説明

画像処理装置

【課題】プライバシーマスクによって被写体を適切に隠すことが可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】監視カメラ10は、画像の被写体に対して閉領域からなるプライバシーマスクを付加するプライバシーマスク付加部と、一の画像における被写体の特徴量に基づいて、他の画像における被写体の位置を検出する被写体検出部14と、ズーム及び回転による被写体の画像内における移動に応じて、プライバシーマスクの表示位置を演算するプライバシーマスク表示演算部16と、を備え、プライバシーマスク表示演算部16は、ズーム時には、被写体検出部によって検出された被写体の位置に基づいて、プライバシーマスクが被写体を追跡するようにプライバシーマスクの位置を補正し、回転時には、当該回転の角度に基づいて、プライバシーマスクが前記被写体を追跡するようにプライバシーマスクの位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像にプライバシーマスク処理を施す画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、盗難等の犯罪防止用、事故、事件等の証拠記録用として、街角、マンションの入口、店内等に監視カメラを設置し、撮影箇所において長時間撮影対象物を撮影することにより対象物体の状況や推移をリアルタイムに観察するとともに、撮影した画像をハードディスクドライブ等の記憶装置に記憶させる監視カメラシステムが普及しており、記憶装置に記憶されている画像が、後の分析や事件の証拠として用いられている。一方、看板が写ってしまって住所が特定されてしまったり、窓から建物の内部が写ってしまったりする等、プライバシーの侵害につながる画像が含まれるケースも生じることから、監視カメラで撮影した画像に対して、その一部を隠すためのマスク、いわゆるプライバシーマスクを付加する技術が開発されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、パン、チルトといった監視カメラの回転に応じてマスクの位置を補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−015362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な監視カメラにおいて、光学中心と画像中心とは一致しておらず、また、これらのズレ量及び方向は、監視カメラごとに個体差がある上、監視カメラと被写体との距離によっても変わってしまう。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、かかる不一致を考慮していないため、ズーム時にはマスクで隠すべき被写体が見えてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決すべく創案されたものであり、プライバシーマスクによって適切に被写体を隠すことが可能な画像処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の画像処理装置は、ズーム機能及び回転機能を有するカメラによって撮像された画像を処理する画像処理装置であって、画像の被写体に対して閉領域からなるプライバシーマスクを付加するプライバシーマスク付加部と、一の前記画像における前記被写体の特徴量に基づいて、他の前記画像における前記被写体の位置を検出する被写体検出部と、ズーム及び回転による前記被写体の画像内における移動に応じて、前記プライバシーマスクの表示位置を演算するプライバシーマスク表示演算部を備え、前記プライバシーマスク表示演算部は、ズーム時には、前記被写体検出部によって検出された前記被写体の位置に基づいて、前記プライバシーマスクが前記被写体を追跡するように前記プライバシーマスクの位置を補正し、回転時には、当該回転の角度に基づいて、前記プライバシーマスクが前記被写体を追跡するように前記プライバシーマスクの位置を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プライバシーマスクによって適切に被写体を隠すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る監視システムを模式的に示す図である。
【図2】図1の画像信号処理部を示すブロック図である。
【図3】図2の検波処理部を示すブロック図である。
【図4】図1の被写体検出部を示すブロック図である。
【図5】図4の記憶部に記憶された情報を説明するための図である。
【図6】ズーム後の被写体の検出手法の一例を説明するための図である。
【図7】移動ベクトル計算部による移動ベクトル決定手法の詳細を説明するための図である。
【図8】図1のプライバシーマスク設定部及びプライバシーマスク表示演算部を示すブロック図である。
【図9】(a)は、プライバシーマスクが付加される前の画像を示す図、(b)は、プライバシーマスクが付加された画像を示す図である。
【図10】プライバシーマスクを付加する際の3次元図である。
【図11】(a)は、光学中心と画像中心とが一致する場合のズームによる被写体の広がりを説明するための図であり、(b)は光学中心と画像中心とがずれている場合のズームによる被写体の広がりを説明するための図である。
【図12】本発明の実施形態に係る監視システムの第一の動作例を説明するための図である。
【図13】本発明の実施形態に係る監視システムの第二の動作例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同様の部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。以下の説明において、プライバシーマスクが付加される被写体は、窓、写真、看板等といった静止している被写体、すなわち静止対象物(静止物体)であり、被写体の移動とは、ズーム及び回転による被写体の画像内における大きさの変化、位置の変化を指す。
【0010】
まず、本発明の実施形態に係る監視システムの構成について、図1〜図9を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る監視システム1は、監視カメラ10と、端末20と、を備えており、監視カメラ10及び端末20は、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。
【0012】
<端末>
本発明の実施形態に係る端末20は、キーボード、マウス等からなる入力部21と、制御部22と、記憶部23と、ディスプレイからなる表示部24とを備えるコンピュータである。端末20の制御部22は、監視カメラ10から送信された映像を記憶部23に記憶させたり表示部24に表示させたりする。また、端末20の制御部22は、ユーザによる入力部21の操作(例えば、マウスのドラッグ操作による閉領域の指定等)に基づいて、監視カメラ10によって撮像された映像にプライバシーマスクを設定する被写体の位置に関する位置情報を生成し、ネットワークNWを介して監視カメラ10へ送信する。また、端末20の制御部22は、ユーザによる入力部21の操作に基づいて、監視カメラ10の撮像部11のズーム機構11a及び回転機構18を駆動させるための信号をネットワークNWを介して監視カメラ10の機構制御部17へ送信する。
【0013】
<監視カメラ>
本発明の実施形態に係る監視カメラ10は、撮像部11と、画像信号処理部12と、記憶部13と、被写体検出部14と、プライバシーマスク設定部15と、プライバシーマスク表示演算部16と、機構制御部17と、回転機構18と、を備える。これらのうち、撮像部11及び回転機構18を除く画像信号処理部12、記憶部13、被写体検出部14、プライバシーマスク設定部15、プライバシーマスク表示演算部16及び機構制御部17の組合せが、特許請求の範囲における画像処理装置の一例である。かかる画像処理装置は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、入出力回路等から構成される。
【0014】
≪撮像部及び回転機構≫
撮像部11は、被写体を撮像するための光学系及び撮像素子を有するカメラ本体である。撮像部11によって撮像された映像(一連の画像)は、画像信号として、順次、画像信号処理部12へ出力される。
【0015】
また、撮像部11は、ズーム機構11aを備える。ズーム機構11aは、光学系を駆動することによって、撮影倍率を変更するための機構である。回転機構18は、パン方向及びチルト方向に回転することによって、監視カメラ10の撮影方向を変更するための機構である。
【0016】
≪画像信号処理部12≫
画像信号処理部12は、撮像部11によって撮像された画像にプライバシーマスクを付加した画像を生成し、生成された画像をネットワークNWを介して端末20へ送信する。
図2に示すように、画像信号処理部12は、機能部として、画像処理部12aと、検波処理部12bと、記憶部管理部12cと、プライバシーマスク付加部12dと、画像送信部12eと、を備える。
【0017】
画像処理部12aは、撮像部11から出力された画像を取得し、取得された画像に輝度補正、色補正、ガンマ補正等を処理を施す。処理された画像は、プライバシーマスク付加部12cへ出力される。
【0018】
検波処理部12bは、撮像部11から出力された画像を取得し、取得された画像に対して検波処理を施し、各種特徴量を検波する。図3に示すように、検波処理部12bは、特徴量として画像のエッジ特徴量を検波するエッジ検波部12b1と、特徴量として画像の輝度を検波する輝度検波部12b2と、特徴量として画像のヒストグラムを検波するヒストグラム検波部12b3と、を備える。エッジ検波部12b1、輝度検波部12b2及びヒストグラム検波部12b3は、後記するプライバシーマスク表示処理部16cから特徴量を検波すべき位置を取得し、当該位置の各種特徴量を検波する。検波されたエッジ、輝度及びヒストグラムは、特徴量取得部14aへ出力される。
【0019】
図2に戻り、記憶部管理部12cは、記憶部13を管理するものであって、プライバシーマスクが付加される前の画像を記憶部13に一時的に記憶させたり、記憶部13に一時的に記憶された、プライバシーマスクが付加される前の画像を読み出してプライバシーマスク付加部12dへ出力したりする。本実施形態では、ズーム及び回転による被写体の画像内における移動後に移動した被写体を検出してプライバシーマスクを付加する構成であるため、画像を遅延させないと、被写体がプライバシーマスクによって隠されずに見えてしまうおそれがある。すなわち、記憶部管理部12cは、プライバシーマスクが付加される前の画像を数コマ分遅延させてプライバシーマスク付加部12dへ出力することにより、プライバシーマスク付加部12dが、プライバシーマスクを被写体の位置に確実に付加することができる。
【0020】
プライバシーマスク付加部12dは、プライバシーマスク表示演算部16から出力された位置情報に基づいて、画像にプライバシーマスクを付加する。プライバシーマスクが付加された画像は、画像送信部12eへ出力される。
【0021】
画像送信部12eは、プライバシーマスクが付加された画像をネットワークNWを介して端末20の制御部22へ送信する。端末20の制御部22は、プライバシーマスクが付加された画像を取得し、記憶部23に記憶させたり、表示部24に表示させたりする。画像送信部12eは、アナログ出力に限定されず、REC656等のディジタル出力にも対応可能である。
【0022】
≪記憶部≫
図1に戻り、記憶部13には、プライバシーマスクが付加される前の画像が一時的に記憶される。
【0023】
≪被写体検出部≫
被写体検出部14は、プライバシーマスクの位置情報のズーム補正を行うために、一の画像においてプライバシーマスクが付加された被写体の他の画像における位置を検出し、一の画像と他の画像との間における当該被写体の移動ベクトルを計算する。被写体検出部14は、ズームが実行されているときのみ、被写体の位置を検出する。図4に示すように、被写体検出部14は、機能部として、特徴量取得部14aと、記憶部14bと、特徴量検索部14cと、移動ベクトル計算部14dと、を備える。
【0024】
特徴量取得部14aは、検波処理部12bから、プライバシーマスクが付加されている被写体の特徴量(エッジ、輝度及びヒストグラム)を取得する。また、特徴量取得部14aは、後記するプライバシーマスク表示処理部16cから、現在の被写体の位置情報を取得する。取得された特徴量は、記憶部14bに記憶される。また、取得された特徴量及び現在の被写体の位置情報は、特徴量検索部14cへ出力される。
【0025】
記憶部14bには、特徴量取得部14aによって取得された特徴量が記憶される。図5に示すように、プライバシーマスクが付加された被写体の特徴量は、マスクNo、日時、プライバシーマスクの中心位置、プライバシーマスクの幅、パン角度及びチルト角度、ズーム倍率、被写体の移動ベクトル、設定中/稼働中のステータスフラグ(後記する)等と関連付けて記憶される。記憶部14bに記憶された特徴量等のデータは、端末20の表示部24によって参照可能な構成であってもよい。
【0026】
特徴量検索部14cは、画像処理部12aからズーム後の画像を取得し、特徴量取得部14aによって取得された被写体の特徴量に基づいて、ズーム後の画像を順に走査して類似の特徴量の位置を検索することによって、ズーム後の被写体を検出する。
【0027】
特徴量検索部14cによるズーム後の被写体の検出手法の一例について説明する。図6に示すように、ズーム前の被写体の中心位置を(i,j)、ズーム後の被写体の中心位置を(i,j)、ズーム倍率をZとする。ズーム前の被写体の大きさを(S,S)とすると、ズーム後の被写体の大きさは(S×Z,S×Z)となる。ここで、ズーム前後で被写体の大きさが異なるため、特徴量の正規化が必要となる。この場合におけるズームによる特徴量差分ρは、以下の式で記述される。
【数1】

ここで、Cはヒストグラムに関する特徴量、Cは輝度に関する特徴量、Cはエッジに関する特徴量であり、以下の式で記述される。
【数2】

この結果、ズーム前の特徴量とズーム後の特徴量との差が最も小さい、すなわち、特徴量差分ρが最小となる(i,j)がズーム後の被写体の位置となる。
【0028】
図4に戻り、移動ベクトル計算部14dは、画像内における、ズーム前の被写体とズーム後の被写体との移動ベクトルを計算する。この場合における移動ベクトルは、以下の式で記述される。
【数3】

【0029】
ここで、移動ベクトル計算部14dによる移動ベクトル決定手法の詳細について、図7を参照して説明する。図7において、(i,j)は、画像外部に移動した被写体の中心座標であり、(i,j)は、被写体が画像外部に移動してしまった場合に、誤って検出された被写体の中心座標である。ズームによって被写体が画像外部に移動したり、被写体が他の被写体によって隠れてしまう場合には、特徴量検索部14cが被写体の位置を誤って検出してしまうおそれがある。そこで、移動ベクトル計算部14dは、記憶部14bに記憶された前回計算された移動ベクトルと、今回計算された移動ベクトルと、を比較する。これらの移動ベクトルの向きが異なる場合には、移動ベクトル計算部14dは、計算された移動ベクトルではなく、記憶部14bに記憶された前回計算された移動ベクトルを採用する。向きが一致している場合には、今回計算された移動ベクトルを採用する。
前回計算された移動ベクトルを
【数4】

とし、
今回計算された移動ベクトルを
【数5】

とした場合、現在の移動ベクトル
【数6】

を決定する場合には、下記式が用いられる。
【数7】

【0030】
前回計算された移動ベクトルと今回計算された移動ベクトルとが同じ方向を向いている場合には、今回計算された移動ベクトルを採用し、今回計算された移動ベクトルを記憶部14bに更新記憶させる。ただし、移動ベクトルは画像内の位置によって決まるため、撮像部11が回転された場合には、被写体の画像外の位置の変化するため、記憶部14bに記憶された移動ベクトルは使用することができなくなる。したがって、撮像部11が回転された場合には、記憶部14b内の移動ベクトルは(0,0)に更新記憶され、移動ベクトル計算部14dは今回計算された移動ベクトルを採用した後、今回計算された移動ベクトルを記憶部14bに更新記憶させる。この手法は、下記式によって示される。
【数8】

【0031】
前回計算された移動ベクトルが採用される場合には、被写体の位置が分からないため、移動ベクトル計算部14dは、前回計算された移動ベクトルとズーム倍率の変化とに基づいて、ズームにより被写体が画像内において移動する量を計算し、移動ベクトルを最終的に決定する。
【0032】
≪プライバシーマスク設定部≫
図1に戻り、プライバシーマスク設定部15は、ユーザによる入力部21の操作に基づいて制御部22から送信された、プライバシーマスクに関する情報(プライバシーマスクを設定する被写体の位置に関する位置情報)を、監視カメラ1内部で取り扱う座標系に設定し直す。図8に示すように、プライバシーマスク設定部15は、機能部として、位置設定部15aと、角度設定部15bと、を備える。
【0033】
位置設定部15aは、端末20の制御部22から送信された、プライバシーマスクを設定する位置に関する位置情報(プライバシーマスクの中心位置、幅及び高さに関する情報)を取得し、かかる情報をカメラ内部で取り扱う座標系に変換し、プライバシーマスク表示演算部16の角度補正処理部16aへ送信する。
【0034】
ここで、プライバシーマスクの座標の計算手法について、図9を参照して説明する。図9の例においては、監視カメラ10の撮像部11は、室内を撮像しており、その窓部分にプライバシーマスクが付加される(外の風景によって監視カメラ10が設置された建物が判明することを防ぐため)。
【0035】
図9(b)に示すように、撮像部11によって撮像された画像の横(水平)方向の総画素をH、縦(鉛直)方向の総画素をV、画像中心の座標を(0,0)とする。位置設定部15aは、端末20の制御部22から送信されたプライバシーマスクの中心位置(m,m)、幅h及び高さvに基づいて、画素における幅h及び画素における高さv(監視カメラ10の座標系における幅h及び高さv)を計算する。
【数9】

ここで、Rは横方向の分解能であり、Rは縦方向の分解能である。撮像部11によって撮像された画像の信号においては、画像左上が(0,0)となるため、位置設定部15aは、下記式を用いてプライバシーマスクの四隅の座標を計算する。
【数10】

【0036】
図8に戻り、角度設定部15bは、端末20の制御部22から送信された、監視カメラ10の撮像部11の回転角度に関する角度情報を取得し、かかる情報を監視カメラ10内部で取り扱う座標系に変換し、プライバシーマスク表示演算部16の角度補正処理部16aへ送信する。
【0037】
ここで、プライバシーマスクを付加する際の2次元座標系について、図10を参照して説明する。監視カメラ10の撮像部11は、3次元の回転制御が行われる、そのため、プライバシーマスクの同様に3次元に対応しなければならない。角度設定部15bは、端末20の制御部22から送信された回転機構18の回転角度に基づいて、水平方向の回転角度であるパン角θ、鉛直方向の回転角度であるチルト角σ、及び、監視カメラ10から被写体までの距離rを計算する。
【0038】
≪プライバシーマスク表示演算部≫
図1に戻り、プライバシーマスク表示演算部16は、ズーム機構11a及び回転機構18による撮像方向の移動によって、画像におけるプライバシーマスクの位置を変更する必要が生じた場合に、プライバシーマスクの表示位置を補正する。図8に示すように、プライバシーマスク表示演算部16は、機能部として、角度補正処理部16aと、ズーム補正処理部16bと、プライバシーマスク表示処理部16cと、を備える。
【0039】
角度補正処理部16aは、回転機構18によって監視カメラ10(撮像部11)の撮像方向が回転移動したときに、当該回転の角度に基づいて、プライバシーマスクが被写体を追跡するようにプライバシーマスクの位置を補正する。かかる補正については、公知の手法が適宜採用可能であるため、詳細な説明を省略する。
【0040】
ズーム補正処理部16bは、ズーム機構11aによって撮像部11の撮像領域が変化したときに、ズームの倍率及び移動ベクトル計算部14dによって計算された移動ベクトルに基づいて、プライバシーマスクが被写体を追跡するようにプライバシーマスクの位置を補正する。
【0041】
ここで、ズーム時における画像内における被写体の移動について、図11を参照して説明する。図11(a)に示すように、撮像部11の光学中心と画像中心とが一致する場合には、当該画像をズームによって拡大すると、被写体は画像中心を中心として放射状に広がっていく。一方、図11(b)に示すように、撮像部11の光学中心と画像中心とがずれている場合には、当該画像をズームによって拡大すると、被写体は光学中心を中心として放射状に広がっていくことになる。例えば、図11(b)に示すように光学中心が画像右下側にある場合には、被写体は全体的に左上に移動していくことになる。また、撮像部11と被写体との距離によっても、ズームに伴う被写体の移動量は異なってくる。このため、プライバシーマスクが画像上の同じ位置に付加されていたとしても、光学中心と画像中心とのずれの向き及び量が変わればズームに伴う被写体の移動量は異なることになり、計算によってプライバシーマスクの位置を補正することは不可能である。
【0042】
図8に戻り、プライバシーマスク表示処理部16cは、角度補正処理部16a及びズーム補正処理部16bによって補正されたプライバシーマスクの位置に関する位置情報を取得し、これらに基づいて、プライバシーマスクの位置に関する位置情報を決定する。決定された位置情報は、プライバシーマスク付加部12d及び特徴量取得部14aへ出力される。
【0043】
<第一の動作例>
続いて、本発明の実施形態に係る監視システム1の第一の動作例について、図12を参照して説明する。まず、ユーザが端末20の入力部21を操作することによって、監視カメラ10のモードが設定中又は稼働中に切り替えられる。監視カメラ10のモードが設定中モードである場合には(ステップS1でYes)、角度設定部15bがパン角及びチルト角を設定し(ステップS2)、続いて、ユーザによる端末20の入力部21の操作に応じて、位置設定部15aがプライバシーマスクの位置に関する位置情報を設定し、プライバシーマスク付加部12dが設定された位置情報に基づいてプライバシーマスクを付加する(ステップS3)。
【0044】
一方、監視カメラ10のモードが稼働中モードである場合において(ステップS1でNo)、ユーザが端末20の入力部21を操作することによって撮像部11がパン又はチルトされた場合には(ステップS11でYes)、角度補正処理部16aがパン角又はチルト角によるプライバシーマスク表示補正処理を行う(ステップS12)。さらに、ステップS11でNoの場合及びステップS12の実行後において、ユーザが端末20の入力部21を操作することによって撮像部11がズームされた場合には(ステップS13でYes)、ズーム補正処理部16bが特徴量検索によるプライバシーマスク表示補正処理を行う(ステップS14)。パン又はチルトされていない場合(ステップS11でNo)、かつ、ズームされていない場合(ステップS13でNo)には、プライバシーマスク表示補正処理は行われない。
【0045】
<第二の動作例>
続いて、本発明の実施形態に係る監視システム1の第二の動作例について、図13を参照して説明する。まず、ユーザが端末20の入力部21を操作することによって、監視カメラ10のモードが設定中又は稼働中に切り替えられる。監視カメラ10のモードが設定中モードである場合には(ステップS21でYes)、角度設定部15bがパン角及びチルト角を設定し(ステップS22)、続いて、ユーザによる端末20の入力部21の操作に応じて、位置設定部15aがプライバシーマスクの位置に関する位置情報を設定し、プライバシーマスク付加部12dが設定された位置情報に基づいてプライバシーマスクを付加する(ステップS23)。
【0046】
一方、監視カメラ10のモードが稼働中モードである場合において(ステップS21でNo)、ユーザが端末20の入力部21を操作することによって撮像部11がズームされた場合には(ステップS31でYes)、ズーム補正処理部16bが特徴量検索によるプライバシーマスク表示補正処理を行う(ステップS32)。また、ステップS31でNoの場合において、ユーザが端末20の入力部21を操作することによって撮像部11がパン又はチルトされた場合には(ステップS33でYes)、角度補正処理部16aがパン角又はチルト角によるプライバシーマスク表示補正処理を行う(ステップS34)。ズームされていない場合(ステップS31でNo)、かつ、パン又はチルトされていない場合(ステップS33でNo)には、プライバシーマスク表示補正処理は行われない。第二の動作例によると、ズームとパン又はチルトとが同時に行われた場合には、特徴量検索によるプライバシーマスク表示補正処理を優先することができる。
【0047】
本発明の実施形態に係る監視カメラ10は、パン又はチルト時には、パン角又はチルト角によってプライバシーマスクの位置を補正するので、少ない演算量でプライバシーマスクの補正を行うことができ、ズーム時には、特徴量検索によってプライバシーマスクの位置を補正するので、ズーム時において、光学中心と画像中心とのズレによって被写体がプライバシーマスクによって隠されることなく見えてしまうという事態を防ぐことができる。また、本発明の実施形態に係る監視カメラ10は、被写体検出部14がズーム時にのみ被写体の位置を検出し、ズームが実行されていないときには被写体の位置の検出を停止するので、演算量を抑えることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、図1において、1台の監視カメラ10と1台の端末20とがネットワークNWを介して接続される構成を図示したが、複数台の監視カメラ10と1台の端末20とがネットワークNWを介して接続される構成であってもよい。また、監視カメラ10における画像信号処理部12、記憶部13、被写体検出部14、プライバシーマスク設定部15、プライバシーマスク表示演算部16及び機構制御部17は、撮像部11と別体に設けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 監視カメラ(画像処理装置)
11 撮像部(カメラ)
12d プライバシーマスク付加部
14 被写体検出部
16 プライバシーマスク表示演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズーム機能及び回転機能を有するカメラによって撮像された画像を処理する画像処理装置であって、
画像の被写体に対して閉領域からなるプライバシーマスクを付加するプライバシーマスク付加部と、
一の前記画像における前記被写体の特徴量に基づいて、他の前記画像における前記被写体の位置を検出する被写体検出部と、
ズーム及び回転による前記被写体の画像内における移動に応じて、前記プライバシーマスクの表示位置を演算するプライバシーマスク表示演算部と、
を備え、
前記プライバシーマスク表示演算部は、ズーム時には、前記被写体検出部によって検出された前記被写体の位置に基づいて、前記プライバシーマスクが前記被写体を追跡するように前記プライバシーマスクの位置を補正し、回転時には、当該回転の角度に基づいて、前記プライバシーマスクが前記被写体を追跡するように前記プライバシーマスクの位置を補正する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記被写体検出部は、ズーム時にのみ前記被写体の位置を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プライバシーマスク付加部は、静止している前記被写体に対して前記プライバシーマスクを付加する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−205517(P2011−205517A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72363(P2010−72363)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】