説明

画像形成装置及び画像形成システム

【課題】プロセス条件を変更することなく特定領域のべた領域に高濃度印刷を行う画像形成装置を提供する。
【解決手段】上位装置129から高濃度印刷の指示を含む画像データを受信するデータ受信部123と、受け取った画像データから高濃度印刷を行うかどうかを判断する判断部と、判断部で高濃度印刷を行うと判断すると画像データから特定領域を抽出する特定領域抽出部125と、抽出した特定領域から得られる第1の印刷データと画像データから得られる第2の印刷データを作成する印刷データ作成部126と、印刷データとを記憶させる印刷データ記憶部127と、記憶された第1の印刷データと第2の印刷データを用いて印刷を行う画像形成部106と、画像形成部で第1の印刷データ又は第2の印刷データの何れか1つを用いて記録媒体に印刷後に、記録媒体の同一面に印刷が可能なように画像形成部に記録媒体を再給紙させる再給紙機構部128とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度印刷が可能な画像形成装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置により記録媒体上に形成される画像、特にべた領域においては白抜け、色むら等が発生する虞があり、高濃度印刷により白抜け、色むら等を防ぐことが一般的である。下記に示す特許文献1にはインクジェット方式による印刷において、高濃度印刷を行うためにインクの噴射量が可変なヘッドを用いてインクの噴射量を多くする方法が提案されている。
一方、インクジェット方式のプリンタではなく、電子写真方式プリンタでは、高濃度印刷を行うためには、トナーの転写量を増やすために「露光量を増やす」「現像電圧を上げる」「転写電圧を上げる」等のプロセス条件を変更することで、ある程度印刷濃度を大きくすることが可能である。
【特許文献1】特開2000−118007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、べた領域以外の画像も高濃度印刷が実施されることになり、インクの消費量が増えるという点で資源の無駄が発生する。
また、電子写真方式プリンタの場合、プロセス条件の変更を伴うために、電源回路の規模拡大によってコストの増大に繋がり、且つ記録媒体にトナーを用いて画像形成する際に、像担持体上に形成されるトナー層厚及び記録媒体へのトナーの転写量に限界があるため、高濃度印刷を実現することが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以上の問題を解決するために、次の構成を具備する。
【0005】
第1の発明である画像形成装置は、上位装置から高濃度印刷の指示を含む画像データを受信するデータ受信部と、上記データ受信部を介して受け取った上記画像データから上記高濃度印刷を行うかどうかを判断する判断部と、上記判断部で前記高濃度印刷を行うと判断すると上記画像データから特定領域を抽出する特定領域抽出部と、上記特定領域抽出部で抽出した上記特定領域から得られる第1の印刷データと上記画像データから得られる第2の印刷データを作成する印刷データ作成部と、上記印刷データ作成部で作成された上記第1の印刷データと上記第2の印刷データとを記憶させる印刷データ記憶部と、上記印刷データ記憶部に記憶された上記第1の印刷データと上記第2の印刷データを用いて印刷を行う画像形成部と、上記画像形成部で上記第1の印刷データ又は上記第2の印刷データの何れか1つを用いて上記記録媒体に印刷後に、上記記録媒体の同一面を印刷面として上記画像形成部に上記記録媒体を再給紙させる再給紙機構部とを有すること特徴とする。
【0006】
第2の発明である画像形成システムは、高濃度印刷の特定領域を指定する特定領域指定部と、上記特定領域指定部により指定された上記画像データの特定領域から特定領域情報を作成するドライバと、上記画像データと上記特定領域情報とを画像形成装置に送信するデータ送信部とを有する上位装置と、上記上位装置から高濃度印刷の指示を含む画像データを受信するデータ受信部と、上記データ受信部を介して受け取った上記画像データを上記高濃度印刷を行うかどうかを判断する判断部と、上記判断部で高濃度印刷を行うと判断すると上記画像データから特定領域を抽出する特定領域抽出部と、上記特定領域抽出部で抽出した上記特定領域から得られる第1の印刷データと上記画像データから得られる第2の印刷データを作成する印刷データ作成部と、上記印刷データ作成部で作成された上記第1の印刷データと上記第2の印刷データとを記憶させる印刷データ記憶部と、上記印刷データ記憶部に記憶された上記第1の印刷データと上記第2の印刷データを用いて印刷を行う画像形成部と、上記画像形成部で上記第1の印刷データ又は上記第2の印刷データの何れか1つを用いて上記記録媒体に印刷後に、上記記録媒体の同一面を印刷面として上記画像形成部に上記記録媒体を再給紙させる再給紙機構部とを有する画像形成装置と、
からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの指定するべた領域に対してのみ重ね塗り印刷をすることで、電源回路の規模拡大のようなプロセス条件を変更することなく高濃度印刷が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。ここでは、本発明を画像形成装置としてのシングルパス方式電子写真カラープリンタ(以下プリンタ)に適用して説明する。シングルパス方式電子写真カラープリンタとは、イエロー、マゼンダ、シアン、黒の4色分の現像装置を印刷媒体の搬送方向に配置し、トナー像の現像を1回の工程で行う印刷エンジン方式の電子写真カラープリンタのことである。
【実施例1】
【0009】
図2は、実施例1に係るプリンタの機械的な構成を示す断面図である。
図において、プリンタ120は、給紙トレイ101、給紙部102、搬送部103、給紙検知部104、記録媒体先端検知部105、画像形成部106、定着部108、定着検知部109、排出搬送路切替部110、定着搬送部111、排出搬送部112、再給紙搬送路切替部114、反転搬送部115、再給紙検知部116及び再給紙搬送部117、118、119を有する。
【0010】
給紙トレイ101は、印刷前の記録媒体を収納するトレイである。
給紙部102は、給紙トレイ101から記録媒体を一枚毎に分離して引き出すピックアップローラ102a、互いに圧接して配設され記録媒体を挟持して給紙検知部104に搬送させる搬送ローラ102bとからなる。
【0011】
搬送部103は、互いに圧接して配設され記録媒体を挟持して記録媒体先端検知部105に搬送させる搬送ローラ103aからなる。
【0012】
給紙検知部104は、搬送ローラ102bによって記録媒体が搬送されたことを検知するためのセンサである。
記録媒体先端検知部105は、画像形成部105に搬送するにあたって記録媒体の先端が所定の位置に到達したかどうかを検知するためのセンサである。
【0013】
画像形成部106は、画像を形成するための像担持体106k、106y、106m、106cと、像担持体106k、106y、106m、106cを露光する露光手段として配置されたLEDヘッド106aと、像担持体106k、106y、106m、106c上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写ベルトユニット106bとから構成される。
【0014】
定着部108は、記録媒体上に転写されたトナー像を加熱定着させる部分である。定着部108は、所定の圧接力により圧接されたローラ対108a、108bにより構成され、ローラ対108a、108bには記録媒体を加熱するためにハロゲンランプ108c、108dがそれぞれに内蔵されている。
定着検知部109は、定着部108によりトナー像が加熱定着された記録媒体が通過したかどうかを検知するセンサである。
【0015】
排出搬送路切替部110は、記録媒体を装置外へ排出させるか、或いは記録媒体を再給紙させるために搬送路を切り替えるガイド部材である。
【0016】
定着搬送部111は、排出搬送路切替部110に記録媒体を搬送させる一対のローラである。
排出搬送部112は、印刷が完了した記録媒体を装置外へ排出させる一対のローラである。
【0017】
再給紙搬送路切替部114は、再給紙させる記録媒体を後述する搬送路aもしくは搬送路bに搬送するかを切り替えるガイドの役割をはたす部材である。
反転搬送部115は、一対のローラからなり、再給紙される記録媒体を反転させる部分である。
【0018】
ここで記録媒体を再給紙する際の搬送路の切り替えについて説明する。
図3は、実施例1の記録媒体を再給紙する際の搬送路の切り替えに関する説明図である。
図3(a)は、記録媒体の非反転時の説明図である。定着搬送部111により、記録媒体が搬送され、再給紙搬送路切替部114を図に示す搬送路a側に回動することにより、記録媒体を反転せずに搬送路aに搬送させる。これにより、搬送路aに搬送された記録媒体を再給紙することにより重ね塗り印刷が行われる。
【0019】
一方、図3(b)は、記録媒体の反転時の説明図である。定着搬送部111により、記録媒体が搬送され、再給紙搬送路切替部114を図に示す搬送路b側に回動することにより、記録媒体を反転搬送部115に搬送され、更に搬送路bに搬送される。記録媒体の後端が反転搬送部115まで到達すると、次に、記録媒体を搬送路aに搬送させるために、反転搬送部115を逆に回転させて、記録媒体を搬送路bから搬送路aに搬送させる。これにより記録媒体は、反転し、且つ記録媒体の先端と後端が入れ替わった状態で搬送路aに搬送される。搬送路aに搬送された記録媒体は反転して再給紙されることにより記録媒体の裏面に印刷が行われる。
【0020】
ここで図2の説明に戻って、再給紙検知部116は、再給紙するための搬送路aに搬送された記録媒体を検知するセンサである。
再給紙するための記録媒体は図に示す再給紙搬送部117、118、119により搬送部103に搬送される。
【0021】
次に、実施例1における画像形成システム1による重ね塗り印刷の機能ブロックについて説明する。
図1は、実施例1の画像形成システムの機能ブロック図である。
【0022】
図に示す画像形成システム1は、上位装置129とプリンタ120とからなる。
プリンタ120は、コントローラ部121とエンジン部122とを有する。
コントローラ部121は、データ受信部123、重ね塗り印刷切替部124、特定領域抽出部125、印刷データ作成部126及び印刷データ記憶部127を備える。
【0023】
データ受信部123は、上位装置129から画像データ等を受信する部分である。
重ね塗り印刷切替部124は、データ受信部123を介して受信した画像データに付加された重ね塗り印刷の指示の有無に基づき重ね塗り印刷を実行するのか又は通常印刷を実行するのかを判定する部分である。
【0024】
特定領域抽出部125は、重ね塗り印刷切替部124において重ね塗り印刷の指示と判定された場合には、重ね塗り印刷切替部124から画像データが伝達される。特定領域抽出部125は、伝達された画像データに付加された特定領域情報から特定領域のみの画像データを生成する部分である。
【0025】
印刷データ作成部126は、特定領域抽出部125で生成された特定領域のみの画像データからビットマップデータ等のドットデータからなる第1の印刷データを生成し、重ね塗り印刷切替部124から伝達された画像データからビットマップデータ等のドットデータからなる第2の印刷データを生成する。
印刷データ記憶部127は、印刷データ作成部126で生成された印刷データを記憶する部分である。
【0026】
エンジン部122は、画像形成部106、再給紙機構部128、再給紙機構制御部113を備える。
画像形成部106は、印刷データ記憶部127に格納された印刷データを読み込み、記録媒体に印刷を行う部分である。
再給紙機構部128は、再給紙搬送路切替部114、反転搬送部115、再給紙検知部116及び再給紙搬送部117、118、119で構成される。
再給紙機構制御部113は、記録媒体を再給紙するにあたり、再給紙搬送路切替部114を制御して記録媒体の表面裏面を反転せずに再給紙するか、或いは反転して再給紙するかを制御する部分である。
【0027】
一方、上位装置129は、ドライバ130、特定領域指定部132、データ送信部133を備える。
ドライバ130は、図示しないOS上で動作し、画像データを生成するソフトウエアである。また、ドライバ130は、ユーザからの高濃度印刷の指示を受けて画像データに重ね塗り印刷の指示を示す重ね塗り印刷指示情報と後述する特定領域指定部132で指定された重ね塗り印刷を行う範囲を示す座標データからなる特定領域情報とを生成する。また、ドライバ130は、ユーザの両面印刷の指示を受けると、画像データに両面印刷の指示を示す両面印刷指示情報を生成する。ドライバ130は、生成した重ね塗り印刷情報と特定領域情報と両面印刷情報とを画像データに付加させる。
【0028】
特定領域指定部132は、ドライバ130上で動作し、ユーザの指定により重ね塗り印刷を行う範囲を示す特定領域を指定させるソフトウエアである。
【0029】
データ送信部133は、ドライバ130で生成された重ね塗り印刷情報と特定領域情報とを付加された画像データをプリンタ120に送信する部分である。
【0030】
ここで、実施例1の特定領域の抽出について図を用いて説明する。
図4は、実施例1の画像の特定領域を選択することにより生成される重ね塗り印刷される画像に関する説明図である。
【0031】
図に示すように、画像の右下のべた領域を含む範囲をユーザが上位装置129の特定領域指定部132から指定することにより重ね塗り印刷の画像が決定される。
【0032】
次に、実施例1の画像形成システムにおける重ね塗り印刷の動作についてフローチャートを用いて説明する。
図5は、実施例1における画像形成システムの重ね塗り印刷の処理の流れを示すフローチャートである。
以下にステップ順に実施例1の画像形成システム1の動作について図1を併用しながら
ステップS1−1からステップS1−23までを説明する。
【0033】
(ステップS1−1)
ユーザは、上位装置129の図示しないアプリケーションを介して印刷指示をプリンタ120に送信する際に、高濃度印刷の指示(重ね塗り印刷情報)、特定領域指定部132による特定領域の範囲の指定(特定領域情報)及び両面印刷の指示(両面印刷情報)を上位装置129の図示しない画面上から選択してから印刷開始を入力する。
【0034】
(ステップS1−2)
上位装置129のドライバ130は、高濃度印刷の指示、高濃度印刷の場合の範囲の指定及び両面印刷の指示を含む画像データを生成し、データ送信部133を介してプリンタ120のデータ受信部123に送信する。
【0035】
(ステップS1−3)
プリンタ120のデータ受信部123を介して画像データを受信したプリンタ120の重ね塗り印刷切替部124は、重ね塗り印刷を実行するかどうかを判断するために画像データに付加された重ね塗り印刷情報を確認する。重ね塗り印刷の要求を示す重ね塗り印刷情報であれば、ステップS1−4に進み、重ね塗り印刷の不要を示す重ね塗り印刷情報であればステップS1−5に進む。
【0036】
(ステップS1−4)
画像データに付加された重ね塗り印刷情報が重ね塗り印刷の要求を示す重ね塗り印刷情報であれば、次に、重ね塗り印刷切替部124は、受信した画像データを特定領域抽出部125に伝達する。
画像データを伝達された特定領域抽出部125は、座標データからなる特定領域情報を抽出し、画像データ内の重ね塗り印刷を行う範囲のみの画像データを生成する。
【0037】
(ステップS1−5)
特定領域抽出部125は、重ね塗り印刷を行う範囲のみの画像データ、言い換えると特定領域の画像データを生成すると印刷データ作成部126に伝達する。伝達された印刷データ作成部126は、特定領域の画像データから第1の印刷データを生成する。また、印刷データ作成部126は、重ね塗り印刷切替部124から1頁分の画像データを入手し第2の印刷データを生成する。
【0038】
(ステップS1−6)
印刷データ作成部126は、第1の印刷データ、第2の印刷データを生成すると、各データを印刷データ記憶部127に格納させる。
【0039】
(ステップS1−7)
第1の印刷データ、第2の印刷データが印刷データ記憶部127に格納されると、画像形成部106は、記録媒体を給紙させる。
【0040】
(ステップS1−8)
記録媒体を給紙し印刷するにあたって、ステップS1−3で判定した重ね塗り印刷かどうかで処理を分岐させる。重ね塗り印刷を行う場合はステップS1−9に進み、重ね塗り印刷を行わない場合はステップS1−12に進む。
【0041】
(ステップS1−9)
重ね塗り印刷を行う場合、画像形成部106は、印刷データ記憶部127から特定領域を示す第1の印刷データを読み込み、記録媒体の表面に印刷を行う。
【0042】
(ステップS1−10)
記録媒体の表面に第1の印刷データの印刷が完了すると、再給紙機構制御部113は、記録媒体を装置外へ排出せずに排出搬送路切替部110及び定着搬送部111を制御して記録媒体を再給紙機構部128へ搬送する。
【0043】
(ステップS1−11)
次に再給紙機構制御部113は、記録媒体の表面に画像全域を示す第2の印刷データの印刷を行うために、再給紙搬送路切替部114を図3に示す搬送路a側に切替え、記録媒体を反転させずに画像形成部106に再給紙させる。
【0044】
(ステップS1−12)
次に画像形成部106は、印刷データ記憶部127から第2の印刷データを読み込み、記録媒体に第2の印刷データの印刷を行い、印刷が完了すると、ステップS1−13に進む。
【0045】
(ステップS1−13)
次に受信した画像データが両面印刷かそうでないかを確認するために重ね塗り印刷切替部124は、画像データに付加された両面印刷情報を判定する。両面印刷であれば、ステップS1−15に進み、両面印刷でなければステップS1−14に進む。
【0046】
(ステップS1−14)
両面印刷でなければ、再給紙機構制御部113は、記録媒体を装置外へ排出するために排出搬送路切替部110、定着搬送部111及び排出搬送部112を制御して記録媒体を装置外へ排出し印刷を完了させる。
【0047】
(ステップS1−15)
一方、両面印刷であれば、再給紙機構制御部113は、記録媒体を装置外へ排出せずに排出搬送路切替部110及び定着搬送部111を制御して記録媒体を再給紙機構部128へ搬送する。
【0048】
(ステップS1−16)
次に再給紙機構制御部113は、記録媒体の裏面に印刷を行うために、再給紙搬送路切替部114を図3に示す搬送路b側に切替え、記録媒体を反転させるために記録媒体を反転搬送部115に搬送させる。
【0049】
(ステップS1−17)
次に再給紙機構制御部113は、記録媒体を反転搬送部115に搬送させ、記録媒体を一旦搬送路bに搬送させる。記録媒体の後端が反転搬送部115まで到達すると、次に再給紙機構制御部113は、記録媒体を搬送路aに搬送させるために、反転搬送部115を逆に回転させて、記録媒体を搬送路bから搬送路aに搬送させる。これにより記録媒体は、反転し、且つ記録媒体の先端と後端が入れ替わった状態で搬送路aに搬送される。再給紙機構制御部113は、搬送路aに搬送された記録媒体を再給紙させる。
【0050】
(ステップS1−18)
記録媒体を給紙し印刷するにあたって、ステップS1−3で判定した重ね塗り印刷かどうかで処理を分岐させる。重ね塗り印刷を行う場合はステップS1−19に進み、重ね塗り印刷を行わない場合はステップS1−22に進む。
【0051】
(ステップS1−19)
次に画像形成部106は、印刷データ記憶部127から裏面の画像データの特定領域を示す第1の印刷データを読み込み、記録媒体の裏面に印刷を行う。
【0052】
(ステップS1−20)
記録媒体の裏面の印刷が完了すると、再給紙機構制御部113は、記録媒体を装置外へ排出せずに排出搬送路切替部110及び定着搬送部111を制御して記録媒体を再給紙機構部128へ搬送する。
【0053】
(ステップS1−21)
次に再給紙機構制御部113は、記録媒体の裏面に更に印刷を行うために、再給紙搬送路切替部114を図3に示す搬送路a側に切替え、記録媒体を反転させずに画像形成部106に再給紙させる。
【0054】
(ステップS1−22)
次に画像形成部106は、印刷データ記憶部127から裏面の画像データの画像全域を示す第2の印刷データを読み込み、特定領域が既に印刷された記録媒体の裏面に裏面の画像データの第2の印刷データの印刷を行い、記録媒体の両面の印刷を完了させる。
【0055】
(ステップS1−23)
両面印刷が完了すると再給紙機構制御部113は、記録媒体を装置外へ排出するために排出搬送路切替部110、定着搬送部111及び排出搬送部112を制御して記録媒体を装置外へ排出させる。
【0056】
実施例1では、第1の印刷データを特定領域の印刷データとして先に印刷し、画像全体を示す第2の印刷データを後に印刷することとしたが、尚、第1の印刷データと第2の印刷データを逆にして印刷する方式にしても構わない。但し、本実施例では、トナー転写量の少ない第1の印刷データを先に印刷することで、後に印刷する際に記録媒体へのトナー転写量が少なければ記録媒体の収縮が小さくて済む点、及びトナーの定着が早くなる点を考慮している。
【0057】
なお、実施例1では重ね塗り印刷の実施のために、既存の構成である両面印刷機構に一部構成追加することにより実現させたが、構成を追加せずに両面印刷時に行う反転動作を2回行うことでも実現可能である。
【0058】
以上のように実施例1によれば、ユーザの指定する特定領域に対して重ね塗り印刷をすすることで、プロセス条件を変更することなく高濃度印刷が可能になる。
【実施例2】
【0059】
実施例2では、特定領域の重ね塗り印刷を実行するにあたって、ユーザが高濃度印刷を行う条件を予め設定しておくことで、自動的に重ね塗り印刷を行う領域を抽出し、重ね塗り印刷を行う。
【0060】
以下に実施例1と異なる部分のみについて詳細に説明する。機械的な構成については実施例1と同様につき説明を省略する。また、機能ブロックについては実施例1と同様な機能については説明を省略する。
【0061】
図6は、実施例2の画像形成システムの機能ブロック図である。
図に示す画像形成システム11は、上位装置229とプリンタ220とからなる。
プリンタ220は、コントローラ部221とエンジン部222とを有する。
コントローラ部221は、データ受信部223、重ね塗り印刷切替部224、特定領域抽出部225、印刷データ作成部226及び印刷データ記憶部227を備え、実施例2では、新たに特定領域抽出条件記憶部234を有する。
【0062】
特定領域抽出条件記憶部234は、上位装置229の特定領域指定部231により予め定義された特定領域抽出条件を記憶する部分である。特定領域抽出条件とは、色彩、彩度、明度で表現される色の三要素、ロゴ等の画像の属性フォーマット(JPEG、BMP等)、べた領域の画面占有率等を含む。
【0063】
次に、実施例2の画像形成システムにおける重ね塗り印刷の動作についてフローチャートを用いて説明する。
図7は、実施例2における画像形成システムの重ね塗り印刷の処理の流れを示すフローチャートである。
以下にステップ順に実施例2の画像形成システム1の動作について図6を併用しながら
説明する。ステップS2−5からステップS2−23までは、実施例1のステップS1−5からステップS1−23までと同様なので説明を省略する。
【0064】
(ステップS2−1)
ユーザは、上位装置229の図示しないアプリケーションを介して印刷指示をプリンタ120に送信する前に、予め重ね塗り印刷を行う場合の特定領域の抽出条件(例えば黒色印刷のべた領域を重ね塗り印刷する)を上位装置229のドライバ230から指定し、データ送信部233を介して、プリンタ220に送信する。プリンタ220は受信した特定領域の抽出条件を特定領域抽出条件記憶部234に格納させる。
次にユーザは、高濃度印刷の指示(重ね塗り印刷情報)と両面印刷の指示(両面印刷情報)を上位装置229の図示しない画面上から選択してから印刷開始を入力する。
【0065】
(ステップS2−2)
上位装置229のドライバ230は、高濃度印刷の指示と両面印刷の指示を含む画像データを生成し、データ送信部233を介してプリンタ220のデータ受信部223に送信する。
【0066】
(ステップS2−3)
プリンタ220のデータ受信部123を介して画像データを受信したプリンタ220の重ね塗り印刷切替部224は、重ね塗り印刷を実行するかどうかを判断するために画像データに付加された重ね塗り印刷情報を確認する。重ね塗り印刷の要求を示す重ね塗り印刷情報であれば、ステップS2−4に進み、重ね塗り印刷の不要を示す重ね塗り印刷情報であればステップS2−5に進む。
【0067】
(ステップS2−4)
画像データに付加された重ね塗り印刷情報が重ね塗り印刷の要求を示す重ね塗り印刷情報であれば、次に、重ね塗り印刷切替部124は、受信した画像データを特定領域抽出部125に伝達する。
画像データを伝達された特定領域抽出部125は、次に特定領域抽出条件記憶部234に格納された特定領域の抽出条件(例えば黒色印刷のべた領域を重ね塗り印刷する)に基づいて画像データを分析し、画像データ内の重ね塗り印刷を行う範囲のみの画像データを生成する。ステップS2−5以降については実施例1の図5のフローチャートのステップS1−5以降と同様である
【0068】
ここで、実施例2の特定領域抽出条件(例えば黒色印刷のべた領域)の抽出について説明する。
図8は、実施例2の画像の特定領域の抽出条件から生成される重ね塗り印刷される画像の説明図である。
【0069】
図の左が原稿の画像データ全体を示し、図の右側が特定領域のみが抽出された「Sale!と¥マークを含むロゴ部分」の画像を示す。原稿の画像データ部分の中央部分に位置する「abcdefghijklmnopqrstuvwxyz」の文字と「123−456−7890」の数字部分は、べた領域ではないので右側の特定領域の画像には映し出されていない。
即ち、特定領域の抽出により、「Sale!と¥マークを含むロゴ部分」はべた領域として抽出され、それ以外の部分はべた領域ではないと判定される。
【0070】
ここで、べた領域の定義について説明する。
画像データは、横方向m行、縦方向n列からなる単原色イエロー、マゼンタ、シアン、黒の画素の集合体として構成され、画像データの各画素は横方向をx、縦方向をyとして座標(x、y)で定義される。印刷方向で説明すると、xは主走査方向であり、yは副走査方向である。
【0071】
べた領域とは、例えば特定の色の画素が周囲八方を囲んだ状態、即ち同色の画素が3行3列で構成された9個の画素以上の固まりによってべた領域とみなす。
但し、本発明における特定領域とは、べた領域の周囲八方を同色の画素で囲まれた状態の内側に位置する骨格画素のみとし、周囲八方の同色の画素である輪郭画素は特定領域とみなさない。
【0072】
ここで骨格画素と輪郭画素のついて図を用いて説明する。
図9は、実施例2におけるべた領域を示す骨格画素と輪郭画素の説明図である。
【0073】
図9(a)は、定義1として周囲八方を同色で囲まれた画素を骨格画素(●)とし、周辺の同色の画素を輪郭画素(△)とする。
【0074】
図9(b)は、定義2として上下左右の四方を同色で囲まれた骨格画素(●)とし、周辺の同色の画素を輪郭画素(△)とする。図9(a)(b)を比較すると、右上の画像は
定義1では、べた領域でがないが、定義2では、べた領域と判定される。また、右下の画像の場合、定義1と定義2では、骨格画素の画素数が異なってくる。
【0075】
このようにべた領域は、画素の整列のルールに基づいて様々に定義可能である。
また、本実施例では黒色印刷のべた領域についてを特定領域の抽出条件としたが、複数の色について同様に定義しても構わない。
【0076】
以上のように実施例2によれば、ユーザによって予め重ね塗り印刷を実施する特定領域の条件を定義しておけば、ユーザは毎回、画像データの送信時に特定領域を指定する必要がなく、プリンタが自動で特定領域を抽出して重ね塗り印刷をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
なお、本発明に関わる画像形成装置の例として像担持体への露光手段をLEDヘッド方式プリンタとして説明したが、レーザヘッド方式プリンタに対しても同様の効果が得られる。
【0078】
また、本発明に関わる画像形成装置の例としてシングルパス方式カラープリンタとして説明したが、4サイクル方式カラープリンタに対しても同様の効果が得られる。
更に、本発明に関わる画像形成装置は、インクジェット方式プリンタ、複写機等に対しても同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1の画像形成システムの機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るプリンタの機械的な構成を示す断面図である。
【図3】実施例1の記録媒体を再給紙する際の搬送路の切り替えに関する説明図である。
【図4】実施例1の画像の特定領域を選択することにより生成される重ね塗り印刷される画像に関する説明図である。
【図5】実施例1における画像形成システムの重ね塗り印刷の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例2の画像形成システムの機能ブロック図である。
【図7】実施例2における画像形成システムの重ね塗り印刷の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例2の画像の特定領域の抽出条件から生成される重ね塗り印刷される画像の説明図である。
【図9】実施例2におけるべた領域を示す骨格画素と輪郭画素の説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1、11 画像形成システム
120、220 プリンタ
121、221 コントローラ部
122、222 エンジン部
123、223 データ受信部
124、224 重ね塗り印刷切替部
125、225 特定領域抽出部
126、226 印刷データ作成部
127、227 印刷データ記憶部
128、228 再給紙機構部
129、229 上位装置
130、230 ドライバ
132、232 特定領域指定部
133、233 データ送信部
234 特定領域抽出条件記憶部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置から高濃度印刷の指示を含む画像データを受信するデータ受信部と、
前記データ受信部を介して受け取った前記画像データから前記高濃度印刷を行うかどうかを判断する判断部と、
前記判断部で前記高濃度印刷を行うと判断すると前記画像データから特定領域を抽出する特定領域抽出部と、
前記特定領域抽出部で抽出した前記特定領域から得られる第1の印刷データと前記画像データから得られる第2の印刷データを作成する印刷データ作成部と、
前記印刷データ作成部で作成された前記第1の印刷データと前記第2の印刷データとを記憶させる印刷データ記憶部と、
前記印刷データ記憶部に記憶された前記第1の印刷データと前記第2の印刷データを用いて印刷を行う画像形成部と、
前記画像形成部で前記第1の印刷データ又は前記第2の印刷データの何れか1つを用いて前記記録媒体に印刷後に、前記記録媒体の同一面を印刷面として前記画像形成部に前記記録媒体を再給紙させる再給紙機構部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記再給紙機構部は、前記上位装置から両面印刷の指示を含む画像データを受信すると前記記録媒体を反転させて前記記録媒体の裏面を印刷面として再給紙させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記特定領域は、複数色の画素が隣り合わせに形成されるべた領域であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記特定領域は、単一色の画素が隣り合わせに形成されるべた領域であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像形成システムにおいて、
高濃度印刷の特定領域を指定する特定領域指定部と、前記特定領域指定部により指定された前記画像データの特定領域から特定領域情報を作成するドライバと、前記画像データと前記特定領域情報とを画像形成装置に送信するデータ送信部とを有する上位装置と、
前記上位装置から高濃度印刷の指示を含む画像データを受信するデータ受信部と、前記データ受信部を介して受け取った前記画像データを前記高濃度印刷を行うかどうかを判断する判断部と、前記判断部で高濃度印刷を行うと判断すると前記画像データから特定領域を抽出する特定領域抽出部と、前記特定領域抽出部で抽出した前記特定領域から得られる第1の印刷データと前記画像データから得られる第2の印刷データを作成する印刷データ作成部と、前記印刷データ作成部で作成された前記第1の印刷データと前記第2の印刷データとを記憶させる印刷データ記憶部と、前記印刷データ記憶部に記憶された前記第1の印刷データと前記第2の印刷データを用いて印刷を行う画像形成部と、前記画像形成部で前記第1の印刷データ又は前記第2の印刷データの何れか1つを用いて前記記録媒体に印刷後に、前記記録媒体の同一面を印刷面として前記画像形成部に前記記録媒体を再給紙させる再給紙機構部とを有する画像形成装置と、
からなることを特徴とする画像形成システム。
【請求項6】
前記特定領域指定部は、前記特定領域の指定を画像の範囲指定から定義することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記特定領域指定部は、前記特定領域の指定を画像の属性フォーマットから定義することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−79223(P2010−79223A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250733(P2008−250733)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】