説明

画像形成システム及び画像形成装置

【課題】同一内容の記憶データが書き込まれた記憶部付き画像形成媒体が複数生成されることを抑制することが可能な画像形成システム及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成システムは、記憶データRDが記憶された記憶部39を有する記憶元画像形成媒体37から前記記憶データRDを読み取るデータ読取部47と、前記データ読取部47により読み取られた記憶データRDを、記憶先画像形成媒体3が有する記憶部7に書き込む書込部25と、前記データ読取部47による読取処理後に、前記記憶元画像形成媒体37の記憶部39に記憶された前記記憶データRDの読取処理を制限する制限部47と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記憶部付き画像形成媒体(RFID(Radio Frequency IDentification)付き用紙など)を利用するプリンタがある。具体的には、このプリンタは、RFID付き原稿から原稿画像を読み取りつつ、そのRFIDからRFIDデータを読み取って、別のRFID付き用紙上に上記原稿画像を形成しつつ、そのRFIDに上記RFIDデータを書き込むように構成されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−337426公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来のプリンタでは、同一内容のRFIDデータが書き込まれたRFID用紙が複数枚、安易に生成されてしまい、不都合が生じることがあった。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、同一内容の記憶データ(RFIDデータを含む)が書き込まれた記憶部付き画像形成媒体が無制限に生成されることを抑制することが可能な画像形成システム及び画像形成装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記の目的を達成するための手段として、本発明に係る画像形成システムは、記憶データが記憶された記憶部を有する記憶元画像形成媒体から前記記憶データを読み取るデータ読取部と、前記データ読取部により読み取られた記憶データを、記憶先画像形成媒体が有する記憶部に書き込む書込部と、前記データ読取部による読取処理後に、前記記憶元画像形成媒体の記憶部に記憶された前記記憶データの読取処理を制限する制限部と、を備える。
【0006】
この発明によれば、記憶元画像形成媒体の記憶部に対する記憶データの読取処理後に、当該記憶元画像形成媒体の記憶部に記憶された記憶データの読み取りを制限することにより、同一内容の記憶データが書き込まれた記憶部付き画像形成媒体が無制限に生成されることを抑制することが可能である。
【0007】
(2)本発明は、前記記憶元画像形成媒体の画像を読み取る画像読取部と、前記画像読取部により読み取られた画像を、前記記憶先画像形成媒体に形成する形成部と、を備えてもよい。
この発明によれば、記憶データだけでなく、画像をも記憶元画像形成媒体から移行した画像形成媒体を提供することが可能である。
【0008】
(3)本発明は、前記記憶先画像形成媒体に画像を形成する形成部と、前記形成部による画像形成処理が正常終了するかどうかを判断する形成判断部と、を備え、前記書込部は、前記形成判断部で正常終了すると判断された場合に、前記記憶データの書き込みを実行してもよい。
【0009】
例えば、記憶先画像形成媒体に対し、記憶部への記憶データの書き込みを、画像形成処理以前に行うようにしてもよい。しかし、例えば何らかの原因により上記画像形成処理が正常終了しなかった場合には、適切な画像が形成されず不要とすべき画像形成媒体の記憶部に記憶データが記憶されるという問題が生じ得る。
これに対し、この発明によれば、記憶先画像形成媒体への画像形成処理が正常終了すると判断した場合に、記憶先画像形成媒体の記憶部に記憶データの書き込みを実行する。従って、上記問題を回避することが可能である。
【0010】
(4)本発明は、前記データ読取部により読み取られた記憶データを格納する格納部を備え、前記制限部は、前記格納部が前記記憶データを格納した後に、前記記憶データの読取処理を制限し、前記書込部は、前記制限部による制限後に、前記格納部に格納された記憶データを、前記記憶先画像形成媒体の記憶部に書込む第1移行処理を行ってもよい。
【0011】
この発明によれば、記憶データを格納部に格納した後に、記憶元画像形成媒体の記憶部内の記憶データの読取処理を制限し、その後、格納部に格納された記憶データを記憶先画像形成媒体の記憶部に書込む。従って、同一内容の記憶データが同時期に複数の画像形成媒体の記憶部に記憶された状態を回避して、記憶データの唯一性保持を強化することが可能である。
【0012】
(5)本発明は、前記書込部による書込処理が正常終了するかどうかを判断する書込判断部と、前記制限部は、前記書込判断部で正常終了しないと判断された場合に、前記読取処理の制限を解除してもよい。
【0013】
この発明によれば、記憶先画像形成媒体の記憶部への記憶データの書込処理が正常終了しないと判断された場合には、記憶元画像形成媒体の記憶部の記憶データが有効化される。従って、このような場合に、記憶データが記憶部に記憶された画像形成媒体が喪失することを抑制することができる。
【0014】
(6)本発明は、前記制限部は、前記第1移行処理と、前記書込部による前記記憶データの書き込み後に、前記記憶先画像形成媒体の記憶部内の前記記憶データの読取処理を制限する第2移行処理とを実行可能とされ、前記第1移行処理と前記第2移行処理とのいずれを実行するかを選択する選択部を備えてもよい。
この発明によれば、必要に応じて第1移行処理と第2移行処理とを使い分けることが可能になる。
【0015】
(7)本発明は、前記制限部が、前記書込部による前記記憶データの書き込み後に、前記記憶先画像形成媒体の記憶部内の前記記憶データの読取処理を制限する第2移行処理を行ってもよい。
この発明によれば、記憶データは、記憶元画像形成媒体及び記憶先画像形成媒体の少なくとも一方の記憶部に記憶されているため、記憶データの喪失を抑制することができる。
【0016】
(8)本発明に係る画像形成装置は、記憶データが記憶された記憶部を有する記憶元画像形成媒体から前記記憶データを読み取るデータ読取部と、前記データ読取部により読み取られた記憶データを、記憶先画像形成媒体が有する記憶部に書き込む書込部と、前記データ読取部による読取処理後に、前記記憶元画像形成媒体の記憶部に記憶された前記記憶データの読取処理を制限する制限部と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、同一内容の記憶データが書き込まれた記憶部付き画像形成媒体が無制限に生成されることを抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態について図を参照しつつ説明する。
(複合機の内部構成)
図1は、複合機1(本発明の「画像形成装置」の一例)の内部構成の概要図である。複合機1の底部には、被画像形成用のシート材3(例えば用紙など 本発明の「記憶先画像形成媒体」の一例)が収納されるトレイ5が設けられている。なお、上記シート材3には、RFIDタグ7(本発明の「記憶先画像形成媒体が有する記憶部」の一例)を有するものと、RFIDタグ7を有しないものとが含まれ得る。なお、RFIDタグ7を有するシート材3には、RFIDタグ7がシート材3に埋設されたものや、RFIDタグ7がシート材3の表面に付着されたものなどがある。
【0019】
トレイ5に収納されたシート材3は、ピックアップローラ9によって1枚ずつ取り出されてレジストレーションローラ11,11へと搬送される。搬送されてきたシート材3は、レジストレーションローラ11,11により姿勢が整えられつつ所定のタイミングで搬送ベルト13上に送り出される。送り出されたシート材3は、搬送ベルト13によって搬送されつつ、画像形成部15(本発明の「形成部」の一例)により、例えば原稿読取ユニット27により読み取られた画像データに基づく画像(モノクロ画像、カラー画像)が形成される。画像が形成されたシート材3は、定着器17の加熱ローラ19及び押圧ローラ21の間に挟まれつつ熱定着され、排出トレイ23上へと排出される。定着器17付近には、定着器17に達するシート材3を検知する検知センサ18が設けられている。
【0020】
また、定着器17と排出トレイ23との間の搬送経路付近には、シート材用のRFIDリーダ/ライタ25が設けられている。RFIDリーダ/ライタ25は、図示しないアンテナから電波を発することにより、搬送途中のシート材3のRFIDタグ7との間でデータの無線通信(データの読み取り、書き込み)が可能になっている。
【0021】
排出トレイ23の上方には、原稿読取ユニット27が設けられている。この原稿読取ユニット27は、原稿台29上に開閉可能に設けられた原稿カバー31が設けられ、この原稿カバー31には、原稿トレイ33及び送り機構35が設けられている。原稿37には、RFIDタグ39(本発明の「記憶元画像形成媒体が有する記憶部」の一例)を有するもの(本発明の「記憶元画像形成媒体」の一例)と、RFIDタグ39を有しないものとが含まれ得る。
【0022】
複合機1は、原稿37上の原稿画像を読み取る方法として、原稿載置読み取りと原稿送り読み取りとが可能である。原稿載置読み取りの場合、ユーザは、原稿37を原稿台29上に配置して原稿カバー31を閉じ、原稿読み取りを指示すると、スキャナ部41(本発明の「画像読取部」の一例)が移動しつつ原稿37の原稿画像を読み取って原稿画像データを生成し、CPU51へ送信する。原稿送り読み取りの場合、ユーザは、原稿37を原稿トレイ33にセットし、原稿読み取りを指示すると、原稿37が1頁ずつ送り機構35によってスキャナ部41の読取領域内に搬送され、その後、原稿排出トレイ43に排出される。スキャナ部41は搬送中の原稿37から原稿画像を読み取って画像データを生成し、CPU51へと送信する。
【0023】
原稿トレイ33とスキャナ部41の読取領域との間における搬送経路付近には原稿用のRFIDリーダ45が設けられている。RFIDリーダ45は、搬送中の原稿37がRFIDタグ39を有していれば、そのRFIDタグ39との間で無線通信によりデータのやり取りを行うことができる。また、原稿排出トレイ43付近には、原稿用のRFIDリーダ/ライタ47が設けられており、原稿排出トレイ43に排出された原稿37のRFIDタグ39との間でデータのやり取りを行うことができる。
【0024】
(複合機の電気的構成)
図2は、複合機1の電気的構成を示すブロック図である。複合機1は、CPU51、ROM53、RAM55、NVRAM57(不揮発性メモリ)、操作部59、表示部61、画像形成部15、原稿読取ユニット27を備える。ROM53には、後述するデータ移行処理など、この複合機1の各種の動作を実行するためのプログラムが記憶されており、CPU51は、ROM53から読み出したプログラムに従って、その処理結果を内部メモリ(RAM55またはNVRAM57)に記憶させながら各部の制御を行う。操作部59は、複数のボタンを備え、ユーザにより各種の入力操作が可能である。表示部61は、液晶ディスプレイやランプ等を備え、各種の設定画面や装置の動作状態等を表示することが可能である。
【0025】
また、複合機1は、ネットワークインターフェイス67及びファクシミリインターフェース69を備える。ネットワークインターフェイス67は、ネットワーク回線を介して外部のコンピュータ(図示せず)等に接続され、これにより相互のデータ通信が可能となっている。ファクシミリインターフェース69は、公衆電話網71を介して、ファクシミリ機能を有する他の外部機器73に接続され、これにより相互のファクシミリ通信が可能となっている。
【0026】
更に、CPU51は、前述したシート材用のRFIDリーダ/ライタ25、原稿用のRFIDリーダ45及びRFIDリーダ/ライタ47を制御する。
【0027】
(データ移行処理)
図3から図5は、データ移行処理の内容を示すフローチャートである。また、図6、図7は、原稿37とシート材3との間における原稿画像及びRFIDデータ(本発明の「記憶データ」の一例)RDの移行過程を示した模式図である。なお、RFIDデータには、イメージ情報、テキスト情報など、様々な情報が含まれる。また、各RFIDタグを有するシート材3を識別するための固有情報、機密情報やユーザ識別情報など、安易な複製を禁止して唯一性を極力保持すべき情報が含まれる。
【0028】
例えばユーザが操作部59にてデータ移行を指示すると、CPU51は図3から図5に示すデータ移行処理を実行する。このデータ移行処理により、原稿37から原稿画像を読み取りつつ、そのRFIDタグ39からRFIDデータRDを読み取って、トレイ5にセットされたシート材3上に上記原稿画像を形成しつつ、そのシート材3が有するRFIDタグ7に上記RFIDデータRDを書き込むことができる。
【0029】
(1)選択処理
このデータ移行処理には、第1移行処理と第2移行処理とが含まれる。CPU51は、まず第1移行処理と第2移行処理とのいずれを実行するかを選択する選択処理を行う。このときCPU51は「選択部」として機能する。
【0030】
具体的には、CPU51は、図3のS100でユーザが操作部59にて上述した原稿送り読み取りを指定したか、原稿載置読み取りを指定したかを判断する。この判断は、原稿トレイ33の近傍に設けられた原稿検知センサ(図示せず)からの検出信号の有無や、スキャナ部41での入射光量などに基づき行うことが可能である。原稿送り読み取りが指定されたと判断した場合には(S100:YES)、S200に進む。
【0031】
S200では、NVRAM57の格納可能量(空き容量)が基準量以上かどうかを判断する。基準量以上である場合には(S200:YES)、S300に進み、図4に示す第1移行処理を実行する。一方、ユーザが原稿載置読み取りを指定した場合(S100:NO)、或いは、原稿送り読み取りを指定したが、格納可能量が基準量未満であった場合には(S100:YES、且つ、S200:NO)、S400に進み、図5に示す第2移行処理を実行する。
【0032】
(2)第1移行処理
CPU51が、図4に示す制御内容を実行することにより、第1移行処理が実行される。この第1移行処理では、RFIDリーダ/ライタ47(本発明の「データ読取部」の一例)が、原稿37のRFIDタグ39からRFIDデータRDを読み取り、NVRAM57(本発明の「格納部」の一例)が、その読み取ったRFIDデータRDを格納し、その後に、RFIDリーダ/ライタ47(本発明の「制限部」の一例)が、RFIDタグ39に対するRFIDデータRDの読取処理を制限し、その後に、RFIDリーダ/ライタ25(本発明の「書込部」の一例)が、格納部に格納されたRFIDデータRDをシート材3のRFIDタグ7に書き込む。
【0033】
具体的には、CPU51は、S301で、原稿送り読み取りを実行するために、送り機構35により原稿トレイ33上から1頁の原稿37を送り出し、スキャナ部41により当該原稿37上の原稿画像を読み取って1頁分の原稿画像データを取得する。このとき、図6の<S301>に示すように、原稿37のRFIDタグ39にのみRFIDデータRDが記憶されている。
【0034】
次に、CPU51は、S303で、送り機構35により送り出された原稿37がRFIDタグ39を有するかどうかを判断する。具体的には、CPU51は、原稿37が原稿トレイ33からスキャナ部41の読取領域に向かう途中で、RFIDリーダ45により無線通信を試行し、無線通信が成功したかどうかに基づき、原稿37がRFIDタグ39を有するかどうかを判断する。
【0035】
無線通信が成功し原稿37がRFIDタグ39を有すると判断すれば(S303:YES)、当該RFIDタグ39に対応付けられた固有情報(例えばシリアル番号など)をRFIDタグ39から取得し、S305に進む。一方、無線通信が成功せず原稿37がRFIDタグ39を有しないと判断すれば(S303:NO)、S323に進む。S323では、ピックアップローラ9によりトレイ5から1枚のシート材3を搬送させ、画像形成部15等により原稿画像データに基づく画像をシート材3上に形成してS319に進む。即ち、RFIDデータRDの移行処理を行わず、原稿37のRFIDタグ39に何らの制限もしない。
【0036】
S305では、CPU51は、RFIDリーダ/ライタ47により原稿37のRFIDタグ39からRFIDデータRDを読み取り、NVRAM57に格納する。このとき図6の<S305>に示すように、RFIDデータRDは、原稿37のRFIDタグ39とNVRAM57とに存在する。なお、原稿排出トレイ43に複数頁の原稿37がある場合には、上記固有情報に基づき各頁の原稿を選別し、特定頁の原稿37のRFIDタグ39からRFIDデータRDを読み取る。
【0037】
CPU51は、S307では、RFIDリーダ/ライタ47により、原稿37のRFIDタグ39からのRFIDデータRDの読取処理を制限する。具体的には、RFIDリーダ/ライタ47により、原稿排出トレイ43に排出された原稿37のRFIDタグ39からRFIDデータRDを削除し、S309に進む。これにより、図6の<S307>に示すように、RFIDデータRDは、NVRAM57のみに存在することになり、RFIDタグ39から読み取ることが不能となる。
【0038】
CPU51は、S309では、上記S323と同様、画像形成部15等により原稿画像データに基づく画像をシート材3上に形成することを開始し、S311で、その画像形成が正常終了するかどうかを判断する。このときCPU51は本発明の「形成判断部」として機能する。この判断は、例えばシート材3が定着器17に達したかどうかに基づき行う。つまり、定着器17に達するシート材3を上記検知センサ18によって検知した場合には正常終了するとみなし、検知しなかった場合には、例えばシート材3が詰まったり、画像形成部15の着色剤が不足したりするなどのエラー発生により正常終了しないと判断する。図6の<S309>には、画像形成が正常終了した場合を示している。
【0039】
CPU51は、上記画像形成処理が正常終了すると判断すれば(S311:YES)、S313で、NVRAM57に格納されたRFIDデータRDを読み取って、RFIDリーダ/ライタ25により、当該RFIDデータを、定着器17を通過したシート材3のRFIDタグ7に書き込むことを開始し、S315に進む。
【0040】
S315では、この書込処理が正常終了するかどうかを判断する。このときCPU51は、本発明の「書込判断部」として機能する。この判断は、RFIDリーダ/ライタ25によるRFIDタグ7とのRFIDデータRDのやり取りの結果から行う。つまり、RFIDデータRDの書き込みが正常に終了すれば正常終了したと判断する一方、例えばシート材3がRFIDタグ7を有していなかったり、RFIDタグ7の容量不足やノイズなどによるエラーが発生したりした場合には正常終了しないと判断する。
【0041】
書込処理が正常終了すると判断した場合には(S315:YES)、S317でNVRAM57からRFIDデータRDを削除する。これにより、図6の<S311:YED、且つ、S315:YES>に示すように、RFIDデータRDは、シート材3のRFIDタグ7だけに存在することになる。
【0042】
一方、上記画像形成処理が正常終了しないと判断した場合(S311:NO)、あるいは、書込処理が正常終了しないと判断した場合には(S315:NO)、S321で、RFIDリーダ/ライタ47により、原稿37のRFIDタグ39の読取処理の制限を解除する。このときRFIDリーダ/ライタ47は本発明の「解除部」として機能する。具体的には、RFIDリーダ/ライタ47により、NVRAM57に格納されたRFIDデータRDを、原稿37のRFIDタグ39に書き込み、S317でNVRAM57からRFIDデータRDを削除する。これにより、図6の<S311:NO、或いは、S315:NO>に示すように、RFIDデータRDは、原稿37のRFIDタグ39だけに存在することになる。そして、全頁の原稿37について上記処理を行うと(S319:YES)、本第1移行処理及びデータ移行処理を終了する。
【0043】
(3)第2移行処理
CPU51が、図5に示す制御内容を実行することにより、第2移行処理が実行される。この第2移行処理では、RFIDリーダ/ライタ47が、原稿37のRFIDタグ39からRFIDデータRDを読み取り、NVRAM57に格納することなく、RFIDシート材3のRFIDタグ7に書き込み、その後に、RFIDリーダ/ライタ47が、RFIDタグ39に対するRFIDデータRDの読取処理を制限する。
【0044】
具体的には、CPU51は、S401で、スキャナ部41により原稿37上の原稿画像を読み取って1頁分の原稿画像データを取得する。なお、原稿送り読み取りが指定されている場合には、送り機構35により原稿トレイ33上から1頁の原稿37を送り出し、スキャナ部41により当該原稿37上の原稿画像を読み取る。一方、原稿載置読み取りが指定されている場合には、スキャナ部41を原稿台29に沿って移動させつつ当該原稿台29に載置された原稿37上の原稿画像を読み取る。このとき、図7の<S401>に示すように、原稿37のRFIDタグ39にのみRFIDデータRDが記憶されている。
【0045】
次に、CPU51は、S403で、原稿37がRFIDタグ39を有しているかどうかを判断する。具体的には、CPU51は、原稿送り読み取りの場合には、原稿37が原稿トレイ33からスキャナ部41の読取領域に向かう途中で、RFIDリーダ45により無線通信を試行し、無線通信が成功したかどうかに基づき、原稿37がRFIDタグ39を有しているかどうかを判断する。原稿載置読み取りの場合には、RFIDリーダ/ライタ47により無線通信を試行し、無線通信が成功したかどうかに基づき、原稿37がRFIDタグ39を有しているかどうかを判断する。
【0046】
無線通信が成功し原稿37がRFIDタグ39を有していると判断すれば(S403:YES)、当該RFIDタグ39に対応つけられた固有情報をRFIDタグ39から取得し、S405に進む。一方、無線通信が成功せず原稿37がRFIDタグ39を有していないと判断すれば(S403:NO)、S417に進む。S417では、ピックアップローラ9によりトレイ5からシート材3を搬送させ、画像形成部15等により原稿画像データに基づく画像をシート材3上に形成してS415に進む。即ち、RFIDデータRDの移行処理を行わず、RFIDデータRDは、原稿37のRFIDタグ39に何らの制限をされずに記憶されたままとなる。
【0047】
S405では、上記S417と同様、画像形成部15等により原稿画像データに基づく画像をシート材3上に形成することを開始し、S407で、その画像形成が正常終了するかどうかを判断する。この判断内容は上記S311と同様である。図7の<S407>には、画像形成が正常終了した場合を示している。
【0048】
CPU51は、上記画像形成処理が正常終了すると判断すれば(S407:YES)、S409で、RFIDリーダ/ライタ47により原稿37のRFIDタグ39からRFIDデータRDを読み取り、RFIDリーダ/ライタ25により、当該RFIDデータを、定着器17を通過したシート材3のRFIDタグ7に書き込むことを開始し、S411に進む。
【0049】
S411では、この書込処理が正常終了するかどうかを判断する。この判断内容は、上記S315と同様である。そして、この書込処理が正常終了すると判断した場合には(S411:YES)、S413で、RFIDリーダ/ライタ47により、原稿37のRFIDタグ39からのRFIDデータRDの読取処理を制限する。具体的には、RFIDリーダ/ライタ47により、原稿排出トレイ43に排出された原稿37のRFIDタグ39からRFIDデータRDを削除し、S415に進む。これにより、図7の<S407:YES、且つ、S411:YES>に示すように、RFIDデータRDは、RFIDタグ39から読み取ることが不能となり、シート材3のRFIDタグ7だけに存在することになる。
【0050】
一方、上記画像形成処理が正常終了しないと判断した場合(S407:NO)、あるいは、書込処理が正常終了しないと判断した場合には(S411:NO)、RFIDデータRDの読取処理を行うことなくS415に進む。これにより、図7の<S407:NO、或いは、S411:NO>に示すように、RFIDデータRDは、原稿37のRFIDタグ39だけに存在することになる。そして、全頁の原稿37について上記処理を行うと(415:YES)、本第2移行処理及びデータ移行処理を終了する。
【0051】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態によれば、原稿37のRFIDタグ39に対するRFIDデータRDの読取処理後に、当該原稿37のRFIDタグ39に対する読み取りを制限する。これにより、RFIDデータRDを他のシート材に移行することを可能としつつ、同一内容のRFIDデータRDが書き込まれたシート材が無制限に生成されることを抑制することが可能である。
【0052】
(2)仮に、シート材3に対し、RFIDタグ7へのRFIDデータRDの書き込み(図4のS313、図5のS409)を、画像形成処理(図4のS309、図5のS405)以前に行うとする。そうすると、画像形成処理が正常終了しなかった場合には、適切な画像が形成されず不要とすべきシート材3のRFIDタグ7にRFIDデータRDが記憶されるという問題が生じ得る。
これに対し、本実施形態では、図4、図5に示すように、シート材3への画像形成処理が正常終了すると判断した場合に、当該シート材3のRFIDタグ7にRFIDデータRDの書き込みを実行する。従って、上記問題を回避することが可能である。
【0053】
(3)第1移行処理では、図6からも明らかなように、RFIDデータRDは、常に、原稿37のRFIDタグ39及びシート材3のいずれか一方からしか読み取ることができない。従って、同一内容のRFIDデータRDが同時期に複数のシート材のRFIDタグに記憶された状態を回避して、RFIDデータRDの唯一性保持を強化することが可能である。
【0054】
しかも、この第1移行処理では、シート材3のRFIDタグ7へのRFIDデータの書込処理が正常終了しないと判断された場合には、原稿37体のRFIDタグ39のRFIDデータRDが有効化(制限処理が解除)される。従って、このような場合に、RFIDデータRDがRFIDタグに記憶されたシート材が喪失することを抑制することができる。
【0055】
(4)第1移行処理では、例えば図6の<S307><S309>に示すように、RFIDデータRDがNVRAM57のみに記憶されているときにNVRAM57が故障などすると、RFIDデータRDを失ってしまうおそれがある。なお、RFIDデータRDをRAM55に格納する構成とすると、複合機1の電源が切られることでRFIDデータRDが喪失してしまう。
【0056】
これに対して、第2移行処理では、図7に示すように、RFIDデータRDが、シート材3のRFIDタグ7及び原稿37のRFIDタグ39の少なくとも一方に記憶されている。このため、RFIDデータRDの喪失を抑制することができる。但し、第2移行処理では、S409のように、RFIDデータRDが同時にシート材3のRFIDタグ7と原稿37のRFIDタグ39の両方に記憶される状態が存在する。従って、RFIDデータRDの唯一性を強化すべき場合には第1移行処理を好ましい。
【0057】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。特に、各実施形態の構成要素のうち、最上位の発明の構成要素以外の構成要素は、付加的な要素なので適宜省略可能である。
【0058】
(1)上記実施形態では、図6,7に示すようにRFIDデータRDだけでなく原稿画像をも原稿37からシート材3に移行・複製する構成としたが、本発明はこれに限られない。例えばシート材3に対してRFIDデータRDの移行のみ行うようにしてもよい。また、原稿画像の複製は、RFIDデータRDの移行先のシート材とは異なるシート材に行うようにしてもよい。但し、上記実施形態の構成であれば、原稿37と同様に、RFIDデータRD及び原稿画像を同一のシート材で一括管理することができる。
【0059】
(2)上記実施形態では、RFIDデータRDを削除することによりRFIDデータの読取処理を制限したが、本発明はこれに限られない。例えば別のデータを上書きしてもよい。また、読取処理を禁止する禁止情報や、RFIDデータRDの一部読取だけを許可する情報をRFIDタグ39に書き込むことでRFIDリーダ/ライタ47による読み取りを制限してもよい。但し、上記実施形態の構成や上書きする構成であれば、RFIDデータRDの読み取りをより確実に制限することができる。一方、禁止情報等を書き込む構成であれば、削除等する構成に比べて、制限を解除することが容易である。
【0060】
(3)また、上記実施形態では、RFIDデータRDの読取処理を1回行った場合に制限処理を行ったが、本発明はこれに限られない。その読取処理を所定回数行った後に制限処理を行うようにしてもよい。
【0061】
(4)上記実施形態では、シート材3が定着器17に達したことをもって画像形成が正常終了すると推定したが、本発明はこれに限られない。例えばシート材3が排出トレイ23上に排出されたことを検知するセンサ(図示せず)を設けて、当該センサの検知結果に基づき、RFIDリーダ/ライタ25による書込処理を行うようにしてもよい。但し、上記実施形態の構成であれば、書込処理がされる前にシート材3が排出トレイ23からユーザにより持ち去られることを抑制することができる。
【0062】
(5)上記実施形態では、本発明を複合機1単体で実現した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、原稿読取ユニット27と、原稿読取ユニット27を除いた画像形成装置本体とが別体とされ、両者がデータ通信可能に接続された画像形成システムであってもよい。更に、ファクシミリ機能を有する複数の画像形成装置(ファクシミリ装置)を有する画像形成システムであってもよい。つまり、一のファクシミリ装置(例えば図2の複合機1)でRFIDデータの読取処理と制限処理とを行い、他のファクシミリ装置(例えば図2の他の外部機器73であって複合機1と同様の機能を有するもの)が上記RFIDデータの書込処理を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機の内部構成の概要図
【図2】複合機の電気的構成を示すブロック図
【図3】データ移行処理を示すフローチャート
【図4】第1移行処理を示すフローチャート
【図5】第2移行処理を示すフローチャート
【図6】第1移行処理における原稿画像及びRFIDデータの移行過程を示した模式図
【図7】第2移行処理における原稿画像及びRFIDデータの移行過程を示した模式図
【符号の説明】
【0064】
1...複合機(画像形成装置)
3...シート材(記憶先画像形成媒体)
7...RFIDタグ(記憶先画像形成媒体が有する記憶部)
15...画像形成部(形成部)
25...RFIDリーダ/ライタ(書込部)
37...原稿(記憶元画像形成媒体)
39...RFIDタグ(記憶元画像形成媒体が有する記憶部)
41...スキャナ部(画像読取部)
47...RFIDリーダ/ライタ(データ読取部、制限部、解除部)
51...CPU(形成判断部、書込判断部)
55...RAM(格納部)
RD...RFIDデータ(記憶データ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶データが記憶された記憶部を有する記憶元画像形成媒体から前記記憶データを読み取るデータ読取部と、
前記データ読取部により読み取られた記憶データを、記憶先画像形成媒体が有する記憶部に書き込む書込部と、
前記データ読取部による読取処理後に、前記記憶元画像形成媒体の記憶部に記憶された前記記憶データの読取処理を制限する制限部と、を備える画像形成システム。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成システムであって、
前記記憶元画像形成媒体の画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部により読み取られた画像を、前記記憶先画像形成媒体に形成する形成部と、を備える。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成システムであって、
前記記憶先画像形成媒体に画像を形成する形成部と、
前記形成部による画像形成処理が正常終了するかどうかを判断する形成判断部と、を備え、
前記書込部は、前記形成判断部で正常終了すると判断された場合に、前記記憶データの書き込みを実行する。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成システムであって、
前記データ読取部により読み取られた記憶データを格納する格納部を備え、
前記制限部は、前記格納部が前記記憶データを格納した後に、前記記憶データの読取処理を制限し、前記書込部は、前記制限部による制限後に、前記格納部に格納された記憶データを、前記記憶先画像形成媒体の記憶部に書込む第1移行処理を行う。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成システムであって、
前記書込部による書込処理が正常終了するかどうかを判断する書込判断部と、
前記制限部は、前記書込判断部で正常終了しないと判断された場合に、前記読取処理の制限を解除する。
【請求項6】
請求項4または5に記載の画像形成システムであって、
前記制限部は、前記第1移行処理と、前記書込部による前記記憶データの書き込み後に、前記記憶先画像形成媒体の記憶部内の前記記憶データの読取処理を制限する第2移行処理とを実行可能とされ、
前記第1移行処理と前記第2移行処理とのいずれを実行するかを選択する選択部を備える。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成システムであって、
前記制限部が、前記書込部による前記記憶データの書き込み後に、前記記憶先画像形成媒体の記憶部内の前記記憶データの読取処理を制限する第2移行処理を行う。
【請求項8】
記憶データが記憶された記憶部を有する記憶元画像形成媒体から前記記憶データを読み取るデータ読取部と、
前記データ読取部により読み取られた記憶データを、記憶先画像形成媒体が有する記憶部に書き込む書込部と、
前記データ読取部による読取処理後に、前記記憶元画像形成媒体の記憶部に記憶された前記記憶データの読取処理を制限する制限部と、を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−130350(P2010−130350A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302857(P2008−302857)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】