説明

画像形成装置及び制御プログラム

【課題】 描画処理を効率よく実行することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 使用するリソースが制限された状態で描画処理を実行する汎用描画処理手段と、使用可能な全てのリソースを使用して描画処理を実行する高速描画処理手段とを備える画像形成装置であって、印刷するページの数の情報を含む印刷データを受信する受信手段と、現在処理中のジョブが最終ページであるか否かを判定する処理ページ判定手段と、現在処理中のジョブに続くジョブが存在するか否かを判定する後続ジョブ判定手段と、処理ページ判定手段により次に描画するべきページが最終ページと判定され、かつ後続ジョブ判定手段により後続ジョブが存在しないと判定された場合に、最終ページの描画処理を高速描画処理手段により描画処理を実行し、最終ページ以外のページの描画処理を汎用描画処理手段により描画処理を実行する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画処理を効率よく実行する画像形成装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホストコンピュータが送信した印刷データを受信して、この印刷データに基づいて印刷処理を実行する場合に、事前に印刷データの内容を把握することができる情報を得ることができれば、この情報を利用して印刷処理を高速に処理できる可能性がある。例えば、特許文献1に記載されているように、プリンタドライバにおけるデータ作成中に予めデータの構造情報を確認できた場合、この構造情報を利用して、プリンタ側の負荷を軽減して印刷効率を高めることができる印刷システムが知られている。
【特許文献1】特開2002−251269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に示す印刷システムにあっては、構造情報の解析に時間がかかる場合があるため、解析時間を含む全体の処理時間が長くなる場合があるという問題がある。一方、印刷データを処理する場合に、メモリやCPUの並列動作といったハードウェアのリソースを最大限に利用すれば高速に処理することが可能となるが、複数ページの印刷データの後続の印刷データが存在する場合は、必ずしもリソースを最大限に使用することが全体の処理時間が短くなるとは限らない。例えば、現在処理中のページの描画処理を実行する場合に使用可能なメモリを最大限に使用して処理すると、現在処理中のページの描画処理時間は短くなるが、このページに続くページの描画処理においてメモリが不足してしまい結果的に処理時間が長くなってしまう可能性がある。通常、描画処理時には次のページのことも考慮して、メモリ等のリソースの使用に制限を設けて処理するのが一般的である。しかし、1ページの印刷データや複数ページの印刷データの最終ページを処理する場合において、後続の印刷データが無い場合は、リソースの使用制限を設ける必要はなく、リソースを充分に使い切れていないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、描画処理を効率よく実行することができる画像形成装置及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、使用するリソースが制限された状態で描画処理を実行する汎用描画処理手段と、使用可能な全てのリソースを使用して描画処理を実行する高速描画処理手段とを備える画像形成装置であって、印刷するページの数の情報を含む印刷データを受信する受信手段と、現在処理中のジョブが最終ページであるか否かを判定する処理ページ判定手段と、現在処理中のジョブに続くジョブが存在するか否かを判定する後続ジョブ判定手段と、前記処理ページ判定手段により次に描画するべきページが最終ページと判定され、かつ前記後続ジョブ判定手段により後続ジョブが存在しないと判定された場合に、最終ページの描画処理を前記高速描画処理手段により描画処理を実行し、最終ページ以外のページの描画処理を前記汎用描画処理手段により描画処理を実行する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明は、使用するリソースが制限された状態で描画処理を実行する汎用描画処理手段と、使用可能な全てのリソースを使用して描画処理を実行する高速描画処理手段とを備える画像形成装置上で動作する制御プログラムであって、印刷するページの数の情報を含む印刷データを受信する受信処理と、現在処理中のジョブが最終ページであるか否かを判定する処理ページ判定処理と、現在処理中のジョブに続くジョブが存在するか否かを判定する後続ジョブ判定処理と、前記処理ページ判定処理により次に描画するべきページが最終ページと判定され、かつ前記後続ジョブ判定処理により後続ジョブが存在しないと判定された場合に、最終ページの描画処理を前記高速描画処理手段により描画処理を実行し、最終ページ以外のページの描画処理を前記汎用描画処理手段により描画処理を実行する制御処理とをコンピュータに行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、処理するページ数を考慮して最適な描画処理を実行することにより、描画時間を短縮することができるため、描画処理の高速化を図ることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態による画像形成装置を図面を参照して説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、文書作成アプリケーションを使用して文書等を印刷するための印刷基データを作成するとともに、この作成した印刷基データから印刷データを生成して画像形成装置へ出力するパソコンである。符号2は、パソコン1が出力する印刷データを受信して、画像を印刷用紙に転写する画像形成装置である。符号11は、作成した印刷基データを分析する印刷基データ分析部である。符号12は、印刷基データから印刷データへの変換を行ない出力する印刷データ生成部である。符号13は、印刷データのページ情報を印刷データの先頭に付与するページ情報生成部である。符号14は、印刷データを画像形成装置2に対して送信する印刷データ送信部である。
【0009】
符号21は、パソコン1から送信された印刷データを受信する印刷データ受信部である。符号22は、印刷データの内容を解析する印刷データ解析部である。符号23は、印刷データ中の描画データを処理する描画データ処理部である。符号24は、拡大縮小の設定行列や現在有効なスクリーン等の描画に関係する設定情報を管理する描画環境管理部である。符号25は、連続ページの印字を考慮して、使用するリソースが制限された状態で描画処理を実行する汎用描画処理部である。符号26は、1ページのデータをメモリやCPUのリソースを最大限に活用し、使用可能な全てのリソースを使用して高速描画処理を実行する高速描画処理部である。符号27は、各処理部で処理された情報を基にディスプレイリストを作成するディスプレイリスト作成部である。符号28は、描画データ処理部23において作成されたディスプレイリストからVRAMにビットマップデータを作成する描画部である。符号29は、実装されているメモリを管理するメモリ管理部である。符号30は、システムの共通情報を管理し、システムの制御を行なうシステム制御部である。符号31は、描画データ中の色空間からデバイスの色空間への色変換を行なう色変換処理部である。符号32は、イメージのレンダリングを行なうレンダリング部である。符号33は、実際に記録媒体(印刷用紙)に印刷を行なう出力部である。
【0010】
次に、図2を参照して、図1に示すパソコン1において、印刷基データを作成し、この印刷基データから印刷データを出力する処理動作を説明する。図2は、図1に示すパソコン1における処理動作を示すフローチャートである。まず、使用者は、パソコン1にインストールされている文書作成アプリケーションを使用して文書データを作成する(ステップS1)。そして、使用者は文書作成アプリケーション上において、印刷指示の操作を行う。これを受けて、文書作成アプリケーションは、作成された文書データに基づく印刷基データを出力する。
【0011】
文書作成アプリケーションが出力した印刷基データは、印刷基データ分析部11が読み込み、読み込んだ印刷基データを分析する(ステップS2)。そして、印刷基データ分析部11は、印刷基データの分析結果を印刷データ生成部12へ出力する。これを受けて、印刷データ生成部12は、印刷基データの分析結果に基づいて印刷データを生成する(ステップS3)。ページ情報生成部13は、印刷データ生成部12において生成された印刷データの内容が「改ページ」であるか否かを判定する(ステップS4)。この判定の結果、「改ページ」でなければ次のステップをスキップする。一方、判定の結果、生成された印刷データが「改ページ」であればページ数をカウントするカウンタをインクリメントする(ステップS5)。
【0012】
次に、印刷基データ分析部11は、印刷基データの終了か否かを判定し(ステップS6)、終了でなければ、ステップS2へ戻り、印刷基データが終了するまでステップS2〜S5の処理を繰り返し実行する。
【0013】
一方、印刷基データの終了が検出された時点で、印刷基データ分析部11は、ページ情報生成部13に対して、印刷基データの終了を通知する。これを受けて、ページ情報生成部13は、内部のページ数カウンタのカウント値に基づいて、ページ数を示す情報であることを示す識別子とこのカウント値(印刷する総ページ数の値)とからなるページ数情報を生成し、このページ数情報を、印刷データ生成部12が生成した印刷データの先頭に付加する(ステップS7)。そして、印刷データ送信部14は、ページ数情報が付加された印刷データを画像形成装置2に対して送信する(ステップS8)。これにより、ページ数情報が先頭に付加された印刷データがパソコン1から画像形成装置2に対して送信されることになる。
【0014】
なお、印刷基データ分析部11、印刷データ生成部12、ページ情報生成部13及び印刷データ送信部14は、パソコン1にインストールされているプリンタドライバによって実現してもよい。
【0015】
次に、図3を参照して、図1に示すパソコン1から送信される印刷データを画像形成装置2が受信して、印刷を実行する動作を説明する。図3は、図1に示す画像形成装置2の処理動作を示すフローチャートである。まず、印刷データ受信部21は、パソコン1から送信された印刷データを受信し、内部に一時保持する(ステップS11)。印刷データ解析部22は、一時保持されている印刷データを先頭部分を読み出し、ページ数を示す情報であることを示す識別子に続くページ数の値を読み出し、内部に保持する(ステップS12)。この保持した値は、総ページ数であるため、最終ページの値に相当する。
【0016】
次に、印刷データ解析部22は、印刷データ受信部21内に保持されている印刷データを順に読み出し、読み出した印刷データを分析する(ステップS13)。そして、印刷データを分析した結果、このページが最終ページであるかを判定する(ステップS14)。この判定は、処理しようとするページの値が内部に保持した総ページ数の値と一致するか否かによって判定する。この判定の結果、最終ページでなければ、後続するページが存在するため、印刷データ解析部22は、印刷データを分析した結果を複数ページ処理用の汎用描画処理部25へ受け渡す。これを受けて、汎用描画処理部25は、後続するページが存在する場合の描画処理を実行する(ステップS15)。これは、予め決められたリソースを使用して、描画処理が実行されることになる。そして、印刷データ解析部22は、後に続く印刷データを読み出して、同じ処理を繰り返し実行する。
【0017】
一方、印刷データを分析した結果、このページが最終ページであった場合、印刷データ解析部22は、印刷データ受信部21に、後続の印刷データが保持されているか否かを判定する(ステップS16)。この判定の結果、既に後続の印刷データが保持されていれば、後続するページの処理が実行する必要があるため、印刷データ解析部22は、印刷データを分析した結果を複数ページ処理用の汎用描画処理部25へ受け渡す。これを受けて、汎用描画処理部25は、後続するページが存在する場合の描画処理を実行する(ステップS17)。これは、予め決められたリソースの範囲で描画処理が実行されることになる。
【0018】
ステップS16の判定において、後続の印刷データがない場合(最終ページであり、かつ後続の印刷データがない場合)、使用可能な全てのリソースを使用することができるため、印刷データ解析部22は、印刷データを分析した結果を単一ページ処理用の高速描画処理部26へ受け渡す。これを受けて、高速描画処理部26は、使用可能な全てのリソースを使用して描画処理を実行する(ステップS18)。これは、使用可能な全てのリソースを使用することができるため高速の描画処理が実行されることになる。
【0019】
このように、印刷データを作成する時に印刷データのページ情報(印刷するべきページの総数)を印刷データの先頭に記録して、画像形成装置へ受け渡すようにして、画像形成装置は、処理しようとするページが最終ページであり、かつ後続する印刷データがない場合に、使用可能なリソースを最大限に利用するようにしたため、高速描画を行うことが可能となり、効率よく描画処理を実行することが可能となる。これにより、最終ページの場合と、印刷するべきページが1ページのみの場合(1ページのみの印刷データにおいて1ページ目は最終ページでもあるため)の描画処理時間を短縮することが可能となる。
【0020】
なお、図1における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより描画処理制御を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0021】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すパソコン1の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す画像形成装置2の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
1・・・パソコン、11・・・印刷基データ分析部、12・・・印刷データ生成部、13・・・ページ情報生成部、14・・・印刷データ送信部、2・・・画像形成装置、21・・・印刷データ受信部、22・・・印刷データ解析部、23・・・描画データ処理部、24・・・描画環境管理部、25・・・汎用描画処理部、26・・・高速描画処理部、27・・・ディスプレイリスト作成部、28・・・描画部、29・・・メモリ管理部、30・・・システム制御部、31・・・色変換処理部、32・・・レンダリング部、33・・・出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用するリソースが制限された状態で描画処理を実行する汎用描画処理手段と、使用可能な全てのリソースを使用して描画処理を実行する高速描画処理手段とを備える画像形成装置であって、
印刷するページの数の情報を含む印刷データを受信する受信手段と、
現在処理中のジョブが最終ページであるか否かを判定する処理ページ判定手段と、
現在処理中のジョブに続くジョブが存在するか否かを判定する後続ジョブ判定手段と、
前記処理ページ判定手段により次に描画するべきページが最終ページと判定され、かつ前記後続ジョブ判定手段により後続ジョブが存在しないと判定された場合に、最終ページの描画処理を前記高速描画処理手段により描画処理を実行し、最終ページ以外のページの描画処理を前記汎用描画処理手段により描画処理を実行する制御手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
使用するリソースが制限された状態で描画処理を実行する汎用描画処理手段と、使用可能な全てのリソースを使用して描画処理を実行する高速描画処理手段とを備える画像形成装置上で動作する制御プログラムであって、
印刷するページの数の情報を含む印刷データを受信する受信処理と、
現在処理中のジョブが最終ページであるか否かを判定する処理ページ判定処理と、
現在処理中のジョブに続くジョブが存在するか否かを判定する後続ジョブ判定処理と、
前記処理ページ判定処理により次に描画するべきページが最終ページと判定され、かつ前記後続ジョブ判定処理により後続ジョブが存在しないと判定された場合に、最終ページの描画処理を前記高速描画処理手段により描画処理を実行し、最終ページ以外のページの描画処理を前記汎用描画処理手段により描画処理を実行する制御処理と
をコンピュータに行わせることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−321091(P2006−321091A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145486(P2005−145486)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】