説明

画像形成装置

【課題】
本発明の課題は、送風ファンの回転速度を変動させることにより、平均的な風量を確保しながらも、周波数帯域毎の騒音レベルを平均化することで、耳障りな騒音を防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の画像形成装置は、装置内部又は外部への送風を行う送風ファン7を備える。送風ファン7の回転数を制御するファン回転数制御部8は、第1の回転数を中心とした所定の補正幅で送風ファンの回転数を変更することで、平均的な風量を確保しながらも、周波数帯域毎の騒音レベルを平均化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置内部又は外部への送風を行う送風ファンを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、装置内部の温度上昇を抑える目的で、装置外部の空気を装置内部に送風する、又は、装置内部の空気を装置外部に排出するための送風ファンを備えた画像形成装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平09−305019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような送風ファンを備えた画像形成装置の場合、送風ファンの回転による騒音が発生する。動作時であれば、この送風ファンの騒音は、画像形成装置にかき消されるものの、待機時では、送風ファンの騒音であっても耳障りである。
【0005】
そこで、本発明は送風ファンの回転速度を変動させることにより、平均的な風量を確保しながらも、周波数帯域毎の騒音レベルを平均化することで、耳障りな騒音を防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、装置内部又は外部への送風を行う送風ファンを備えた画像形成装置であって、送風ファンの回転数を制御するファン回転制御部を有し、ファン回転制御部は、第1の回転数を中心とした所定の補正幅で送風ファンの回転数を変更することを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる画像形成装置は、装置内部又は外部への送風を行う送風ファンの回転数を制御するファン回転制御部を有する。このファン回転制御部は、第1の回転数に伴う平均的な風量を確保しながらも、所定の補正幅(増減幅)で送風ファンの回転数を変更する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の画像形成装置によれば、平均的な風量を確保しながらも、周波数帯域毎の騒音レベルを平均化することで、耳障りな騒音を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の画像形成装置は、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。
【0010】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1で説明する画像形成装置の断面図である。実施の形態1で説明する画像形成装置は、例えば電子写真方式のカラー画像形成装置で、それぞれ異なる4色(イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)のトナーが実装され、それぞれのトナーによる画像を形成する画像形成部71a,71b,71c,71dが、静電気力によって記録媒体84を吸着して搬送する搬送ベルト81の媒体搬送方向に沿って配置されている。
【0011】
この画像形成部71a,71b,71c,71dは、記録媒体84に付着させる各色のトナー画像がそれぞれ形成される像担持体76a,76b,76c,76dと、像担持体76a,76b,76c,76dをそれぞれ帯電させる帯電部72a,72b,72c,72dと、像担持体76a,76b,76c,76dに各色のトナーをそれぞれ付着させる現像部75a,75b,75c,75dと、現像部75a,75b,75c,75dに各色のトナーをそれぞれ供給するトナー供給部74a,74b,74c,74dとを備える。
【0012】
また、画像形成装置には、像担持体76a,76b,76c,76dを露光する露光部73a,73b,73c,73dと、搬送ベルト81を挟んで像担持体76a,76b,76c,76dと対向する1に像担持体76a,76b,76c,76dと逆極性の電圧が印加される転写部77a,77b,77c,77dと、転写部77a,77b,77c,77dのインピーダンスを測定し、制御するインピーダンス測定部78a,78b,78c,78dと、搬送ベルト81を帯電させて記録媒体84を吸着させる吸着部83a,83bと、図示せぬ駆動手段によって回転駆動し、搬送ベルト81を図1中矢印方向に回転させる駆動用ローラ82a,82b,82cと、トナーの付着した記録媒体84を挟持搬送可能に構成され、トナーを熱定着させる定着部80a,80bと、画像形成装置内の温度と湿度を検知する温湿度センサ85と、定着部80a,80bの軸方向の温度を均一にする送風ファン7とを有している。
【0013】
また、各画像形成部71a,71b,71d,71dには、それぞれ別々に上方にリフトアップできるリフトアップ部79a,79b,79c,79dが備えられており、像担持体76a,76b,76c,76dを搬送ベルト81から別々に離すことができる。例えばブラックトナーのみで印刷を行う場合には、イエロー、マゼンタ、シアンのトナーが実装されている画像形成部71b,71c,71dをリフトアップすることにより、搬送ベルト81の回転駆動の際の負荷を軽くし、高速で搬送ベルト81を走行させ、印刷を高速に行うことが可能となる。
【0014】
画像形成装置は、画像情報を受信すると、記録媒体84を吸着ローラ83a,83bに供給する。このとき、画像形成装置は、受信した画像情報において使用する色と使用しない色を判断し、この判断に基づいてリフトアップ部79a,79b,79c,79dによって画像形成部71b,71c,71dをリフトアップし、像担持体76a,76b,76c,76dを搬送ベルト81から離反させ、固定する。このとき、帯電部72a,72b,72c,72d、トナー供給部74a,74b74c,74d、現像部75a,75b,75c,75d、転写部77a,77b,77c,77dには図示しない電源より負電圧が印加される。また画像形成部71a,71b,71c,71dがリフトアップされているときには、帯電部72a,72b,72c,72d、トナー供給部74a,74b,74c,74d、現像部75a,75b,75c,75dに対する電圧印加は遮断される。そして、画像形成装置は、定着部80a,80bの表面温度が定着可能温度まで上昇するように制御し、定着部80a,80bを回転させる。
【0015】
画像形成部71a,71b,71c,71dの像担持体76a,76b,76c,76dは図示しない駆動手段により回転駆動される。帯電部72a,72b,72c,72dはそれぞれ、像担持体76a,76b,76c,76dに負電荷を帯電させる。露光部73a,73b,73c,73dは、像担持体76a,76b,76c,76dのトナーが乗る部分を選択的に露光し、その部分の負電荷を除去することで静電潜像を形成する。トナー供給部74a,74b,74c,74dは、トナーに負電荷を帯電させる。現像部75a,75b,75c,75dは、トナー供給部74a,74b,74c,74dから、負電荷を帯電したトナーを受け取り、像担持体76a,76b,76c,76dの負電荷が除去された部分にトナーを乗せる。これにより像担持体76a,76b,76c,76dにトナー画像が形成される。そして、画像形成装置は、搬送ベルト81によって搬送される記録媒体84に付着させる。
【0016】
画像形成装置は、図示しない駆動手段を用いて駆動用ローラ82a,82b,82cを回転させることによって、搬送ベルト81を図1中矢印方向に回転させると共に、吸着部83a、83bを用いて記録媒体84を搬送ベルト81上に吸着させる。搬送ベルト81上の記録媒体84は、静電気力によって搬送ベルト81上に吸着され、リフトアップ部79a,79b,79c,79dによって搬送ベルト81に接触させられている画像形成部71まで搬送される。画像形成部71に達すると、像担持体76上の画像は転写部77により記録媒体84上に転写される。画像形成部71a,71b,71c,71dが形成した全ての画像またはその一部が転写された記録媒体84は、搬送ベルト81から分離され、定着手段80a,80bによって熱定着され、装置外に排出される。
【0017】
定着部80a,80bは、軸方向で温度差が生じるために温度を均一化する必要がある。そこで、画像形成装置は、送風ファン7によって内部の熱を排出して定着部80a,80bの軸方向の温度差を均一化させる。以下、送風ファン7の制御について詳細に説明する。
【0018】
図2は、画像形成装置の制御ブロック図を示す図である。画像形成装置制御部1は、画像形成装置を上述のように制御する画像形成制御部9と送風ファン7の回転数を制御するファン回転制御部としてのファン回転数制御部8と、画像形成装置内の冷却対象物の温度を測定する温度センサ2とを有している。
【0019】
画像形成制御部9は、インターフェース(I/F)を介して接続されているPC(Parsonal Computer)から印刷データを受信する。そして、画像形成制御部9は受信した印刷データに対応する画像が記録媒体84に形成可能なように図示しない駆動源を制御して、上述した各部材を駆動させる。温度センサ2は、画像形成装置内の冷却対象物の温度を測定する。
【0020】
送風ファン7は、ファン本体7aと、ファンモータ7bと、モータ制御回路7cとを備える。ファン本体7aは、所謂ブラシレスDCモータにより構成されるファンモータ7bを駆動源とする。このファンモータ7bは、モータ制御回路7cによるPWM(パルス幅変調:Pulse Width Modulation)制御によって制御される。ここで、PWM制御とは、所定のディーティー比でファンモータ7bの電源のオン・オフを繰り返すことにより、アナログ的に駆動電圧を可変したかのごとく、ファンモータ7bの速度制御を行う。そのため、ファンモータ7bの回転速度は、図3のように、送風ファン7の駆動電圧に比例する。したがって、モータ制御回路は供給される電源電圧によってモータ回転数の制御が可能となる。
【0021】
ファン回転数制御部8は、メモリ3と、CPU(Central Processing Unit)4と、DA変換部5と、アンプ6とを有している。CPU4は、ファン回転数制御部8とともに画像形成装置制御部1を統括制御し、温度センサ2で検出された検出温度及びメモリ3に記憶されるデータの入力を受け、ファン駆動電圧の出力をデジタル値でDA変換部5に指示する。DA変換部5は、CPU4からのデジタル値に応じて、ファン駆動電圧をアンプ6に出力する。アンプ6は、ファン・ドライバ・アンプとして、DA変換部5から入力されたファン駆動電圧と同じ電圧を出力することでモータ制御回路7cに電源を供給するとともに、この電源電圧を制御可能とする。
【0022】
メモリ3は、温度域記憶部3aと、ファン駆動ベース電圧記憶部3bと、補正パラメータ記憶部3cとにより構成される。温度域記憶部3aには、図4に示すように、動作許容温度以下の範囲で、温度センサ2によって測定される冷却対象物の温度に応じて割り振られるように複数の温度域がテーブルとして記憶されている。例えば図4においては、4つの温度域に分けられており、冷却対象物の検出温度が20℃未満の場合を温度域A、検出温度が20℃以上40℃未満の場合を温度域B、検出温度が40℃以上50℃未満の場合を温度域C、検出温度が50℃以上80℃以下の場合を温度域Dとしている。
【0023】
ファン駆動ベース電圧記憶部3bには、図5に示すように、複数の温度域毎に補正される前のファン駆動電圧であるファン駆動ベース電圧がテーブルとして記憶されている。CPU4は、このファン駆動ベース電圧記憶部3bに記憶されるファン駆動ベース電圧に補正量を加算してファン駆動電圧を算出し、DA変換部5に出力する。例えば図5においては、温度域Aでファン回転速度を1000rpmとするために、ファン駆動ベース電圧を6Vとし、温度域Bでファン回転速度を2000rpmとするために、ファン駆動ベース電圧を12Vとし、温度域Cでファン回転速度を3000rpmとするために、ファン駆動ベース電圧を18Vとし、温度域Dでファン回転速度を4000rpmとするために、ファン駆動ベース電圧を24Vとしている。
【0024】
補正パラメータ記憶部3cには、図6に示すように、ファン駆動ベース電圧に補正量として加算される正弦波成分のパラメータ(以下、補正パラメータと称す)がテーブルとして記憶されている。この補正パラメータは、最終シーケンス数と、シーケンス番号に対応する正弦波成分の周期及び正弦波成分の振幅とで構成される。例えば図6においては、最終シーケンス数を4とし、4つの異なる周期及び振幅を格納している。
【0025】
実施の形態1で説明する画像形成装置は、ファン駆動ベース電圧に正弦波成分の補正量を加算したファン駆動電圧で送風ファン7を駆動させることで、平均的な風量を確保しながらも、騒音の周波数を広範囲にすることで、騒音レベルを引き下げることが可能となる。以下、実施の形態1の画像形成装置における送風ファン7の回転数の制御フローについて図7を参照して説明する。
【0026】
まず、CPU4は、ファン制御信号を確認する(ステップS1)。そして、ファン制御信号がOFFである場合、後述するステップS10に移行する。一方、ファン制御信号がONである場合、CPU4は、各種設定値の初期値を設定する(ステップS2)。CPU4は、補正量の正弦波成分の位相を算出するための時間tを0ms、位相の時間ステップを示す値tsを1ms、正弦波成分のシーケンス番号を示すXを1とし、最終シーケンス数を示すNに、補正パラメータ記憶部3cに記憶されている補正パラメータテーブルから読み出した最終シーケンス数を設定する。例えば補正パラメータ記憶部3cに図6のような補正パラメータが記憶されている場合、最終シーケンス数Nは4となる。また、周期λに、補正パラメータテーブルから読み出した第Xシーケンスの正弦波成分の周期を設定する。
【0027】
そして、CPU4は、温度センサ2から冷却対象物の温度を読み出す(ステップS3)。さらに、CPU4は、温度域記憶部3aに記憶されている温度域のテーブルから、ステップS3で読み出した検出温度に対応する温度域を読み出す。例えば、検出温度が30℃である場合、図4に示される温度域記憶部3aの温度域のテーブルと照らし合わせることで、温度域がBとなる(ステップS4)。
【0028】
温度域が読み出された後、CPU4は、ファン駆動ベース電圧記憶部3bに記憶されているファン駆動ベース電圧のテーブルと、ステップS4で読み出した温度域から、ファン駆動ベース電圧Vbを読み出す(ステップS5)。例えば、温度域がBの場合、図5に示されるファン駆動ベース電圧記憶部3bのファン駆動ベース電圧のテーブルと照らし合わせることで、ファン駆動ベース電圧Vbが12Vとなる。
【0029】
ファン駆動ベース電圧Vbが読み出された後、CPU4は、補正量Zの算出を行う(ステップS6)。ここで、CPU4における補正量の算出方法について説明する。図8は、補正量の算出におけるCPU4の処理フローである。
【0030】
CPU4は、時間tと周期λとを比較し、第Xシーケンスの正弦波の位相が1周期以上か否かを確認する(ステップS20)。時間t≧周期λである場合、CPU4は、第Xシーケンスの正弦波の位相が1周期以上すぎていると判断する。そして、CPU4は、シーケンス番号をインクリメントするとともに、時間tを0とし、第X+1シーケンスの正弦波成分における補正量Zを算出する準備を行う(ステップS21)。すなわち、第Xシーケンスの正弦波で1周期分の補正量Zが算出された後、次のシーケンス番号における補正量Zが算出されることになる。
【0031】
そして、CPU4は、シーケンス番号と最終シーケンス数Nとを比較し(ステップS25)、シーケンス番号が最終シーケンス数Nよりも大きい値である場合、シーケンス番号を1として、後述するステップS23に移行する(ステップS26)。シーケンス番号が最終シーケンス数N以下である場合、後述するステップS23に移行する。一方、ステップS20において、時間t<周期λである場合、CPU4は、時間tに位相の時間ステップを示す値tsを加算し(ステップS22)、後述するステップS23に移行する。
【0032】
ここで、CPU4は、第Xシーケンスの正弦波成分の周期λ及び振幅Aを、補正パラメータ記憶部3cの補正パラメータテーブルにおけるシーケンス番号に対応するそれぞれの値を読み出し、周期λ及び振幅Aに代入する(ステップS23)。例えばシーケンス番号Xが1の場合、図6に示される補正パラメータ記憶部3cの補正パラメータのテーブルと照らし合わせることで、周期λに50ms、振幅に0.2Vが代入される。そして、CPU4は、下記式1により補正量Zを算出する(ステップS24)。
【0033】
(数1)
Z=Asin(2πt/λ) ・・・(式1)
【0034】
補正量Zが算出された後、CPU4は、ファン駆動電圧Vを下記式2から算出する(ステップS7)。
【0035】
(数2)
V=Vb+Z ・・・(式2)
【0036】
ファン駆動電圧Vの算出後、CPU4は、DA変換部5にファン駆動電圧Vの出力を指示する。DA変換部5は、アンプ6にファン駆動電圧Vを出力し、アンプ6は、DA変換部5から入力されたファン駆動電圧Vと同じ電圧を出力することでモータ制御回路7cに電源を供給する(ステップS8)。モータ制御回路7cは、印加される電圧に応じた回転数で回転するようにファンモータ7bを制御し、ファン本体7aを回転させる。
【0037】
そして、CPU4は、ファン制御信号を確認する(ステップS9)。ファン制御信号がONである場合、CPU4はステップS3に戻り、ステップS3からステップS9の処理を繰り返し、ステップS6で算出される補正量Zは図9に示されるように変化することになる。
【0038】
ステップS1において又はステップS9においてファン制御信号がOFFである場合、CPU4は、DA変換部5にファン駆動電圧VのOFF、すなわち0Vの出力を指示する。これにより、DA変換部5はアンプ6に0Vを出力し(ステップS10)、アンプ6はモータ制御回路7cへの電源供給を停止する。
【0039】
ステップS3からステップS9を繰り返すことにより、ファン駆動電圧V、すなわちファン回転速度が正弦波成分の補正量Z分だけ変動するため、騒音周波数帯が広がり、騒音最大レベルが低減される。図10は、騒音レベルと周波数との関係を示したものであり、破線40は従来技術の画像形成装置、実線41は実施の形態1で説明する画像形成装置の場合を示している。実施の形態1で説明する画像形成装置の場合、周波数帯が広がり、各週は数毎に見た騒音レベルの最大値、すなわち2000Hz帯において、騒音最大レベルが36dBから31dBに減少している。
【0040】
この騒音レベルの測定は、JIS Z 8734及びJIS C 1514に準じて行った。具体的には、図11に示すように、無響音室にて、送風ファン吸い込み口から1m離れたところにある騒音計100で測定した。
【0041】
以上のように、実施の形態1で説明した画像形成装置は、ファン駆動ベース電圧に対し、正弦波成分の補正量を加算した電圧で、ファンモータを駆動させ、送風ファンの回転速度を変動させることで、従来技術よりも周波数帯域毎の騒音レベルが平均化される。そのため、送風ファンの騒音が耳障りでなくなる。
【0042】
[実施の形態2]
実施の形態2で説明する画像形成装置制御部11が備えるファン回転数制御部18は、図12のように、実施の形態1で説明した補正パラメータとは異なる補正パラメータを記憶する補正パラメータ記憶部3dをメモリ13内に備える。なお、実施の形態1と重複する部材は、同じ番号を付して説明を省略する。
【0043】
補正パラメータ記憶部3dには、図13に示すように、温度域記憶部3aに記憶されている複数の温度域毎に、ファン駆動ベース電圧に補正量として加算する正弦波成分のパラメータ(以下、温度域毎の補正パラメータと称す)がテーブルとして記憶されている。この温度域毎の補正パラメータは、温度域毎に、最終シーケンス数と、シーケンス番号に対応する正弦波成分の周期及び正弦波成分の振幅とで構成される。例えば図13においては、温度域がCの場合、最終シーケンス数を3とし、3つの異なる周期及び振幅を格納する。温度域がDの場合、最終シーケンス数を4とし、4つの異なる周期及び振幅を格納する。一方、温度域がA又はBである場合、最終シーケンス数を0とし、ファン駆動ベース電圧に加算する補正量を算出するための周期及び振幅が格納されていない。すわなち、温度域A又はB等の比較的温度が低い温度域では騒音レベルも低いため、周波数帯域毎の騒音レベルを平均化しなくとも良い場合がある。実施の形態2においては、温度域毎に補正パラメータを備えることにより、温度域毎に適切な送風ファンの駆動制御を可能にする。
【0044】
前述したように、実施の形態2で説明する画像形成装置は、温度域毎の補正パラメータを備えることで、温度域毎に適切な送風ファンの制御を行うことができる。以下、実施の形態2の画像形成装置における送風ファン7の回転数の制御フローについて図14を参照して説明する。
【0045】
まず、CPU4は、ファン制御信号を確認する(ステップS1)。そして、ファン制御信号がOFFである場合、後述するステップS10に移行する。一方、ファン制御信号がONである場合、CPU4は、各種設定値の初期値を設定する(ステップS11)。CPU4は、補正量の正弦波成分の位相を算出するための時間tを0ms、位相の時間ステップを示す値tsを1ms、正弦波成分のシーケンス番号を示すXを1とし、現在の温度域G1を“A”と設定する。
【0046】
また、CPU4は、旧温度域G0に現在の温度域G1の値を代入する(ステップS12)。そして、CPU4は、温度センサ2から冷却対象物の温度を読み出す(ステップS3)。さらに、CPU4は、温度域記憶部3aに記憶されている温度域のテーブルから、ステップS3で読み出した検出温度に対応する現在の温度域G1を読み出す。例えば、検出温度が45℃である場合、図4に示される温度域記憶部3aの温度域のテーブルと照らし合わせることで、温度域がCとなる(ステップS4)。
【0047】
温度域が読み出された後、CPU4は、ファン駆動ベース電圧記憶部3bに記憶されているファン駆動ベース電圧のテーブルと、ステップS4で読み出した温度域から、ファン駆動ベース電圧Vbを読み出す(ステップS5)。例えば、温度域がCの場合、図5に示されるファン駆動ベース電圧記憶部3bのファン駆動ベース電圧のテーブルと照らし合わせることで、ファン駆動ベース電圧Vbが18Vとなる。
【0048】
ファン駆動ベース電圧Vbが読み出された後、CPU4は、補正量Zの算出を行う(ステップS6)。ここで、CPU4における補正量の算出方法について説明する。図15は、補正量の算出におけるCPU4の処理フローである。
【0049】
CPU4は、補正パラメータ記憶部3dの温度域毎の補正パラメータテーブルから現在の温度域G1の最終シーケンス数を読み出し最終シーケンス数Nに代入する(ステップS30)。そして、CPU4は、最終シーケンス数Nが0であるか否かを確認し(ステップS31)、N=0である場合、補正量Nの算出を不要とし、CPU4は、補正量Nに0を代入する(ステップS32)。そして、補正量の算出の処理フローを終了し、図14に示される回転数の制御フローにおけるステップS7に移行する。
【0050】
一方、ステップS31において、N≠0である場合、CPU4は、旧温度域G0と現在の温度域G1とを比べ(ステップS33)、温度域が変わったか否かを確認する。G0≠G1となり、温度域が変わった場合、補正パラメータが変化するため、CPU4は、補正量の正弦波成分の位相を算出するための時間tを0ms、正弦波成分のシーケンス番号Xを1とし(ステップS34)、後述するステップS35に移行する。
【0051】
ステップS33において、G0=G1となり温度域が変わらなかった場合、CPU4は、時間tと周期λとを比較し、第Xシーケンスの正弦波の位相が1周期以上か否かを確認する(ステップS20)。時間t≧周期λである場合、CPU4は、第Xシーケンスの正弦波の位相が1周期以上すぎていると判断する。そして、CPU4は、シーケンス番号をインクリメントするとともに、時間tを0とし、第X+1シーケンスの正弦波成分における補正量Zを算出する準備を行う(ステップS21)。すなわち、第Xシーケンスの正弦波で1周期分の補正量Zが算出された後、次のシーケンス番号における補正量Zが算出されることになる。
【0052】
そして、CPU4は、シーケンス番号と最終シーケンス数Nとを比較し(ステップS25)、シーケンス番号が最終シーケンス数Nよりも大きい値である場合、シーケンス番号を1として、後述するステップS35に移行する(ステップS26)。シーケンス番号が最終シーケンス数N以下である場合、後述するステップS35に移行する。一方、ステップS20において、時間t<周期λである場合、CPU4は、時間tに位相の時間ステップを示す値tsを加算し(ステップS22)、後述するステップS35に移行する。
【0053】
ここで、CPU4は、現在の温度域G1における第Xシーケンスの正弦波成分の周期λ及び振幅Aを、補正パラメータ記憶部3dの温度域毎の補正パラメータテーブルにおけるシーケンス番号に対応するそれぞれの値を読み出し、周期λ及び振幅Aに代入する(ステップS35)。例えば現在の温度域G1が“C”で、シーケンス番号Xが1の場合、図13に示される補正パラメータ記憶部3dの温度域毎の補正パラメータのテーブルと照らし合わせることで、周期λに50ms、振幅に0.6Vが代入される。そして、CPU4は、上記式1により補正量Zを算出する(ステップS24)。
【0054】
補正量Zが算出された後、CPU4は、ファン駆動電圧Vを上記式2から算出する(ステップS7)。
【0055】
ファン駆動電圧Vの算出後、CPU4は、DA変換部5にファン駆動電圧Vの出力を指示する。DA変換部5は、アンプ6にファン駆動電圧Vを出力し、アンプ6は、DA変換部5から入力されたファン駆動電圧Vと同じ電圧を出力することでモータ制御回路7cに電源を供給する(ステップS8)。モータ制御回路7cは、印加される電圧に応じた回転数で回転するようにファンモータ7bを制御し、ファン本体7aを回転させる。
【0056】
そして、CPU4は、ファン制御信号を確認する(ステップS9)。ファン制御信号がONである場合、CPU4はステップS3に戻り、ステップS3からステップS9の処理を繰り返す。
【0057】
ステップS1において又はステップS9においてファン制御信号がOFFである場合、CPU4は、DA変換部5にファン駆動電圧VのOFF、すなわち0Vの出力を指示する。これにより、DA変換部5はアンプ6に0Vを出力し(ステップS10)、アンプ6はモータ制御回路7cへの電源供給を停止する。
【0058】
以上のように、実施の形態2で説明した画像形成装置は、ファン駆動ベース電圧に対し、温度域毎に設定した正弦波成分の補正量を加算した電圧で、ファンモータを駆動させ、送風ファンの回転速度を変動させることで、従来技術よりも周波数帯域毎の騒音レベルが平均化される。そのため、送風ファンの騒音が耳障りでなくなる。さらに、比較的温度が低い場合には、補正量算出にかかる工程を省略するので、CPU4への処理負担を軽減することができる。
【0059】
本発明の実施の形態では、補正量の計算に周期関数の代表として正弦波関数を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、正弦波関数の代わりに余弦波関数等を用いて補正量を計算してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】画像形成装置の断面図である。
【図2】画像形成装置の制御ブロック図である。
【図3】ファンモータの回転速度と送風ファンの駆動電圧との関係を説明する図である。
【図4】温度域テーブルの一例を説明する図である。
【図5】ファン駆動ベース電圧の設定例を説明する図である。
【図6】正弦波成分のパラメータの一例を説明する図である。
【図7】送風ファンの回転数の制御フローを説明する図である。
【図8】補正量の算出におけるCPUの処理フローを説明する図である。
【図9】補正量を説明する図である。
【図10】騒音レベルと周波数の関係を説明する図である。
【図11】騒音レベルの測定方法を説明する図である。
【図12】画像形成装置の制御ブロック図である。
【図13】正弦波成分のパラメータの一例を説明する図である。
【図14】送風ファンの回転数の制御フローを説明する図である。
【図15】補正量の算出におけるCPUの処理フローを説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
1 画像形成装置制御部
2 温度センサ
3 メモリ
4 CPU
5 DA変換部
6 アンプ
7 送風ファン
8 ファン回転数制御部
9 画像形成制御部
11 画像形成装置制御部
13 メモリ
18 ファン回転数制御部
71a,71b,71c,71d 画像形成部
72a,72b,72c,72d 帯電部
73a,73b,73c,73d 露光部
74a,74b,74c,74d トナー供給部
75a,75b,75c,75d 現像部
76a,76b,76c,76d 像担持体
77a,77b,77c,77d 転写部
78a,78b,78c,78d インピーダンス測定部
79a,79b,79c,79d リフトアップ部
80a,80b 定着部
81 搬送ベルト
82a,82b,82c 駆動用ローラ
83a,83b 吸着部
84 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内部又は外部への送風を行う送風ファンを備えた画像形成装置であって、
前記送風ファンの回転数を制御するファン回転制御部を有し、
前記ファン回転制御部は、第1の回転数を中心とした所定の補正幅で前記送風ファンの回転数を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ファン回転制御部は、冷却対象物の検出温度に基づいて前記第1の回転数を設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の回転数は、前記冷却対象物の検出温度区分に応じて個々に設定されることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ファン回転制御部は、前記所定の補正幅に基づきファン駆動電圧の周波数を変更することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ファン回転制御部は、前記所定の補正幅に基づきファン駆動電圧の変化幅を変更することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記所定の補正幅は、正弦波関数及び/又は余弦波関数により算出されることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ファン回転制御部は、前記冷却対象物の検出温度に基づいて前記所定の補正幅を設定することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記所定の補正幅は、前記冷却対象物の検出温度区分に応じて個々に設定されることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記冷却対象物は、画像を記録媒体に定着させる定着装置であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−265288(P2009−265288A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113409(P2008−113409)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】