説明

画像形成装置及びそのプログラム

【課題】色調整用チャートで選んだ色を実際の画像の中に配置したときの違和感をなくす。
【解決手段】印刷システムでは、ユーザーPCがインクジェットプリンターにチャートAの印刷指示を出力することにより、インクジェットプリンターがチャートAを印刷する。チャートAは、ラベル画像を実際に使用するときの大きさで表したもの(色見本という)を、横方向に4つ、縦方向に4つ、合計16個並べたものである。このチャートAでは、すべての色見本A11〜A44の第2及び第3領域84a,86aは、取得したラベル画像の第2領域84a及び第3領域86aに塗られた色のままである。一方、第1領域82aは、パッチ領域であり、すべての色見本A11〜A44で微妙に色が異なる。すなわち、右方向に沿ってシアン(C)の階調値が徐々に変化し、下方向に沿ってマゼンタ(M)の階調値が徐々に変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置としては、正確なカラーマッチングを簡単に行うことができるものが知られている。例えば、特許文献1では、印刷に使用する画像形成装置からRGB値がリンクされているカラーパレットチャートを出力させ、出力サンプルから所望の色を選択し、その色にリンクしたRGB値をユーザーカラー登録で入力するものが提案されている。こうした画像形成装置では、該装置が実際に出力したサンプル色を見ながら、その装置が出力する印刷色の指定を行うことが可能となり、その装置で実際に印刷されたありのままの色を直接指定することができる。ここで、カラーパレットチャートは、例えば、色相を一定値とした場合に、縦方向に明度の数値を10間隔、横方向に彩度の数値を10間隔でパッチを並べた一覧表として印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−129549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したカラーパレットチャートは、一色に塗りつぶされたパッチを並べたものであるため、次のような問題があった。すなわち、自分の所望する色とパッチの色とを合わせた後、そのパッチの色を実際の画像の中に入れたとき、周囲の色や模様などの影響によってパッチで見たときの色と変わって見えることがあり、違和感を覚えることがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、色調整用チャートで選んだ色を実際の画像の中に配置したときの違和感をなくすことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の画像形成装置は、
印刷媒体へ印刷する印刷手段と、
一色で塗りつぶされるパッチ領域を含み実際に使用されるときの大きさの画像の全部又は一部からなる色見本が所定方向に沿って複数並べられ、各色見本のパッチ領域の色が前記所定方向に沿って徐々に変化する色調整用チャートを作成するチャート作成手段と、
前記色調整用チャートが前記印刷媒体へ印刷されるよう前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、
を備えたものである。
【0008】
この画像形成装置では、パッチ領域を含み実際に使用されるときの大きさの画像の全部又は一部からなる色見本が所定方向に沿って複数並べられ、各色見本のパッチ領域の色が所定方向に沿って徐々に変化する色調整用チャートが印刷される。この色調整用チャートを用いて、自分の所望する色と色見本のパッチ領域の色とを合わせるとき、既にパッチ領域の色は実際の画像の中に配置されているため、周囲の影響を加味して色合わせを行うことになる。したがって、色調整用チャートで選んだ色を実際の画像の中に配置したときの違和感をなくすことができる。
【0009】
本発明の画像形成装置において、前記チャート作成手段は、前記色調整用チャートを作成するにあたり、前記パッチ領域を予め定められた基準色で塗りつぶした基準色見本を起点とし、該起点から前記所定方向に沿って各色見本の前記パッチ領域の色情報の差が所定間隔となるように各色見本を並べることにより、前記色調整用チャートを作成してもよい。こうすれば、所定方向に沿って各色見本のパッチ領域の色を見ていけば、どの色が所望の色と一致するかを容易に見つけることができる。
【0010】
本発明の画像形成装置において、前記チャート作成手段は、前記色調整用チャートを作成するにあたり、前記パッチ領域を予め定められた基準色で塗りつぶした基準色見本を起点とし、該起点から前記所定方向に沿って各色見本の前記パッチ領域の色情報の差が所定間隔となるように各色見本を並べることを基本態様とし、前記所定方向に沿って並ぶ各色見本の前記パッチ領域の粒状性指標又は色差に基づいて前記基本態様を変更し、該変更した態様のものを前記色調整用チャートとしてもよい。基本態様で各色見本を所定方向に沿って並べた場合には、その方向に沿って順にパッチ領域の色を見ていったときに1つのパッチ領域の色だけ急にざらつき感が大きくなったとしても気づかないことがあるが、ここでは、ざらつき感に関連する粒状性指標の差を考慮して基本態様を変更するため、オペレーターはざらつき感の大きなパッチ領域の色を選択することが少なくなる。また、基本態様で各色見本を所定方向に沿って並べた場合には、その方向に沿って順にパッチ領域の色を見ていったときに1つのパッチ領域の色だけ急に色の違いが大きくなったとしても気づかないことがあるが、ここでは、色の違いに関連する色差を考慮して基本態様を変更するため、オペレータは色の違いの大きいパッチ領域の色を選択することが少なくなる。なお、色情報の差とは、例えば、RGBデータのR,G,Bのいずれかの階調値の差又はCMYKデータのC,M,Y,Kのいずれかの階調値の差である。
【0011】
ここで、チャート作成手段は、粒状性指標又は色差に基づいて基本態様を変更するにあたり、基本態様の各色見本の並べ方、各色見本の大きさ及び各色見本の装飾の少なくとも1つを変更してもよい。例えば、各色見本と基準色見本との色情報の差及び粒状性指標の差の合計値が所定方向に沿って大きくなるように、不要な色見本を除去したり大きさを小さくしたり装飾を目立たないようにしてもよい。
【0012】
本発明の画像形成装置において、前記色見本は、前記パッチ領域の周囲に該パッチ領域の色とは異なる着色領域を有し、該着色領域は、すべての色見本において共通していてもよい。こうすれば、自分の所望する色と色見本のパッチ領域の色とを合わせるとき、周囲の色の影響を加味して色合わせを行うことになる。
【0013】
本発明の画像形成装置において、前記色見本は、前記実際に使用されるときの大きさの画像の一部からなり、前記パッチ領域が中央(正確に中央である必要はなくほぼ中央であればよい)に配置されるように前記画像をトリミングしたものとしてもよい。例えば、色見本を、パッチ領域に外接する矩形の重心が中央に配置されるように、実際に使用されるときの大きさの画像をトリミングしたものとしてもよい。実際に使用されるときの大きさの画像を印刷媒体にそのまま色見本として並べたのでは、画像が大きすぎて十分な数(例えばユーザーが指定した数)の色見本を並べることができない場合、このように色見本をその画像の一部とすることにより、十分な数の色見本を並べることができる。また、パッチ領域が中央に配置されるため、色合わせを行いやすい。
【0014】
本発明のプログラムは、1又は複数のコンピュータを、上述した画像形成装置のチャート作成手段及び印刷制御手段として機能させるためのものである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに分担して実行させれば、本発明の画像形成装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態の印刷システム1の構成の概略を示す構成図。
【図2】第1実施形態のチャート印刷ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図3】第1実施形態のラベル画像の一例を示す説明図。
【図4】第1実施形態のチャートAの配置図。
【図5】第2実施形態のチャート印刷ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図6】第2実施形態の色見本を作成する手順を示す説明図。
【図7】第2実施形態のチャートBの配置図。
【図8】第1実施形態のチャートAの変形例の配置図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態としての画像形成装置、すなわちユーザーPC10とインクジェットプリンター20とを含む印刷システム1の構成の概略を示す構成図である。
【0017】
ユーザーPC10は、インクジェットプリンター20とデータのやり取りが可能に接続され、CPU12を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM14と、一時的にデータを記憶するRAM16と、インクジェットプリンター20のプリンタードライバー18aなどがインストールされたHDD18と、を備える。プリンタードライバー18aには、HDD18などに記憶されたRGBデータからなる画像データを入力してCMYKデータに変換し、そのCMYKデータの階調値を表現するためにインクドットを分散して形成するハーフトーン処理を実行し、ハーフトーン処理されたデータをインクジェットプリンター20に転送すべきデータ順に並べ替えるラスタライズを実行し、ラスタライズ後の印刷データをインクジェットプリンター20へ転送するプログラムが含まれる。このほかに、プリンタードライバー18aには、色調整用チャートを作成しインクジェットプリンター20へ出力するプログラムが含まれているが、この点については後で詳しく説明する。
【0018】
インクジェットプリンター20は、用紙Pを副走査方向(図1で奥から手前の方向)に搬送する紙送り機構41と、紙送り機構41によりプラテン46上に搬送された用紙Pに対して主走査方向(図1で左右の方向)の移動を伴って印刷ヘッド24に形成されたノズルからインク滴を吐出して印刷を行なうプリンター機構21と、装置全体をコントロールするコントローラー60と、を備える。プラテン46の主走査方向一端(図1で右端)には、印刷ヘッド24のノズル面を封止するキャッピング装置50が設置されており、プラテン46の主走査方向他端(図1で左端)には、ノズルの目詰まりを防止するために定期的に印刷ヘッド24のノズルからインク滴を吐出するフラッシングを行なうためのフラッシングエリア48が設けられている。
【0019】
プリンター機構21は、キャリッジガイド28によりガイドされながら主走査方向に往復動可能なキャリッジ22と、キャリッジガイド28の一端側と他端側にそれぞれ設置されたキャリッジモーター34および従動ローラー35と、キャリッジモーター34と従動ローラー35とに掛け渡されると共にキャリッジ22に取り付けられたキャリッジベルト32と、キャリッジ22に搭載され溶媒としての水に顔料粒子を分散させたシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の各色のインクを貯留し各色毎に独立して交換が可能なインクカートリッジ26と、インクカートリッジ26からそれぞれ供給された各インクに加圧してインク滴を吐出する複数のノズルが形成された印刷ヘッド24と、を備える。インクの加圧は、圧電素子に電圧を印加してこの圧電素子を変形させることにより行う。キャリッジ22は、キャリッジモーター34によりキャリッジベルト32を駆動することにより、主走査方向に往復動されるようになっている。なお、キャリッジ22の背面側には、キャリッジ22の主走査方向における位置を検出するキャリッジポジションセンサー36が取り付けられている。このキャリッジポジションセンサー36は、フレーム58にキャリッジガイド28に沿って配置されたリニア式の光学スケール36aと、光学スケール36aに対向するようキャリッジ22の背面に取り付けられ光学スケール36aを光学的に読み取る光学センサー36bとにより構成されている。
【0020】
紙送り機構41は、用紙Pをプラテン46上に搬送させる搬送ローラー42と、搬送ローラー42を回転駆動する搬送モーター44と、を備える。搬送モーター44は、その回転軸に回転量を検出するロータリーエンコーダー49が取り付けられており、ロータリーエンコーダー49からの回転量に基づいて駆動制御されている。なお、ロータリーエンコーダー49は、図示しないが、所定回転角間隔で目盛りが付されたロータリースケールと、ロータリースケールの目盛りを読み取るためのロータリースケールセンサーとにより構成されている。
【0021】
キャッピング装置50は、印刷ヘッド24をキャッピング装置50に対向する位置(いわゆるホームポジション)に移動させた状態でノズル面を封止することによりノズル内のインクの乾燥を防止したり、ノズル面を封止した状態でノズル内のインクを吸引することにより印刷ヘッド24をクリーニングしたりする。キャッピング装置50は、印刷ヘッド24のノズル面を密閉するために上方が開口された略直方体のキャップ51の他に、キャップ51の底部に接続されたチューブ(図示せず)や、チューブに取り付けられた吸引ポンプ(図示せず)などを備えている。このキャッピング装置50は、印刷ヘッド24をクリーニングする場合には、キャップ51により印刷ヘッド24のノズル面を封止した状態で吸引ポンプを駆動することにより、印刷ヘッド24のノズル面とキャップ51とにより形成される内部空間を負圧とし、ノズル内のインクを強制的に吸引する。
【0022】
コントローラー60は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種のプログラムを実行したりデータを記憶したりする機能を有する。このコントローラー60には、キャリッジポジションセンサー36からのキャリッジ22の位置や、ロータリーエンコーダー49からの搬送ローラー42の回転量が入力され、コントローラー60からは印刷ヘッド24への駆動信号や搬送モーター44への駆動信号,キャリッジモーター34への駆動信号,吸引ポンプへの駆動信号などが出力される。また、コントローラー60は、ユーザーPC10からの印刷指示や印刷データを受け付けたりする。なお、コントローラー60には、印刷バッファー領域が設けられており、ユーザーPC10から印刷データが受け付けられると、受け付けた印刷データは印刷バッファー領域に記憶される。
【0023】
次に、こうして構成された本実施形態の印刷システム1のユーザーPC10の動作、特に、色調整用チャート(以下「チャート」という)を作成するときの動作について説明する。図2は、ユーザーPC10のCPU12により実行されるチャート印刷ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、図示しないキーボードやマウスの操作によりチャート印刷プログラムが選択されたときに開始される。
【0024】
図2のチャート印刷ルーチンが開始されると、CPU12は、まず、描画ソフト(例えばアドビ社製のイラストレーターなど)で作成されたラベル画像を取得する(ステップS100)。ここでは、ラベル画像として、図3に示すように、小さなサイズの星形七角形82、中程度のサイズの星形六角形84、大きなサイズの星形五角形86をそれぞれ中心が一致するようにして重ね合わせたラベル画像80を取得したとする。このうち、星形七角形82で囲まれた第1領域82a、第1領域82aの外側であって星形六角形84で囲まれた第2領域84a及び第2領域84aの外側であって星形五角形86で囲まれた第3領域86aは、それぞれ異なる色によって塗りつぶされている。
【0025】
続いて、CPU12は、ラベル画像のうちパッチ領域を取得する(ステップS102)。具体的には、ユーザーPC10のディスプレイに表示されているラベル画像の第1〜第3領域82a,84a,86aの中からユーザーがマウスで指定した領域を、パッチ領域として取得する。ここでは、図3に示すラベル画像80のうち第1領域82aをパッチ領域として取得したとする。この第1領域82aは、予めユーザーによってC,M,Y,Kの値が設定された特別な色(特色)で塗られた領域であり、特色領域とも称する。
【0026】
続いて、CPU12は、チャート生成方法を取得する(ステップS104)。チャート生成方法には、RGB値に基づく生成方法やCMYK値に基づく生成方法などがあるが、、ユーザーによっていずれかの方法が選択されているため、その選択された生成方法を取得する。ここでは、CMYK値に基づく生成方法であって、右方向にシアン(C)の値が1ずつ増加し、下方向にマゼンタ(M)の値が1ずつ増加する2次元配置がユーザーによって選択されているものとする。
【0027】
続いて、CPU12は、チャートを生成するための基準色を取得する(ステップS106)。具体的には、ステップS102で取得したパッチ領域である第1領域82aに塗られた色のCMYK値を基準色として設定する。ここでは、第1領域82aに塗られた色は、CMYK値が(C,M,Y,K)=(100,91,0,0)である特色であったとする。
【0028】
続いて、CPU12は、取得したチャート生成方法及び基準色を利用して、実際の大きさのラベルを並べることによりチャートを作成する(ステップS108)。ここでは、図4に示すように、ラベル画像を実際に使用するときの大きさで表したもの(色見本という)を、横方向に4つ、縦方向に4つ、合計16個並べたチャートAを作成する。チャートAでは、すべての色見本A11〜A44の第2及び第3領域84a,86aは、取得したラベル画像の第2領域84a及び第3領域86aに塗られた色のままである。一方、第1領域82aは、パッチ領域であり、すべての色見本A11〜A44で微妙に色が異なる。こうしたチャートAは、次のようにして作成される。まず、左上に、基準色見本となる色見本A11を配置する。基準色見本は、第1領域82aが基準色(ここでは、(C,M,Y,K)=(100,91,0,0))で塗りつぶされたものである。そして、基準色見本を起点とし、そこから右方向に沿って色見本A11〜A14のパッチ領域である第1領域82aのシアン(C)の値の差がすべて1となるように並べる。つまり、横方向に隣接する色見本のパッチ領域のCの値の差がすべて1となるように並べる。色見本A21〜A24,色見本A31〜A34,色見本A41〜A44もこれと同様に並べる。また、起点から下方向に沿って各色見本A11〜A41のパッチ領域である第1領域82aのマゼンタ(M)の値の差がすべて1となるように並べる。つまり、縦方向に隣接する色見本のパッチ領域のMの値の差がすべて1となるように並べる。色見本A12〜A42,色見本A13〜A43,色見本A14〜A44もこれと同様に並べる。なお、すべての色見本A11〜A44のイエロー(Y)の値及びブラック(K)の値は同じ値である(ここではゼロ)。図4では、各色見本の下にCMYK値を示した。
【0029】
次に、CPU12は、こうしたチャートの印刷データを作成し、それをインクジェットプリンター20へ出力する(ステップS110)。すると、インクジェットプリンター20のコントローラー60は、用紙Pに図4に示すチャートAが印刷されるようプリンター機構21や紙送り機構41を制御する。印刷されたチャートAの色見本A11〜A44の大きさは、実際に使用する大きさとなっている。
【0030】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の画像形成装置が本実施形態の印刷システム1に相当し、インクジェットプリンター20が印刷手段に相当し、ユーザーPC10のCPU12及びプリンタードライバー18aがチャート作成手段に相当すると共に印刷制御手段にも相当する。
【0031】
以上説明した本実施形態の印刷システム1によれば、チャートAを用いて、自分の所望する色と各色見本A11〜A44のパッチ領域である第1領域82aの色とを合わせるとき、既に第1領域82aの色は実際のラベル画像の中に配置されているため、周囲の影響を加味して色合わせを行うことになる。特に、色見本A11〜A44は、第1領域82aの周囲に該第1領域82aの色とは異なる第2及び第3領域84a,86aを有するが、第2及び第3領域84a,86aは、すべての色見本A11〜A44において共通であるため、周囲の色の影響を加味して色合わせを行うことになる。したがって、チャートAで選んだ色を実際の画像の中に配置したときの違和感をなくすことができる。
【0032】
また、チャートAは、パッチ領域である第1領域82aを基準色で塗りつぶした基準色見本である色見本A11を起点とし、該起点から右方向に沿って各色見本の第1領域82aのCの値の差が所定間隔(値1)となるように、また、下方向に沿ってMの値の差が所定間隔(値1)となるように、色見本A11〜A14を並べたものである。このため、右方向あるいは下方向に沿って各色見本の第1領域82aの色を見ていけば、どの色が所望の色と一致するかを容易に見つけることができる。
【0033】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態の印刷システム1において、図2のチャート印刷ルーチンの代わりに、図5のチャート印刷ルーチンを実行する以外は、第1実施形態と同様である。このため、以下には、図5のチャート印刷ルーチンについてのみ説明する。
【0034】
このチャート印刷ルーチンが開始されると、CPU12は、ラベル画像を取得し(ステップS200)、ラベル画像のうちパッチ領域を取得し(ステップS202)、チャート生成方法を取得し(ステップS204)、チャートを生成するための基準色を取得する(ステップS206)。こうしたステップは、第1実施形態のS100〜S106と同じであるため、その説明を省略する。
【0035】
続いて、CPU12は、チャート情報を取得する(ステップS208)。チャート情報には、印刷領域のサイズと、色見本の配置方法と、実際に使用するときのラベルの大きさとが含まれる。ここでは、印刷領域のサイズは300mm×300mm、色見本の配置方法は横方向(Cが増加する方向)に4個、縦方向(Mが増加する方向)に4個(合計16個)、実際に使用するときのラベルの大きさは100mm×100mmであるとする。
【0036】
続いて、CPU12は、色見本1つあたりのサイズを、印刷領域のサイズ及び色見本の配置方法に基づいて算出する(ステップS210)。ここでは、色見本1つあたりのサイズは、縦横とも300mm/4個=75mmとなる。
【0037】
続いて、CPU12は、実際に使用するときの大きさのラベルのうち色見本に使用する部分を抽出する(ステップS212)。具体的な手順を図6を用いて以下に説明する。まず、実際に使用するときの大きさのラベル画像80のうち、パッチ領域である第1領域82aの外郭をなす星形七角形82に外接する矩形90を求める(図6(a)参照)。次に、その矩形90の重心90a(対角線の交点)を求め、その重心90aを第1領域82aの重心CGとみなす(図6(b)参照)。そして、色見本1つあたりのサイズである75mm×75mmの範囲を、その中心がパッチ領域の重心CGと一致するように設定し、その範囲の外郭をトリミング枠92として定める(図6(c)参照)。最後に、実際に使用するときの大きさのラベル画像80からトリミング枠92の内部を抽出し、色見本に使用する部分94とする(図6(d)参照)。この部分94は、パッチ領域である第1領域82aが中央に配置され、第1領域82aの外側に第2領域84aや第3領域86aの一部が配置されている。
【0038】
続いて、CPU12は、色見本で構成されるチャートを生成する(ステップS214)。チャートの生成は、取得したチャート生成方法、基準色及び色見本に使用する部分を利用して、色見本を並べることにより行う。ここでは、図6(d)の実際に使用するときの大きさのラベルのうち色見本に使用する部分94を色見本とし、図7に示すように、これを横方向に4つ、縦方向に4つ、合計16個並べたチャートBを作成する。チャートBでは、すべての色見本B11〜B44の第1及び第3領域84a,86aは、取得したラベル画像の第2領域84a及び第3領域86aに塗られた色のままである。一方、第1領域82aは、パッチ領域であり、すべての色見本B11〜B44で微妙に色が異なる。こうしたチャートBの作成方法は、基本的には第1実施形態のチャートAと同様であるため、その説明を省略する。
【0039】
次に、CPU12は、こうしたチャートBの印刷データを作成し、それをインクジェットプリンター20へ出力する(ステップS216)。すると、インクジェットプリンター20のコントローラー60は、用紙Pに図7に示すチャートBが印刷されるようプリンター機構21や紙送り機構41を制御する。印刷されたチャートBの色見本の大きさは、トリミングされているものの、実際に使用する大きさとなっている。
【0040】
以上詳述した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、上述したように、用紙Pに実際に使用するときの大きさのラベルをそのまま色見本として並べたのではラベルが大きすぎてユーザーが指定した数の色見本を並べることができない場合であっても、色見本を実際に使用するときの大きさのラベルの一部とすることにより、ユーザーが指定した数の色見本を並べることができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0042】
例えば、上述した第2実施形態では、実際に使用するときの大きさのラベルを色見本としてトリミングする際に、パッチ領域である第1領域82aに外接する矩形90の重心90aが中央に配置されるようにトリミングしたが、これは、第1領域82aが中央に配置されるようにトリミングする単なる一例であり、他の方法でパッチ領域が中央に配置されるようにトリミングしてもよい。
【0043】
上述した第2実施形態では、色見本B11〜B44を隙間なく並べたが、隣接する色見本の間に余白部分を設けてもよい。こうすれば、見やすさが向上する。
【0044】
上述した第1及び第2実施形態では、チャートA,Bを作成するにあたり、パッチ領域である第1領域82aを基準色で塗りつぶした基準色見本を起点とし、該起点から右方向に沿って各色見本のCの値の差が1となるように、且つ、下方向に沿って各色見本のMの値の差が1になるように各色見本を並べたが、この並べ方を基本態様とした上で、右方向や下方向に沿って並ぶ各色見本の第1領域82aの粒状性指標又は色差に基づいて基本態様を変更し、変更した態様のものをチャートとしてもよい。例えば粒状性指標に基づいて基本態様を変更する場合には、基準色見本A11,B11の第1領域82aの色と他の色見本の第1領域82aの色との階調値の差と粒状性指標の差の合計値を求め、その合計値が右方向に沿って大きく、且つ、下方向に沿って大きくなるように、不要な色見本を削除することにより、基本態様の各パッチの並べ方を変更してもよい。そのときの一例を図8に示す。図8は、チャートAの一部を示す説明図である。基本態様では色見本A11〜A14のCの値の差は値1であったが(図4参照)、前出の合計値が右方向に沿って大きくなるようにするには(C,M,Y,K)=(101,91,0,0)の色見本を除去する必要があったとする。その場合には、その色見本を基本態様から除去し、基本態様の色見本A11〜A14の並びを図8のように変更する。こうすれば、ざらつき感に関連する粒状性指標の差を考慮して基本態様を変更するため、オペレーターはざらつき感の大きなパッチ領域の色を選択することがなくなる。あるいは、そのような不要な色見本を除去する代わりに、その色見本の大きさを小さくしたり装飾を目立たなくなるようにしてもよい。また、粒状性指標の代わりに色差を用いてもよい。こうすれば、色の違いに関連する色差を考慮して基本態様を変更するため、オペレータは色の違いの大きいパッチ領域の色を選択することが少なくなる。
【0045】
なお、粒状性指標は、パッチ領域のCMYKのベクトル値を下記式に当てはめることにより算出してもよい。Yは目立ち難い色であるため係数γは他の係数より小さくし、Kは目立ちやすい色であるため係数θは他の係数より大きくした。具体的には、α=β=0.5,γ=0.1,θ=1.0とした。こうした粒状性指標は、値が大きいほど粒状性が悪い(つまりざらつき感がある)と判断できる。但し、粒状性指標は、下記式に限定されるものではない。例えば、公知の粒状性指標であるRMS(Root Mean Square)やWS(Wiener Spectrum)などを用いてもよい。
粒状性指標=α×Cのドット発生率+β×Mのドット発生率
+γ×Yのドット発生率+θ×Kのドット発生率
【0046】
上述した第1及び第2実施形態では、ユーザーPC10のCPU12及びプリンタードライバー18aがチャート印刷ルーチンを実行するようにしたが、インクジェットプリンター20のコントローラー60がチャート印刷ルーチンを実行するようにしてもよい。この場合、インクジェットプリンター20が本発明の画像形成装置に相当し、プリンタードライバー18aと同様のプログラムがコントローラー60の内部メモリ(ROMなど)に格納されることになる。こうしても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0047】
上述した第1及び第2実施形態では、印刷ヘッド24として、圧電素子に電圧を印加することによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式を採用するものとしたが、発熱抵抗体(例えばヒーターなど)に電圧を印加することによりインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式を採用するものとしてもよい。
【0048】
上述した第1及び第2実施形態では、印刷手段としてインクジェットプリンター20を採用したが、トナーカートリッジを用いるレーザープリンターや他の形式のプリンターに採用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 印刷システム、10 ユーザーPC、12 CPU、14 ROM、16 RAM、18 HDD、18a プリンタードライバー、20 インクジェットプリンター、21 プリンター機構、22 キャリッジ、24 印刷ヘッド、26 インクカートリッジ、28 キャリッジガイド、32 キャリッジベルト、34 キャリッジモーター、35 従動ローラー、36 キャリッジポジションセンサー、36a 光学スケール、36b 光学センサー、41 紙送り機構、42 搬送ローラー、44 搬送モーター、46 プラテン、48 フラッシングエリア、49 ロータリーエンコーダー、50 キャッピング装置、51 キャップ、58 フレーム、60 コントローラー、80 ラベル画像、82 星形七角形、82a 第1領域、84 星形六角形、84a 第2領域、86 星形五角形、86a 第3領域、90 矩形、90a 重心、92 トリミング枠、94 色見本に使用する部分、A チャート、A11〜A44 色見本、B チャート、B11〜B44 色見本

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体へ印刷する印刷手段と、
一色で塗りつぶされるパッチ領域を含み実際に使用されるときの大きさの画像の全部又は一部からなる色見本が所定方向に沿って複数並べられ、各色見本のパッチ領域の色が前記所定方向に沿って徐々に変化する色調整用チャートを作成するチャート作成手段と、
前記色調整用チャートが前記印刷媒体へ印刷されるよう前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記チャート作成手段は、前記色調整用チャートを作成するにあたり、前記パッチ領域を予め定められた基準色で塗りつぶした基準色見本を起点とし、該起点から前記所定方向に沿って各色見本の前記パッチ領域の色情報の差が所定間隔となるように各色見本を並べることにより、前記色調整用チャートを作成する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記チャート作成手段は、前記色調整用チャートを作成するにあたり、前記パッチ領域を予め定められた基準色で塗りつぶした基準色見本を起点とし、該起点から前記所定方向に沿って各色見本の前記パッチ領域の色情報の差が所定間隔となるように各色見本を並べることを基本態様とし、前記所定方向に沿って並ぶ各色見本の前記パッチ領域の粒状性指標又は色差に基づいて前記基本態様を変更し、該変更した態様のものを前記色調整用チャートとする、
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記色見本は、前記パッチ領域の周囲に該パッチ領域の色とは異なる着色領域を有し、該着色領域は、すべての色見本において共通している、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記色見本は、前記実際に使用されるときの大きさの画像の一部からなり、前記パッチ領域が中央に配置されるように前記画像をトリミングしたものである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記色見本は、前記実際に使用されるときの大きさの画像の一部からなり、前記パッチ領域に外接する矩形の重心が中央に配置されるように前記画像をトリミングしたものである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
1又は複数のコンピューターを、請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置の前記チャート作成手段及び印刷制御手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102365(P2013−102365A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245226(P2011−245226)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】