説明

画像形成装置

【課題】防振部材を厚くすることなく振動発生源の振動による騒音の発生を低減することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】防振部材1を、保持部材2の振動発生源3の保持面と反対側の面8に係止する係止部1aと、一端に係止部1aが形成され、かつ保持部材2に形成された挿通穴6に挿通され、固定部4,5により振動発生源3を固定する際、弾性変形しながら振動発生源3に圧接する挿通穴6より小径の本体部1bとにより構成する。そして、振動発生源3を固定する際、防振部材1を、保持部材2の振動発生源3の保持面と反対側の面8に係止させると共に、保持部材2に形成された挿通穴6に接触することなく挿通させて振動発生源3に圧接させることにより、振動伝達経路の距離eを長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に振動発生源の振動により発生する騒音を防止するための防振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機等の画像形成装置においては、複数のシートが収納されたシート収納部からシートを1枚ずつ給送するシート給送装置を備えている。そして、このようなシート給送装置としては、シート収納部に収納されたシート束の端部にエアを吹き付けてシートを複数枚浮上させ、上方に配された吸着給送ベルトにシートを1枚だけ吸着させて給送するエア給紙方式のものがある(特許文献1参照)。
【0003】
このようなエア給紙方式のシート給送装置において、シートを給送する際に駆動される吸着搬送ベルトの駆動源としてモータや、送風のための軸流ファンを備えている。ここで、これらモータやファンは回転動作を行うため、動作時に振動を発生し、この振動が音に変わる場合がある。
【0004】
また、モータやファンは単体の動作では騒音を発するようなことが無くとも、モータやファン(以下、モータ等という)が装置本体に取り付けられた場合に、モータ等の振動が、装置本体の取り付け板金等のフレームを振動させる場合がある。そして、このようにフレームが振動した場合、騒音が発生するばかりでなく、画像形成時の際、フレームの振動により画像の乱れが発生する場合がある。
【0005】
そこで、このような振動伝達による問題を解決するため、従来のシート給送装置においては、モータ等の振動源である振動発生源と、振動発生源が固定される保持部材との間に、ゴム等の弾性部材により形成された防振部材を介在させている。また、振動発生源を保持部材にビス等で固定する場合には、締結部分に防振部材を挟み込むようにしている。
【0006】
ところで、振動発生源を保持部材に固定する締結部分では、防振部材が振動発生源と保持部材との間に挟み込まれるが、このように挟み込まれた場合、防振部材は圧縮された状態になる。このように圧縮された状態になると、防振部材(弾性部材)は硬度が高くなって振動伝達しやすい状態になり、この結果、締結部分での振動伝達が大きくなる。
【0007】
図8は、従来の振動発生源の防振構造の一例を示す図である。図8に示すように、ファンや駆動モータ等の振動源である振動発生源3を保持部材2に固定する際、取り付けビス4と保持部材2に設けられた締結部82とにより、ゴムなどの防振部材81を振動発生源3と保持部材2とで挟み込む状態になる。
【0008】
なお、振動発生源3がファンの場合、保持部材側に吸気口又は排気口が設けられる。そして、このように吸気口等が設けられた場合、ファンと保持部材2との間の風路を確保するため、図8に示すように振動発生源3と保持部材2との間に弾性を有したシール部材7を配している。
【0009】
しかし、このように挟み込まれることにより防振部材81は圧縮された状態になるため、振動発生源3が固定されている状態では防振部材81の硬度が高くなり、振動発生源3の振動が伝達しやすい状態になる。ここで、この固定方法での振動伝達経路は、振動発生源3〜防振部材81〜保持部材2の順となり、この場合の振動伝達経路の距離はaとなる。
【0010】
また、図9は、従来の振動発生源の他の防振構造の例を示す図である。この防振構造の場合は、振動発生源3を保持部材2に固定する際、防振部材83を保持部材2に設けられた挿通穴85に挿通した後、取り付けビス4と防振部材83に設けられた締結部84とにより、振動発生源3に圧接させるようにしている。そして、このように振動発生源3に圧接する際、防振部材83は弾性変形して保持部材2の表裏両面と、挿通穴85の内壁面に接触するようになっている。
【0011】
この固定方法では、振動発生源3を固定する際、振動発生源3と保持部材2とで防振部材83を圧縮させながら挟み込むようにしているため、振動伝達経路は、振動発生源3、防振部材83、保持部材2の順となる。よって、この振動伝達経路の距離はaとなり、図8に示す防振構造と同じになる。
【0012】
【特許文献1】特開平7−196187号公報(第9頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、このような従来の防振構造により振動発生源を固定するようにした画像形成装置において、振動伝達抑制が不十分な場合は、例えば防振部材を厚くするようにしている。
【0014】
ここで、このように防振部材を厚くすると、例えば振動発生源がモータの場合、モータの駆動伝達を行うためのモータ軸の長さを長くする必要が生じる。しかし、このようにモータ軸の長さを長くすると、モータ軸が長くなった分、軸の偏心等の影響を受けることになるため、駆動伝達の点において不具合を発生しやすくなってしまう。
【0015】
また、振動発生源がファンのとき、保持部材の間の風路確保のためシール部材を用いた場合、防振部材を厚くしていくと、防振部材を厚くした分だけ、ファンと保持部材の距離が離れるようになり、これに伴いシール部材を厚く(大きく)する必要が生じる。さらに、ファンと保持部材の距離が離れると、シールする領域が広がるため、密閉度が確保しにくくなり、吸気排気損失の可能性が増え、吸気又は排気の効率を下げることになる。
【0016】
そこで本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、防振部材を厚くすることなく振動発生源の振動による騒音の発生を低減することのできる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成部を有する画像形成装置において、振動発生源と、前記振動発生源を保持する保持部材と、前記保持部材に形成された挿通穴に挿通されて前記振動発生源に圧接する弾性部材により形成された防振部材と、前記保持部材と前記防振部材と前記振動発生源とを一体的に固定する固定部と、を備え、前記防振部材は、前記保持部材の前記振動発生源の保持面と反対側の面に係止する係止部と、前記保持部材に形成された挿通穴に挿通され、前記振動発生源に圧接する前記挿通穴の径よりも小径の本体部とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のように、振動発生源を固定する際、防振部材を、保持部材の振動発生源の保持面と反対側の面に係止させると共に、保持部材の挿通穴に接触することなく挿通させて振動発生源に圧接させることにより、振動伝達経路の距離を長くすることができる。これにより、防振部材を厚くすることなく振動発生源の振動による騒音の発生を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の一例であるプリンタの概略構成を示す図である。
【0021】
図1において、100はプリンタ、101はプリンタ本体である。このプリンタ本体101の上部には自動原稿給送装置120により原稿載置台としてのプラテンガラス120aに載置された原稿Dを読み取る画像読取部130が設けられている。また、画像読取部130の下方には画像形成部102と、画像形成部102にシートSを給送するシート給送装置103が設けられている。
【0022】
ここで、画像形成部102には、感光ドラム112、現像器113、レーザースキャナーユニット111等が設けられている。また、シート給送装置103は、OHT等のシートSを収容して装置本体101に着脱自在な複数のシート収納部115及びシート収納部115に収納されたシートSを送り出すシート給送手段の一例としての給送ベルトである吸着給送ベルト21等を備えている。
【0023】
次に、このような構成のプリンタ100の画像形成動作について説明する。
【0024】
装置本体101に設けられている後述する図3に示す制御装置から画像読取部130に画像読取信号が出力されると、画像読取部130により画像が読み取られる。この後、レーザースキャナーユニット111から、この電気信号に対応したレーザ光が感光ドラム112上に照射される。
【0025】
このとき感光ドラム112は、予め帯電されおり、光が照射されることによって静電潜像が形成され、次いで静電潜像を現像器113によって現像することにより、感光ドラム上にトナー像が形成される。
【0026】
一方、制御装置から給紙信号がシート給送装置103に出力されると、シート収納部115からシートSが給送される。この後、給送されたシートSはレジストローラ117により感光ドラム上のトナー画像と同期を取って感光ドラム112と転写帯電器118とにより構成される転写部に送られる。
【0027】
次に、このように転写部に送られたシートは、トナー像が転写され、この後、定着部114に搬送される。さらにこの後、定着部114により加熱及び加圧されることにより、シートSに未定着転写画像が永久定着される。そして、このように画像が定着されたシートは排出ローラ116により装置本体101から排紙トレイ117に排出される。
【0028】
図2は、シート給送装置103の構成を示す図である。シート収納庫11は、シート積載部であるトレイ12と、シートSのシート給送方向上流側(後側)を規制する後端規制板13と、シートSのシート給送方向と直交する幅方向の位置を規制する側端規制板14を備えている。なお、後端規制板13及び側端規制板14は、収納されるシートのサイズによって位置を任意に変えられるように構成されている。また、このシート収納庫11は、スライドレール15によりプリンタ本体101から引き出し可能となっている。
【0029】
さらに、このシート収納庫11の上部にはシートを1枚ずつ分離して給送するためのエア給紙方式のシート給送機構(以下、エア給紙機構150という)が配置されている。このエア給紙機構150は、トレイ12に積載されたシートSを吸着給送する吸着給送部50Aと、トレイ上のシート束の上部部分を浮上させると共に、シートSを1枚ずつ分離するためのエア吹き付け部30とを備えている。
【0030】
ここで、吸着給送部50Aは、ベルト駆動ローラ41に掛け渡されると共にシートSを吸着して図中右方向に給送する吸着給送ベルト21と、シートSを吸着給送ベルト21に吸着させるための負圧を発生する吸着ファン36を備えている。また、吸着給送ベルト21の内側に配置され、吸着給送ベルト21に形成されている不図示の吸引穴を介してエアを吸引するための吸引ダクト51を備えている。
【0031】
さらに、吸着ファン36と吸引ダクト51との間に配置され、吸着給送ベルト21の吸着動作をON/OFFする吸着シャッタ37等を備えている。なお、本実施の形態において、吸着給送ベルト21は、幅方向に所定の間隔を持って複数配置されている。
【0032】
また、エア吹き付け部30には、収納されているシートSの上部にエアを吹き付けるための捌きノズル33及び分離ノズル34と、分離ファン31と、各ノズル33,34に分離ファン31からエアを送る分離ダクト32を備えている。
【0033】
そして、分離ファン31により矢印C方向に吸い込まれたエアの一部は分離ダクト32を通過して捌きノズル33により矢印D方向に吹き付けられ、トレイ12上に積載されているシートSの上部のうち数枚を浮上させる。また、他のエアは分離ノズル34により矢印E方向に吹き付けられ、捌きノズル33により浮上したシートを1枚ずつ分離して吸着給送ベルト21に吸着させる。
【0034】
次に、このように構成されたシート給送装置103(エア給紙機構150)のシート給送動作について説明する。
【0035】
まず、ユーザーがシート収納庫11を引き出してシートSをセットし、この後、図2に示すように所定の位置に格納すると、まずトレイ12が矢印A方向に上昇し始める。やがて、トレイ上のシートの上面が吸着給送ベルト21による給送可能位置に達すると、この位置でトレイ12が停止する。
【0036】
次に、シート給送信号を検知すると、不図示の制御装置は分離ファン31を作動させ、矢印C方向へエアを吸い込み、このエアは分離ダクト32を介して捌きノズル33、分離ノズル34からそれぞれ矢印D及びE方向からシート束に吹き付けられる。これにより、シート束のうちの上位の数枚のシートが浮上する。また、制御装置は吸着ファン36を作動させ、図中F方向にエアを吐き出す。この際、吸着シャッタ37はまだ閉じられている。
【0037】
次に、給送信号を検知してから所定時間が経過し、上位のシートの浮上が安定したところで、吸着シャッタ37を回転させて開放し、吸着給送ベルト21に設けられた吸引穴から吸引力を発生させる。そして、この吸着力と、分離ノズル34からの分離エアによりトレイ12上に積載されているシートSの最上部のシートのみが吸着給送ベルト21に吸着される。
【0038】
続いて、制御装置は、ベルト駆動ローラ41を回転させる。これにより、吸着給送ベルト21に吸着された状態で最上部のシートが給送され、この後、引き抜きローラ対42により画像形成部に向けて送られる。
【0039】
次に、本実施の形態に係る分離ファン31、吸着ファン36の防振構造の構成について図3、図4及び図5を用いて説明する。なお、図3〜図5において、既述した図8及び図9と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0040】
図3〜図5において、1はゴム等の弾性部材で構成された防振部材である。この防振部材1は、例えば分離ファン31、吸着ファン36等の動作時に振動を発生する振動発生源3と、振動発生源3を固定するプリンタ本体側のフレーム等の保持部材2との間に配されるものである。なお、この保持部材2は、例えば金属又はモールド製であり、また保持部材2は、防振部材1が挿通される挿通穴6を有している。
【0041】
ここで、本実施の形態において、防振部材1は、保持部材2の振動発生源3の保持面と反対側の面により構成される係止面8に係止する係止部1aを有している。また、一端に係止部1aが形成され、かつ保持部材2に形成された挿通穴6に挿通され、振動発生源3を固定する際、弾性変形しながら振動発生源3に圧接する本体部1bを有している。
【0042】
5は、この防振部材1に一体に取り付けられているナット等により構成される締結部であり、保持部材2と防振部材1と振動発生源3とを一体的に固定する固定部は、この締結部5と取り付けビス4とにより構成される。なお、本実施の形態において、締結部5としてナットを用いた場合について説明しているが、これ以外にも、防振部材1にタップを形成して一体化したものなど、取り付けビス4により防振部材1を固定できるものであればどのような構成でもよい。
【0043】
そして、振動発生源3を保持部材2に固定する際、まず防振部材1を保持部材2に設けられた挿通穴6に挿通するようにしている。次に、防振部材1の締結部5に取り付けビス4を締結する。これにより、防振部材1は、係止部1aが保持部材2の振動発生源3と反対側の係止面8に押し付けられ、防振部材1に面接触した状態で係止される。
【0044】
ところで、本実施の形態において、防振部材1の挿通穴6に挿通される本体部1b(挿通部)の径は、保持部材2の挿通穴6の内壁面の径よりも小さくなっている。これにより、防振部材1を挿通した際、防振部材1は挿通穴6に接触することなく挿通され、防振部材1と挿通穴6との間には隙間kが生じる。この結果、防振部材1は保持部材2の振動発生源3と反対側の面8のみで保持部材2と接触する。
【0045】
なお、例えば図2に示す分離ダクト32の吸気口はプリンタ本体側に設けられ、保持部材2にも、それに応じた不図示の吸気口が設けられている。そして、この吸気口の位置には吸気流路の密閉性を確保して吸気性能を確保するため弾性を有するシール部材7が設けられている。
【0046】
また、このシール部材7は、振動発生源3と保持部材2の間に振動発生源3と保持部材2と密着するように配されている。なお、このシール部材7は振動発生源3と保持部材2のどちらかに付随する形であっても、別部材であっても構わない。
【0047】
ところで、本実施の形態において、既述したように防振部材1は保持部材2の振動発生源3と反対側の係止面8のみで保持部材2と接触するが、この場合、振動発生源3からの振動伝達経路は、振動発生源3〜防振部材1〜保持部材2の順となる。
【0048】
そして、振動発生源3と保持部材2との距離をa、保持部材2の挿通穴6の長さ(=保持部材2の振動発生源側の面から振動発生源3と反対側の係止面8までの距離)をb、この振動伝達経路の距離をeとすると、振動伝達経路距離eは、以下のようになる。
【0049】
e=a+b
ここで、この振動伝達経路距離eと、既述した図8及び図9に示す従来の固定方法に係る振動伝達経路距離aを比較すると、本実施の形態における振動伝達経路距離eは従来の振動伝達経路距離に比べてbだけ長い。
【0050】
このように伝達経路距離がbだけ長い分、防振部材1が固定されて硬度が高まった場合でも、防振部材1の振動吸収領域を拡大することができる。これにより、振動発生源3と保持部材2間の距離を従来と変更することなく、振動吸収性能を増すことができ、騒音等の振動による不具合を軽減することが可能となる。
【0051】
つまり、振動発生源3を固定する際、防振部材1を、保持部材2の振動発生源3の反対側の係止面8に係止させると共に、保持部材2の挿通穴6に接触することなく挿通させて振動発生源3に圧接させることにより、振動伝達経路距離を長くすることができる。これにより、防振部材1を厚くすることなく振動発生源3の振動による騒音の発生を低減することができる。
【0052】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0053】
図6は、本実施の形態に係るシート給送装置に設けられた分離ファン31、吸着ファン36等の振動発生源の防振構造の構成を示す図である。なお、図6において、図3と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0054】
図6において、9は保持部材2の振動発生源3と反対側の係止面8に突設された突出部であり、この突出部9は、保持部材2に対して押出し加工等を施すことにより形成されている。なお、この突出部9には、防振部材1を挿通させる挿通穴6と連通する挿通穴9aが形成されている。
【0055】
そして、振動発生源3を保持部材2に固定する際、まず防振部材1を保持部材2及び突出部9に設けられた挿通穴6,9aに挿通するようにしている。次に、防振部材1の締結部5に取り付けビス4を締結することにより、防振部材1は、係止部1aが保持部材2の突出部9に押し付けられることにより、突出部9の先端面9bに面接触した状態で係止される。
【0056】
ここで、本実施の形態において、防振部材1の本体部1bは保持部材2及び保持部材2の突出部9の挿通穴6,9aの内壁面の径よりも小径となっている。これにより、防振部材1を挿通した際、防振部材1は保持部材2及び突出部9の挿通穴6,9aに接触することなく挿通され、防振部材1と挿通穴6,9aとの間には隙間kが生じる。この結果、防振部材1は突出部9の先端面9bのみで保持部材2と接触する。
【0057】
ところで、本実施の形態では、防振部材1を保持部材2の突出部9の先端面9bに係止するようにすることにより、振動発生源3からの振動伝達経路は、振動発生源3〜防振部材1〜保持部材2の突出部9の順となる。ここで、振動発生源3と保持部材2との距離をa、保持部材2の突出部9を含む挿通穴6,9aの長さ(=保持部材2の振動発生源側の面から突出部9の先端面9bまでの距離)をb+d、振動伝達経路距離をcとすると、振動伝達経路距離cは、以下のようになる。
【0058】
c=a+b+d
この振動伝達経路距離cと、既述した図8及び図9に示す従来の固定方法に係る振動伝達経路距離aを比較すると、本実施の形態における振動伝達経路距離cは従来の振動伝達経路距離aに比べて保持部材2の突出部9を含む挿通穴6,9aの長さb+dだけ長い。
【0059】
そして、このように振動伝達経路距離がb+dだけ長い分、防振部材1が固定されて硬度が高まった場合でも、防振部材1の振動吸収領域を拡大することができる。これにより、防振部材1を厚くすることなく振動発生源3の振動による騒音の発生を低減することができる。
【0060】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0061】
図7は、本実施の形態に係るシート給送装置に設けられた分離ファン31、吸着ファン36等の振動発生源の防振構造の構成を示す図である。なお、図7において、図3と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0062】
図7において、10は、保持部材2の振動発生源3と反対側に交換可能に設けられた突出部材である筒状部材であり、この筒状部材10は防振部材1と、保持部材2の振動発生源3と反対側の係止面8に挟まれる形で取り付けられている。そして、この筒状部材10には、防振部材1を挿通させる挿通穴6と連通する挿通穴10aが形成されている。
【0063】
そして、振動発生源3を保持部材2に固定する際、まず防振部材1を保持部材2に設けられた挿通穴6及び筒状部材10に設けられた挿通穴10aに挿通するようにしている。次に、防振部材1の締結部5に取り付けビス4を締結することにより、防振部材1は、係止部1aが筒状部材10に押し付けられることにより、筒状部材10の振動発生源3と反対側の面10bに面接触した状態で係止される。
【0064】
ここで、本実施の形態において、防振部材1の本体部1bは保持部材2の挿通穴6及び筒状部材10の挿通穴10aの径よりも小径となっている。これにより、防振部材1を挿通した際、防振部材1は保持部材2及び筒状部材10の挿通穴6,10aに接触することなく挿通され、防振部材1と挿通穴6,10aとの間には隙間kが生じる。この結果、防振部材1は筒状部材10の先端面10bのみで保持部材2と接触する。
【0065】
ところで、本実施の形態では、防振部材1を筒状部材10の先端面10bに係止するようにすることにより、振動発生源3からの振動伝達経路は振動発生源3〜防振部材1〜筒状部材10の順になる。
【0066】
ここで、振動発生源3と保持部材2との距離をa、保持部材2と筒状部材10を含む挿通穴6,10aの長さ(=保持部材2の振動発生源側の面から筒状部材10の先端面10bまでの距離)をb+d’とする。また、振動伝達経路距離をc’とすると、振動伝達経路距離c’は、以下のようになる。
【0067】
c’=a+b+d’
この振動伝達経路距離c’と、従来の固定方法に係る振動伝達経路距離aを比較すると、本実施の形態における振動伝達経路距離c’は従来の振動伝達経路距離aに比べて筒状部材10を含む挿通穴6,10aの長さb+d’だけ長い。
【0068】
そして、このように振動伝達経路距離がb+d’だけ長い分、防振部材1が固定されて硬度が高まった場合でも、防振部材1の振動吸収領域を拡大することができる。これにより、防振部材1を厚くすることなく振動発生源3の振動による騒音の発生を低減することができる。
【0069】
なお、本実施の形態のように、筒状部材10を交換可能に設けることにより、異なった長さの筒状部材10を用いることができ、距離d’を任意の長さに変更することが可能となる。
【0070】
例えば、振動発生源3を変更した場合や、振動発生原因となるモータやファンの回転数が変更され、振動周波数が変わった場合には、それに合わせて振動吸収特性を変化させるために、振動吸収領域を変更する必要がある。この場合、筒状部材10を異なる長さのものに変更し、長さd’を変更することにより対応が可能となる。
【0071】
また、筒状部材10の弾性率を変更することにより、振動吸収経路をさらに延長することが可能となる。例えば、筒状部材10を保持部材2より軟らかい弾性率の物に替えれば、振動伝達経路は筒状部材10の長さd’が加わり、振動発生源3からの振動伝達経路は、振動発生源3〜防振部材1〜筒状部材10〜保持部材2の順となる。この経路の振動伝達経路距離fとすると、振動伝達経路距離fは、以下のようになる。
【0072】
f=c’+d’
そして、既述した第2の実施の形態における距離dと、本実施の形態の距離d’を等しい場合を想定すると(d=d’)、c=c’となる。よって、第2の実施の形態の振動伝達距離cに対し、本実施の形態の振動伝達経路距離fは、以下のように距離dの増分となる。
【0073】
f=c+d
そして、この増分となる距離dの分、振動吸収領域を拡大可能となる。この結果、振動発生源3と保持部材2間の距離を従来と変更することなく、振動吸収性能を増すことができ、騒音等の振動による不具合を軽減することが可能となる。
【0074】
なお、これまでの説明において、振動発生源3をファンとしたが、本発明は、これに限らず、振動発生源は、シートを給送する際に駆動される駆動部である吸着給送ベルト21の振動発生源である駆動モータなどの他の振動発生源であっても構わない。
【0075】
また、これまでの説明においては、固定部は、防振部材1の本体部1bの、係止部1aよりも振動発生源側部分に係合し、防振部材1をファン(振動発生源)側に引張って防振部材1を振動発生源3に圧接させて固定するようにしている。そして、このように構成した場合、従来のように保持部材2と振動発生源3との間に防振部材1を圧縮させた場合に比べて、硬度の増加を防ぐことができ、この結果、振動伝達が起こりにくくすることができる。
【0076】
以下、本発明の効果を、例えば第3の実施の形態に係る防振構造と、既述した図9に示す従来例とにおける発生騒音の比較により説明する。
【0077】
本比較において、測定対象物は分離ファン31、吸着ファン36等のファンとした。また、測定には積分形騒音計を用い、10秒間の等価騒音レベルを動特性Fastモードで測定した。
【0078】
騒音計の位置はファンから一定距離とし、ファンは実施形使用時の回転数で定常動作させ、同条件下で比較した。ここで、従来例と第2の実施の形態の共通構成部は、ファン、シール部材(基本肉厚約4mm)、保持部材(材質;金属、基本肉厚約1mm)であり、防振部材と締結ビスの締結力を約0.6N・mとした。
【0079】
また、従来例の特有の構成として、防振部材(材質;ゴム、本体部径;約9mm)を締結力0.6N・mでファンと保持部材面に圧縮させ固定する。また、保持部材の挿通穴の径を防振部材の挿通が可能となるよう約9mmとする。
【0080】
また、第3の実施の形態の特有の構成としては、筒状部材(金属製、高さ約7mm、挿通穴径約10mm)を備える。また、防振部材(材質;ゴム、本体部径;約9mm)を先述の締結力0.6N・mで筒状部材端面に係止し、ファン側に引張り固定する。
【0081】
そして、このような条件下で測定を行い、相対比較した結果、本実施の形態の防振構造は従来例の形態に対し、等価騒音レベルが約3.2db低い値となった。よって、本発明は、騒音低減効果があることを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の一例であるプリンタの概略構成を示す図。
【図2】上記シート給送装置の構成を示す図。
【図3】上記シート給送装置の分離ファン、吸着ファン等の防振構造の構成を説明する図。
【図4】上記防振構造の構成を説明する第1の斜視図。
【図5】上記防振構造の構成を説明する第2の斜視図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るシート給送装置の防振構造の構成を説明する図。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るシート給送装置の防振構造の構成を説明する図。
【図8】従来のシート給送装置の振動発生源の防振構造の一例を示す図。
【図9】従来のシート給送装置の振動発生源の他の防振構造の例を示す図。
【符号の説明】
【0083】
1 防振部材
1a 係止部
1b 本体部
2 保持部材
3 振動発生源
4 取り付けビス
5 締結部
6 保持部材の挿通穴
7 シール部材
8 係止面
9 突出部
9a 挿通穴
10 筒状部材
10a 挿通穴
21 吸着給送ベルト
31 分離ファン
36 吸着ファン
100 プリンタ
102 画像形成部
103 シート給送装置
c 振動伝達経路距離
e 振動伝達経路距離
f 振動伝達経路距離
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成部を有する画像形成装置において、
振動発生源と、
前記振動発生源を保持する保持部材と、
前記保持部材に形成された挿通穴に挿通されて前記振動発生源に圧接する弾性部材により形成された防振部材と、
前記保持部材と前記防振部材と前記振動発生源とを一体的に固定する固定部と、を備え、
前記防振部材は、前記保持部材の前記振動発生源の保持面と反対側の面に係止する係止部と、前記保持部材に形成された挿通穴に挿通され、前記振動発生源に圧接する前記挿通穴の径よりも小径の本体部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記保持部材の前記振動発生源の保持面と反対側の面に、前記保持部材の挿通穴と連通する挿通穴を有する突出部を前記保持部材と一体に形成し、前記防振部材の係止部を前記突出部に係止させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記防振部材の本体部の径は前記突出部に設けられた挿通穴の径よりも小径であることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記保持部材の前記振動発生源の保持面と反対側の面に、前記保持部材の挿通穴と連通する挿通穴を有し、前記防振部材の係止部と係止する突出部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記防振部材の本体部の径は前記突出部材に設けられた挿通穴の径よりも小径であることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記突出部材を交換可能に設けたことを特徴とする請求項4又は5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記突出部材と前記保持部材の弾性率は異なることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記固定部は、前記防振部材の本体部の前記係止部よりも振動発生源側部分に係合して前記防振部材を前記振動発生源に圧接させて固定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記振動発生源はファンであり、前記振動発生源と前記保持部材との間には、シール部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−262065(P2008−262065A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105368(P2007−105368)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】