説明

画像形成装置

【課題】加圧機構による加圧を解除してベルトの変形を防止するだけでなく、圧解除状態で保持された加圧機構の保持を容易且つ確実に解除できるようにし、設置作業の容易性を向上させる。
【解決手段】装置本体を使用する前には、ベルトを加圧する加圧機構が解除されている。装置本体の初期使用前に、ユーザーが給送トレイ21に転写材を入れる動作に連動し、ベルトの加圧機能の加圧力を発揮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトを有し、ベルトへ付与する張力を解除する機構を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転写ベルト等のベルトを有する画像形成装置は、その装置構成によっては、加圧機構によって加圧力が付与される機構を有している。ベルトは、ゴム・プラスチック系の弾性材料から成るものが多い。この弾性材料からなる被加圧部材は、加圧力や温度・湿度等の条件次第では、長期間放置されると変形状態から回復するのに時間を要したり、変形状態が残留したりする場合がある。このような変形が生じると、例えば、画像不良、搬送不良といった問題を引き起こすおそれがある。
【0003】
一般的に、画像形成装置などの製品の動作保証条件下においては、これらの問題が発生しにくいように設計されるものの、製品の流通過程における輸送時や保管時については、動作保証条件を超える環境下に長期間放置されるケースが考えられる。このような場合でも、製品品質を保証できるようにするために、製品出荷から設置までの物流時のみ、加圧機構による加圧を解除する手法がある(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−076155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の加圧解除構成は、加圧機構による加圧を解除して被加圧部材の変形を防止するという基本機能は満足するものの、設置時に圧解除部材を除去する作業を、ユーザーが忘れずに行わなければならない。一般的に、圧解除部材によって加圧解除された状態で保持されている加圧機構は、画像形成装置の内部に存在する。このため、ユーザーは画像形成装置の開閉カバー等を開けて、除去すべき圧解除部材を探さなければならず、設置作業の容易性が損なわれるだけでなく、圧解除部材を除去し忘れ易い。
【0006】
そこで、本発明の目的は、加圧機構による加圧を解除して被加圧部材の変形を防止するだけでなく、圧解除状態で保持された加圧機構の保持を容易且つ確実に解除できるようにし、設置作業の容易性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の代表的な構成は、装置本体に対して第1の位置と第2の位置をとることができるユニットと、ベルトと、前記ベルトの内面に接触する支持部材と、前記支持部材を前記ベルトの内面側から外面側に向かって移動させるテンション部材と、前記テンション部材による前記支持部材の移動を制限する規制部材と、を有する画像形成装置において、前記ユニットを前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させることによって、前記規制部材の制限が外れ、前記ユニットを前記第2の位置から前記第1の位置へ戻しても前記規制部材による制限が解除されている状態が維持され、かつ、前記ユニットを前記第2の位置から前記第1の位置へ戻した後は画像形成が可能であることを特徴とする。または、装置本体に対して第1の位置と第2の位置をとることができるユニットと、ベルトと、前記ベルトの内面に接触する支持部材と、前記支持部材を前記ベルトの内面側から外面側に向かって移動させるテンション部材と、前記テンション部材による前記支持部材の移動を制限する規制部材と、を有する画像形成装置において、前記ユニットを一旦、前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させた後に前記第1の位置へ戻す一連の動作によって、前記規制部材の制限が外れ、かつ、前記ユニットを前記第2の位置から前記第1の位置へ戻した後は画像形成が可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置本体のセット時の作業負荷を軽減する効果を奏するものである。または、ベルトの初期設定し忘れを防止する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明における最良の実施の形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。また、以下の実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
〔実施の形態1〕
図1から図5を用いて、本発明の実施の形態1を説明する。ここでは、画像形成装置としてプリンタを例示している。図1は本発明を適用したプリンタの概略断面図である。1はプリンタ本体であり、プリンタ本体1の上部には、イエロー(Y)・マゼンタ(M)・シアン(C)・ブラック(Bk)の計4色の一次画像を形成するための画像形成部2Y,2M,2C,2Bkがそれぞれ設けられている。画像形成部2Y,2M,2C,2Bkは、それぞれ形成するトナー像の色が異なるが、基本的な機能が同じであるので、以下、画像形成部2Yの機能について説明する。
【0011】
パソコン等の外部機器から送信されてきた印刷データは、プリンタ本体1を制御するコントローラで受信され、書き込み画像データとしてレーザースキャナ10へ出力される。レーザースキャナ10は感光ドラム12上へとレーザを発光し、書き込み画像データに従った潜像を形成する。
【0012】
画像形成部は、トナーを供給するためのトナーカートリッジ15と、一次画像を形成するためのプロセスカートリッジ11とから構成される。各プロセスカートリッジ11は、像担持体としての感光ドラム12と、感光ドラム12に作用するプロセス手段としての帯電器13、現像器14、及びクリーナ(図示せず)とから構成されている。感光ドラム12は、トナー像を担持する像担持体である。帯電器13は、感光ドラム12の表面に均一な帯電を施す。現像器14は、レーザースキャナ11が形成した潜像をを現像する。クリーナは、トナー像を中間転写ベルト34に転写した後に感光ドラム12に残留したトナーを除去する。感光ドラム12の対向位置には、感光ドラム12の表面に現像されたトナー像を中間転写ベルト34に転写するための一次転写ローラ33が配置されている。前記ベルト34は、前記感光ドラム12上のトナー像を転写材へ転写することに寄与する。
【0013】
中間転写ベルト34に転写されたトナー像(一次画像)は、二次転写ローラ24においてシート(転写材)へ転写される。二次転写ローラ24で転写されずに中間転写ベルト34に残留したトナーは、クリーナ18によって回収される。
【0014】
給送部20は、シート搬送の最上流に位置し、装置の下部に設けられている。シート(転写材)を収容するシート収容部材としての給送トレイ21は、プリンタ本体1の下部に引き出し収納可能に設けられている。給送トレイ21に積載収納されているシートは、給送部20によって給送されると、縦搬送パス22を通り、下流側へと搬送される。縦搬送パス22には、レジストローラ対23があり、ここで最終的なシートの斜行補正と、画像形成部での画像書き込みとシート搬送のタイミング合わせが行われる。
【0015】
画像形成部の下流側には、シート上のトナー像を定着するための定着ローラ対25が設けられている。定着器25の下流には、プリンタ本体1からシートを排出するための排出ローラ26が設けられている。プリンタ本体1の上部には、排出ローラ26によって排出されたシートを受け取るための排出トレイ27が設けられている。
【0016】
以上で説明した概略構成の中では、中間転写ベルト34や定着ローラ対25、給送部20や搬送パスのレジストローラ対23などが、加圧機構によって加圧力が付与されている。これらの中から、本実施の形態では、中間転写ベルト34の加圧機構を用いて、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
まず、図2と図1を用いて、中間転写ベルト34の加圧機構の構成を説明する。被加圧部材としての中間転写ベルト34は、ITBユニット(中間転写ベルトユニット)30に配置された支持部材である、駆動ローラ31、テンションローラ32によって支持されている。駆動ローラ31、テンションローラ32は、ベルト34の内面に接触する支持部材である。テンション部材であるテンションバネ37,38がテンションローラ32に、張力を付与することによって、テンションローラ32が中間転写ベルト34に張力を付与する。テンションバネ37,38は、テンションローラ32をベルト34の内面側から外面側に向かって移動させるテンション部材である。テンションローラ32の張力は、中間転写ベルト34や駆動ローラ31の材質、装置構成に依存するものの、一般的には総圧で49〜89N(5〜10kgf)程度が想定される。テンションローラ32は、ITBユニット30のフレーム(図示せず)に揺動軸35a,36aを中心に揺動支持されるテンションレバー35,36と、テンションバネ37,38の作用により、その両端部から加圧力を得ている。
【0018】
次に、中間転写ベルト34への張力(加圧力)を解除するためのリンク機構の構成を説明する。画像形成装置の前側板と後側板(図示せず)の間には、圧解除軸40が回動可能に支持されている。圧解除軸40には、装置手前側と奥側に計2個の圧解除アーム41,42が固定されている。圧解除アーム41,42は、圧解除軸40の回転に応じてITBユニット30のテンションレバー35,36と係合可能である。圧解除アーム41,42がテンションレバー35,36と係合してテンションレバー35,36を揺動させると、テンションローラ32が移動し、中間転写ベルト34の張力が解除される。圧解除軸40は、後に説明する加圧機構の位置保持を解除する際の動作を安定させる目的で、本体正面側(装置手前側)の圧解除アーム41に連結されたバネ39により、張力解除方向とは逆の回転方向に付勢されている。
【0019】
次に、中間転写ベルト34の加圧機構の加圧を解除する圧解除位置で保持する構成、及び圧解除位置に保持された加圧機構の位置保持を解除する構成について説明する。
【0020】
本体奥側に位置する圧解除アーム42には、加圧機構の係合部としての突起部42aが設けられている。圧解除アーム42の突起部42aに対向する位置には、規制部材としての保持ブロック51が、本体フレームを構成するステー部材50上にスライド可能に設けられている。保持ブロック51は、テンションバネ37,38によるテンションローラ32の移動を制限する規制部材である。保持ブロック51には、圧解除アーム42の突起部42aと係合可能なカム部51aが設けられている。更に保持ブロック51には、作動レバー52が揺動可能に支持されている。この作動レバー52にはバネ53(図3参照)によって付勢力が与えられている。保持ブロック51は、作動レバー52を介してこのバネ53の力を受ける事により、可動方向に関して一方向に付勢される。作動レバー52の揺動端(自由端)には、規制部材の作動部としてのボス52aが設けられている。後述する動作説明にて詳述するが、保持ブロック51は、中間転写ベルト34の加圧機構を圧解除位置(図4(c)参照)に保持するものである。
【0021】
ITBユニット30の装置下方には、ステー部材50を挟んで、移動部材としての給送トレイ21が隣接している。給送トレイ21は、プリンタ本体に対して装置手前側へ引き出し可能な構成になっている。すなわち、ユニットとしての給送トレイ21は、プリンタ本体1に対して第1の位置(装着位置)と第2の位置(引き出し位置)をとることができる。更に詳しくは、給送トレイ21は、前記第1の位置ではプリンタ本体1の中に格納されており、前記第2の位置では、プリンタ本体1から引き出されている。給送トレイ21の奥側の壁には、移動部材の係合部としてのカム60が形成されており、給送トレイ21の引き出し過程において作動レバー52のボス52aと係合可能になっている。また、ステー部材50には作動レバー52のボス52aを案内するガイド穴54が形成されており、動作の局面に応じて作動レバー52の揺動姿勢を規制する。具体的には、図3に示すように、作動レバー52のボス52aをガイド穴54で案内しつつ、作動レバー52の揺動姿勢を、それぞれ待機位置、完了位置、退避位置に規制する。作動レバー52は、バネ53の作用により、ボス52aが特にガイドされていない状態では待機位置で安定するように付勢されている。後述する動作説明にて詳述するが、給送トレイ21に形成したカム60は、給送トレイ21の初期使用前の移動動作時に、前記保持ブロック51が有する作動レバー52のボス52aに係合し、カム60に沿ってボス52aを案内する。そして、給送トレイ21のカム60は、中間転写ベルト34の加圧機構を圧解除位置に保持している前記保持ブロック51を、前記加圧機構の位置保持を解除する保持解除位置(図5(c)参照)に移動させる。
【0022】
以上で概略を述べた構成について、その動作を説明する。図4は、出荷時における中間転写ベルトの張力解除動作の過程を示したものである。図4では、動作を分かり易くする目的で、本体奥側の圧解除アーム42の周辺のみを切り出して図示している。
【0023】
中間転写ベルト34の張力解除は、圧解除軸40を、装置正面側(手前側)から工具(図示せず)を用いて回転させることによって行う。圧解除軸40が工具によって回転されると、圧解除アーム42の突起部42aが保持ブロック51のカム部51aに作用し、保持ブロック51はバネ53の付勢力に逆らって移動する(図4(b))。また、圧解除アーム42は、ITBユニット30のテンションレバー36をテンションバネ38の加圧力に抗して揺動させ、テンションローラ32が付与する中間転写ベルト34の張力を解除する。やがて圧解除軸40の回転が所定の位相に達すると、保持ブロック51を移動させていた圧解除アーム42の突起部42aと保持ブロック51のカム部51aの係合が外れ、保持ブロック51はバネ53の付勢方向に戻る(図4(c))。この状態で、圧解除軸40を回していた工具(図示せず)を取り外しても、圧解除アーム42の突起部42aが保持ブロック51のロック部51b(保持部)と係合するため、圧解除軸40の回転にはロックがかかる。これにより、中間転写ベルト34の加圧機構は加圧が解除された圧解除位置(図4(c)参照)で保持され、中間転写ベルト34は張力を解除された状態で保持される。この時の保持ブロック51の位置を、保持位置とする。上記動作を終了した時点では、作動レバー52の揺動姿勢は、バネ53の作用により、必ず待機位置となる。
【0024】
次に、設置時における加圧動作(加圧機構の保持解除動作)を説明する。図5は、加圧機構の保持解除の過程を図示したものである。図5では、動作を分かり易くする為、保持ブロック51の周辺機構のみを抜粋して図示している。プリンタ本体のステー部材50については、ガイド穴54のみを図示している。
【0025】
画像出力の前には、印字する対象であるシートを給送トレイ21に収納する必要があるため、ユーザーが製品を設置してから使用するまでの間に行う動作である。すなわち、給送トレイ21を一旦、前記第1の位置(装着位置)から前記第2の位置(引き出し位置)へ移動させた後に前記第1の位置へ戻す一連の動作である。この給送トレイ21を装置の初期使用前に引き出すと、その過程において、給送トレイ奥側のカム60の一部に設けられた係合面60aが、作動レバー52のボス52aと係合する。そして、作動レバー52と連結された保持ブロック51は、給送トレイ21の移動動作と連動して、保持位置(加圧機構の圧解除位置)から移動し始める(図5(a))。保持ブロック51の移動量が所定量に達すると、圧解除アーム42の突起部42aと保持ブロック51のロック部51bの係合が外れる(図5(b))。この時の保持ブロック51の位置を、解除位置とする。すると、圧解除アーム42はバネ39の作用により図5(b)の矢印方向に回転するため、圧解除アーム42による中間転写ベルト34の張力解除作用が開放され、中間転写ベルト34は加圧機構によって加圧される。給送トレイ21をさらに引き出すと、作動レバー52はステー部材50のガイド穴54の規制による揺動角度が徐々に大きくなり、やがてボス52aとカム60の係合面60aとの係合が外れる。ボス52aとカム60の係合が外れると、保持ブロック51はバネ53の作用により付勢方向へ移動する(図5(c))。この時、作動レバー52は、給送トレイ21の規制面60bによって、揺動角度を維持したまま保持ブロック51と共に移動し、最終的にボス52aがガイド穴54の待機爪54aに引っ掛かった完了位置(保持ブロック51の保持解除位置)で係止される。以上により、加圧機構を圧解除位置に保持している保持ブロック51を、前記加圧機構の位置保持を解除する保持解除位置に移動させる保持解除動作は完了する。
【0026】
なお、作動レバー52の揺動姿勢が完了位置にある状態では、給送トレイ21のカム60は、トレイ21の引き出し・装着軌跡において、保持ブロック51のボス52aとは干渉しない。よって、設置完了後の通常のシート補給作業においては、給送トレイ21の操作感が損なわれることはない。
【0027】
更に本実施の形態では、給送トレイ21が装置本体に未装着の状態で中間転写ベルト34の張力解除を行った場合でも、後から給送トレイ21を装置本体に装着できるようにする仕組みが盛り込まれている。作動レバー52の揺動姿勢が待機位置にある時に給送トレイ21を装置本体に押し込むと、図5(d)に示すように、給送トレイ21のカム60の一部に設けられた斜面部60cが作動レバー52のボス52aと係合し、ボス52aは斜面部60cに押される。すると、作動レバー52のボス52aはステー部材50のガイド穴54に沿って移動し、作動レバー52は退避位置へと揺動する。給送トレイ21のカム60が通過し終えると、作動レバー52は再び開放され、バネ53の作用で待機位置へと復帰する。その後、前述した給送トレイ21の移動動作を行うことで、装置設置時における中間転写ベルト34の加圧動作(加圧機構の保持解除動作)がなされる。
【0028】
なお、上述した実施の形態では、移動部材として、装置本体に対して引き出し収納可能な給送トレイ(シート収容部材)を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば装置本体に対して着脱可能なシート収容部材であっても良い。また、前記移動部材は、画像形成装置本体に対して開閉可能な開閉カバーなどの開閉部材であっても良い。
【0029】
〔実施の形態2〕
本実施の形態において、前記移動部材は、画像形成装置本体に対して、着脱可能なベルトユニット(ITBユニット30)に付属する部材であっても良い。図6にその具体例を示す。図6に示す実施の形態では、加圧機構とベルトとを有し、なおかつ画像形成装置本体に対して着脱可能なITBユニット30がユーザによって着脱されることによって、該着脱操作に連動させて、自動的に加圧機構の保持解除動作を行う。
【0030】
上述した実施の形態と同様、圧解除アーム42の突起部42aに対向する位置には、規制部材としての保持ブロック56が、本体フレームを構成するステー部材50上にスライド可能に設けられている。保持ブロック56には、圧解除アーム42の突起部42aと係合可能な第1カム部56aが形成されている。また、保持ブロック56にはバネ(図示せず)によって付勢力が与えられており、可動方向において図6中の左方向へ付勢されている。一方、ITBユニット30にはベルトを張架するローラの端部を保持しているITBフレーム61と該ITBフレーム61に付属の解除フック59が連結配置されている。このとき、解除フック59は前記ITBユニット30の着脱軌跡上で保持ブロック56の突起部56dと係合可能な位置関係となっている。ただし、図6(a)の状態では解除フック59と保持ブロック56の突起部56dは互いに接していない。
【0031】
次に、加圧動作(加圧機構の保持解除動作)を説明する。中間転写ベルト34の加圧機構の圧解除状態では、図6(a)に示すように、圧解除アーム42の突起部42aが保持ブロック56の第1カム部56aにあるロック部(保持部)56bと係合し、圧解除アーム42は姿勢を保持されている。この時の保持ブロック56の位置は保持位置であり、中間転写ベルト34の加圧機構の圧解除位置に相当する。
【0032】
ITBユニット30を図中の矢印αの方向に引き出すと、その過程において、ITBユニット30に付属の解除フック59が保持ブロック56の突起部56dと係合する。このとき、保持ブロック56はバネの付勢力に逆らって移動する。解除フック59と突起部56dの関係を図7においても示す。図7(a)は、図6を矢印αとは逆の方向から見た断面図である。図7(b)は、図6(a)の状態を、ステー部材50の更に裏側から透視した図である。ITBユニット30を図6中の矢印αの方向に引き出すと、解除フック56と突起部56dが接触する斜面があり、その斜面を伝って、突起部56dが矢印βの方向に移動する。保持ブロック56が所定量以上移動すると、圧解除アーム42の突起部42aと保持ブロック56のロック部56bとの係合が外れる。先述のとおり、圧解除アーム42は装置本体のフレームに支持されている圧解除軸40に固定されているので、圧解除アーム42に対して保持ブロック56が相対的に移動することになるからである。この係合が外れると、圧解除アーム42の位置保持が開放されるため、中間転写ベルト34はテンションレバー36とテンションバネ38の作用によって加圧される(図6(c))。この時の保持ブロック56の位置は保持解除位置である。この保持ブロック56の保持解除が完了した後は、圧解除アーム42の突起部42aが保持ブロック56の第1カム部56aの側面と係合する。このため、保持ブロック56は保持解除位置のまま保持される。保持ブロック56の保持解除が完了した後にITBユニット30を着脱すると、ITBユニット30に付属の解除フック59と保持ブロック56の突起部56dは係合して、保持ブロック56は移動するが、圧解除アーム42の位置は変わらないため、中間転写ベルト34は加圧されたままの状態が維持される。
【0033】
なお、本実施の形態は、実施の形態1に示した保持ブロック51と同じ形状の部分を有しており、保持ブロック51に突起部56dを追加した構成ともいえる。つまり、本実施の形態に示した保持ブロック56を実施の形態1の保持ブロック51と交換し、更に、解除フック59を追加すれば、給送トレイ21を引き出す動作、または、ITBユニット30を引き出す動作のいずれか一方を行えば、中間転写ベルト34の張力解除作用が開放され、中間転写ベルト34は加圧機構によって加圧されるという作用を生じる。
【0034】
〔実施の形態3〕
本実施の形態においては、前記移動部材は、画像形成装置内の駆動源と連動する連動部材である。図8にその具体例を示す。図8に示す実施の形態では、ユーザー操作によってではなく、電源投入後の画像形成装置の駆動を利用して、自動的に加圧機構の保持解除動作を行う。
【0035】
上述した実施の形態と同様、圧解除アーム42の突起部42aに対向する位置には、規制部材としての保持ブロック62が、本体フレームを構成するステー部材50上にスライド可能に設けられている。保持ブロック62には、圧解除アーム42の突起部42aと係合可能な第1カム部62aが形成されている。更に保持ブロック62の端部には、前記連動部材と係合可能な第2カム部(作動部)62cが形成されている。また、保持ブロック62にはバネ(図示せず)によって付勢力が与えられており、可動方向において図8中の左方向へ付勢されている。第2カム部62cの近傍には、画像形成装置の駆動源によって回転駆動可能な連動部材としての解除軸57が配置され、該解除軸57には係合部としての解除レバー58が支持されている。この解除レバー58は、画像形成装置の電源投入後、画像形成動作を行うまでに、少なくとも1回転以上は駆動される。
【0036】
次に、設置時における加圧動作(加圧機構の保持解除動作)を説明する。中間転写ベルトの加圧機構の圧解除状態では、図8(a)に示すように、圧解除アーム42の突起部42aが保持ブロック62の第1カム部62aにあるロック部(保持部)62bと係合し、圧解除アーム42は姿勢を保持されている。この時の保持ブロック62の位置は保持位置であり、中間転写ベルト34の加圧機構の圧解除位置に相当する。また、この時の第2カム部62cの状態は、前述した実施の形態のボス52aの待機位置に相当する。電源の投入後に解除レバー58が回転を始めると、やがて解除レバー58が保持ブロック62の第2カム部62cに作用し、保持ブロック62をバネの付勢力に逆らって移動させる(図8(b))。保持ブロック62が所定量以上移動すると、圧解除アーム42の突起部42aと保持ブロック62のロック部62bとの係合が外れる。この係合が外れると、圧解除アーム42の位置保持が開放されるため、中間転写ベルト34はテンションレバー36とテンションバネ38の作用によって加圧される(図8(c))。この時の保持ブロック62の位置は保持解除位置である。この保持ブロック62の保持解除が完了した後は、圧解除アーム42の突起部42aが保持ブロック62の第1カム部62aの側面と係合する。このため、保持ブロック62は保持解除位置のまま保持される。保持ブロック62が保持解除位置にある状態では、保持ブロック62の第2カム62cと解除レバー58は接触しない位置関係にある。このため、保持ブロック62の保持解除が完了した後に解除レバー58が回転駆動されても、保持ブロック62が駆動源の回転の負荷になることはない。この時の第2カム62cの状態は、前述した実施の形態のボス52aの完了位置に相当する。
【0037】
〔実施の形態4〕
図9を用いて、本発明の実施の形態を説明する。画像形成装置の基本構成については、前述した実施の形態と同様であるため、省略する。また、圧解除の対象としては、実施の形態1と同様に中間転写ベルトの加圧機構を例示し、上述の実施の形態と同様の機能を有する要素には、図中で同じ番号を付与する。
【0038】
まず、装置の概略構成を説明する。図9は、本実施の形態の加圧機構の位置保持解除機構について、概略構成と動作状態を示したものである。
【0039】
まず、中間転写ベルト34の加圧機構及び可動部材の構成を説明する。テンションレバー70,71は、図示しないユニットフレームにより、回動軸70a,71aを中心に揺動可能に支持されている。中間転写ベルト34は、加圧機構を成すテンションローラ32とこれを付勢するテンションレバー70,71とテンションバネ37,38の作用により、張力を与えられる。本実施の形態では、画像形成装置本体は、フロアー100に対して計4ヶ所の脚によって支えられる構成になっており、そのうち図中の2ヶ所の脚76,77が伸縮可能な可動脚になっている。この可動脚76,77は、装置鉛直方向にスライド可能な可動部材としての保持ロッド72,73に固定されており、圧縮バネ74,75の作用によって、装置下方へ付勢されている。
【0040】
次に、前記加圧機構の位置保持解除機構の構成を説明する。テンションレバー70,71には、可動脚76,77が固定された保持ロッド72,73に係合可能な突起部70b,71bが設けられている。また、保持ロッド72,73には、前記テンションレバー70,71の突起部70b,71bと係合して、前記加圧機構を圧解除位置に保持する保持部としての解除カム72a,73aが一体に形成されている。そして、可動脚76,77が装置本体下方へ突出した状態では、テンションレバー70,71の突起部70b,71bを解除カム72a,73aの凸部72b,73bが押すため、テンションレバー70,71は圧解除方向へ揺動する。そして、保持ロッド72,73の解除カム72a,73aにより、前記圧解除方向へ揺動したテンションレバー70,71を圧解除位置(図9(a)参照)に保持する。一方、可動脚76,77が装置本体内部へ退避した状態では、テンションレバー70,71の突起部70b,71bと解除カム72a,73aの凹部72c,73cが対向するため、両者は接触せず、テンションレバー70,71の位置は規制されない。すなわち、前記保持ロッド72,73の移動動作により、前記加圧機構を圧解除位置に保持している前記解除カム72a,73aが、前記加圧機構の位置保持を解除する保持解除位置(図9(b)参照)に移動する。
【0041】
物流時においては、図9(a)に示す通り、可動脚76,77はフロアー100による規制を受けないように、梱包される。このため、可動脚76,77は装置下方へ突出した状態にある。すなわち、テンションレバー70,71の突起部70b,71bと解除カム72a,73aの凸部72b,73bが係合した状態となる。このため、テンションレバー70,71は、保持ロッド72,73の解除カム72a、73aの作用によって、テンションローラ32を圧解除方向へ移動させた状態で保持され、中間転写ベルト34に対する加圧機構の張力は解除されている。製品が開梱され、フロアー100に降ろされると、図9(b)のように、可動脚76,77はフロアー100に押されて退避する。すると、保持ロッド72,73の解除カム72a,73aも連動して同方向にスライドし、テンションレバー70,71の突起部70b,71bとの係合が解除される。これにより、テンションレバー70,71およびテンションローラ32の位置保持が開放されるため、中間転写ベルト34は加圧機構によって張力を付与される。
【0042】
なお、圧縮バネ74,75の加圧力が十分であれば、製品出荷時などに製品をフロアー100から持ち上げると、自動的に圧縮バネ74,75の作用で中間転写ベルト34のテンションが解除される。このため、特別な圧解除作業は必要ない。一方、バネ力が不十分な場合は、実施の形態1のように専用の工具等を用いて圧解除動作を行うようにしても良い。圧解除の方法は、前述したものに限定されるものではない。
【0043】
前述した実施の形態においては、加圧機構によって加圧力が付与される被加圧部材として、トナーにより形成された一次画像を載せる中間転写ベルトを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シートを吸着搬送する吸着ベルトなど、複数のローラによって張架され、加圧機構によって張力が付与される無端状のベルトであれば、他のベルトであっても良い。前記加圧機構は、無端状のベルトに張力を付与する加圧機構に限定されるものではなく、例えば、シートを挟持搬送するローラ対の一方のローラを他方のローラに対して加圧する加圧機構であっても良い。このような加圧機構を有する画像形成装置に本発明を適用することで同様の効果が得られる。
【0044】
また前述した実施の形態では、画像形成部を4つ使用しているが、画像形成部の使用個数はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。
【0045】
また前述した実施の形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1に係る画像形成装置の概略断面図。
【図2】本発明の実施の形態1に係る加圧機構の加圧解除及び保持解除構成を示す模式斜視図。
【図3】本発明の実施の形態1に係る加圧機構の加圧解除及び保持解除構成を部分的に示す図。
【図4】本発明の実施の形態に係るベルトの張力解除作業時の動作説明図。
【図5】本発明の実施の形態1に係る加圧機構の加圧解除及び保持解除の動作説明図。
【図6】本発明の実施の形態2に係る加圧機構の加圧解除及び保持解除の動作説明図。
【図7】本発明の実施の形態2に係る加圧機構の加圧解除及び保持解除の構成を説明する図。
【図8】本発明の実施の形態3における加圧機構の加圧解除及び保持解除の動作説明図。
【図9】本発明の実施の形態4における加圧機構の加圧解除及び保持解除の動作説明図。
【符号の説明】
【0047】
21 …給送トレイ(移動部材)
30 …ITBユニット
31 …駆動ローラ
32 …テンションローラ
33 …一次転写ローラ
34 …中間転写ベルト(被加圧部材)
35,36 …テンションレバー
35a,36a …揺動軸
37,38 …テンションバネ
39 …バネ
40 …圧解除軸
41,42 …圧解除アーム
42a …突起部
50 …ステー部材
51 …保持ブロック(保持手段)
51a …カム部
51b …ロック部
52 …作動レバー
52a …ボス
53 …バネ
54 …ガイド穴
54a …待機爪
56 …保持ブロック(保持手段)
56a …第1カム部
56b …ロック部
56c …第2カム部
56d …突起部
57 …解除軸(連動部材)
58 …解除レバー(係合部)
59 …解除レール
60 …カム(係合部)
60a …係合面
60b …規制面
60c …斜面部
61 …ITBフレーム
70,71 …テンションレバー
70a,71a …回動軸
72,73 …保持ロッド(移動部材)
72a,73a …解除カム(保持部)
74,75 …圧縮バネ
76,77 …可動脚
100 …フロアー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対して第1の位置と第2の位置をとることができるユニットと、ベルトと、前記ベルトの内面に接触する支持部材と、前記支持部材を前記ベルトの内面側から外面側に向かって移動させるテンション部材と、前記テンション部材による前記支持部材の移動を制限する規制部材と、を有する画像形成装置において、
前記ユニットを前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させることによって、前記規制部材の制限が外れ、前記ユニットを前記第2の位置から前記第1の位置へ戻しても前記規制部材による制限が解除されている状態が維持され、かつ、前記ユニットを前記第2の位置から前記第1の位置へ戻した後は画像形成が可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
装置本体に対して第1の位置と第2の位置をとることができるユニットと、ベルトと、前記ベルトの内面に接触する支持部材と、前記支持部材を前記ベルトの内面側から外面側に向かって移動させるテンション部材と、前記テンション部材による前記支持部材の移動を制限する規制部材と、を有する画像形成装置において、
前記ユニットを一旦、前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させた後に前記第1の位置へ戻す一連の動作によって、前記規制部材の制限が外れ、かつ、前記ユニットを前記第2の位置から前記第1の位置へ戻した後は画像形成が可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記ユニットは、前記第1の位置では装置本体の中に格納されており、前記第2の位置では、装置本体から引き出されていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ユニットが、転写材を収容する収容部材であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
トナー像を担持する像担持体を有し、前記ベルトは、前記像担持体上のトナー像を転写材へ転写することに寄与することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−286606(P2007−286606A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62796(P2007−62796)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】