説明

画像形成装置

【課題】 一時回収部材に過度な変形負荷を掛けることなく,一時回収部材と電極との接触面積を確保することにより,転写残トナーの荷電調整を適切に行うことができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 感光体ドラム2上の転写残トナーを一時的に回収するブラシローラ51と,ブラシローラ51に内曲面で接する電極52とを,トナー荷電装置5に設けた。これにより,転写残トナーのうち帯電極性が逆転した逆帯電トナーを,ブラシローラ51で回収し,電極52のバイアス電圧V2で本来の極性に戻した上で,感光体ドラム2上に戻すようにしている。ここにおいて,電極52のブラシローラ51への接触面を内曲面とした。これにより,広い接触面積と,軽い押し込みとを両立させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,トナー像担持体上にトナー像を形成し,これを被転写体上に転写して画像を形成する画像形成装置に関する。さらに詳細には,トナー像担持体上の転写残トナーを一時的に回収してその後吐き出す一時回収部材を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では,帯電,露光,現像の手順を踏むことによりトナー像担持体上にトナー像が形成される。このトナー像が被転写体上に転写され,さらに定着されて画像が形成される。ここにおいて,転写後における像担持体上には,若干のトナーが残留している(これを転写残トナーという)。この転写残トナーは,帯電や露光に対する邪魔となる。また,転写残トナーは,転写前のトナー像のパターンに従って不均一に分布している。このため転写残トナーは,次回の形成画像に対するノイズ発生要因となる。
【0003】
このため従来から,転写後帯電前の位置に,例えば特許文献1に示されるようなクリーナを備えたものがある。しかしクリーナを備える場合には,回収した転写残トナーが廃トナーとなる。このため環境保全の観点で不利である。そこで,特許文献2のようなクリーナレスの画像形成装置が提案されるに至っている。クリーナレスの画像形成装置では,転写残トナーは現像器により回収されることとなる。ここにおいて,現像器での転写残トナーの回収を確実に行うためには,転写残トナーの荷電量をコントロールする必要がある。そのため特許文献2の画像形成装置では,転写後帯電前の位置に,転写残トナーを一時的に回収して像担持体に戻す一時回収部材(ブラシロール)を設けている。そして一時回収部材に適切な電圧を印加するようにしている。これにより,転写残トナーを,荷電量を調整した上で像担持体に戻すようにしているのである。
【特許文献1】特開2001−255799号公報
【特許文献2】特開2002−372878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来のクリーナレスの画像形成装置には,次のような問題があった。一時回収部材やそのケーシングへの電圧印加だけでは,必ずしも十分な荷電調整ができないのである。そのために一時回収部材にトナーが蓄積したり,像担持体に戻されたトナーの荷電量が適切でない等の問題が生じる。そこで,一時回収部材に適切な電極を接触させ,これにも電圧を掛けることも試みられている。しかし,電極と一時回収部材との接触面積をある程度確保しないとその効果はあまり期待できない。その一方で,接触面積を大きくすることは,電極の一時回収部材への押し込みが強くなる結果となる。このため,一時回収部材の変形や摩耗といった問題が生じてしまう。
【0005】
本発明は,前記した従来の画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,一時回収部材に過度な変形負荷を掛けることなく,一時回収部材と電極との接触面積を確保することにより,転写残トナーの荷電調整を適切に行うことができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,トナー像担持体上のトナー像を被転写体上に転写して画像を形成する装置であって,軸周りに回転しつつトナー像担持体に接し,トナー像担持体上の転写残トナーを一時的に回収するとともに,回収したトナーをトナー像担持体上に吐き出す一時回収部材と,一時回収部材におけるトナー像担持体との接触箇所以外の箇所で接触するとともに電圧の掛かった電極部材とを有し,電極部材の一時回収部材に接する接触面が内向きの曲面とされているものである。
【0007】
この画像形成装置では,転写後のトナー像担持体上の転写残トナーは,トナー像担持体と一時回収部材との接触箇所に至ると,そこで一時回収部材に一時的に回収される。一時回収部材上の転写残トナーは,一時回収部材の回転とともに,一時回収部材と電極部材との接触区間を通過する。転写残トナーはこのときに,電極部材にごく近接して荷電量の調整を受ける。そして転写残トナーは,一時回収部材のさらなる回転とともにトナー像担持体と一時回収部材との接触箇所に至る。転写残トナーはそこで,トナー像担持体上に戻される。ここにおいて,電極部材の接触面が内向きの曲面であるため,一時回収部材と電極部材との接触区間が長い。このため,電極部材による転写残トナーの荷電量調整が十分になされる。その一方,電極部材の一時回収部材への食い込み量はさほど大きくなくて済んでいる。このため,一時回収部材の変形や摩耗は最小限で済んでいる。
【0008】
本発明の画像形成装置では,電極部材の接触面中に,一時回収部材の回転方向上流側に位置し,一時回収部材への押し込み量が小さい第1位置と,第1位置よりも下流側に位置し,一時回収部材への押し込み量が大きい第2位置とがあることが望ましい。このように,電極部材の一時回収部材への押し込み量が不均一であるとよいのである。むろん第2位置では,押し込み量が大きいとは言っても,一時回収部材の変形や摩耗が問題となるほどではない。特に,一時回収部材から見て,初めは電極部材の押し込みが弱く(第1位置),その後に押し込みが強くなる(第2位置)のがよい。つまり,一時回収部材が電極部材に接触してから初期には,押し込みが弱い。このため,一時回収部材と電極部材との接触の初期に転写残トナーが一時回収部材から剥がれてしまうことがない。また,一時回収部材と電極部材との接触の終期に押し込みが強まる。このため,転写残トナーの散らし性がよい。ここで「散らし」とは,一時回収部材に取り込まれたトナーを,一時回収部材内で拡散させることである。この「散らし」により,一時回収部材からトナー担持体上に吐き出されたトナーが回収前のパターンを維持するのを抑制できる。
【0009】
本発明の画像形成装置ではあるいは,電極部材の接触面中に,一時回収部材の回転方向上流側に位置し,曲率の緩やかな第1区間と,第1区間よりも下流側に位置し,曲率の強い第2区間とがあることとしてもよい。このように,押し込み量の代わりに曲率に差を付けてもよい。むろん,押し込み量と曲率との双方に差を付けてもよい。
【0010】
本発明の画像形成装置ではまた,電極部材の接触面における,一時回収部材の回転方向上流側の先端が,一時回収部材から離隔していることが望ましい。接触面の先端が一時回収部材に接触していると,そこで転写残トナーが一時回収部材から剥がれる場合がある。先端との当接時の衝撃による。接触面の先端が一時回収部材から離隔していると,一時回収部材と電極部材は緩やかに接触し始める。このため衝撃によるトナー剥離がないのである。
【0011】
本発明の別の態様の画像形成装置は,電極部材に,一時回収部材に接触する第1接触面と,第1接触面より一時回収部材の回転方向下流側の第2接触面とが設けられているものである。あるいは,第1電極とそれより下流側の第2電極との2つの電極を備えるようにしてもよい。これらのような構成によっても,電極部材の一時回収部材への食い込み量をさほど大きくすることなく,一時回収部材と電極部材との接触面積を稼ぐことができる。
【0012】
むろん,これらの構成の場合でも,第2接触面または第2電極の一時回収部材への押し込み量が,第1接触面または第1電極の一時回収部材への押し込み量より大きくされていればなおよい。あるいは,各接触面を内向きの曲面とし,第2接触面または第2電極の方が第1接触面または第1電極より強い曲率を持つようにしてもよい。さらには,第2接触面または第2電極のみが内向きの曲面で,第1接触面または第1電極は平面であることとしてもよい。
【0013】
また,本発明の画像形成装置においては,電極部材,または,第1電極および第2電極が,一時回収部材を覆うケースを兼ねていてもよい。その方が,装置のコンパクト化や部品点数削減に有利だからである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,一時回収部材に過度な変形負荷を掛けることなく,一時回収部材と電極との接触面積を確保して,転写残トナーの荷電調整を適切に行うことができる画像形成装置が提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態に係る画像形成装置は概略,図1に示すように構成されている。本形態の画像形成装置は,タンデム型のフルカラー画像形成装置である。すなわち本形態の画像形成装置は,転写ベルト6を有している。転写ベルト6は,ローラ61,62に架設されており,図中反時計回りに回転するようになっている。そして転写ベルト6に沿って,ブラック,シアン,マゼンタ,イエローの各色の画像形成部1K,1C,1M,1Yが配置されている。これにより,各色のトナー像を転写ベルト6上に重ね合わせるようになっている。また,ローラ61に対向して二次転写ローラ8が設けられている。これにより,転写ベルト6上の重ね合わせトナー像を用紙9上に転写するようになっている。また,転写ベルト6上の残留トナーを除去するクリーニングブレード10が設けられている。
【0016】
各画像形成部1K,1C,1M,1Yはいずれも,構造的には同じものである。すなわち各画像形成部1K,1C,1M,1Yは,それぞれ,感光体ドラム2を有している。そしてその周囲に,帯電チャージャ3,現像器4,トナー荷電装置5が設けられている。現像器4は,負極性トナーを用いるものである。また,一次転写ローラ7が,転写ベルト6を間に挟んで感光体ドラム2と対向する位置に設けられている。感光体ドラム2の回転方向は,転写ベルト6の回転に対し順方向,すなわち図中時計回りである。よって,トナー荷電装置5の位置は,感光体ドラム2の回転方向に対し,一次転写ローラ7より下流で帯電チャージャ3より上流である。また,帯電チャージャ3より下流で現像器4より上流に,露光位置Eが設けられている。
【0017】
トナー荷電装置5について,図2によりさらに説明する。トナー荷電装置5は,ブラシローラ51と,電極52と,ケース53とにより構成されている。ブラシローラ51は,多数の導電性の針状形状を軸心に植え付けてなるものである。ブラシローラ51は,柔軟性で全体として円柱状の外形を持つようにされている。ブラシローラ51は,感光体ドラム2における,一次転写ローラ7より下流で帯電チャージャ3より上流の位置に接触している。ブラシローラ51は,動作中には軸周りに回転する。その回転方向は,感光体ドラム2の回転に対し順方向とカウンター方向とのいずれの設定も可能である。以下の説明では,特記しない限り,カウンター方向に回転するように設定されているものとする。ブラシローラ51には,バイアス電圧V1が印加されている。
【0018】
電極52は,ブラシローラ51とともにケース53の中に配置されている。電極52の内面,すなわちブラシローラ51側の面は,ブラシローラ51の外形に沿った内向きの曲面である。この内面のほぼ全体に,ブラシローラ51がソフトに接触している。このため,ブラシローラ51と電極52との接触範囲は,ブラシローラ51の外周全体のうち半分近くを占めている。電極52には,バイアス電圧V2が印加されている。
【0019】
バイアス電圧V1およびバイアス電圧V2の設定例を説明する。このバイアス設定には,次のようなことが求められる。まず,感光体ドラム2上の転写残トナー,特にそのうち帯電極性が逆転しているもの(以下,「逆帯電トナー」という。),をブラシローラ51に回収できることが求められる。このことは,バイアス電圧V1に対して求められる。また,ブラシローラ51に回収された逆帯電トナーの帯電極性を,本来の帯電極性に戻すことが求められる。このことは,バイアス電圧V2に対して求められる。また,ブラシローラ51上のトナーが電極52に移行しないことが求められる。このことは,バイアス電圧V1とバイアス電圧V2との関係に対して求められる。さらに,ブラシローラ51上で帯電極性が調整されたトナーが,感光体ドラム2上に吐き出されることが求められる。このことは,バイアス電圧V1に対して求められる。
【0020】
ここでは,次の各条件に従うバイアス設定を採用した。まず,ブラシローラ51のバイアス電圧V1は,ACとDCとの重畳であり,次の通りである。
DC成分Vdc = −100V(vs感光体ドラム2の電圧)
AC成分Vpp = 300V
周波数f = 100Hz
波形:矩形波(デューティ50%)
つまり,V1 = Vdc+Vppである。一方,電極52のバイアス電圧V2は,DCであり,−500V(vs感光体ドラム2の電圧)である。
【0021】
次に,本形態の画像形成装置の動作を説明する。本形態の画像形成装置では,各画像形成部1K,1C,1M,1Yでそれぞれの感光体ドラム2上に,それぞれの色のトナー像が作成される。それらのトナー像は,各画像形成部1K,1C,1M,1Yの一次転写ローラ7により,転写ベルト6上に転写される。これにより転写ベルト6上には,4色のトナー像が重ね合わせられる。こうしてできた重ね合わせトナー像は,二次転写ローラ8により用紙9上に転写される。重ね合わせトナー像の転写を受けた用紙9はその後に定着を受ける。これにより用紙9にカラー画像が形成される。
【0022】
各画像形成部1K,1C,1M,1Yでは,次のようにしてトナー像が作成される。まず,帯電チャージャ3により,感光体ドラム2の表面の感光層が所定電位に帯電させられる。所定電位に帯電させられた感光層に,露光位置Eで静電潜像が書き込まれる。そして,現像器4で静電潜像が現像される。これによりトナー像が形成される。形成されたトナー像は,一次転写ローラ7により転写ベルト6上に転写される。
【0023】
ここにおいて,感光体ドラム2の表面上には,一次転写ローラ7による転写位置を通過した後においても,ある程度のトナーが残存している。この転写残トナーについて,トナー荷電装置5により次のような処理が施される。転写残トナーは,感光体ドラム2の回転により,感光体ドラム2とブラシローラ51との接触位置に至る。するとそこで,転写残トナーはブラシローラ51に回収される。ここで,感光体ドラム2とブラシローラ51との間のバイアス電圧V1は前述のように設定されている。このことにより,この位置には,感光体ドラム2上の逆帯電トナーをブラシローラ51に引きつける方向の電界が掛かっている。このため,ブラシローラ51に回収されるのは主として,転写残トナーのうち逆帯電トナーである。
【0024】
ブラシローラ51に回収された転写残トナーは,ブラシローラ51の回転により,ブラシローラ51と電極52との接触箇所に至る。そのため,電極52のバイアス電圧V2により,帯電状況が調整される。具体的には,逆帯電トナーの帯電極性が本来の帯電極性に戻される。こうして,ブラシローラ51の回転によりブラシローラ51と電極52との接触箇所を通過するまでには,逆帯電トナーのほとんどは帯電調整される。そして,帯電調整されたブラシローラ51上のトナーは,ブラシローラ51の回転により,再び感光体ドラム2とブラシローラ51との接触位置に至る。するとそこで,トナーはブラシローラ51から感光体ドラム2上へ吐き出される。この位置には前述のような電界が掛かっているからである。このため,帯電調整済みのトナーは,ブラシローラ51から感光体ドラム2上へと引きつけられるのである。
【0025】
このようにして,感光体ドラム2上の転写残トナーに対し,転写後帯電前の位置で,トナー荷電装置5による帯電調整がなされる。すなわち,トナー荷電装置5を通過した後の感光体ドラム2上には,逆帯電トナーはほとんど存在しない。このため,感光体ドラム2上の転写残トナーは,現像器4にて現像に供されるときとほぼ同じ帯電状態となっている。また,トナー荷電装置5を経由することにより,元のトナー像のパターンが解消される。すなわち,散らしがなされる。感光体ドラム2上の転写残トナーは,このような状況で帯電チャージャ3による帯電位置およびそれ以後へ向かう。よって,転写残トナーが帯電や露光に対する邪魔となることはない。また,現像の際には,特にホワイト部においては現像器4に回収される。帯電調整がされているからである。このため,転写残トナーが画像ノイズの原因となることがない。
【0026】
なお上記より,ブラシローラ51による転写残トナーの回収は,一時的なものである。よって,ブラシローラ51にトナーが蓄積していくわけではない。したがってトナー荷電装置5は,いわゆるクリーナではない。すなわち本形態の画像形成装置の各画像形成部1K,1C,1M,1Yは,クリーナレスプロセスを採用したものである。
【0027】
ここにおいて本形態の画像形成装置では,電極52の形状により特有の利点がある。電極52は前述のように,ブラシローラ51の外形に沿った内向きの曲面を有している。そしてこの内向きの曲面が,ブラシローラ51に対する接触面とされている。このために,ブラシローラ51に対する接触面が平面である場合(図3参照)と比較して,次のような利点がある。
【0028】
すなわち,ブラシローラ51と電極52との接触面積が広く確保されているのである。このため,電極52のバイアス電圧V2によるトナーの帯電調整が確実になされる。それでいて,ブラシローラ51と電極52との接触はソフトである。このため,電極52のブラシローラ51への押し込みが弱い。このことにより,ブラシローラ51の摩耗や変形の問題が僅少で済んでいる。また,電極52へのトナーの付着もほとんどない。図3のような平面電極60を用いた場合には,広い接触面積と軽い接触との両立ができないのである。本形態の画像形成装置では,内向きの曲面を有する電極52を用いることにより,この両立を実現させている。
【0029】
図2では,電極52の接触面の全体がほぼ均等の押し込み強さでブラシローラ51に接触している。しかしこのような配置に限らず,図4のような配置でもよい。図4の配置では,ブラシローラ51と電極52の接触面とが互いに偏心している。これにより,電極52の接触面のうち最も上流の箇所Aでは,ブラシローラ51と接触面とが接触していない。そして,接触面の途中以降がブラシローラ51と接触している。このような配置でも,図3の平面電極60の場合と比較して,広い接触面積と軽い接触とのよい両立が実現できる。さらに,ブラシローラ51と電極52の接触し始めの際にブラシローラ51に衝撃が掛かることがない。このため,ブラシローラ51からのトナーの離脱がより少なくて済む。そして,ブラシローラ51の側から見ると,電極52との接触が始まってから,次第に電極52による押し込みが強まっていくことになる。言い替えると,ブラシローラ51の中心から電極52の接触面までの距離は,ブラシローラ51の回転方向に下流に行くほど小さくなっている。
【0030】
なお,図4の配置では,接触面の終端付近(図4中にBで示す位置付近)における電極52のブラシローラ51への押し込み強さは,図2の場合と比較してやや強い。しかし,図3の平面電極60で無理に接触面積を稼いだ場合の押し込み強さよりは弱い。このため,ブラシローラ51の摩耗や変形の問題が生じるほどではない。なお,トナーを散らす効果は,図2の場合と比較して強い。その理由は,ブラシローラ51と電極52の接触範囲内に,回転方向位置による押し込み強さの不均一があるからである。この不均一により,押し込み強さの強い箇所でトナーが散らされるからである。
【0031】
ブラシローラ51の回転が感光体ドラム2の回転に対し順方向である場合には,図5に示す配置となる。また,ブラシローラ51の回転方向を問わず,図6の配置でもよい。図6の場合には,ブラシローラ51の外周径より電極52の接触面の内径の方が大きくされている。このことにより,ブラシローラ51と電極52の接触範囲内での押し込み強さの不均一が確保される。なお,図4〜図6においては,ケース53等の図示を省略している(後出の図11,図12も同じ)。
【0032】
また,ケース53内でブラシローラ51に接触する電極は,図7あるいは図8に示すようなものであってもよい。図7に示すのは,2箇所の接触面を持つ電極54を用いた形態である。図8に示すのは,3箇所の接触面を持つ電極55を用いた形態である。これらの形態における電極54,55の接触面は,ブラシローラ51の回転方向に沿って上流から下流にかけて配置されている。このような形状の電極を使用しても,図3のものと比較して,広い接触面積と軽い接触とのよい両立が実現できる。図9に示すように複数個の電極56,56を,ブラシローラ51の回転方向の上流と下流に配置しても同じことである。図10に示すように複数の接触面を持つ電極57を使用してもよい。図10のものは,実質的には図7のものとほとんど同じである。
【0033】
また,複数個の電極を用いる場合には,接触面の形状に,電極間で差を付けてもよい。図11に示すものは,接触面の曲率に差を付けたものである。すなわち,ブラシローラ51の回転方向下流側の電極59が,上流側の電極58と比較して強い曲率を持っている。これにより,ブラシローラ51と電極との接触区間の入口(電極58)では,両者の接触がソフトである。このため,入口でのトナーの掻き取りがほとんどない。接触区間の出口(電極59)では,ブラシローラ51と電極59とがしっかりと接触している。このため,電極59のバイアス電圧V2によるトナーの帯電調整が確実になされる。また,トナーの散らし性も確保されている。
【0034】
あるいは,押し込み強さに電極間で差を付けてもよい。図12に示すものでは,下流側の電極72が,上流側の電極71と比較して,より強い押し込みでブラシローラ51に接触している。すなわち,ブラシローラ51の中心から電極72までの距離は,ブラシローラ51の中心から電極71までの距離より小さい。これにより,図11に示したものと同様の効果を得ている。
【0035】
むろん,図7〜図10に示した形態においても,図11に示した曲率の差を設けることができる。上流側の電極または接触面を平面とし,下流側の電極または接触面を内向きの曲面とすることもできる。同様に,図7〜図10に示した形態において,図12に示した押し込み強さの差を設けることもできる。その場合,ブラシローラ51の中心から各電極または各接触面までの距離の大小は,各電極または各接触面ごとの最小値または平均値などで比較すればよい。
【0036】
また,図13に示すように,電極がケースを兼ねる構成としてもよい。図13のものでは,平面電極73,75と曲面電極74とをU字型に組み合わせている。そしてその中にブラシローラ51が配置されている。これにより,平面電極73,75および曲面電極74がケースを兼ねているのである。このような構成において,平面電極73と曲面電極74との関係が,前述の上下流での曲率の差に該当する。また,平面電極73と曲面電極74との関係,もしくは,曲面電極74と平面電極75との関係に,前述の押し込み強さの差を設けることもできる。また,図13のものでは,先頭の電極が平面電極73である。このため,図4〜図6で説明したものと同様に,接触し始めの際の衝撃がない。
【0037】
なお,図13中の「73」,「74」,「75」のすべてが電極でなければならないわけではない。それらのうち1つまたは2つが電極で,残りは絶縁物である構成も可能である。その場合には,ケースの一部を電極で構成していることになる。
【0038】
以上詳細に説明したように本形態に係る画像形成装置の各画像形成部1K,1C,1M,1Yでは,感光体ドラム2上の転写残トナーをトナー荷電装置5で帯電調整して帯電チャージャ3以降へ送るクリーナレスプロセスを採用している。そして,そのトナー荷電装置5に,内向きの曲面でブラシローラ51と接触する電極52を設けている。あるいは,ブラシローラ51と電極とが,ブラシローラ51の回転方向の上下流の複数箇所で接触するようにしている。これにより,電極のブラシローラ51への押し込みをあまり強くすることなく,電極とブラシローラ51との接触面積を確保している。このようにして,ブラシローラ51の摩耗,変形の問題なくして,トナーの帯電調整が確実になされるようにした画像形成装置が実現されている。
【0039】
また,電極の接触面の形状および/または電極のブラシローラ51への押し込み強さを均一とはしない形態もある。具体的には,ブラシローラ51の回転方向の上流から下流へ向かうにつれて,曲率および/または押し込みが強まるように配置されている。これにより,電極との接触の初期においてトナーがブラシローラ51から離脱することを防止している。特に,上流側の先頭では両者が接触しないこととするとよりよい。また,トナーの散らし効果も得ている。さらに,電極がケースを兼ねることにより部品点数を減らした形態も実現されている。
【0040】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本形態では,図1に示したように,タンデム型のフルカラー画像形成装置を対象としている。しかしこれに限らず,モノクロ機にも適用可能である。また,対象とする画像形成装置は,コピー機,プリンタ,ファクス機,複合機の区別を問わない。また,本形態では,一時回収部材としてブラシローラを用いたが,これに限らず導電性であれば,スポンジローラやゴムローラでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成装置における画像形成部の構造を示す構成図である。
【図3】比較例における画像形成部の構造を示す構成図である。
【図4】電極の配置の別の例を示す説明図である。
【図5】電極の配置の別の例を示す説明図である。
【図6】電極の配置の別の例を示す説明図である。
【図7】電極の形状の別の例を示す説明図である。
【図8】電極の形状の別の例を示す説明図である。
【図9】電極の配置の別の例を示す説明図である。
【図10】電極の形状の別の例を示す説明図である。
【図11】電極の形状および配置の別の例を示す説明図である。
【図12】電極の形状および配置の別の例を示す説明図である。
【図13】電極の形状および配置の別の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
2 感光体ドラム(トナー像担持体)
5 トナー荷電装置
51 ブラシローラ(一時回収部材)
52 電極
53 ケース
54〜59,71,72 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像担持体上のトナー像を被転写体上に転写して画像を形成する画像形成装置において,
軸周りに回転しつつ前記トナー像担持体に接し,前記トナー像担持体上の転写残トナーを一時的に回収するとともに,回収したトナーを前記トナー像担持体上に吐き出す一時回収部材と,
前記一時回収部材における前記トナー像担持体との接触箇所以外の箇所で接触するとともに電圧の掛かった電極部材とを有し,
前記電極部材の前記一時回収部材に接する接触面は内向きの曲面であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,前記電極部材の接触面中に,
前記一時回収部材の回転方向上流側に位置し,前記一時回収部材への押し込み量が小さい第1位置と,
前記第1位置よりも下流側に位置し,前記一時回収部材への押し込み量が大きい第2位置とがあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において,前記電極部材の接触面中に,
前記一時回収部材の回転方向上流側に位置し,曲率の緩やかな第1区間と,
前記第1区間よりも下流側に位置し,曲率の強い第2区間とがあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記電極部材の接触面における,前記一時回収部材の回転方向上流側の先端が,前記一時回収部材から離隔していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
トナー像担持体上のトナー像を被転写体上に転写して画像を形成する画像形成装置において,
軸周りに回転しつつ前記トナー像担持体に接し,前記トナー像担持体上の転写残トナーを一時的に回収するとともに,回収したトナーを前記トナー像担持上に吐き出す一時回収部材と,
前記一時回収部材における前記トナー像担持体との接触箇所以外の箇所で接触するとともに電圧の掛かった電極部材とを有し,
前記電極部材には,前記一時回収部材に接触する第1接触面と,前記第1接触面より前記一時回収部材の回転方向下流側の第2接触面とが設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
トナー像担持体上のトナー像を被転写体上に転写して画像を形成する画像形成装置において,
軸周りに回転しつつ前記トナー像担持体に接し,前記トナー像担持体上の転写残トナーを一時的に回収するとともに,回収したトナーを前記トナー像担持上に吐き出す一時回収部材と,
前記一時回収部材における前記トナー像担持体との接触箇所以外の箇所で接触するとともに電圧の掛かった第1電極および第2電極とを有し,
前記第2電極は,前記第1電極よりも前記一時回収部材の回転方向下流側の位置で前記一時回収部材に接することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の画像形成装置において,
前記第2接触面または前記第2電極の前記一時回収部材への押し込み量が,前記第1接触面または前記第1電極の前記一時回収部材への押し込み量より大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の画像形成装置において,
前記第2接触面または前記第2電極の接触面が内向きの曲面であり,
前記第1接触面または前記第1電極の接触面が,平面,または,前記第2接触面または前記第2電極の接触面より曲率の弱い内向きの曲面であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記電極部材,または,前記第1電極および前記第2電極が,前記一時回収部材を覆うケースを兼ねていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−113470(P2006−113470A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303105(P2004−303105)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】