説明

画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】 ET現像によって孤立1画素の地汚れのない現像を行なうことが求められている。
【解決手段】 静電潜像が形成される像担持体1と、複数の電極102に印加されるn相の電圧によって形成される移相電界によって像担持体1との対向域にトナーを搬送するトナー搬送部材2とを備え、像担持体1が電荷発生層と電荷移動層を有し、電荷発生層が内部にある場合、電荷移動層の厚さtg(μm)が、解像力をr(dpi)としたとき、tg≦8400/r+13、の式を満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及びプロセスカートリッジに関し、特に粉体を進行波電界によって移送して静電潜像を現像する画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、プリンタ/ファックス/複写機複合機等の各種画像形成装置として、像担持体を帯電させ、静電潜像を形成して、この静電潜像に着色体などの粉体(以下「トナー」又は「トナー粒子」という。)を付着させて現像し、トナー像を被記録媒体(転写材、用紙、記録紙、中間転写体などを含む意味である。)に転写する電子写真プロセスを用いる画像形成装置が知られている。
【0003】
このような画像形成装置において、特許文献1に記載されているように、所定間隔を有して複数配列されている電極に対して多相電圧を印加して進行波電界を形成することによって、現像剤を搬送する現像剤搬送手段を備え、静電潜像をその表面に担持する像担持体に対向する現像領域に、該現像搬送手段が配置されている現像装置において、上記現像搬送手段は複数の電極をエンドレスループ状に配列し、該複数の電極は、複数のユニットに分割して配列されるとともにユニットごとの電圧印加を制御する手段を設け、ユニット個別に多相電圧を印加することが可能に構成されているものがある。
【特許文献1】特許第3530124号公報
【0004】
また、本出願人は、特許文献2、3に記載しているように、静電気力による粉体の水平方向の移動(搬送)と垂直方向の移動(ホッピング)を含む現象であり、静電搬送部材の表面を、移相電界によって粉体が進行方向の成分を持って飛び跳ねる現象を利用した現像方式を用いる現像装置を提案している。この現像装置は、像担持体上に粉体を付着させて像担持体上の潜像を現像するための現像装置において、像担持体に対向して配置され、粉体を移動させる進行波電界を発生させるための複数の電極を有する搬送部材を備え、搬送部材の電極には、粉体が潜像の画像部に対しては像担持体側に向かい、非画像部に対しては粉体が像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成するn相の電位が印加されるようにしたものである。
【特許文献2】特開2004−198675号公報
【特許文献3】特開2002−258601号公報
【0005】
なお、画像形成装置としては、特許文献4に記載されているように、像担持体と現像ローラとの間にDCとACの重畳電圧を印加して、非接触で現像ローラから像担持体にトナーを転移させる所謂ジャンピング現像と称する方式で現像するもの、特許文献5、6に記載されているように、静電搬送基板を用いて、トナーを像担持体に対向する位置まで搬送し、振動、浮遊、スモーク化させて、像担持体との間で生じる吸引力で搬送面からトナーを分離して像担持体表面に付着させるようにしたもの、特許文献7に記載されているように電界カーテンを用いるものもある。
【特許文献4】特開平9−329947号公報
【特許文献5】特公平5−31146号公報
【特許文献6】特公平5−31147号公報
【特許文献7】特開平3−21967号公報
【0006】
また、現像装置の現像バイアスに関して、特許文献10に記載されているように、バイアス電源の出力側に並列接続されたコンデンサC1及び抵抗器Rを直列に挿入することによって現像バイアスのピーク間電圧を像担持体と現像剤担持体間の静電容量C2の変動に応じて変化させ、且つ、静電容量C2と並列に可変コンデンサC3を挿入した画像形成装置がある。
【特許文献8】特許第3376199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電子写真プロセスを用いる画像形成装置における現在及び将来の課題は、画質とコストと環境をいかにして満足するかということである。画質について言えば、カラー画像を形成する場合に、直径わずか約30μmの1200dpiの孤立1ドットをいかに現像するか、それも好ましくは、地汚れなしに現像するかということである。また、コストについて言えば、パーソナルのレーザプリンタを考えた場合、現像器や現像剤の単体コストのみならず、メンテナンス及び最終処分費用まで含めたトータルのコストを下げることが重要になる。さらに、環境について言えば、特に、微小粉末であるトナーが装置内や装置外に飛散することを防止することが重要になる。
【0008】
上述した本出願人の出願に係る特許文献2などで既に提案している、静電搬送部材の表面を、移相電界(進行波電界)によって粉体が進行方向の成分を持って飛び跳ねる(ホッピング)現象(EH:Electrostatic transport&Hopping)を利用したEH現像は、像担持体と非接触の一方向現像方式であり、低電圧現像が可能になる極めて優れた現像方式である。
【0009】
本発明は上記の電子写真プロセスを用いる画像形成装置において、EH現像によって孤立1画素の現像、地汚れのない現像を行なう画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、像担持体上に形成された潜像にトナーを付着させて現像する画像形成装置において、所定の間隔で並べて配置された複数の電極に多相の電圧が印加されることで形成される搬送電界によって像担持体との対向域にトナーを搬送するトナー搬送部材を備え、像担持体が電荷発生層と電荷移動層を有し、電荷発生層が内部にある場合、電荷移動層の厚さtg(μm)が、解像力をr(dpi)としたとき、tg≦8400/r+13、の式を満たしている構成とした。
【0011】
ここで、潜像の画像部電位と地肌部電位との差が300V以下であることが好ましい。
【0012】
本発明に係るプロセスカートリッジは、少なくとも像担持体と、この像担持体上に形成された潜像にトナーを付着させて現像する現像手段とを含み、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、現像手段は、所定の間隔で並べて配置された複数の電極に多相の電圧が印加されることで形成される搬送電界によって像担持体との対向域にトナーを搬送するトナー搬送部材を備え、像担持体が電荷発生層と電荷移動層を有し、電荷発生層が内部にある場合、電荷移動層の厚さtg(μm)が、解像力をr(dpi)としたとき、tg≦8400/r+13、の式を満たしている構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像形成装置及びプロセスカートリッジによれば、所定の間隔で並べて配置された複数の電極に多相の電圧が印加されることで形成される搬送電界によって像担持体との対向域にトナーを搬送するトナー搬送部材を備え、像担持体が電荷発生層と電荷移動層を有し、電荷発生層が内部にある場合、電荷移動層の厚さtg(μm)が、解像力をr(dpi)としたとき、tg≦8400/r+13、の式を満たしている構成としたので、地汚れなく、孤立1画素まできれいな現像が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。先ず、本発明に係る画像形成装置の第1実施形態の一例ついて図1を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の現像装置部分の模式的構成図である。
現像装置は、磁性キャリアと非磁性トナーから成る二成分現像剤を用いる現像装置であり、所定の間隔で配置された複数の電極に多相の電圧が印加されることで形成される搬送電界によって、静電潜像が形成される像担持体1との対向領域にトナーを搬送するローラ状に形成したトナー搬送部材2と、このトナー搬送部材2に対向し、トナー搬送部材2に対してトナーを供給するトナー供給手段である現像剤担持体3と、この現像剤担持体3で供給するトナー及び磁性キャリアを収容する現像剤収容部4とを備えている。この場合、トナー搬送部材2は像担持体1及び現像剤担持体3に対して径方向の反対側の領域で対向している配置としている。なお、トナー搬送部材2は回転せず、外周面をトナーが矢示方向に搬送電界(移相電界)で搬送される。一方、現像剤担持体3は矢示方向に回転する。
【0015】
現像剤収容部4は、2室に分けられており、各室は現像装置内の両端部の図示しない現像剤通路によって連通している。この現像剤収容部4には二成分現像剤が収容されており、各室にある攪拌搬送スクリュー5A、5Bによって攪拌されながら現像剤収容部4内を搬送されている。
【0016】
また、現像剤収容部4には図示しないトナー収容部から現像剤を補給するためのトナー補給口6を設けている。そして、現像剤収容部4には現像剤の透磁率を検知する図示しないトナー濃度センサ(図示せず)が設置されており、現像剤の濃度を検知している。現像剤収容部4のトナー濃度が減少すると、トナー補給口6から現像剤収容部4にトナーが補給される。
【0017】
現像剤担持体3は、現像剤収容部4の攪拌搬送スクリュー5Aと対向する領域に配置されている。現像剤担持体3の内部には、固定された磁石が配置されおり、現像剤担持体3の回転と磁力によって、現像剤収容部4内の現像剤は現像剤担持体3表面に汲み上げられる。
【0018】
また、現像剤の汲み上げ領域より現像剤担持体3の回転方向(矢示方向)下流側でトナー搬送部材2との対向領域より上流側には、現像剤担持体3と対向する領域に現像剤層規制部材7を設け、汲み上げ領域で汲み上げたれた現像剤を一定量の現像剤層厚に規制される。そして、現像剤層規制部材7を通った現像剤は現像剤担持体3の回転に伴って、トナー搬送部材2と対向する領域まで搬送される。
【0019】
ここで、現像剤担持体3には、第1電圧印加手段11によって供給バイアスが印加されている。また、トナー搬送ローラには、第2電圧印加手段12によって後述するように電極に電圧が印加されている。
【0020】
これにより、現像剤担持体3とトナー搬送ローラが対向する領域においては、第1、第2電圧印加手段11、12によってトナー搬送ローラと現像剤担持体3との間に電界が生じている。その電界からの静電気力を受け、トナーはキャリアから解離し、トナー搬送ローラ2表面に移動する。そして、トナー搬送部材2表面に達したトナーは、第2電圧印加手段12が印加する電圧によって形成される搬送電界によって、トナー搬送部材2表面上をホッピングしながら搬送される(移動する)。
【0021】
次いで、潜像担持体1と対向する領域まで搬送電界によって搬送されたトナーは、トナー搬送部材2と潜像担持体1上の画像部との間の現像電界によって、潜像担持体1上に移動して潜像担持体1上の潜像を可視像化(現像)する。
【0022】
このように、磁性キャリアと非磁性のトナーから成る二成分現像剤を用いた現像装置では、キャリアとの接触摩擦によってトナーが帯電するため、帯電が安定する。また、現像においてトナーの供給量が多いため、高速現像に適している。したがって、二成分現像剤を用いることによって、帯電の安定したトナーを大量にトナー搬送部材に供給することができる。
【0023】
ここで、像担持体1とトナー搬送部材2との間の距離をG(μm)、トナー搬送部材2の電極の幅をW1(μm)、トナー搬送部材2の電極の間隔をW2(μm)としたとき、像担持体1とトナー搬送部材2との間の距離Gは、G≧(W2+0.5W1)×31/2、の式を満たしている。また、孤立最小画素の直径をDmin(μm)、トナー搬送部材2で形成する搬送電界の最大搬送方向電界をEhmax(V/μm)としたとき、像担持体1とトナー搬送部材2との間の距離Gは、G≦Dmin+150(Ehmax)1/2、の式をも満たしている。これによって、地肌汚れのない孤立1ドットのきれいな現像も行なうことができるようになる。
【0024】
また、像担持体1は、電荷発生層と電荷移動層を有し、電荷発生層が内部にあり、電荷移動層の厚さtg(μm)が、解像力をr(dpi)としたとき、tg≦8400/r+13、の式を満たしている構成としている。これにより、確実に、地汚れなく、孤立1画素まできれいな現像が可能となる。
【0025】
次に、本発明に係る画像形成装置の第1実施形態の他の例について図2を参照して説明する。なお、図2は同画像形成装置の現像装置部分の模式的構成図である。
この現像装置は、非磁性トナーから成る一成分現像剤を用いる現像装置であり、静電潜像が形成される像担持体1との対向領域にトナーを搬送するローラ状に形成したトナー搬送部材2と、このトナー搬送部材2に対向し、トナー搬送部材2に対してトナーを供給するトナー供給手段である現像剤担持体13と、この現像剤担持体13で供給するトナーを収容する現像剤収容部14とを備えている。この場合、トナー搬送部材2は像担持体1及び現像剤担持体3に対して径方向の反対側の領域で対向している配置としている。なお、トナー搬送部材2は回転せず、外周面をトナーが矢示方向に搬送電界(移相電界)で搬送される。一方、現像剤担持体13は矢示方向に回転する。
【0026】
現像剤収容部14にはトナー補給ローラ15A、15Bを備え、トナーはトナー補給ローラ15Aと現像剤担持体13とによる摩擦帯電などによって、静電気力によって現像剤担持体13上に汲み上げられる。そして、現像剤担持体13上のトナーは現像剤層規制部材7によって薄層化され、現像剤担持体13の回転に伴ってトナー搬送部材2と対向する領域に搬送される。
【0027】
ここでも、現像剤担持体13には、第1電圧印加手段11によって供給バイアスが印加されている。また、トナー搬送部材2には、第2電圧印加手段12によって後述するように電極に電圧が印加されている。
【0028】
これにより、現像剤担持体13とトナー搬送部材2が対向する領域においては、第1、第2電圧印加手段11、12によってトナー搬送部材2と現像剤担持体13との間に電界が生じている。その電界からの静電気力を受け、トナーは現像剤担持体13表面から解離し、トナー搬送部材2表面に移動する。そして、トナー搬送部材2表面に達したトナーは、第2電圧印加手段12が印加する電圧によって形成される搬送電界によって、トナー搬送部材2表面上をホッピングしながら搬送される。
【0029】
そして、潜像担持体1と対向する領域まで搬送電界によって搬送されたトナーは、トナー搬送部材2と潜像担持体1上の画像部との間の現像電界によって、潜像担持体1上に移動して潜像担持体1上の潜像を可視像化(現像)する。
【0030】
このように、現像剤として、トナーから成る一成分現像剤を用いることもできる。二成分現像剤の場合、現像剤担持体の回転や磁気穂がトナー搬送部材に衝突する衝撃によって、磁気穂を形成しているキャリアの一部が切れてトナー搬送部材に移動し、供給部でトナー搬送部材の表面に付着してしまうおそれがある。これに対し、一成分現像剤の場合、キャリアを用いていないので、トナー搬送部材表面へのキャリアの付着という問題は起こらず、また、一成分現像剤の場合、現像剤収容部が簡単な構成となるため、現像装置を小型化・低コスト化することができる。
【0031】
ここでも、像担持体1とトナー搬送部材2との間の距離をG(μm)、トナー搬送部材2の電極の幅をW1(μm)、トナー搬送部材2の電極の間隔をW2(μm)としたとき、像担持体1とトナー搬送部材2との間の距離Gは、G≧(W2+0.5W1)×31/2、の式を満たしている。また、孤立最小画素の直径をDmin(μm)、トナー搬送部材2で形成する搬送電界の最大搬送方向電界をEhmax(V/μm)としたとき、像担持体1とトナー搬送部材2との間の距離Gは、G≦Dmin+150(Ehmax)1/2、の式をも満たしている。これによって、地肌汚れのない孤立1ドットのきれいな現像も行なうことができるようになる。
【0032】
また、像担持体1は、電荷発生層と電荷移動層を有し、電荷発生層が内部にあり、電荷移動層の厚さtg(μm)が、解像力をr(dpi)としたとき、tg≦8400/r+13、の式を満たしている構成としている。これにより、確実に、地汚れなく、孤立1画素まできれいな現像が可能となる。
【0033】
ここで、トナー搬送部材2の詳細について図3以降を参照して説明する。図3は、同トナー搬送部材2の像担持体1側表面を拡大した断面図である。
このトナー搬送部材2は、支持基板101上に複数の電極102、102、102……を、n本を1セットとして、トナー移動方向に沿って所要の間隔で配置し、この上に静電搬送面103aを形成する絶縁性の静電搬送面形成部材となり、電極102の表面を覆う保護膜となる、無機又は有機の絶縁性材料で形成した表面保護層103を積層したものである。
【0034】
支持基板101としては、ガラス基板、樹脂基板或いはセラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、或いは、SUSなどの導電性材料からなる基板にSiO等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなる基板などを用いることができる。
【0035】
電極102は、支持基板101上に、Al、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10μm厚、好ましくは0.5〜2.0μmで成膜し、これをフォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成している。これらの複数の電極102のトナー搬送方向における幅(電極幅)W1は移動させる粉体の平均粒径の1倍以上20倍以下とし、かつ、電極102、102のピッチpも移動させるトナーの平均粒径の1倍以上20倍以下としている(図4参照)。
【0036】
表面保護層103としては、例えばSiO、TiO、TiO、SiON、BN、TiN、Taなどを厚さ0.5〜10μm、好ましくは厚さ0.5〜3μmで成膜して形成している。また、無機ナイトライド化合物、例えばSiN、Bn、Wなどを用いることができる。特に、表面水酸基が増えると帯電トナーの帯電量が搬送途中で下がる傾向にあるので、表面水酸基(SiOH、シラトール基)が少ない無機ナイトライド化合物が好ましい。
【0037】
図3において、各電極102から伸びる線は各電極102に電圧を印加するための導電線をあらわしており、各線の重なる部分のうち黒丸で示した部分だけが電気的に接続されており、他の部分は電気的に絶縁状態である。各電極102に対しては、本体側の電圧印加手段(駆動回路)104からn相の異なる駆動電圧V11〜V13、V21〜V23が印加される。なお、本実施形態では3相の駆動電圧が印加される場合(n=3)について説明するが、本発明はトナーが搬送される限りにおいて、多相(n相)がn>2を満たす任意の自然数nについて適用可能である。
【0038】
また、トナー搬送部材2の各電極102は現像装置10側の接点S11、S12、S13,S21、S22、S23のいずれかに接続されており、各接点S11、S12、S13,S21、S22、S23は、現像装置10が画像形成装置本体に装着された状態においては、それぞれ駆動波形V11、V12、V13、V21、V22、V23を与える本体側の電圧印加手段22と接続される。
【0039】
トナー搬送部材2は、トナーを像担持体1近傍まで移送し、また現像領域通過後の現像に寄与しなかったトナーを回収するための搬送領域(回収領域を含む)、像担持体1の潜像にトナーを付着させてトナー像を形成するための現像領域とに分けられる。
【0040】
現像領域は、像担持体1に近接した領域のみに存在し、搬送領域はトナー搬送部材2の周上、現像領域以外の全域に存在する。本発明では、トナーが移相電界によって移動可能な領域を「静電搬送面」という。本実施形態の場合、トナー搬送部材2の周表面全体が静電搬送面である。
【0041】
搬送領域では第2電圧印加手段22によって各電極102に駆動波形V11、V12、V13が印加され、現像領域では第2電圧印加手段22によって各電極102に駆動波形V21、V22、V23が印加される。
【0042】
そこで、トナー搬送部材2におけるトナーの静電搬送の原理について説明する。トナー搬送部材2の複数の電極102に対してn相のパルス状電圧を印加することにより、複数の電極102によって移相電界(進行波電界)が発生し、トナー搬送部材2上の帯電したトナーは反発力及び/又は吸引力を受けて移送方向に移動する。
【0043】
例えば、トナー搬送部材2の複数の電極102に対して図5に示すように、グランドG(0V)と正の電圧+との間で変化するA相、B相、C相の3相のパルス状駆動波形(電圧)を、タイミングをずらして印加する。
【0044】
このとき、図6に示すように、トナー搬送部材2上に負帯電トナーTがあり、トナー搬送部材2の連続した複数の電極102にそれぞれ「G」、「G」、「+」、「G」、「G」が印加された(同図(a))とすると、負帯電トナーTは「+」の電極102上に位置する。次のタイミングで複数の電極102にはそれぞれ「+」、「G」、「G」、「+」、「G」が印加され(同図(b))、負帯電トナーTには左側の「G」の電極102との間で反発力が、右側の「+」の電極102との間で吸引力がそれぞれ作用するので、負帯電トナーTは「+」の電極102側に移動する。さらに、次のタイミングで複数の電極102には、同図(c)に示すように、それぞれ「G」、「+」、「G」、「G」、「+」が印加され、負帯電トナーTには同様に反発力と吸引力がそれぞれ作用するので、負帯電トナーTは更に「+」の電極102側に移動する。
【0045】
これについて図7を参照して具体的に説明すると、同図(a)に示すように、トナー搬送部材2の電極A〜Fがいずれも0V(G)で、トナー搬送部材2上に負帯電トナーTが載っている状態から、同図(b)に示すように電極A、Dに「+」が印加されると、負帯電トナーTは電極A及び電極Dに吸引されて電極A、D上に移る。次のタイミングで、同図(c)に示すように、電極A、Dがいずれも「0」になり、電極B、Eに「+」が印加されると、電極A、D上のトナーTは反発力を受けるとともに、電極B、Eの吸引力を受けることになって、負帯電トナーTは電極B及び電極Eに移送される。さらに、次のタイミングで、同図(d)に示すように、電極B、Eがいずれも「0」になり、電極C、Fに「+」が印加されると、電極B、E上のトナーTは反発力を受けるとともに、電極C、Fの吸引力を受けることになって、負帯電トナーTは電極C及び電極Fに移送される。このように進行波電界によって負帯電トナーは順次図において右方向に移送されることになる。
【0046】
このように複数の電極102に電圧の変化する多相(n相)の駆動波形(電圧)を印加することで、トナー搬送部材2上には進行波電界が発生し、負帯電トナーはこの進行波電界の進行方向に移動する。なお、正帯電トナーの場合には駆動波形の変化パターンを逆にすることで同様に同方向に移動する。
【0047】
次に、第2電圧印加手段22の一例について図8を参照して説明する。
この電圧印加手段22は、パルス信号を生成出力するパルス信号発生回路105と、このパルス信号発生回路105からのパルス信号を入力して駆動波形であるパルス状電圧V11、V12、V13を生成出力する波形増幅器106a、106b、106cと、パルス信号発生回路105からのパルス信号を入力して駆動波形V21、V22、V23を生成出力する波形増幅器107a、107b、107cとを有する。
【0048】
パルス信号発生回路105は、例えばロジックレベルの入力パルスを受けて、各120°に位相シフトした2組みパルスで、次段の波形増幅器106a〜106c、107a〜107cに含まれるスイッチング手段、例えばトランジスタを駆動して100Vのスイッチングを行なうことができるレベルの出力電圧10〜15Vのパルス信号を生成して出力する。
【0049】
波形増幅器106a、106b、106cは、搬送領域の各電極102に対して、3相の駆動波形(駆動パルス)V11、V12、V13を印加し、波形増幅器107a、107b、107cは、現像領域の各電極102に対して、3相の駆動波形(駆動パルス)V21、v22、V23を印加する。
【0050】
ここで、トナー搬送部材2の搬送領域では、各電極102に対して、図9に示すように、各相の+100Vの印加時間taを繰り返し周期tfの1/3である約33%に設定した(これを「搬送電圧パターン」という。)3相の駆動波形(駆動パルス)V11、V12、V13を印加する。この駆動波形は搬送領域においてトナーを高速搬送させるのに適した波形である。
【0051】
また、現像領域では、各電極102に対して、図10又は図11に示すように、各相の+100V(又は−100V)の印加時間taを繰り返し周期tfの2/3である約67%に設定した(これを「ホッピング電圧(又は現像電圧)パターン」という)3相の駆動波形(駆動パルス)V21、V22、V23を印加する。現像領域ではトナー粒子を積極的に像担持体に向かって打ち上げることが好ましく、図10の駆動波形はトナー粒子を打ち上げるのに適している。
【0052】
さらに、ホッピング電圧パターンとしては、図12に示すように、パルス状電圧と直流バイアスとを重畳した波形の電圧を用いることもできる。図12に示す波形は、−50VのDC電圧をバイアスし、−50V〜−150Vの駆動波形とした。なお、同図では相対的に+の時間が33%デューティの波形としている。
【0053】
なお、現像電圧パターンの駆動波形を印加した場合でも、0V電極のセンターに位置したトナー以外は、横方向への力も受けるため、すべてのトナーがいっせいに高く打ち上げられるというものではなく、水平方向に移動するトナーもあり、逆に、搬送電圧パターンの駆動波形を印加した場合でも、トナーの位置によっては、大きな角度で斜めに打ち上げられて水平に移動するよりも上昇距離の方が大きいものがある。
【0054】
したがって、搬送領域において各電極102に印加する駆動波形パターンは前述した図9に示す搬送電圧パターンに限られるものではなく、また、現像領域12の各電極102に印加する駆動波形パターンも前述した図10ないし図12に示す現像電圧パターンに限られるものではない。
【0055】
なお、駆動波形は3相の場合について説明したが、これをn相に一般化すると、次のようになる。すなわち、各電極に対してn相(nは3以上の整数)のパルス状電圧(駆動波形)を印加して進行波電界を発生させる場合、1相あたりの電圧印加時間が{繰り返し周期時間×(n−1)/n}未満となる電圧印加デューティとすることによって、搬送、現像の効率を上げることができる。例えば、3相の駆動波形を用いる場合には、各相の電圧印加時間taを繰り返し周期時間tfの2/3である約67%未満に設定し、4相の駆動波形を用いる場合には、各相の電圧印加時間を繰り返し周期時間の3/4である75%未満に設定することが好ましい。
【0056】
他方、電圧印加デューティは、{繰り返し周期時間/n}以上に設定することが好ましい。例えば、3相の駆動波形を用いる場合には、各相の電圧印加時間taを繰り返し周期時間tfの1/3である約33%以上に設定することが好ましい。
【0057】
すなわち、注目電極に印加する電圧と進行方向上流側隣接電極及び下流側隣接電極に印加する各電圧との間には、上流側隣接電極が反発、下流側隣接電極が吸引という時間を設定することによって、効率を向上することができる。特に、駆動周波数が高い場合は、{繰り返し周期時間/n}以上で{繰り返し周期時間×(n−1)/n}未満の範囲内に設定することにより、注目電極上のトナーに対する初期速度が得られやすくなる。
【0058】
なお、ET現象のうちのホッピング現象は、静電搬送基板を用いただけでは発生せず、トナー搬送部材2の電極102の電極幅aや電極間間隔R、電極に印加する駆動波形(電圧)との関係を設定することで発生するものである。この点については、特許文献2などに詳細に説明しているとおりである。
【0059】
例えば、電極102の電極幅aについては、電極幅aをトナー径の1倍としたときは、最低1個のトナーを乗せて搬送、ホッピングするための幅寸法であり、これより狭いとトナーに作用する電界が少なくなり、搬送力、飛翔力が低下して実用上は十分でない。また、電極幅aが広くなるに従って、特に、電極上面中央付近で、電気力線が進行方向(水平方向)に傾斜し、垂直方向の電界の弱い領域が発生し、ホッピングの発生力が小さくなる。電極幅aがあまり広くなると、極端な場合、トナーの帯電電荷に応じた鏡像力、ファンデルワールス力、水分等による吸着力が勝り、トナーの堆積が発生することがある。
【0060】
そして、搬送及びホッピングの効率から、電極の上にトナーが20個程度が載る幅であれば吸着が発生しにくく、100V程度の低電圧の駆動波形で効率良く搬送、ホッピングの動作が可能である。それ以上広いと部分的に吸着が発生する領域が生じる。例えば、トナーの平均粒径を5μmとすると、5μm〜100μmまでの範囲に相当する。
【0061】
電極102の電極幅aのより好ましい範囲は、印加電圧が100V以下の低電圧でより効率的に駆動するため、トナーの平均粒径の2倍以上〜10倍以下である。電極幅aをこの範囲内とすることで、電極表面中央付近の電界強度の低下が1/3以下に抑えられ、ホッピングの効率低下は10%以下となって、効率の大幅な低下をきたすことがなくなる。これは、例えば、トナーの平均粒径を5μmとすると、10μm〜50μmの範囲に相当する。
【0062】
さらに、より好ましくは、電極幅aは、トナーの平均粒径の2倍以上〜6倍以下の範囲である。これは、例えば、トナーの平均粒径を5μmとすると、10μm〜30μmに相当する範囲である。この範囲とすることによって非常に効率が良くなることが判明している。
【0063】
また、トナーの搬送、ホッピングに作用する力を付与できる電界としては0.5V/μm以上、吸着の問題がない好ましい電界としては1V/μm以上、さらに十分な力を付与できるより好ましい電界としては2V/μm以上の範囲であることが分かっている。
【0064】
電極間隔W2については、間隔が広くなるほど搬送方向の電界強度は低下するため、上記電界強度の範囲に対応する値としても同様で、トナーの平均粒径の1倍以上〜20倍以下、好ましくは2倍以上〜10倍以下、さらにより好ましくは2倍以上〜6倍以下である。また、ホッピングの効率は電極間隔W2が広がると低下するが、トナーの平均粒径の20倍までは実用上のホッピング効率が得られる。トナー平均粒径の20倍を越えるとやはり多くのトナーの吸着力が無視できなくなり、ホッピングが全く発生しないトナーが発生するため、この点でも電極間隔W2はトナーの平均粒径の20倍以下とする必要がある。
【0065】
また、上述した電極構成による搬送及びホッピングを効率的に行なうことがでるのは、トナーの平均粒径が2〜10μm、Q/mが負帯電の場合には−3〜−40μC/g、より好ましくは、−10〜−30μC/g、正帯電の場合には+3〜+40μC/g、より好ましくは、+10〜+30μC/gであることが分っている。
【0066】
さらに、画像部電位Viと非画像部電位(地肌部電位)Vgとの差が300V以下で十分な現像ができるので、従来の現像方式に比較して、小型低コストの帯電器が使用でき、オゾンの発生量も少ないというメリットがある。また、トナー搬送部材2の電極102に印加する電圧は、トナーを引き付ける成分の電圧とトナーを反発する成分の電圧がトナー搬送部材22の隣り合う電極102、102間に印加されたときに形成されるトナー搬送方向の電界の最大値が2V/μm以上になる電圧とすることによって、トナーの搬送をより確実に行なうことができる。
【0067】
ところで、EH現像では、トナー搬送部材2上でトナーをホッピングさせることによって、トナー搬送部材2のトナーに対する吸着力を0にすることで現像を行なうものであるが、単にトナー搬送部材2上でトナーをホッピングにさせるだけでは、ホッピングしたトナーが像担持体1側への進行性を有しているとしても、像担持体1の潜像に付着することの確実性が保証されない。
【0068】
そこで、像担持体1の潜像の電位(表面電位)とトナー搬送部材2に印加する電位(発生させる電界)との関係を所定の関係に設定する、つまり、像担持体1の潜像の画像部に対してはトナーが像担持体1側に向かい、非画像部に対してはトナーが像担持体1側に向かわない電界を発生させる。これにより、潜像の画像部に対してはトナーが確実に付着し、非画像部に対してはトナーが像担持体1側に向わないので、トナー搬送部材2からホッピングしたトナーが効率的に現像に利用され、飛散を防止でき、低電圧駆動による、色ムラのない、高品質現像を可能にすることができる。
【0069】
このように、トナーのホッピング現象を利用するEH現像は、像担持体に形成する潜像電位差が、小さい、具体的には、300V以下のときにも、地汚れなく、一番現像しにくい孤立1画素まできれいに現像することができる。
【0070】
これに対して、従来の乾式現像方式では、一成分現像、二成分現像を問わず、画像部と地肌部の電位差は、少なくとも400V以上は必要で、通常は、500〜900Vである。例えば、画像部が+700Vで、地肌部が+100Vである(正規現像の場合)。そして、現像ローラに印加する現像バイアス電圧を、この中間の+400Vとし、画像部との電位差300Vで、現像ローラ(一成分)、またはキャリア(二成分)表面から負帯電トナーを静電力で引き剥がし、画像部に移動させてトナー像を形成させ、地肌部との電位差300Vで、地肌部に付着したトナーを静電力で引き剥がして現像ローラに戻すことで地汚れを防いでいる。
【0071】
このように、従来の現像方式では、現像ローラやキャリア、または感光体表面に、静電力や鏡像力や液間架橋力やファンデルワールツ力で強固に付着しているトナーを引き剥がして、現像するため、地汚れを解消するために、画像部と地肌部間に大きな電位差必要としてきた。
【0072】
これに対して、EH現像においては、トナーはトナー搬送部材より静電力で、像担持体近傍まで打ち上げられる(ホッピング)ので、像担持体側に、現像ローラやキャリアより付着トナーを剥離する力の源となる大きな電位差を準備しておく必要は全くなく、単に、像担持体近傍まで打ち上げられたトナーをさらに引き寄せる電位(画像電位)と、反発する電位(地肌電位、非画像部電位)を形成させておくだけで十分であり、その大きさは、以下に説明するように100Vで可能である。
【0073】
本発明によって、画像部と地肌部の電位差が300V以下の、低電位現像を実用化できるようになり、帯電時のオゾン発生量が減少し、画像露光のレーザー又はLEDなどの光量が下がって、その寿命が延び、低コスト化を図れることになる。また、書き込みのエネルギーが小さいということは、従来の高エネルギーの素子を利用する場合は高速での書き込みが可能であり、従って、2又は4ビームを必要としたレーザー光学系を1ビームとすることで大幅にコストダウンを図れる。あるいは、同一光学系で、画像形成速度を大幅に速くでき、また、転写電圧を低くできるので、オゾン発生量が減少し、転写時のトナー画像の乱れが少なくなり、感光層に加わる電界が下がるので、感光体の寿命が延びる等の大きな効果が得られる。
【0074】
以下、ホッピングモードのEH現像で、潜像の画像部電位Viと地肌部電位Vgの電位差を300V以下にして、地汚れなしに、孤立最小1画素もしっかり現像できる条件について説明する。
まず、ここで用いる画像形成装置の概要について図13の模式的説明図を参照して説明する。
【0075】
この画像形成装置では、例えば、直径60mm、電荷移動層の膜厚が13μmのOPCドラム201をスコロトロン帯電器202で帯電し、LD書き込みユニット203から照射するレーザー光で露光することで、OPCドラム201上に静電潜像を形成する。このときのOPCドラム201の表面電位は、OPCドラム201の右下(図示せず)に備え付けた表面電位計で測定した。
【0076】
また、OPCドラム201の直下に現像装置(現像手段)を構成するトナー搬送基板204を設けた。OPCドラム201とトナー搬送部材204の間隔は300μm、また、OPCドラム201の回転速度は200mm/secとした。トナー搬送部材204は、成就した図3で説明したと同様な構成で、電極102の電極幅W1は30μmで、ピッチpは60μm(電極間間隔W2=30μmになる。)である。
【0077】
そして、移送電界を発生させるために電圧印加手段205から前述したような3相の電圧を電極102に印加するようにしている。このときの印加電圧は、パルス状電圧であって、相対的にトナーを引き付ける電圧(吸引電圧)Vpとトナーを反発する電圧(反発電圧)Vrが交互に印加される。ここでは、印加電圧の周波数は3kHzに、デューティ(Duty)は50%とした例で説明する。なお、トナーを静電搬送する力は、印加電圧値ではなく、吸引電圧Vpと反発電圧Vrとの差で決定されるので、Vp−Vrを一定に保っているかぎり、電圧Vp、Vrを変えてもトナーの搬送状態は変わらない。
【0078】
また、トナー搬送部材204に対しては、トナー供給装置207からトナーTを供給する。このトナー供給装置207は、トナーを攪拌する攪拌スクリュー208とメッシュ電極209とを備え、攪拌スクリュー208にはバイアス電源210とバイアス電源211によって各バイアス電圧を加算したバイアス電圧を印加し、メッシュ電極209にはバイアス電源210のバイアス電圧を印加することで、負帯電トナーをトナー搬送部材204に供給する。
【0079】
さらに、給紙された用紙(転写材)にOPCドラム201上に形成されたトナー像を転写するための転写ベルト214及び転写バイアスローラ215などで構成した転写装置213を配置し、また、OPCドラム201に残留したトナーを除去するためのクリーニング手段216、OPCドラム201に残留した電荷を除去するための除電手段217などを配置している。
【0080】
なお、ここでは、すべて、負帯電トナーが潜像のマイナス電位が低い(絶対値が小さい)部分に付着する反転現像で説明するが、低電位現像を可能とする原理は、正規現像の場合も基本的に同じである。また、使用した現像剤は、2成分現像剤であり、トナーの平均粒径は5〜6μm、平均帯電量(比電荷)q/mは−20μC/g前後である。
【0081】
このように構成した装置において、スコロトロン帯電器202のグリッドに印加する電圧を、−50Vから−500Vまで変化させ、LD書き込みユニット203のレーザ光量を調整して、暗(地肌)電位Vdと明(画像)電位Vlを測定した。この測定結果を図14に示している。
【0082】
この図14から、このOPCドラム(電荷移動層13μm)201で、例えば潜像電位差Vpを150Vにするためには、グリッド電圧Vgを−165Vにすればよいことが分かる。このとき、暗電位Vdは、−210V、明電位Vlは−60Vである。なお、ここでは、負帯電トナーでネガポジ(反転)現像を行うので、暗電位が地肌部電位Vgに、明電位が画像部電位Viになる。また、レーザー光量は、得られたトナー画像を参考に、オーバー露光や、アンダー露光にならないように選択した。
【0083】
電荷移動層13μmのOPCドラム201を使用し、OPCドラム周速を150mm/sec、トナー搬送部材204の電極に対する印加電圧を−180V±60V、周波数3kHz、Duty50%、潜像電位差150V(暗電位Vd=−210V、明電位Vl=−60V)で、現像ギャップ(トナー搬送部材204とOPCドラム201間の距離)を50μmから700μmまで変化させて画像評価を行った。
【0084】
このときの、ベタ(広い面積の黒画像)画像(光学反射)濃度と地肌濃度を図15に示している。なお、OPCドラム201上で直接測定することができないため、透明弱粘着テープでOPCドラム201上よりトナー像を剥ぎ取り、テープごと白紙に張りつけて、X−Rite社のX−Rite938(商品名)で測定した。
【0085】
この図15より、現像ギャップが50μmから500μmまでの広い範囲で、画像濃度が1.4以上と高く、それより広がっても、700μmまで画像濃度が1.2以上あることが分かる。すなわち、ベタ画像濃度に関して言えば、現像ギャップは、50μmから500μmまで実用範囲である。逆に、地肌に関しては、ギャップ50μmを除いて、100μmから700μmまで実用範囲であることが分かる。
【0086】
次に、孤立1画素と3×3画素を、現像ギャップを変えて現像し、そのトナー像のドット直径を計測した。この結果を図16に示している。
【0087】
この図16から、同じ1ドットでもそれを構成する画素数が異なり、大きさが異なると、現像ギャップが変わったときの変化が異なることが分かる。すなわち、大ドット(3×3画素)は、現像ギャップの影響をあまり受けずに、50μmから700μmまで、わずかに小さくなるのに対して、小ドット(孤立1画素)の場合は、現像ギャップが400μm以上で非常に小さくなる。
【0088】
この原因を明らかにするため、現像ギャップを変えて、1画素潜像と3画素潜像の電界のシミュレーションを行った。この結果を以下に説明する。
シミュレーションは軸対象二次元差分法で行った。この計算方法は、数学的には、zとrの二次元であるが、z軸対称のため、z軸を中心として物理的には三次元空間のシミュレーションになる。計算条件は、実験条件に合わせた。すなわち、OPCの厚さを13μm、その表面(ベタ地肌)電位を−210V、トナー搬送部材の電極幅W1を30μm、ピッチpを60μm、印加電圧を−180V±60V、OPCドラム201とトナー搬送部材204の間のギャップを50μmから700μm、トナーの粒径を7μm、比電荷を−25μC/g、潜像の大きさを1画素×1画素(直径42.3μm)と3画素×3画素(直径127μm)とした(1画素は1/600インチ)。
【0089】
この結果のうち、潜像が42.3μmと127μmで、ギャップが400μmの場合を図17及び図18に示している。なお、図17は直径42.3μmの潜像(左上)の形成する電界(現像ギャップ400μm)の模式的説明図であり、図18は直径127μmの潜像(左上)の形成する電界(現像ギャップ400μm)の模式的説明図である。これらの図17及び図18において、上側の細長い帯がOPC201で、下側の長方形がトナー搬送部材204の電極102である。
【0090】
ここで、例えば、各図の一番左端(z軸)の−240V(反発電圧)が印加されている電極102a上のトナー(図示していない)は、静電力で、打ち上げられて上方に飛翔(Hopping)し、左上の潜像(画像部)から発している電気力線に到達すると、あとは、その電気力線を逆にたどって潜像に到達する。
【0091】
ところが、図17と図18から、42.3μm潜像と127μm潜像から発する電気力線を比較すると、その大きさに大きな違いがあることが分かる。幅が違うのは当然であるが、高さ(OPC表面からの距離)もかなり異なっている。潜像から発する電気力線のピークの高さを測ると、42.3μm潜像では54μm(図17)で、127μm潜像では131μm(図18)であった。
【0092】
ホッピングされたトナーは、127μm潜像では400−131=269μm飛翔すれば、潜像に到達できるが、42.3μm潜像では、400−54=346μm飛翔しなければ、潜像に到達できないことになる。
【0093】
この差が、大ドット(3×3画素127μm)潜像はギャップ400μmでも問題なく現像できたが、小ドット(孤立1画素42.3μm)潜像ではほとんど現像できなかった実験結果につながったと考えられる。
【0094】
この結果から、現像ギャップは、最小潜像(孤立1画素)の高さ+トナーのホッピング高さ以内にしなければならないことは明らかである。
【0095】
次に、ギャップ400μmで、42.3μmと127μmの潜像の高さは、それぞれ、54μmと131μmで、潜像の直径とほぼ等しかったが、このことは、ギャップGや潜像の大きさが変化しても変わらないか否かを評価するため、ギャップGと潜像の大きさを変えてシミュレーションし、同様に潜像の高さを測定した。その結果を図19及び図20に示している。
【0096】
これらの図19及び図20から、現像ギャップが300μm以上では、現像ギャップによらず、潜像の高さは、ほぼ潜像の直径に等しいことが分かる。
【0097】
潜像の高さが分かったので、次に、トナーのホッピング高さをシミュレーションで求めた。現像ギャップ400μmで、潜像直径42.3μmの場合に、反発電圧−240Vが印加されているz軸を含むトナー搬送部材204の電極102上に、直径7μm、比電荷−25μC/gのトナーをおいて、その飛跡から最高到達点を求めた。その結果を図21に示している。
【0098】
この図21において、小正方形記号はシミュレーションの結果で、曲線は次式を示している。なお、同式中、H:トナーホッピング高さ(μm)、E:水平搬送電界=(吸引電圧―反発電圧)/電極間間隔W2(V/μm)である。
H=√E×96[μm]
【0099】
この図21から、トナーのホッピング高さは、トナー搬送部材204の電極102にトナーの吸引電圧と反発電圧の差を電極間間隔W2で割った水平搬送電界(最大値)のルートに比例することが分かる。
【0100】
このときの比例定数は、この場合「96」であるが、トナーの粒径や比電荷が大きくなればより大きくなり、小さくなればより小さくなる。その範囲は、大きいほうで、この定数の約1.5倍、小さい方で、約半分と見積もられる。したがって、トナーのホッピング高さHの範囲は、水平搬送電界E(最大値)の関数として、次式のように表わすことができる。
50×√E<H<150×√E
【0101】
これより、ホッピング高さの実質的な上限値が、水平搬送電界最大値(V/μm)の平方根の150倍、最小潜像(孤立1画素)の電界の高さが潜像の直径に等しいことが分かるので、孤立1画素も現像するための現像ギャップGの上限Gmaxは、孤立最小画素の直径(μm)をDmin、最大水平搬送電界(V/μm)をEhmaxとしたとき、次式で決まることになる。
Gmax=Dmin+150(Ehmax)1/2[μm]
【0102】
そして、孤立1画素も現像するための現像ギャップGの上限Gmaxは、このDmin+150(Ehmax)1/2以下であればよいので、現像ギャップGの上限Gmax≦Dmin+150(Ehmax)1/2の関係を満たせばよい。
【0103】
例えば、最小画素が600dpiの1ドットだとすると、Dminは42μmで、搬送電極間間隔W2が30μmで、その間の電位差が120V(吸引=−120V、反発=−240V)であるとすると、Ehmaxは4V/μmで、現像ギャップ上限Gmaxは342μmとなる。
【0104】
この結果は、600dpiの孤立1画素が、現像ギャップ300μmでは現像できたが、400μmでは現像できなかった実験結果とよく一致している。なお、最大水平搬送電界は、搬送基板の電極間材料の選定により、10V/μmまでは十分可能であり、その時の現像ギャップ上限値は、500μm以上になる。
【0105】
次に、現像ギャップGの下限について説明する。
まず、地汚れが発生した現像ギャップ50μmと発生しなかったギャップ100μmの現像空間のシミュレーション結果を、図22及び図23に示している。なお、シミュレーション方法は、図17とまったく同じである。
【0106】
図23を見ると、電極102のうちの吸引(高)電位(−120V)電極102bから、OPCの地肌部(−210V)に向かって電気力線が伸びて地肌部を覆っていることが分かる。負帯電トナーは、この電気力線と逆向きに静電力を受けるので、右から2番目の反発(低)電位電極102aからホッピングされたトナーも、OPCの手前でこの静電力を受けて失速し、逆に、トナー搬送部材204の吸引電極102bに向かって移動する。このため地汚れが生じることはない。
【0107】
これに対して図22を見ると、同様に、吸引(高)電位電極102bより電気力線がOPCの地肌部に向かっているが、反発(低)電位電極102aの真上では、この線が、左右どちらからも入っていないことが分かる。すなわち、ここには、負帯電トナーを搬送基板へ押し返す電界が形成されていないので、地汚れが発生したわけである。
【0108】
これらの図22と図23を比較すると、反発(低)電位電極の両側の吸引(高)電位電極から発した電気力線が、反発(低)電位電極真上のOPCの地肌部に入るためには、現像ギャップはある程度広くなければならないことが分かる。その最小ギャップについて、曲線で描かれている電気力線を直線に置き換えて計算しても実用的には問題はない。その勾配は60°である。
【0109】
そこで、図24を参照して、隣接する、吸引(高)電位電極102bの端から発した電気力線が、60度の勾配で、直線的に上昇すると仮定すると、その先端が、反発(低)電位電極102a中心の真上の地肌に入るギャップGは三角形の公式から、電極幅をW1(μm)、電極間距離をW2(μm)としたとき、次式で表わされる。
G=(W2+0.5W1)×31/2 [μm]
【0110】
そして、地肌汚れを生じないためには、ギャップGが上記の(W2+0.5W1)×31/2以上であればよいので、G=(W2+0.5W1)×31/2の関係を満たすようにすればよい。
【0111】
例えば、W1=W2=30μmとすると、G=78μmとなる。ギャップGがこの値より小さいと、左隣の吸引(高)電位電極の端から発した電気力線が、反発(低)電位電極の中心の真上の地肌に入る前に、その左側で、OPCに到達し、逆に、右側の吸引(高)電位電極の端から発した電気力線は、その右側でOPCに当たり、その結果、その間では、吸引(高)電位電極に向かう電気力線がなく、反発(低)電位電極の中心からホッピングされたトナーが、逆方向の電界に会うことなくここに到達して地汚れとなり、ギャップGが78μmより広ければ、左右の吸引(高)電位電極より発した電気力線は、反発(低)電位電極の中心の真上の地肌の手前で互いに反発して曲がってそこに入るので、その領域に来たトナーはこの電気力線に沿って、搬送基板に向かう静電力を受けるので地汚れは発生しない。
【0112】
この結果は、ギャップ50μmで地汚れし、100μmでしなかった実験結果とよく一致している。
【0113】
なお、トナー搬送部材204の電極幅W1と電極間間隔W2は、30μmより、その半分くらいに縮めることは可能なので、実用的な最小現像ギャップは40μmくらいである。
【0114】
以上の説明では、トナー搬送部材が平板状である場合について説明したものであるが、前記図1又は図2に示すようにトナー搬送部材12がロール状部材である場合にも同様に当てはまる。
【0115】
したがって、像担持体とトナー搬送部材との間の距離をG(μm)、トナー搬送部材の電極の幅をW1(μm)、トナー搬送部材の電極の間隔をW2(μm)としたとき、距離Gが、G≧(W2+0.5W1)×31/2、の式を満たすことによって、地汚れのない現像を行なうことができる。
【0116】
また、像担持体とトナー搬送部材との間の距離をG(μm)、孤立最小画素の直径をDmin(μm)、トナー搬送部材で形成する搬送電界の最大搬送方向電界をEhmax(V/μm)としたとき、距離Gが、G≦Dmin+150(Ehmax)1/2、の式を満たすことで、孤立1画素をきれいに現像することができるようになる。
【0117】
次に、像担持体の電荷移動層の膜厚と解像力rとの関係について図25をも参照して説明する。
ここでは、前述した図14で説明したと同様の実験を、電荷移動層の厚さを13μm、15μm、18μm、23μm、28μmとした5種類のOPCドラム201を準備し、潜像電位差を150Vに統一し、同一現像条件(トナー搬送部材204とOPCドラム201との現像ギャップGを300μm、OPCドラム周速を150mm/sec、トナー搬送部材204の電極に対する印加電圧を−180V±60V、周波数3kHz、Duty50%、潜像電位差150V(暗電位Vd=−210V、明電位Vl=−60V)で現像して、画像評価を行った。
【0118】
この実験を、上述した600dpiの他に、レーザー光学系を代えて、1200dpi、1800dpiの解像力(画像密度)についてそれぞれ行った。この結果を図25に示している。
【0119】
この実験によると、600dpiの画像について見ると、電荷移動層の厚みによって画像が全くことなるが判明した。特に、一番現像しにくい、孤立最小1画素(書込み600dpiで、各黒画素間には3個の白画素が配置されている。)で違いが顕著である。すなわち、電荷移動層厚みが28μmの場合は、孤立1画素が形成される位置にトナーがまばらに散らばって濃度の薄いボケたドット画像(NG画像)になったのに対して、電荷移動層厚みが13μm、15μm、18μmと薄い場合には、トナーが所定の位置に密に集中して濃度の濃いシャープなドット画像となった。電荷移動層厚みが23μmの場合は、この中間で、少しボケていた。
【0120】
次に、1200dpiの画像について見ると、今度は、600dpiで少しボケていた電荷移動層厚みが23μmの場合は、濃度の低いボケたドット画像(NG)となり、電荷移動層厚みが18μmの場合は、少しボケたドットとなった。
【0121】
さらに、1800dpiの画像について見ると、今度は、電荷移動層厚みが18μmの場合もNG画像となり、電荷移動層厚みが15μmの場合のドットも少しボケたが、電荷移動層厚みが13μmの場合は相変わらず高濃度でシャープのドット画像が得られた。
【0122】
この結果に基づくと、低電位潜像の、孤立最小1画素まで、高濃度にシャープに現像するためには、電荷発生層が内部(下側)にある像担持体の場合、解像力をr(dpi)としたとき、電荷移動層の厚さtgは、tg≦7200/r+13 [μm]、の式を満たしていることが必要であることが判明した。より、好ましくは、tg≦7200/r+10 [μm]の式を満たしていることである。
【0123】
電荷移動層の厚さtgが厚いほど、ドット画像がボケて現像されたのは、電荷発生層で発生した電荷(この場合は、正孔)が、電荷移動層を移動するときに、同極性のためクーロン斥力で互いに反発し、その外殻の電荷が、横に広がりながら移動するためと考えられている。電荷移動層の厚さが厚いほど、移動距離が長くなるので、横へのシフトが大きくなって、1画素潜像が広がる(ボケる)訳である。また、像担持体(OPC)表面に到達する正孔の分布が広がる結果、その密度も下がり、そのため、ドット潜像の深さが浅くなる(たとえば、暗電位−210Vから、正孔の広がりがなければ、−80Vまで下がった明電位が、−100Vまでしか下がらなくなる)。この結果、現像されるトナー量も減って濃度が薄くなる。
【0124】
従来の現像方式においては、例えば、暗電位が−870Vと高く、明電位(ベタで約−120V)との間に750Vもの電位差があったので問題にならなかったが、本発明で用いるEH現像においては、明暗電位差が、例えば、150Vしかない場合は、現像されたトナーで生じるトナー電位の影響を無視できない。特に、孤立最小1画素の場合は、その差は、ベタ電位差150Vのさらに2/3〜1/2に下がるので、現像された帯電トナーから生じるトナー電位Vtの影響は大きくなる。
【0125】
例えば、−20μC/gに帯電したトナーが、十分な画像濃度を与える0.5mg/cmの密度で像担持体表面に載ったとき、その電位は、電荷移動層厚みが13μmのOPCでは、−55Vであるが、電荷移動層厚みが28μmのOPCでは、−120Vにも達する。孤立最小1画素の電位の深さは約80Vと見積もられるので、電界移動層厚みが28μmのOPCで濃度が薄くなったのは、必要とされるトナー量の半分程度がドット潜像に付着した時点で、潜像の電界がほとんど消滅して後続のトナーが現像に参加できなかったためと推測される。
【0126】
一方、電荷移動層厚みが13μmのOPCの場合には、必要なトナーが潜像ドットに集まっても、まだ少し現像できる電位差が残されているので、高濃度のドットが現像されたと推測される。
【0127】
また、電荷移動層の厚さが同じでも、解像力が高いほど、孤立最小1画素のドットが、より低濃度に、アンシャープになったのも、これが原因と考えられる。すなわち、1200dpiでは、600dpiのときの、パルス幅の1/2のパルス幅で露光し、1800dpiでは、1/3で露光したわけであるが、そのとき、1画素のピーク露光強度も低下して、潜像が浅くなり十分現像できなくなったと考えられる。
【0128】
すなわち、低電位現像の場合には、電荷移動層の厚さtgは、クーロン斥力による正孔雲の横方向への広がりよりも、トナー電位Vtとの関係で、孤立最小1画素も高濃度に現像できるように決められるべきであり、図25がその結果である。
【0129】
この結果、この画像形成装置によって、画像部と地肌部の電位差が300V以下の低電位現像を実用化することができ、帯電時のオゾン発生量が減少し、画像露光のレーザー又はLEDなどの光量が下がって、その寿命が延び、そのコストを低減できる。また、書き込みのエネルギーが小さいということは、高速での書き込みが可能であり、従って、2又は4ビームを必要としたレーザー光学系を1ビームとすることで大幅にコストダウンができる。また、転写電圧を低くできるので、オゾン発生量が減少し、転写時のトナー画像の乱れが少なくなり、感光層に加わる電界が下がるので、感光体の寿命が延びる等の大きな効果が期待できる。
【0130】
さらに、搬送電極のディメンションと印加電圧で決定される搬送電界の強さに対し、現像ギャップを適正に設定することで、潜像電位差が小さい低電位現像であるEH現像においても、地汚れなく、孤立1画素まできれいな現像を行なうことができる。特に、EH現像を用いることによって直径わずか約30μmの1200dpiの孤立1ドットをも現像することができるようになる。
【0131】
次に、本発明に係るプロセスカートリッジ及び同プロセスカートリッジを備える本発明に係る画像形成装置の一例について図26を参照して説明する。
この画像形成装置は、像担持体、帯電手段、現像手段としての本発明に係る現像装置、クリーニング手段を備えた作像手段であるブラック(K)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)のトナー像を形成するプロセスカートリッジ501K、501M、501C、501Y(以下、区別しないときには単に「プロセスカートリッジ501」という。なお、他も同じである。)と、光書込み装置502K、502M、502C、502Yと、転写材506を搬送する搬送ベルト503A及びプロセスカートリッジ501K、501M、501C、501Yに搬送ベルト503Aを挟んで対向する転写ローラ503Bk、503Bm、503Bc、503Byと、定着装置504と、転写材506を収容する給紙装置505とを備えている。
【0132】
ここで、光書込み装置502K、502M、502C、502Yは画像情報に従ってプロセスカートリッジ501K、501M、501C、501Yの帯電後の像担持体に潜像を書き込むためのものであり、ポリゴンを用いた光走査装置やLEDアレイ等、種々のものを使用することができる。
【0133】
搬送ベルト503Aは、搬送ローラ511、従動ローラ512及びテンションローラ513,514間に架け渡され、搬送ローラ511の回転により矢示方向に周回移動する。そして、搬送ローラ511と対向して転写材506を搬送ベルト503A上に吸着させるための吸着ローラ515を配置し、また、搬送ベルト503Aの出口側には搬送ベルト503Aにトナー像を形成したときのパターンを検出するPセンサ516を配置している。
【0134】
転写ローラ503Bk、503Bm、503Bc、503Byは、少なくとも芯金と芯金を被覆する導電性弾性層とを有し、導電性弾性層はポリウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)等の弾性材料に、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズ等の導電性付与剤を配合分散して電気抵抗値(体積抵抗率)を10〜1010Ω・cmの中抵抗に調整した弾性体ローラである。
【0135】
定着装置504は、加熱ローラ504a及びこれに対向して加圧ローラ504bを備えている。
【0136】
そして、この画像形成装置において、通常の画像形成動作では、給紙装置505から供給される記録用紙等の転写材506は吸着ローラ515に所定の電圧が印加されることで転写体である転写材搬送ベルト503Aに吸着させられる。転写材506は転写材搬送ベルト503Aに担持された状態で転写材搬送ベルト503Aとともに移動し、移動中にプロセスカートリッジ501K、501M、501C、501Yから順次各色のトナー像が転写させられ、転写材506上にカラーのトナー像が形成される。転写材506が搬送ベルト503Aを通過して定着装置504に到達すると、転写材506上のトナー像は加熱ローラ504a及び加圧ローラ504bに挟まれつつ加熱されることで転写材506上に定着させられ、転写材506上に可視像が定着形成される。その後、カラー画像が形成された転写材506は装置本体510上部の排紙部507に排出される。
【0137】
また、各色トナー像の色ずれやトナー濃度の調整を行なうモードでは、作像ユニット501K、501M、501C、501Yから転写材搬送ベルト503A上に直接所定パターンのトナー像が形成され、Pセンサ516によってそのトナーパターンが検出され、その検出結果に基づいて書込みタイミングや現像バイアスの変更などが行なわれ、最適なカラー画像を得ることができる状態に調整させられる。転写材搬送ベルト503A上のトナーパターンは吸着ローラ515に印加されたバイアスによって帯電極性を整えられた後、転写ローラ503Bk、503Bm、503Bc、503Byに印加された電圧によってプロセスカートリッジ501K、501M、501C、501Yに回収される。
【0138】
次に、本発明にプロセスカートリッジ501について図27を参照して説明する。なお、図27は同プロセスカートリッジの拡大説明図である。
このプロセスカートリッジ501は、像担持体521と、接触帯電部材531と、前述した第1実施形態の一例で説明した現像装置541(なお、他の現像装置でも良い。)と、クリーニング装置551とを備えている。
【0139】
像担持体521は、負帯電の有機感光体であり、図示しない回転駆動機構によって矢印方向(図で反時計回り方向)に回転されるようにして備えられている。接触帯電部材531は、芯金上に、ウレタン樹脂、導電性粒子としてのカーボンブラック、硫化剤、発泡剤等を処方した中抵抗の発泡ウレタン層をローラ状に形成した可撓性の帯電ローラである。接触帯電部材(帯電ローラ)531の芯金上に形成される中抵抗層としては、上記の発泡ウレタン層に限定されるものではなく、ウレタン、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムや、イソプレンゴム等に抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物等の導電性物質を分散したゴム材や、またこれらを発泡させたものを用いることができる。
【0140】
クリーニング装置551は、像担持体521の回転方向に対してカウンタ方向で当接させられたクリーニングブレード552と、クリーニングされたトナー粒子を廃トナーとして収納する廃トナー格納部553などを備えている。
【0141】
次に、このように構成したプロセスカートリッジ501の動作について説明する。
この画像形成装置は、複写機及びプリンタとして機能することができる複合機であり、複写機として機能するときには、スキャナから読み込まれた画像情報がA/D変換、MTF補正、階調処理等の種々の画像処理を施されて書込みデータに変換される。プリンタとして機能するときには、コンピュータ等から転送されるページ記述言語やビットマップ等の形式の画像情報に対して画像処理が施され書込みデータに変換される。
【0142】
そして、画像形成に先駆けて、像担持体521は表面の移動速度が所定の速度となるように、図25の矢印方向すなわち反時計回り方向に回転を始める。また帯電ローラ531は像担持体521に対してつれまわり回転させられる。このとき帯電ローラ531の芯金には帯電バイアス印加電源から−100Vの直流電圧および振幅1200V周波数2kHzの交流電圧が印加され、これにより像担持体521の表面が約−100Vに帯電させられる。
【0143】
帯電させられた像担持体521に対し、光書込み装置502は書込みデータに応じてレーザー光502aを照射して露光を行なう。すなわち、光照射によって画像部の電位を変化させることで光照射されなかった非画像部の電位との差を発生させ、この電位コントラストによる静電潜像を形成する。
【0144】
光書込み装置502によって像担持体521上に形成された静電潜像は本発明に係る現像装置541によって現像され、画像部にトナー粒子が付着することによってトナー像として像担持体521上に可視化される。
【0145】
像担持体521上に形成させられたトナー像が転写ローラ503Bと像担持体521との対向部である転写部に到達するのとタイミングを合わせて給紙装置505から転写材506が搬送され、像担持体521上のトナー像は転写ローラ503Bに印加された電圧により転写材506へと転写される。トナー像が転写された転写材506は定着装置504によって定着処理され転写材506上にカラー画像が出力される。
【0146】
一方、転写されずに像担持体521上に残留したトナー(転写残トナー)はクリーニング装置551によって清掃され、清掃後の像担持体521表面は次回の画像形成のために使用される。
【0147】
そして、これらのブラック、マゼンタ、シアン、イエローのトナー像を形成するためのプロセスカートリッジ501K、501M、501C、501Yは、画像形成装置本体510から着脱可能としている。つまり、プロセスカートリッジ501K、501M、501C、501Yは、図28に示すように、転写材搬送ベルト503Aが装置本体510から開放退避することで、開放された空間から着脱可能となっており、ユーザーによる交換が可能となっている。
【0148】
次に、本発明に係る現像装置を備える本発明に係る画像形成装置の他の例について図29及び図30を参照して説明する。なお、図26と同じ機能を果たす要素については同じ符号を付して、特に必要がない限りその説明は省略する。
この画像形成装置では、負帯電の有機感光体をベルト形状に構成したベルト状像担持体561を備え、このベルト状像担持体561は、駆動ローラ562、従動ローラ563及び転写対向ローラ564間に架け渡され、図示しない回転駆動機構によって矢印方向に周回移動される。
【0149】
このベルト状像担持体561には、ベルト状像担持体561を帯電させる帯電装置565K、565M、565C、565Yと、ベルト状像担持体561上の静電潜像を現像する本発明に係る現像装置である現像カートリッジ566K、566M、566C、566Yとが、それぞれ各色ごとに対向しており、像担持体521の移動にしたがって順次トナー像を像担持体561上に重ねていくように構成されている(1パスカラー)。
【0150】
また、現像カートリッジ566K、566M、566C、566Yのトナー搬送部材2にベルト状像担持体561を挟んで対向する位置に対向ローラ567K、567M、567C、567Yを配置している。さらに、転写対向ローラ564にベルト状像担持体561を挟んで対向する位置に転写ローラ568を配置している。
【0151】
帯電装置565は像担持体561の表面を一様帯電させるためのものであり、本実施形態ではコロナ帯電方式を採用している。コロナ帯電のように非接触の帯電手段を用いれば、上流側の現像カートリッジ566によって形成されたトナー像を乱すことなく像担持体561を帯電させることができる。
【0152】
現像カートリッジ566は、本発明に係る現像装置であり、多少の形状の変更はあるが上記実施形態で説明した現像装置と同じである。ここで、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのトナー像を現像するための現像カートリッジ566K、566M、566C、566Yは、図29に示すように、像担持体561が装置本体510から開放退避することで、開放された空間から着脱可能となっており、ユーザーによる交換が可能となっている。
【0153】
この画像形成装置においては、画像形成時には、帯電装置565によって像担持体561表面が一様に帯電させられる。すでに像担持体561上にトナー像が形成されている場合でも、トナー像を含め像担持体561の表面が一様帯電させられる。次いで、光書込み装置502から画像情報に応じた光ビームが照射される。光ビームは帯電装置565と現像カートリッジ566の間を通過するため、すでに一様帯電させられた像担持体561に対して光ビームが照射されることとなり、負帯電性の感光体である像担持体561の表面では画像部に対応する領域が除電されて潜像が形成される。
【0154】
現像カートリッジ566は第1実施形態と同様に像担持体561上に形成された潜像の画像部にトナー粒子を付着させ、潜像をトナー像として可視化する。以上の帯電、光ビーム照射、現像の工程が前述のように各現像カートリッジとの対向部において繰り返され、像担持体561上に4色のトナー像が重ねられたフルカラー画像が形成される。
【0155】
一方、給紙装置505から送られた転写材506が像担持体561と転写ローラ568との接触部へと搬送され、当該接触部において像担持体561上に形成されたフルカラー画像が転写ローラ568に印加された電圧によって転写材506上に転写される。その後、転写材506は定着装置504に到達すると、転写材506上のトナー像は加熱ローラ504a及び加圧ローラ504bに挟まれつつ加熱されることで転写材506上に定着させられ、転写材506上にフルカラーの可視像が形成される。
【0156】
なお、本発明は、中間転写ベルト、転写ドラム、中間転写ドラムなどを用いたカラー画像形成装置、モノクロ画像形成装置などにも適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の現像装置部分の一例を示す模式的構成図である。
【図2】同実施形態の現像装置部分の他の例を示す模式的構成図である。
【図3】同実施形態のトナー搬送部材の一例を説明する説明図である。
【図4】同トナー搬送部材の電極配置の説明に供する説明図である。
【図5】同トナー搬送部材による搬送原理の説明に供する駆動波形の一例を示す説明図である。
【図6】同じくトナー搬送の一例を説明する説明図である。
【図7】同じくトナー搬送の具体例を説明する説明図である。
【図8】同じくトナー搬送部材に対する電圧印加手段の構成の一例を説明するブロック図である。
【図9】同トナー搬送部材の搬送領域に印加する電圧波形の一例を示す説明図である。
【図10】同トナー搬送部材の現像領域に印加する電圧波形の一例を示す説明図である。
【図11】同トナー搬送部材の現像領域に印加する電圧波形の他の例を示す説明図である。
【図12】同トナー搬送部材の搬送領域に印加する電圧波形の更に他の例を示す説明図である。
【図13】実験に供した装置構成の説明に供する説明図である。
【図14】グリッド電圧と暗電位、明電位、潜像電位差の関係の測定結果を示す説明図である。
【図15】現像ギャップGと光学反射濃度の関係の測定結果を示す説明図である。
【図16】現像ギャップと現像されたドットのサイズの関係の測定結果を示す説明図である。
【図17】直径42.3μmの潜像が形成する電界の説明に供する説明図である。
【図18】直径127μmの潜像が形成する電界の説明に供する説明図である。
【図19】現像ギャップGと潜像高さの関係の説明に供する説明図である。
【図20】現像直径と潜像高さの関係の説明に供する説明図である。
【図21】水平搬送電界の最大値とホッピング高さの関係の説明に供する説明図である。
【図22】現像ギャップGが50μmのときの地肌部対応現像空間における電界の説明に供する説明図である。
【図23】現像ギャップGが100μmのときの地肌部対応現像空間における電界の説明に供する説明図である。
【図24】電極幅、電極間間隔と最小現像ギャップGの説明に供する説明図である。
【図25】書込み画素密度と電荷移動量厚さtgとの関係における現像ドットの品質評価結果を示す説明図である。
【図26】本発明に係るプロセスカートリッジを備えた本発明に係る画像形成装置の第2実施形態を説明する構成図である。
【図27】同プロセスカートリッジの説明に供する説明図である。
【図28】同画像形成装置のプロセスカートリッジの脱着の説明に供する説明図である。
【図29】本発明に係る現像装置からなる現像カートリッジを備えた本発明に係る画像形成装置の第3実施形態を説明する構成図である。
【図30】同画像形成装置の現像カートリッジの脱着の説明に供する説明図である。
【符号の説明】
【0158】
1…像担持体
2…トナー搬送部材
3、13…現像剤担持体
4…収容部
5A、5B…攪拌スクリュー
7…現像剤規制部材
11…第1電圧印加手段
12…第2電圧印加手段
102…電極
201…OPCドラム
204…トナー搬送部材(トナー搬送基板)
501K、501M、501C、501Y…プロセスカートリッジ
502K、502M、502C、502Y…光書込み装置
503A…転写材搬送ベルト
503Bk、503Bm、503Bc、503By…転写ローラ
504…定着装置
505…給紙装置
506…転写材
507…排紙部
521…像担持体
531…帯電装置
541…現像装置
551…クリーニング装置
561…像担持体
565K、565M、565C、565Y…帯電装置
566K、566M、566C、566Y…現像カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成された潜像にトナーを付着させて現像する画像形成装置において、所定の間隔で並べて配置された複数の電極に多相の電圧が印加されることで形成される搬送電界によって前記像担持体との対向域に前記トナーを搬送するトナー搬送部材を備え、前記像担持体が電荷発生層と電荷移動層を有し、前記電荷発生層が内部にある場合、電荷移動層の厚さtg(μm)が、解像力をr(dpi)としたとき、
tg≦8400/r+13
の式を満たしていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記潜像の画像部電位と地肌部電位との差が300V以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
少なくとも像担持体と、この像担持体上に形成された潜像にトナーを付着させて現像する現像手段とを含み、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、前記現像手段は、所定の間隔で並べて配置された複数の電極に多相の電圧が印加されることで形成される搬送電界によって前記像担持体との対向域に前記トナーを搬送するトナー搬送部材を備え、前記像担持体が電荷発生層と電荷移動層を有し、前記電荷発生層が内部にある場合、電荷移動層の厚さtg(μm)が、解像力をr(dpi)としたとき、
tg≦8400/r+13
の式を満たしていることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−259411(P2006−259411A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78273(P2005−78273)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】