説明

画像定着装置

【課題】クイックスタートができ、消費電力を低く抑えることができると共に高速で定着を行うことができる安全性の高い画像定着装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る画像定着装置は、少なくとも抵抗発熱体層と絶縁層と離型層とを有する発熱ベルトと、発熱ベルトの内側に配置される弾性体ロールと、発熱ベルトの外側から発熱ベルトを介して弾性体ロールに押し付けられる加圧ロールと、抵抗発熱体層に給電するための給電手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンター等の画像形成装置の画像定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザービームプリンター等の画像形成装置では、画像成形部において複写紙やOHP等のシート状転写材上に形成された未定着トナー像を熱定着する方法として熱ローラ方式が多く用いられてきた。しかし、省エネルギーなどの観点から近年は、図8に示されるフィルム定着方式が主流になってきている。
【0003】
このフィルム定着方式の画像形成装置40では、ポリイミド等の耐熱性フィルムの外面にフッ素樹脂等の離型性層が積層されたシームレスの定着ベルトが用いられている。その一例を図8に基づいて説明する。
【0004】
フィルム定着方式の画像形成装置70では、定着ベルト71の内側にベルトガイド72及びセラミックヒーター73が配置されており、定着ベルト71を介してセラミックヒーター73に圧接される加圧ロール74と定着ベルト71との間に、未定着トナー像78が形成された複写紙77が順次送り込まれ、トナーが加熱溶融させられて複写紙上に熱定着される。このような画像形成装置70ではトナーが極めて薄いフィルム状の定着ベルト71を介してセラミックヒーター73により実質的に直接加熱されるため、定着ベルト71と加圧ロール74の接触面N(ニップ面)が瞬時に所定の定着温度に達する。したがって、このような画像形成装置70は、電源の投入から定着可能状態に達するまでの待ち時間が短く、消費電力も小さい。このため、このような画像形成装置70は、家庭用から産業用まで広く使用されている。なお、図8中、符号75はサーミスタであり、符号79は定着されたトナー像であり、符号76は加圧ロール74の芯金部である。
【0005】
ところで、このような従来のフィルム定着方式の画像形成装置では、上述したように、セラミックヒーターを介して定着ベルトが加熱され、その表面でトナー像が定着されるため、定着ベルトの熱伝導性が重要なポイントとなる。しかし、定着ベルトを薄膜化して熱伝導性を改善しようとすると、機械的特性が低下し高速化が難しくなり、セラミックヒーターが破損しやすくなるという問題があった。このような問題を解決するために、近年、定着ベルトそのものに発熱体を設け、この発熱体に給電することにより定着ベルトを直接発熱し、トナー像を定着させる方式が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。この方式の画像形成装置は、電源の投入から定着可能状態に達するまでの待ち時間がさらに短く、消費電力もさらに小さく、熱定着の高速化などの面からも優れている。
【特許文献1】特開2000−066539号公報
【特許文献2】特開平10−142972号公報
【特許文献3】特開2000−058228号公報
【特許文献4】特開平5−188809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような新方式の画像形成装置にはまだ多くの問題が山積されており、このような新方式の画像形成装置は実用化に至っていない。
【0007】
例えば、上記特許文献に記載されたベルトヒーター方式では、以下のような問題点を有する。なお、本願では電子写真画像形成プロセスの定着方式に関して記述するにあたり、図8に示す定着方式を「フィルム定着方式」、上記特許文献に記載される定着方式を「ベルトヒーター方式」、本願の方式を「発熱ベルト方式」と記して説明する。
【0008】
ベルトヒーター方式の定着ベルトヒーターでは、カーボン粉末や金属粉末等の導電性材料をポリイミド又はシリコーンゴム等の耐熱絶縁基材に混合して発熱層が形成される。このため、均一な発熱領域を有する発熱体を得ることが難しい。また、特許文献3には、発熱体材料として主にカーボンナノチューブとカーボンマイクコイルとから形成された薄膜抵抗発熱体と、この薄膜抵抗発熱体を用いたトナーの加熱定着用部材とが開示されている。しかしながら、発熱体材料がカーボンナノチューブやカーボンマイクロコイルのみから形成されている場合、体積抵抗率を下げるためにカーボンナノチューブ等の混合量を増加させると、発熱体の機械的特性が急激に低下するという問題があり、体積抵抗率の低い発熱抵抗体を作製することが非常に難しい。
【0009】
また、特許文献1には遠心成形方法で定着ベルトヒーターを成形することが記載されている。しかし、このような成形方法では、内径の小さい(10〜20mm)定着ベルトを大量生産することが難しく、レーザービームプリンター等の低価格化に対応できないという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献4には耐熱性及び絶縁性を有するポリイミドやポリアミドイミド樹脂基体内に発熱体を混合させて射出成形などの方法で円筒状の発熱ロールとして成形することが記載されている。しかし、このような発熱ロールではロール自体が弾性(柔らかさ)を持たず加圧ロールとのニップ面が狭くなるため、未定着トナー像を十分に加熱することが難しく、高速化に対応できない。また、4色のトナーをニップ面で十分に溶融させ、混色させるカラー画像の定着においても多くの問題がある。
【0011】
さらに現在、画像定着装置の主流として幅広く使用されているフィルム定着方式においても以下のような問題点がある。図8に示すフィルム定着方式の画像形成装置70では、加圧ロール74に駆動源が連結されており、この駆動力により定着ベルト71を従動回転され、加圧ロール74と定着ベルト71との間に形成されるニップ部Nに送り込まれた転写紙が挟接されて排紙されながら熱と圧力によって定着される。
【0012】
このような方式の画像形成装置は、シンプルで軽量に構成されているが、このような画像形成装置の場合、加圧ロールの加圧力を十分に高くしないと加圧ロールと転写紙との接触面、あるいは転写紙と定着ベルトとの接触面でわずかなスリップが発生する。このようなスリップ現象は画質を低下させるばかりでなく、定着フィルム表面の離型層を磨耗劣化させる要因にもり、ひいてはオフセット等を引き起こす原因にもなる。
【0013】
また、同時に、定着ベルトにはセラミックスヒーターとの接触抵抗もあり、セラミックスヒーターの表面にはグリスや、シリコンオイルなどの離型剤を塗布し、定着ベルトの内面とセラミックスヒーターとの摩擦抵抗を低減させなければならない問題もある。
【0014】
また、高速定着に対応するために、セラミックスヒーターの幅を広くすること、温度を上げること、加圧ロールのゴム硬度を下げてニップ部の面積を広げることが提案されているが、このような方法は省エネルギー化に反するばかりでなく、セラミックスヒーターが平板状であるため定着ベルトが不自然な角度で折曲げられて回転させられることによって、屈曲疲労の累積が耐久性を低下させる問題もある。
【0015】
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、電源投入からの待機時間が非常に短くクイックスタートができ、消費電力を低く抑えることができると共に、高速で定着を行うことができる安全性の高い画像定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1発明に係る画像定着装置は、発熱ベルト、弾性体ロール、加圧ロール及び給電手段を備える。発熱ベルトは、少なくとも抵抗発熱体層と絶縁層と離型層とを有する。なお、抵抗発熱体層と絶縁層と離型層とは積層されているのが好ましい。弾性体ロールは、発熱ベルトの内側に配置される。なお、この弾性体ロールは、発熱ベルトを内側から支持している。加圧ロールは、弾性体層を有している。また、この加圧ロールは、発熱ベルトの外側から発熱ベルトを介して弾性体ロールに押し付けられる。この結果、発熱ベルトと加圧ロールとの間にニップ部が形成されることになる。給電手段は、抵抗発熱体層に給電するための手段である。
【0017】
第2発明に係る画像定着装置は、第1発明に係る画像定着装置であって、弾性体ロールは、弾性体の硬度が3度以上60度未満である。
【0018】
第3発明に係る画像定着装置は、第1発明又は第2発明に係る画像定着装置であって、弾性体ロールは、弾性体が発泡体である。
【0019】
第4発明に係る画像定着装置は、第1発明から第3発明のいずれかに係る画像定着装置であって、弾性体ロールは、外表面が発熱ベルトの内周面と面接触しながら回転する。
【0020】
第5発明に係る画像定着装置は、第1発明から第4発明のいずれかに係る画像定着装置であって、加圧ロールの芯金および弾性体ロールの芯金の少なくとも一方の芯金は、回転駆動源に連結されている。
【0021】
第6発明に係る画像定着装置は、第1発明から第5発明のいずれかに係る画像定着装置であって、抵抗発熱体層は、カーボンナノ材料及びフィラメント状金属粒子が分散されるポリイミド樹脂からなる。
【0022】
第7発明に係る画像定着装置は、第6発明に係る画像定着装置であって、カーボンナノ材料は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルより成る群から選択される少なくとも1つの導電性物質である。
【0023】
第8発明に係る画像定着装置は、第6発明又は第7発明に係る画像定着装置であって、フィラメント状金属粒子は、ストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル粒子である。なお、フィラメント状ニッケル粒子は図5に示されるような形状を呈するのが好ましい。フィラメント状ニッケル粒子がカーボンナノファイバー等と絡まり合い、抵抗発熱体層の低抵抗化が実現されるからである。
【0024】
第9発明に係る画像定着装置は、第6発明から第8発明のいずれかに係る画像定着装置であって、カーボンナノ材料及びフィラメント状金属粒子は、略一方向に配向する。
【0025】
第10発明に係る画像定着装置は、第9発明に係る画像定着装置であって、カーボンナノ材料及びフィラメント状金属粒子は、発熱ベルトの長さ方向に沿って配向している。また、発熱ベルトは、長さ方向の体積抵抗率が長さ方向と直交する方向の体積抵抗率よりも小さい。
【0026】
第11発明に係る画像定着装置は、第6発明から第10発明のいずれかに係る画像定着装置であって、ポリイミド樹脂は、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物とを有機極性溶媒中で重合してなるポリイミド前駆体がイミド転化されたポリイミド樹脂である。
【0027】
第12発明に係る画像定着装置は、第1発明から第11発明のいずれかに係る画像定着装置であって、絶縁層は、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物とを有機極性溶媒中で重合してなるポリイミド前駆体がイミド転化されたポリイミド樹脂からなる。
【0028】
第13発明に係る画像定着装置は、第11発明又は第12発明に係る画像定着装置であって、芳香族ジアミンは、パラフェニレンジアミン(PPD)である。また、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)である。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る画像定着装置では、弾性体ロール及び加圧ロールがそれぞれ弾性体を有しているため、ニップ幅を広く設計することができる。このため、高速での定着、及びフルカラー画像の画質の向上、並びにフルカラー定着の高速化が可能である。また、弾性体が発泡体であると、断熱効果があり、抵抗発熱体層の熱量を効率よく画像定着に用いることができる。
【0030】
また、抵抗発熱体層のマトリックス樹脂および絶縁層がポリイミド樹脂であると、発熱ベルトは、定着温度範囲である180〜250度Cの高温領域でも連続使用が可能である。また、抵抗発熱体層中に混合している導電性物質を一定の方向に配向させれば、体積抵抗率のばらつきを小さくすることができると共に、少ない導電性物質の混合量で所望の体積抵抗率を得ることができる。また、カーボンナノ材料とフィラメント状ニッケル粒子との混合比を変えることによって幅広い領域で精度の高い体積抵抗率を有する発熱ベルトを設計することができる。
【0031】
また、本発明に係る画像定着装置では、従来のように特別なセラミックヒーター等を必要とすることなく、発熱ベルトの抵抗発熱体層に直接給電することによって発熱ベルト自体が発熱する。このため、この画像定着装置は、熱効率が高く、また、電源を投入してから待機時間がなく、クイックスタートができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0033】
本発明の一実施形態に係る画像定着装置30を図1に基づいて説明する。この画像定着装置30は、主に、発熱ベルト31と、発熱ベルト31の内側に配置される弾性体ロール41と、加圧ロール36と、発熱ベルト31の外表面両端部に設けられた電極層37と、電極層37に接触して電力を供給する給電ロール33とから構成される。
【0034】
加圧ロール36は発熱ベルト31を介して弾性体ロール41に押し付けられており、その結果、発熱ベルト31と加圧ロール36との間にはニップ部Nが形成されている。未定着トナー像38が形成された転写紙39がこのニップ部Nに挿入されると、未定着トナー像38が転写紙39に熱定着される。
【0035】
発熱ベルト31を回転させるための駆動源は加圧ロール36、あるいは弾性体ロール41のいずれに設けてもよい。いずれか一方のロール36,41で駆動させる場合、他方のロール36,41はニップ部Nにおける圧接力によって従動する。このように、いずれか片方のロール36,41のみに駆動源を連結させる場合、ニップ部Nに転写紙39が挿入され未定着トナー像38が転写紙39に定着されているときに、転写紙39を介していずれかのロール36,41を従動回転させる必要があるため、高速化時において転写紙39の種類によっては微小のスリップが伴うことがある。このような微小なスリップを防止するためには、駆動側のロール36,41からギアーを介して従動側のロール36,41に正確に回転動力を伝達するのが好ましい。
【0036】
発熱ベルト31に給電するための一対の電極層37は、発熱ベルト31の両端に設けられており、その表面で回転しながら接触する給電ロール33から電力が供給され、発熱ベルト31の内部の抵抗発熱体層(後述)が発熱する。定着温度の制御については図示しないが、発熱ベルト31の表面に接触させたサーミスタから得られる温度情報に基づいて温度コントロールがなされる。
【0037】
なお、図1(a)中、符号42は電源であり、符号35は加圧ロールの芯金であり、符号43はリード線である。なお、図1(b)は図1(a)のI−I断面図である。
【0038】
本発明の一実施形態に係る画像定着装置30では、弾性体ロール41及び加圧ロール36がいずれも弾性層32を有しているため、ニップ部Nを広く設計することができ、高速定着、あるいはフルカラー画像の定着及び高速化に優れている。
【0039】
次に、本発明の一実施形態に係る弾性体ロール41を形成するゴム材料としては、画像定着の必要温度である150度C〜250度Cの耐熱性を有するものであれば特に限定されるものではない。シリコーンゴムは耐熱性、加工性の面から最も好ましい弾性層32の材料である。この弾性体ロール41としては、基本的には、アルミニウムあるいは鉄製の芯金34の外面をブラスト処理などにより粗面化処理を行った後にその外周面にシリコーンゴムなどの弾性層32を成形したものを用いる。なお、弾性層32としてはソリッドゴム層、あるいは断熱効果を持たせるためにシリコーンゴムを発泡して形成されたスポンジゴム層が好ましい。
【0040】
また、本発明の一実施形態では、弾性体ロール41の外側に発熱ベルト31が配置されているため、弾性層32はできるだけ低熱容量で熱伝導率が低く断熱効果の高い材質で形成されているのが好ましい。画像定着装置30のクイックスタート及び熱効率に有利だからである。
【0041】
シリコーンゴムから成るソリッドゴム層は熱伝導率が0.20〜0.30W/(m・k)であり、スポンジゴムは0.10〜0.15W/(m・k)であり、スポンジゴムであればソリッドゴムの約2倍程度まで断熱効果を上げることができる。また、上記弾性層32の硬度は3度以上60度未満であることが好ましい。5度以上60度未満であることがより好ましい。さらに好ましくは30度以上50度未満の範囲である。このような硬度であると、発熱ベルト31を介して加圧ロール36を押し付けた場合、ニップ面積を広く設計することができるからである。
【0042】
なお、上記した弾性層32の熱伝導率や硬度などの選定は、画像定着装置30の処理速度や発熱ベルト31の内径などの仕様に基づいて行うことができる。また、弾性層32の厚みが薄すぎる場合には金属製の芯金34が熱を奪うことになるため、弾性層32には適度な厚みが必要であるが、その厚みは3mm〜10mmであることが好ましい。また、断熱特性を向上させるために弾性層32の中に中空状のガラス、シリカ、アルミナなどのフィラーを混合することが好ましい。
【0043】
次に、本発明の一実施形態に係る画像定着装置30は、加圧ロール36と発熱ベルト31の外面とが面接触することにより、又は、弾性体ロール41と発熱ベルト31の内面とが面接触することにより発熱ベルト31が従動回転するような構成であることが好ましい。従来技術のようにヒーターの取り付けやグリス塗布などの組み立て工程が不要となり、発熱ベルト31の内側に弾性体ロール41を挿入する工程で足り、画像定着装置30の組み立て工程が非常にシンプルになるからである。
【0044】
また、本発明の一実施形態に係る画像定着装置30では、加圧ロール36の芯金35及び弾性体ロール41の芯金34の少なくとも一方が回転駆動源に連結されている。回転駆動はいずれのロール36,41から供給してもかまわない。発熱ベルト31を従動回転させるためには弾性体ロール41に駆動源を連結することが好ましい。発熱ベルト31の内面との接触面積を多くすることができるからである。したがって、弾性体ロール41に用いられるゴム材料としては、断熱特性と、発熱ベルト31の内面に接触してスリップを起こしにくい高密着性を有するゴムを用いることが好ましい。
【0045】
また、加圧ロール36の芯金35及び弾性体ロール41の芯金34のいずれか一方が回転駆動源に連結され、他方のロール36,41の芯金34,35が歯車などを介して回転駆動源に連結されてもよい。加圧ロール36、発熱ベルト31及び弾性体ロール41をより正確に回転させることができるからである。
【0046】
次に、本発明の一実施形態に係る発熱ベルト31を図2及び図3に基づいて説明する。発熱ベルト31は、図2及び図3に示されるように、第1絶縁層1、抵抗発熱体層2、第2絶縁層3、離型層4及び電極層37からなる。なお、この発熱ベルト31では、最も内側に第1絶縁層1が形成されており、第1絶縁層1の外側に抵抗発熱体層2が形成されており、さらに抵抗発熱体層2の外側に電極層37を除いて第2絶縁層3が形成され、さらに、第2絶縁層3の外側に電極層37を除いて離型層4が形成されている。このような構成を採用すると、第1絶縁層1の熱伝導性は定着条件に関係なくなり、発熱ベルト31の十分な機械的特性を満たすだけの目的で絶縁層1,3の厚みを決定することができる。また、抵抗発熱体層2のマトリックス樹脂及び絶縁層1,3を形成する樹脂は、すべてポリイミド樹脂である。このため、発熱ベルト31は、薄膜であっても、十分な機械的特性と剛性とを有する。また、ポリイミド樹脂は、プラスチック材料の中では最高の耐熱性、絶縁性及び安全性を有する。電極層37は、抵抗発熱体層2への給電のために設けられており、最外層の両端部に形成されている。そして、この電極層37に給電ロール33や電極ブラシを接触させて、この電極層37が給電が行われると、この抵抗発熱体層2が発熱する。
【0047】
また、抵抗発熱体層2の外側には薄膜の第2絶縁層3及び離型層4のみが存在することになるため、クイックスタートあるいは省エネルギーの面からも好ましい。なお、熱伝導性、機械的特性あるいは離型性などの特性を複合的に得るために、必要に応じて発熱ベルト31を多層化して機能を付加することができる。なお、電極層37は、導電性インクや導電性ペースト等を塗布して形成してもよいし、金属箔、金属網などを接着して形成してもかまわない。
【0048】
また、本発明の一実施形態に係る発熱ベルトは、レーザービームプリンターの用途では10mm〜70mmの内径のものが好適に用いられ、複写機など高速定着の用途では30mm〜120mmの内径のものが好適に用いられる。
【0049】
本発明の実施の形態において、発熱ベルト31の抵抗発熱体層2では、ポリイミド樹脂からなるマトリックス樹脂中にカーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子とが実質的に均一に分散されて存在している。なお、カーボンナノ材料はカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルより成る群から選択される少なくとも1つの導電性物質であることが好ましい。このようなカーボンナノ材料は、その繊維径が数nm〜数百nmであり、繊維長さが数μm〜数十μmであり、嵩密度が0.01〜0.3g/cm3であり、比表面積が10〜100m2/gである。この中でも、カーボンナノファイバーは特に好ましい導電性物質であり、特に、繊維径が20〜200nmであり、繊維長が0.1〜10μmであるものが好ましい。ポリイミド前駆体溶液に均一に分散させやすく、また、略一方向に配向させやすいからである。
【0050】
また、本発明の実施の形態では、上述したように、抵抗発熱体層2にはカーボンナノ材料と共にフィラメント状金属微粒子を含むことが必須条件である。レーザービームプリンターなどの画像定着装置では、A4サイズ用紙上の未定着トナー像を、1分間に30〜40枚の速度で熱定着させる能力が要求されるため、定着部では500〜1000Wの発熱量が必要であり、かつ、均一な発熱面が要求されるからである。なお、このような発熱特性をカーボンナノ材料のみでコントロールすることは困難である。なぜならば、カーボンナノ材料のみを混合して数オームレベルの低い電気抵抗を得るためには、ポリイミド前駆体の固形分に対して多量のカーボンナノ材料を混合させる必要があり、このような混合量では抵抗発熱体層2の機械的特性を著しく低下させることになるからである。したがって、このような特性に必要な発熱量と十分な機械的特性とを両立させるためには、カーボンナノ材料とともに、カーボンナノ材料よりも導電性の高いフィラメント状金属微粒子を含むことが必須である。
【0051】
フィラメント状金属微粒子としては、針状結晶状の銀粒子や、アルミニウム粒子、ニッケル粒子などが挙げられる。なお、ストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子がより好ましい。このニッケル微粒子は、平均粒子径が0.1〜5.0μmであり、比表面積が1.0〜100m2/gであり、図5の写真のようにストランドが三次元的に連なった形状を有し、カーボンナノ材料と線状に絡み合うことによって、低い抵抗発熱体を形成することができ、均一な体積抵抗率を有する抵抗発熱体層2を成形することができるからである。カーボンナノ材料と混合される金属微粒子が粒状や、粉末状、塊状の場合、その金属微粒子はカーボンナノ材料と絡み合わず点接触になるため、均一な抵抗発熱体層2を作製することが難しい。なお、金属微粒子とカーボンナノ材料とが点状接触となると、通電中に極微細なスパークが発生しやすく、抵抗発熱体の寿命を著しく低下させることになる。
【0052】
また、本発明の実施の形態において、抵抗発熱体層2中の導電性物質は一定方向に配向して存在していることが好ましい。本発明の実施の形態で用いられるカーボンナノ材料は、繊維径が20〜200nmであり、繊維長さが0.1〜10μmである。これらのカーボンナノ材料は、単純にポリイミド前駆体溶液に混合されてガラス板上に流延されると、縦横の方向がまちまちになる。そして、この状態でポリイミド前駆体がイミド転化されると、形成されるフィルムの抵抗値のばらつきが大きくなるという問題がある。また、カーボンナノ材料を配向させる場合に比べてカーボンナノ材料をより多く混合する必要があり、必然的に抵抗発熱体層2の機械的特性の低下を招くことになる。
【0053】
したがって、これらのカーボンナノ材料は略一方向、すなわちカーボンナノ材料の個々の繊維がその長さ方向に束ねられたように配向していることが好ましい。このようにすれば、少ないカーボンナノ材料混合量で電気抵抗値を下げることができ、かつ、均一な発熱特性が得られるからである。
【0054】
導電特性等の改善を目的として各種形状、粒径の黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、ニッケル粉や銀粉などの金属粒子、ステンレス粉などの金属合金粒子、炭化タングステンや炭化タンタル、硼化タングステン等の金属間化合物、銀コートカーボンなどの金属被覆粉等の導電性粒子を、熱伝導向上等を目的としてアルミナ、窒化硼素、窒化アルミニウム、炭化珪素、酸化チタン、シリカ等の非導電性粒子を、機械的特性向上等を目的としてチタン酸カリウム繊維、針状酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカ、テトラポット状酸化亜鉛ウィスカ、セピオライト、ガラス繊維等の繊維状粒子、モンモリロナイト、タルク等の粘度鉱物を本来の目的を損なわない程度に加えても差し支えない。他に塗工性や分散性改善、機械的特性の向上等を目的として界面活性剤、消泡剤、分散剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、チオール化合物等の金属捕捉剤、イミダゾール類等のイミド化剤等を本来の目的を損なわない程度に加えても差し支えない。
【0055】
なお、図7に示されるように、ポリイミド前駆体を含む導電性組成物64を円筒形金型61の外面に塗布し、リング状ダイス62を円筒形金型61の外側に走らせて導電性組成物64の導電性組成物塗膜63を円筒形金型61の外面に形成させると、導電性組成物塗膜63中のカーボンナノ材料は、リング状ダイス62の走行方向に向かって略一方向に並び、配向された状態となる。その後、導電性組成物塗膜63を乾燥し、ポリイミド前駆体のイミド化を完結することによって、図6の写真のように、カーボンナノ材料が配向したままの状態で固化した最も好ましい抵抗発熱体層2を成形することができる。なお、図6の写真中のカーボンナノ材料81は、カーボンナノファイバーである。また、図6の写真からも判るように、カーボンナノ材料とともに混合しているフィラメント状金属微粒子82はカーボンナノ材料に絡み合い、カーボンナノ材料の配向方向に配列した状態で存在し、抵抗発熱体層2は最も好ましい状態になっている。なお、フィラメント状金属微粒子としては、ストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子が用いられている。
【0056】
また、本発明の実施の形態において、抵抗発熱体層2中の導電性物質は発熱ベルト31の長さ方向に配向して存在し、この配向方向の体積抵抗率がこの配向方向と直交する方向の体積抵抗率よりも小さいことが好ましい。本発明者らは導電性物質の配向方向と体積抵抗率の関係について多くの実験を重ねた結果、導電性物質の配向方向の体積抵抗率と、この方向と交差する方向の体積抵抗率が異なることを見出した。すなわち、導電性物質の配向方向の体積抵抗率をLDとし、配向方向と直交する方向の体積抵抗率をDDとした場合、その比Ra(=DD/LD)が2倍以上にもなることがわかった。
【0057】
上記のように導電性物質は、Raの値が大きいほど一定の方向に、かつ、均一に配向していることになる。したがって、所望の抵抗発熱体層2の成形において、配向をより均一にさせるほど、導電性物質の混合量は少ない量でよいことになる。このように、カーボンナノ材料を均一に配向させ、且つ、カーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子を混在させることによって体積抵抗率の微調整が可能になり、抵抗発熱体層2の機械的特性を低下させることなく、均一な体積抵抗率と、優れた耐久性を有する発熱ベルト31を得ることができる。
【0058】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、抵抗発熱体層2中のカーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子との存在量は、ポリイミド固形分に対して5〜50vol%であることが好ましい。より好ましくは10〜40vol%の範囲である。存在量が5vol%未満であると体積抵抗率のバラつきが大きく、均一な発熱領域を得ることが難しい。一方、存在量が50vol%以上になると、抵抗発熱体層2の機械的特性及び耐久性が低下し好ましくない。また、カーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子との混合比率は、抵抗発熱体層2の体積抵抗率及び所望する発熱量等によって任意に選定できる。発熱ベルト31における発熱量は500〜1500Wの範囲であるため、発熱ベルト31の内径、抵抗発熱体層2の厚みや長さ(複写紙サイズA4またはA3)などの仕様によってその発熱量を調節することができる。
【0059】
また、本発明の実施の形態において、抵抗発熱体層2のマトリックス樹脂及び絶縁層1,3を形成する樹脂は、少なくとも一種の芳香族ジアミンと少なくとも一種の芳香族テトラカルボン酸二無水物とが有機極性溶媒中で重合させられて得られるポリイミド前駆体をイミド転化してなるポリイミド樹脂から成ることが好ましい。
【0060】
芳香族ジアミンの代表例としては、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4、4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4'−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4'−ジアミノジフェニルシラン、4,4'−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等を挙げることができる。中でも好ましいジアミンは、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)である。
【0061】
また、芳香族テトラカルボン酸二無水物の代表例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3'4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物及び9,9−ビス[4−(3,4'−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等を挙げることができる。中でも好ましいテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット二無水物(PMDA)、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)を挙げることができる。なお、これらをメタノール、エタノール等のアルコール類と反応させてエステル化合物としてもよい。
【0062】
なお、これらの芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物は単独で又は混合して用いることができる。また、複数種類のポリイミド前駆体溶液を調製し、それらのポリイミド前駆体溶液を混合して用いることもできる。
【0063】
芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させる有機極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム及びトリグライム等が挙げられる。中でも好ましい溶媒はN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)である。これらの溶媒を単独で又は混合物としてあるいはトルエン、キシレン、すなわち芳香族炭化水素などの他の溶媒と混合して用いることができる。
【0064】
また、本発明の実施の形態において、芳香族ジアミンはパラフェニレンジアミンであり、芳香族テトラカルボン酸二無水物は3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることが特に好ましい。これらのモノマーから得られるポリイミド樹脂は、機械的特性に優れ強靭であり、抵抗発熱体層2の温度が上昇しても熱可塑性樹脂のように軟化、あるいは溶融することが無く、優れた耐熱性を有するからである。
【0065】
このようなポリイミド前駆体溶液は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機極性溶媒中で通常90℃以下で反応させることによって得られる。なお、溶媒中の固形分濃度は、導電性物質の混合割合や、あるいは塗布の条件によって適宜調整することができる。その好ましい範囲は10〜30質量%である。
【0066】
また、有機極性溶媒中で芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させると、その重合状況によって溶液の粘度が上昇するが、使用に際しては溶媒で希釈して所望の粘度にしてから使用することができる。製造条件や作業条件によって通常1〜5000ポイズの粘度で使用される。
【0067】
なお、導電性物質が略一方向に配向するように導電性組成物を金型の表面にキャスティング方法で塗布するためには、導電性組成物の粘度が10〜1500ポイズの範囲であることが好ましい。より好ましくは50〜1000ポイズの範囲である。また、本発明の実施の形態に係る発熱定着ベルト31において第2絶縁層3が設けられる場合、第2絶縁層3には窒化硼素、チタン酸カリウム、酸化チタン、窒化アルミニウム、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素等の電気絶縁性を有する熱伝導性物質が混合されるのが好ましい。熱伝導性を付与したり均一な発熱面を得たりすることができるからである。また、第2絶縁層3を成形するための絶縁ポリイミド前駆体溶液の粘度も50〜1000ポイズであることが好ましい。
【0068】
また、本発明の実施の形態において、発熱ベルト31の離型層4は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)より成る群から選択される少なくとも1つの樹脂あることが好ましい。
【0069】
フッ素樹脂からなる離型層4は、5〜30μmの厚みであることが好ましく、10〜20μmの厚みであることがより好ましい。また、第2絶縁層3と離型層4との層間には接着性を安定させるためにプライマーを塗布することが好ましい。また、そのプライマー層の厚みは2〜5μmであることが好ましい。
【0070】
所望する電気発熱量を得るために必要な発熱ベルト31の抵抗発熱体層2の厚みは、導電性物質の混合量、発熱ベルト31の内径あるいは給電端子の接触幅などの要素から設定することができる。
【0071】
また、第1絶縁層1の厚みは抵抗発熱体層2の機械的特性を確保するために必要とする厚みであって20μm〜80μmであることが好ましい。また、第2絶縁層3は抵抗発熱体層2の外側に成形される。なお、発熱ベルト31の最外層(トナー像と直接、接する面)に抵抗発熱体層2からの発熱を効率よく伝導させるためには、第2絶縁層3の厚みは薄い方が好ましく5μm〜50μmであることが好ましい。10μm〜20μmの厚みがより好ましい。また、第2絶縁層3に窒化硼素などの熱伝導性物質を混合した上で厚みを最適化すれば、第2絶縁層3の絶縁性、機械的特性及び熱伝導性などの特性を共に満たすことができる。
【0072】
また、本発明の一実施形態に係る発熱ベルト31は、(a)第1絶縁層1の原料であるポリイミド前駆体溶液を円筒状金型の外面に塗布する工程、(b)塗布されたポリイミド前駆体溶液を加熱して第1絶縁層1を成形する工程、(c)ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粉子を混合した導電性組成物を第1絶縁層1の外面に塗布する工程、(d)塗布された導電性組成物を加熱して抵抗発熱体層2を成形する工程、(c)抵抗発熱体層2の両端の電極成形部を除き抵抗発熱体層2の外面に第2絶縁層3となる絶縁ポリイミド前駆体溶液を塗布する工程、(e)絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して第2絶縁層3を成形する工程、(f)第2絶縁層3が成形されていない両端部に導電性ペーストなどにより電極層37を成形する工程、(g)電極層37を除く外面に離型層4を塗布する工程、および(h)離型層4を加熱して焼成する工程を経て製造される。
【0073】
なお、本発明の実施の形態において、導電性組成物を円筒状金型の外面に塗布した後、導電性組成物中のカーボンナノ材料やフィラメント状金属微粒子を、略一方向、すなわちその長さ方向に束ねられたような状態に配向させるためには、導電性組成物を円筒状金型に塗布した後、塗布面を一定方向にしごき拭うような工程を設けることが好ましい。
【0074】
なお、導電性組成物を略一方向に配向させるためには、上記(a)工程において、図7に示すように、円筒状金型61の外面に導電性組成物64を塗布し、リング状ダイス62を円筒状金型61の上側から挿入して、リング状ダイス62を円筒状金型61の外側を通過させるのが最も好ましい。導電性組成物64の塗布厚みの制御と導電性物質の配向とを1つの工程で処理することができるからである。なお、図7中、符号63は一定厚みで塗布された導電性組成物塗膜である。
【0075】
また、上記製造方法では、(a)工程で円筒状金型61の外面に導電性組成物64を塗布した後、(b)工程でその塗布された導電性組成物64中のポリイミド前駆体が半硬化状態となるように加熱されるのが好ましく、さらに、(c)工程でその半硬化状態の抵抗発熱体層2の外面に、絶縁ポリイミド前駆体溶液を塗布し、さらに(d)工程でその絶縁ポリイミド前駆体溶液を加熱して抵抗発熱体層2中のポリイミド前駆体と絶縁層1,3中のポリイミド前駆体とのイミド化を同時に完結するのが好ましい。抵抗発熱体層2中のポリイミド前駆体と絶縁層1,3中のポリイミド前駆体とを同時にイミド化することによって抵抗発熱体層2と絶縁層1,3とを強固に接着することができ、かつ、製造ラインの熱効率を高めることができるからである。
【0076】
さらにまた、第2絶縁層3の外面に離型層4を成形する(e)工程及び(f)工程においても、抵抗発熱体層2中のポリイミド前駆体、絶縁層1,3中のポリイミド前駆体をそれぞれ半硬化の状態とし、その外面にフッ素樹脂ディスパージョン等を塗布し、乾燥後、抵抗発熱体層2、絶縁層1,3の2層中のポリイミド前駆体のイミド化の完結と離型層4中のフッ素樹脂の焼成とを同時に行うのが好ましい。各層の接着力を高めるこができるからである。また、ポリイミド前駆体のイミド化温度及びフッ素樹脂の焼成温度はいずれも350度C〜400度Cの高温下での処理になるため、これらを同時に処理することで各熱処理工程を短縮化することができ、製造時の熱効率を高めることができる。なお、第2絶縁層3の外面に離型層4を成形させる場合、その接着強度を安定させるために、プライマー層を介在させるのが好ましい。
【0077】
なお、半硬化の状態とは、導電性組成物あるいは絶縁ポリイミド前駆体溶液が、80〜120度Cの温度で乾燥された後、200〜250度Cまでの温度で加熱された状態をいう。なお、かかる場合、ポリイミド前駆体は、イミド化が完結する前の状態にある。また、この状態になるまでにかかる処理時間は30分〜2時間である。
【0078】
また、発熱ベルト31の内側に挿入する弾性体ロール41は、ゴムロールの一般的な製造方法で製造することができる。例えば、芯金の表面をブラストなどによって粗面化し、プライマー塗布後、ミラブルタイプのシリコーンガムを押出成形し、加硫後所定の外径に研削することにより、所望の弾性体ロール41を製作することができる。また、他の方法として、液状シリコーンゴムを芯金の外面に注型する方法を採用することにより、ソリッドタイプあるいは発泡タイプ(スポンジゴム)の弾性体ロール41を製造することができる。
【0079】
以下に実施例を示す。なお、実施品の評価は下記に示される測定器を用い下記に示される条件下で行った。
【0080】
(1)体積抵抗率の測定
デジタルマルチメーターModel7562(横河電気製)を用い、4線式プローブにより発熱ベルトの体積抵抗率を測定した。
【0081】
(2)温度分布の測定
サーモトレーサTH1101(日本電気三栄製)により発熱時の発熱ベルトの温度分布を測定した。
【実施例1】
【0082】
本実施例では、以下に示すようにして図2に示されるような構成の発熱ベルト31を製作した後、その発熱ベルトの定着テストを行った。
【0083】
<発熱ベルトの製作>
(1)抵抗発熱体層用導電性組成物の作製
ポリイミド前駆体溶液(ポリイミドワニス「Pyre−ML RC5063」,I.S.T社製)を用意した。このポリイミド前駆体溶液はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物「BPDA」とパラフェニレンジアミン「PPD」とを重合したものであり、固形分濃度は17.5wt%であった。そして、このポリイミド前駆体溶液に、ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して20vol%のカーボンナノファイバー(VGCF−H、昭和電工製)と13vol%のフィラメント状ニッケル微粒子(TYPE210、インコ社製)とを添加して1時間攪拌した後、その混合液を150番のSUSメッシュで濾過して、粘度(23度C、B型粘度計による)800ポイズの抵抗発熱体層用導電性組成物を調製した。なお、カーボンナノファイバー(VGCF−H)の真密度は2.0g/cm3であり、フィラメント状ニッケル微粒子(TYPE210)の真密度は8.9g/cm3である。
【0084】
(2)第1絶縁層用ポリイミド前駆体溶液の作製
第1絶縁層を形成するためのポリイミド前駆体溶液としてポリイミドワニス「Pyre−ML RC5063」(I.S.T社製)を用意した。なお、このポリイミド前駆体溶液の固形分濃度は17.5wt%であり、粘度(23度C、B型粘度計による)は850ポイズであった。なお、以下、このポリイミド前駆体溶液を「第1絶縁層用ポリイミド前駆体溶液」という。
【0085】
(3)第2絶縁層用ポリイミド前駆体溶液の作製
第2絶縁層を形成するためのポリイミド前駆体溶液としてポリイミドワニス「Pyre−ML RC5063」(I.S.T社製)を用意した。そして、そのポリイミド前駆体溶液に、窒化硼素粉末(三井化学「MBN−010T」)を、ポリイミド前駆体溶液の固形分濃度に対して20wt%混合して第2絶縁層用ポリイミド前駆体溶液を調製した。なお、この第2絶縁層用ポリイミド前駆体溶液は、23度CにおけるB型粘度計の粘度が880ポイズとなるように調製された。
【0086】
(4)第1絶縁層の成形
外径が24mmであり長さが500mmであるアルミニウム製円筒状金型の表面に酸化珪素コーティング剤をディッピング法によりコーティングした後にそのアルミニウム製円筒状金型を焼成することにより、アルミニウム製円筒状金型を酸化珪素膜で被覆した。なお、この円筒状金型の平均表面粗度はRz0.2μmであった。次いで、図7に示されるように、第1絶縁層用ポリイミド前駆体溶液にアルミニウム製円筒状金型を下端から400mm部分まで浸漬してアルミニウム製円筒状金型に第1絶縁層用ポリイミド前駆体溶液を塗布した後、リング状ダイスをアルミニウム製円筒状金型の上側から挿入して走行させ、イミド転化後の厚みが70μmになるようにアルミニウム製円筒状金型の外側に第1絶縁層キャスト膜を形成した。
【0087】
その後、第1絶縁層キャスト膜が形成されたアルミニウム製円筒状金型を、120度Cのオーブンに入れて60分間乾燥させた後、200度Cの温度まで30分間で昇温させ、同温度で15分間保持した後にオーブンから取り出し、室温(25度C)まで冷却させた。その結果、半硬化第1絶縁層ベルトが得られた。
【0088】
(5)抵抗発熱体層の成形
次に、図7に示されるように、半硬化第1絶縁層ベルトが成形されたアルミニウム製円筒状金型を抵抗発熱体層用導電性組成物中に浸漬して引き上げた後、イミド転化後の厚みが35μmになるように、リング状ダイスでアルミニウム製円筒状金型上に抵抗発熱体層用導電性組成物をキャスティング成形した。次いで、第(4)項の熱処理と同様にこのアルミニウム製円筒状金型を120度Cのオーブンに入れ60分間乾燥させた後、200度Cの温度まで30分間で昇温させ、同温度で15分間保持した後にオーブンから取り出した。その結果、第1絶縁層の外面に半硬化状態導電性層が積層された半硬化導電性層積層ベルトが得られた。
【0089】
(6)第2絶縁層の成形
次に、半硬化導電性層積層ベルトの両端部の電極層形成予定部分をマスキングした後、図7に示されるように、半硬化導電性層積層ベルトが成形されたアルミニウム製円筒状金型を第2絶縁層用ポリイミド前駆体溶液中に浸漬して引き上げた後、イミド転化後の厚みが15μmになるように、リング状ダイスでアルミニウム製円筒状金型上に第2絶縁層用ポリイミド前駆体溶液をキャスティング成形した。次いで、第(5)項の熱処理と同様にこのアルミニウム製円筒状金型を120度Cのオーブンに入れ60分間乾燥させた後、200度Cの温度まで30分間で昇温させ、同温度で15分間保持した後にオーブンから取り出した。その結果、半硬化状態導電性層の外面に半硬化状態のポリイミド前駆体から成る第2絶縁層が積層された半硬化第2絶縁層積層ベルトを得た。
【0090】
(7)フッ素樹脂プライマー層の成形
半硬化第2絶縁層積層ベルトからマスキングを外し、再び電極層形成予定部分をマスキングした後、半硬化第2絶縁層積層ベルトが成形されたアルミニウム製円筒状金型をフッ素樹脂プライマー液に浸漬し、その後、そのアルミニウム製円筒状金型を所定の速度で引上げることによりフッ素樹脂プライマー液を約4μmの厚みにコーティングした。そして、そのアルミニウム製円筒状金型を150度Cの温度で20分間乾燥して再び常温まで冷却しプライマー成形ベルトを得た。
【0091】
(8)離型層の成形
次に、離型層形成用の材料として、PTFEディスパーション(デュポン社製:「テフロン(登録商標)」855−510)を用意した。フッ素樹脂プライマー液が塗布されたプライマー成形ベルトの下部のみをマスキングした後、プライマー成形ベルトが成形されたアルミニウム製円筒状金型をプライマー層が塗布されている位置までPTFEディスパーションに浸漬した。その後、そのアルミニウム製円筒状金型を所定の速度で引き上げることによりPTFEディスパーションを15μmの厚みにコーティングし、フッ素樹脂塗布ベルトを得た。その後、このフッ素樹脂塗布ベルトからマスキングを外し、このフッ素樹脂塗布ベルトを200度Cで10分間乾燥し、400度Cまで30分間で昇温し、同温度で20分間加熱することによりPTFE樹脂の焼成と、抵抗発熱体層、第1絶縁層および第2絶縁層中の半硬化状態のポリイミド前駆体のイミド化とを同時に完結し、目的の発熱ベルトを得た。なお、この発熱ベルトの構成は図2に示される通りである。この発熱ベルトの内径は30mmであり、第1絶縁層の厚みは約70μmであり、抵抗発熱体層の厚みは約35μmであり、第2絶縁層の厚みは約15μmであり、最外層の離型層の厚みは約15μmであり、総厚みは140μmであった。
【0092】
(9)導電性ペースト薄膜電極の成形
次いで、発熱ベルトの両端部の抵抗発熱体層露出部分に導電性ペースト(東洋紡績(株)DWP−025)を30μmの厚みに成形した後、その導電性ペーストを乾燥炉で120度C30分、200度C30分加熱して発熱ベルトに導電性ペースト薄膜電極を形成した。
【0093】
この電極層付き発熱ベルトの構成は図2に示される通りである。
【0094】
<弾性体ロールの製作>
軸受け部の外径が12mmであり弾性層を成形する部分の外径が19.8mmであるアルミニウム製の中空芯金の表面をブラスト処理して粗面化した。次に、中空芯金の外面にプライマーを塗布した。その後、注型金型を用いてシリコーンゴム前駆体を注型した。
【0095】
なお、プライマーとしては、GE東芝シリコーン社製商品名「XP−81−405」を用いた。また、プライマー処理では、A液及びB液の2液を予め1:1の割合で混合したものを、刷毛で中空芯金の外面に均一に塗布した後、室温で20分乾燥し、150度Cのオーブンに入れ、20分間乾燥した。
【0096】
また、シリコーンゴム前駆体としては、液状シリコーンゴム(GE東芝シリコーン社製商品名「XE15−B7354」を用いた。具体的には、A液及びB液の2液を1:1の割合で混合したものを用いた。なお、シリコーンゴム前駆体の注型後、150度Cの温度で10分、そのシリコーンゴム前駆体の一次加硫を行い、さらに200度Cの温度で4時間、そのシリコーンゴム前駆体の二次加硫を行って弾性体ロールを得た。弾性体ロールの外径は23.8mmであり、面長さは240mmであり、弾性層の厚みは4mmであった。この弾性体ロールは表面が平滑で発熱ベルトの内面と密着し、発熱ベルトを従動回転させることに適していた。また、同加硫条件で作製したテストピースのゴム硬度は45度であった。
【0097】
<発熱ベルトの評価>
本実施例で製作した発熱ベルトの評価を行った。
【0098】
(1)体積抵抗率の測定
電極層の長さが各15mmである全長240mmの発熱ベルトの体積抵抗率をデジタルマルチメーターModel7562を用いて測定した。発熱ベルトの長さ方向の体積抵抗率(LD)は36×10-4Ωcmであり、長さ方向と直交する方向の体積抵抗率(DD)の測定値は63×10-4Ωcmであり、Ra値は1.75であった。
【0099】
(2)発熱温度分布の測定
電極層に給電端子を取り付けて図4に示される方法で発熱テストを行った。給電端子は、発熱ベルトの両端の電極層に接触固定させた。図4に示されるように、電源51には可変電圧調整器52を接続し、可変電圧調整器52によって電圧を設定しながらその電源51から電極層5に給電した。具体的には、まず、始めにサーモトレーサを標準モードにして、発熱ベルトの表面温度を観測しながら発熱ベルトの表面(離型層表面)が220度Cとなるように可変電圧調整器52の出力電圧を調整して、その表面が220度Cとなった以降はこの状態で給電を続け、そのときの温度分布を測定した。なお、この時の出力電圧は48Vであった。その後、給電を停止し、発熱ベルトが室温になるまで自然冷却した。
【0100】
次に、サーモトレーサをタイムトレースモードに切り替えて通電開始から10秒間の発熱ベルトの温度上昇変化を観測し記録した。記録データから通電開始10秒後の長さ方向の表面温度を読み取ると最高温度210.8度Cであり、最低温度は208度Cであり、温度分布は3度C以内であり、発熱ベルトの均一な発熱上昇特性を確認することができた。特に、発熱ベルトの給電端子間の温度差はほとんど無く、非常に均一な発熱が観測された。
【0101】
(3)画像定着装置に組み込み評価
本実施例に係る発熱ベルトを図1に示す画像定着装置30に組み込み、トナー像の定着テストを行った。定着温度をサーミスタで200度Cに設定し、通紙テストを行ったところ、電源投入から瞬時に定着ができ鮮明な定着画像が得られた。また、電極層には磨耗や接触不良もなく安定した給電ができた。なお、本実施例に係る発熱ベルトの評価に当たっては、弾性体ロールとしてゴム硬度45度のシリコーンゴムロールが採用された。また加圧ロールとしては発泡ゴムの外面をPFAチューブで被覆したロールを用いた。また、駆動源は弾性体ロールに連結させ、発熱ベルト及び加圧ロールを従動させた。
【実施例2】
【0102】
実施例1において弾性体ロールの弾性体を発泡ゴムに変更した以外は実施例1と同様の方法で定着実験を行った。なお、発泡ゴム弾性体は、次のようにして製作された。先ず、シリコ−ンゴムコンパウンド「KE151KU」(信越化学(株))に、シリコ−ンゴムコンパウンド100重量部に対して2重量部のオルガノハイドロジエンポリシロキサン、1重量部の1,1’−アゾ−ビスイソブチロニトリル(発泡剤)、塩化白金酸(触媒)を添加して、シリコーンゴム配合物を調製した。次に実施例1で用いたアルミニウム製の中空芯金にプライマー「No.101A/B」(信越化学(株))を塗布した。そして、その中空芯体を180度C温度にて15分乾燥した。次いで、その中空芯体とシリコーンゴム配合物とを、押出成形機にて一体分出しし、シリコーンゴム配合物を250度Cで10分間加硫処理して発泡ゴムロール原形を作製した。その後、その発泡ゴムロール原形をさらに200度Cの温度にて2時間処理した後に常温にて放置した。そして、その発泡ゴムロール原形を円筒研削盤にて外径26mmに研削した。なお、この発泡ゴムの硬度をJIS(K)6253に基づいて測定した結果、そのIRHD硬度は80であった。
【0103】
この弾性体ロールを画像定着装置に組み込み、フルカラー画像の熱定着を行ったところ良好な画像が得られた。また、発熱ベルトと加圧ロールの圧接によるニップ幅も広く、このような弾性体ロールと発熱ベルトとの組合せを定着機構として好適に用いることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】(a)本発明の一実施形態に係る画像定着装置の概略図である。(b)本発明の一実施形態に係る画像定着装置のI−I断面図である。
【図2】(a)本発明の一実施形態に係る発熱ベルトの縦断面図である。(b)本発明の一実施形態に係る発熱ベルトのII−II断面図である。
【図3】(a)本発明の一実施形態に係る発熱ベルトの概略側面図である。(b)本発明の一実施形態に係る発熱ベルトのIII−III断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る発熱ベルトの発熱温度分布測定方法を説明するための図である。
【図5】ストランドが三次元的に連なったニッケル微粒子の顕微鏡写真である。
【図6】実施例1の記載に基づいて作製した抵抗発熱体層中のカーボンナノファイバーの配向状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】浸漬キャスティング方法の説明図である。
【図8】フィルム定着方式の画像形成装置の概略図である。
【符号の説明】
【0105】
1 第1絶縁層
2 抵抗発熱体層
3 第2絶縁層
4 離型層
31 発熱ベルト
32 弾性層
33 給電ロール
34 弾性体ロールの芯金
35 加圧ロールの芯金
36 加圧ロール
37 電極層
41 弾性体ロール
42 電源
N ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも抵抗発熱体層と絶縁層と離型層とを有する発熱ベルトと、
前記発熱ベルトの内側に配置される弾性体ロールと、
弾性体層を有し、前記発熱ベルトの外側から前記発熱ベルトを介して前記弾性体ロールに押し付けられる加圧ロールと、
前記抵抗発熱体層に給電するための給電手段と
を備える画像定着装置。
【請求項2】
前記弾性体ロールは、弾性体の硬度が3度以上60度未満である
請求項1に記載の画像定着装置。
【請求項3】
前記弾性体ロールは、弾性体が発泡体である
請求項1又は2に記載の画像定着装置。
【請求項4】
前記弾性体ロールは、外表面が前記発熱ベルトの内周面と面接触しながら回転する
請求項1から3のいずれかに記載の画像定着装置。
【請求項5】
前記加圧ロールの芯金および前記弾性体ロールの芯金の少なくとも一方の芯金は、回転駆動源に連結されている
請求項1から4のいずれかに記載の画像定着装置。
【請求項6】
前記抵抗発熱体層は、カーボンナノ材料及びフィラメント状金属粒子が分散されるポリイミド樹脂からなる
請求項1から5のいずれかに記載の画像定着装置。
【請求項7】
前記カーボンナノ材料は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルより成る群から選択される少なくとも1つの導電性物質である
請求項6に記載の画像定着装置。
【請求項8】
前記フィラメント状金属粒子は、ストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル粒子である
請求項6又は7のいずれかに記載の画像定着装置。
【請求項9】
前記カーボンナノ材料及び前記フィラメント状金属粒子は、略一方向に配向する
請求項6から8のいずれかに記載の画像定着装置。
【請求項10】
前記カーボンナノ材料及び前記フィラメント状金属粒子は、前記発熱ベルトの長さ方向に沿って配向しており、
前記発熱ベルトは、長さ方向の体積抵抗率が前記長さ方向と直交する方向の体積抵抗率よりも小さい
請求項9に記載の画像定着装置。
【請求項11】
前記ポリイミド樹脂は、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物とを有機極性溶媒中で重合してなるポリイミド前駆体がイミド転化されたポリイミド樹脂である
請求項6から10のいずれかに記載の画像定着装置。
【請求項12】
前記絶縁層は、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物とを有機極性溶媒中で重合してなるポリイミド前駆体がイミド転化されたポリイミド樹脂からなる
請求項1から11のいずれかに記載の画像定着装置。
【請求項13】
前記芳香族ジアミンは、パラフェニレンジアミン(PPD)であり、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)である
請求項11又は12に記載の画像定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−109997(P2009−109997A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261988(P2008−261988)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】