説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】感光ドラムに形成されたトナー画像をガラス基板上に高い精度にて転写する。
【解決手段】画像形成装置1は、基材上に導電層91が形成されたガラス基板9を吸着保持するステージ21、および、転写前のトナー画像が形成される感光ドラム31を備える。電位付与部4により導電層91には所定の電位が付与され、補助帯電器35により転写位置直前にて感光体312が均一に帯電し、転写位置においてガラス基板9と感光ドラム31との間に転写電圧が作用する。このとき、設計上、ガラス基板9と感光ドラム31との間に隙間を設けておき、転写位置の近傍におけるガラス基板9の吸着保持が解除されて電気的吸引力によりガラス基板9を感光ドラム31側へと撓ませることにより、メカニカルな圧力を掛けることなくトナー画像とガラス基板9とを接触させることができ、トナー画像をガラス基板9上に高い精度にて転写することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式にによりトナーを印刷媒体に転写する方法として、静的な帯電を利用してトナーを直接印刷媒体に転写する、コロナ転写やローラ転写等と呼ばれる方法が知られている。また、像担持体からトナーを中間転写体に転写した後に印刷媒体に転写する中間転写方式も実用化されている。中間転写方式は、ブラケットロールからインキを印刷媒体に印刷する印刷装置と同様に、様々な種類の被転写材にトナーを転写できる特徴を有し、一次転写および二次転写に静電界を利用する方法や、一次転写は静電界を利用し、二次転写は粘着や圧力と熱とを利用して転写を行う方法がある。
【0003】
一方、プリント基板や液晶表示装置に用いられるカラーフィルタのガラス基板等は、ある程度剛性を有する板状の絶縁物であるため、直接転写を行うことは困難である。中間転写方式で圧力を利用してトナーを基板に密着させて転写を行う方法を用いても、転写が2回行われることや装置の機械的精度により、高精細なプリント基板やカラーフィルタに要求される精度および解像度を満足することが困難となる。
【0004】
特許文献1では、感光ドラム上に形成された液体トナーの画像をガラス基板に直接転写する際に、ドラムとガラス基板との間に間隙を設け、この間隙を液体トナーのキャリア液で満たす印刷装置が開示されている。
【特許文献1】特表2002−527783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カラーフィルタ用のガラス基板は平面の精度が高いとはいえ、僅かに厚さのばらつきがあり、基板全体においてもうねりを有している。特許文献1の装置では、実際には間隙に高い寸法精度が必要となることが確認されており、ドラムとガラス基板との間の間隙が小さいところで忠実な転写が行われるが、ガラス基板の厚さのばらつきやうねりにより少しでも間隙が大きくなるとトナーの転写精度が低下してしまう。また、ガラス基板の厚さのばらつきやドラムの軸の振れは、高精度な平面を有する剛性の高い吸着板にてガラス基板を保持しても防止することはできず、間隙には数十マイクロメートルのばらつきが必ず生じてしまう。
【0006】
特許文献1の装置においてドラムとガラス基板との密着性を良くするために弾性体を用いてガラス基板をドラムに向けて付勢することが考えられるが、この場合、トナー画像のうち密着しすぎた部分のみが押しつぶされ、部分的に解像度が低下してしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、外周面上に転写前のトナー画像が形成される環状部材から対象物上にトナー画像を高い精度にて転写することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成装置であって、外周面上に転写前のトナー画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を前記外周面に沿って循環移動するトナー画像保持部と、導電性もしくは半導電性の対象物または基材の一の主面上に導電性もしくは半導電性の導電層を有する対象物を、前記環状部材に対向する搬送経路に沿って搬送し、前記外周面と前記対象物とが最も接近する転写位置における前記対象物の部位を、前記外周面に向かって撓むことが可能な状態で、前記外周面の前記転写位置の部位と同じ速度にて同じ進行方向に移動する搬送機構と、所定の電位を前記導電性もしくは半導電性の対象物または前記導電層に付与することにより、前記対象物の前記転写位置の前記部位と前記外周面の前記部位との間に所定の転写電圧を作用させ、かつ、前記転写電圧に起因する電気的吸引力により前記対象物の前記部位を前記環状部材に向かって撓ませつつ前記トナー画像を前記対象物に転写する電位付与部とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置であって、前記対象物が、板状またはフィルム状の絶縁性基材の一の主面に導電性または半導電性の導電層が貼り付けられたものであり、トナー画像の転写時に、前記絶縁性基材の前記環状部材とは反対側に前記導電層が位置する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成装置であって、前記電位付与部が、前記トナー画像保持部の帯電極性と反対の極性を有する電位を前記導電層に付与する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記環状部材の前記外周面に静電潜像を形成する潜像形成部と、トナーにより前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像部と、前記転写位置と前記現像部との間に配置され、前記トナー画像の上から前記環状部材を所定の電位まで帯電させる補助帯電器とをさらに備える。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記対象物の前記転写位置の前記部位の撓み量が、30μmないし100μmに設定される。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記搬送機構が、前記対象物が載置される保持面において前記対象物の搬送方向に配列された複数の吸着要素により、前記対象物を前記環状部材とは反対側から吸着保持する保持部と、前記保持部を前記搬送経路に沿って移動する移動機構と、前記複数の吸着要素のうち前記転写位置に位置するものによる吸着を解除する吸着制御部とを備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成方法であって、a)外周面に沿って循環移動する円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材の前記外周面上に転写前のトナー画像を形成する工程と、b)導電性もしくは半導電性の対象物または基材の一の主面上に導電性もしくは半導電性の導電層を有する対象物を、前記環状部材に対向する搬送経路に沿って搬送し、前記外周面と前記対象物とが最も接近する転写位置における前記対象物の部位を、前記外周面に向かって撓むことが可能な状態で、前記外周面の前記転写位置の部位と同じ速度にて同じ進行方向に移動する工程と、c)前記b)工程と並行して、所定の電位を前記導電性もしくは半導電性の対象物または前記導電層に付与することにより、前記対象物の前記転写位置の前記部位と前記外周面の前記部位との間に所定の転写電圧を作用させ、かつ、前記転写電圧に起因する電気的吸引力により前記対象物の前記部位を前記環状部材に向かって撓ませつつ前記トナー画像を前記対象物に転写する工程とを備える。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の画像形成方法であって、前記a)工程の前に、板状またはフィルム状の絶縁性基材の一の主面に前記導電層を貼り付けて前記対象物を準備する工程と、前記c)工程の後に、前記対象物から前記導電層を剥離する工程とをさらに備え、前記c)工程において、前記絶縁性基材の前記環状部材とは反対側に前記導電層が位置する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の画像形成方法であって、前記a)工程と前記c)工程との間に、前記トナー画像の上から前記環状部材を所定の電位まで帯電させる工程をさらに備える。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項7ないし9のいずれかに記載の画像形成方法であって、前記b)工程において、前記対象物が載置される保持面上において前記対象物の搬送方向に配列された複数の吸着要素により、前記対象物が前記環状部材とは反対側から吸着保持されつつ搬送され、前記c)工程において、前記複数の吸着要素のうち前記転写位置に位置するものによる吸着が解除される。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、電気的吸引力でトナー画像と対象物とを(実質的に)接触させることにより、トナー画像に不必要に強い力が作用してしまうことを防止することができ、高い精度にてトナー画像を転写することができる。
【0019】
請求項2、3および8の発明では、主面上に導電層を形成することができない絶縁物に対しても、電気的吸引力を利用した精度の高い転写を行うことができ、請求項4および9の発明では、転写前に環状部材が均一に帯電するため、転写位置で環状部材が対象物を吸引する力が均一となり、より精度よくトナー画像を転写することができる。
【0020】
また、請求項5の発明では、対象物の位置ずれを防止するとともに、対象物が環状部材上のトナー画像に接する際の衝撃を緩和することができ、請求項6および10の発明では、対象物の保持面上における位置精度を保ちつつ対象物の転写位置の部位のみを撓ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置1の構成を示す図である。画像形成装置1は電子写真法を用いて板状のガラス基板9上にトナーの画像を形成する印刷装置であり、印刷後のトナー画像は後述する加熱器27によりガラス基板9上に定着されることにより液晶表示装置等の平面表示装置用のカラーフィルタが製造される。なお、実際には、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のトナーにそれぞれ対応する3つの画像形成装置1が一列に配列され、最後の画像形成装置1に定着器であるブロア26および加熱器27が設けられる。
【0022】
画像形成装置1は、ガラス基板9を所定の搬送経路に沿って図1中の(+Y)方向に搬送する搬送機構2、電子写真法にて感光ドラム上にR、GまたはBの色のカラーのトナー画像を形成するプロセスユニット3、および、ガラス基板9に接触する電位付与部4を備える。ガラス基板9は、絶縁性の基材(ガラス)の図1中の(+Z)側の主面(上面)上に透明かつ導電性または半導電性の導電層91が一様に形成されたものであり、本実施の形態では導電層91としてITO(Indium Tin Oxide)膜が利用される。電位付与部4は導電層91に所定の電位を付与し、プロセスユニット3はガラス基板9の導電層91側に配置される。
【0023】
ガラス基板9の厚さは、典型的には、0.3〜0.7ミリメートル(mm)であり、導電層91の厚さは0.5〜1マイクロメートル(μm)であり、実際には、導電層91上には格子状のブラックマトリクスがさらに形成されている。図1では基材上の導電層91およびブラックマトリクスを1本の太線にて表している。
【0024】
搬送機構2は、図1に示すように、ガラス基板9を吸着保持する保持部であるステージ21、定盤11上に設けられるとともにステージ21を搬送経路に沿って移動する移動機構22、および、ステージ21によるガラス基板9の吸着保持を制御する吸着制御部23(後述の図2参照)を備える。
【0025】
図2は、ステージ21および吸着制御部23を示す平面図である。図2ではガラス基板9を二点鎖線にて示している。図1および図2に示すように、ステージ21のガラス基板9が載置される保持面210は、精度の高い平面となっており、保持面210にはそれぞれがガラス基板9の搬送方向に垂直なX方向に伸びるとともに搬送方向に配列された複数の吸着要素である溝211が形成されている。ステージ21の(+X)側および(−X)側には、複数のチューブ212が取り付けられ、各溝211は対応する2つのチューブ212を介して吸着制御部23に接続され、吸着制御部23は図示省略の減圧ポンプに接続される。ステージ21では、減圧ポンプにより複数の溝211から空気が吸引されてガラス基板9が保持面210上に吸着保持され、吸着制御部23により、各溝211による吸着が個別にON/OFF可能とされる。なお、実際には、チューブ212はステージ21の移動の妨げにならないように十分に長く、束ねられて曲げられている。
【0026】
図3は移動機構22の構成を示す側面図であり、図1中の(−Y)側から(+Y)方向を向いて見た様子を示している。移動機構22は、定盤11上において、それぞれがY方向に伸びる1対のガイドレール231を有し、ステージ21には各ガイドレール231に対向する位置にスライダ232が設けられる。各スライダ232にはエア供給部233から高圧のエアが供給されてスライダ232がガイドレール231に非接触にて係合し、ステージ21がY方向に移動可能に支持される。また、移動機構22はリニアモータ24をさらに有し、リニアモータ24の固定体241は定盤11上に固定され、移動体242はステージ21に取り付けられる。そして、リニアモータ24を駆動することにより、ステージ21がY方向に滑らかに移動する。
【0027】
プロセスユニット3は、図1に示すように、減速機を介してモータ(図示省略)に接続される直径250mmの感光ドラム31を備え、感光ドラム31は図1中のX方向に平行な回転軸J1を中心に回転可能に支持される。感光ドラム31は、アルミニウム等の金属により形成されるとともに回転軸J1を中心とするドラム本体311を有し、ドラム本体311は電気的に接地される。ドラム本体311の外周面には、例えば、フタロシアニン顔料を有する単層型有機感光体(以下、単に「感光体312」という。)が一様に塗布される(または、蒸着される)。なお、感光ドラム31の直径は250mmには限定されないが、好ましくは200mm以上400mm以下とされる。また、感光体312はフタロシアニン顔料を有する単層型有機感光体以外に、例えば、アモルファスシリコン等の無機感光体により形成されてもよい。
【0028】
プロセスユニット3は、感光ドラム31に対向して設けられる主帯電器32をさらに有し、主帯電器32はイオンを発生して感光体312を帯電させる。感光ドラム31の周囲には主帯電器32から感光ドラム31の回転方向71に沿って、画像形成用の光を出射して感光体312の外周面に静電潜像を形成する潜像形成部33、液体トナー(例えば、イソパラフィン系の絶縁性の溶媒(キャリア液)に分散している湿式トナー)により感光体312上の静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像部34、トナー画像の上から感光体312を所定の電位まで帯電させる補助帯電器35、感光体312の表面をクリーニングするクリーナ36、並びに、光を出射して感光体312を除電する除電器37が配置される。なお、現像部34は現像液である液体トナーを供給するトナー供給部(図示省略)に接続される。
【0029】
また、感光ドラム31に対向する搬送経路に沿って移動するガラス基板9の上面は、補助帯電器35とクリーナ36との間にて感光ドラム31の外周面に最も接近する。後述するように、感光ドラム31の外周面上のトナーは、感光ドラム31とガラス基板9とが最も接近する位置にてガラス基板9上に転写されるため、以下の説明において、感光ドラム31の外周面とガラス基板9(または、導電層91)とが最も接近する位置を転写位置と呼ぶ。転写位置はプロセスユニット3に対して相対的に固定された位置となる。
【0030】
電位付与部4は、転写位置の(+Y)側および(−Y)側にそれぞれ配置される2つの接触子41を有し、接触子41は導電性材料にて形成されるブラシ(カーボンブラシや導電性毛ブラシ等)を有する。図2に示すように、(+Y)側および(−Y)側の接触子41はステージ21の(−X)側に配置されており、各接触子41は図示省略の支持部材により支持される。接触子41はガラス基板9の上面の全体に形成されている導電層91に直接当接する。実際には、ガラス基板9は図2中の(−Y)側から(+Y)方向に向かって移動するため、ガラス基板9の(+Y)側の端部が転写位置に位置する間は(−Y)側の接触子41がガラス基板9の導電層91に当接し、ガラス基板9の(−Y)側の端部が転写位置に位置する間は(+Y)側の接触子41がガラス基板9の導電層91に当接し、トナーの転写時において(+Y)側および(−Y)側の接触子41の少なくとも一方が導電層91に常時当接する。図1に示すように、各接触子41の電極には転写電圧供給源42が接続され、所定の電位が接触子41を介してガラス基板9の導電層91に付与される。
【0031】
なお、画像形成装置1では、ガラス基板9の全体がステージ21に吸着された場合に、転写位置における感光体312の外周面とガラス基板9の導電層91との間に30μmないし100μm(好ましくは、40μm〜80μm)の設計上の間隙が生じるように感光ドラム31とステージ21とが位置決めされている。そして、後述するように、トナー画像の転写時にステージ21による吸着が部分的に解除されてガラス基板9が図1に示すように感光ドラム31に電気的に引き寄せられ、ガラス基板9の転写位置の部位が30μmないし100μm(好ましくは、40μm〜80μm)だけ撓む。なお、本実施の形態ではガラス基板9の撓み量は50μmに設定されており、図1では、ガラス基板9の撓み量を大きく図示している(後述する図6および図9において同様)。
【0032】
図4は、画像形成装置1がガラス基板9上にトナー画像を形成する処理の流れを示す図である。なお、図4中のステップS14〜S18は感光体312の一部に注目した処理の流れを示しており、感光体312全体に対しては実際にはこれらのステップは時間的にほぼ並行して行われる。
【0033】
図1の画像形成装置1では、まず、外部の装置にて基材上に導電層91およびブラックマトリクスが予め形成されたガラス基板9がステージ21に載置されて下面が吸着される(ステップS11)。これにより、ガラス基板9が感光ドラム31とは反対側から保持される。続いて、感光ドラム31が回転軸J1を中心に所定の回転方向71に一定の回転速度にて回転を開始するとともにガラス基板9もステージ21と共に(+Y)方向へと一定の速度にて移動を開始する(ステップS12,S13)。プロセスユニット3では感光ドラム31の回転により、回転軸J1を中心とする円筒ドラム状の環状部材である感光ドラム31が、外周面に沿って、周囲に配置された各周辺構成(すなわち、主帯電器32、潜像形成部33、現像部34、補助帯電器35、クリーナ36および除電器37)に対して連続的に循環移動し、これらの周辺構成による感光体312に対する処理が開始される。
【0034】
主帯電器32では、対向する位置へと到達する感光体312の一部(以下、「対象部位」と呼ぶ。)に電荷が順次付与され、対象部位の表面を、例えば(+700)ボルト(V)にて一様に帯電させる(ステップS14)。帯電後の対象部位は潜像形成部33の光の照射位置へと連続的に移動する。潜像形成部33は、所定の波長の光を出射する複数の発光ダイオード(LED)が配列されたもの(LEDアレイ)を光源として有する。潜像形成部33には、カラーフィルタのパターンを示す画像から生成された各色成分の画像データのうち、このプロセスユニット3のトナーの色に対応する画像データが入力され、画像データに応じて画像形成用の光が感光体312に向けて出射される。感光体312の対象部位において光が照射された部位は、表面の電荷が感光体312内に移動して除去される。また、光が照射されない部位は帯電状態がそのまま維持されるため、感光体312の表面には電荷の分布による画像(すなわち、静電潜像)が形成される(ステップS15)。潜像形成部33の光源は、必ずしもLEDである必要はなく、例えば、半導体レーザや、ランプと液晶シャッタとを組み合わせたもの等であってもよい。
【0035】
感光ドラム31において静電潜像が形成された部分(対象部位)は現像部34に対向する位置へと移動し、現像部34の現像ローラ341により液体トナー(溶媒中に分散されるとともに帯電しているトナー)が静電潜像に付与される(ステップS16)。このとき、感光体312の表面と同じ極性である正に帯電したトナーは感光体312上の対象部位において電荷が除去された部位にのみ付着して静電潜像が現像される。すなわち、感光体312の外周面上の対象部位に転写前のトナー画像が形成され、感光ドラム31やドラム回転用のモータを含むプロセスユニット3は、トナー画像を保持するトナー画像保持部となっている。また、対象部位上の不要な液体トナーは現像部34の下流側のスキージローラ342により掻き取られて現像部34へと戻される。ここで、現像ローラ341およびスキージローラ342には、トナーを帯電させるために現像バイアス電源343によって、例えば、(+500)ボルト(V)の電位が付与されている。なお、感光体312上の帯電した部位に帯電したトナーが付着するように現像部34や感光ドラム31の電位が調整されてもよい。
【0036】
次に、現像されたトナー画像の上から補助帯電器35によって液体トナーの帯電極性と同極性の所定の電位、例えば、(+700)ボルト(V)まで感光体312が帯電する(ステップS17)。補助帯電器35は主体電器32と同様の構造となっている。その後、対象部位は、感光ドラム31の回転に同期して移動するガラス基板9の上面に最も接近する転写位置へと到達し、転写位置では対象部位は感光ドラム31の回転速度に応じた速度(すなわち、感光ドラム31の外周面の回転軸J1に垂直な断面における接線方向の速度)にて正確に(+Y)方向へと移動する。
【0037】
図5.Aおよび図5.Bは画像形成装置1におけるトナーの転写の様子を説明するための図である。なお、図5.Aおよび図5.Bでは、内部に「+」を付す丸にてトナーの粒子を示しており、ブラックマトリクスの存在を無視している。さらに、図1と同様、転写時のガラス基板9の撓みを大きく図示しており、感光ドラム31とガラス基板9との間には実際にはキャリア液が充填されている(後述する図8.Aおよび図8.Bにおいて同様)。
【0038】
ガラス基板9は、ステージ21に吸着保持された状態で、搬送機構2により転写位置における感光体312の対象部位と同じ速度にて、対象部位の進む方向と同じ(+Y)方向を進行方向として搬送される。これにより、転写位置の極近傍においてガラス基板9(の対象部位に対向する部位)の位置が対象部位に対して相対的に固定される。
【0039】
このとき、ガラス基板9の移動と並行して、ガラス基板9の導電層91には転写電圧供給源42により所定の電位、例えば(−100)ボルト(V)の電位が付与されており、転写位置におけるガラス基板9の導電層91と感光体312の対象部位との間に転写電圧が作用する。すなわち、対象部位から導電層91へと向かう電界が発生し、トナーに導電層91へと向かう力が作用する。
【0040】
画像形成装置1ではさらに、矢印71にて示す感光体312の移動および矢印72にて示すガラス基板9の移動に伴って吸着制御部23(図2参照)が制御されることにより、ステージ21の複数の溝211のうち転写位置に位置する溝211(正確には、転写位置から(±Y)方向に一定の距離の範囲内に位置する複数の溝211)による吸着が順次解除され、ガラス基板9の転写位置の部位が、感光ドラム31の外周面に向かって撓むことが可能な状態とされる。その結果、図5.Aに示すように転写電圧に起因する電気的吸引力によりガラス基板9の転写位置の部位が感光ドラム31に向かって撓み、ガラス基板9の導電層91と感光体312とがトナーを挟んで密着する。吸着制御部23では、吸着の部分的な解除を高速に行うために、吸着を解除する溝112に瞬間的にブローが行われてもよい。
【0041】
そして、ガラス基板9の転写位置の部位が感光ドラム31の外周面の転写位置の部位と同じ速度にて同じ進行方向に移動することにより、図5.Bに示すように、感光体312の対象部位上の正に帯電したトナー画像がガラス基板9の導電層91に順次転写される(ステップS18)。なお、ガラス基板9の転写位置を通り過ぎた部位は、ステージ21の溝211により再び吸着保持される。これにより、ガラス基板9の保持面210上における位置精度を保ちつつガラス基板9の転写位置の部位のみを撓ませることができる。
【0042】
トナーの転写後の感光体312の対象部位は、図1に示すクリーナ36の位置へと続けて移動し、クリーナ36により対象部位に残留したトナー(すなわち、ガラス基板9に転写されなかったトナー)等の不要物が除去されて感光体312の表面がクリーニングされ、感光体312が機械的に初期状態に戻される。そして、ランプとフィルタとの組合せ、あるいは、LED等を有する除電器37により光が照射されて感光体312が除電され、電気的に初期状態に戻される。
【0043】
ステップS14〜S18の処理は感光体312上の各部位に対してほぼ並行して行われ、転写位置へと順次到達する感光体312の各部位に対して連続的に処理が行われるため、最終的には感光体312の外周面上のトナー画像全体が転写位置においてガラス基板9上に転写されることとなる。そして、ガラス基板9の全体への転写が終了すると、ガラス基板9上の余分なキャリア液がブロア26にて空気乾燥され(ステップS19)、加熱器27にて加熱溶融されてガラス基板9にトナーが定着する(ステップS20)。最後に、感光ドラム31の回転が停止するとともに、搬送機構2が停止し、画像形成装置1による印刷処理が終了する(ステップS21,S22)。これにより、ガラス基板9の全体に一の色のトナー画像が形成される。
【0044】
実際には、感光ドラム31が複数回回転して複数のガラス基板9に連続してトナー画像の転写が行われる。また、既述のように、R、G、Bの色にそれぞれ対応する3台の画像形成装置1が準備され、一の色のトナー画像がガラス基板9上に形成されると、定着が行われることなくガラス基板9が次の画像形成装置1へと搬送されて次の色のトナー画像が形成される。これにより、3台の画像形成装置1によりR、G、Bの色のトナー画像がガラス基板9上に形成され、最後の画像形成装置1において定着が行われてカラーフィルタが完成する。なお、定着処理は個々の画像形成装置1において個別に行われてもよい。
【0045】
以上に説明したように、画像形成装置1では、ガラス基板9の搬送工程と並行して、ガラス基板9の転写位置の部位と感光体312の対象部位との間に所定の転写電圧を作用させ、かつ、転写電圧に起因する電気的吸引力によりガラス基板9を感光体312側へと撓ませつつトナー画像が転写される。これにより、メカニカルな圧力を与えることなく電気的吸引力でトナー画像とガラス基板9とを接触させる(または、ほぼ接触しているとみなすことができる程度に実質的に接触させる)ことにより、トナー画像に不必要に強い力が作用してしまうことを防止しつつ、ガラス基板9のうねりの影響を防止することができる力の大きさでトナー画像とガラス基板9とを接触させることができ、高い精度にてトナー画像を転写することができる。
【0046】
画像形成装置1では、ガラス基板9に撓みが生じないと仮定した場合に転写位置における感光体312の外周面とガラス基板9の導電層91との間に30μmないし100μmの間隙が生じるように設計が行われる。これにより、ガラス基板9の転写位置の部位の撓み量が30μmないし100μmに設定されることとなり、ガラス基板9の過剰な撓みを抑えてガラス基板9の位置ずれを防止するとともに、ガラス基板9が感光体312上のトナー画像に接する際の衝撃を緩和することができる。さらに、転写位置と現像部34との間に補助帯電器35が配置されることにより、転写前に補助帯電器35によりトナーの付着の有無に関わらず感光体312が均一に帯電するため、転写位置で感光体312とガラス基板9とが引き合う力がガラス基板9の幅方向(X方向)に関して均一となり、より精度よくトナー画像を転写することができる。画像形成装置1の場合、感光体312がガラス基板9を引き寄せる力の大きさは、ガラス基板9の重量を除いて、X方向の1cmの幅に対して数十g重となっている。
【0047】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置1aを示す図である。画像形成装置1aは、図1に示す画像形成装置1のステージ21および電位付与部4とは構造が異なるステージ21aおよび電位付与部4aを備え、他の構成要素は図1の画像形成装置1と同様であり、同符号を付している。画像形成装置1aでは、図6中の(−Z)側の主面(下面)上に導電ポリイミドシート(以下、「導電層」という。)91aが絶縁性基材であるガラス基板9(第1の実施の形態のガラス基板とは異なり、ITO膜は形成されていない。)に貼り付けられた基板(以下、「対象基板」という。)9a上にトナー画像が形成される。すなわち、第1の実施の形態では導電層91を有するガラス基板9がトナーの転写の対象物とされるが、第2の実施の形態では基材であるガラス基板9に導電層91aが貼り合わされたものが対象物とされ、導電層91aはガラス基板9の感光ドラム31とは反対側に位置する。また、導電層91aとしては、具体的には、体積抵抗値が100Ω・cmであり、厚さが0.1mmである導電ポリイミドシートが用いられるが、導電性または半導電性の導電層91aであれば、他の導電シートが用いられてもよい。
【0048】
ステージ21aは保持面210上に対象基板9aの搬送方向(Y方向)に長い上側電極213を有し、下面にも搬送方向に長い下側電極214を有する。上側電極213と下側電極214とは電気的に接続されており、トナー画像の転写時に電位付与部4aの接触子41が下側電極214に接触して転写電圧供給源42が下側電極214に所定の電位を付与すると、上側電極213を介して導電層91aに電位が付与され、感光ドラム31と導電層91aとの間に転写電圧が与えられる。ステージ21aの他の構造は図2と同様であり、保持面210には対象基板9aの搬送方向に沿って複数の溝211が配列して形成されている。
【0049】
図7は、画像形成装置1aが対象基板9a上にトナー画像を形成する処理の流れを示す図である。画像形成装置1aが対象基板9a上にトナー画像を形成する際には、まず、ガラス基板9の下面に導電層91aが貼り付けられて対象基板9aが準備される(ステップS31)。導電層91aの貼り付けは粘着剤を用いて行われてもよく、水、アルコール、液体トナーのキャリア液等の液体を用いて、いわゆる水貼りされてもよい。なお、対象基板9a上に残存してもよい液体を用いることにより、後工程にて導電層91aを容易に剥がすことができる。
【0050】
導電層91aがガラス基板9に貼り付けられると、図1の画像形成装置1と同様に、対象基板9aがステージ21aに載置されて吸着保持される(図4:ステップS11)。続いて、感光ドラム31の回転および移動機構22による対象基板9aの移動を開始した後(ステップS12,S13)、主帯電器32による感光体312の帯電(ステップS14)、静電潜像の形成(ステップS15)、静電潜像の現像(ステップS16)が感光体312の対象部位に順次行われ、形成されたトナー画像の上から補助帯電器35により対象部位が所定の電位まで一様に帯電される(ステップS17)。その後、対象部位は転写位置へと移動する。
【0051】
図8.Aおよび図8.Bは画像形成装置1aにおけるトナーの転写時の様子を示す図である。既述のように、対象基板9aの導電層91aには転写電圧供給源42により感光体312の帯電極性と反対の極性を有する所定の電位、例えば(−2000)ボルト(V)の電位が付与されており、これにより、転写位置における対象基板9aの導電層91aと感光体312の対象部位との間に転写電圧が作用する。すなわち、対象部位からガラス基板9へと向かう電界が発生し、トナーにガラス基板9へと向かう力が作用する。
【0052】
画像形成装置1aではさらに、図1の画像形成装置1と同様に、矢印71にて示す感光ドラム31の移動および矢印72にて示す対象基板9aの移動に伴って吸着制御部23(図2参照)が制御されることにより、ステージ21aの複数の溝211のうち転写位置に位置する溝211による吸着が順次解除され、対象基板9aの転写位置の部位が、感光ドラム31の外周面に向かって撓むことが可能な状態とされる。その結果、図8.Aに示すように転写電圧に起因する電気的吸引力により対象基板9aの転写位置の部位が感光ドラム31の外周面に向かって30μmないし100μm(好ましくは、40μm〜80μm)だけ撓み、対象基板9a(ガラス基板9)と感光ドラム31の外周面とがトナーを挟んで密着する。
【0053】
そして、対象基板9aの転写位置の部位が感光ドラム31の外周面の転写位置の部位と同じ速度にて同じ進行方向に移動することにより、図8.Bに示すように、トナー画像が対象基板9a上に順次転写される(ステップS18)。なお、転写位置以外では対象基板9aはステージ21に吸着保持されるため、対象基板9aの保持面210上における位置精度を保ちつつ対象基板9aの転写位置の部位のみを撓ませることができる。
【0054】
その後、感光体312の対象部位は、クリーナ36および除電器37により機械的および電気的に初期状態に戻される。
【0055】
感光体312上のトナー画像の全体が対象基板9a上に転写されると、ブロア26によりトナーが空気乾燥され(ステップS19)、加熱器27によりトナーがガラス基板9に定着する(ステップS20)。感光ドラム31の回転および対象基板9aの移動が停止すると(ステップS21,S22)、対象基板9aが画像形成装置1aから取り出されて対象基板9aから導電層91aが剥離され(図7:ステップS32)、トナーが定着した平面表示装置用のガラス基板9が取得される。導電層91aのガラス基板9への貼り合わせに粘着剤が用いられる場合は、粘着剤と共に導電層91aが剥離される。
【0056】
画像形成装置1aでは、ガラス基板9の下面に導電層91aが貼り付けられることにより、上面に導電層を形成することができないガラス基板等の絶縁物に対しても、画像形成装置1と同様に、電気的吸引力を利用して感光ドラム31と対象基板9aとを適切な力で当接させることにより、精度の高い転写を行うことができる。
【0057】
図9は、第3の実施の形態に係る画像形成装置1bの構成を示す図である。画像形成装置1bでは、中間転写体251を有する中間転写部25が設けられ、感光ドラム31上のトナー画像は中間転写体251を介して間接的にガラス基板9上に転写される。中間転写体251は誘電材料にて形成される平ベルト状の環状部材とされ、2つのローラ252a,252bに外接して設けられる。一方のローラ252aにはモータが接続され、モータが駆動されることにより、感光ドラム31上のトナー画像に当接しつつ中間転写体251が外周面に沿って循環移動する。また、他方のローラ252bには直流電源253が接続される。ガラス基板9は図1の場合と同様に上面に導電層91が形成されている。また、図1の画像形成装置1と比べて、補助帯電器35が中間転写体の251の転写位置の直前に設けられ、中間転写体251に対向する搬送経路に沿うガラス基板9の移動方向が反対向き((−Y)方向)になるという点でさらに相違している。他の構成要素は図1と同様であり、同様の構成要素には同符号を付している。
【0058】
画像形成装置1bでは、主帯電器32、潜像形成部33、現像部34等により感光体312上に形成されたトナー画像が、ローラ252bを介して中間転写体251に付与される電位により、中間転写体251上に転写される。すなわち、中間転写体251や中間転写体251を循環移動する機構を含む中間転写部25は、中間転写体251の外周面上に転写前のトナー画像を間接的に形成して保持するトナー画像保持部となっている。中間転写体251の外周面とガラス基板9とが最も近接する転写位置の直前において、中間転写体251には補助帯電器35により所定の電位が均一に付与され、電位が付与された部位は導電層91が形成されたガラス基板9に向かって送られる。
【0059】
また、図1の画像形成装置1と同様に、ステージ21による吸着を部分的に解除することにより、ガラス基板9の転写位置の部位が感光ドラム31の外周面に向かって撓むことが可能な状態とされ、さらに、ガラス基板9の転写位置の部位が中間転写体251の転写位置の部位と同じ速度で同じ進行方向に移動する。このとき、電位付与部4によりガラス基板9の導電層91には所定の電位が付与されることから、転写位置では、トナーにガラス基板9に向かう電気的力が作用するとともに、電気的吸引力によりガラス基板9が中間転写体251に向かって撓み、第1の実施の形態と同様に、中間転写体251とガラス基板9とを密着させつつ中間転写体251上のトナー画像がガラス基板9上に高い精度にて転写される。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0061】
例えば、第1および第2の実施の形態において感光ドラム31に代えて平ベルト状の感光ベルトが利用されてもよく、第3の実施の形態において中間転写体251がドラム状とされてもよい。
【0062】
上記実施の形態では、感光ドラム31や中間転写体251に与えられる電位の極性と導電層に与えられる極性とが異極性とされるが、十分な電位差が生じるのであれば同極性であってもよい。ただし、第2の実施の形態では導電層91aと感光ドラム31の外周面とが離れているため、十分な吸引力を得るために異極性とされることが好ましい。補助帯電器35を用いなくても感光ドラム31や中間転写体251が十分に帯電している場合は、補助帯電器35は省略されてもよい。
【0063】
画像形成装置では、導電層91,91aに電位を付与する電位付与部4,4aの接触子はブラシ以外に例えば、バネ材や電位付与ローラ等を利用して導電層に電位を付与するものであってもよい。また、画像形成装置1では、転写位置において、感光ドラム31や中間転写体251の外周面と導電層91,91aとの間に転写電圧が作用するのであれば、導電層91,91aに付与される電位は接地電位であってもよい。この場合、電源の個数を削減することができる。
【0064】
ステージ21の保持面210によるガラス基板9(または対象基板9a)の保持は真空吸着には限定されず、例えば、機械的に保持が行われてもよい。画像形成装置により使用されるトナーは液体トナーには限定されず、乾式トナーであってもよい。
【0065】
第3の実施の形態において、第2の実施の形態の様に導電層91aが貼られた対象基板9aにトナー画像が転写されてもよい。また、ガラス基板9に貼り付けられる導電層91aは、導電ポリイミドシート以外にアルミ箔等であってもよい。
【0066】
画像形成装置では、トナー画像をガラス基板9上に効率よくかつ精度よく転写して、高精度なカラーフィルタを容易に製造することが実現されるが、フィルム状の透明な対象物上にトナー画像が転写されてカラーフィルタが製造されてもよい。また、画像形成装置はカラーフィルタの製造以外の用途に用いられてもよく、画像形成装置においてトナー画像が転写される板状またはフィルム状の対象物は、樹脂やセラミックス等のプリント配線基板といった他の絶縁基材の主面上に導電性または半導電性の導電層が形成されたものであってもよい。また、金属板や半導体基板のように、対象物自体が導電性または半導電性を有していてもよく、この場合、対象物に導電層が設けられる必要はなく、電位付与部4により対象物に直接電位が付与される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置を示す図である。
【図2】ステージおよび吸着制御部を示す平面図である。
【図3】移動機構を示す図である。
【図4】ガラス基板上にトナー画像を形成する処理の流れを示す図である。
【図5.A】トナーの転写時の様子を示す図である。
【図5.B】トナーの転写時の様子を示す図である。
【図6】第2の実施の形態に係る画像形成装置を示す図である。
【図7】ガラス基板上にトナー画像を形成する処理の流れを示す図である。
【図8.A】トナーの転写時の様子を示す図である。
【図8.B】トナーの転写時の様子を示す図である。
【図9】第3の実施の形態に係る画像形成装置を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1,1a,1b 画像形成装置
2 搬送機構
3 プロセスユニット
4,4a 電位付与部
9 ガラス基板
9a 対象基板
21,21a ステージ
22 移動機構
23 吸着制御部
25 中間転写部
31 感光ドラム
33 潜像形成部
34 現像部
35 補助帯電器
91,91a 導電層
210 保持面
211 溝
251 中間転写体
312 感光体
S12〜S18,S31,S32 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成装置であって、
外周面上に転写前のトナー画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を前記外周面に沿って循環移動するトナー画像保持部と、
導電性もしくは半導電性の対象物または基材の一の主面上に導電性もしくは半導電性の導電層を有する対象物を、前記環状部材に対向する搬送経路に沿って搬送し、前記外周面と前記対象物とが最も接近する転写位置における前記対象物の部位を、前記外周面に向かって撓むことが可能な状態で、前記外周面の前記転写位置の部位と同じ速度にて同じ進行方向に移動する搬送機構と、
所定の電位を前記導電性もしくは半導電性の対象物または前記導電層に付与することにより、前記対象物の前記転写位置の前記部位と前記外周面の前記部位との間に所定の転写電圧を作用させ、かつ、前記転写電圧に起因する電気的吸引力により前記対象物の前記部位を前記環状部材に向かって撓ませつつ前記トナー画像を前記対象物に転写する電位付与部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記対象物が、板状またはフィルム状の絶縁性基材の一の主面に導電性または半導電性の導電層が貼り付けられたものであり、
トナー画像の転写時に、前記絶縁性基材の前記環状部材とは反対側に前記導電層が位置することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記電位付与部が、前記トナー画像保持部の帯電極性と反対の極性を有する電位を前記導電層に付与することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記環状部材の前記外周面に静電潜像を形成する潜像形成部と、
トナーにより前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像部と、
前記転写位置と前記現像部との間に配置され、前記トナー画像の上から前記環状部材を所定の電位まで帯電させる補助帯電器と、
をさらに備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記対象物の前記転写位置の前記部位の撓み量が、30μmないし100μmに設定されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記搬送機構が、
前記対象物が載置される保持面において前記対象物の搬送方向に配列された複数の吸着要素により、前記対象物を前記環状部材とは反対側から吸着保持する保持部と、
前記保持部を前記搬送経路に沿って移動する移動機構と、
前記複数の吸着要素のうち前記転写位置に位置するものによる吸着を解除する吸着制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成方法であって、
a)外周面に沿って循環移動する円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材の前記外周面上に転写前のトナー画像を形成する工程と、
b)導電性もしくは半導電性の対象物または基材の一の主面上に導電性もしくは半導電性の導電層を有する対象物を、前記環状部材に対向する搬送経路に沿って搬送し、前記外周面と前記対象物とが最も接近する転写位置における前記対象物の部位を、前記外周面に向かって撓むことが可能な状態で、前記外周面の前記転写位置の部位と同じ速度にて同じ進行方向に移動する工程と、
c)前記b)工程と並行して、所定の電位を前記導電性もしくは半導電性の対象物または前記導電層に付与することにより、前記対象物の前記転写位置の前記部位と前記外周面の前記部位との間に所定の転写電圧を作用させ、かつ、前記転写電圧に起因する電気的吸引力により前記対象物の前記部位を前記環状部材に向かって撓ませつつ前記トナー画像を前記対象物に転写する工程と、
を備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成方法であって、
前記a)工程の前に、板状またはフィルム状の絶縁性基材の一の主面に前記導電層を貼り付けて前記対象物を準備する工程と、
前記c)工程の後に、前記対象物から前記導電層を剥離する工程と、
をさらに備え、
前記c)工程において、前記絶縁性基材の前記環状部材とは反対側に前記導電層が位置することを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の画像形成方法であって、
前記a)工程と前記c)工程との間に、前記トナー画像の上から前記環状部材を所定の電位まで帯電させる工程をさらに備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかに記載の画像形成方法であって、
前記b)工程において、前記対象物が載置される保持面上において前記対象物の搬送方向に配列された複数の吸着要素により、前記対象物が前記環状部材とは反対側から吸着保持されつつ搬送され、
前記c)工程において、前記複数の吸着要素のうち前記転写位置に位置するものによる吸着が解除されることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5.A】
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【図5.B】
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【図6】
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【図7】
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【図8.A】
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【図8.B】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−193147(P2007−193147A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11818(P2006−11818)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】