説明

画像形成装置

【課題】 ノズルと振動子との位置合わせが不要で、また複雑なインク流路を形成する必要もなく、さらに記録ヘッドのレイアウトの制限がない等の利点をもつ画像形成装置を得る。
【解決手段】 音響インクジェットプリンタにおいて、インクタンク6から記録ヘッド5にインクを供給するために、不織布で形成されたインク供給媒体12を使用する。さらに、インク乾燥防止のためのカバー14を、インク供給媒体上に配置する。また、巻き取り装置15を配置したインク供給媒体を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響インクジェット式記録装置(音響インクジェットプリンタ)に用いられる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の音響インクジェット式記録装置において、記録解像度の上昇により、高密度実装が要求されるようになってきている。そして、記録ヘッドの作成には、インク吐出ノズル孔とインク流路および振動子であるピエゾ素子等との位置合わせに精度が要求させるようになり、コストアップの原因となっている。
【0003】
特に、ノズルレスインクジェットとして音響インクジェット方式の装置が提案されているが、このようなノズルレス方式の装置では、ノズル孔と振動子との位置合わせが不要となり、コストダウンが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−266561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1等のようなノズルレス方式の装置では、ノズル孔と振動子との位置合わせが不要となる反面、インク液面レベルの管理が非常に困難である。また、インク液面が不安定であると、インク吐出方向が不安定となり、記録解像度の向上が不可能になる。
【0006】
さらに、自由液面を使用するので、インクジェットヘッドユニットを基本的に上部方向にインクが飛翔するようなレイアウトしかできないので、レイアウトの自由度もかなり低いという問題もある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、音響インクジェットプリンタにおいて、ノズルと振動子との位置合わせが不要であり、また複雑なインク流路を形成する必要もなく、さらに記録ヘッドのレイアウトの制限がない等の利点をもつ画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る画像形成装置は、インクタンクから記録ヘッドに供給されたインクを、該記録ヘッドから記録紙に選択的に飛翔させて印字を行う音響インクジェットプリンタにおいて、不織布で形成されたインク供給媒体を使用するように構成したことを特徴とする。
【0009】
本発明(請求項2記載の発明)に係る画像形成装置は、請求項1記載の画像形成装置において、インク乾燥防止のためのカバーを、インク供給媒体上に配置したことを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項3記載の発明)に係る画像形成装置は、請求項1または請求項2記載の画像形成装置において、巻き取り装置を配置したインク供給媒体を使用するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明に係る画像形成装置によれば、音響インクジェットプリンタにおいて、不織布で形成されたインク供給媒体を使用しているので、簡単な構成であるにもかかわらず、ノズルレス構造であるから、ノズルと振動子との位置合わせが不要になり、コストダウンを図ることができる。
【0012】
また、このような構成によれば、複雑なインク流路を形成する必要がなく、さらにインクはインク搬送体によって供給されるから、ノズルレスでありながら、記録ヘッドのレイアウトの制限がない等の利点がある。
【0013】
また、本発明によれば、インク乾燥防止のためのカバーをインク供給媒体上に配置しているから、インクの揮発が防止でき、これによりインクの固着等の問題が生じなくなる等の利点もある。
【0014】
さらに、本発明によれば、巻き取り装置を配置したインク供給媒体を使用しているから、インク固着が発生した場合でも簡易な方式により、固着部分を回収し、インク搬送体をリフレッシュすることが可能になる。これにより、インク固着により印字障害が発生してもすぐに復旧することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1ないし図3は本発明に係る画像形成装置の第1の実施形態を示す。
ここで、これらの図において、本発明を適用するインクジェットプリンタでは、インクタンクから記録ヘッドに供給されたインクを記録紙に選択的に飛翔させて、記録パターンを記録紙上に作成するようになっている。
【0016】
本発明に係る画像形成装置の模式的断面図を、図1に示す。
すなわち、画像形成装置は、大きく分けて給紙部A、記録部B、排紙部Cで構成されている。
給紙部Aは、給紙カセット1、給紙ローラ2で構成され、不図示の中央演算装置から送られて来る給紙データに応じて記録部Bへ用紙Pを供給する。
【0017】
記録部Bは、搬送ローラA3、搬送ローラB7、プラテンローラ4、記録ヘッド5で構成されている。記録ヘッド5はライン型を採用する。記録ヘッド5には、インクタンク6が接続されている。印字データに応じて記録ヘッド5からインクIが用紙Pへ向けて飛翔し、記録が行われる。必要に応じてインクタンク6からインクが記録ヘッド5へ供給される。記録部Bで記録が完了した用紙Pは、搬送ローラB7の回転により排紙部Cへ向かう。
排紙部Cでは、記録が完了した用紙Pをスタックする。
【0018】
記録ヘッド5の構成を、図2に示す。
本発明によれば、音響インクジェット方式によるインクジェットプリンタを採用している。
【0019】
ここで、該プリンタにおける記録ヘッド5では、ガラス基板上9に圧電体11を挟み込む形でセグメント電極10−1、グランド電極10−2が配置されている。そして、セグメント電極10−1には、記録データに応じて圧電体11の共振周波数を有するバースト波が印加される。
また、圧電体11は、Zno、Pzt等の圧電特性を示す物質で構成される。
【0020】
セグメント電極10−1に圧電体11の共振周波数を有するバースト波が印加されると圧電体11が共振し超音波を発生する。共振により発生する超音波は、ガラス基板9を伝播しインク搬送体12に到達する。そして、インク搬送体12に到達した超音波により放射圧が生じ、図3に示すようにインク搬送体12中のインクIを用紙の方向へ飛翔させる。
【0021】
インク搬送体12は、セルロール、レーヨン等の高分子繊維で構成された不織布で構成されている。そして、インク搬送体12には、インクタンク6からインクが供給されインクが充満しているので、超音波を透過することが可能である。また、インクタンク6から供給されたインクは、記録ヘッド5中のインク搬送体12へ移動する。
【0022】
そして、インク搬送体12は、上述のように不織布で構成されているので、インクを吸収し、記録ヘッド5上の所定の位置にインクを供給することができる。さらに、インクは不織布の毛管現象を利用してインク搬送体12中に供給することができるから、特別な補給装置を必要としない。また、複雑なインク流路を形成する必要がないから、コストダウンにつながる。
【0023】
上述したインク搬送体12を使用しない従来例を、図4(a),(b)に示す。
すなわち、従来一般的な装置では、本発明による実施形態のように、用紙Pの上側に記録を行う場合、図4(a)に示すように、用紙Pの上側に記録ヘッド5を配置する必要がある。このため、記録ヘッド5のガラス基板9の下にインク層19を形成しなければならない。ガラス基板9の下にインク層19を保持する仕組みがないので、図4(a)のようにインク層19を保持することは不可能であり、図4(a)のような用紙P、記録ヘッド5の配置を取ることはできない。
【0024】
換言すれば、インク搬送体12を使用しない場合には、図4(b)のような記録ヘッド5をインク飛翔が上向きになるように配置する必要がある。この図4(b)のような配置であれば、インク層19の形成も容易になる。しかし、インク飛翔方向を上向きに限定されるので、用紙Pの下面にしか記録を行うことができない。しかも、記録装置としてのレイアウトの自由度が、このような従来構造では非常に低いことになる。
これに対し、本発明装置によれば、インクをインク搬送体12で保持するので、記録ヘッド5の配置の制限はない。
【0025】
さらに、図4(b)のような配置であると、インク飛翔によってインク層19の液面が揺れた場合、インク液面が安定するまで、次のインク飛翔を行うことができない。しかも、安定する前にインク飛翔を行うと、用紙Pへのインク着弾位置が不安定になり、印字品質が低下するという不具合がある。
【0026】
これに対し、本発明によるインク搬送体12を用いれば、インク搬送体12中の不織布の繊維が絡み合っているので、インク飛翔により、メニスカスが形成されインク液面が揺れてもインク飛翔に使用された部分のみインク液面が不安定になり、隣への波面の変化が伝播することはない。このため、隣接するドットへの影響を防止することができる。これにより、本発明では、従来例よりも印字速度を向上することができる。
【0027】
さらに、本発明によれば、インク搬送体12として不織布を使用しているが、繊維がランダムに絡み合っているので、縦方向、横方向ともにインクの浸透、供給を行うことが可能になる。このような不織布以外の材質としてポーラス処理をされた多孔質媒体も考えられるが、孔の向きが一定であり、たとえばインク吐出方向への供給ができたとしても横方向への供給ができないので別途供給手段を設ける必要があるので採用できない。
【0028】
また、従来のインクジェット方式では、ピエゾ素子等の振動子と記録ノズルと位置合わせが非常に困難でありコストアップにつながっていたが、本発明によれば、記録ノズルを使用しないので、位置合わせの必要がないのでコストダウンにつながる。
【0029】
また、ノズルレスインクジェットとして音響インクジェット方式が提案されているが、自由液面を使用するのでインク液面の保持が困難である。さらに、波面にメニスカスが形成されるので、波面が安定するまで次の印字を行うことができないので、記録速度の向上が見込めない。また、図5に示すようにノズルを使用するタイプの音響インクジェットも提案されているが、ノズルを使用するので位置合わせのために、従来のインクジェットと同様なコストが必要になる。
【0030】
また、本発明によれば、インク飛翔方向を上部に配置された記録ヘッド5から下方の用紙Pへ飛翔させているが、自由液面を使用するノズルレス音響インクジェットではこのようなレイアウトは不可能である。ここで、本発明で使用できるインクの種類は、水性インクでも油性、石油系でも使用可能である。
そして、上述したようにインク搬送体12に不織布を使用することで簡易な方式で安定した音響インクジェット方式を提供することが可能になる。
【0031】
また、不織布を使用したインクジェット方式による装置として、特開2003−145783号公報が提案されている。この従来装置では、オリフィスプレートの外側にインクがしみこんだ不織布を配置し、ノズルの乾燥を防止する装置である。すなわち、この従来装置では、不織布は、乾燥防止装置である。これに対し、本発明によれば、不織布は、インク搬送体であり、オリフィスプレート(ノズル)を使用しないことを前提とした装置なので、特開2003−145783号公報による不織布とは、全く異なる機能、構成である。
【0032】
以上の構成によれば、ノズルレス構造なので、ノズルと振動子との位置合わせが不要になる。さらに、複雑なインク流路を形成する必要がない。また、インクはインク搬送体によって供給されるので、ノズルレスでありながら記録ヘッド5のレイアウトの制限がない等の利点がある。
【0033】
図6は本発明による第2の実施形態を示す。
すなわち、図6に示すようにインク搬送体12表面にカバー14を装着する。
これは、インク搬送体12の表面は空気に触れているので、表面のインクが乾燥する危険性があるからである。
【0034】
開口部17は、インク吐出近傍に設けられるが、図4に示すような従来のインクジェット方式のように開口部18の径がφ50μm以下であると位置合わせの問題が生じるが、このカバー14の目的は乾燥防止なので、インクの飛翔を妨げない程度の径寸法、たとえば1mmであってもよい。また、カバー14を装着することによりコックリング等の問題が生じた場合にも直接用紙がインク搬送体12に触れることがないので、被害を最小限にすることが可能になる。
【0035】
そして、このような構成によれば、インクの揮発が防止できるので、インクの固着の問題が生じなくなる。
【0036】
図7は本発明による第3の実施形態を示す。
すなわち、この実施形態では、インクの乾燥等の問題によりインクがインク搬送体12に固着することが生じた場合に備えて、インク搬送体12を長尺形状で構成する。
そして、図7に示すようにインク搬送体送り出し機構15とインク搬送体回収機構16を記録ヘッド左右に設ける。そして、これらのインク搬送体送り出し機構15およびインク搬送体回収機構16中ではインク搬送体12はロール状に巻かれている。
【0037】
このような構成によれば、インク搬送体12中のインクの乾燥固着により、印字に障害が発生した場合、インク搬送体12矢印イの方向に移動する。インク搬送体12の位置をずらすためにインク搬送体回収機構により不図示の回転手段によりインク搬送体が巻き取られる。この動作により、インク搬送体12が入れ替えることが可能になり、インク固着等の問題が生じても記録ヘッド5の交換等を行う必要がなくなり、印字を継続することができる。
【0038】
そして、このような構成では、インク固着が発生した場合でも簡易な方式により、固着部分を回収し、インク搬送体をリフレッシュすることが可能になり、これによりインク固着により印字障害が発生してもすぐに復旧することが可能になる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、画像形成装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る画像形成装置の第1の実施形態を示し、画像形成装置の模式的断面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置において、要部となる記録ヘッドの構成を示す図である。
【図3】図2の記録ヘッドにおける印字の状態を説明するための図である。
【図4】(a),(b)は従来構造による記録ヘッドの不具合を説明するための図である。
【図5】ノズルを使用するタイプの音響インクジェットプリンタを説明する従来例説明図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置の第2の実施形態を示す要部断面図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の第3の実施形態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…給紙カセット、2…給紙ローラ、3…搬送ローラA、4…プラテンローラ、5…記録ヘッド、6…インクタンク、7…搬送ローラB、8…排紙カセット、9…ガラス基板、10−1…セグメント電極、10−2…グランド電極、11…圧電体、12…インク搬送体、13…ノズルプレート、14…カバー、15…インク搬送体送り出し機構、16…インク搬送体回収機構、17…開口部、18…開口部、19…インク層、P…用紙、I…インク、A…給紙部、B…記録部、C…排紙部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクタンクから記録ヘッドに供給されたインクを、該記録ヘッドから記録紙に選択的に飛翔させて印字を行う音響インクジェットプリンタにおいて、
不織布で形成されたインク供給媒体を使用するように構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
インク乾燥防止のためのカバーを、インク供給媒体上に配置したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の画像形成装置において、
巻き取り装置を配置したインク供給媒体を使用するように構成したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−292035(P2009−292035A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147824(P2008−147824)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】