説明

画像形成装置における排熱機構

【課題】画像形成装置における排熱のための占有スペースを小さくし、これにより、画像形成装置をコンパクト化する。
【解決手段】画像形成装置内において、回転体10を回転可能に支持するすべり軸受け部30aをヒートパイプ30で構成する一方、当該ヒートパイプ30にヒートシンク20を連結する。回転体10に生じる熱は、ヒートパイプ30を介してヒートシンク20に運ばれ、ここから排熱される。軸受け部30a自身が直接ヒートパイプ30で構成されているため、排熱機構と軸受け機構が一体化され、これにより、部品点数および製造工程の削減、コストダウンを達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置内に保持される回転体(感光ドラム、定着ローラ等)に生じる熱を排熱する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機等の画像形成装置内には、感光ドラム、定着ローラ、その他多くの回転体が回転可能に支持されている。一般的に、これらの回転体には高い熱が発生し、また、回転可能に支持する手段として滑り軸受けを採用する場合には、軸受部における回転摩擦によっても熱が発生する。
【0003】
これらの熱を装置外に排出する排熱機構が種々提案されている。特許文献1では、支持される回転体の軸に羽根車を取り付けるとともに、これを支持する軸受けに通気孔を設ける構成を採用している。これにより、回転体とともに羽根車が回転し、発生した気流が通気孔を通して外部に排出され、排熱が行われる。
しかしながら、上記特許文献1に開示された構成では、回転体と同軸状に気流を発生させる羽根車が別途必要となり、装置のコンパクト化の妨げとなる。
【0004】
一方、特許文献2には、加熱ローラ(回転体)を内蔵する定着器に発生する熱をヒートパイプで遮熱機構にまで導き、ここから放熱フィンおよびファンを利用して装置外へと排熱する機構が開示されている。
特許文献2においても、回転体を支持する定着器とは別個に、ヒートパイプ等を設ける必要があり、やはり装置のコンパクト化の妨げとなる。
【0005】
【特許文献1】特開平9−257048号公報
【特許文献2】特開2003−91189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の事情に鑑み、本発明の目的は、画像形成装置における排熱のための占有スペースを小さくし、これにより、画像形成装置をコンパクト化すること、あるいは同装置内のスペースを有効に利用して、大型化を招くことなく多機能化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、以下の特徴を備えた排熱機構が提供される。
本発明の排熱機構においては、画像形成装置内において、回転体を回転可能に支持する軸受け部をヒートパイプで構成する一方、当該ヒートパイプにヒートシンクを連結している。回転体に生じる熱は、ヒートパイプを介してヒートシンクに運ばれ、そこから排熱される。
本発明において「回転体」とは、画像形成装置内に回転可能に支持される、あらゆる回転体を意味しており、例えば、感光ドラム、定着ローラ、歯車等を代表例として挙げることができる。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を備えた本発明の排熱機構によれば、軸受け部自身を直接ヒートパイプで構成しているので、排熱機構と軸受け機構が一体化される。したがって、部品点数および製造工程の削減、およびコストダウンを達成することができる。
本発明の排熱機構は、軸受け部としてすべり軸受けを採用する場合に特に有効である。すべり軸受けは、転がり軸受けに比べて、多くの摩擦熱を発生させるからである。ただし、転がり軸受けであっても、当然に熱は発生するので、転がり軸受けに対して本発明を適用することも可能である。
また、すべり軸受けは、転がり軸受けに比べて低コストであり、それ故、装置のコンパクト化、低コスト化という点で好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の排熱機構が適用可能な画像形成装置の一例について、その全体構成を説明している。概要を簡単に説明すると、次の通りである。
【0010】
Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(黒)のそれぞれについて、画像形成ユニットが個別に設けられていて、Y1、M1、C1、K1は、それぞれ感光体ドラムを示している。不図示の読取り装置から送られた画像信号は、各色毎に、感光体ドラムと一次転写ローラの間を通過する中間転写ベルトに転写される。
中間転写ベルトは、駆動ローラ、テンションローラ、ガイドローラ等、多数のローラによって、適度なテンションを維持しつつ回転駆動される。画像は、2次転写ローラによって、中間転写ベルトから印刷紙等に転写され、定着器で定着させた後、出力される。
なお、Y2、M2、C2、K2は、それぞれ、各色についてのトナーボトルである。
【0011】
このように、画像形成装置内には、ドラム、ローラ、歯車等、回転可能に支持された多くの回転体が存在する。本発明は、これらの回転体に発生する熱を外部へ排熱する機構に関する。
本発明の排熱機構は、画像形成装置内で回転可能に支持されるあらゆる回転体に対して適用可能である。以下には、回転体である定着ローラ10を例にとって、本発明を具体的に説明する。定着ローラ10以外の回転体についても、同様に本発明を適用することができる。
【0012】
≪第1実施形態:U字状≫
図2は、定着器を構成する定着ローラ10を回転可能に支持する機構を示している。定着ローラ10は、円筒状の部材であって、シャフト11を中心として回転する。定着ローラ10は、U字状に加工したヒートパイプ30によって、回転可能に支持されている。すなわち、すべり軸受け部30aをヒートパイプ30で構成している。
ヒートパイプ30は、定着器のケーシングの一部を構成するフレーム材41、42に対して、ブラケット50を用いて面一状に固定されている。また、ヒートパイプ30は、下方に設置したヒートシンク20に連結されている。
【0013】
図2(b)中に、部分的に拡大して示したように、シャフト11には樹脂製のリング部材12が固着されていて、このリング部材12は、シャフト11とともに回転する。
ヒートパイプ30は、U字状に成型加工された箇所30aにおいて、リング部材12を支持しており、これにより、定着ローラ10が回転可能に支持されることとなる。
【0014】
なお、定着ローラ10を定位置に保持するために、上方から板材(保持部材)15で固定している。詳細は図示していないが、板材15は、ヒートパイプ30にネジ止め固定されていて、定着ローラ10の上方への位置ズレを防いでいる。板材15としては、適宜の材質を使用することができるが、摩擦抵抗の小さいセラミック等が好ましい。
【0015】
図示した例では、すべり軸受け部30aをヒートパイプ30で構成しているので、定着ローラ10に発生した熱(特に、回転摩擦により発生した熱)は、ヒートパイプ30により、ヒートシンク20まで運ばれ、ここから放熱される。
このように、軸受け部自身を直接ヒートパイプで構成することにより、排熱機構と軸受け機構が一体化され、部品点数および製造工程を減じ、コストダウンを達成することが可能となる。
【0016】
特に、図示した例では、定着器のケーシングの一部を構成するフレーム材41、42は、1つのフレーム材を切り欠いたように、一定間隔をおいて面一に配置されている。そして、両フレーム材41、42に対して面一となるように、当該面内にヒートパイプ30を湾曲して延在させている。このようにスペースを有効利用することで、装置の小型化を達成することができ、ダウンサイジングという観点から極めて有利である。
【0017】
なお、図2に示した例では、ヒートパイプ30をU字状に加工し、当該U字の谷部に定着ローラ10を支持している。U字状のメリットとして、「ヒートパイプの成形加工が容易」、「定着ローラ10を組み付けるのが容易」等を挙げることができる。ただし、定着ローラ10を定位置に固定するために、保持部材(板材15)を別途使用することが必要となる。
【0018】
図2では、図中手前側のすべり軸受け部に対して、本発明の排熱機構を適用した例を示している。反対側の端部における軸受け機構は図示していないが、同様の、あるいは他の適当な軸受け機構を利用して、回転可能に支持する。
【0019】
≪第2実施形態:リング状≫
図3は、ヒートパイプ30をリング状に加工して、当該リング状30bの箇所で定着ローラ10を支持している点において、第1実施形態と異なる。
すなわち、図3中に拡大して示したように、ヒートパイプ30は、ここに直接当接するリング部材12に対して180°を超える角度範囲で円弧状に延在するように湾曲加工されていて、これがすべり軸受け部30bを構成している。
【0020】
第1実施形態のU字状ヒートパイプでは、定着ローラ10を定位置で回転可能に支持するために、板材15を使用していた。しかし、リング状ヒートパイプを使用する第2実施形態では、別部材を使用しなくとも、定着ローラ10を定位置に固定できる。
【0021】
ただ、リング状ヒートパイプの場合、定着ローラ10のリング部材12を軸方向から挿通して軸受け部30bに組み付けることが必須となり、組付け工程がある程度制限されることとなる。
【0022】
≪その他≫
図示した例では、フレーム材41、42と面一にヒートパイプ30を配置し、定着ローラ10の下方側に配置したヒートシンク20へと熱を運んでいる。しかし、具体的な各部材の配置は、本発明において特に限定されるものではない。また、ヒートパイプ30自体についても、ウィック式、サーモサイホン式、自励振動式等の従来知られたヒートパイプを適宜使用することができる。
【0023】
以上には、すべり軸受け部を例にとって本発明を説明したが、転がり軸受けに対しても本発明の排熱機構を適用可能である。その場合、例えば、図2のU字状箇所3aまたは図3のリング状箇所3bにベアリングを固定し、このベアリングを介して、定着ローラ10のシャフト11を保持する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明が適用可能な画像形成装置の全体構成を説明する図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る排熱機構を説明する図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る排熱機構を説明する図。
【符号の説明】
【0025】
10 定着ローラ(回転体)
15 板材(保持部材)
20 ヒートシンク
30 ヒートパイプ
30a U字状部分(すべり軸受け部)
30b リング状部分(すべり軸受け部)
41、42 フレーム材
50 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置内において、回転体を回転可能に支持する軸受け部をヒートパイプで構成する一方、当該ヒートパイプにヒートシンクを連結し、
回転体に生じる熱を、ヒートパイプを介してヒートシンクに運び、排熱することを特徴とする、排熱機構。
【請求項2】
上記ヒートパイプで構成される軸受け部はU字形状であって、当該U字の谷部で回転体を支持するとともに、
回転体をU字の谷部に位置決めする保持部材を備えたことを特徴とする、請求項1記載の排熱機構。
【請求項3】
上記ヒートパイプで構成される軸受け部は、回転体との当接部に沿って180°を超える角度範囲で円弧状に延在する湾曲部で構成されることを特徴とする、請求項1記載の排熱機構。
【請求項4】
上記ヒートパイプは、ケーシングを構成するフレーム材と面一となる面内に延在していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の排熱機構。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−237033(P2009−237033A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80028(P2008−80028)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】