの位置まで移動しながら原稿上の画像を走査して読取る圧板読取りを実施する。
【0017】
原稿404をADFにおいた場合は原稿404がADF内部で搬送される。読取りユニット402がAの位置に移動して位置固定し、原稿上の画像を走査して読取るADF読取りを実施する。
【0018】
像域分離部103はデジタル画像データをラスター状に走査し、注目画素がエッジ部かどうかを判断し、また、その画素が原稿上の網点画像を構成している画素か否か検査する。そしてエッジかつ網点構成画素ではない画素を線画のエッジ部として判定する。こうすることで原稿上の文字(文字部)/線画(線画部)であろうエッジ部と非文字(非文字部)/非線画(非線画部)である部分とを分離することができる。像域分離部103の出力は文字/線画のエッジ部と判定した画素を指し示す像域信号となる。
【0019】
第一の色変換部104はスキャナ102からのR1、G1、B1信号を関数演算し、明るさを表す明度信号L1、および色度信号(Ca1、Cb1)に変換される。明度信号L1及び色度信号(Ca1、Cb1)は、測職的にCIE1976(L*、a*、b*)色空間の3変数L*、a*、b*やCIE1976(L*、u*、v*)色空間の3変数L*、u*、v*でも良いし、更に簡易的に決められた任意の色空間でも良い。
【0020】
次式(1)はR1、G1、B1信号を明度及び色度信号のL1、Ca1、Cb1に簡易的に色変換する変換式の一例を示しており、その演算が簡易的なことから本実施例ではこれを用いている。
L1=(R1+2*G1+B1)/4
Ca1=(R1−G1)/2
Cb1=(R1+G1−2*B1)/4 ・・・・式(1)
【0021】
これらL1、Ca1、Cb1信号は黒文字処理部107、第一の有彩/無彩判定部105、第二の有彩/無彩判定部106に入力される。なお、本明細書では、有彩/無彩判定部のことを無彩/有彩判定部と称することもある。
【0022】
注目画素の色度信号Ca1、Cb1が成すベクトルはその絶対値が彩度を表し、向きが色相を示している。
【0023】
第一の有彩/無彩判定部105はCa1、Cb1が成すベクトルの絶対値を第一の閾値と比較し、評価することで注目画素が有彩色か無彩色かを判定し、第一の有彩/無彩信号を出力する。また、Ca1、Cb1平面の第一象限から第四象限のどこに位置するか、即ち色相によって第一の閾値をそれぞれの象限毎に設けても良い。
【0024】
第二の有彩/無彩判定部105はCa1、Cb1が成すベクトルの絶対値を第二の閾値と比較し、評価することで注目画素が有彩色か無彩色かを判定し、第一の有彩/無彩信号を出力する。また、Ca1、Cb1平面の第一象限から第四象限のどこに位置するか、即ち色相によって第二の閾値をそれぞれの象限毎に設けても良い。
【0025】
黒文字処理部107は前記像域分離部103の出力である像域信号と第一の有彩/無彩判定部105の出力である第一の有彩/無彩判定信号、そして第一の色変換部104からのL1、Ca1、Cb1信号を元に注目画素の黒文字処理を行う。注目画素が文字/線画のエッジ部で、かつ無彩色である場合は、該注目画素が黒い文字/線画であると判断する。そして、該注目画素のCa1、Cb1信号を0に抑制する。これにより注目画素の彩度が0になり、後述する式(2)によってR=G=Bの無彩色を表すRGB値になることが分かる。注目画素が非文字/非線画であるもしくは、有彩色である場合はCa、Cb信号に処理は加えない。このような処理を施し、L2、Ca2、Cb2を出力する。
【0026】
第二の色変換部108はL2、Ca2、Cb2をR2、G2、B2信号に色変換する。次式(2)は第二の色変換部で演算される変換式の一例を示しており、前述した式(1)から求まるものである。
R2=(4*L2+5*Ca2+2*Cb2)/4
G2=(4*L2−3*Ca2+2*Cb2)/4
B2=(4*L2+Ca2−6*Cb2)/4 ・・・・式(2)
【0027】
ACS判定部110は、読み込んだデジタル画像データ中に存在する第二の有彩/無彩判定信号の量をカウントして閾値と比較することで、読み込んだ原稿がカラー原稿であるかモノクロ原稿であるかを判断する。
【0028】
閾値以上の有彩色判定結果が存在する場合は原稿をカラー原稿と判断し、閾値に満たない場合は原稿をモノクロ原稿と判断する。そして、ACS判定信号を出力する。
【0029】
カラーモノクロ変換部109は前記ACS判定部110からのACS判定信号と第二の色変換部108からのR2、G2、B2信号を入力とし、ACS判定信号を元にR2、G2、B2信号を色変換して、R3、G3、B3信号を出力する。ACS判定信号がカラー原稿を示している場合は次式(3)により出力信号を生成する。
R3=R2
G3=G2
B3=B2 ・・・・式(3)
【0030】
ACS判定信号がモノクロ原稿を示している場合は、カラー画像信号をモノクロ画像信号に変換する。
【0031】
次式(4)はカラーモノクロ変換を実施する変換式の一例である。
R3=G3=B3=(3*R2+4*G2+B2)/8 ・・・・式(4)
モノクロ画像信号は1チャンネル信号であるが、式(4)のようにR3、G3、B3の3つの信号線にモノクロ画像信号を乗せても良いし、どれか1チャンネルにモノクロ画像信号を乗せても良い。
【0032】
操作部111は図2に示すようにすくなくとも表示部201、スタートキー204、ストップキー203、で構成されている。
【0033】
表示部201はLCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイデバイスであり、更にはタッチパネルの機能を有していても良い。
【0034】
スタートキー202は画像処理装置101の動作開始を指定するためのハードキーである。
ストップキー203は画像処理装置101の動作停止を指定するためのハードキーである。
【0035】
本実施例では操作部111は第一の有彩/無彩判定部105と第二の有彩/無彩判定部106とACS判定部に接続されている。
【0036】
図3は本提案の実施の形態を示すフローチャートである。図3とその他図を用いて本提案の画像処理装置の動作を説明する。
【0037】
操作部111では圧板読取り時ならびにADF読取り時それぞれにおけるACS判定の設定入力と黒文字処理の設定入力が可能となっている。図5は圧板読取り時のACS判定の設定画面を示している。図6はADF読取り時のACS判定の設定画面を示している。図7は圧板読取り時の黒文字処理の設定画面を示している。図8はADF読取り時の黒文字処理の設定画面を示している。これら4つは独立した画面に表示されても良いし、ひとつの画面にまとめて表示されていても良い。
【0038】
ADF読取り時は圧板読み取り時に対して、紙搬送時に発生する原稿のばたつきや図示しない搬送ローラなどの構成部品に対する原稿の突入、脱出ショックなどの影響で、色ずれやボケがデジタル画像データ上に発生してしまう。
【0039】
よって各種判定に用いる閾値はADF読取り時と圧板読取り時でそれぞれ最適なものを設定することが望ましい。
【0040】
図5ならびに図6のACS設定画面ではポインタ501ならびにポインタ601が左に行くほどカラー判定優先となり右に行くほどモノクロ判定優先となっている。図5ならびに図6で表しているのは中心値に対して±3段階設定できる場合の例である。
【0041】
ポインタの位置はタッチパネル方式で直接指示されても良いし、操作部111に別途ハードキーで方向キーを設けて、これから指示を受けても良い。
【0042】
図7ならびに図8の黒文字処理設定画面ではポインタ701ならびにポインタ801が左に行くほど色文字判定優先となり右に行くほど黒文字判定優先となっている。図7ならびに図6で表しているのは中心値に対して±3段階設定できる場合の例である。
【0043】
ポインタの位置はタッチパネル方式で直接指示されても良いし、操作部111に別途ハードキーで方向キーを設けて、これから指示を受けても良い。
【0044】
ここでACS設定画面のカラー判定優先とは前述した第二の有彩/無彩判定部106の第二の閾値をカラー判定しやすい値にしたものである。即ち、Ca、Cb平面でみると閾値が小さくなることである。対してモノクロ判定優先とは閾値が大きくなることである。
【0045】
これらの閾値を中心値も含めて7段階用意し、ポインタ501ならびにポインタ601が指し示す位置に対応付ける。
【0046】
さらに、ACS設定画面のカラー判定優先とは前記ACS判定部110の閾値をカラー判定しやすい値にしたものである。即ち閾値の値が小さくなることである。対してモノクロ判定優先とは閾値が大きくなることである。
【0047】
これらの閾値を中心値も含めて7段階用意して前記第二の無彩色判定部106の閾値と共にポインタ501ならびにポインタ601が指し示す位置に対応付けても良い。
【0048】
また黒文字処理設定画面の色文字判定優先とは前述した第一の有彩/無彩判定部105の第一の閾値をカラー判定しやすい値にしたものである。即ち、Ca、Cb平面でみると閾値が小さくなることである。対して黒文字判定優先とは閾値が大きくなることである。
【0049】
これらの閾値を中心値も含めて7段階用意し、ポインタ701ならびにポインタ801が指し示す位置に対応付ける。
【0050】
ステップ302では図5から図8の各種設定画面におけるユーザーからの入力を受け付ける。
【0051】
ステップ302では原稿がスキャナ102の圧板ガラス401に積載されているのか、ADFに積載されているかの判断を行う。
【0052】
ステップ302においてADF403に原稿が積載されている場合は図6に示すADF読取り時のACS設定画面にて受け付けた設定値に対応した閾値を第二の有彩/無彩判定部106に設定する。また、同時にACS判定部110に設定する。(ステップ303)
更に、図8に示すADF読取り時の黒文字処理設定画面にて受け付けた設定値に対応した閾値を第一の有彩/無彩判定部105に設定する。(ステップ304)
操作部111にて画像処理動作開始の入力を受け付けると、スキャナ102から原稿読取を開始する。(ステップ305)
そして図1に示す画像処理部101はステップ303ならびに304で設定された閾値を用いて画像処理を実施する。(ステップ306)
ステップ302において圧板ガラス401に原稿が積載されている場合は図5に示す圧板読取り時のACS設定画面にて受け付けた設定値に対応した閾値を第二の有彩/無彩判定部106に設定する。また、同時にACS判定部110に設定する。(ステップ307)
更に、図7に示す圧板読取り時の黒文字処理設定画面にて受け付けた設定値に対応した閾値を第一の有彩/無彩判定部105に設定する。(ステップ308)
操作部111にて画像処理動作開始の入力を受け付けると、スキャナ102から原稿読取を開始する。(ステップ309)
そして図1に示す画像処理部101はステップ307ならびに308で設定された閾値を用いて画像処理を実施する。(ステップ310)
以上説明した本発明の実施の形態によりACS機能の感度と黒文字処理機能の感度をADF読取り時と圧板読取り時でそれぞれ最適なものを設定することができる画像処理装置を実現できる。これらを実現することで、ユーザーが所望する画像処理結果を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】画像処理装置
【図2】操作部の構成図
【図3】フローチャート
【図4】スキャナの構成図
【図5】圧板読取り時のACS設定画面
【図6】ADF読取り時のACS設定画面
【図7】圧板読取り時の黒文字処理設定画面
【図8】ADF読取り時の黒文字処理設定画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取装置により光学的に読取った原稿上の画像をデジタル画像データに変換し、画像処理を施す画像処理装置において
操作部と
注目画素について有彩色であるか無彩色であるかを判定する第一の無彩/有彩判定手段と
第二の有彩/無彩判定手段と
原稿上の文字部/線画部と非文字部/非線画部を分離する像域分離手段と
前記像域分離手段により文字部/線画部と判定された画素に対して、前記第一の有彩/無彩判定手段の判定結果に基づいて黒文字処理を施す黒文字処理手段と
前記第二の有彩/無彩判定手段の判定結果に基づいて、原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かを判定するカラー判定手段とを有しており
前記第一の有彩/無彩判定手段の第一の閾値と第二の有彩/無彩判定手段の第二の閾値とを操作部からの入力にしたがってそれぞれ設定する設定手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記カラー判定手段は前記第二の有彩/無彩判定手段により有彩色もしくは無彩色と判定された画素の量を原稿の全体においてカウントし、該カウント値と第三の閾値との比較の結果に基づいて原稿をカラー判定し、
操作部からの入力にしたがって第二の有彩/無彩判定手段の閾値を設定した時に、その設定値に基づいてカラー判定手段の第三の閾値も設定されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記読取装置は圧板読取り方法とADF読取り方法を具備しており、前記操作部からの設定の時には圧板読取り時の第一の有彩/無彩判定手段の第一の閾値とADF読取り時の第二の有彩/無彩判定の第2の閾値をそれぞれ独立に設定できることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−21628(P2010−21628A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177965(P2008−177965)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】