説明

画像差分検出装置及び画像差分検出プログラム

【課題】差分画像を検出する画像間に位置ずれが発生しても意図した差分画像を検出できる画像差分検出装置及び画像差分検出プログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】撮影手段により撮影された画像間の差分を検出する画像差分検出装置10であって、異なるタイミングで撮影された第1及び第2の画像の何れか一方をシフトしながら第1及び第2の画像間の差分画像を検出する画像差分演算手段32と、第1及び第2の画像間の差分画像のうち、第1及び第2の画像間の差が最も少ない差分画像を出力する画像差分評価手段33と、第1及び第2の画像間の差が最も少ない差分画像と第1又は第2の画像とを合成した合成画像を出力する画像合成手段34とを有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像差分検出装置及び画像差分検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
あらかじめ記録してある基準画像と、リアルタイムに撮影されるリアルタイム画像との差分をとり、建造物に侵入した不審者など、基準画像と相違する被写体を検出する差分画像処理装置は従来から知られている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記した従来の差分画像処理装置はカメラの位置ずれ等により基準画像を撮影したときの撮影方向とリアルタイム画像を撮影したときの撮影方向とがずれた場合、以下のような問題が生じる。例えば従来の差分画像処理装置は画像中の画素の信号レベルの差分を利用して基準画像と相違する被写体を検出する。
【0004】
基準画像を撮影したときの撮影方向とリアルタイム画像を撮影したときの撮影方向とがずれた場合は、基準画像の内容とリアルタイム画像の内容とが全体的にずれ、画像中の画素の信号レベルの差分が全体的に大きくなるため、意図した差分画像を検出できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、差分画像を検出する画像間に位置ずれが発生しても意図した差分画像を検出できる画像差分検出装置及び画像差分検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明は、撮影手段により撮影された画像間の差分を検出する画像差分検出装置であって、異なるタイミングで撮影された第1及び第2の画像の何れか一方をシフトしながら第1及び第2の画像間の差分画像を検出する画像差分演算手段と、第1及び第2の画像間の差分画像のうち、第1及び第2の画像間の差が最も少ない差分画像を出力する画像差分評価手段と、第1及び第2の画像間の差が最も少ない差分画像と第1又は第2の画像とを合成した合成画像を出力する画像合成手段とを有することを特徴とする。
【0007】
なお、本発明の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、差分画像を検出する画像間に位置ずれが発生しても意図した差分画像を検出できる画像差分検出装置及び画像差分検出プログラムを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態の画像差分検出装置を含むシステムの一例の構成図である。
【図2】画像差分検出装置の一例のハードウェア構成図である。
【図3】画像差分検出装置の一例のブロック図である。
【図4】画像差分検出装置の処理の一例のシーケンス図である。
【図5】本実施の形態の画像差分検出装置を含む不具合発生時のシステムの一例の構成図である。
【図6】システム1のWebカメラ11が撮影した背景画像のイメージ図である。
【図7】システム1AのWebカメラ11Aが撮影した比較画像のイメージ図である。
【図8】差分画像の一例のイメージ図である。
【図9】合成画像の一例のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本実施の形態ではRFIDシステムにおける画像差分検出装置の例を説明するが、RFIDシステムにおける画像差分検出装置に限定するものではない。本実施の形態の画像差分検出装置は、如何なるシステムにおける画像差分検出装置であってもよい。
【0011】
(構成図)
図1は本実施の形態の画像差分検出装置を含むシステムの一例の構成図である。図1のシステム1は、RFIDシステムと、画像差分検出装置10と、Webカメラ11とを有する。なお、画像差分検出装置10とWebカメラ11とは、RFIDシステムの一部を構成していてもよい。また、画像差分検出装置10とWebカメラ11とは、LANなどのネットワークやUSBケーブルを介して接続される。
【0012】
RFIDシステムはRFIDリーダライタ12とアンテナ13とを含む。図1のRFIDシステムはアンテナ13が4つの例を示しているが、1つ以上のアンテナ13を有していればよい。RFIDシステムはRFIDリーダライタ12に接続されたアンテナ13からRFIDタグ14の情報を読み出す。
【0013】
なお、アンテナ13から出力される電波には指向性がある。したがって、RFIDタグ14の読み取り感度は、アンテナ13とRFIDタグ14との位置関係及び距離が重要となる。そこで、RFIDシステムでは、正常動作時(初期状態)の設置状況と不具合発生時の設置状況との画像を比較して差分画像を取ることで、設置環境の違いを視覚的に認識する。
【0014】
Webカメラ11はアンテナ13とRFIDタグ14との位置関係を撮影できる位置に設置される。画像差分検出装置10はWebカメラ11が撮影した画像を記録する。画像差分検出装置10は、Webカメラ11が撮影した正常動作時のアンテナ13とRFIDタグ14との位置関係の画像を記録する。また、画像差分検出装置10はWebカメラ11が撮影した不具合発生時のアンテナ13とRFIDタグ14との位置関係の画像を記録する。
【0015】
これにより、画像差分検出装置10はアンテナ13のRFIDタグ14の読み取り強度が減衰した際、読み取り感度が減衰していない正常動作時のアンテナ13とRFIDタグ14との位置関係の画像と、読み取り感度が減衰している不具合発生時のアンテナ13とRFIDタグ14との位置関係の画像とを比較できる。
【0016】
図2は画像差分検出装置の一例のハードウェア構成図である。画像差分検出装置10は例えば図2に示すようなハードウェア構成により実現される。画像差分検出装置10はバス29で相互に接続されている入力装置21、出力装置22、記録媒体読取装置23、補助記憶装置24、主記憶装置25、演算処理装置26及びインタフェース装置27を含むように構成される。
【0017】
入力装置21はキーボードやマウス等である。入力装置21は各種信号を入力するために用いられる。出力装置22はディスプレイ装置等である。出力装置22は各種ウインドウやデータ等を表示するために用いられる。インタフェース装置27は、モデム,LANカード等である。インタフェース装置27はインターネットやLANなどのネットワークに接続するために用いられる。
【0018】
画像差分検出装置10を実現する画像差分検出プログラムは、画像差分検出装置10を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。画像差分検出プログラムは例えば記録媒体28の配布やネットワーク等からのダウンロードなどによって提供される。
【0019】
記録媒体28はCD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的,電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。
【0020】
画像差分検出プログラムを記録した記録媒体28が記録媒体読取装置23にセットされると、画像差分検出プログラムは記録媒体28から記録媒体読取装置23を介して補助記憶装置24にインストールされる。ネットワーク等からダウンロードされた画像差分検出プログラムはインタフェース装置27を介して補助記憶装置24にインストールされる。
【0021】
補助記憶装置24はプログラム、必要なファイル、データ等を格納する。主記憶装置25は画像差分検出プログラムの起動時に補助記憶装置24から画像差分検出プログラムを読み出して格納する。演算処理装置26は主記憶装置25に格納された画像差分検出プログラムに従って各種処理を実現する。
【0022】
図3は画像差分検出装置の一例のブロック図である。画像差分検出装置10は減色処理部31と画像差分演算部32と画像差分評価部33と画像合成部34とを有する。画像差分演算部32はシフト部41と演算部42とを有する。
【0023】
減色処理部31はWebカメラ11が撮影した正常動作時のアンテナ13とRFIDタグ14との位置関係の画像(背景画像)と不具合発生時のアンテナ13とRFIDタグ14との位置関係の画像(比較画像)とが入力される。背景画像は例えば正常動作時に撮影して補助記憶装置24などに記録しておく。図3ではフルカラーの背景画像及び比較画像が入力される例である。
【0024】
減色処理部31は、入力されたフルカラーの背景画像及び比較画像を8bitグレースケールに減色して出力する。減色処理部31は画像差分演算部32、画像差分評価部33及び画像合成部34の計算量を減らすために減色処理を行う。なお、入力される背景画像及び比較画像が例えば8bitグレースケールであれば、減色処理部31は画像差分検出装置10から省略してもよい。
【0025】
画像差分演算部32は8bitグレースケールの背景画像及び比較画像の差分画像及び評価値を検出して出力する。画像差分演算部32のシフト部41は背景画像をX軸、Y軸方向に1ピクセル毎に例えば10〜20ピクセル分、シフトさせる。画像差分演算部32の演算部42は背景画像をシフトさせる度に背景画像及び比較画像の差分画像及び評価値を検出する。
【0026】
差分画像はピクセル毎に背景画像及び比較画像の輝度の変化量の絶対値を検出したものである。評価値はピクセル毎の差分画像の輝度の和を検出したものである。評価値は小さいほど背景画像及び比較画像の差が少ないため、評価が高い。
【0027】
画像差分評価部33は8bitグレースケールの背景画像及び比較画像の差分画像及び評価値を入力される。画像差分評価部33は、評価が最も高い差分画像を画像合成部34に出力する。
【0028】
画像合成部34は入力された評価が最も高い差分画像をフルカラーの背景画像と合成して合成画像として出力する。画像合成部34はフルカラーの背景画像と8bitグレースケールの差分画像とを合成することで、何処に差分があるかが目視で判別しやすい合成画像を出力できる。なお、差分画像は特定の色(例えば赤など)に変更することで、更に差分がある箇所を明確にできる。
【0029】
(処理手順)
画像差分検出装置10は例えば図4に示すフローチャートの手順で処理を行う。図4は画像差分検出装置の処理の一例のシーケンス図である。
【0030】
ステップS1において、減色処理部31はWebカメラ11が撮影した正常動作時のアンテナ13とRFIDタグ14との位置関係の画像(背景画像)と不具合発生時のアンテナ13とRFIDタグ14との位置関係の画像(比較画像)とを8bitグレースケールに減色して画像差分演算部32に出力する。
【0031】
ステップS2において、画像差分演算部32のシフト部41は8bitグレースケールに減色された背景画像をX軸、Y軸方向に1ピクセル、シフトする。画像差分演算部32の演算部42はステップS3において、背景画像及び比較画像の差分画像を検出する差分計算を行う。画像差分演算部32の演算部42はステップS4において、背景画像及び比較画像の差分画像の評価値を検出する。画像差分演算部32は背景画像及び比較画像の差分画像及び評価値を画像差分評価部33に出力する。
【0032】
ステップS5において、画像差分評価部33は入力された背景画像及び比較画像の差分画像の評価値が一番良い(最高値)であるか否かを判定する。最高値であれば、画像差分評価部33は、これまで記録されていた背景画像及び比較画像の差分画像及び評価値に新しい背景画像及び比較画像の差分画像及び評価値を上書きして記録する。なお、最高値でなければ、画像差分評価部33は、これまで記録されていた背景画像及び比較画像の差分画像及び評価値をそのまま記録しておく。
【0033】
ステップS2〜S6の処理は背景画像を1ピクセル毎にシフトして、それぞれで差分画像及び評価値を検出し、一番評価が高い(一番誤差が少ない)差分画像を採用するためのループ処理を表している。
【0034】
ステップS2〜S6のループ処理が終了すると、画像差分評価部33はステップS7において、評価が最も高い差分画像を画像合成部34に出力する。そして、画像合成部34は入力された評価が最も高い差分画像をフルカラーの背景画像と合成して合成画像として出力する。
【実施例1】
【0035】
例えば図1は正常動作時のシステム1の構成を表しているとする。ここでは何らかの原因でRFIDリーダライタ12がRFIDタグ14の情報を読み取れなくなったものとして説明する。RFIDリーダライタ12がRFIDタグ14の情報を読み取れなくなったときの構成を図5に示す。
【0036】
図5は本実施の形態の画像差分検出装置を含む不具合発生時のシステムの一例の構成図である。図5のシステム1Aは、図1のシステム1と比較すると、図1の2つのアンテナ13がアンテナ13Aの位置に移動している。また、図5のシステム1Aでは図1のWebカメラ11がWebカメラ11Aの位置に移動している。Webカメラ11Aは図1のWebカメラ11と撮影方向がずれている。
【0037】
図6はシステム1のWebカメラ11が撮影した背景画像の一例である。図7はシステム1AのWebカメラ11Aが撮影した比較画像の一例である。例えば図6の背景画像及び図7の比較画像が入力されると、画像差分評価部33は図8に示すような差分画像を出力する。図8は差分画像の一例のイメージ図である。
【0038】
例えば図8のような差分画像が入力されると、画像合成部34は図9に示すような合成画像を出力する。図9は合成画像の一例のイメージ図である。図9の合成画像を確認することにより、ユーザは正常動作時の画像と不具合発生時の画像との差分を目視で確認できるため、不具合解析の手がかりとすることができる。
【0039】
本実施の形態によれば、背景画像を撮影したときの撮影方向と比較画像を撮影したときの撮影方向とがずれた場合でも、背景画像を例えば1ピクセルずつシフトして比較画像との差分画像を検出し、一番評価が高い差分画像を採用するため、正常動作時の画像と不具合発生時の画像との差分を目視で確認しやすい合成画像を得られる。
【0040】
なお、本実施の形態では背景画像のシフトを1ピクセルずつ行う例を示したが、2ピクセルなど、他のピクセルずつシフトを行うようにしてもよい。また、画像差分評価部33における評価が最も高い差分画像を採用する処理は、その時点での最高値の差分画像及び評価値を上書きして記録していたが、全ての差分画像及び評価値が入力されたあと、最高値の差分画像及び評価値を選択して記録するようにしてもよい。
【0041】
さらに、図4のフローチャートでは背景画像をシフトする例を説明したが比較画像をシフトするようにしてもよい。なお、上記の図面では本実施の形態の説明に不要な部分について図示及び説明を適宜省略している。
【0042】
本発明は、具体的に開示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。なお、特許請求の範囲に記載した画像差分演算手段は画像差分演算部32に相当する。画像差分評価手段は画像差分評価部33に相当する。画像合成手段は画像合成部34に相当する。シフト手段はシフト部41に相当する。演算手段は演算部42に相当する。また、減色処理手段は減色処理部31に相当する。
【符号の説明】
【0043】
1 システム
10 画像差分検出装置
11、11A Webカメラ
12 RFIDリーダライタ
13、13A アンテナ
14 RFIDタグ
21 入力装置
22 出力装置
23 記録媒体読取装置
24 補助記憶装置
25 主記憶装置
26 演算処理装置
27 インタフェース装置
28 記録媒体
29 バス
31 減色処理部
32 画像差分演算部
33 画像差分評価部
34 画像合成部
41 シフト部
42 演算部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特開2001−197479号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影手段により撮影された画像間の差分を検出する画像差分検出装置であって、
異なるタイミングで撮影された第1及び第2の画像の何れか一方をシフトしながら第1及び第2の画像間の差分画像を検出する画像差分演算手段と、
第1及び第2の画像間の差分画像のうち、第1及び第2の画像間の差が最も少ない差分画像を出力する画像差分評価手段と、
第1及び第2の画像間の差が最も少ない差分画像と第1又は第2の画像とを合成した合成画像を出力する画像合成手段と
を有することを特徴とする画像差分検出装置。
【請求項2】
前記画像差分演算手段は、第1及び第2の画像の何れか一方を所定のピクセルずつシフトさせるシフト手段と、
第1及び第2の画像の何れか一方が所定のピクセルずつシフトされる度に、第1及び第2の画像の輝度の変化量の絶対値をピクセル毎に検出した差分画像と、差分画像のピクセル毎の輝度の和を検出した評価値とを検出する演算手段と
を有し、
前記画像差分評価手段は、評価値に基づき、ピクセル毎の輝度の和が小さい差分画像を第1及び第2の画像間の差が最も少ない差分画像として出力すること
を特徴とする請求項1記載の画像差分検出装置。
【請求項3】
異なるタイミングで撮影された第1及び第2の画像を減色処理したあと、前記画像差分演算手段に出力する減色処理手段を更に有すること
を特徴とする請求項1又は2記載の画像差分検出装置。
【請求項4】
第1の画像は正常動作時のシステムの位置関係の画像であり、第2の画像は不具合発生時のシステムの位置関係の画像であること
を特徴とする請求項1乃至3何れか一項記載の画像差分検出装置。
【請求項5】
撮影手段により撮影された画像間の差分を検出するコンピュータを、
異なるタイミングで撮影された第1及び第2の画像の何れか一方をシフトしながら第1及び第2の画像間の差分画像を検出する画像差分演算手段と、
第1及び第2の画像間の差分画像のうち、第1及び第2の画像間の差が最も少ない差分画像を出力する画像差分評価手段と、
第1及び第2の画像間の差が最も少ない差分画像と第1又は第2の画像とを合成した合成画像を出力する画像合成手段と
して機能させるための画像差分検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−16086(P2013−16086A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149581(P2011−149581)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】