説明

画像形成装置および電圧制御プログラム

【課題】クリーニングブレードの捲れや鳴きを防止すると共に、良好な画質を維持することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成処理を行う際に、各静電潜像保持手段(感光体ドラム12)について、駆動手段(駆動部71)による駆動後に、直流帯電手段(帯電器13)による帯電バイアス(印加電圧Vdc)の印加で各静電潜像保持手段の表面電位を帯電電位Vhまで上げる前および駆動手段の停止に伴う静電潜像保持手段の停止前に、クリーニングフィールド電圧Vclnで一時的に保持するように電圧を制御する制御手段(電圧制御装置72)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および電圧制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式等を採用したカラープリンタや複合機等の画像形成装置としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(YMCK)等の各単色トナー像を形成する4つの画像形成ユニットを並列的に配置し、これらの各画像形成ユニットで順次形成されるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各単色トナー像を、中間転写ベルト上に一旦多重に転写し、この中間転写ベルトから印刷用紙等の記録媒体上に一括して転写し、記録媒体上にトナー像を定着することによって、カラー画像を形成するように構成されたものがある。
【0003】
また、上記の画像形成装置に搭載される静電潜像保持手段としての感光体の表面には、例えば有機系または無機系の感光層が形成されている。
【0004】
この感光体の表面は、各種部材、例えば帯電ローラ、現像ローラ、転写ベルト、クリーニングブレードなどと物理的に接触している。
【0005】
ところで、感光体とクリーニングブレードとの摩擦抵抗力が増大するとクリーニングブレードが振動して騒音(鳴り)を生じたり、クリーニングブレード自体の変形(めくれ)や破損を発生したり、感光体のトルク上昇により駆動系に不具合を生じ、画質に影響を与える虞がある。
【0006】
また、放電を帯電原理とする接触帯電方式で、バイアスを帯電部材に供給する帯電装置に関して、バイアスとして直流電圧を印加する方法や直流電圧に交流電圧を重畳する方法が知られている。
【0007】
直流電圧と交流電圧を重畳する方法は、直流電圧を印加する方法に比べ、感光体表面上を均一に帯電させることができる。また、交流成分により除電効果を上げるが、交流電圧が大きすぎると感光体の磨耗に影響が出てきてしまう。感光体を長寿命化させるためには直流電圧を印加する方法がよいが、交流成分による除電効果は得られず、所定の電位まで落とすのに時間がかかり残留電位が安定せず、次の帯電サイクルへ影響を及ぼし、画質に影響を与える虞がある。
【0008】
このような不具合を解消すべく種々の技術が提案されている。
【0009】
例えば、特許第3086138号公報では、帯電器とは別に感光体−GND間の電流を調整することの出来る機構を設けることで、作像動作時の感光体駆動停止前にカブリトナーを感光体へ供給するタイミングを設けており、クリーニングブレードの捲れや鳴きを防止している。
【0010】
また、特開平10−69194号公報には、感光体ドラム上を均一に除電するために、一旦帯電した後に、感光体ドラムを露光する前露光方式を採用した技術が開示されている
【0011】
また、特開平9−244353号公報には、安価な直流電圧電源でも感光体表面の帯電電位を検出する手段を持ち、使用環境及び経時変化に関わらず、安定した帯電電位が得られるようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3086138号公報
【特許文献2】特開平10−69194号公報
【特許文献3】特開平9−244353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、クリーニングブレードの捲れや鳴きを防止すると共に、良好な画質を維持することのできる画像形成装置および電圧制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、請求項1の発明に係る画像形成装置は、画像情報に基づいて形成される静電潜像を保持する複数の静電潜像保持手段と、当該複数の静電潜像保持手段に対応して設けられ、各静電潜像保持手段を直流電圧で帯電する複数の直流帯電手段と、前記複数の静電潜像保持手段に対応して設けられ、各静電潜像保持手段の表面に形成された静電潜像を現像剤を用いて現像する複数の現像手段と、前記直流帯電手段または前記複数の現像手段に電圧を供給する電圧供給手段と、前記複数の静電潜像保持手段を単一の電動機で駆動させる駆動手段と、前記各静電潜像保持手段に残存する現像剤を清掃するクリーニング手段と、画像形成処理を行う際に、前記各静電潜像保持手段について、前記駆動手段による駆動後に、前記直流帯電手段による帯電バイアス(印加電圧Vdc)の印加で前記各静電潜像保持手段の表面電位を帯電電位Vh(印加電圧Vdcと放電開始電圧Vαとの差分)まで上げる前および前記駆動手段の停止に伴う前記静電潜像保持手段の停止前に、クリーニングフィールド電圧(前記クリーニング手段に印加されるクリーニングバイアスの直流成分)Vcln(なお、Vcln=Vh−Vb 但し、Vbは現像バイアス電圧)で一時的に保持するように電圧を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明に係る画像形成装置は、請求項1に記載の発明について、前記制御手段は、前記各静電潜像保持手段について、表面電位が前記帯電電位Vhに達するまで、第1段から第N段(但し、Nは整数)の複数段階で電圧を上げると共に、当該帯電電位Vhから前記第1段から第N段(但し、Nは整数)の複数段階で電圧を下げるように制御することを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明に係る画像形成装置は、請求項2に記載の発明について、前記直流帯電手段に印加する直流電圧と前記各静電潜像保持手段に帯電される電位とに基づいて、前記第N段の段数を算出する算出手段を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明に係る画像形成装置は、請求項2または請求項3の何れかに記載の発明について、前記直流帯電手段に印加する直流電圧と前記各静電潜像保持手段に帯電される電位とに基づいて、前記第1段から第N段の各段の電位を決定する決定手段をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明に係る画像形成装置は、請求項2から請求項4の何れかに記載の発明について、前記直流帯電手段に印加する直流電圧と前記各静電潜像保持手段に帯電される電位とに基づいて、前記第1段から第N段にわたる帯電に要する時間を算定する算定手段をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明に係る画像形成装置は、請求項2から請求項5の何れかに記載の発明について、前記制御手段は、前記第1段から第N−1段の何れかにおける電位をクリーニングフィールド電圧Vcln以下として一時的に保持するように電圧を制御することを特徴とする。
【0020】
請求項7の発明に係る電圧制御プログラムは、画像形成処理を行う際に、各静電潜像保持手段について、駆動手段による駆動後に、直流帯電手段による帯電バイアス(印加電圧Vdc)の印加で前記各静電潜像保持手段の表面電位を帯電電位Vh(印加電圧Vdcと放電開始電圧Vαとの差分)まで上げる前および前記駆動手段の停止に伴う前記静電潜像保持手段の停止前に、クリーニングフィールド電圧(クリーニング手段に印加されるクリーニングバイアスの直流成分)Vcln(なお、Vcln=Vh−Vb 但し、Vbは現像バイアス電圧)で一時的に保持するように電圧を制御する制御過程を演算手段に実行させることを特徴とする。
【0021】
請求項8の発明に係る電圧制御プログラムは、各静電潜像保持手段について、表面電位が前記帯電電位Vhに達するまで、第1段から第N段(但し、Nは整数)の複数段階で電圧を上げると共に、当該帯電電位Vhから前記第1段から第N段(但し、Nは整数)の複数段階で電圧を下げるように制御する制御過程を演算手段に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0023】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、直流帯電手段の現像剤による汚染を抑えながら、静電潜像保持手段とクリーニング手段との間の摩擦上昇に起因する鳴き、捲れ、駆動手段のトルク上昇を抑えることのできる画像形成装置を提供することができる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、残留電位を安定させて良好な画質を維持することのできる画像形成装置を提供することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、残留電位をより安定させて良好な画質を維持することのできる画像形成装置を提供することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、残留電位を一層安定させて良好な画質を維持することのできる画像形成装置を提供することができる。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、残留電位をより一層安定させて良好な画質を維持することのできる画像形成装置を提供することができる。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、直流帯電手段の現像剤による汚染を抑えながら、静電潜像保持手段とクリーニング手段との間の摩擦上昇に起因する鳴き、捲れ、駆動手段のトルク上昇を効率的に抑えることのできる画像形成装置を提供することができる。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、直流帯電手段の現像剤による汚染を抑えながら、静電潜像保持手段とクリーニング手段との間の摩擦上昇に起因する鳴き、捲れ、駆動手段のトルク上昇を抑えることのできる電圧制御プログラムを提供することができる。
【0030】
請求項8に記載の発明によれば、残留電位を安定させて良好な画質を維持することのできる電圧制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置PR1の概略構成を示す構成図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成装置PR1の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】電位を階段状に変化させる状態を示す説明図である。
【図4】カブリトナー量とクリーニングフィールド電圧Vclnとの関係を示すグラフである。
【図5】帯電器のトナーによる汚染量とカブリトナー量との関係を示すグラフである。
【図6】実施の形態に係る画像形成装置PR1におけるプリントタイミングダイヤグラムである。
【図7】電位を階段状に変化させる状態を示す説明図である。
【図8】電位を階段状に変化させる状態を示す説明図である。
【図9】電位を階段状に変化させる状態を示す説明図である。
【図10】電圧制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】電圧制御の具体例を示す表である。
【図12】電圧制御の具体例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一例としての実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0033】
図1から図12を参照して、本発明についての実施の形態に係る画像形成装置PR1について説明する。
【0034】
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置PR1の全体構成の一例を示した図である。
【0035】
図1に示す画像形成装置PR1は、コピー機能やプリンタ機能を有するいわゆるタンデム型の複合機であり、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成プロセス部10と、画像形成装置PR1全体の動作を制御する制御部30とを備えている。
【0036】
また、画像形成装置PR1は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)3や画像読取装置(スキャナ)4等の外部装置に接続され、これらから受信された画像データに対して所定の画像処理を施す画像処理部35と、各部に電力を供給する電源装置70(電圧供給手段の一例)とを備えている。
【0037】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔を置いて並列的に配置される複数の画像形成ユニット11Y、11M、11C、11K(以下、総称して単に「画像形成ユニット11」とも称する)を備えている。
【0038】
各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する静電潜像保持手段の一例としての感光体ドラム12Y、12M、12C、12K(以下、総称して単に「感光体ドラム12」とも称する)と、感光体ドラム12の表面を直流電圧によって最終的に帯電電位Vhまで帯電する帯電器13Y、13M、13C、13K(以下、総称して単に「帯電器13」とも称する)(直流帯電手段の一例)とを備えている。
【0039】
各画像形成ユニット11は、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を画像データに基づいて露光する露光装置の一例としてのLEDプリントヘッド(LPH)14と、感光体ドラム12上に形成された静電潜像を現像する現像装置15Y、15M、15C、15K(以下、総称して単に「現像装置15」とも称する)(現像手段の一例)と、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するクリーニングブレード16Y、16M、16C、16K(以下、総称して単に「クリーニングブレード16」とも称する)(クリーニング手段の一例)とを備えている。
【0040】
なお、クリーニングブレード16は、クリーニングバイアスの印加により各感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kの表面に残存するトナー(現像剤の一例)を除去するものである。
【0041】
ここで、各画像形成ユニット11は、現像装置15に収納されるトナーを除いて、略同様に構成されている。
【0042】
各画像形成ユニット11は、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
【0043】
画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色トナー像が多重転写される転写ベルトの一例としての中間転写ベルト20と、各画像形成ユニット11による各色トナー像を中間転写ベルト20に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール21とを備えている。
【0044】
また、画像形成プロセス部10は、中間転写ベルト20上に転写された重畳トナー像を記録媒体である印刷用紙に一括転写(二次転写)させる二次転写ロール22と、二次転写された画像を用紙上に定着させる定着器60とを備えている。
【0045】
ここで、各画像形成ユニット11において、感光体ドラム12は、画像形成装置PR1に対して着脱自在に構成され、感光体ドラム12の寿命等に応じて交換される。
【0046】
なお、各画像形成ユニット11において、感光体ドラム12と帯電器13とクリーニングブレード16とは一体化されたモジュールで構成され、感光体ドラム12の寿命等に応じて交換可能な構成としてもよい。
【0047】
また、図2の機能ブロック図に示すように、画像形成装置PR1は、感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kを単一のモータ(電動機)Mで駆動させるギア列等を有する駆動部71(駆動手段の一例)を備えている。
【0048】
さらに、マイクロコンピュータ等で構成される電圧制御装置72を備え、画像形成処理を行う際に、感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kについて、駆動部71による駆動後に、帯電器13Y、13M、13C、13Kによる帯電バイアス(印加電圧Vdc)の印加で感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kの表面電位を帯電電位Vh(印加電圧Vdcと放電開始電圧Vαとの差分)まで上げる前および駆動部71の停止に伴う感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kの停止前に、クリーニングフィールド電圧(クリーニングブレード16に印加されるクリーニングバイアスの直流成分)Vcln(なお、Vcln=Vh−Vb 但し、Vbは現像バイアス電圧)で一時的に保持するように電圧を制御するようになっている。
【0049】
また、電圧制御装置72は、感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kについて、表面電位が前記帯電電位Vhに達するまで、第1段から第N段(但し、Nは整数)の複数段階で電圧を上げると共に、当該帯電電位Vhから前記第1段から第N段(但し、Nは整数)の複数段階で電圧を下げるように制御してもよい。
【0050】
なお、帯電器13Y、13M、13C、13Kに印加する直流電圧と感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kに帯電される電位とに基づいて、前記第N段の段数を算出する段数算出部73(算出手段の一例)を備えるようにしてもよい。
【0051】
また、帯電器13Y、13M、13C、13Kに印加する直流電圧と感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kに帯電される電位とに基づいて、前記第1段から第N段の各段の電位を決定する電位決定部74(決定手段の一例)をさらに備えるようにしてもよい。
【0052】
また、帯電器13Y、13M、13C、13Kに印加する直流電圧と感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kに帯電される電位とに基づいて、前記第1段から第N段にわたる帯電に要する時間を算定する帯電時間算定部75(算定手段の一例)をさらに備えるようにしてもよい。
【0053】
また、電圧制御装置72は、前記第1段から第N−1段の何れかにおける電位をクリーニングフィールド電圧Vcln以下として一時的に保持するように電圧を制御するようにしてもよい。
【0054】
これにより、帯電器13Y、13M、13C、13Kのトナーによる汚染を抑えながら、感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kとクリーニングブレード16Y、16M、16C、16Kとの間の摩擦上昇に起因する鳴き、捲れ、駆動部71のトルク上昇に伴う不具合の発生が抑えられる。
【0055】
また、感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kの表面電位を複数段階で上昇および下降させることにより、残留電位を安定させて良好な画質が維持される。
【0056】
上述のような構成の画像形成装置PR1では、PC3や画像読取装置4から入力された画像データは、画像処理部35によって画像処理が施され、インターフェースを介して各画像形成ユニット11に供給される。
【0057】
そして、例えば黒(K)色の画像形成ユニット11Kでは、感光体ドラム12が矢印A方向に回転しながら、帯電器13により所定電位で帯電され、画像処理部35から送信された画像データに基づいて発光するLPH14により露光される。
【0058】
それにより、感光体ドラム12上には、黒(K)色画像に関する静電潜像が形成される。
【0059】
そして、感光体ドラム12上に形成された静電潜像は現像装置15により現像され、感光体ドラム12上には黒(K)色のトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11Y、11M、11Cにおいても、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナー像が形成される。
【0060】
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、矢印B方向に移動する中間転写ベルト20上に、一次転写ロール21により順次静電吸引されて、各色トナーが重畳された合成トナー像が形成される。
【0061】
中間転写ベルト20上の合成トナー像は、中間転写ベルト20の移動に伴って二次転写ロール22が配置された領域(二次転写部T)に搬送される。
【0062】
合成トナー像が二次転写部Tに搬送されると、トナー像が二次転写部Tに搬送されるタイミングに合わせて印刷用紙が用紙保持部40から二次転写部Tに供給される。
【0063】
そして、二次転写部Tにて二次転写ロール22により形成される転写電界により、合成トナー像は搬送されてきた印刷用紙上に一括して静電転写される。
【0064】
その後、合成トナー像が静電転写された印刷用紙は、中間転写ベルト20から剥離され、定着器60まで搬送される。
【0065】
定着器60に搬送された印刷用紙上の合成トナー像は、定着器60によって熱および圧力による定着処理を受けて印刷用紙上に定着される。
【0066】
そして、定着画像が形成された印刷用紙は、画像形成装置PR1の排出部に設けられた排紙積載部45に搬送される。
【0067】
一方、二次転写後に中間転写ベルト20に付着しているトナー(転写残トナー)は、二次転写の終了後に中間転写ベルト20表面からベルトクリーナ25によって除去され、次の画像形成サイクルに備えられる。
【0068】
このようにして、画像形成装置PR1での画像形成がプリント枚数分のサイクルだけ繰り返して実行される。
【0069】
次に、図3から図12を参照して、画像形成装置PR1が備える電圧制御装置72による電圧制御について説明する。
【0070】
図3に示す例では、感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kの表面電位を帯電電位Vh(印加電圧Vdcと放電開始電圧Vαとの差分;この例では、Vh=750V)まで上げるのにステップS1〜S5の5段階にわたって150Vずつ電圧を上げている。
【0071】
そして、第1段(ステップS1)において、クリーニングフィールド電圧(クリーニングブレード16に印加されるクリーニングバイアスの直流成分)Vcln(なお、Vcln=Vh−Vb 但し、Vbは現像バイアス電圧;この例では、Vcln=150V)で一時的(例えば、150ms)に保持するように制御している。
【0072】
なお、図3に示す例では、第1段(ステップS1)においてクリーニングフィールド電圧Vclnで一時的に保持しているが、これに限定されず、ステップS1〜S4(即ち、N=5とすると、N−1=4の第4段(ステップS4)まで)の何れかにおいて、クリーニングフィールド電圧Vclnで一時的に保持することも考えられる。
【0073】
また、図3に示す例では、VhからステップS6〜S10の5段階にわたって150Vずつ電圧を下げている。
【0074】
そして、駆動部71のモータMの停止に伴う感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kの停止前に、第10段(ステップS10)において、クリーニングフィールド電圧Vclnで一時的(例えば、150ms)に保持するように制御している。
【0075】
なお、図3に示す例では、第10段(ステップS10)においてクリーニングフィールド電圧Vclnで一時的に保持しているが、これに限定されず、ステップS6〜S10の何れかにおいて、クリーニングフィールド電圧Vclnで一時的に保持することも考えられる。
【0076】
ここで、感光体ドラム12のカブリトナー量とクリーニングフィールド電圧Vclnとの関係を図4のグラフに示す。
【0077】
図4のグラフを見ると分かるように、Vclnが高くなるに連れて感光体ドラム12のカブリトナー量が少なくなっている。
【0078】
そして、感光体ドラム12のカブリトナー量が少なくなると、感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kとクリーニングブレード16Y、16M、16C、16Kとの間の摩擦上昇に起因して鳴き、捲れ、駆動部71のトルク上昇に伴う不具合を生じる虞がある。
【0079】
一方、帯電器13のトナーによる汚染量とカブリトナー量との関係を図5のグラフに示す。
【0080】
図5のグラフを見ると分かるように、カブリトナー量が増えていくと、ある限界点Bを境にして帯電器13のトナーによる汚染量が急激に上昇している。
【0081】
そして、帯電器13のトナーによる汚染量が増加すると、画像にスジが入るなど画質が低下してしまうという不都合を生じる。
【0082】
そこで、本実施の形態に係る画像形成装置PR1では、図3に示すように、電圧を印加する第1段(ステップS1)と第10段(ステップS10)において、クリーニングフィールド電圧Vclnで一時的に保持することにより、感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kの表面に適度なカブリトナーを供給すると共に、帯電器13のトナーによる汚染量の増加を抑えて、感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kとクリーニングブレード16Y、16M、16C、16Kとの間の摩擦上昇を抑制している。
【0083】
これにより、クリーニングブレード16Y、16M、16C、16Kの鳴き、捲れあるいは駆動部71のトルク上昇に伴う不具合の発生が抑制される。
【0084】
また、図6には画像形成装置PR1におけるプリントタイミングダイヤグラムを示す。
【0085】
現像装置15Y、15M、15C、15Kへの電圧印加を共通とした場合に、現像、感光体への電圧の印加タイミングを揃えているため、感光体ドラム12の無駄な回転として領域A1、A2の部分が発生してしまっている。
【0086】
現像への電圧印加のタイミングをずらす機能を有する場合には、領域A3を領域A4に移動可能であるので、感光体ドラム12の無駄な回転は領域A5に発生する。
【0087】
なお、K色に関しては、印刷ジョブの終了時のバイアスオフタイミングが異なる関係で、印刷ジョブの終了時のクリーニングフィールド電圧Vclnオフからの期間が短いため、印刷ジョブ開始時のクリーニングフィールド電圧Vclnは印加していない。
【0088】
また、領域A1、A2の部分では、濃度調整用のパッチパターンの作成や、各エンジンで作像したイメージの位置ズレを調整するためのパターンの作成が可能であり、また、感光体ドラム12とクリーニングブレード16との間に介在するトナーおよび外添剤が少ないと判断した時に、トナーを送り込むトナーバンドの形成も可能である。
【0089】
但し、トナーバンドで送り込んだ場合には、少ない量のトナーをある程度の期間の間に送り込めないため、電圧印加時のクリーニングフィールド電圧Vclnを利用したトナーの送り込みの方が好ましい。
【0090】
次に、図7から図12を参照して、電圧制御装置72による他の電圧制御の例について説明する。
【0091】
図7に示す電圧制御の例では、段数算出部73によって、帯電器13Y、13M、13C、13Kに印加する直流電圧と感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kに帯電される電位とに基づいて、前記第N段の段数を算出している。
【0092】
具体的には、最適な画質とするために感光体ドラム12に対する所定の電位を算出し、その算出された電位に基づいて、いくつのステップ(段数)で落としていくかを算出する。
【0093】
図7の例では、所定の電位が500Vのときに、ステップS21〜ステップS25の5ステップ(5段階)で帯電を落としている。
【0094】
図8に示す電圧制御の例では、電位決定部74によって、帯電器13Y、13M、13C、13Kに印加する直流電圧と感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kに帯電される電位とに基づいて、前記第1段から第N段の各段の電位を決定している。
【0095】
具体的には、最適な画質とするために感光体ドラム12に対する所定の電位を算出し、その算出された電位に基づいて、各ステップ(各段)の電位を算出している。
【0096】
図8の例では、所定の電位が500Vで、5ステップ(5段階)で落とすときに、400V、300V、200V、100V、50Vの順で落としている。
【0097】
図9に示す電圧制御の例では、帯電時間算定部75によって、帯電器13Y、13M、13C、13Kに印加する直流電圧と感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kに帯電される電位とに基づいて、前記第1段から第N段にわたる帯電に要する時間を算定している。
【0098】
具体的には、最適な画質とするために感光体ドラム12に対する所定の電位を算出し、その算出された電位に基づいて、各ステップ(各段)の時間を算出している。
【0099】
図9に示す例では、所定の電位が500Vで、5ステップ(5段階)で落とすときに、各ステップを100msで落としている。
【0100】
図7から図9に示すように、階段状に帯電しながら落とすことにより、残留電位が安定し、次の帯電サイクルへの影響もなく、良好な画質が維持される。
【0101】
次に、図10のフローチャートを参照して、本実施の形態に係る画像形成装置PR1で実行される電圧制御処理の処理手順について説明する。
【0102】
ステップS100では、帯電電位Vhの設定値を決定してステップS101に移行する。
【0103】
ステップS101では、電圧の階段制御(複数段階の制御)の第1段目のクリーニングフィールド電圧Vclnを固定値で設定する。この際に、カブリトナーが発生する値で設定するとよい。
【0104】
ステップS102では、A=(Vh設定値−第1段目のクリーニングフィールド電圧Vcln)を算出してステップS103に移行する。
【0105】
ステップS103では、ステップで変化させていく電位は、80〜130VとしてステップS104に移行する。なお、設定する帯電電位Vhの範囲や、直流電源(電源装置70)の精度などにより前記電位を決定するようにしてもよい。
【0106】
ステップS104では、ステップ数(段数)の最適値を算出してステップS105に移行する。
【0107】
ステップS105では、各ステップ(各段)の電位設定値を決定して処理を終了する。
【0108】
ここで、図11と図12に、前記電圧制御処理による処理例を示す。
【0109】
図11では、Vh設定値を800V、クリーニングフィールド電圧Vclnを150Vとした場合の処理例である。
【0110】
この場合には、A=800−150=650Vとなり、650/130=5により、5段階(5ステップ)で電位を上げていく。
【0111】
ステップS1〜S6までの各電位は図11に示すような値となる。
【0112】
図12では、Vh設定値を470V、クリーニングフィールド電圧Vclnを150Vとした場合の処理例である。
【0113】
この場合には、A=470−150=320Vとなり、320/80=4により、4段階(4ステップ)で電位を上げていく。
【0114】
ステップS1〜S5までの各電位は図12に示すような値となる。
【0115】
このような処理結果に基づいて、図3、図7〜図9に示すような階段状の電圧制御が実現される。
【0116】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈すべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0117】
また、プログラムを用いる場合には、ネットワークを介して提供し、或いはCD−ROM等の記録媒体に格納して提供することが可能である。
【0118】
即ち、画像処理プログラムを含む所定のプログラムを記録媒体としてのハードディスク等の記憶装置に記録する場合に限らず、当該所定のプログラムを次のようにして提供することも可能である。
【0119】
例えば、所定のプログラムをROMに格納しておき、CPUが、この所定のプログラムをこのROMから主記憶装置へローディングして実行するようにしてもよい。
【0120】
また、上記所定のプログラムを、DVD−ROM、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、フレキシブルディスク、などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布するようにしてもよい。
【0121】
さらには、画像形成装置等を通信回線(例えばインターネット)を介してサーバ装置あるいはホストコンピュータと接続するようにし、サーバ装置あるいはホストコンピュータから上記所定のプログラムをダウンロードした後、この所定のプログラムを実行するようにしてもよい。この場合、この所定のプログラムのダウンロード先としては、RAM等のメモリやハードディスクなどの記憶装置(記録媒体)が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明による画像形成装置および電圧制御プログラムは、プリンタや複合機等に適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
PR1 画像形成装置
3 PC
4 画像読取装置
10 画像形成プロセス部
11 画像形成ユニット
12 感光体ドラム
13 帯電器
15 現像装置
16 クリーニングブレード
20 中間転写ベルト
21 一次転写ロール
22 二次転写ロール
25 ベルトクリーナ
30 制御部
35 画像処理部
40 用紙保持部
45 排紙積載部
60 定着器
70 電源装置
71 駆動部
72 電圧制御装置
73 段数算出部
74 電位決定部
75 帯電時間算定部
M モータ
T 二次転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に基づいて形成される静電潜像を保持する複数の静電潜像保持手段と、
当該複数の静電潜像保持手段に対応して設けられ、各静電潜像保持手段を直流電圧で帯電する複数の直流帯電手段と、
前記複数の静電潜像保持手段に対応して設けられ、各静電潜像保持手段の表面に形成された静電潜像を現像剤を用いて現像する複数の現像手段と、
前記直流帯電手段または前記複数の現像手段に電圧を供給する電圧供給手段と、
前記複数の静電潜像保持手段を単一の電動機で駆動させる駆動手段と、
前記各静電潜像保持手段に残存する現像剤を清掃するクリーニング手段と、
画像形成処理を行う際に、前記各静電潜像保持手段について、前記駆動手段による駆動後に、前記直流帯電手段による帯電バイアス(印加電圧Vdc)の印加で前記各静電潜像保持手段の表面電位を帯電電位Vh(印加電圧Vdcと放電開始電圧Vαとの差分)まで上げる前および前記駆動手段の停止に伴う前記静電潜像保持手段の停止前に、クリーニングフィールド電圧(前記クリーニング手段に印加されるクリーニングバイアスの直流成分)Vcln(なお、Vcln=Vh−Vb 但し、Vbは現像バイアス電圧)で一時的に保持するように電圧を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記各静電潜像保持手段について、表面電位が前記帯電電位Vhに達するまで、第1段から第N段(但し、Nは整数)の複数段階で電圧を上げると共に、当該帯電電位Vhから前記第1段から第N段(但し、Nは整数)の複数段階で電圧を下げるように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記直流帯電手段に印加する直流電圧と前記各静電潜像保持手段に帯電される電位とに基づいて、前記第N段の段数を算出する算出手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記直流帯電手段に印加する直流電圧と前記各静電潜像保持手段に帯電される電位とに基づいて、
前記第1段から第N段の各段の電位を決定する決定手段をさらに備えることを特徴とする請求項2または請求項3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記直流帯電手段に印加する直流電圧と前記各静電潜像保持手段に帯電される電位とに基づいて、
前記第1段から第N段にわたる帯電に要する時間を算定する算定手段をさらに備えることを特徴とする請求項2から請求項4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記第1段から第N−1段の何れかにおける電位をクリーニングフィールド電圧Vcln以下として一時的に保持するように電圧を制御することを特徴とする請求項2から請求項5の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像形成処理を行う際に、各静電潜像保持手段について、駆動手段による駆動後に、直流帯電手段による帯電バイアス(印加電圧Vdc)の印加で前記各静電潜像保持手段の表面電位を帯電電位Vh(印加電圧Vdcと放電開始電圧Vαとの差分)まで上げる前および前記駆動手段の停止に伴う前記静電潜像保持手段の停止前に、クリーニングフィールド電圧(クリーニング手段に印加されるクリーニングバイアスの直流成分)Vcln(なお、Vcln=Vh−Vb 但し、Vbは現像バイアス電圧)で一時的に保持するように電圧を制御する制御過程を、
演算手段に実行させることを特徴とする電圧制御プログラム。
【請求項8】
各静電潜像保持手段について、表面電位が前記帯電電位Vhに達するまで、第1段から第N段(但し、Nは整数)の複数段階で電圧を上げると共に、当該帯電電位Vhから前記第1段から第N段(但し、Nは整数)の複数段階で電圧を下げるように制御する制御過程を、
演算手段に実行させることを特徴とする電圧制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−99917(P2011−99917A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253110(P2009−253110)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】