説明

画像形成条件の決定方法および画像形成装置とその制御方法

【課題】 使用するメディアの裏写り特性と、文字や細線やバーコードの再現性などを把握し、裏写り低減と文字や細線やバーコード再現性の維持の両立を図る画像形成条件の決定方法および画像形成装置とその制御方法を提供する。
【解決手段】 印刷手段により印刷媒体の印刷面にテストパターンを印刷し、読取手段によって前記印刷面の反対の非印刷面から前記印刷されたテストパターンを読み取り、画像形成条件を決定する画像形成装置で、前記印刷手段が前記印刷面に複数の画像形成条件それぞれの下で印刷した複数のパターンが配置されたテストパターンを前記読取手段が前記非印刷面から読み取った前記複数のパターンそれぞれの第1の読み取り濃度を、前記非印刷面における裏写り濃度の条件を満たす第1の濃度閾値と比較し、前記比較結果に基づき、前記第1の読み取り濃度が前記第1の濃度閾値を越えない画像形成条件を、当該画像形成装置が印刷媒体へ画像を形成する画像形成条件と決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材あるいは記録媒体上に画像を形成する画像形成装置における画像形成条件の決定方法および画像形成装置とその制御方法に関する。特に、記録材が薄紙である場合における、画像形成条件あるいは画像処理条件の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の輸送時の重量低減、製本時の厚さ低減などの観点から、オフセット印刷機では37g/m2〜57g/m2程度の坪量の薄紙が使用されていた。上記薄紙は非常にこしが弱く搬送性に問題があるため、枚葉紙ではなくロール紙で印刷を行って後工程でカットしユーザに納品していた。そして、上記薄紙に対しては、通常の墨インキで印刷を行うと裏写りが問題になるため、グレーインキで印刷を行っていた。
【0003】
近年、電子写真技術を用いた枚葉紙主体の画像形成装置において用紙搬送技術や転写定着技術が向上し、上記薄紙も通紙できる画像形成装置が増えてきた。電子写真の画像形成装置において、上記薄紙の裏写り問題はオフセット印刷以上に技術的ハードルが高い。オフセット印刷機は、インキとインキを配合してインキの濃度や色をカスタマイズすることは日常的に実施されているため、薄紙時にグレーインキを使用することもなんら問題ない。これに対して、電子写真の場合は、粉体のトナーを混ぜても混色することは無く、ユーザはカスタマイズできない。また、現在使用されている電子写真方式の画像形成装置の色材は、Cyan、Magenta、Yellow、Blackがほとんどであり、色材自体を薄くすることは難しい。
【0004】
これらの課題に対し、特許文献1では、白色トナーを新たに搭載して薄紙とカラートナー(ブラックを含む)の間に白色トナーを有することで、裏写りを防止していた。また、特許文献2では、薄紙に画像を形成する前に白黒基準パターンの透かし量を検知し、検知情報に応じて濃度条件を普通紙用と薄紙用とで切り替えていた。
【0005】
一方、従来の複写機の場合、裏写りをした原稿を複写する際に、画像処理的にγLUTを調整した下地飛ばしや読取装置の光量を変更させ裏写り量をコントロールして、裏写り部を除去していた。このように、複写時は画像処理で問題を回避できても、オリジナルの出力物は裏写りによる文字の判読性の低下や裏写りによるバーコード誤認識が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-304035公報
【特許文献2】特開平10-161367公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、電子写真方式の画像形成装置でグレートナーや特許文献1のような白色トナーを有し、これを薄紙時に使用することも容易に考えられる。しかしながら、薄紙専用の画像形成装置ならともかく、基本性能(すなわち、薄紙以外の画像形成のこと)を重視するために基本色材であるCyan、Magenta、Yellow、Black(以下CMYKと呼ぶ)が搭載されている。そのため上記CMYKの他に1色分の色材を必要とする。もちろん、追加した色材用の帯電器、露光装置、現像器、感光体転写装置も必要になる。このため、1色分の色材の追加であっても非常に多くのパーツが追加になり、コスト的に採用できずにいた。また、特許文献1の構成は、白色のトナーの上に有色トナーを載せなければならず、局所的に200%以上の色材載り量を薄紙に形成させることになり、文字のつぶれやラインの飛散り、定着不良などが問題になっていた。
【0008】
一方、特許文献2の構成は、基準板やLED光源と受光センサを用いて紙の透過性を検出して画像形成条件(濃度)を予め決まっている条件に変更しているが、実際の出力濃度がどの程度なのかは不明で、補正の過不足が生じていた。更にいうと、定着器でトナーが融解され薄紙に接地固着した状態の薄紙と、基準板やLED光源の透過光とでは、紙裏面で発生する反射光成分を考慮しておらず、補正の過不足が生じていた。発明者らの実験によると、特許文献2の構成では、透過光の検出値は本来の裏写りよりも薄く検出される傾向があった。その要因は大きく3つに分類できる。第1に、紙内部を透過した光が紙の裏側表面で反射されることを考慮していないことである。第2に、紙の浮きが検出精度に直結し、検出誤差が多く含まれることである。第3に、センサ面や基準板は常に用紙を搬送していることから、紙粉の堆積などの汚れよる検出誤差が発生することである。実際に裏写り補正の過不足のうち、補正の不足となると、裏写りが目立ち文字の判読性を低下させることやバーコードの誤認識などが発生する。過補正の場合は、実際の印字面の濃度低下によるコントラスト不足や、表面の文字の判読性の低下やバーコードの誤認識などが発生する。すなわち、薄紙時の裏写り量の補正が過不足になると、どちらも表あるいは裏の濃度コントラスト不足や、文字の判読性の低下やバーコードの誤認識などが発生する。なお、電子写真方式の画像形成装置の場合、濃度を下げるには潜像コントラストと呼ばれるVcontを調整するのが一般的である。しかしながら、Vcontを下げた際に、潜像を深く掘れないことにより小ドットを形成しづらくなる。そのため、文字や細線、バーコードなどのセキュリティーパターンの再現性が低下して、文字判読性の低下やバーコード誤認識検出エラーなどが発生してしまう。
【0009】
本発明は、使用するメディアの裏写り特性と、文字や細線やバーコードの再現性などを把握し、裏写り低減と文字や細線やバーコード再現性の維持の両立を図る画像形成条件の決定方法および画像形成装置とその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明の画像形成装置は、印刷手段により印刷媒体の印刷面にテストパターンを印刷し、読取手段によって前記印刷面の反対の非印刷面から前記印刷されたテストパターンを読み取り、画像形成条件を決定する画像形成装置であって、前記印刷手段が前記印刷面に複数の画像形成条件それぞれの下で印刷した複数のパターンが配置されたテストパターンを前記読取手段が前記非印刷面から読み取った前記複数のパターンそれぞれの第1の読み取り濃度を、前記非印刷面における裏写り濃度の条件を満たす第1の濃度閾値と比較する第1の濃度比較手段と、前記比較結果に基づき、前記第1の読み取り濃度が前記第1の濃度閾値を越えない画像形成条件を、当該画像形成装置が印刷媒体へ画像を形成する画像形成条件と決定する決定手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、裏面から画像特性を評価して裏写り影響度を把握し、画像形成条件および画像処理条件を最適化する(「裏写り低減CAL」と呼ぶ)。これにより、薄紙時の裏写り低減と、文字の判読性やバーコードの誤認識防止を両立させる画像形成条件の決定方法および画像形成装置とその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施例の画像形成装置のプリンタ部の概略構成例を示す図である。
【図2】本実施例の画像形成装置のスキャナ部の概略構成例を示す図である。
【図3】本実施例の画像形成装置の操作部の概略構成例を示す図である。
【図4】(a)は本実施例の画像形成装置の制御構成例を示すブロック図であり、(b)はMFP制御部の構成例を示すブロック図である。
【図5】(a)は本実施例の画像形成装置のスキャナ部の機能構成例を示すブロック図、(b)は本実施例の画像形成装置のRIP部の機能構成例を示すブロック図、(c)は本実施例の画像形成装置の出力画像処理部の機能構成例を示すブロック図である。
【図6】実施例1のテストチャートの概略構成例を示す図である。
【図7】実施例1に係わる画像形成条件の信号変換例を示す図である。
【図8】(a)は実施例1に係わる画像形成条件登録処理の手順例を示すフローチャート、(b)は実施例1に係わる画像形成処理の手順例を示すフローチャートである。
【図9】実施例1に係わる画像形成条件決定処理の手順例を示すフローチャートである。
【図10】実施例2に係わる表面相対濃度と裏写り相対濃度との関係の例を示す図である。
【図11】(a)は実施例2に係わるバーコードの概略例を示す図、(b)は実施例2に係わるバーコード検出の概念を示す図である。
【図12】実施例2に係わる画像形成条件決定処理の手順例を示すフローチャートである。
【図13】実施例3に係わる初期と耐久後のベタ部とライン部の相対濃度関係の例を示す図である。
【図14】実施例3に係わるテストチャートの概略構成例を示す図である。
【図15】実施例3に係わる画像形成条件決定処理の手順例の内、実施例3との相違部分を示すフローチャートである。
【図16】実施例4に係わる画像形成装置のRIP部の概略構成例を示す図である。
【図17】実施例5に係わるテストチャートの概略構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明の実施例を例示的に詳しく説明する。
【0014】
<本実施例の画像形成装置の構成例> まず、本発明を適用する一実施例として、画像形成装置(MFP(Multi Function Peripheral:マルチファンクション周辺機器)の構成例を説明する
(プリンタ部11の説明) 図1は電子写真方式のプリンタ部11の概略構成例を示す図であり、プリンタ部11としてのレーザビームプリンタの概略構成例を示す縦断面図である。図1に示すプリンタ部11は、プリンタ部本体Aの内部に、像担持体としてドラム形の電子写真感光体(以下、感光ドラムという)100を備えている。感光ドラム100の周囲には、その回転方向に沿ってほぼ順に、帯電部101、露光部102、現像部103、クリーニング部105、前帯電器106が配設されている。感光ドラム100の対向には、転写部107が内蔵されている。また、記録材P(例えば、印刷媒体である紙)の搬送方向に沿って上流側から順に、給搬送部109、2次転写部108、搬送ベルト部110、定着部111、排紙トレイ112が配設されている。そして、プリンタ部本体Aの上部には、スキャナ入力部200が配設されている。上述の感光ドラム100は、アルミシリンダの外周面に、a−Si感光体を層状に設けたものであり、駆動手段(不図示)によって矢印方向に所定のプロセススピードで回転駆動される。感光ドラム100は、その表面が帯電部101によって所定の極性・所定の電位に均一に帯電される。帯電部101としては、例えば、感光ドラム100に対して非接触のコロナ帯電器を使用することができる。帯電後の感光ドラム100は、露光部102によって静電潜像が形成される。
【0015】
スキャナ入力部200に原稿Dが載せられ読み取り動作を実施するが、その動作等の詳細は後述する。スキャナ入力部200で読み取られた画像情報は、図4(a)で示す入力画像処理部002及び出力画像処理部012で加工されて、露光部102に入力される。露光部102は、レーザ発振器102a、ポリゴンミラー102b、レンズ102c、反射ミラー102d等を有しており、上述のスキャナ入力部200から入力された画像情報に応じて感光ドラム1表面を露光して静電潜像を形成する。感光ドラム100の表面に形成された静電潜像は、現像部103によってトナーが付着されてトナー像として現像される。一方、給搬送部109の給紙カセット109aに収納されている記録材Pが、給紙ローラ109bによって給紙され、搬送ローラ8c によって、転写部107突入する。上述の現像部103によって感光ドラム100上に形成されたトナー像は、転写部107で転写バイアスを印加することで、記録材P表面に転写される。トナー像が転写された記録材Pは、搬送ベルト部110によって定着部111に搬送され、ここで、定着ローラ111aと加圧ローラ111bとによって加熱・加圧されて表面にトナー像が定着され、その後、排紙トレイ112上に排出される。
【0016】
(スキャナ部200の説明) 図2はプリンタ部11の上部に取り付けられたスキャナ部200の概略構成例を示す図である。図2において、読み取られるべき原稿Dは、原稿台ガラス201の上に置かれて白色背面の圧板211で浮きを防止される。そして、操作部300(図3参照)のスタートキーが押されたり、スキャナドライバのOKキーをクリックされたりするなどをトリガとして、スキャン動作を開始する。スキャン動作を開始すると、第1ミラーユニット202と第2ミラーユニット203は、一旦ホームポジションセンサ204のあるホームポジションまで戻り、原稿照明ランプ205を点灯して原稿に照射する。その反射光は、第1ミラーユニット202内の第1ミラー206と、第2ミラーユニット203内の第2ミラー207及び第3ミラー208を経由して、レンズ209を通してCCDセンサ020上に結像される。そして、光信号としてCCDセンサ020に入力される。なお、第1ミラーユニット202、第2ミラーユニットの移動は、スキャナモータ210で駆動される。新しい薄紙などで「裏写り低減CAL」を実行する際は、通常の光量設定よりも弱い80%の光量でテストパターンをスキャンする。通常コピー時は、下地がかぶらないよう光量を強くし、アナログ的な光量でも下地飛ばしを行っている。一方、裏写り低減CAL時は、スキャナ部の校正を意識し、紙の下地を濃度ゼロとする相対濃度で演算を行う。そのため光量をコピー時よりも下げてスキャンを行う。
【0017】
(操作部300の説明) 図3は操作部300の概略構成図であり、ユーザモードの調整・CLN(クリーニング)をユーザが選択したときの画面である。MFPの操作部300は、キー入力部301とタッチパネル部302から成っている。キー入力部301は、定常的な操作設定を行うことができるキー入力部分である。ユーザモードキーは、ユーザごとのシステム設定画面に移行するためのキーである。本件に関係する裏写り低減CALは、上記ユーザモードキーを押し、調整・CLNボタンをタッチパネルで触れると、選択画面が表示される。新しい薄紙などで裏写り低減CALを実行する際は、上記操作画面の調整・CLNボタンから入り、裏写り低減CALを選択して実行すればよい。
【0018】
<画像形成装置の制御構成例> 図4の(a)と(b)は、本実施例に係る画像形成装置の制御の構成例を示すブロック図である。画像形成装置は、ネットワークとの接続を可能にするインタフェースや、各種画像処理を実行する画像処理部が内蔵されたシステム構成である。よって、画像形成装置をMFP(Multi Function Peripheral:マルチファンクション周辺機器)と呼ぶ。MFPは、自装置内部に複数のジョブのデータを記憶可能なハードディスク等のメモリを具備する。MFPの複数の機能としては、スキャナ部200から出力されたジョブデータに対し該メモリを介してプリンタ部11でプリント可能にするコピー機能を含む。また、コンピュータ等の外部装置から出力されたジョブデータに対し該メモリを介してプリント部11でプリント可能にするプリント機能を含む。
【0019】
(MFP制御部1を中心とする構成例) 図4(a)に示すように、MFP制御部1には各種情報のインタフェースとして、以下の構成部を有する。紙原稿などの画像を読み取り、読み取られた画像データを画像処理する入力画像処理部2を有する。また、ファクシミリなどに代表される電話回線を利用した画像の送受信を行うFAX部3を有する。また、ネットワークを利用して画像データや装置情報をやりとりするNIC(Network Interface Card)部4を有する。また、外部装置と画像データなどの情報交換を行う専用インタフェース部(専用I/F部)5を有する。また、USB(Universal Serial Bus)メモリ(リムーバブルメディアの一種)に代表されるUSB機器と画像データなどを送受するUSBインタフェース(USB I/F)部6を有する。そして、MFP制御部1(CPU)では、MFPの用途に応じて画像データを一時保存したり、経路を決定したりといった交通整理の役割を担っている。
【0020】
次に、文書管理部8は、複数の画像データを格納可能なハードディスク等のメモリを具備する。例えば、MFP制御部1が主体となって、上記各インタフェースから入力された画像データを該ハードディスクに複数格納可能に制御する。そして、該ハードディスクに格納された画像データを適宜読み出して、プリンタ部11の出力部に転送して、該プリンタ部11によるプリント処理等の出力処理を実行可能に制御する。又、オペレータからの指示により、ハードディスクから読み出した画像データを、コンピュータや他の画像形成装置等の外部装置に転送可能に制御する。画像データを文書管理部8に記憶する際には、必要に応じて画像データを圧縮して格納したり、逆に圧縮して格納された画像データを読み出す際に元の画像データに伸張して戻したりするなどの処理に対して、圧縮伸張部7を介して行っている。また、データがネットワークを経由する際には、JPEG、JBIG、ZIPなど圧縮データを使用することも一般知られており、データがMFPに入った後、この圧縮伸張部7にて解凍(伸張)される。また、リソース管理部9には、フォント、ガンマテーブルなど共通に扱われる各種パラメータテーブルなどが格納されており、必要に応じて呼び出すことができると共に、新しいパラメータテーブルを格納したり、修正して更新したりすることができる。本実施例の薄紙種毎の裏写りを低減する最適な画像形成条件の算出演算(裏写り低減CAL)の実施時に生成される画像形成条件情報は、このリソース管理部9に格納され、必要に応じてMFP制御部1が参照し、プリンタ部11に情報を送る。次に、MFP制御部1では、PDLデータが入力された場合には、RIP部13でRIP(Raster Image Processor)処理を施す。また、プリントする画像に対して、必要に応じて出力画像処理部12でプリントのための画像処理を行ったりする。更に、その際に作られる画像データの中間データやプリントレディデータ(プリントのためのビットマップデータやそれを圧縮したデータ)を、必要に応じて文書管理部8で再度格納することもできる。そして、画像形成を行うプリンタ部11に送られる。プリンタ部11でプリントアウトされたシートは、後処理部10へ送り込まれ、シートの仕分け処理やシートの仕上げ処理が行われる。
【0021】
ここで、MFP制御部1は円滑にジョブを流す役割を担っており、MFPの使い方に応じて、以下のようにパス切り替えが行われている。但し、中間データとして画像データを必要に応じて格納することは一般に知られているが、ここでは文書管理部8が始点、終点になる以外のアクセスは表記していない。また、必要に応じて利用される圧縮伸張部7と後処理部10、あるいは、全体のコアとなるMFP制御部1などの処理は省略して、おおよそのフローがわかるように記載する。
(A) 複写機能:入力画像処理部2→出力画像処理部12→プリンタ部11
(B) FAX送信機能:入力画像処理部2→FAX部3
(C) FAX受信機能:FAX部3→出力画像処理部12→プリンタ部3
(D) ネットワークスキャン:入力画像処理部2→NIC部4
(E) ネットワークプリント:NIC部4→RIP部13→出力画像処理部12→プリンタ部11
(F) 外部装置へのスキャン:入力画像処理部2→専用I/F部5
(G) 外部装置からのプリント:専用I/F部5→出力画像処理部12→プリンタ部11
(H) 外部メモリへのスキャン:入力画像処理部2→USB I/F部6
(I) 外部メモリからのプリント:USB I/F部6→RIP部13→出力画像処理部12→プリンタ部11
(J)スキャンボックス機能:入力画像処理部2→出力画像処理部12→文書管理部8
(K) ボックスプリント機能:文書管理部8→プリンタ部11
(L) ボックス受信機能:NIC部4→RIP部13→出力画像処理部12→文書管理部8
(M) ボックス送信機能:文書管理部8→NIC部4
(N) プレビュー機能:文書管理部8→操作部14
なお、操作部14は、上記の様々なフローや機能を選択したり操作指示したりするためのものである。しかし、操作部14の表示装置の高解像度化に伴い、文書管理部8にある画像データをプレビューし、確認後OKならばプリントするといったこともできる。
【0022】
(MFP制御部1の構成例) 図4(b)は、MFP制御部1の構成例を示すブロック図であり、CPU51、ROM52、RAM53、外部記憶部54、入出力インタフェース55を含む。CPU51は、RAM53をワークエリアとして使用しながら、ROM52に格納されたプログラム、あるいは外部記憶部54からRAM52にロードされたプログラムを実行することで、本実施例の薄紙を記録材とする場合の裏写りに対処する制御を行う。また、入出力インタフェース55には、各種デバイスやインタフェース、例えば、操作部14、スキャナ部200、プリンタ部11、FAX部3、NIC部4専用I/F部5、USB I/F部6が接続される。以下に、RAM53及び外部記憶部54に記憶されている本実施例で使用される特徴的なデータやプログラムの例を示す。
【0023】
RAM53には、本実施例では以下の記憶領域が確保されている。53aは、裏写り低減CALの実行が指示されたか否かの実行フラグを記憶する領域である。53bは、使用する薄紙名称や薄紙が充填されていると指定された供給段を記憶する領域である。53cは、スキャナ部200から入力された入力輝度データや変換された濃度データを記憶する領域である。53dは、
パッチが印刷された用紙からアライメント用パッチが検出されたか否かのフラグを記憶する領域である。53eは、測定され算出された裏面の相対濃度データを記憶する領域である。53fは、裏写りを防ぐことが出来る裏面の相対濃度のしきい値の条件をクリアしたデータを記憶する領域である。53gは、測定され算出された表面の相対濃度データを記憶する領域である。53fは、画質劣化を防ぐことが出来る表面の相対濃度のしきい値の条件をクリアしたデータを記憶する領域である。53iは、バーコードを検出した結果のデータを記憶する領域である。53jは、本発明で決定された画像形成条件を記憶する領域である。53kは、外部記憶部54などからロードされCPU51に実行されるプログラムを記憶する領域である。
【0024】
また、外部記憶部54には、本実施例では以下の記憶領域が確保されている。54aは、図6,図14,図17にその例を示す裏写り用のテストパターン・データを格納する領域である。54bは、輝度データを濃度データに変換するLUTを格納する領域である。54cは、アライメント調整用のパッチを検出するためのしきい値を格納する領域である。54dは、以下の表1や表3に示すような画像形成条件である、画像信号の変換率、現像バイアス(Vpp)、現像コントラスト(Vcont)などを格納する領域である。54eは、裏面の相対濃度が裏写りを防ぐことが出来るか否かを判定するためのしきい値(本例では、0.07)を格納する領域である。54fは、表面の相対濃度が画質劣化を防ぐことが出来るか否かを判定するためのしきい値(本例では、0.6)を格納する領域である。54gは、パッチに基づいて測定され算出された相対濃度から一旦決定された画像形成条件を以降の画像形成条件の決定のために登録する、以下の表1や表3に示すような登録テーブルを格納する領域である。54hは、本実施例の図8にフローチャートに示す裏写り低減CALプログラムを格納する領域である。54iは、裏写り低減CALプログラム54hが使用する輝度濃度変換ルーチンを格納する領域である。54jは、裏写り低減CALプログラム54hが使用するアライメント調整ルーチンを格納する領域である。54kは、裏写り低減CALプログラム54hが使用する図9,図12,図15に示す出力条件決定ルーチンを格納する領域である。54mは、本実施例の結果から裏写りを防ぐ画像形成条件で画像形成をする画像形成プログラムを格納する領域である。
【0025】
<本実施例の画像形成装置の各部の構成例>
(入力画像処理部2の構成例) 図5(a)は、スキャナ部200内の画像データのフローと構成例を示すブロック図である。単色の1ラインCCDセンサ20を用いて読み込まれた画像は、電気信号に変換されて単色の画像信号としてA/D変換部021に入力される。A/D変換部21は、ゲイン調整とオフセット調整とを行い、画像信号は8ビットの画像データに変換される。シェーディング補正部22は、入力画像処理部2内に配置された画像処理ブロックの1つである。シェーディング補正部22では、基準白色板の読み取り信号を用いて、CCDセンサ20の各画素の感度のばらつきや原稿照明ランプの光量のばらつきなどを補正する。フィルタ処理部24では、注目画素と複数の周辺画素を含めて畳み込み積分を行い、CCDセンサ20から取り込まれた画像をより鮮鋭にみせる処理を施す。階調補正部25は、文字モード、写真モード、その混在モードなど3つの画像モードに応じた階調になるよう、プリンタ部011の出力特性も加味して一次元のルックアップテーブル(LUT:LookUp Table)が保持されている。ここで、文字モードでは、文字をくっきり再現するために低濃度から中濃度にかけては入力画像を極端に白か黒かで再現するようなカーブになっている。また、写真モードでは、原稿を忠実に再現するためにほぼリニアなカーブになっている。また、混在モードでは、文字モードと写真モードの中間的な位置づけとなっている。ハーフトーン処理部26は、MFP機能に応じて、異なる種類のスクリーニングを択一的に適用することができる。一般に、印刷原稿などの網点原稿は、モアレの起きにくい誤差拡散系(一般的に、注目画素とその周辺画素に対して誤差フィルタで重み付けする)の処理を利用する。印画紙原稿などでは、スクリーン系(一般的に、ディザマトリックスを用いて、入力画像を閾値と比較して出力画像を決定する)の処理を用いることが多い。いずれの場合も、多値画像から2値画像へ変換して擬似的に中間調を表現している。誤差拡散処理は誤差拡散処理部27で、スクリーン処理はスクリーン処理部28で、ハーフトーン処理が実行される。更に、ノッチ処理部29では、注目画素とその周辺画素に対してウィンドウを用いて不要なノッチ(ギザギザ)を補正する方法で、予め用意されたパターンと一致した場合にはその注目画素を変化させる。輝度濃度変換部23は、裏写り低減CALの実行時に通過する信号変換部で、スキャナ部200に固有の輝度情報から、濃度情報に変換する為のテーブルが記憶されており、信号変換が行われる。図5(a)のように、薄紙CAL実行時には、フィルタ処理やハーフトーン処理は実行されず、多値のグレースケール情報をMFP制御部1に通知する。
【0026】
(RIP部13の構成例) 図5(b)を用いて、RIP部13の構成について説明する。RIPとは、ページ記述言語(PDL)で記述された文字、線画、図形などのベクトル情報、あるいは、色、パターン、写真などの画像走査線情報などを同時にページ上に再現する。そのために、それぞれのオブジェクト情報をメモリ上にビットマップ(ラスタイメージ)展開するプロセッサである。元来、ハードウェアとして出力装置側に搭載されていたが、現在では、CPUの高速化によりソフトウェアで実現されている。MFP制御部から入力した画像データは、RIP部013でインタプリタ部30と、レンダリング部031の処理を施される。インタプリタ部30は、PDLの翻訳を行うPDL解釈部032と、解釈したPDLデータからディスプレイリストと呼ばれる中間ファイルを生成するDL(Display List)生成部33とで構成されている。一方、レンダリング部31は、次ぎの3つの各部から構成されている。すなわち、ディスプレイリストをビットマップ(ラスタイメージ)に展開するDL展開部34である。また、ユーザから指示された明るさ調整やプリンタの階調補正を行うための階調補正部35である。また、多値のグレースケール画像を2値画像に変換する擬似中間調処理を実行するスクリーン処理部36である。ディスプレイリストに対してPDL解釈部32は、入力されてきた様々な種類のPDLデータを解析する部分である。入力フォーマットとしては、Adobe社のPostScript(登録商標)言語やHP(Hewlett−Packard)社のPCL(Printer Control Language)言語などが有名である。これらは、ページ単位の画像を作成するためのプリンタ制御コードで記載されており、単純な文字コードのほか、図形描画のコードや写真画像のコードなども含まれている。また、PDF(Portable Document Format)というAdobe社の開発した文書表示用ファイル形式も様々な業界で多用されており、ドライバを使用せず直接MFPに投げ込まれたこのフォーマットも対象としている。そのほか、PPML(Personalized Print Markup Language)と呼ばれるVDP(Variable Data Print)向けフォーマットにも対応している。また、JPEG(Joint Photographic Experts Group)やTIFF(Tagged Image File Format)と呼ばれるカラー画像の圧縮フォーマットなどにも対応している。スクリーン処理部36まで画像処理が実行されたとき、MFP制御部に画像データを送る。
【0027】
(出力画像処理部12の構成例) 図5(c)を用いて、出力画像処理部12の構成について説明する。裏写り量の算出は、この出力画像処理部12で行う。通常出力JOB時、MFP制御部1から入力した画像データは、必要に応じて変倍時濃度誤差補正部40やトナーセーブ部41で画像処理を実行する。変倍時濃度誤差補正部40は、FAX受信などの際に解像度を変換(例えば、200dpiで入力した画像データを600dpiで出力)する場合、濃度情報が保存されないことがある。これを解消するため、画像をブロックに分割し、パターンマッチングを行い、マッチしたブロックは濃度が保存されない恐れがあるため、この発生誤差を一次元拡散処理して、濃度が保たれるように補正する方法がとられる。トナーセーブ部41は、入力画像の黒画素を、周期的に白画素に置き換えて、省トナーを実現する部分である。置き換えパターンや、省トナーの度合いを選択する事が可能で、PDLプリント時には、エッジ部を検出し、非エッジ部のみ選択的にトナーセーブして画像を鮮明に再現する。画像形成条件決定部42は、本発明の特徴であり、実際に形成された裏写り濃度を把握し、最適な画像形成条件を算出する。詳細は後述する。
【0028】
<実施例1及び2で使用するテストチャート> 実施例1及び2で使用するテストチャートを図6に示す。B4サイズ以上を想定しているチャートで、図6で上方向が通紙搬送方向となる。Vpp(現像バイアスAC成分特性)、現像コントラスト(Vcont)、信号最大値を変化させ、最大濃度条件を面内で変更している。なお、図6中の点線や文字は印字されない。また、先頭(図6の上端)のVpp1.5+Vcont150のパッチは、普通紙(80〜105g/m2の上質紙)の画像形成条件で本体の基準的な条件で、濃度も相対濃度値が1.45程度の濃い画像を形成する。上記パッチを後端(図6の下端)にも2個左右に配置し、この3つのパッチを用いてスキャン時の傾きや倍率を補正する。すなわち、この3つのパッチがアライメント調整用のパッチを構成する。
【0029】
<画像信号の変換による濃度調整例>
本実施例のRIP部13は、インタプリンタ部30でPDL情報をビットマップ化し、レンダリング部31で必要に応じて階調補正を行う。本実施例の後出の画像形成条件GとHは、Vpp1.3、Vcont75で画像信号を90%、80%に変更している。この変更は、図7のように100%の入力信号に対して出力値を90%や80%に階調補正部035でリニア変換している。よって、ビットマップの時点で画像形成条件A〜FとGならびにHはパッチの面積率が異なる。
【0030】
<本実施例の画像形成装置の動作手順例>
(画像形成条件の登録処理例) 図8(a)は、本実施例の画像形成装置の画像形成条件の登録処理の手順例を示すフローチャートであり、CPU51により実行される。まず、S001にて、操作部300から裏写り低減CALを実行指示されたMFP制御部1のCPU51は、裏写り低減CALの実行と判断して操作部300の画面に登録したい薄紙をセットするよう表示する。裏写り低減CALの実行指示でなければ、他の処理を行う。ユーザが、指示に基づき所望の給紙段に薄紙をセットし、上記薄紙の名称を操作部300を使用して入力すると、MFP制御部1のCPU51は給紙段と薄紙の名称とを対応つけて登録する(S2)。ユーザが操作部300のスタートボタンを押すと、MFP制御部1のCPU51は裏写り低減CAL用のテストパターンを薄紙に出力させ、操作部300に読込ボタンを表示する(S4)。ユーザがスキャナ部200にテストパターンの裏側を読み込むように薄紙をセットして、操作部300に表示された読込ボタンを押すと(S5)、テストパターンの裏側を読取る(S6)。なお、本例では、テストパターンの印刷された表側を印刷面、反対の印刷されない裏側を非印刷面ともいう。入力画像処理部2内の輝度濃度変換部23は、予め登録されていたスキャナの読取輝度値と反射濃度値との関係がLUT(ルックアップテーブル)化されているものを参照でき、実際に輝度から濃度への変換を行う(S7)。この時点ではまだスキャナから入力された画像イメージデータである。濃度情報に変換されたテストパターンの入力画像は、出力画像処理部12内の画像形成条件決定部42に入力される。MFP制御部1のCPU51は、画像形成条件決定処理のサブルーチンを実行して、裏写りや画像品質が適切となる画像形成条件を決定する(S8)。決定された画像形成条件は、給紙段や薄紙の名称に対応付けてリソース管理部9(決定画像形成条件登録テーブル54gに相当)に登録される(S9)。この登録された画像形成条件から使用される給紙段や薄紙の名称に対応して1つの画像形成条件が選択され、画像形成処理時の画像形成条件として適用される。
【0031】
(決定された画像形成条件による画像形成処理例) 図8(b)は、本実施例の画像形成装置の決定された画像形成条件による画像形成処理の手順例を示すフローチャートであり、CPU51により実行される。なお、上記裏写り低減CALを実行したMFPは、用紙銘柄ごとにリソース管理部9に画像形成条件が保存されている。PCなどからのPDL出力の場合には、ネットワークを介し、NIC部4にPDL情報が通知される。MFP制御部1はPDL情報を解析し、プリンタドライバから、裏写り低減CAL情報が登録された薄紙か否か、使用する予定の給紙段は、裏写り低減CAL情報が登録された薄紙か否か、を判断する。判断結果から、裏写り低減CAL情報が存在する薄紙を指定されている場合、MFP制御部1は画像形成条件をリソース管理部9に問い合わせする。記録されている条件を、以下のRIP部13及びプリンタ部11に通知し、登録されている薄紙に最適な画像形成条件にて出力させる。リソース管理部9に記憶されているVppやVcont情報は、プリンタ部に通知され、上記条件で出力される。
【0032】
まず、MFP制御部1のCPU51は、裏写り低減CALによる出力か否かを判断する(S11)。裏写り低減CALによる出力でなければ、他の処理をする。次に、MFP制御部1のCPU51は、印刷に使用される薄紙の名称に対応する画像形成条件がリソース管理部9(決定画像形成条件登録テーブル54gに相当)に登録されているか否かを判定する(S12)。登録されていれば、MFP制御部1のCPU51は、指定された給紙段に指定された薄紙が有るか否かを判定する(S13)。指定された薄紙が有れば、MFP制御部1のCPU51は、指定された薄紙に対応して登録された画像形成条件を読み出す(S14)。MFP制御部1のCPU51は、読み出された画像形成条件をプリンタ部及びRIP部に通知する(S15)。そして、MFP制御部1のCPU51はプリントの指示を出す(S16)。印刷に使用される薄紙の名称に対応する画像形成条件が登録されてない、または給紙段に指定された薄紙がない場合は、未登録または指定薄紙違いを操作部300に表示する(S17)。なお、登録されていない場合に、操作部300に登録を促す文字を表示してもよい。
【0033】
<実施例1(裏面の相対濃度を0.07以下と規定)>
(実施例1の画像形成条件決定処理S8−1) 図9は、実施例1の画像形成条件決定処理(図8(a)のS8)の手順例を示すフローチャートであり、MFP制御部1のCPU51により実行される。まず、MFP制御部1のCPU51は、裏面からアライメント調整用のパッチを検出する(S801)。テストパターンのパッチは、図8の上端側に1パッチ、下段側に左右2パッチ配置している。そのパッチの裏写り結果を用いてアライメントを調整する。テストパターンのアライメント調整パッチは裏写り低減CALのパッチの最大濃度条件を使用しており、多くの薄紙で裏写り相対濃度(紙下地を0としたときの濃度値)が0.07以上であった。概ね相対濃度が0.05以上であれば、裏写りパッチ検出が可能である。よって、S802では、MFP制御部1のCPU51は、裏写りパッチが相対濃度で0.05以上の濃度かを検出している。薄紙の中には透過性が悪い薄紙も存在し、その場合は検出濃度が薄すぎて裏写りパッチ濃度が検出できず、アライメント調整ができない。アライメント調整ができないほどの裏写り濃度とは、裏写りをしていないことと同じである。よって、この場合は裏写りの程度の判定を中止して、MFP制御部1のCPU51は、フロー上は通常の画像形成条件で出力するよう、リソース管理部に記憶させる(S803)。裏写りの指標である相対濃度値が0.05以上であれば、MFP制御部1のCPU51は、アライメント調整に移る(S804)。アライメント調整は、裏写りパッチのX-Y座標とオリジナルのX-Y座標とを確認し、両者の差分が3%以内になるよう裏写りパッチのスキャン読み込み画像を拡縮回転処理して、裏写り判定用のパッチを規定位置に合わせる。次に、MFP制御部1のCPU51は、テストパターンのパッチ部の裏写り濃度を抽出し(S805)、抽出した濃度情報を平均化する(S806)。画像形成条件と裏写り濃度との抽出した関係は表1のような関係になる。かかる濃度が、第1の読み取り濃度となる。
【0034】
【表1】

【0035】
S807では、MFP制御部1のCPU51は、検出相対濃度が0.07以下になる画像形成条件を、表1に白抜きで示すように判別する。ここで、検出相対濃度0.07が第1の濃度閾値の一例であり、S807の判別処理が第1の濃度比較に相当する。る。その比較結果で、表1のように0.07以下が複数ある場合には、MFP制御部1のCPU51は、その中でも濃度が高くなる画像形成条件(画像信号多く、Vpp高く、Vcont高い)を優先して採用する。表1の場合は、ベタ部の画像信号100%、Vpp1.5KV、Vcont75Vの画像形成条件が最適として選択される(S809)。また、S807で、検出相対濃度が0.07以下になる画像形成条件が1つしかない場合には、MFP制御部1のCPU51は、その条件をリソース管理部に記憶させる(S808)。裏写り相対濃度が0.07以下になるパッチが存在しない場合、MFP制御部1のCPU51は、最も薄い条件Hで画像形成を実行するようリソース管理部に記憶させる(S810)。
【0036】
なお、裏写り相対濃度が0.07以下に設定した理由は、高速白黒画像形成装置であるiR7105(キヤノン製)で、代表紙であるオフィスプランナー(キヤノン商品)の裏写り相対濃度を調査した結果、0.07であった。また、その他の代表紙の裏写り相対濃度は表2の関係になった。
【0037】
【表2】

【0038】
上記オフィスプランナーとiR7105の組み合わせで、判読性やバーコード誤認識に関する問題は発生しておらず、ターゲットとしては妥当と判断し、本実施例では裏写り相対濃度ターゲットを0.07以下とした。なお、裏写り相対濃度が0.1を超えると、プロフェッショナルユーザ(印刷業界、PFP(Print For Pay)、企業内集中出力センター等)や一般ユーザなどのユーザ層に限らず、判読性に問題が発生する場合が多い。以上説明したように、裏写り相対濃度を0.07に抑えるよう裏写り低減CALを実行することにより、裏写りの影響の少ない高品質な薄紙出力物をユーザに提供できる。なお、本実施形態で扱う濃度値は、X−Rite500シリーズ(入射光45度、受光0度、アパーチャー3.4mm)の濃度計で測定された。測定条件は、分光感度特性はISO Visual(視感濃度)、下地は同じ紙を7枚敷いた際の濃度値である。また、相対濃度とは測定された濃度値(絶対値)から紙の濃度値を差し引くことによって導かれる値を指す。すなわち最低相対濃度は紙の相対濃度となり、0.00となる。
【0039】
<実施例1の変形例>
実施例1では、多くのユーザで許容されるであろう裏写り相対濃度を0.07以下と設定した。ユーザによっては裏写りの許容限界が異なる場合もある。よって、相対濃度の目標を設定できるようにしても構わない。例えば、ターゲット値を図3のキー入力部301で0.02〜0.15程度の範囲を入力できる構成を追加し、演算時に上記ターゲットになる画像形成条件を表1から算出すればよい。図9のフローチャートでいうと、S807の"相対濃度0.07以下"の数字を任意に変更することで達成可能である。
【0040】
<実施例2(表面の相対濃度を0.6以上と規定)>
実施例2としては、表面の濃度も正確に合わせる工程を追加する。実施例1は裏写りを最重視し、裏写り相対濃度0.07以下になるよう濃度をコントロールしていた。裏写りは低減されるが、表面の濃度が想定以上に落ち、表面の品位低下を起こしている可能性も否定できない。例えば、超薄紙で透過性も高い紙に表1の条件Hで印字したところ、図10のように裏写り相対濃度が0.07を達成する表面の濃度が0.6未満になっている場合もある。Vppと濃度、Vcontと濃度、画像信号と濃度の関係が耐久後や高温多湿への環境変化などに対し初期よりも敏感になる場合があるからである。本実施例2では、上記課題を表面の濃度も最適化することで、表面の画像品質と裏面の画像品質の維持という両者のバランスを考えた裏写り低減CALを実行する。
【0041】
なお、表面濃度の閾値を0.6と設定したのは、線画像の一例であるバーコードの読み取り精度を発明者らが検証した結果からである。図11(a)に示すのは、JAN(Japanese Article Number)コードの一例で、JIS-X-0501として規格化されたものである。バーコードは、太さの異なるバーとスペースの組合せにより構成されるため、バーコードリーダ(ソフトウェアを含む)はバーコードを検出し、2値化を実行する。2値化されたデジタル信号からコード体系を判別し、データを取り出す(デコード処理)。検出ハードとしては、CCD方式、レーザー方式、ペン方式、スキャナ取り込みなどがあるが、CCD方式やレーザー方式は持ち運びに優れ、在庫管理などに多く使用される。ペン方式は安価な点がメリット。ただ、自分で走査しなければならず、慣れが必要でスピードは遅い。スキャナ方式は複数のバーコードを一気に読める点などが利点であるが持ち運べないのが難点である。発明者らは、市販のバーコード認識ソフトと市販の取り込み装置を用いて、ライン濃度とバーコードの読み取り性能を調査した。その結果、ライン濃度が0.6未満になると一部の取り込み装置でエラー頻度が上がった。これは市販のバーコード認識ソフトのアルゴリズムや読み取り装置の出力形式にも依存するが、基本的はコントラスト不足が要因である。
【0042】
図11(b)に、通常バーコード時と濃度が薄いときのバーコードの様子を示した。薄いバーコードの場合はコントラストが低下するため、紙の凹凸や汚れや浮きなどのノイズ成分あるいは本発明の課題である裏写りによって、白い部分が濃い側にシフトするときがある(下矢印)ため、誤検出確率が高くなる。2値化時のアルゴリズムとして、ライン部と下地部とのコントラストを求め、その中間点を閾値として2値化する例が多い。濃度が薄いバーコードは、ぼやけたラインになり易い。2値化時に太さや間隔などの情報を誤検知しやすくなるためである。バーコードは白黒の間隔や太さで情報を保持しているため、ブロードだと正確な間隔や太さに2値化されない場合がある。また、スキャナタイプの読込装置は、アプリケーションと切り分けられている場合が多く、その場合はスキャナの2値化アルゴリズムが支配的である。スキャナの多くはファイル容量が軽いため、2値化後のデータを次のアプリケーションに送っている。その場合、スキャナ部での2値化処理はディザ法を使われる場合が多く、薄いバーコードはハーフトーンがかかり、バーコード検出し難い場合がある。ディザがかかったとしても、表面パッチ濃度が0.6以上であれば、ハーフトーニングを実行したとしても網点と網点のドットは接している場合が多いためバーコード誤認識の問題は大幅に解消される。上記のようなバーコード検出上の課題と、それを軽減するために本実施例2では表面パッチ濃度を0.6以上という条件を設定した。
【0043】
(実施例2の画像形成条件決定処理S8−2) 図12は、実施例2の画像形成条件決定処理(図8(a)のS8)の手順例を示すフローチャートであり、MFP制御部1のCPU51により実行される。実施例1からの変更として、表面の濃度を把握し、表面の濃度と裏面の裏写りのバランスがよい画像形成条件を求めることが特徴である。S801からS807までは実施例1と同じであるため説明を省略する。S821では、MFP制御部1のCPU51は、S807で算出した画像形成条件A〜Hまでの裏写り相対濃度が0.07以下になる条件については"1"をNGである場合には"0"をつけ、リソース管理部に一時保管をしておく。S822では、MFP制御部1のCPU51表面のパッチ濃度を把握するため、ユーザにテストチャートを裏返してスキャナ部にセットしてもらい、読み込みボタンの指示を待つ。S823では、MFP制御部1のCPU51テストチャートの表面を実際に読み込む。かかる読み込みにより薄紙の印刷面の画像記憶濃度である第2の読み取り濃度が得られる。S824では、MFP制御部1のCPU51は、入力画像処理部内の輝度濃度変換部23でリーダの輝度情報から濃度情報に変換される。なお、裏面の輝度濃度変換テーブルは共通のテーブルである。S825-S826,S829-S831は実施例1及び実施例2の裏面検出時のS801-S802,S804-S806と同様であるため説明を省略する。S827は表面のアライメントパッチを検出できなかったときであり、何らかの理由で印字できなかった可能性が高いため、エラー情報を操作部に表示する。なお、裏面測定時にアライメントパッチが検出できなかったときには通常画像形成条件に仮決定しているが、表面に所定濃度(1.45程度)で印字されなかった可能性が高いため、仮決定内容を消去する(S828)。
【0044】
画像形成条件決定部42として動作するMFP制御部1のCPU51は、アライメント調整され、パッチ濃度が平均された表面パッチ演算後、相対濃度が0.6以上になる画像形成濃度の条件を満たす画像形成条件を判別する(S832)。この相対濃度0.6が第2の濃度閾値の一例であり、かかる判別処理が第2の濃度比較に相当する。判別結果は、0.6以上になる場合は"1"、0.6未満であれば"0"をつけ、リソース管理部に一時保管をしておく(S833)。MFP制御部1のCPU51は、リソース管理部9に一時保管されている、裏面濃度検出情報、表面検出状況を確認し、以下に当てはまる条件を検索する(S834)。裏面相対濃度≦0.07 かつ 表面相対濃度≧0.6 の条件検索。上記の範囲内の条件とは、リソース管理部で保存しているデータで、表も裏も"1"である画像形成条件である。S834で該当が無い場合、S837に向かい、裏面相対濃度≦0.07の条件(裏写り)を優先して画像形成条件を決定する。S840は裏面相対濃度≦0.07の条件が存在しない場合の措置で、最も薄い画像形成条件Hに決定する。S839は表面と裏面の一致条件は無いが、裏面相対濃度≦0.07の条件が複数存在する場合で、その場合は最も表面の濃度が濃くなる画像形成条件に決定する。S838は表面と裏面の一致条件は無いが、裏面相対濃度≦0.07の条件が1つ存在する場合で、その場合は該当する画像形成条件に決定する。一方、S836は表面と裏面の条件を満たした画像形成条件が複数あることを意味している。その場合は、最も表面の濃度が濃くなる画像形成条件に決定する。S835は表面と裏面の条件を満たした画像形成条件が1つであり、該当画像形成条件を画像形成条件に決定する。図8(a)に戻って、このようにして表面、裏面の濃度を検出して決定された画像形成条件を、リソース管理部は記憶する(S9)。
【0045】
<実施例2の効果>
このように、実施例2によれば、裏面の裏写り濃度条件と表面の濃度条件とを比較することにより、表面の濃度も加味したバランスのよい裏写り低減CALが実施できた。
【0046】
[実施例3]
実施例1及び2では、ベタ部(100%信号入力部)のパッチ濃度を用いて、画像形成条件を変更していた。本実施例3では、問題になるバーコードを直接判定するモジュールを追加する構成を示す。耐久後、推奨環境から外れた設置環境での使用されているMFPの場合、図13のようにベタ濃度とライン濃度の関係は崩れてくる場合がある。この関係が崩れるということは、ベタ部は合わせ込んだとしてもバーコード認識されるライン濃度が変化してしまう。そのため、ライン濃度が薄すぎる場合は誤検知に、濃すぎる場合は裏写り状態になり、本発明の課題を解決できない。よって、実施例3では図14のようにテストチャートにバーコードを埋め込む構成を取る。実施例3に使用しているバーコードは、実施例2でも使用したJAN(Japanese Article Number)コードを使用している。JANコードは、サイズを倍率で4段階に規定し、0.8/1.0/1.2/2.0の倍率を使用できる。本実施例では標準的な倍率である、1.0倍、数字13桁、バーの幅を0.33mmにあわせた、4912345678904の数字を埋め込んだバーコードで、幅は約37mm、高さは約23mmである。画像の先端から後端にかけては実施形態1や2と同様、画像形成条件や100%信号値を変更している。
【0047】
(実施例3の画像形成条件決定処理S8−3) 実施例3の画像形成条件決定処理の実施例2との相違点を、図15の(a)及び(b)に示す。図15(a)において、図12との変更点は1箇所で、S851がS832とS833の間に追加になっている。S851は、各画像形成条件のバーコードを検出すること、そして判定機能を設けた。その判定結果をリソース管理部に一次保存しておく。よって、S833では、リソース管理部には、各画像形成条件の表面相対濃度が0.6以上かどうか、バーコードが判定できたかどうか、裏面の相対濃度が0.07以下かどうかの3種類が一次保存される。なお、バーコード判定は画像形成条件決定部42として動作するMFP制御部1のCPU51によって判断される。
【0048】
バーコード判定は、濃度換算値同様、入力画像処理部2で輝度濃度変換を実施後、出力画像処理部12として動作するMFP制御部1のCPU51によって、
(1) バーコード領域のトリミング処理をする。すなわち、画像形成条件毎にバーコードが付加されているため、バーコード部分を切り抜く画像処理である。
(2) 2値化の実行をする。すなわち、領域内の最高濃度を100、最小輝度を0としたときの50を閾値として2値化を実行する。
(3) スタートキャラクタ、エンド(ストップ)キャラクタの識別をする。すなわち、図11(a)の左側2本はスタートキャラクタ、右側2本はエンドキャラクタといい、バーコードの範囲を示す。まずはバーコードがどの領域に収まっているのかをこの2つのキャラクタで識別する。
(4) バーとスペースの時間間隔を測定し、バーコードキャラクタを判定する。バーコードはNB:ナローバー(細いバー)、WB:ワイドバー(太いバー)、NS:ナロースペース(細いスペース)、WS:ワイドスペース(太いスペース)というキャラクタからなる。上記4つのどれに当てはまるかバーとスペースの画素間隔を測定し、キャラクタを判定する
(5) チェックキャラクタを判定する。
(5-1) 一番右側から奇数桁の各数字を合計して3倍する:(0+8+6+4+2+9)×3=87。
(5-2) 一番右側から奇数桁の各数字を合計する:(9+7+5+3+1+4)=29。
(5-3) (5-1)の結果と(5-2)の結果とを合計する:(57+29)=116。
(5-4) (5-3)の結果の"1の位"を10から差しひく:(10-6)=4。
よって、今回の図11(a)には"04"のチェックキャラクタが存在することが識別される。
(6) キャラクタとチェックキャラクタをデータキャラクタ数字表を用いて照合する。すなわち、偶数パリティ、奇数パリティとに対応づけされているデータキャラクタを用いて数字に変換する。
(7) 検出したチェックキャラクタと、(5)で識別した数字が一致するかのチェックを実行し、バーコード内容を検出する。
【0049】
<実施例3の効果>
以上のように、実施例3によれば、バーコード品質をもチェックすることでベタライン比が変化したMFPでもバーコード品質と裏写りを低減させる、バランスのよい画像形成システムを提供することができた。
【0050】
[実施例4]
本実施例4では、実施例3のバーコード認識システムを応用し、裏写りバーコード品質をチェックする構成を新たに設けた。画像形成条件決定処理のフローチャートでは、図12のS823の次に、裏面からバーコードを認識する。認識できなければ裏写りはしていないことになり、他のパッチの裏表相対濃度や表面のバーコード条件とを比較して最適条件を選択すればよい。すなわち、ユーザによる画像形成条件の優先順位を変更することも出来る。裏写りバーコードを検出する場合、出力画像処理部12として動作するMFP制御部1のCPU51は画像を鏡像検出処理を実行する。鏡像処理とは、スタートキャラクタが右に、エンドキャラクタが左にあるものとして考え検出処理を実行する。読み方を左からではなく、右からに変えたたけなので、偶数パリティ、奇数パリティ等の関係は変更ない。
【0051】
<実施例4の効果>
以上のように、実施例4によれば、裏写り影響度をバーコードで確認することにより、バーコードに特化した検出ミスを軽減することができる。
【0052】
[実施例5]
実施例5では、実施例3の変形例で説明を行う。本実施例で使用するバーコードつきのテストパターンを図17のように変更する。図17は、JANコードの倍率を変更したものであって、図14に加え、倍率1.2、2.0を追加している。倍率を1.2倍にすると、おおよそ幅は45mm程度、高さは27mm程度に、2.0倍にすると75mm程度の幅、46mm程度の高さになる。一般的にVcontやVppを下げて現像性を落とした場合、細線が出にくくなる。そのため本実施例5ではバーコードサイズを変更したときのバーコード認識変化を確認する。例えば表3のように、1.0倍のバーコードが1.2倍あるいは2.0倍のバーコードに変更する。これによって、裏写りも、バーコード検出も両立できるようになるのであれば、バーコードサイズを変更するようRIP部13、ならびに出力画像処理部12でバーコードサイズを変更するよう指示すればよい。
【0053】
【表3】

【0054】
RIP部13で行う場合、バーコードフォント情報(TrueTypeフォントやOpenTypeなど)を解析してサイズであるポイント数を変更するればよい。一方、ビットマップ情報で来た場合には、RIP部13で判断できないため、レンダリング部31内に新たにバーコード解析部37、バーコード生成部38を設けた。バーコード解析部37は薄紙CAL実行時に検出したバーコード条件を参照し、表3の条件であれば、バーコードサイズを標準サイズから1.2倍のサイズ以下かを画像データを用いて解析する。上記サイズ以下であると判断したバーコード解析部37は、バーコード生成部38で解析したバーコードをサイズを1.2倍に変更したバーコードを新たに生成する。生成されたバーコード情報は、TrueTypeで生成されており、周りの画像情報を適切に配置しなおすため、PDL解析部32にもう一度RIP処理を実行させる。なお、太らせ処理の外に、エッジ強調処理、拡大処理、書体変更処理、バーコード生成条件などのうち少なくとも1つを変更することによっても、バーコードの読み取りを改善することが可能である。
【0055】
<実施例5の効果>
以上説明したように、実施例5によれば、裏写り相対濃度、表面の相対濃度やバーコード条件でバランスがよい条件が無い場合、本実施形態のように出力時にバーコードサイズを変更する。これによって、本発明の課題を解決することができる。なお、本実施例5では、バーコードサイズを変更パラメータとしたが、バーコードの条件として、細(ナロー)、太(ワイド)の比率は通常1:2.5になっている。その比率を1:2〜1:3まで変更することができる。例えば、ラインの幅を白抜き線と黒線とで算出し、バランスが悪いことでバーコード検出が出来ていない場合には、バーコード生成部038に上記比率を変更するよう指示すればよい。また、分解能と呼ばれるナローバー(細いバー)のサイズを太くすることでも同様の効果が得られる。その際もバーコード生成部に指示すればよい。
【0056】
[実施例6]
実施例1乃至5では、相対濃度とバーコード情報を検出して裏写りを防止する画像形成条件を算出した。その他の課題として、文字のかすれやラインのかすれなども問題になる。実施例1乃至5のように、バーコードの代わり、もしくは追加で、文字の品位を測定したり、ラインの品位を測定し、品位の落とさない画像形成条件、品位を維持する為にプリント画像を変更する構成などを追加すればよい。文字の品位評価として代表的なものは、OCR(Optical Character Reader)である。文字の形状を予め登録しておき、スキャナで読み込まれたビットマップ画像と文字の登録情報をマッチングして、差分が少ない文字をアスキーコード等の文字情報に変換するものである。図14や図17のバーコード部分を文字に変換し、その文字を予め記憶しておく。出力されたテストチャートをOCR解析し、予め記憶しておいた文字情報と一致するかを判断すればよい。実施例4のように、裏写り状態の文字をOCRで検出してもよい。文字切抜き後、鏡像反転処理を実行するか、登録されている辞書を予め鏡像にしておけばよい。プリント時の補正は、バーコード同様、文字のフォントを大きくすることで容易に達成できる。
【0057】
また他の方法として、文字やラインの認識向上と裏写り防止策として、画像処理的に文字の縁はベタで残し、文字の中の濃度を落としてスクリーン処理を実行する縁取り処理(特開平11−288261号)などの技術がある。局所的に縁取った部分の濃度は濃いため、裏写りは残ってしまうが、文字の内部を薄くしているため、裏写り量は低減できる。文字の大きさを変更したくない場合には有効である。図17のバーコード条件を横方向に振ったように、文字の縁取り量(画素数)を変更し、OCR認識を実行することにより対応が可能である。
【0058】
[実施例7]
上記実施例で説明した裏写り低減CALは、以下の測定結果に基づき、画像形成条件を変更した。(1) ベタ部のパッチ相対濃度、(2) バーコード認識、(3) 文字認識(OCR)である。しかしながら、実際の画像出力時には、ユーザは操作部もしくはプリンタドライバから、上記3つと"裏写り低減CALを反映しない"のうち選択できる構成を備えることが望ましい。ユーザならびにJOBの内容によっては上記の4つは変更可能であることが望ましいからである。ユーザ選択が煩わしい場合は、自動でPDL内容を判断し、バーコードがある場合にはバーコード重視、文字が多数を占めるアプリケーションやPDL内容であれば、文字重視。どちらも無い場合は、冊子ものである場合にベタ部パッチの相対濃度重視、ぺら物であれば、通常画像形成条件、などに自動で振り分けることもユーザビリティーが向上され、より望ましい形態である。
【0059】
<本実施例の効果>
以上説明してきたように、裏写り量を相対濃度やバーコード、OCR文字認識技術を用いて定量評価し、裏写り量が気にならない薄紙出力物を得ることができた。また、表面の画像特性も同時に把握することにより、裏写り量と表面の品質を維持できるバランスのよい薄紙出力物を得ることができた。さらに、上記表面と裏面の画像品質のバランスが取れないときには、文字のサイズやバーコードサイズ、文字やラインの縁取り画像処理条件を変更することにより、裏写り量と表面の品質を維持できるバランスのよい薄紙出力物を得ることができた。
【0060】
[他の実施例]
尚、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、1つの機器からなる装置に適用してもよい。例えば、スキャナ、プリンタ、PC、複写機、複合機及びファクシミリ装置の如くである。また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷手段により印刷媒体の印刷面にテストパターンを印刷し、読取手段によって前記印刷面の反対の非印刷面から前記印刷されたテストパターンを読み取り、画像形成条件を決定する画像形成装置であって、
前記印刷手段が前記印刷面に複数の画像形成条件それぞれの下で印刷した複数のパターンが配置されたテストパターンを前記読取手段が前記非印刷面から読み取った前記複数のパターンそれぞれの第1の読み取り濃度を、前記非印刷面における裏写り濃度の条件を満たす第1の濃度閾値と比較する第1の濃度比較手段と、
前記比較結果に基づき、前記第1の読み取り濃度が前記第1の濃度閾値を越えない画像形成条件を、当該画像形成装置が印刷媒体へ画像を形成する画像形成条件と決定する決定手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の濃度比較手段は、印刷媒体の下地の濃度をゼロとした場合の相対濃度で表される値を比較し、前記第1の濃度閾値は0.07であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の濃度比較手段は、前記印刷手段が前記印刷面に印刷したアライメント調整用のパッチを前記非印刷面から検出して、前記テストパターンが規定位置になるよう前記印刷媒体と前記読取手段とのアライメント調整を実行する調整手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の濃度比較手段は、前記アライメント調整用のパッチが非印刷面から検出できない場合に、前記第1の読み取り濃度と前記第1の濃度閾値との比較を中止し、前記決定手段は、予め決められた画像形成条件を当該画像形成装置が印刷媒体へ画像を形成する画像形成条件と決定することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の濃度比較手段は、前記アライメント調整用のパッチを非印刷面から検出し、印刷媒体の下地の濃度をゼロとした場合の相対濃度が0.05を越えない場合に、前記アライメント調整用のパッチが非印刷面から検出できないと判断することを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記印刷面に印刷したテストパターンの複数のパターンを前記読取手段が前記印刷面から読みとった前記複数のパターンそれぞれの第2の読み取り濃度を、前記印刷面における画像形成濃度の条件を満たす第2の濃度閾値と比較する第2の濃度比較手段を更に有し、
前記決定手段は、前記第1の読み取り濃度が前記第1の濃度閾値を越えず、且つ、前記第2の読み取り濃度が前記第2の濃度閾値を越える画像形成条件を、当該画像形成装置が印刷媒体へ画像を形成する画像形成条件と決定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2の濃度比較手段は、印刷媒体の下地の濃度をゼロとした場合の相対濃度を比較し、前記第2の濃度閾値は0.6であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記テストパターンは、パッチもしくは線画像を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記線画像は、文字、ライン、バーコードを含むことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記印刷面のパッチならびに線画像による画像形成条件の決定の優先順位を、ユーザからの指示により変更する手段を有することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記線画像が所定の画像形成濃度の条件を満たさない場合に、前記線画像のビットマップ情報を変更する手段を有することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記線画像のビットマップ情報を変更する手段は、濃度が薄くても線画像を認識できるように、エッジ強調処理、太らせ処理、拡大処理、書体変更処理、バーコード生成条件のうち少なくとも1つを変更することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
印刷手段により印刷媒体の印刷面にテストパターンを印刷し、読取手段によって前記印刷面の反対の非印刷面から前記印刷されたテストパターンを読み取り、画像形成条件を決定する画像形成装置の制御方法であって、
第1の濃度比較手段が、前記印刷手段が前記印刷面に複数の画像形成条件それぞれの下で印刷した複数のパターンが配置されたテストパターンを前記読取手段が前記非印刷面から読み取った前記複数のパターンそれぞれの第1の読み取り濃度を、前記非印刷面における裏写り濃度の条件を満たす第1の濃度閾値と比較する第1の濃度比較工程と、
決定手段が、前記比較結果に基づき、前記第1の読み取り濃度が前記第1の濃度閾値を越えない画像形成条件を、当該画像形成装置が印刷媒体へ画像を形成する画像形成条件と決定する決定工程とを有することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項14】
第2の濃度比較手段が、前記印刷面に印刷したテストパターンの複数のパターンを前記読取手段が前記印刷面から読みとった前記複数のパターンそれぞれの第2の読み取り濃度を、前記印刷面における画像形成濃度の条件を満たす第2の濃度閾値と比較する第2の濃度比較工程を更に有し、
前記決定工程では、前記第1の読み取り濃度が前記第1の濃度閾値を越えず、且つ、前記第2の読み取り濃度が前記第2の濃度閾値を越える画像形成条件を、当該画像形成装置が印刷媒体へ画像を形成する画像形成条件と決定することを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項15】
変更手段が、前記テストパターンに含まれる線画像が所定の画像形成濃度の条件を満たさない場合に、前記線画像のビットマップ情報を変更する変更工程を有することを特徴とする請求項13または14に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項16】
請求項13乃至15のいずれか1項に記載の画像形成装置の制御方法の工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【請求項18】
画像形成装置における画像形成条件の決定方法であって、
印刷手段が印刷媒体の印刷面に複数の画像形成条件それぞれの下で印刷される複数のパターンを配置してテストパターンを印刷する工程と、
読取手段が前記印刷面の反対の非印刷面から前記印刷されたテストパターンの複数のパターンを読み取って、前記複数の画像形成条件に対応して前記複数のパターンそれぞれの読み取り濃度を記憶する工程と、
比較手段が、前記複数のパターンの読み取り濃度を、前記非印刷面における裏写り濃度の条件を満たす濃度閾値と比較する工程と、
決定手段が、前記比較結果に基づき、前記複数の画像形成条件のうち前記読み取り濃度が前記濃度閾値を越えない画像形成条件を、当該画像形成装置が印刷媒体へ画像を形成する画像形成条件と決定する工程とを有することを特徴とする画像形成条件の決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図6】
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【図14】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−48193(P2011−48193A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197234(P2009−197234)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】