説明

画像処理装置

【課題】 直接的なCPUによる処理を要することなく、ダイナミック補正を小さな回路規模で、複数の補正を含む場合には同時に、実行できる画像処理装置を提供する。
【解決手段】 補正曲線を用いて入力画像の補正を行う画像処理装置10であって、補正曲線の係数を定めるパラメーターの初期値を出力する設定レジスター部20と、入力画像の画像データを統計的に解析する統計解析部40と、パラメーターの初期値を、統計解析部からの統計情報に基づいて変更するパラメーター生成部30と、パラメーター生成部で変更されたパラメーターに基づいて補正曲線の係数を定め、入力画像の各画素の画素値を補正曲線に基づいて補正して出力する補正出力部50と、を含み、補正曲線は3次以上の関数であって、パラメーターは補正曲線の次数よりも少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ディスプレイやプロジェクターなどの画像表示機器に含まれる画像処理装置は、所望の再現特性を得るために入力画像データの階調値を補正する。階調値の補正は、例えば明るさ補正、コントラスト補正、カラーバランス補正等である。これらの補正は入力画像データに応じてダイナミックに行われるところ、補正曲線は3次以上の式で表されるので、積和演算の負担軽減、演算時間短縮のためにルックアップテーブルが用いられることが多い。このとき、ルックアップテーブルはテーブルメモリーやROM等のリソースを必要とする。
【0003】
これらのリソースを増やさずに複数種類の変換を行うために、引用文献1の発明は雛形のテーブル値をROMに格納し、CPUがテーブル値をテーブルメモリーに書き込む際に変換モジュールがテーブル値を適切な値に書き換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−293827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、CPUがROMにアクセスしてテーブル値を一度読み込む必要があることは、CPUに負荷をかけることになる。その結果、システム全体の処理速度が低下する恐れがある。また、画像の特徴に応じてテーブル値を変更するような場合には、CPUは時間のかかる画像の解析を行う必要があり、補正処理に遅延が生じる恐れがある。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、直接的なCPUによる処理を要することなく、ダイナミック補正を小さな回路規模で、複数の補正を含む場合には同時に、実行できる画像処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、補正曲線を用いて入力画像の補正を行う画像処理装置であって、前記補正曲線の係数を定めるパラメーターの初期値を出力する設定レジスター部と、前記入力画像の画像データを統計的に解析する統計解析部と、前記パラメーターの初期値を、前記統計解析部からの統計情報に基づいて変更するパラメーター生成部と、前記パラメーター生成部で変更されたパラメーターに基づいて前記補正曲線の係数を定め、前記入力画像の各画素の画素値を前記補正曲線に基づいて補正して出力する補正出力部と、を含み、前記補正曲線は3次以上の関数であって、前記パラメーターは前記補正曲線の次数よりも少ない。
【0008】
本発明によれば、入力画像の補正に用いる補正曲線のテンプレートを用意し、その次数よりも少ないパラメーターにより補正曲線の係数を定めることで、ダイナミック補正を小さな回路規模で、複数の補正を含む場合には同時に、実行できる。このとき、直接的なCPUによる処理を要することなく、システム全体の処理速度が向上する。
【0009】
ここで、ダイナミック補正とは例えば明るさ補正、コントラスト補正、カラーバランス補正等である。ダイナミック補正は入力画像の統計的なデータに基づき前記の補正曲線の係数やテーブル値を動的に変更する補正を指す。これに対し、製造ばらつき等に起因する表示パネルの個体差の補正は、静的な(固定的な)係数やテーブル値を用いるのでスタティック補正と呼ぶ。
【0010】
(2)この画像処理装置において、前記パラメーターは、前記補正曲線の所定の値における接線の傾きであってもよい。
【0011】
本発明によれば、補正曲線の係数を定めるパラメーターを接線の傾きで求めることができるので、パラメーターの修正および決定が容易になる。
【0012】
(3)この画像処理装置において、前記補正曲線は3次関数であってもよい。
【0013】
本発明によれば、補正曲線を表す関数の次数を3とすることで、2つのパラメーターで補正曲線を定義することができる。そのため、回路規模を小さくすることが可能である。
【0014】
(4)この画像処理装置において、前記パラメーターは、前記補正曲線の最小の入力値と最大の入力値における接線の傾きで与えられてもよい。
【0015】
本発明によれば、3次補正曲線の係数を定める2つのパラメーターは、最小の入力値と最大の入力値における接線の傾きとして容易に求められる。ここで、入力値とは正規化した入力画像の各画素の画素値を指す。このとき、補正曲線がf(x)であるとすると、入力値はxである。xmin≦x≦xmaxであれば、最小の入力値はxminであり、最大の入力値はxmaxである。そして、2つのパラメーターはそれぞれ、f′(xmin)とf′(xmax)になる。
【0016】
(5)この画像処理装置において、前記補正出力部は、前記入力画像の補正に用いるルックアップテーブルを有し、前記ルックアップテーブルの各テーブル値を前記補正曲線に基づいて更新し、更新された前記ルックアップテーブルを用いて前記入力画像の各画素の画素値を補正してもよい。
【0017】
本発明によれば、積和演算器で入力画像の各画素の画素値を直接補正する事に代えて、ルックアップテーブルのテーブル値を補正することで更に演算の負荷、時間を軽減することができる。
【0018】
(6)この画像処理装置において、前記入力画像は動画の1フレーム分の画像であって、前記補正出力部は、垂直ブランキング期間に前記ルックアップテーブルの各テーブル値を前記補正曲線に基づいて更新してもよい。
【0019】
本発明によれば、入力画像が動画である場合には、ルックアップテーブルのテーブル値の補正を垂直ブランキング期間に行うことで、続く画像データの各画素値の補正処理をリアルタイムに行うことができるので処理の効率が向上する。
【0020】
(7)この画像処理装置において、前記補正出力部は、1つの積和演算器を含み、前記積和演算器を用いて前記入力画像の各画素の画素値を前記補正曲線に基づいて補正してもよい。
【0021】
本発明によれば、積和演算器で入力画像の各画素の画素値を直接補正するのでテーブルメモリーやROM等のリソースを必要としない。そのため、回路規模を小さくできる。
【0022】
(8)この画像処理装置において、前記設定レジスター部は、前記補正の種類に応じて出力される複数のパラメーターの初期値を含んでもよい。
【0023】
本発明によれば、CPU等の制御信号だけで、簡単に複数のダイナミック補正を切り替えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態の画像処理装置のブロック図。
【図2】図2(A)〜図2(B)はダイナミック補正の補正曲線の例を示す図。
【図3】図3(A)〜図3(B)は合成したダイナミック補正の補正曲線の例を示す図。
【図4】図4(A)は補正の種類と初期値の例を示すテーブル。図4(B)〜図4(C)は入出力データの例を示す図。
【図5】図5(A)〜図5(C)はパラメーターを決定する方法の例を示す図。
【図6】図6(A)は第1実施形態の補正出力部の構成を示す図。図6(B)はその波形図を示す図。
【図7】図7は第2実施形態の補正出力部の構成を示す図。
【図8】図8は第2実施形態の処理例のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態について図1〜図6を参照して説明する。
1.1.第1実施形態の画像処理装置の構成
図1は本実施形態の画像処理装置10のブロック図である。画像処理装置10は、設定レジスター部20、パラメーター生成部30、統計解析部40、補正出力部50を含む。
【0026】
設定レジスター部20は、例えばCPUから制御信号202を受け取り、その内容に応じたパラメーター初期値204を出力する。例えば、制御信号202が補正の種類として明るさ補正を指定する場合には、明るさ補正の補正曲線の係数を決定するためのパラメーター初期値204を出力する。初期値を与えることで最初のフレームの入力画像も補正が施されるようにする。なお、2番目のフレームの入力画像からは、直前のフレームの画像データの統計情報206に基づいて初期値が修正され得るので、より適したダイナミック補正が行われる。
【0027】
統計解析部40は、入力画像の画素の画素値200を受け取り、1フレーム分の画像データ(画素値)から画像を特徴付ける統計的な解析データ(統計情報)206を出力する。統計解析部40は、入力画像の画素の画素値200を一時的に保持するラインバッファーやフレームバッファーを含んでいてもよい。統計情報206は、例えば1フレーム分の画像データから得られる輝度分布、コントラスト、彩度、カラーバランス等の情報であってもよい。
【0028】
パラメーター生成部30は、設定レジスター部20からパラメーター初期値204を受け取り、統計情報206に基づいてパラメーター初期値204を修正してパラメーター208を出力する。
【0029】
そして、補正出力部50は、パラメーター208を受け取って補正曲線の係数を決定して、入力画像の画素の画素値200を補正して、各画素の補正後の画素値である出力画素値210を出力する。ここで、入力画像のデータは走査方式で入力され、補正の対象となる注目画素は例えばシステムクロックに同期して順次変化する。そして、所定時間の経過後には1フレームの全ての画素について所定の処理が行われ、最終的に1フレームの画像について補正が行われる。
【0030】
本実施形態の画像処理装置10では、例えばCPU(図外)は制御信号202によって補正の種類を指定するだけでよい。本実施形態では、特許文献1のテーブル値に対応する補正曲線を変更する場合にCPUが直接関与することはない。よって、本実施形態の画像処理装置10は、CPUに負荷をかけてシステム全体の処理速度を低下させるようなことがない。
【0031】
1.2.パラメーターと補正曲線の関係について
1.2.1.パラメーターの数について
本発明は、制御点に対応するパラメーターの数を、ダイナミック補正を行うための補正曲線の次数より少なくすることで、演算処理の負荷を減らして小さな回路規模で補正を行う。例えば、3次の補正曲線が2つのパラメーターで定まれば、パラメーターを変更する際の演算や、その後の補正曲線に基づいた積和演算での負荷が軽くなる。
【0032】
ここで、本実施形態では3次の補正曲線のテンプレートを数1のように定める。
【0033】
【数1】

【0034】
このとき、3次の補正曲線f(x)は2つのパラメーターAおよびBにより定まる。式(1)のf(x)はf(0)=0、f(1)=1を満たす。そして、A=B=1の場合にはf(x)=xを満たす。補正曲線f(x)の1階微分は数2で与えられる。
【0035】
【数2】

【0036】
ここで、式(2)で所定の値について計算をするとAとBが求められる。
【0037】
【数3】

【0038】
つまり、パラメーターAとBはそれぞれ、f(x)のx=0、1における接線の傾きで与えられる。ここで、補正曲線f(x)のxは正規化した入力画像の画素の画素値に対応する。例えば、画素値が10ビットの輝度Yである場合には、0≦Y≦1023である。この場合には、輝度Yを最大値1023で割った値が補正曲線f(x)のxである。つまり、0≦x≦1となる。式(1)のパラメーターA、Bは、それぞれ最小の入力値、最大の入力値におけるf(x)の接線の傾きで与えられる。
【0039】
式(1)で表されるf(x)は3次の補正曲線であるが2つのパラメーターA、Bで定められる。そして、パラメーターA、Bは最小の入力値、最大の入力値におけるf(x)の接線の傾きで与えられる。そのため、本実施形態の画像処理装置10は、演算処理の負荷を減らして小さな回路規模で補正を行うことが可能になる。
【0040】
より高次の補正曲線を定める場合は3次の式(1)にもとづいて拡張できる。例えば、数4のg(x)は5次の補正曲線の例である。f(x)とf(x)は式(1)に基づいて得られる。
【0041】
【数4】

【0042】
ここで、式(5)のg(x)においてもg(0)=0、g(1)=1を満たす。また、A=B=A=B=1の場合にg(x)=xとなり、g(x)は式(1)のf(x)と同じ性質を有する。また、補正曲線g(x)の1階微分は数5で与えられる。
【0043】
【数5】

【0044】
式(3)、(4)より求まるA~Bより、式(8)で所定の値について計算をすると数6の関係が得られる。逆に、数6と、例えばg(1/2)、g’(1/2)の値を新たな制御パラメーターとしてA~Bを定めることもできる。
【0045】
【数6】

【0046】
なお、さらに高次の曲線を定める場合は一般に以下の式を用いることも出来る。
【0047】
【数7】

【0048】
1.2.2.ダイナミック補正における補正曲線の次数について
図2(A)、図2(B)はそれぞれ、前記の補正曲線による明るさ補正、コントラスト補正の補正曲線の例である。なお、これらの入力および出力は10ビットの画素値(ここでは輝度)であるとする。
【0049】
図2(A)の明るさ補正の補正曲線220A、220B、220Cはそれぞれパラメーター(A、B)を(A、B)、(A、B)、(A、B)と変更した場合に対応する。パラメーターAの増大につれて(C)、パラメーターBは減少する(C)。この変化は3次の補正曲線で実現可能である。
【0050】
図2(B)のコントラスト補正の補正曲線220D、220E、220Fはそれぞれパラメーター(A、B)を(A、B)、(A、B)、(A、B)と変更した場合に対応する。パラメーターAの減少につれて(C)、パラメーターBも減少する(C)。この変化は3次の補正曲線で実現可能である。
【0051】
ここで、前記の補正曲線によって複数のダイナミック補正を行う場合について検討する。3次の補正曲線を用いる明るさ補正と、3次の補正曲線を用いるコントラスト補正とを行う場合、連続して(シーケンシャルに)行うことが考えられる。しかし、補正に伴う演算処理の負荷が大きくなり、最終的に得られる特性を把握しにくい。
【0052】
しかし、シーケンシャルに補正を行わずとも、明るさ補正もコントラスト補正も3次の補正曲線で表すことが可能であり、このときパラメーターA、Bのみで補正曲線が決定される。したがって、両補正を合成した補正曲線も3次の補正曲線でパラメーターA、Bを適当に調整することで近似が可能である。
【0053】
図3(A)は、明るさ補正とコントラスト補正を合成した補正曲線222の例である。なお、図2(A)、図2(B)と入力、出力は同じであり、説明は省略する。補正曲線222は、明るさ補正とコントラスト補正の一方(例えば明るさ補正)の補正曲線に対して、他方の変化率を乗じて得られる。具体的手法については後述するが、補正曲線222もパラメーターA、Bによって定まる。
【0054】
他のダイナミック補正を考慮した場合でも(例えばカラーバランス補正)、3次の補正曲線を考慮すれば十分であり、この例のように、2つ以上の複数のダイナミック補正を合成した補正がパラメーターA、Bの調整だけで実現可能である。本実施形態のダイナミック補正の合成は、回路規模を最小にするために3次の補正曲線を用いている。そして、シーケンシャルに個々の補正を行う場合と比べて、合成後に最終的に得られる特性を把握しやすいとの利点がある。
【0055】
ここで、図2(A)、図2(B)、図3(A)の入力、出力の画素値は輝度であるとして説明してきた。しかし、輝度Yは数8のようにrgbから求められるため、輝度を補正することはrgb各色に対して補正をすることに等しい。
【0056】
【数8】

【0057】
例えば図3(A)の輝度Yに関する補正曲線は図3(B)のようにrgb各色の画素値の補正曲線222R、222G、222Bと対応する。よって、rgb各色の補正曲線を持ち、それぞれの補正曲線を定めるパラメーター(A、B)、(A、B)、(A、B)を求めることにより様々なダイナミック補正に対応することが可能である。このとき、式(1)は数9のようにrgb各色に展開される。
【0058】
【数9】

【0059】
本実施形態では、補正曲線はrgb各色について独立して存在するものとするが、以下において説明が重複する場合には1つの色についてのみ説明する。
【0060】
1.3.設定レジスター部
以下、本実施形態の画像処理装置10の各構成部分について具体例を示して説明する。設定レジスター部20は、例えば図4(A)のテーブルに従ってパラメーター初期値204を出力してもよい。この例では、設定レジスター部20はCPU(図外)から3ビットの制御信号202を受け取り、各ビットを補正処理と関連づけている。例えば、ビット2が“1”であれば明るさ補正が行われることを意味し、“0”であれば明るさ補正が行われないことを意味する。図4(A)のように、各補正に対応してパラメーター初期値204が用意されている。パラメーター初期値204は、パラメーターA、BがRGB各色にあるため、原則として1つの補正で6つの初期値を持つことになる。
【0061】
図4(B)は、設定レジスター部20の入出力の1つの具体例を示している。制御信号202が110b、すなわちビット2とビット1が“1”である場合には、明るさ補正とコントラスト補正が選択され、それぞれの補正に対応してパラメーター初期値204が出力される。
【0062】
なお、図4(A)のカラーバランス補正とは環境光に対する画像の色補正であってもよい。例えば、赤みがかった白熱電球の下で画像の赤を強調するような補正である。このカラーバランス補正では、制御信号202の他に環境光の情報(ホワイトポイント情報)が設定レジスター部20に入力されてもよい(図外)。例えば、D65光源に対する色順応予測として、rgb各色の変換テーブルは数10のようになる。
【0063】
【数10】

【0064】
ここで、r、g、bはホワイトポイント(白色点)のxy色度座標の座標をx、yとして数11で表される。
【0065】
【数11】

【0066】
環境光に対するカラーバランス補正では、補正によって平均輝度が低下しないこと、グレースケールでの比率が変化しないことが必要である。まず、式(16)の変換テーブルを反映させるため補正曲線f(x)を数12のように変形する。
【0067】
【数12】

【0068】
なお、式(18)のDは補正曲線f(x)の曲線制御パラメーターである。式(18)のf(x)を用いると、カラーバランス補正は数13のように表すことができる。
【0069】
【数13】

【0070】
式(20)〜式(22)では、平均輝度を低下させないために補正曲線f(x)にGを用いた係数を乗じている。また、グレースケールでの比率を変化させないために、RGBで共通のf(x)を用いている。このとき、図4(A)のパラメーター初期値204についてもRGBで共通である。すなわち、(G,D)=(Ar0,Br0)=(Ag0,Bg0)=(Ab0,Bb0)となる。
【0071】
1.4.統計解析部
統計解析部40は、入力画像の画素の画素値200をバッファーに一時的に保持し、保持した画素値について演算処理を行い入力画像の統計情報206を生成する。図4(B)の例では明るさ補正とコントラスト補正が選択されているので、少なくともこれらについての統計情報206がパラメーター生成部30に出力される。
【0072】
図4(B)の例において、統計解析部40は、例えば明るさ補正に関して、1フレームの入力画像の輝度についてヒストグラムを作成し、最大値および最小値の情報を統計情報206として出力してもよい。また、統計解析部40は、例えばコントラスト補正に関して、1フレームの入力画像の輝度についてヒストグラムを作成し、中間レベルの値に偏っているかなどの分布に関する情報を統計情報206として出力してもよい。
【0073】
ここで、入力画像の画素の画素値200は、rgb形式でもyuv形式であってもよいが本実施形態ではrgb形式であるとする。rgb形式の場合には888フォーマット(各色8ビット)でも、565フォーマット(Gは6ビット、他は5ビット)でもよいが、本実施形態では、画素値200として各色10ビットで入力されるものとする。なお、別の例として、画素値200はrgb888フォーマットであり、統計解析部40(および補正出力部50)で2ビットの左シフトが行われて10ビットのデータとして扱われてもよい。
【0074】
なお、統計解析部40は、1フレームの画像について統計解析を行って統計情報206を出力する。そのため、統計情報206は、次フレーム以降の画像に用いる補正曲線の係数を定めるパラメーターに反映される。しかし、動画像では時間領域での相関が高いために、適切な補正が行われることになる。
【0075】
1.5.パラメーター生成部
パラメーター生成部30は、設定レジスター部20からパラメーター初期値204を受け取り、統計情報206に基づいてパラメーター初期値204を修正したパラメーター208を出力する。なお、統計情報206がない最初のフレームについてはパラメーター初期値204をパラメーター208として出力してもよい。
【0076】
図4(C)は、図4(B)の例におけるパラメーター生成部30の入出力を示す図である。このとき、パラメーター生成部30は、明るさ補正、コントラスト補正についての統計情報206に基づいて、パラメーター初期値204について修正および合成をおこなって、3次補正曲線を定めるパラメーター(A、B)、(A、B)、(A、B)を出力する。R成分を例にとり説明をする。パラメーター生成部30は、明るさ補正のパラメーター初期値(Ar2、Br2)を統計情報206に基づいて(ArB、BrB)に修正する。例えば、統計情報206で得られた入力画像の最大値が出力可能な最大値1023よりも極端に小さい場合などには初期値Br2から傾きの大きいBrBに修正する。そして、パラメーター生成部30は、コントラスト補正のパラメーター初期値(Ar1、Br1)を統計情報206に基づいて(ArC、BrC)に修正する。そして、コントラスト補正の補正曲線に明るさ補正の変化率を乗じて、コントラスト補正と明るさ補正を合成した補正曲線のパラメーター(A、B)を求め、パラメーター208として出力する。なお、G成分、B成分についても同様である。
【0077】
図5(A)〜図5(C)は、パラメーター208を決定する方法の例を示す図である。ここでもR成分を例にとり説明するが、G、B成分についても同様である。図5(A)は、統計情報206に基づいて修正された明るさ補正の補正曲線f(x)を示す。入力と出力は正規化していない10ビットの数値である。補正曲線f(x)を定めるパラメーターArBとBrBは、それぞれ入力の最小値と最大値におけるf(x)の傾きに等しい。ここで、補正曲線f(x)の変化率は、f(x)/xであり、この変化率をコントラスト補正の補正曲線に乗じることで、コントラスト補正と明るさ補正を合成することができる。
【0078】
図5(B)は、統計情報206に基づいて修正されたコントラスト補正の補正曲線f(x)を示す。入力と出力は正規化していない10ビットの数値である。補正曲線f(x)を定めるパラメーターArCとBrCは、それぞれ入力の最小値と最大値におけるf(x)の傾きに等しい。ここで、補正曲線f(x)と点線で示される直線(出力=入力)との交点を求める。この交点における入力の値xをxとする。この例では、x=512であり、f(x)=xが成り立つ。
【0079】
図5(C)は、補正曲線f(x)に補正曲線f(x)の変化率を乗じて求められた、コントラスト補正と明るさ補正を合成した補正曲線f(x)を表す。最初、補正曲線f(x)は補正曲線f(x)と同じ曲線でありf(x)=xが成り立っている。次に、f(x)=f(x)となるようにパラメーターA、Bを調整する。その結果、得られる補正曲線f(x)は補正曲線f(x)に補正曲線f(x)の変化率を乗じた曲線であり、パラメーター生成部30は、このときのパラメーターA、Bをパラメーター208として出力する。
【0080】
1.6.補正出力部
補正出力部50は、パラメーター208を受け取って補正曲線を決定する。先の例ではコントラスト補正と明るさ補正を合成した補正曲線が定められる。そして、補正曲線で表される積和演算を行い、入力画像の画素の画素値200を補正して出力画素値210を出力する。
【0081】
この例では補正曲線は3次式であるため、3つの積和演算器で演算が可能である。このとき、1つの積和演算器から出力された結果は直ちに他の積和演算器に入力されるため、補正曲線に従う積和演算を高速に行うことが可能になる。しかし、本実施形態では回路規模を小さくするために、1つの積和演算器で補正曲線に従う積和演算を行う。
【0082】
図6(A)は本実施形態の補正出力部50の構成例を表す。補正出力部50は、1つの積和演算器32、パラメーター(A、B)から補正曲線の係数を求める係数演算部38、マルチプレクサー37、34の選択信号238、239を生成するのに用いられるカウンター39、レジスター35、36等を含む。ここで、パラメーター(A、B)はrgbの各色のパラメーター(A、B)、(A、B)、(A、B)を含むものとする。この例ではrgbの各色が同時に補正されるとして説明するが、別の例では色毎に補正出力部50が用意されていてもよいし、時分割で色毎に処理が行われてもよい。
【0083】
本実施形態では画像データは走査方式で入力され、入力画像の画素の画素値200はシステムクロックに同期して順次変化する。補正出力部50には、1つの積和演算器32で補正曲線に従う積和演算を行うために、システムクロックの3倍のクロック(以下、積和演算クロック)が供給されているものとする。なお、N次式の補正曲線に従う場合にはN倍のクロックが供給される必要がある。
【0084】
ここで、補正曲線を表す式(1)を補正出力部50での処理に従い変形すると数14のようになる。
【0085】
【数14】

【0086】
ここで、式(23)のxは正規化された画素値200に対応し、積和演算器32はKx+L(=N)、Nx+Mを中間値として求めてから式(23)全体を計算する。なお、K、L、Mは式(24)〜式(26)の通りである。また、図6(B)の演算値230の値に含まれるN(i=0、1、…)は数15で表される。
【0087】
【数15】

【0088】
図6(B)は図6(A)の補正出力部50の波形図の例である。画素値200がxの場合、補正された画素値f(x)は積和演算クロックで3サイクル後に出力画素値210として出力される(t3)。係数演算部38は、第1の係数232として式(24)のKを出力し(t0〜t3)、第2の係数236としてL、Mを出力する(t0〜t1、t1〜t2)。なお、加算が行われない場合には第2の係数236はゼロになる(t2〜t3)。
【0089】
カウンター39は積和演算クロックの3サイクルをカウントする(t0〜t3)。積和演算器32の被乗数234は、カウント値237が0のときは第1の係数232であり、その他の場合にはレジスター36に保持された積和演算器32の出力である。つまり、選択信号238はカウント値237が0の場合にのみ第1の係数232を選択する。例えば、被乗数234は、t1〜t2において積和演算器32から出力された中間値Kx+L(=N)を与える。
【0090】
積和演算器32は、画素値200がxの場合、中間値を出力(t0〜t2)した後に補正された画素値f(x)を出力する(t2〜t3)。選択信号239はカウント値237が2の場合にのみ、演算値230をレジスター35の入力として選択する。その他の場合にはレジスター35はそれまでの値を保持する。これにより、出力画素値210は積和演算クロックで3サイクルの間、補正された画素値を保持する(t3)。
【0091】
このように、本実施形態の画像処理装置10は、直接的なCPUによる処理を要することなく、複数のダイナミック補正を同時に小さな回路規模で実行することができる。
【0092】
2.第2実施形態
本発明の第2実施形態について図7〜図8を参照して説明する。なお、図7〜図8では、図1〜図6と同じ要素には同じ番号を付しており説明を省略する。
2.1.第2実施形態の補正出力部
図7は、第2実施形態の補正出力部50Aの構成を示す図である。第1実施形態と異なり、補正出力部50Aは2つのルックアップテーブル(LUT−A80、LUT−B82)を含む。ルックアップテーブルは例えばテーブルメモリーにテーブル値を保持し、入力されたデータ(ここでは画素値)をテーブル値に従って変換して出力する。積和演算を行わなくても変換後の値を瞬時に得られるために演算時間短縮等の目的で用いられる。本実施形態では、例えば表示パネルの個体差の補正を目的とするスタティック補正用のルックアップテーブルが存在する場合に、ダイナミック補正も同時に実行することができる。なお、設定レジスター部20、パラメーター生成部30、統計解析部40は第1実施形態と同じである。
【0093】
図7のLUT−A80は保存用のルックアップテーブルであり、スタティック補正用のテーブルを保持する。一方、LUT−B82はそのテーブル値を書き換えるために用意されており、パラメーター生成部30で生成されるパラメーターによって決定する補正曲線に従うダイナミック補正が反映される。つまり、補正出力部50Aは、LUT−B82のテーブル値を補正前テーブル値242として読み込み、ダイナミック補正を行って、補正後テーブル値240としてLUT−B82に書き込む処理を行う。入力画像の画素の画素値200はLUT−B82のテーブル値によって変換されて出力画素値210として出力される。なお、テーブル値の更新処理は垂直ブランキング期間に行われるので、入力画像の変換処理と衝突することはない。図7の例では、垂直ブランキング期間に対応する選択信号241を用いたマルチプレクサー54で両処理の衝突を防止している。
【0094】
LUT−B82のテーブル値は図7の点線が示すようにLUT−A80のテーブル値をロードできる。補正出力部50Aは、LUT−B82がスタティック補正用のテーブルをLUT−A80からロードした後に、LUT−B82のテーブル値にダイナミック補正を反映させる。このとき、スタティック補正を行うテーブル値に更にダイナミック補正が施されているので、画素値200にはスタティック補正とダイナミック補正が同時に行われることになる。
【0095】
なお、初期のテーブル値を与える目的で、又はテーブル値の修正のためにCPUが直接LUT−A80、LUT−B82にアクセスしてもよい。しかし、本実施形態では画像処理装置10は初期のテーブル値を保持するROM(図外)を含み、画像処理装置10の起動時等にROMからLUT−A80、LUT−B82に初期のテーブル値がロードされるものとする。
【0096】
また、ダイナミック補正におけるパラメーターA、Bの決定の仕方は図5(A)〜図5(C)での手順と同じである。例えば、図5(A)の補正曲線f(x)がダイナミック補正の1つではなく、スタティック補正のテーブル値を反映した曲線であると考えて、図5(B)〜図5(C)と同じ手法によりパラメーターA、Bを求めればよい。
【0097】
2.2.第2実施形態の処理のフローチャート
図8は、第2実施形態の画像処理装置の処理例を示すフローチャートである。まず、ROMに格納されているスタティック補正のテーブル値をLUT−A80とLUT−B82の両方にロードする(S2)。LUT−B82のテーブル値によって、画素値200が変換されて出力画素値210として出力され、画像が表示され始める(S4)。そして、CPUは制御信号202によりダイナミック補正の種類を指定する(S6)。そして、統計解析部40による1フレームの画像の統計解析が行われる(S8)。パラメーター生成部30は、統計情報206に基づいてダイナミック補正のパラメーターA、Bを更新する(S10)。動画像の垂直ブランキング期間にLUT−A80のテーブル値がLUT−B82にロードされる(S12)。補正出力部50はLUT−B82のテーブル値をダイナミック補正の補正曲線に従って更新してLUT−B82に書き戻す(S14)。そして、次のフレームの画像からは更新されたテーブル値による変換が行われることになる。動画の表示の終了する場合(S18Y)には処理を終了し、そうでなければS4に戻って一連の処理が繰り返される。なお、テーブル値のロード(S12)だけでなく、テーブル値の更新(S14)も垂直ブランキング期間に行う必要がある。統計情報206を取得したフレームの直後のフレームから更新したテーブル値で補正を行うことを可能にするためである。
【0098】
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0099】
10…画像処理装置、20…設定レジスター部、30…パラメーター生成部、32…積和演算器、34、54…マルチプレクサー、35…レジスター、36…レジスター、37…マルチプレクサー、38…係数演算部、39…カウンター、40…統計解析部、50…補正出力部、50A…補正出力部、80…ルックアップテーブル(LUT−A)、82…ルックアップテーブル(LUT−B)、200…画素値、202…制御信号、204…パラメーター初期値、206…統計情報、208…パラメーター、210…出力画素値、220A、220B、220C、220D、220E、220F、222、222R、222G、222B…補正曲線、230…演算値、232…第1の係数、234…被乗数、236…第2の係数、237…カウント値、238、239、241…選択信号、240…補正後テーブル値、242…補正前テーブル値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補正曲線を用いて入力画像の補正を行う画像処理装置であって、
前記補正曲線の係数を定めるパラメーターの初期値を出力する設定レジスター部と、
前記入力画像の画像データを統計的に解析する統計解析部と、
前記パラメーターの初期値を、前記統計解析部からの統計情報に基づいて変更するパラメーター生成部と、
前記パラメーター生成部で変更されたパラメーターに基づいて前記補正曲線の係数を定め、前記入力画像の各画素の画素値を前記補正曲線に基づいて補正して出力する補正出力部と、を含み、
前記補正曲線は3次以上の関数であって、前記パラメーターは前記補正曲線の次数よりも少ない画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記パラメーターは、前記補正曲線の所定の値における接線の傾きである画像処理装置。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記補正曲線は3次関数である画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置において、
前記パラメーターは、前記補正曲線の最小の入力値と最大の入力値における接線の傾きで与えられる画像処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記補正出力部は、
前記入力画像の補正に用いるルックアップテーブルを有し、
前記ルックアップテーブルの各テーブル値を前記補正曲線に基づいて更新し、更新された前記ルックアップテーブルを用いて前記入力画像の各画素の画素値を補正する画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置において、
前記入力画像は動画の1フレーム分の画像であって、
前記補正出力部は、
垂直ブランキング期間に前記ルックアップテーブルの各テーブル値を前記補正曲線に基づいて更新する画像処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記補正出力部は、
1つの積和演算器を含み、
前記積和演算器を用いて前記入力画像の各画素の画素値を前記補正曲線に基づいて補正する画像処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記設定レジスター部は、
前記補正の種類に応じて出力される複数のパラメーターの初期値を含む画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−88954(P2012−88954A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235381(P2010−235381)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】