説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】電磁誘導加熱方式の定着を行う構成において、励磁コイルに流れる電流をスイッチングするスイッチ素子の過昇温を防止しつつ定着性の低下を抑制すること。
【解決手段】1枚の用紙に対する画像形成動作の開始時の直前をta、その画像形成動作が開始されたと仮定したときの、その用紙の先端が定着ニップに到達する予定時をtbとしたとき、時点taにおいて、スイッチ素子の時点tbでの温度を、過去のスイッチ素子の温度変化率などに基づいて予測する。予測温度が所定温度を超えている場合には、時点taからtbまでの間において、スイッチ素子のスイッチングを制限して(時点ta〜tf)、スイッチ素子の温度を低下させ、その後、制限を解除して(時点tf〜tb)、定着ローラ温度が時点tbにおいて定着に必要な温度になるように励磁コイルへの供給電力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着部材に設けられた電磁誘導発熱層を励磁コイルからの磁束により発熱させ、搬送されるシート上の未定着画像を定着部材の熱により当該シートに定着する画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの画像形成装置の分野では、電磁誘導加熱方式の定着部を備えるものが提案されている。電磁誘導加熱方式の定着部は、定着ローラや定着ベルトなどの定着部材に電磁誘導発熱層を設け、励磁コイルに流れる電流をスイッチ素子でスイッチングして励磁コイルから磁束を発生させ、発生した磁束により電磁誘導発熱層を発熱させて、搬送されるシート上の未定着画像を定着部材の熱により定着する構成になっている。
【0003】
この電磁誘導加熱方式では、画像形成動作中に定着部材の温度が定着に必要な温度、例えば180〔℃〕を基準に、その上下、数℃の温度域内に維持されるように、スイッチ素子のオン(通電)、オフ(遮断)のスイッチング周期が制御される。
スイッチング周期は、定着部材の温度や励磁コイルへの入力電圧の変動により可変され、例えば定着部材の温度の低下や励磁コイルの入力電圧の低下により、オン時間の、オフ時間に対する比(デューティ比)が上げられる。デューティ比が上げられると、スイッチ素子に流れる電流が多くなり、スイッチ素子が発熱して、その温度が上がることになる。スイッチ素子の温度が上がりすぎると、スイッチ素子の劣化や破壊を招く要因となる。
【0004】
そこで、特許文献1には、定着ローラとスイッチ素子の温度をそれぞれ検出し、定着ローラの検出温度に基づいてスイッチ素子の通電制御を行いつつ、スイッチ素子の検出温度が所定値よりも高い場合には、スイッチ素子に供給する電流を抑制して、スイッチ素子の温度が上がりすぎないようにすることにより、スイッチ素子の劣化を防止しようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−257898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、スイッチ素子の検出温度が所定値よりも高くなると、スイッチ素子への供給電流を抑制し、その供給電流の抑制をスイッチ素子の検出温度が所定値以下になるまで継続する構成になっている。
そのため、例えば、1枚のシートに対する画像形成動作を開始してから、そのシートの先端が定着部材に到達するまでの間に、スイッチ素子の検出温度が所定値よりも高いことが検出されると、そのシートに対する画像形成動作を実行しつつ、スイッチ素子への供給電流の抑制が開始されることになる。
【0007】
シートの先端が定着部材に到達するまでの間に、スイッチ素子の温度が所定値以下にならなければ、そのままスイッチ素子への供給電流の抑制が継続されて、定着部材の温度が低下し続けるので、そのシートの先端が定着部材に到達した時点で定着部材の温度が定着に必要な温度を下回っているといった状態が発生し易くなる。このような状態で、定着が実行されると、定着性が低下して定着不良に繋がることになってしまう。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、電磁誘導加熱方式の定着を行う構成において、スイッチ素子の過昇温を防止しつつ定着性の低下を抑制可能な画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、励磁コイルに流れる電流をスイッチ素子でスイッチングして、励磁コイルから磁束を発生させ、定着部材に設けられた電磁誘導発熱層を前記励磁コイルから発生される磁束により発熱させて、搬送されるシート上の未定着画像を定着部材の熱により当該シートに定着する画像形成装置であって、定着部材の温度を検出する検出手段と、スイッチ素子の時系列的な温度推移を求める算出手段と、搬送されるシートの搬送方向先端が定着部材に到達する予定の第2時点よりも所定時間前の第1時点において、第1時点までのスイッチ素子の温度推移に基づいて第2時点でのスイッチ素子の温度を予測する予測手段と、スイッチ素子の予測温度が所定値以上の場合、第1時点から第2時点までの間に、スイッチ素子のスイッチングを制限した後、前記制限を解除して、第2時点に至るときに、検出される定着部材の温度が定着に必要な温度になるように、励磁コイルへの供給電力を制御する第1制御を実行する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、像担持体上に画像を形成すると共に、シートを像担持体の転写位置に向けて搬送し、像担持体上の画像を未定着画像として、搬送されるシート上に転写位置で転写し、転写後のシートを定着部材に搬送する画像形成動作を行うプリント部を備え、前記第1時点は、前記画像形成動作の開始時よりも前であり、前記制御手段は、スイッチ素子の予測温度が前記所定値よりも高い上限値以上の場合、第1制御に代えて、プリント部に画像形成動作の開始を一時停止させると共に、スイッチ素子のスイッチングを制限する第2制御を実行することを特徴とする。
【0011】
ここで、前記第1時点は、プリント部に対する指示により画像形成動作の開始を停止可能な、画像形成動作の開始時に最も近い所定の時点であることを特徴とする。
また、前記予測手段は、画像形成動作の開始を一時停止した後の時点Aにおいて、時点Aまでのスイッチ素子の温度推移に基づいて、一時停止されている画像形成動作が開始されたと仮定したときにその画像形成動作により定着部材に向けて搬送されるシートの搬送方向先端が定着部材に到達する予定の時点Bでのスイッチ素子の温度を再び予測し、前記制御手段は、再予測されたスイッチ素子の予測温度が上限値未満である場合、第2制御を止めて、プリント部に画像形成動作を開始させると共に、前記スイッチングの制限を解除して、時点Bに至ったときに定着部材の温度が定着に必要な温度になるように、励磁コイルへの供給電力を制御することを特徴とする。
【0012】
ここで、前記制御手段は、再予測されたスイッチ素子の予測温度が上限値以上である場合、プリント部に画像形成動作を禁止させることを特徴とする。
さらに、画像形成動作を、第1と第2の画像形成モードに切り替えて実行可能であり、像担持体は、複数の感光体と周回走行する1つの中間転写体とを含み、前記像担持体への画像の形成は、第1画像形成モードでは、帯電された複数の感光体を露光して、複数の感光体上に静電潜像を作像し、その静電潜像を現像した後、それぞれの感光体上に形成された画像をその感光体の一次転写位置で中間転写体上に多重転写することにより行われ、第2画像形成モードでは、1つの感光体だけが使用され、帯電された感光体を露光して、感光体上に静電潜像を作像し、その静電潜像を現像した後、感光体上に形成された画像を感光体の一次転写位置で中間転写体上に転写することにより行われ、前記シート上への画像の転写は、中間転写体上の画像が中間転写体の二次転写位置でシートに二次転写されることにより行われ、第1画像形成モードにおいて、使用される複数の感光体のうち、中間転写体の周回方向最上流に位置する感光体への露光開始から当該感光体上の画像の先端が二次転写位置に到達するまでに要する第1時間と、第2画像形成モードにおいて、1つの感光体への露光開始から当該感光体上の画像の先端が二次転写位置に到達するまでに要する第2時間と、シートの、二次転写位置に向けての搬送開始から、当該搬送されるシートの搬送方向先端が二次転写位置に到達するまでに要する第3時間との間に、第1時間>第3時間>第2時間の関係がある場合、前記画像形成動作の開始時とは、第1画像形成モードが実行される場合には、第1感光体への露光開始時であり、第2画像形成モードが実行される場合には、シートの搬送開始時であることを特徴とする。
【0013】
また、前記像担持体への画像の形成は、帯電された像担持体を露光して、像担持体上に静電潜像を作像し、その静電潜像を現像することにより行われ、像担持体への露光開始から像担持体上の画像の先端が転写位置に到達するまでに要する時間を第1時間、シートの、転写位置に向けての搬送開始から、当該搬送されるシートの搬送方向先端が転写位置に到達するまでに要する時間を第2時間としたとき、前記画像形成動作の開始時とは、第1時間≧第2時間の場合には、像担持体への露光開始時であり、第1時間<第2時間の場合には、シートの搬送開始時であることを特徴とする。
【0014】
さらに、前記制御手段は、スイッチ素子のスイッチングの制限を、第1時点直後から所定時間に亘って、励磁コイルに対する最低の供給電力として予め決められている電力が励磁コイルに供給されるようにスイッチングを行う、またはスイッチングを停止させることにより行うことを特徴とする。
また、前記算出手段は、スイッチ素子の温度推移としてスイッチ素子の温度変化率を求め、前記予測手段は、スイッチ素子の温度を予測する時点をa、時点aよりも後であり温度の予測対象時点をb、時点aよりも前の時点をcとしたとき、時点cから時点aまでの間のスイッチ素子の変化率で、スイッチ素子の温度が時点aから時点bまでの間に変化すると仮定した場合の当該時点bでのスイッチ素子の温度TmpAを算出して、算出した温度TmpAをスイッチ素子の予測温度とすることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記予測手段は、時点cから時点aまでの間の時点をdとしたとき、さらに、時点dから時点aまでの間のスイッチ素子の変化率で、スイッチ素子の温度が時点aから時点bまでの間に変化すると仮定した場合の当該時点bでのスイッチ素子の温度TmpBを算出し、前記温度TmpAと温度TmpBの間の値をスイッチ素子の予測温度とすることを特徴とする。
【0016】
ここで、前記予測手段は、前記温度TmpAと温度TmpBの平均値を温度TmpC、時点cから時点dまでの間に励磁コイルに供給された電力量の総和をΣ1、時点dから時点aまでの間に励磁コイルに供給された電力量の総和をΣ2としたとき、電力量の総和Σ1、Σ2の大小関係に基づいて、温度TmpA、温度TmpB、温度TmpCのうち、いずれか1つをスイッチ素子の予測温度とすることを特徴とする。
【0017】
ここで、前記予測手段は、装置周辺温度を取得し、電力量の総和Σ1、Σ2の大小関係と、取得した装置周辺温度に基づいて、温度TmpA、温度TmpB、温度TmpCのいずれか1つをスイッチ素子の予測温度とすることを特徴とする。
本発明に係る画像形成方法は、励磁コイルに流れる電流をスイッチ素子でスイッチングして、励磁コイルから磁束を発生させ、定着部材に設けられた電磁誘導発熱層を前記励磁コイルから発生される磁束により発熱させて、搬送されるシート上の未定着画像を定着部材の熱により当該シートに定着する画像形成装置における画像形成方法であって、定着部材の温度を検出する検出ステップと、スイッチ素子の時系列的な温度推移を求める算出ステップと、搬送されるシートの搬送方向先端が定着部材に到達する予定の第2時点よりも所定時間前の第1時点において、第1時点までのスイッチ素子の温度推移に基づいて第2時点でのスイッチ素子の温度を予測する予測ステップと、スイッチ素子の予測温度が所定値以上の場合、第1時点から第2時点までの間に、スイッチ素子のスイッチングを制限した後、前記制限を解除して、第2時点に至るときに、検出される定着部材の温度が定着に必要な温度になるように、励磁コイルへの供給電力を制御する制御ステップと、を含むステップを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このようにすれば、第1時点において、スイッチ素子の実際の温度が所定値を超えていなくても、スイッチ素子の予測温度が所定値以上の場合、第1時点以降、温度が上昇し続けることにより、第2時点でスイッチ素子の温度が所定値以上の高温になる蓋然性が高くなるとして、スイッチ素子のスイッチングを制限するので、スイッチ素子の温度が上昇し続けることが抑制され、過昇温を防止することができる。スイッチングを制限した後、その制限を解除して、第2時点で定着部材の温度が定着に必要な温度になるように、励磁コイルへの供給電力を制御することにより、定着性の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】プリンタの全体の構成を示す図である。
【図2】(a)は、定着部の構成を示す横断面図であり、(b)は、定着ローラに設けられるスリーブの構成を示す断面図である。
【図3】制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】(a)は、第1制御によるスイッチ素子の温度変化の例を示す図であり、(b)は、定着ローラ表面温度の変化の例を示す図である。
【図5】第2制御によるスイッチ素子の温度変化の例を示す図である。
【図6】通常制御とスイッチ素子過昇温防止制御の切り替えを示す概念図である。
【図7】IH電源駆動部の概略の回路構成を示す図である。
【図8】定着温調制御部の構成を示すブロック図である。
【図9】対応情報テーブルの内容の例を示す図である。
【図10】予測ポイントテーブルの内容の例を示す図である。
【図11】スイッチ素子温度検出処理の内容を示すフローチャートである。
【図12】定着温調制御の内容を示すフローチャートである。
【図13】予測ポイント決定処理の内容を示すフローチャートである。
【図14】感光体ドラム、中間転写ベルト、二次転写ローラ、レジストローラ対、定着ニップの位置関係を模式的に示す図である。
【図15】温調制御切替処理の内容を示すフローチャートである。
【図16】スイッチ素子温度予測処理の内容を示すフローチャートである。
【図17】スイッチ素子温度予測処理の方法を概念的に示す図である。
【図18】温度予測判定テーブルの内容を示す図である。
【図19】スイッチ素子過昇温防止制御の内容を示すフローチャートである
【図20】コイル供給電力制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図21】設定電力可変処理1の内容を示すフローチャートである。
【図22】設定電力可変処理2の内容を示すフローチャートである。
【図23】設定電力可変処理3の内容を示すフローチャートである。
【図24】ジョブ禁止判断処理の内容を示すフローチャートである。
【図25】継続処理の内容を示すフローチャートである。
【図26】禁止処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にして説明する。
(1)プリンタの全体構成
図1は、プリンタの全体の構成を示す図である。
同図に示すように、プリンタは、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、プリント部1と、定着部2と、制御部3と、操作パネル4などを備え、ネットワーク(例えば、LAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)色からなるカラーの画像形成、およびブラック(K)色からなるモノクロの画像形成を切り替えて実行することができる。
【0021】
プリント部1は、作像部10と、中間転写部20と、給送部30を備える。
作像部10は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像ユニット10Y〜10Kを備えている。作像ユニット10Yは、感光体ドラム11Yと、その周囲に配設された帯電器12Y、露光部13Y、現像器14Y、一次転写ローラ15Y、感光体ドラム11Yを清掃するためのクリーナなどを備えており、公知の帯電、露光、現像工程を経て感光体ドラム11Y上にY色のトナー像を作像する。この構成は、他の作像ユニット10M〜10Kについて同様であり、対応する色のトナー像が感光体ドラム11M〜11K上に作像される。
【0022】
中間転写部20は、矢印方向に周回走行される中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ22および従動ローラ23と、中間転写ベルト21を挟んで駆動ローラ22と対向すると共に圧接した状態で配置される二次転写ローラ24を備える。
給送部30は、給紙カセットから記録シートとしての用紙Sを搬送路35に1枚ずつ繰り出すピックアップローラ31と、ピックアップローラ31により搬送路35に繰り出された用紙Sを搬送する搬送ローラ対32と、搬送ローラ対32により搬送路35上を搬送されて来た用紙Sを二次転写ローラ24に送り出すタイミングをとるためのレジストローラ対33を備える。
【0023】
定着部2は、電磁誘導加熱方式によるものであり、定着ローラ101と加圧ローラ102などを備える。定着部2の構成の詳細については後述する。
制御部3は、カラーの画像形成動作では、外部の端末装置からの画像信号をY〜K色用のデジタル信号に変換し、作像ユニット10Y〜10Kの露光部13Y〜13Kのレーザダイオードを駆動させるための駆動信号を生成する。生成された駆動信号により、作像ユニット10Y〜10K毎に、露光部13Y〜13Kのレーザダイオードが駆動されてレーザ光が出射され、感光体ドラム11Y〜11Kが露光走査される。
【0024】
この露光走査を受ける前に、作像ユニット10Y〜10K毎に、感光体ドラム11Y〜11Kが帯電器12Y〜12Kにより一様に帯電されており、レーザ光の露光により、感光体ドラム11Y〜11K上に、形成すべき画像の静電潜像が作像され、作像された静電潜像が現像器14Y〜14Kによりトナーで現像される。
各色のトナー像は、一次転写ローラ15Y〜15Kと、対応する感光体ドラム11Y〜11K間に生じる電界による静電力の作用を受けて中間転写ベルト21上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト21上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行される。中間転写ベルト21上に多重転写された各色トナー像は、中間転写ベルト21の周回走行により、二次転写ローラ24が中間転写ベルト21に圧接される位置である二次転写位置25に移動する。
【0025】
上記作像動作のタイミングに合わせて、給送部30においてレジストローラ対33を介して用紙Sが給送されて来ており、その用紙Sは、周回走行される中間転写ベルト21と二次転写ローラ24の間に挟まれて搬送され、二次転写ローラ24に供給される二次転写電圧により生じる電界による静電力の作用を受けて、二次転写位置25において、中間転写ベルト21上の各色トナー像が一括して用紙Sに二次転写される。
【0026】
二次転写位置25を通過した用紙Sは、定着部2に搬送され、定着部2を通過する際にトナー像が用紙Sに加熱、加圧により定着された後、排出ローラ対38により機外に排出されて、収容トレイ39に収容される。
上記では、カラーの画像形成を実行するカラーモード(第1画像形成モード)の例を説明したが、K色のみの画像形成を実行するモノクロモード(第2画像形成モード)の場合には、K色の作像部10Kのみが駆動されて、K色のトナー像の作像だけが実行され、K色のトナー像が用紙Sに二次転写された後、用紙Sに定着されることになる。
【0027】
操作部としての操作パネル4は、装置前面の、ユーザが操作し易い位置に配置されている。操作パネル4には、ユーザからの操作入力を受け付けるためのキー、例えばカラーとモノクロのモードを選択するためのモード選択キーなどが設けられている。ユーザは、モード選択キーを操作することにより、プリントジョブ毎に自己が所望するモードをカラーとモノクロのいずれかを選択することができる。
【0028】
なお、外部の端末装置からのプリントジョブのデータにカラーとモノクロのいずれのモードでジョブを実行すべきかを指示する情報が含まれている場合には、その情報に従って実行すべきモードを切り替える構成をとっても良い。
また、操作パネル4には、タッチパネルを有する液晶ディスプレイが配されており、液晶ディスプレイは、ユーザに対する各種メッセージを表示し、ユーザからの各種指示や選択をタッチ入力で受け付ける。各種メッセージの表示は、制御部3の指示により行われ、ユーザによりタッチ入力された情報は、制御部3に送られる。
【0029】
なお、プリント部1には、装置周辺の温度(環境温度)を検出するための装置周辺温度検出センサ29が設けられており、装置周辺温度の検出信号は、制御部3に送られる。
(2)定着部2の構成
図2(a)は、定着部2の構成を示す横断面図であり、図2(b)は、定着ローラ101に設けられるスリーブ112の構成を示す断面図である。
【0030】
両図に示すように、定着部2は、定着ローラ101と、加圧ローラ102と、磁束発生部103と、ローラ温度検出センサ104などを備える。
定着ローラ101は、ローラ本体111と、ローラ本体111の外周に密着した状態になるように嵌め込まれたスリーブ112とから構成される。
ローラ本体111は、長尺かつ円柱状の軸状部材である金属製の芯金の周囲にゴム材や樹脂材のスポンジ体などの断熱層が形成されてなる。
【0031】
スリーブ112は、図2(b)に示すように、ローラ本体111の側から、電磁誘導発熱層121、弾性層122、離型層123の順に積層されてなる。
電磁誘導発熱層121は、ニッケルなどからなり、磁束発生部103から発せられる磁束により発熱する。なお、電磁誘導発熱層121の材料は、電磁誘導により発熱するものであればニッケルに限られず、例えばアルミや銅などを用いることもできる。
【0032】
弾性層122は、シリコンゴムなどからなる弾性部材であり、シートSと定着ローラ101の表面との密着性を高める役割を果たす。
最外層の離型層123は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などからなり、定着ローラ101の表面の離型性を高める役割を果たしている。
【0033】
加圧ローラ102は、長尺で円柱状のアルミニウム等の金属からなる芯金の周囲に、シリコンスポンジゴム等からなる弾性層を介して、PFAなどからなる離型層が積層されてなり、図示しないバネなどを含む付勢手段により定着ローラ101に押圧され、定着ローラ101との間に定着ニップNを確保する。
定着ローラ101と加圧ローラ102は、その軸方向(以下、「ローラ軸方向」という。)両端部がフレーム(不図示)に軸受などを介して回転自在に支持されると共に、加圧ローラ102は、駆動モータ(不図示)の駆動力により、図2(a)の矢印で示す方向に回転駆動される。この加圧ローラ102の回転に伴って、定着ローラ101が同図の矢印で示す方向に従動回転する。
【0034】
磁束発生部103は、励磁コイル131と、メインコア132と、センターコア133と、裾コア134と、カバー135と、コイルボビン136を有し、定着ローラ101に対向する位置にそのローラ軸方向に沿うようにして配置される。
コイルボビン136は、定着ローラ101の表面に沿って弧状に湾曲する部分を含む板状部材であり、ローラ軸方向両端部が図示しないフレームなどに固定されている。コイルボビン136と定着ローラ101の表面との間隔が所定の隙間になるように、コイルボビン136の配設位置が調整される。メインコア132、センターコア133、裾コア134は、高透磁率のフェライトなどからなり、コイルボビン136の、定着ローラ101側とは反対側の面に配置される。
【0035】
励磁コイル131は、ローラ軸方向に沿って長く伸びると共に横断面が円弧状の形状になるようにコイルボビン136に導線を巻き回してなり、高周波インバータ回路を含むIH電源駆動部80(図1)に接続され、IH電源駆動部80からの電力の供給により、定着ローラ101の電磁誘導発熱層121を発熱させるための磁束を発生させる。
励磁コイル141から発せられた磁束は、メインコア142〜裾コア144により定着ローラ101に導かれ、定着ローラ101の電磁誘導発熱層121を貫き、電磁誘導発熱層121に渦電流を発生させて電磁誘導発熱層121が発熱する。
【0036】
電磁誘導発熱層121の熱が定着ニップNの位置で加圧ローラ102に伝わることにより定着ニップNの領域が昇温される。
ローラ温度検出センサ104は、定着ローラ101の周囲であり、定着ローラ101の回転方向に磁束発生部103よりも下流かつ定着ニップNよりも上流の位置に配置され、ここでは定着ローラ101に非接触で定着ローラ101の表面温度を検出する素子からなる。なお、定着ローラ101の表面温度を検出できれば良く、例えば接触式のサーミスタなどを用いても構わない。その検出信号は、制御部3に送られる。
【0037】
(3)制御部3の構成
図3は、制御部3の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、制御部3は、主な構成要素として、通信インターフェース(I/F)部51と、CPU52と、ROM53と、RAM54と、画像メモリ55と、プリント制御部56と、定着温調制御部57と、第1タイマー58、第2タイマーなどを備え、各部は相互に信号やデータのやりとりを行えるようになっている。
【0038】
通信I/F部51は、ネットワーク、ここではLANと接続するためのLANカード、LANボードといったインターフェースであり、外部端末からLANを介して送られてくるプリントジョブのデータを受信して、画像メモリ55に格納させる。
プリント制御部56は、CPU52の指示によりプリント部1を制御して、画像メモリ55に格納されているプリントジョブのデータに基づきカラーおよびモノクロのプリントジョブを実行させる。
【0039】
定着温調制御部57は、定着ローラ101の定着温調制御を行う。具体的には、ローラ温度検出センサ104からの検出信号を受信して、定着ローラ101の現在の温度(実測値)を把握し、定着ローラ101の表面温度(以下、「定着ローラ温度」という。)が定着に必要な温度域、例えば180〔℃〕を基準にプラス5〔℃〕およびマイナス5〔℃〕、すなわち175〜185〔℃〕の範囲内に入るように、IH電源駆動部80に対し励磁コイル131への供給電力を指示する。
【0040】
より具体的には、例えば定着ローラ温度がT1<T2<・・Tnの関係があり、励磁コイル131への供給電力(コイル供給電力)がW1>W2>・・>Wnの関係があるとすると、定着ローラ温度がT1のときにコイル供給電力をW1、T2のときにW2、・・TnのときにWnというように、検出された温度ごとに、定着ローラ温度が低いときにはコイル供給電力が大きくなり、定着ローラ温度が高いときにはコイル供給電力が少なくなるように指示する制御を行う。この制御を以下、通常制御という。
【0041】
定着ローラ温度とコイル供給電力との関係は、予め実験などから求められて、ROM53に格納される。また、定着ローラ温度に対して予め設定されているコイル供給電力を「設定電力値」という。
定着ローラ温度を一定間隔、例えば数ミリ秒ごとに検出し、一定間隔で定着ローラ温度が検出されるごとに、検出された定着ローラ温度に対する設定電力値が読み出されて、読み出された設定電力値がIH電源駆動部80に指示される。
【0042】
IH電源駆動部80では、設定電力値が一定間隔で指示されるごとに、指示された設定電力値と同じ大きさの電力が励磁コイル131に供給されるように制御を行う。
また、定着温調制御部57は、温調制御切替処理を実行する。この温調制御切替処理の詳細については後述するが、概要は次の通りである。
すなわち、(a)プリント部1による1枚の用紙Sに対する画像形成動作の開始時の直前(数ミリ秒前)である第1時点で、その画像形成動作が開始されたと仮定したときにその用紙Sの搬送方向先端(用紙先端)が定着ニップNに到達する予定時である第2時点(予測対象時点)でのスイッチ素子86の温度を予測する。
【0043】
(b)スイッチ素子86の予測温度が第1温度(例えば、80〔℃〕)未満であれば、通常制御を実行する。この第1温度は、これ以上になるとスイッチ素子86の劣化が進み易いと想定される温度に相当する。
(c)スイッチ素子86の予測温度が第1温度以上であれば、スイッチ素子過昇温防止制御を実行する。スイッチ素子過昇温防止制御は、IH電源駆動部80のスイッチ素子86(図7)の過昇温を防止する処理であり、第1制御と第2制御がある。
【0044】
第1制御は、スイッチ素子86の予測温度が第1温度以上かつ第2温度(例えば、100〔℃〕)未満の場合に実行され、第2制御は、スイッチ素子86の予測温度が第2温度以上の場合に実行される。第2温度は、第1温度よりも高い温度であり、これ以上になるとスイッチ素子86の破壊に至ると想定される温度に相当し、スイッチ素子86の温度の上限値として設定される。
【0045】
(d)第1制御では、画像形成動作と並行して、第1時点から第2時点までの間でスイッチ素子86のスイッチングを制限し、その後に用紙Sの先端が定着ニップNに到達する第2時点に至ったときに定着ローラ温度が基準温度域まで昇温しているように、IH電源駆動部80に対し設定電力値を指示する。
(e)第2制御では、画像形成動作の開始を一時停止させ、その後、スイッチ素子86の温度が第2温度未満になれば画像形成動作の一時停止を解除して、その画像形成動作を開始させつつ、上記(d)と同様の制御を行い、第2温度未満にならなければ、ジョブ実行を禁止させるものである。
【0046】
図4(a)は、第1制御によるスイッチ素子86の温度変化の例を示す図であり、図4(b)は、定着ローラ表面温度の変化の例を示す図である。
図4(a)では、時点ta(予測ポイント)が第1時点を示し、時点tb(用紙到達ポイント)が第2時点を示している。
第1時点から第2時点までの間の時間αは、1枚の用紙Sに対する画像形成動作が開始されてから、その用紙Sの先端が定着ニップNに到達するまでに要する時間を示している。時点tcは、時点taから時間αを遡った時点を示している。
【0047】
なお、1枚の用紙Sに対する画像形成動作の開始時と、その直前である第1時点とは、数ミリ秒の間隔を有するので、微視的に見れば、その間隔だけ時間αは短くなるはずであるが、その数ミリ秒の間隔が実際の定着温調制御に影響を与えることはないので、ここでは数ミリ秒の間隔を0秒とみなして時間αを定義し、同図では第1時点と画像形成動作の開始時とが同期している例を示している。このことは、他の図についても同様である。
【0048】
図4(a)において、温度Ts1は、第1温度を示し、Ts2は、第2温度を示している。また、図4(b)において、温度Tr1は、定着に必要な温度の下限値(上記例では、175〔℃〕)を示し、温度Tr2は、定着に必要な温度の上限値(上記例では、185〔℃〕)を示している。温度Tr1からTr2までの範囲が定着に必要な温度域に相当する。図4(a)と(b)は、過去から時点taまでの間に、スイッチ素子86の温度および定着ローラ温度が上昇傾向になっている例を示している。
【0049】
このような上昇傾向になるのは、IH電源駆動部80への入力電圧の変動や、使用される用紙Sの種類、プリンタの設置環境の変動などに起因することが多い。例えば、入力電圧が下がれば、設定電力値を維持すべく、スイッチ素子86の供給電流がより多くなるようにスイッチングが制御されることにより、スイッチ素子86の温度が上がり易くなる。
また、例えば普通紙よりも厚い厚紙が使用されると、用紙Sに奪われる単位時間当たりの熱量が普通紙よりも多くなるので、連続プリント中に定着ローラ温度が下がり易くなる。これを防止するために、普通紙を用いる場合よりも定着ローラ101の単位時間当たりの発熱量を多くすべく、スイッチ素子86の供給電流が多くなるようにスイッチング制御されることにより、スイッチ素子86の温度が上がり易くなる。
【0050】
さらに、例えばプリンタの設置環境が低温下にあるときにプリンタの電源がオンされた場合、プリンタの定着部2の温度も低温になっているはずなので、定着に必要な温度域との温度差が大きく、設定電力値が最大値(例えば、1500W)になることがあり、スイッチ素子86の供給電流が最大になるようにスイッチングが制御され、スイッチ素子86の温度が上がり易くなることなどが考えられる。
【0051】
図4(a)において、時点taをスイッチ素子86の温度予測を行う現在の時点(予測ポイント)として、過去の時点tcから現在の時点taまでの間におけるスイッチ素子86の過去の温度推移に基づき、未来の時点tbでのスイッチ素子86の温度を予測する。
予測温度がTs1以上、Ts2未満であれば(破線P)、画像形成動作に並行して、第1制御が実行される。第1制御は、予測温度がTs1以上であれば、現在の時点taでのスイッチ素子86の温度がTs1以上になっていなくても実行され、時点taまでのスイッチ素子86のスイッチング制御に対してそのスイッチングが制限される。
【0052】
これにより、時点ta以降は、スイッチ素子86の温度が時点taのときの温度から低下し始める(一点鎖線Q)。第1制御を実行しない場合には、予測温度がTs1以上になっていることから、時点taからスイッチ素子86の温度が上昇し続ける蓋然性が高く、そのまま温度が上昇すると、時点tbでの温度がTs1以上になることが予想されるが、第1制御を行うことにより、温度上昇がそのまま継続することが防止される。
【0053】
スイッチ素子86のスイッチングが制限されると、励磁コイル131への供給電力が低減されるので、図4(b)に示す一点鎖線Eで示すように、定着ローラ温度も時点taのときの温度から低下し始める。
時点tbに至るまでの間に、スイッチ素子86のスイッチングの制限が解除される。これにより、励磁コイル131への供給電力が増加に転じる。スイッチングの制限の解除により、スイッチ素子86の温度が低下する割合が下がるが、急上昇に転じることはなく、時点tb以降に、励磁コイル131への供給電力が多くなることが続けば、時点ta以前のように温度が徐々に上昇するようになる。
【0054】
励磁コイル131への供給電力の増加により、定着ローラ温度は、図4(b)の一点鎖線Eで示すように、下降から上昇に転じて、時点tbにおいて定着ローラ温度が下限値Tr1を超えて、定着に必要な温度域に達することができる。なお、定着ローラ101の熱容量が低ければ低いほど、定着ローラ温度が下降から上昇に転じた後の昇温がより早くなので、定着ローラ温度が定着に必要な温度域により達し易くなる。
【0055】
これに対して、第1制御を行わない場合(従来相当)、時点ta以降にスイッチ素子86の温度が実際にTs1を超えると、そのときからスイッチ素子86のスイッチングの制限が開始される。そのため、図4(b)の破線Fで示すように、定着ローラ温度の低下し始める時点が第1防止制御を行う場合に比べて遅くなる。
スイッチ素子86のスイッチングの制限により、スイッチ素子86の温度が下がり、所定値Ts1を下回ると、励磁コイル131への供給電力が増加されて、定着ローラ温度が昇温されるが、スイッチングの制限の開始が遅れた分、定着ローラ温度の昇温開始も遅れて、時点tbで、定着ローラ温度が下限値Tr1に達しないことが生じる。
【0056】
時点tbは、用紙Sの先端が定着ニップNに到達する予定時点であるので、時点tbに定着ローラ温度が未だ下限値Tr1に達していなければ、定着ニップNを通過した用紙Sに対して、定着に必要な熱量を与えることができず、定着性の低下に繋がる。
第1制御を実行することにより、スイッチ素子86の昇温を防止すると共に、時点tbにおいて定着ローラ温度を定着に必要な温度域まで昇温させることにより定着性の低下を抑えて、良好な定着を実現することができることになる。
【0057】
図5は、第2制御によるスイッチ素子86の温度変化の例を示す図であり、破線Pで示すようにスイッチ素子86の予測温度がTs2以上の場合の例を示している。この場合、画像形成動作が一時停止され、第1制御と同様にスイッチ素子86のスイッチングの制限により、一点鎖線Qで示すようにスイッチ素子86の温度が下げられる。
図6は、通常制御とスイッチ素子過昇温防止制御が第1時点と第2時点との時間的な関係においてどのように切り替えられるのかを示す概念図である。
【0058】
図6(a)は、スイッチ素子86の予測温度Tspが80〔℃〕(=Ts1)未満である場合を示し、第1時点から第2時点までの間も通常制御が実行される。
図6(b)は、予測温度Tspが80〔℃〕以上、100〔℃〕(=Ts2)未満である場合を示し、第1時点から第2時点までの間に、通常制御に代えてスイッチ素子過昇温防止制御(第1制御)が実行される。
【0059】
図6(c)は、予測温度Tspが100〔℃〕以上である場合を示し、第1時点以降に画像形成動作が一時停止されると共に、スイッチ素子過昇温防止制御(第2制御)が実行され、第2時点において第3時点でのスイッチ素子86の温度を予測して、予測温度TspがTs2未満であれば、画像形成動作が開始されつつ、第1制御が実行される。なお、第2時点において予測した予測温度Tspが100〔℃〕以上であれば、破線で示すようにジョブ禁止が判断される。
【0060】
スイッチ素子過昇温防止制御でも通常制御と同様に、定着温調制御部57からIH電源駆動部80に対しコイル供給電力の大きさを示す設定電力値が指示され、この指示される設定電力値は、通常制御時の設定電力値に対して、予め決められた係数(0よりも大きく1以下の値)が乗算された値とされる。なお、設定電力値の指示は、通常制御と同じ一定間隔ごとに実行される。以下、通常制御とスイッチ素子過昇温防止制御において、IH電源駆動部80に指示される設定電力値を「電力指示値」という。
【0061】
図3に戻って、第1タイマー58は、設定電力値の指示を一定間隔ごとに行う場合の、その一定間隔の計時に用いられ、第2タイマー59は、スイッチ素子過昇温防止制御において第1時点、第2時点の計時などに用いられる。
CPU52は、ROM53から必要なプログラムを読み出し、プリント部1、定着部2などを統括的に制御して画像形成動作を円滑に実行させる。また、操作パネル4上でのユーザ操作による入力情報を受け付けると共に、ユーザに対するメッセージ等を操作パネル4の液晶ディスプレイに表示させる。RAM54は、CPU52のワークエリアとなる。
【0062】
(4)IH電源駆動部80の回路構成
図7は、IH電源駆動部80の概略の回路構成を示す図である。
同図に示すように、IH電源駆動部80は、ヒューズ81と、電流計82と、電圧計83と、整流回路84と、共振コンデンサ85と、スイッチ素子86と、駆動回路87と、IH制御部88と、スイッチ素子温度検出センサ89と、温度検出回路90を備え、制御部3の定着温調制御部57から指示された電力指示値と同じ大きさの電力が励磁コイル131に供給されるように、励磁コイル131への供給電力を可変制御する回路である。
【0063】
ヒューズ81は、商用交流電源から回路内に過大な電流が流れるのを防止して回路を保護する。電流計82は、交流の電流値を検出し、電圧計83は、交流の電圧を検出する。
整流回路84は、交流を直流に変換するものであり、共振コンデンサ85は、励磁コイル131とLC共振回路を構成するものであり、スイッチ素子86は、ここではIGBT(インスレテッド・ゲート・バイポーラ・トランジスタ)が用いられており、励磁コイル131に流れる電流をオン、オフスイッチングする。このスイッチングにより励磁コイル131と共振コンデンサ85からなるLC共振回路に電流が流れて、励磁コイル131から、定着ローラ101の電磁誘導発熱層121を発熱させるための磁束が発せられる。なお、スイッチ素子がIGBTに限られることはなく、他の素子を用いても構わない。
【0064】
駆動回路87は、スイッチ素子86としてのIGBTのゲートにパルス波形の駆動電圧を出力する回路であり、スイッチ素子温度検出センサ89は、スイッチ素子86の温度を示す信号を出力するセンサであり、温度検出回路90は、スイッチ素子温度検出センサ89の検出信号をスイッチ素子86の温度値に換算してIH制御部88に送る回路である。
IH制御部88は、定着温調制御部57からの電力指示値を一定間隔で受け付けるごとに、その時点での電流計82と電圧計83の検出結果に基づき、励磁コイル131への供給電力が電力指示値と同じ大きさになるように、駆動回路87に対して、IGBT86に出力すべき駆動電圧のデューティ比を指示する。このデューティ比は、スイッチ素子86がオン、オフスイッチングする際におけるオン時間のオフ時間に対する比を示し、デューティ比が大きくなるほど、スイッチ素子86への供給電流が増加して、励磁コイル131への供給電力が増加することになる。
【0065】
ここでは、商用交流電源からの入力電力の値が可変することを考慮に入れて、入力電力の値が可変しても、その入力電力の値に対して駆動信号のデューティ比をどの大きさにすれば、電力指示値と同じ大きさの電力を励磁コイル131に供給することができるかについて、入力電力値と電力指示値と駆動信号のデューティ比とが予め対応付けされた情報がIH制御部88に設けられたメモリ(不図示)に格納されている。
【0066】
IH制御部88は、その情報を参照して、電力指示値と現在の商用交流電源からの入力電力値に対応する駆動信号のデューティ比を求め、求めた駆動信号のデューティ比の情報を駆動回路87に送る。
駆動回路87は、IH制御部88から指示されたデューティ比でスイッチ素子86のスイッチングが実行されるように、スイッチ素子86のゲートに駆動電圧を印加させる。これにより、スイッチ素子86のスイッチングが実行され、制御部3から指示された電力指示値と同じ大きさの電力が励磁コイル131に供給されることになる。
【0067】
(5)定着温調制御部57の構成
図8は、定着温調制御部57の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、定着温調制御部57は、SW素子温度検出部61と、対応情報テーブル62と、温度予測ポイント決定部63と、予測ポイントテーブル64と、SW素子温度予測部65と、温度予測判定テーブル66と、電力制御部67とを備える。
【0068】
SW素子温度検出部61は、スイッチ素子温度検出処理(後述)を実行する。
対応情報テーブル62は、図9に示すように、時刻とスイッチ素子86の温度と電力指示値とを対応付けた対応情報の過去の履歴を記憶している。この対応情報は、スイッチ素子温度検出処理において書き込まれる。
図8に戻り、温度予測ポイント決定部63は、スイッチ素子86の温度予測を行う時点(予測ポイント:第1時点)を決定する予測ポイント決定処理(後述)を実行する。
【0069】
予測ポイントテーブル64は、予測ポイントの決定の際に参照されるテーブルであり、図10に示すように、モードと予測ポイントが対応付けされた情報が書き込まれている。
具体的には、カラーモードの場合にはY色の露光走査開始直前が予測ポイントとして対応付けされており、モノクロモードの場合には用紙Sのレジスト開始直前が予測ポイントとして対応付けされている。このような関係をとっている理由については、後述する。
【0070】
図8に戻って、SW素子温度予測部65は、決定された予測ポイントになると、用紙Sの先端が定着ニップNに到達する予定時(用紙到達ポイント:第2時点)でのスイッチ素子86の温度を予測するスイッチ素子温度予測処理(後述)を実行する。
温度予測判定テーブル66は、スイッチ素子86の温度を予測する際に参照される。温度予測判定テーブル66の内容については、後述する。
【0071】
電力制御部67は、IH電源駆動部80のIH制御部88に対して電力指示値を出力して、励磁コイル131に供給すべき電力を指示する。また、スイッチ素子86の予測温度に基づき、通常制御と過昇温防止制御とを切り替えて実行する。さらに、IH電源駆動部80と信号やデータのやりとりを行い、駆動回路87からスイッチ素子86のスイッチングの状況を示す情報を取得して、スイッチングが良好に行われているかなどを監視する。
【0072】
(6)スイッチ素子温度検出処理の内容
図11は、スイッチ素子温度検出処理の内容を示すフローチャートである。
この処理は、プリンタに電源が投入されているときに所定周期、例えば数ミリ秒ごとにSW素子温度検出部61により繰り返し実行される。所定周期の計時は、第1タイマー58により行われる。
【0073】
同図に示すように、スイッチ素子86の現在の温度(実測値)を取得する(ステップS1)。この取得は、IH電源駆動部80で検出されたスイッチ素子86の検出温度を示す情報をIH制御部88から受信することにより行われる。
続いて、IH制御部88に対して現在、出力している電力指示値を電力制御部67から取得する(ステップS2)。取得した電力指示値は、励磁コイル131に対する現在の電力供給量を示す情報となる。
【0074】
そして、取得したスイッチ素子86の温度と電力指示値とを現在の時刻と対応付けて、対応情報テーブル62に書き込み(ステップS3)、一定時間が経過すると(ステップS4で「YES」)、ステップS1に戻り、ステップS1〜S4までの処理を繰り返す。
この繰り返しが一定間隔ごとに行われることにより、その時々のスイッチ素子86の温度と電力指示値とを対応付けた対応情報が対応情報テーブル62に書き込まれ、履歴として蓄積される。図9に示す時刻t1、t2・・tnは、一定間隔ごとの時刻を時間順に示しており、時刻t(n−1)とtnの時間差が一定間隔に相当し、対応情報のサンプリング期間になる。
【0075】
(7)定着温調制御の内容
図12は、定着温調制御の内容を示すフローチャートである。この制御は、1枚の用紙Sに対するプリントジョブ(以下、「ジョブX」という。)の開始と同時に開始される。ここでは、プリント制御部56がジョブXの開始を示す情報をその開始時点に定着温調制御部57に送信するようになっており、定着温調制御部57は、この情報を受信することによりジョブXが開始されたことを知ることができる。以下、定着温調制御の全体を概略説明して、その後に詳細を説明する。
【0076】
<概略説明>
まず、予測ポイントを決定する予測ポイント決定処理を行う(ステップS11)。
予測ポイントが決定されると、ジョブXの実行中にその予測ポイントに到達したか否かを判断する(ステップS12)。
予測ポイントに到達していないことを判断すると(ステップS12で「NO」)、通常制御を実行して(ステップS14)、ステップS12に戻る。予測ポイントに到達するまで通常制御を実行する。これは、図6(a)〜図6(c)に示す第1時点までの区間に通常制御が実行されることに対応している。
【0077】
予測ポイントに到達したことを判断すると(ステップS12で「YES)、温調制御切替処理を実行する(ステップS13)。温調制御切替処理により、通常制御とスイッチ素子過昇温防止制御のいずれかが選択されて実行される。これは、図6(a)に示す通常制御と、図6(b)と図6(c)に示すスイッチ素子過昇温防止制御とが第1時点から第2時点までの間に切り替えられることに対応している。
【0078】
温調制御切替処理が終了すると、温調制御切替処理においてジョブ禁止の判断がされていなければ(ステップS15で「NO」)、通常制御を実行して(ステップS16)、当該定着温調制御を終了する。これは、図6(b)に示す第2時点以降において、通常制御が実行されることに対応している。なお、プリントジョブ実行中でも、SW素子温度検出部61によりスイッチ素子温度検出処理が並行して実行されるので、対応情報が一定時間ごとに対応情報テーブル62に書き込まれることになる。
【0079】
ジョブ禁止の判断がされていれば(ステップS15で「YES」)、そのまま当該定着温調制御を終了する。この場合、プリントジョブが禁止されるので、後述のように励磁コイル131への電力供給も停止される。
なお、複数枚の用紙Sに対するプリントジョブが実行される場合には、用紙1枚単位で、上記の定着温調制御が実行される。
【0080】
<詳細説明>
(7−1)予測ポイント決定処理の内容
図13は、予測ポイント決定処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。この処理は、温度予測ポイント決定部63により行われる。
同図に示すように、ジョブXがカラーモードとモノクロモードのいずれのモードで行われるかを判断する(ステップS31)。この判断は、プリント制御部56からジョブXのモードを示す情報を受信することにより行われる。
【0081】
カラーモードであることを判断すると(ステップS31で「YES」)、予測ポイントテーブル64を参照して、予測ポイントをY色の露光開始直前に決定して(ステップS32)、リターンする。一方、カラーモードではない、すなわちモノクロモードであることを判断すると(ステップS31で「NO」)、予測ポイントテーブル64を参照して、予測ポイントをレジスト開始直前に決定して(ステップS33)、リターンする。
【0082】
ここで、Y色の露光開始とは、1枚の用紙Sへの画像形成に対する、Y色の画像データの露光走査を開始する時点をいい、Y色の露光開始直前とは、Y色の露光開始時から時間tz(数ミリ秒)前の時点をいう。
また、レジスト開始とは、レジストローラ対33による用紙Sを二次転写位置25に送り出すタイミングのことであり、レジスト開始直前とは、レジスト開始タイミングから時間tz前の時点をいう。露光開始直前とレジスト開始直前のうち、予測ポイントと決定された方が、上記の1枚の用紙Sに対する画像形成動作の開始時の直前を示す第1時点とみなされて、温調制御切替処理(ステップS13)が実行される。露光開始とレジスト開始がいつになるのかの情報は、プリント制御部56から取得される。
【0083】
プリント制御部56は、ジョブ毎にジョブ開始時となる時刻を管理し、その時刻を基点に帯電、露光、現像、転写、レジスト開始などの各工程のタイミングを制御しながら画像形成動作を実行するので、ジョブXに対する露光開始やレジスト開始の予定時刻を特定することができる。定着温調制御部57は、プリント制御部56からその時刻情報を取得することにより、露光開始やレジスト開始の直前のタイミングを特定することができる。
【0084】
上記のように予測ポイント(第1時点)を、実行すべきモード(カラーとモノクロ)に応じて切り替えるのは、次の理由による。すなわち、本実施の形態に係るプリンタは、カラーモードとモノクロモードとで、Y色の露光開始時とレジスト開始時の先後が入れ替わる構成になっており、いずれのモードが選択されても、先に開始される方の直前を予測ポイントに決定しようとするためである。図14を用いて、具体的に説明する。
【0085】
図14は、感光体ドラム11Y〜11K、中間転写ベルト21、二次転写ローラ24、レジストローラ対33、定着ニップNの位置関係を模式的に示す図である。
同図では、感光体ドラム11Y上における露光部13Yによる露光位置を18Y、感光体ドラム11Y上の一次転写位置を19Y、感光体ドラム11K上における露光部13Kによる露光位置を18K、感光体ドラム11K上の一次転写位置を19K、二次転写位置を25、レジストローラ対33によるレジストローラニップを34で示している。
【0086】
また、距離Lyは、感光体ドラム11Yの周面において露光位置18Yからドラム回転方向に一次転写位置19Yまでの距離と、中間転写ベルト21の表面において周回方向に一次転写位置19Yから二次転写位置25までの距離と、搬送路35上において二次転写位置25から転写ニップNまでの距離Lnとを足し合わせた距離を示している。
距離Lkは、感光体ドラム11Kの周面において露光位置18Kからドラム回転方向に一次転写位置19Kまでの距離と、中間転写ベルト21表面において周回方向に一次転写位置19Kから二次転写位置25までの距離と、距離Lnとを足し合わせた距離を示している。距離Lrは、搬送路35上においてレジストローラニップ34から二次転写位置25を経て転写ニップNに至るまでの距離を示している。距離Ly、Lk、Lrは、Lk<Lr<Lyの大小関係を有する。
【0087】
ここで、感光体ドラム11Y〜11Kの周速、中間転写ベルト21の周回速度、用紙Sの搬送速度は、システムスピードとして同じ速度Vに設定されている。また、距離Ly、Lk、Lrに含まれる距離Lnは、いずれについても同じ長さである。
従って、カラーモード(Y色〜K色)を実行するときには、距離Lr<Lyの関係から、Y色の露光を開始してから、距離LrとLyの差分を速度Vで除して得られる時間の経過時にレジストローラ対33による用紙Sの搬送を開始(レジスト開始)すれば、中間転写ベルト21上にページ単位で形成されたY〜K色のトナー像のページ先端と、その用紙Sの先端とが同時に二次転写位置25に到達することになり、トナー像と用紙Sとが搬送方向にずれることなく、二次転写を実行することができる。
【0088】
一方、モノクロモード(K色)を実行するときには、距離Lk<Lrの関係から、レジストローラ対33による用紙Sのレジスト開始から、距離LkとLrの差分を速度Vで除して得られる時間の経過時にK色の露光を開始すれば、中間転写ベルト21上にページ単位で形成されたK色のトナー像のページ先端と、その用紙Sの先端とが同時に同時に二次転写位置25に到達して、搬送方向にずれることなく二次転写を実行することができる。
【0089】
このようにカラーモードでは、Y色の露光開始時が用紙Sのレジスト開始時よりも早くなる。従って、Y色の露光開始時を画像形成動作の開始時として、その直前を予測ポイントに決定すれば、予測ポイントでスイッチ素子86の温度を予測した時点で、仮に予測温度が所定値よりも高い温度を示していれば、画像形成動作の開始を一時停止させ、スイッチ素子86の温度が低下してから、一時停止を解除して画像形成動作を開始させることができる。これにより、スイッチ素子86の温度が高温になることを防止できる。
【0090】
一方、モノクロモードでは、用紙Sのレジスト開始時がK色の露光開始時よりも早くなる。従って、用紙Sのレジスト開始時を画像形成動作の開始時として、その直前を予測ポイントに決定すれば、カラーモードと同様に、予測ポイントで画像形成動作の開始を一時停止させ、スイッチ素子86の温度が低下してから、一時停止を解除して画像形成動作を開始させることができる。
【0091】
ジョブXがカラーモードであれば、Y色の露光開始時に達すると、図12のステップS12で予測ポイントに到達したと判断され、モノクロモードであれば、レジスト開始時に達すると、予測ポイントに到達したと判断される。
(7−2)温調制御切替処理の内容
図15は、温調制御切替処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【0092】
同図に示すように、スイッチ素子温度予測処理(ステップS41)を実行する。
(7−2−1)スイッチ素子温度予測処理の内容
図16は、スイッチ素子温度予測処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートであり、図17は、スイッチ素子温度予測処理の方法を概念的に示す図である。スイッチ素子温度予測処理は、SW素子温度予測部65により実行される。
【0093】
ここで、図17は、横軸が時間、縦軸がスイッチ素子86の温度と励磁コイル131への供給電力を示しており、線で示すグラフがスイッチ素子86の温度を示し、棒で示すグラフがコイル供給電力を示している。時間軸において、時点taを予測ポイント(第1時点)、時点tbを用紙到達ポイント(第2時点)、時点taから時間αだけ遡った時点をtc、時点taから時間(α/2)だけ遡った時点をtdとしている。時点taから時点tbまでの間の時点te、tf、tg、thについては、後述する。
【0094】
予測ポイントta(スイッチ素子86の温度を予測する時点)を現在とすると、予測ポイントtaを境に、時点tc、tdが過去、用紙到達ポイントtbが未来を示す。
図16に示すように、装置周辺温度Twを取得する(ステップS51)。この取得は、装置周辺温度検出センサ29からの検出信号を受信することにより行われる。
そして、過去の時点tcから現時点である予測ポイントtaまでの間におけるスイッチ素子86の温度の変化率ΔAを、スイッチ素子86の時系列的な温度推移として算出する(ステップS52)。この算出は、次のようにして行われる。
【0095】
すなわち、対応情報テーブル62(図9)を参照して、現在から時間α遡った過去の時点tcにおけるスイッチ素子86の温度Tcを取得すると共に、現在の予測ポイントtaにおいて温度検出回路90からのスイッチ素子86の温度Taを示す情報を取得する。取得した温度Taから温度Tcを差し引いた値を時間αで除した値を変化率ΔAとする。
温度TaとTcの大小関係が、Tc<Taであれば、変化率ΔAが正になり、Tc>Taであれば、変化率ΔAが負になる。図17は、変化率ΔAが正の場合の例を示している。この温度の大小と変化率の正負との関係は、次に説明する変化率ΔB、ΔCについても同様である。
【0096】
続いて、過去の時点tdから予測ポイントtaまでの間におけるスイッチ素子86の温度の変化率ΔBを算出する(ステップS53)。この算出は、変化率ΔAの場合と同様であり、温度Taから、過去の時点tdにおける温度Tdを差し引いた値を、時間(α/2)で除することにより行われる。この変化率ΔBも、時点tdからtaまでの間のスイッチ素子86の時系列的な温度推移とすることができる。
【0097】
算出された変化率ΔAと変化率ΔBの平均値ΔCを算出する(ステップS54)。
そして、現在の予測ポイントtaから用紙到達ポイントtbまでの間に、スイッチ素子86の温度が変化率ΔAで変化すると仮定したときの、用紙到達ポイントtbでのスイッチ素子86の温度TmpAを算出する(ステップS55)。この算出は、温度Taと、変化率ΔAに時間αを乗算した値とを足し合わせることにより行われる。
【0098】
続いて、予測ポイントtaから用紙到達ポイントtbまでの間に、スイッチ素子86の温度が変化率ΔBで変化すると仮定したときの、用紙到達ポイントtbでのスイッチ素子86の温度TmpBを算出する(ステップS56)。この算出方法は、温度TmpAの算出方法と同様である。
さらに、予測ポイントtaから用紙到達ポイントtbまでの間に、スイッチ素子86の温度が変化率ΔCで変化すると仮定したときの、用紙到達ポイントtbにおけるスイッチ素子86の温度TmpCを算出する(ステップS57)。この算出方法は、温度TmpAの算出方法と同様である。
【0099】
次に、過去の時点tcから時点tdまでの間の第1時間帯におけるコイル供給電力の総和を示す電力総和量ΣPB1(図17参照)を算出する(ステップS58)。
この算出は、対応情報テーブル62を参照して、過去の時点tcから時点tdまでの間における個々の電力指示値にサンプリング期間を乗算したものを全て足し合わせることにより行われる。
【0100】
同様に、過去の時点tdから予測ポイントtaまでの間の第2時間帯におけるコイル供給電力の総和を示す電力総和量ΣPB2(図17参照)を算出する(ステップS59)。この算出は、電力総和量ΣPB1の算出と同様の方法で行われる。
そして、温度予測判定テーブル66を参照して、装置周辺温度Tw、電力総和量ΣPB1、ΣPB2、変化率ΔAの大きさに基づき、用紙到達ポイントtbでのスイッチ素子86の予測温度Tspを、温度TmpA、TmpB、TmpCのうちのいずれかに決定して(ステップS60)、リターンする。
【0101】
図18は、温度予測判定テーブル66の内容を示す図である。
同図に示すように温度予測判定テーブル66は、装置周辺温度、電力総和量(Σ)、変化率(ΔA)、SW素子の予測温度(Tsp)の各欄が設けられてなり、装置周辺温度、電力総和量(Σ)、変化率(ΔA)、SW素子の予測温度(Tsp)がそれぞれ対応付けた情報が書き込まれている。
【0102】
例えば、装置周辺温度Tw<20〔℃〕、電力総和量がΣPB1<ΣPB2の関係にあり、かつ変化率ΔAが正であれば、温度TmpCがスイッチ素子86の予測温度Tspに決められる。また、装置周辺温度Tw<20〔℃〕、電力総和量がΣPB1>ΣPB2の関係にあり、変化率ΔAが負またはゼロであれば、TmpA〜TmpCのうち、最も小さい値が予測温度Tspに決められる。さらに、20〔℃〕≦装置周辺温度Tw<30〔℃〕の関係を有すると、電力総和量(Σ)、変化率(ΔA)の大小に関係なく、温度TmpCに決められるようになっている。
【0103】
また、例えば装置周辺温度Tw≧30〔℃〕の場合、変化率ΔAが正ならば、電力総和量(Σ)の大小関係によらず、TmpA〜TmpCのうち最も大きな値が決められるようになっている。上記のような決定方法をとっているのは、次の理由による。
すなわち、過去の変化率ΔAが正であれば、スイッチ素子86の温度が上昇傾向にあるので、予測ポイントta以降も温度上昇が予測される。
【0104】
ところが、温度上昇といっても、図17に示すように時点tcから予測ポイントtaまでの時間帯で一定の上昇率(変化率ΔA)で温度が上昇する場合もあれば、時点tcからtdまでの第1時間帯では上昇率が高く、時点tdから予測ポイントtaまでの第2時間帯では上昇率(変化率ΔB)がΔAよりも下がる場合もある。
このように上昇率が途中で変化する場合を考慮すれば、予測ポイントtaの直近である第2時間帯の変化率を示すΔBだけを用いれば良いことになる。ところが、図17の例のように第2時間帯の電力総和量ΣPB2が、第2時間帯よりも前である第1時間帯の電力総和量ΣPB1よりも大きい場合、スイッチ素子86の供給電流が増加し続けていることになり、予測ポイントta以降もその供給電流の増加が続けば、スイッチ素子86の温度上昇率が変化率ΔBよりもある程度、上がることが想定される。
【0105】
この温度上昇率の上がる程度は、装置周辺温度に影響を受け易い。装置周辺温度、すなわちプリンタの設置環境の温度が低い、例えば20〔℃〕未満のような場合には、概してプリンタの内部、特にIH電源駆動部80のような回路基板が配されている装置背面側の温度も低くなっている場合が多く、上昇の程度も小さい範囲で抑えられ易いが、例えば30〔℃〕以上のような場合には、上昇の程度が大きくなり易い。
【0106】
図17に示すグラフの例のように、変化率ΔA>0、変化率ΔB<ΔA、電力総和量ΣPB1<ΣPB2の関係の場合、変化率ΔAにより求められる温度TmpAが予測値の上限になり、変化率ΔBにより求められる温度TmpBが予測値の下限になり、平均値である温度TmpCが温度TmpAとTmpBの間に入ることになる。
電力総和量ΣPB1<ΣPB2の関係から、上記のように変化率が下限のΔBよりも上がることが想定されるが、装置周辺温度が低ければ、温度TmpAと温度TmpBの間である温度TmpCを予測温度とし、装置周辺温度が高ければ、より温度上昇し易くなるので、上限であるTmpAを予測温度とすれば、予測温度の上限と下限の範囲内で予測値の精度をより向上することができることになる。
【0107】
装置周辺温度、変化率、電力総和量の関係が図15に示すグラフとは異なる関係、すなわちΣPB1=ΣPB2、ΣPB1>ΣPB2、ΔA=0、ΔA<0などの場合についても、上記と同様の方法を用いて、それぞれの関係ごとに、予測温度の上限、下限、その平均のうち、どれを予測温度Tspに設定すれば、予測値の精度が上がるのかを予め決めておくことができる。図18は、その一例を示したものである。このように、装置周辺温度、変化率、電力総和量の組み合わせから温度を予測する方法をとることにより、例えば変化率ΔAだけを用いて温度を予測する方法に比べて、予測精度を向上することができる。
【0108】
なお、予測ポイントtaで、用紙到達ポイントtbにおけるスイッチ素子68の予測温度Tspを求めることができれば良く、実験などから装置周辺温度、変化率、電力総和量、予測温度を対応付けた情報を上記のように予めテーブル形式で記憶しておくとしても良いし、また、予め算出式を用意しておき、その算出式を用いて予測温度Tspを求めるとしても良い。さらに、装置構成によって、温度予測にほとんど影響を与えないのであれば、装置周辺温度と電力総和量の一方または両方を考慮しない構成および/または変化率ΔA〜ΔCのうち、1つだけを用いる構成や、温度TmpAとTmpBの間の値を予測温度とする構成などをとることもできる。
【0109】
さらに、予測ポイントtaにおいて、過去の温度推移として予測ポイントtaから時間αを遡った時点tcと、時間(α/2)を遡った時点tdを用いるとしたが、遡る時間の長さがαや(α/2)に限られることもない。過去の温度推移を取得できれば良く、例えば時間αに代えて、2αや3αなどとすることもできる。
図15に戻って、ステップS42では、スイッチ素子86の予測温度Tspが80〔℃〕未満か否かを判断する。ここで、予測温度Tsp<80〔℃〕であることを判断すると(ステップS42で「YES」)、予測ポイントta以降には通常制御を行い(ステップS43)、リターンする。通常制御は、電力制御部67により実行される。通常制御が実行される場合、画像形成動作が予定通り開始される。
【0110】
一方、スイッチ素子86の予測温度Tspが80〔℃〕以上であることを判断すると(ステップS42で「NO」)、スイッチ素子過昇温防止制御を実行して(ステップS44)、リターンする。
(7−2−2)スイッチ素子過昇温防止制御の内容
図19は、スイッチ素子過昇温防止制御のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。この制御は、電力制御部67により実行される。
【0111】
同図に示すように、予測温度Tspが100〔℃〕以上であるか否かを判断する(ステップS71)。
予測温度Tspが100〔℃〕以上ではない、すなわち80〔℃〕≦予測温度Tsp<100〔℃〕であることを判断すると(ステップS71で「NO」)、コイル供給電力制御を行って(ステップS72)、リターンする。コイル供給電力制御は、上記の第1制御に相当し、コイル供給電力制御と画像形成動作とが並行して実行されることになる。
【0112】
予測温度Tspが100〔℃〕以上であることを判断すると(ステップS71で「YES」)、ジョブ禁止判断処理を行う(ステップS73)。ジョブ禁止判断処理は、予測温度Tspが100〔℃〕以上の場合に、画像形成動作を一時停止させた後、画像形成動作を継続するか、禁止するかを判断する処理である。
ジョブの継続を判断すると(ステップS74で「NO」)、継続処理を行って(ステップS75)、コイル供給電力制御を行う(ステップS72)。一方、ジョブの禁止を判断すると(ステップS74で「YES」)、禁止処理を行って(ステップS76)、リターンする。ジョブ禁止判断処理(ステップS73)から禁止処理(ステップS76)までの制御は、上記の第2制御に相当する。
【0113】
なお、コイル供給電力制御(ステップS72)は、図12に示す予測ポイントへの到達の判断から(ステップS12で「YES」)、図15に示すスイッチ素子温度予測処理(ステップS41)を経て実行されるが、予測ポイントへの到達の判断からコイル供給電力制御が開始されるまでに要する時間は、制御部3に配されるCPUなどのICの処理速度によるが、長くても数ミリ秒程度であり、その時間を無視しても定着温調制御に影響を与えることがないので、ここではコイル供給電力制御の開始時を予測ポイントと同時とみなしている。このことは、ジョブ禁止判断処理(ステップS73)について同様である。
(7−2−3)コイル供給電力制御処理の内容
図20は、コイル供給電力制御処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。同図に示すように、第2タイマー59を起動して(ステップS101)、ステップS102に移る。これ以降、第2タイマー59のカウント値を参照することにより、予測ポイントtaからの経過時間を把握することができる。
【0114】
ステップS102では、予測ポイントtaから時間(α/4)が経過したか否かを判断する。この時間(α/4)は、図17に示す予測ポイントtaから時点teまでの時間に相当する。
時間(α/4)が未だ経過していないことを判断すると(ステップS102で「NO」)、電力指示値として最低設定電力をIH制御部88に指示して(ステップS103)、ステップS102に戻る。
【0115】
ここで、最低設定電力とは、励磁コイル131への供給電力の可変幅、例えば0〜1500(W)の範囲のうち、定着ローラ温度を最低限の温度、例えば50〔℃〕程度を維持するのに必要な電力、例えば100〔W〕程度をいう。最低設定電力を0〔W〕として電力供給を遮断するとしていないのは、次の理由による。
すなわち、電力供給を遮断すると、定着ローラ温度が大きく低下して、定着に必要な温度との差が大きくなってしまい、電力供給を再開してから、用紙到達ポイントtbにおいて定着に必要な温度まで定着ローラ温度を上昇させるのに要する時間が長くかかることが想定されるからである。なお、最低設定電力は、定着部2の構成によって変わるが、定着に必要な温度まで定着ローラ温度を上昇させるのに要する時間が短く済ませられるような場合には、電力供給を遮断して、スイッチ素子86のスイッチングを完全に停止するとしても良い。スイッチ素子86の放熱による冷却をより促進させることができる。
【0116】
IH制御部88は、定着温調制御部57から指示された電力指示値、ここでは最低設定電力が励磁コイル131に供給されるように、スイッチ素子86のスイッチングを制御するが、最低設定電力の場合、スイッチングのデューティ比も最小になるので、スイッチ素子86が正常であれば(短絡等の故障でなければ)、スイッチ素子86の温度が低下し始めることになる(図4(a)の一点鎖線Qを参照)。
【0117】
予測ポイントtaからの経過時間が(α/4)に達するまで、ステップS102、S103の処理が繰り返し実行され、最低設定電力が励磁コイル131に供給され続ける(図17の時間(α/4)の区間参照。)。これにより、スイッチ素子86の温度の低下が進むことになる。
時間(α/4)が経過したことを判断すると(ステップS102で「YES」)、時間(α/2)が経過したか否かを判断する(ステップS104)。
【0118】
時間(α/2)が未だ経過していないことを判断すると(ステップS104で「NO」)、設定電力可変処理1を実行して(ステップS105)、ステップS102に戻る。
図21は、設定電力可変処理1のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
同図に示すように、設定電力可変処理1は、まず現在のスイッチ素子86の温度(実測値)を取得し(ステップS121)、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上であるか否かを判断する(ステップS122)。
【0119】
スイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上であることを判断すると(ステップS122で「YES」)、電力指示値として最低設定電力をIH制御部88に指示して(ステップS123)、リターンする。
現在とは、予測ポイントtaから時間(α/4)を経過しているが、時間(α/2)には達していない時間帯に属し、この時間帯にスイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上ということは、未だスイッチ素子86の温度が高い状態にあることから、さらに温度を低下させるべく、最低設定電力を指示するものである。
【0120】
スイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上でない、すなわち80〔℃〕未満であることを判断すると(ステップS122で「NO」)、変数Px=最低設定電力値、Py=設定電力値×0.2を設定する(ステップS124)。
この設定電力値は、上記のように定着ローラ温度に対して予め設定されているコイル供給電力を示し、通常制御時に用いられる制御値である。定着ローラ温度と設定電力値とを対応付けた情報がROM53に予め格納されており、現在の定着ローラ温度を取得して、取得した定着ローラ温度に対応する設定電力値をROM53に格納されている情報から読み出すことにより、現在の定着ローラ温度に対する設定電力値を取得することができる。
【0121】
設定電力値に所定の係数、ここでは0.2を乗算するのは、次の理由による。
すなわち、予測ポイントtaから時間(α/4)を経過するまでの間、最低設定電力値と同等の電力しか励磁コイル131に供給されていなかったので、現時点では定着ローラ温度はかなり低下しているはずである。このように低下した定着ローラ温度に対する設定電力値は、定着に必要な温度域まで急上昇させるべく、ある程度、大きな電力値が対応付けされているが、このような大きな電力値の供給をこの時間帯で指示すると、スイッチ素子86の温度が上昇に転じるおそれがある。
【0122】
そこで、設定電力値をそのまま指示することに代えて、設定電力値に所定の係数(0よりも大きく1よりも小さい値)を乗算して、励磁コイル131への供給電力をある程度、抑えようとするものである。
ここでは、予測ポイントtaからの経過時間が(α/2)に至っていないので、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕より低くても、それに近い状態にあることが予想されるので、供給電力の抑制量を大きくとるべく、係数として0.2が設定されている。
【0123】
ステップS125では、PxとPyの大小を比較し、Px>Pyであれば(ステップS125で「YES」)、Px(=最低設定電力値)を電力指示値としてIH制御部88に指示して(ステップS123)、リターンする。また、Px>Pyではない、すなわちPx≦Pyであれば(ステップS125で「NO」)、Py(=設定電力値×0.2)を電力指示値としてIH制御部88に指示して(ステップS126)、リターンする。
【0124】
PxとPyの設定値のうち、大きい方を電力指示値として指示するようにしているのは、上記の最低設定電力値を設けた理由と同様に、定着ローラ温度を最低限の温度よりも下げないようにしつつ、大きい方の設定値を選択することにより、徐々に定着ローラ温度を上昇させようとするためである。
設定電力可変処理1は、予測ポイントtaからの経過時間が(α/4)から(α/2)までの時間帯(図17の時点teからtfまでの区間)において繰り返し実行される。これにより、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上が継続すれば、励磁コイル131への供給電力を低い値に維持してスイッチ素子86の温度を低下させ、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕より低くなれば、スイッチ素子86の温度が上昇に転じない範囲で、定着ローラ温度を徐々に上昇させることができるようになる。
【0125】
図20に戻って、時間(α/2)の経過を判断すると(ステップS104で「YES」)、時間(2α/3)が経過したか否かを判断する(ステップS106)。
時間(2α/3)が未だ経過していないことを判断すると(ステップS106で「NO」)、設定電力可変処理2を実行して(ステップS107)、ステップS102に戻る。
図22は、設定電力可変処理2のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【0126】
同図に示すように、設定電力可変処理2は、現在のスイッチ素子86の温度(実測値)を取得し(ステップS131)、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上であるか否かを判断する(ステップS132)。
スイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上であることを判断すると(ステップS132で「YES」)、変数Px=最低設定電力値、Py=設定電力値×0.5を設定する(ステップS133)。この設定電力値は、現在の定着ローラ温度に対応する設定電力値であり、設定電力可変処理1の場合と同様に、ROM53から読み出される。読み出された設定電力値に所定の係数、ここでは0.5が乗算されることにより、Pyが設定される。このPyの設定方法は、以降に説明するPyの設定方法にも同様に適用される。
【0127】
Px>Pyであれば(ステップS134で「YES」)、Px(=最低設定電力値)を電力指示値としてIH制御部88に指示して(ステップS135)、リターンする。
Px≦Pyであれば(ステップS134で「NO」)、Py(=設定電力値×0.5)を電力指示値としてIH制御部88に指示して(ステップS136)、リターンする。
PxとPyのうち、大きい方を電力指示値とする理由は、上記と同様である。
【0128】
現時点でスイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上になっている場合でも、これまでの間に電力指示値がかなり抑制されていたはずであるから、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上といっても低下傾向にあるはずであり、係数を少し大きくとっても増加に転じることが少ないと想定される。そこで、設定電力可変処理2では、設定電力可変処理1のときの係数(=0.2)よりも大きい値、ここでは0.5を係数にして、定着ローラ温度が低下しすぎないようにしている。
【0129】
なお、この時点で定着ローラ温度が高い場合には、その高い温度に対応する設定電力値は、逆に低い値になっているはずなので、係数がある程度、大きくなっても設定電力値自体が低い値なので、設定された電力指示値も大きな値にならず、定着ローラ温度が上がりすぎることが抑制される。
ステップS132において、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕未満であることを判断すると(ステップS132で「NO」)、変数Tr=定着ローラ温度、Tr1=定着下限温度を設定する(ステップS137)。この定着ローラ温度は、現在の定着ローラ温度(実測値)である。定着下限温度は、定着に必要な温度域の下限温度であり、予め決められている。定着に必要な温度域が175〜185〔℃〕であれば、定着下限温度は175〔℃〕になり、定着上限温度は185〔℃〕になる。
【0130】
Tr≧Tr1であれば(ステップS138で「YES」)、ステップS133に移る。Tr≧Tr1ということは、現時点で既に定着ローラ温度が定着下限温度以上であることになり、励磁コイル131への供給電力を大きくしすぎると、定着上限温度を超えることも想定される。そこで、ステップS133に移って供給電力を抑制するものである。
一方、Tr<Tr1であれば(ステップS138で「NO」)、変数Px=最低設定電力値、Py=設定電力値×0.7を設定する(ステップS139)。
【0131】
Px>Pyであれば(ステップS140で「YES」)、ステップS135に移る。Px≦Pyであれば(ステップS140で「NO」)、Py(=設定電力値×0.7)を電力指示値としてIH制御部88に指示して(ステップS141)、リターンする。これにより、PxとPyの設定値のうち、大きい方が電力指示値として指示される。
設定電力可変処理2は、予測ポイントtaからの経過時間が(α/2)から(2α/3)までの時間帯(図17の時点tfからtgまでの区間)において繰り返し実行される。
【0132】
これにより、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上が継続すれば、励磁コイル131への供給電力を低い値に維持してスイッチ素子86の温度を低下させ、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕より低くなり、定着ローラ温度も低くなっていれば、設定電力可変処理1よりも設定電力値に乗算される係数が大きくなっているので、図17の例に示すように励磁コイル131への供給電力がより多くなり、定着に必要な温度域に向けて定着ローラ温度を上昇させることができるようになる。
【0133】
図20に戻って、時間(2α/3)の経過を判断すると(ステップS106で「YES」)、時間(5α/6)が経過したか否かを判断する(ステップS108)。
時間(5α/6)が未だ経過していないことを判断すると(ステップS108で「NO」)、設定電力可変処理3を実行して(ステップS109)、ステップS102に戻る。
図23は、設定電力可変処理3のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【0134】
同図に示すように、設定電力可変処理3は、現在のスイッチ素子86の温度(実測値)を取得し(ステップS151)、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上であるか否かを判断する(ステップS152)。
スイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上であることを判断すると(ステップS152で「YES」)、変数Px=最低設定電力値、Py=設定電力値×0.8を設定する(ステップS153)。
【0135】
Px>Pyであれば(ステップS154で「YES」)、Px(=最低設定電力値)を電力指示値としてIH制御部88に指示して(ステップS155)、リターンする。
Px≦Pyであれば(ステップS154で「NO」)、Py(=設定電力値×0.8)を電力指示値としてIH制御部88に指示して(ステップS156)、リターンする。
なお、係数の値を設定電力可変処理2よりも大きな値にしているが、スイッチ素子86の温度が高く、定着ローラ温度も高いとすれば、上記と同様に設定電力値自体が低い値になるはずなので、定着ローラ温度が上がりすぎることは抑制される。
【0136】
スイッチ素子86の温度が80〔℃〕未満であることを判断すると(ステップS152で「NO」)、変数Tr=定着ローラ温度、Tr1=定着下限温度を設定する(ステップS157)。この定着ローラ温度は、設定電力可変処理2と同様に現在の定着ローラ温度(実測値)である。
Tr≧Tr1であれば(ステップS158で「YES」)、ステップS153に移る。設定電力可変処理2の場合と同様に、現時点で既に定着ローラ温度が定着下限温度以上なので、励磁コイル131への供給電力を大きくしすぎると、定着上限温度を超えることが想定されるからである。
【0137】
Tr<Tr1であれば(ステップS158で「NO」)、変数Px=最低設定電力値、Py=設定電力値×0.9を設定する(ステップS159)。
Px>Pyであれば(ステップS160で「YES」)、ステップS155に移る。Px≦Pyであれば(ステップS160で「NO」)、Py(=設定電力値×0.9)を電力指示値としてIH制御部88に指示して(ステップS161)、リターンする。これにより、PxとPyの設定値のうち、大きい方が電力指示値として指示される。
【0138】
設定電力可変処理3は、予測ポイントtaからの経過時間が(2α/3)から(5α/6)までの時間帯(図17の時点tgからthまでの区間)において繰り返し実行される。これにより、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕以上が継続すれば、励磁コイル131への供給電力を低い値に維持してスイッチ素子86の温度を低下させ、スイッチ素子86の温度が80〔℃〕より低くなり、定着ローラ温度がまだ低い状態であれば、設定電力可変処理2よりも設定電力値に乗算される係数が大きくなっているので、図17の例に示すように励磁コイル131への供給電力がさらに多くなり、定着に必要な温度域に向けて定着ローラ温度を上昇させることができるようになる。
【0139】
図20に戻り、時間(5α/6)の経過を判断すると(ステップS108で「YES」)、現在の定着ローラ温度に対する設定電力値を電力指示値としてIH制御部88に指示する(ステップS110)。設定電力値をそのまま電力指示値とすることは、上記の係数を1とする場合に相当する。時間αに到達していなければ(ステップS111で「NO」)、ステップS102に戻る。
【0140】
設定電力指示値を電力指示値として指示することは、予測ポイントtaからの経過時間が(5α/6)からαまでの時間帯(図17の時点thからtbまでの区間)において繰り返し実行される。経過時間が(5α/6)以降では、定着ローラ温度(実測値)に対する設定電力値がそのまま電力指示値とされるので、定着ローラ温度が定着下限温度よりも低ければ、励磁コイル131への供給電力が増大され、逆に定着ローラ温度が定着上限温度よりも高ければ、供給電力が抑制されることにより、用紙到達ポイントtbに至った時点で、定着ローラ温度が定着に必要な温度域に入るように制御される。
【0141】
用紙到達ポイントtbは、用紙Sの先端が定着ニップNに到達した時点に等しいので、定着ローラ温度が定着に必要な温度域に入るように制御されることにより、その用紙Sに対する定着を良好に行うことができる。
なお、用紙到達ポイントtbで定着ローラ温度が定着に必要な温度域に入るように、コイル供給電力、すなわちスイッチ素子86への供給電流が制御されれば良く、例えば経過時間や設定電力値に乗算する係数などが上記の値に限定されることはない。
【0142】
また、予測ポイントtaから用紙到達ポイントtbまでの時間αを5つの時間帯に分けて、それぞれの時間帯で、電力指示値を決めるとしたが、時間帯の数が上記に限られず、少ない数、または多い数としても良い。区分けされる時間帯の数がより多い方が、時間αの中で、よりきめ細かに電力指示値を決めてコイル供給電力を制御することができる。
時間αに到達したことを判断すると(ステップS111で「YES」)、第2タイマー59をリセットして(ステップS112)、リターンする。
(7−2−4)ジョブ禁止判断処理の内容
図24は、ジョブ禁止判断処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【0143】
同図に示すように、第2タイマー59を起動する(ステップS81)。これ以降、第2タイマー59のカウント値を参照することにより、予測ポイントtaからの経過時間を把握することができる。
そして、励磁コイル131への電力供給の停止をIH制御部88に指示する(ステップS82)。電力供給の停止の指示は、電力供給停止を示す情報を送信することにより行われる。IH制御部88は、電力供給の停止の指示を受け付けると、駆動回路87に対して直ちにスイッチ素子86のスイッチングを停止させる指示を行う。スイッチ素子86と駆動回路87が正常であれば、スイッチ素子86のスイッチングが停止されるので、スイッチ素子86の温度が低下することになる。
【0144】
なお、上記のようにスイッチ素子温度検出処理は、電源オン時に常時、実行されているので、ジョブ禁止判断処理の実行中にもスイッチ素子86の温度が所定周期ごとに検出され、検出温度が履歴として対応情報テーブル62に書き込まれる。従って、ジョブ禁止判断処理の実行中でも、ある時点において、ある時点までの過去のスイッチ素子86の変化率(温度推移)を算出することができる。
【0145】
続いて、画像形成動作の一時停止をプリント制御部56に対して指示する(ステップS83)。予測ポイントtaは、上記のように画像形成動作の開始(露光開始またはレジスト開始)の直前であるので、この時点では、未だ画像形成動作が開始されておらず、一時停止を指示することができる。
プリント制御部56は、画像形成動作の一時停止の指示を受け付けると、画像形成動作の開始を一時停止させる。これにより、カラーモードの場合には、Y色の露光開始が停止され、モノクロモードの場合には、用紙Sのレジスト開始が停止される。なお、画像形成動作の開始が一時停止するということは、露光や用紙Sのレジストだけでなく、帯電、現像、転写などの全ての工程が停止されることを意味する。
【0146】
予測ポイントtaからの経過時間が時間αに達したか否かを判断する(ステップS84)。時間αに達するまでステップS85に移らず(ステップS84で「NO」)、時間αに達するまでの間、スイッチ素子86のスイッチングの停止が指示されているので、スイッチ素子86の温度が低下するはずである。
時間αに達したことを判断すると(ステップS84で「YES」)、スイッチ素子温度再予測処理を実行する(ステップS85)。
【0147】
スイッチ素子温度再予測処理(以下、「再予測処理」と略す。)は、上記のスイッチ素子温度予測処理(ステップS41)と基本的に同じである。スイッチ素子温度予測処理では、予測ポイントtaで実行されたが、再予測処理は、予測ポイントtaから時間α経過時を新たな予測ポイントに置き換えて、その新たな予測ポイントにおいて実行される。
予測ポイントから時間α経過時が用紙到達ポイントtbになることは、上記と変わりはないので、上記の時点ta、tb、tc、tdが全て、時間αだけ後にずれた状態でスイッチ素子温度予測処理と同じ処理が実行されることになる。図6(c)の概念図に当てはめると、第2時点が新たな予測ポイントtaになり、第3時点が新たな用紙到達ポイントtb(予測対象時点)に置き換わることに相当する。
【0148】
再予測処理(ステップS85)の実行により、スイッチ素子温度予測処理(ステップS41)で決定された予測温度が再予測処理で決定された予測温度に更新される。
再予測処理によるスイッチ素子86の予測温度tspが100〔℃〕以上であるか否かを判断する(ステップS86)。
スイッチ素子86の予測温度tspが100〔℃〕未満であることを判断すると(ステップS86で「NO」)、フラグFを1に設定して(ステップS87)、ステップS89に移る。一方、スイッチ素子86の予測温度tspが100〔℃〕以上であることを判断すると(ステップS86で「YES」)、フラグFを0に設定して(ステップS88)、ステップS89に移る。フラグFは、図19のステップS74において、ジョブXが禁止か継続かを判断するための情報として用いられ、フラグFが1の場合、ジョブXの継続が判断され、フラグFが0の場合、ジョブXの禁止が判断される。
【0149】
ステップS89では、第2タイマー59をリセットした後、リターンする。
なお、上記では、ステップS85の再予測処理を予測ポイントtaから時間αが経過した時点で行うとしたが、これに限られない。スイッチ素子86の再度の温度予測を行うのに適したタイミングであれば良い。例えば、時間(α/2)の経過時や時間2αの経過時などとすることもできる。再予測処理を実行するまでの時間が長ければ長いほど、スイッチ素子86の温度が低下するのに要する時間をより長くとれるが、それだけ画像形成動作の一時停止の解除が遅れるので、スイッチ素子86の温度低下と画像形成動作の開始時期とを比較考慮することにより、その時間の長さが決められる。
(7−2−5)継続処理の内容
図25は、継続処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【0150】
同図に示すように、励磁コイル131への電力供給の一時停止を解除する(ステップS171)。この解除は、IH制御部88に対して一時停止の解除を指示することにより行われる。IH制御部88は、一時停止の解除の指示を受け付けると、定着温調制御部57からの電力指示値に基づく励磁コイル131への電力供給を再開して、一時停止の前に実行していた制御と同様の制御に戻る。
【0151】
そして、プリント制御部56に対し、ジョブXに対する画像形成動作の一時停止の解除と画像形成動作の開始とを指示して(ステップS172)、リターンする。
プリント制御部56は、この指示を受け付けると画像形成動作の一時停止を解除して、ジョブXに係る画像形成動作を開始する。
なお、コイル供給電力と画像形成動作の開始は、新たな予測ポイントに到達した時点(図24のステップS84で「YES」の判断時)の直後ということになるが、新たな予測ポイントに到達した時点から、コイル供給電力の開始や画像形成動作の開始を指示するまでに要する処理時間が制御部3の処理速度にもよるが、長くても数ミリ秒程度しか掛からないので、ここでは画像形成動作の開始時とコイル供給電力制御処理の開始時を、新たな予測ポイントと同時とみなすことにしている。
【0152】
図19において継続処理(ステップS75)の次に、コイル供給電力制御処理(ステップS72)が実行されると、画像形成動作に並行して、新たな予測ポイントから時間αが経過する時点(新たな用紙到達ポイント)までの間において、図20に示すコイル供給電力制御により励磁コイル131への供給電力が制御され、新たな用紙到達ポイントに達する時点で、定着ローラ温度を定着に必要な温度域に昇温させることができる。これにより、ジョブXを継続して実行することができる。
【0153】
そして、用紙到達ポイントは、用紙Sの先端が定着ニップNに到達した時点に等しいので、定着ローラ温度が定着に必要な温度域に入っていることにより、その用紙Sに対する定着を良好に行うことができる。
(7−2−6)禁止処理の内容
図26は、禁止処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【0154】
同図に示すように、励磁コイル131への電力供給の一時停止を継続したまま(ステップS181)、プリントジョブ実行の禁止をプリント制御部56に指示すると共に(ステップS182)、スイッチ素子86の高温異常が発生した旨をCPU52に通知して(ステップS183)、リターンする。
禁止処理が行われる場合は、ジョブXを一時停止させて、スイッチ素子86の温度を低下させるための時間を確保しても、まだ予測温度が100〔℃〕以上になっている場合であるから、例えばスイッチ素子86や駆動回路87の故障などが考えられる。
【0155】
プリント制御部56は、プリントジョブ実行の禁止の指示を受け付けると、それまでの一時停止を解除して、次に禁止の解除を受け付けるまで、全てのプリントジョブの実行を禁止する。CPU52は、スイッチ素子86の高温異常発生の通知を受け付けると、操作パネル4の液晶ディスプレイにスイッチ素子86に異常が発生した旨をメッセージ等で警告表示させてユーザに通知する。
【0156】
サービスマンなどによりスイッチ素子86の異常が解消されると、励磁コイル131への電力供給の一時停止が解除されると共に、プリントジョブ実行の禁止が解除されることにより、プリントジョブが実行可能な状態に復帰する。この場合、ジョブXがプリントジョブの禁止判断時に保留状態にされ、プリントジョブが実行可能な状態に復帰すると、その保留が解除されて、ジョブXが最初からやり直しされるとしても良いし、ジョブXが禁止判断時に削除されるとしても良い。
【0157】
以上、説明したように、スイッチ素子86の予測温度が所定温度である第1温度Ts1以上のときには、予測ポイントtaでスイッチ素子86の実際の温度が第1温度Ts1以上でなくても、そのまま何もしなければ温度が上昇し続けて、用紙到達ポイントtbで第1温度Ts1以上になる蓋然性が高いとして、予測ポイントtaからスイッチ素子86のスイッチングを制限してスイッチ素子86の温度を低下させる。
【0158】
その後、スイッチングの制限を解除して、用紙到達ポイントtbに到達する時点で定着ローラ温度が定着に必要な温度になるように、励磁コイル131への供給電力を制御する。なお、この制御には、スイッチングの制限を解除してからそれ以降に、励磁コイル131への供給電力を増加させることが含まれるのはもちろんのこと、定着ローラ温度が高い場合には励磁コイル131への供給電力を低減させることも含まれる。
【0159】
上記のような制御を行うことにより、スイッチ素子86の過昇温の防止と、定着ニップNを通過する用紙Sへの定着性の低下を防止することができる。
また、スイッチ素子86の温度予測を、画像形成動作の開始直前に行うので、スイッチ素子86の予測温度が上限値を超える場合に、その画像形成動作の開始を一時停止させて、直ぐにスイッチ素子86のスイッチングを制限することによりスイッチ素子86の温度が低下するのを待つことができる。
【0160】
スイッチ素子86の予測温度が上限値(Ts2)を超えるような場合は、スイッチ素子86の温度が上がり易い状態、例えばプリンタの設置場所の温度が低温から高温に急上昇した場合に、その温度上昇に伴ってプリンタ内部の温度も上昇し、プリンタ内部に配されているIH電源駆動部80の周辺温度も上昇している場合などが想定される。
上記のようにIH電源駆動部80の周辺温度が低ければスイッチ素子86の放熱が促進されるためにスイッチ素子86の温度が下がり易くなるが、その周辺温度が高くなれば、それだけスイッチ素子86の温度が下がり難くなる。従って、スイッチ素子86のスイッチングを制限しても、スイッチ素子86の温度が直ぐに低下するとは限らず、スイッチ素子86の温度の低下には、ある程度の時間を要することが多くなる。
【0161】
例えば、画像形成動作が開始された後にスイッチ素子86の温度予測を行う場合、温度予測の直後にスイッチ素子86のスイッチングの制限を開始しても、スイッチ素子86の温度が上昇から下降に転じるのに時間がかかり、用紙Sの先端が定着ニップNに到達した時点で、スイッチングの制限が解除されずに継続したままになっていることもあり得る。
スイッチングの制限が継続したままになっていれば、定着ローラ温度も低くなっていることがほとんどのはずなので、用紙Sに対して定着に必要な熱を与えることができず、熱定着が十分でなくなり、定着不良になるおそれが生じる。
【0162】
これに対して、スイッチ素子86の温度予測を画像形成動作の開始直前に行えば、画像形成動作の開始を一時停止させることができるので、スイッチ素子86の温度の低下に時間がかかっても、スイッチ素子86の温度が低下してから、画像形成動作を開始させることにより、上記の定着不良の発生を防止することができる。
なお、スイッチ素子86の温度予測を画像形成動作の開始後に行うとしても、装置構成によってはスイッチ素子86のスイッチングの制限によりスイッチ素子86の温度を直ぐに低下させることができる場合もあり得る。このことからすれば、スイッチ素子86の温度予測が画像形成動作の開始直前に行われることに限定されることはなく、例えば画像形成動作の開始直後にスイッチ素子86の温度予測が行われるとしても良い。すなわち、スイッチ素子86の温度予測と画像形成動作の開始とが同時であっても良いし、順番が入れ替わっても良い場合もあり得ることになる。
【0163】
上記では、スイッチ素子86の温度を予測する予測ポイントを画像形成動作の開始時より数ミリ秒前の時点に設定したが、これに限られず、例えば数秒前などとしても良い。なお、温度予測を画像形成動作の開始時よりも早くしすぎると、温度予測時と画像形成動作の開始時との時間差の分だけ、温度予測に用いる過去の温度推移の情報が画像形成動作の開始直前に予測する場合よりも古い時間の温度情報になるので、予測結果の精度が低下し易くなる。このため、画像形成動作の開始時よりも前に予測ポイントを設定する場合には、プリント部1に対する停止指示により画像形成動作の開始を一時停止させることが可能な、画像形成動作の開始時に最も近い時点を画像形成動作の開始直前として、予測ポイントに設定することが好ましい。
【0164】
温度予測結果の精度向上という点からすれば、画像形成動作の開始時から用紙到達ポイントまでの間で、用紙到達ポイントにより近い時点に予測ポイントを設定することが考えられる。用紙到達ポイントでのスイッチ素子86の温度を予測するのであるから、用紙到達ポイントにより近い時点で予測を行った方が予測結果の誤差が少なくなるからである。
しかしながら、定着温調制御は、予測ポイントでスイッチ素子86の温度を予測するだけでなく、予測ポイント後に、スイッチ素子86のスイッチングの制限を行い、その後、制限を解除して、用紙到達ポイントに到達するときに定着ローラ温度が定着に必要な温度になるように励磁コイル131への供給電力量を制御するものなので、予測ポイントから用紙到達ポイントまでの時間が極端に短すぎると、制御自体を行えないおそれが生じる。
【0165】
そこで、上記の制御を実行可能な時間を確保しつつ、温度予測結果の精度を許容できる範囲が装置構成に応じて実験などから求められ、その範囲内、例えば画像形成動作の開始時またはこれの直近の時点に予測ポイントが設定されることになる。
本発明は、画像形成装置に限られず、上記の定着温調制御を行う画像形成方法であるとしてもよい。また、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。また、本発明に係るプログラムは、例えば磁気テープ、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD−ROM、DVD−RAM、CD−ROM、CD−R、MO、PDなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。
【0166】
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態では、予測ポイント決定処理において、カラーモードとモノクロモードのうち、実行するモードに対応する予測ポイントを決定するとしたが、例えばカラーモードとモノクロモードのいずれか一方のモードしか行えない構成の場合には、そのモードに対応する予測ポイントを予め決めておくことができるので、予測ポイント決定処理を行わない構成とすることができる。
【0167】
(2)また、上記実施の形態では、カラーモードの場合、Y色の露光開始から中間転写ベルト21上に形成された画像の先端が二次転写位置25に到達するまでに要する時間を第1時間、モノクロモードの場合、K色の露光開始から中間転写ベルト21上に形成された画像の先端が二次転写位置25に到達するまでに要する時間を第2時間、レジスト開始からその用紙Sの先端が二次転写位置25に到達するまでに要する時間を第3時間としたとき、第1時間>第3時間>第2時間の関係を有することから、カラーモードではY色の露光開始時が画像形成動作時の開始時になり、予測ポイントをY色の露光開始時直前に設定し、モノクロモードではレジスト開始時が画像形成動作時の開始時になり、予測ポイントをレジスト開始時直前に設定したが、例えば第2時間<第3時間であれば、モノクロモードにおいて予測ポイントがK色の露光開始時直前に設定される。また、例えば第1時間=第3時間であれば、予測ポイントをY色の露光開始時直前に設定しても良い。
【0168】
(3)上記実施の形態では、カラーモードがY〜K色のトナー像から形成される場合を前提にした例を説明したが、例えばY色以外のM、C、K色だけで画像形成が実行される場合もあり得る。この場合には、中間転写ベルト21の周回方向の最上流に位置する作像部10MによるM色の露光開始時と、レジスト開始時のうち、上記の時間の長くなる方の直前が予測ポイントに設定される。C、K色による画像形成の場合も同様に、最上流に位置するC色の露光開始時と、レジスト開始時のうち、上記の時間の長くなる方の直前が予測ポイントに設定される。
【0169】
すなわち、カラーモードにおいて、使用する感光体ドラム11Y〜11Cのうち、最上流に位置する感光体ドラムが11Yの場合、11Mの場合、11Cの場合のそれぞれについて、最上流の感光体ドラムの露光位置で形成された画像がその最上流の感光体ドラムの一次転写位置で中間転写ベルト21に一次転写され、中間転写ベルト21上に一次転写された画像の先端が中間転写ベルト21の周回走行により移動して二次転写位置25に到達するまでに要する時間と、二次転写位置25に向けて搬送されるシートの搬送開始からそのシートの先端が二次転写位置25に到達するまでに要する時間との大小関係から、最上流の感光体ドラムに対する露光開始直前とレジスト開始直前のうち、その時間の長くなる方が予測ポイントに予め設定される。
【0170】
このようにすれば、ジョブ毎に、カラーモードにおいて、最上流に位置する感光体ドラムが11Y〜11Cのどれになるかを判断することにより、予測ポイントを、最上流の感光体ドラムに対する露光開始直前とレジスト開始直前のいずれかに切り替えることができ、どのモード(どの作像部が最上流になる場合)であっても、スイッチ素子86の過昇温防止と定着性の低下の抑制を図ることができるようになる。
【0171】
なお、最上流に位置する感光体ドラムの判断は、例えば実行すべきプリントジョブの画像データに、(a)Y色の画像形成のためのデータが含まれている場合には、最上流に位置する感光体ドラムを11Yとし、(b)Y色のデータが含まれておらず、M色のデータが含まれている場合には11Mとし、(c)Y色とM色のデータが含まれておらず、C色のデータが含まれている場合には11Cと判断する方法が考えられる。
【0172】
(4)また、レジスト開始時とは、レジストローラ対33により用紙Sを二次転写位置25に送り出すタイミングのことであるが、例えばレジストローラ対33を備えておらず、二次転写位置25に送り出すタイミングを、別の搬送部材、例えば繰り出しローラ31などでとるような構成であれば、その別の搬送部材による用紙Sの搬送開始時と、露光開始時のうち、上記の時間の長くなる方を予測ポイントに設定することができる。この意味で、レジスト開始時に限定されることはない。
【0173】
(5)上記実施の形態では、本発明に係る画像形成装置をタンデム型カラーデジタルプリンタに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、スリーブ112などの定着部材に設けられた電磁誘導発熱層121を励磁コイル131から発せられる磁束により発熱させ、搬送されるシート上の未定着画像を定着部材の熱により当該シートに定着する電磁誘導加熱方式の定着部を有する画像形成装置であれば、例えば複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。定着部材としては、ベルト状に限られず、ローラやドラム状であっても良い。
【0174】
モノクロの画像形成装置に適用する場合、像担持体としての感光体ドラム上の形成画像が感光体ドラムの転写位置で、搬送されるシートに転写される構成になり、感光体ドラム表面に形成された画像先端が感光体ドラムの露光位置からドラム回転方向に転写位置に到達するまでに要する時間を第1時間、転写位置に向けて搬送されるシートの先端がその搬送開始から転写位置に到達するまでに要する時間を第2時間としたとき、第1時間≧第2時間の場合には、画像形成動作の開始時が露光開始時になり、露光開始時直前が予測ポイントに設定され、第1時間<第2時間の場合には、画像形成動作の開始時がレジスト開始時になり、レジスト開始時直前が予測ポイントに設定される。
【0175】
像担持体は、トナーなどからなる画像を未定着画像として表面に担持する機能を有するものであれば、感光体ドラムに限られず、例えば感光体ベルトなどであっても良い。また、中間転写体の一例としての中間転写ベルト21も像担持体の1つといえ、ベルト状のものに限られず、例えばドラム状のものなどを用いるとしても良い。
中間転写体を像担持体の1つとする場合、複数の感光体が中間転写体の周回方向に沿って間隔をおいて列設されてなるタンデム型のカラー画像形成装置において、その複数の感光体と1つの中間転写体とが像担持体に含まれる構成ととらえることもできる。
【0176】
さらに、上記の実施の形態では、制御部3とIH制御部88とが別の構成であったが、これらが一体になった制御部であっても良いし、定着温調制御部57にIH制御部88が組み込まれる構成であっても良い。なお、上記の温度、電力、時間などの値が上記の数値に限られないことはいうまでもなく、装置構成に応じてそれぞれ適した値が決められる。
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、定着部材に設けられた電磁誘導発熱層を励磁コイルからの磁束により発熱させ、搬送されるシート上の未定着画像を定着部材の熱により当該シートに定着する画像形成装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0178】
2 定着部
3 制御部
10 作像部
11Y、11M、11C、11K 感光体ドラム
18Y、18K 露光位置
21 中間転写ベルト
25 二次転写位置
29 装置周辺温度検出センサ
34 レジストローラニップ
56 プリント制御部
57 定着温調制御部
58 第1タイマー
59 第2タイマー
61 SW素子温度検出部
63 予測ポイント決定部
65 SW素子温度予測部
67 電力制御部
80 IH電源駆動部
86 スイッチ素子
88 IH制御部
89 スイッチ素子温度検出センサ
101 定着ローラ
103 励磁コイル
104 ローラ温度検出センサ
121 電磁誘導発熱層
α 時間
N 定着ニップ
S シート
ta 予測ポイント(第1時点)
tb 用紙到達ポイント(第2時点)
Tsp スイッチ素子の予測温度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルに流れる電流をスイッチ素子でスイッチングして、励磁コイルから磁束を発生させ、定着部材に設けられた電磁誘導発熱層を前記励磁コイルから発生される磁束により発熱させて、搬送されるシート上の未定着画像を定着部材の熱により当該シートに定着する画像形成装置であって、
定着部材の温度を検出する検出手段と、
スイッチ素子の時系列的な温度推移を求める算出手段と、
搬送されるシートの搬送方向先端が定着部材に到達する予定の第2時点よりも所定時間前の第1時点において、第1時点までのスイッチ素子の温度推移に基づいて第2時点でのスイッチ素子の温度を予測する予測手段と、
スイッチ素子の予測温度が所定値以上の場合、第1時点から第2時点までの間に、スイッチ素子のスイッチングを制限した後、前記制限を解除して、第2時点に至るときに、検出される定着部材の温度が定着に必要な温度になるように、励磁コイルへの供給電力を制御する第1制御を実行する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
像担持体上に画像を形成すると共に、シートを像担持体の転写位置に向けて搬送し、像担持体上の画像を未定着画像として、搬送されるシート上に転写位置で転写し、転写後のシートを定着部材に搬送する画像形成動作を行うプリント部を備え、
前記第1時点は、前記画像形成動作の開始時よりも前であり、
前記制御手段は、
スイッチ素子の予測温度が前記所定値よりも高い上限値以上の場合、第1制御に代えて、プリント部に画像形成動作の開始を一時停止させると共に、スイッチ素子のスイッチングを制限する第2制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1時点は、
プリント部に対する指示により画像形成動作の開始を停止可能な、画像形成動作の開始時に最も近い所定の時点であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記予測手段は、
画像形成動作の開始を一時停止した後の時点Aにおいて、時点Aまでのスイッチ素子の温度推移に基づいて、一時停止されている画像形成動作が開始されたと仮定したときにその画像形成動作により定着部材に向けて搬送されるシートの搬送方向先端が定着部材に到達する予定の時点Bでのスイッチ素子の温度を再び予測し、
前記制御手段は、
再予測されたスイッチ素子の予測温度が上限値未満である場合、第2制御を止めて、プリント部に画像形成動作を開始させると共に、前記スイッチングの制限を解除して、時点Bに至ったときに定着部材の温度が定着に必要な温度になるように、励磁コイルへの供給電力を制御することを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
再予測されたスイッチ素子の予測温度が上限値以上である場合、プリント部に画像形成動作を禁止させることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成動作を、第1と第2の画像形成モードに切り替えて実行可能であり、
像担持体は、複数の感光体と周回走行する1つの中間転写体とを含み、
前記像担持体への画像の形成は、
第1画像形成モードでは、帯電された複数の感光体を露光して、複数の感光体上に静電潜像を作像し、その静電潜像を現像した後、それぞれの感光体上に形成された画像をその感光体の一次転写位置で中間転写体上に多重転写することにより行われ、
第2画像形成モードでは、1つの感光体だけが使用され、帯電された感光体を露光して、感光体上に静電潜像を作像し、その静電潜像を現像した後、感光体上に形成された画像を感光体の一次転写位置で中間転写体上に転写することにより行われ、
前記シート上への画像の転写は、中間転写体上の画像が中間転写体の二次転写位置でシートに二次転写されることにより行われ、
第1画像形成モードにおいて、使用される複数の感光体のうち、中間転写体の周回方向最上流に位置する感光体への露光開始から当該感光体上の画像の先端が二次転写位置に到達するまでに要する第1時間と、第2画像形成モードにおいて、1つの感光体への露光開始から当該感光体上の画像の先端が二次転写位置に到達するまでに要する第2時間と、シートの、二次転写位置に向けての搬送開始から、当該搬送されるシートの搬送方向先端が二次転写位置に到達するまでに要する第3時間との間に、第1時間>第3時間>第2時間の関係がある場合、
前記画像形成動作の開始時とは、
第1画像形成モードが実行される場合には、第1感光体への露光開始時であり、
第2画像形成モードが実行される場合には、シートの搬送開始時であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像担持体への画像の形成は、
帯電された像担持体を露光して、像担持体上に静電潜像を作像し、その静電潜像を現像することにより行われ、
像担持体への露光開始から像担持体上の画像の先端が転写位置に到達するまでに要する時間を第1時間、シートの、転写位置に向けての搬送開始から、当該搬送されるシートの搬送方向先端が転写位置に到達するまでに要する時間を第2時間としたとき、
前記画像形成動作の開始時とは、
第1時間≧第2時間の場合には、像担持体への露光開始時であり、第1時間<第2時間の場合には、シートの搬送開始時であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
スイッチ素子のスイッチングの制限を、第1時点直後から所定時間に亘って、励磁コイルに対する最低の供給電力として予め決められている電力が励磁コイルに供給されるようにスイッチングを行う、またはスイッチングを停止させることにより行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記算出手段は、
スイッチ素子の温度推移としてスイッチ素子の温度変化率を求め、
前記予測手段は、
スイッチ素子の温度を予測する時点をa、時点aよりも後であり温度の予測対象時点をb、時点aよりも前の時点をcとしたとき、
時点cから時点aまでの間のスイッチ素子の変化率で、スイッチ素子の温度が時点aから時点bまでの間に変化すると仮定した場合の当該時点bでのスイッチ素子の温度TmpAを算出して、算出した温度TmpAをスイッチ素子の予測温度とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記予測手段は、
時点cから時点aまでの間の時点をdとしたとき、
さらに、時点dから時点aまでの間のスイッチ素子の変化率で、スイッチ素子の温度が時点aから時点bまでの間に変化すると仮定した場合の当該時点bでのスイッチ素子の温度TmpBを算出し、
前記温度TmpAと温度TmpBの間の値をスイッチ素子の予測温度とすることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記予測手段は、
前記温度TmpAと温度TmpBの平均値を温度TmpC、
時点cから時点dまでの間に励磁コイルに供給された電力量の総和をΣ1、
時点dから時点aまでの間に励磁コイルに供給された電力量の総和をΣ2としたとき、
電力量の総和Σ1、Σ2の大小関係に基づいて、温度TmpA、温度TmpB、温度TmpCのうち、いずれか1つをスイッチ素子の予測温度とすることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記予測手段は、
装置周辺温度を取得し、
電力量の総和Σ1、Σ2の大小関係と、取得した装置周辺温度に基づいて、温度TmpA、温度TmpB、温度TmpCのいずれか1つをスイッチ素子の予測温度とすることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
励磁コイルに流れる電流をスイッチ素子でスイッチングして、励磁コイルから磁束を発生させ、定着部材に設けられた電磁誘導発熱層を前記励磁コイルから発生される磁束により発熱させて、搬送されるシート上の未定着画像を定着部材の熱により当該シートに定着する画像形成装置における画像形成方法であって、
定着部材の温度を検出する検出ステップと、
スイッチ素子の時系列的な温度推移を求める算出ステップと、
搬送されるシートの搬送方向先端が定着部材に到達する予定の第2時点よりも所定時間前の第1時点において、第1時点までのスイッチ素子の温度推移に基づいて第2時点でのスイッチ素子の温度を予測する予測ステップと、
スイッチ素子の予測温度が所定値以上の場合、第1時点から第2時点までの間に、スイッチ素子のスイッチングを制限した後、前記制限を解除して、第2時点に至るときに、検出される定着部材の温度が定着に必要な温度になるように、励磁コイルへの供給電力を制御する制御ステップと、
を含むステップを実行することを特徴とする画像形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−226171(P2012−226171A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94422(P2011−94422)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】