説明

画像形成装置

【課題】 画像形成装置のエラー発生原因を解析するために、エラー発生時の内部センサ情報等の付随情報をエラー内容と対応付けて管理装置に送信するように構成すると、管理者は画像形成装置の事象発生原因を遠隔地から解析することが可能となる。しかしながら、エラーの発生とは非同期に付随情報を取得して管理装置へ送信する場合には、その付随情報が対応するエラーの発生時の情報であるという保証がされないという問題があった
【解決手段】 エラー発生に対する処理の指示に事象通知情報を付加し、付随情報の送信時に事象通知情報が更新されていないかを比較するように構成する。付随情報の取得までの間に別のエラーが発生して事象通知情報が更新された場合には、元のエラーに正しく対応する付随情報ではないと判断し、正しく対応しないものについては元のエラーに対する付随情報の送信は行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の特定事象発生時の付随情報を特定事象と対応付けて管理装置に送信する、画像形成装置遠隔管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
LAN(Local Area Network)に接続された複写機やプリンタなどの画像形成装置の稼動状態を遠隔地から管理するシステムが存在している。このようなシステムでは、複数の画像形成装置とそれらを管理する管理装置とが、LANやWAN(Wide Area Network)、インターネットを介して互いに通信を行う。画像形成装置は、管理装置に対して、画像形成回数(カウンタ)などの情報を定期的に通知するとともに、ジャムやエラーといった事象の情報をそれらが発生したタイミングで通知する。一方、通知を受けた管理装置は、これら通知の内容を蓄積管理して、画像形成装置の稼働状況をいつでも閲覧できるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、画像形成装置のエラー発生原因を解析するために、エラーなどの事象そのものの情報に加えて、事象発生時の内部センサ情報等の付随情報を記憶し、画像形成装置のディスプレイへの表示や紙への印字出力を可能とする画像形成装置が存在している(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−080498号公報
【特許文献2】特開平07−001795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
事象発生時の内部センサ情報等の付随情報を、画像形成装置上で表示や印字可能とするだけではなく、事象内容と対応付けて管理装置に送信するように構成すれば、管理者は画像形成装置の事象発生原因を遠隔地から解析することが可能となる。このとき、画像形成装置の事象発生に対して適切な解析を可能とするためには、事象内容と付随情報との対応付けが正しく行えていることが必要である。
【0005】
しかしながら、画像形成装置から管理装置への送信は、通信環境や通信量などの要因により処理に時間を要することがあるため、エラーなどの事象が頻発する場合に備えて事象の発生とは非同期に処理を行うよう構成していることが多い。そのような事象の発生とは非同期に付随情報を取得して送信する場合には、その付随情報が対応する事象の発生時の情報であるという保証がされないという問題があった。付随情報の取得までの間に付随情報が更新される別の事象が発生していると、事象と付随情報との対応付けが正しくなくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
特定事象発生時の制御に関連する最新の付随情報を保持していて、ネットワークを介して管理装置と接続される画像形成装置において、
前記特定事象を含む事象発生時に事象通知情報を付加して事象発生の通知処理を指示する通知指示手段と、
前記通知指示手段で付加した前記事象通知情報の最新を保持しておく事象通知情報保持手段と、
前記通知指示手段からの前記指示を受け付ける指示受付手段と、
前記指示受付手段で指示を受け付けると、前記指示に含まれる前記事象通知情報と前記事象通知情報保持手段による前記最新の事象通知情報とが一致するかを比較する比較手段と、
前記比較手段で一致していた場合に、特定事象に関連する前記付随情報を前記特定事象と対応付けて前記管理装置に送信する送信手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、事象の発生とは非同期に付随情報を取得して管理装置へ送信する場合において、事象と正しい対応付けが保証される付随情報のみを、正しく対応付けて送信することができる。付随情報の取得までの間に別の事象が発生して付随情報が更新された場合に、元の事象に正しく対応する付随情報ではないと判断し、正しく対応しないものについては元の事象に対する付随情報の送信は行わない。これにより、画像形成装置の事象発生に対して適切な解析を可能とするための情報を、管理装置に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係るシステム全体を示す図である。画像形成装置100は顧客のネットワークに設置されており、管理装置110と通信回線120を介して相互に接続されている。このとき、通信回線120は、LANやWAN、インターネットなどが想定され、有線であっても無線であっても良い。
【0010】
図2は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置100の構成を表す図である。画像形成装置100は、複合機能型画像形成装置MFP(Multi Function Peripheral)や、単一機能型画像形成装置SFP(Single Function Peripheral)などを示している。画像形成部201は、プリンタやスキャナ、ファクシミリなどの一部、または全部が含まれる。操作部202は、ハードキーやタッチパネルなどの入力機器を備え、画像形成部の操作や通信設定の操作などを受け付ける。制御部203は、操作部202の操作の受付による画像形成部201の制御を行う画像形成制御部204や、管理装置110への画像形成装置100の管理情報の送信制御を行う送信処理部205などから成り、画像形成装置100全体の制御を行う。ここで、画像形成制御部204と送信処理部205とは、非同期に処理を行う。記憶部206は、ROMやRAM、HDDなどを備え、画像形成装置管理プログラムが管理を行ううえで必要な画像形成装置の管理情報として、カウンタ情報、ステータス情報などを記憶する。本実施例において画像形成制御部204は特に、画像形成部201で画像形成制御に関わるエラーやアラームなど、特定の事象が発生したときに、画像形成部201のセンサ情報等の最新の付随情報を事象発生時の情報としてこの記憶部206に記憶している。通信I/F部207は、管理装置110へ管理情報を送信するため、通信回線120と接続されるネットワークインターフェイスである。
【0011】
図3は、画像形成装置100の記憶部206が記憶する付随情報の一例を表す図である。付随情報テーブル300は、画像形成時の温度センサといった機器内部のセンサ情報のほか、制御パラメータなど、エラーやアラームなどの事象解析に役立つ情報の一部または全部を保持している。付随情報テーブル300は、その項目毎に、項目を一意に特定する項目ID301と、項目名302、値303から構成される。画像形成部201で画像形成制御に関わるエラーやアラームなどの特定の事象が発生したときに、一部項目または全項目の値303がそのときの情報で更新される。
【0012】
図4は、画像形成装置100の画像形成制御部204が送信処理部205に送る通知指示に含まれる情報(通知指示パケット)の一例を表す図である。画像形成制御部204は、画像形成部201で画像形成制御に関わるエラーやアラームなど、特定事象の発生を検知すると、送信処理部205に特定事象発生に対する通知処理を指示する通知指示400を送る。このとき、通知指示パケット400は、発生事象の種類を示す通知コード401や、事象の発生箇所を特定する発生場所402、発生日時403に、通知指示を一意に特定する通知ID404などから成る。
【0013】
図5は、本実施例において、付随情報の更新を伴う特定事象の発生を検知したときの画像形成制御部204の動作を示すフローチャートである。画像形成制御部204は、画像形成部201で特定事象が発生したことを検知する(ステップS501)と、事象発生時の制御に関連する付随情報として、画像形成部201のセンサ情報などの情報を記憶部206の付随情報テーブル300に記憶する(ステップS502)。そして、ステップS503で事象通知情報として、例えばシーケンス番号のような通知指示を一意に特定できる通知IDを発行し、保持する。この通知IDは、最後に発行した通知IDが特定できるように、例えば最新の通知IDのみを保持するように構成する。通知IDは、画像形成制御部204の動作プログラム内部で保持していても良いし、ステップS502の付随情報とセットで記憶部206に保持するようにしても良い。そして画像形成制御部204は、続くステップS504で通知IDを付加して送信処理部205へ特定事象発生に対する通知処理を指示する(通知指示パケット400を送る)。
【0014】
図6は、画像形成制御部204からの指示を受けて付随情報を送信する送信処理部205の動作を示すフローチャートである。送信処理部205は、画像形成制御部204からの処理の指示を待ち受ける。このときの指示の待ち受けは、指示が頻発したり指示受付側の処理が滞ったりした場合にも指示を蓄積してFIFO(First−In First−Out)で順次処理を行えるキュー形式が、しばしば採用される。ステップS601で通知処理の指示を受けると、指示に付加されている通知ID404と画像形成制御部204がステップS503で保持した最新の通知IDとを比較する(ステップS602)。このとき、画像形成制御部204がステップS504で通知処理を指示してから送信処理部205で通知処理の指示を受けてステップS602の処理を行うまでに、画像形成制御部204から新たな通知処理の指示が出ていなければ、両者の通知IDは一致する。つまり、ステップS602で一致しなかった場合は、付随情報が書き換わっていると判断して、指示を受けた元の特定事象に対しての付随情報は送信を行わない。ステップS602で一致した場合には、記憶部206に記憶されている付随情報が、指示を受けた元の特定事象に対応する情報であると判断できる。そこで、ステップS602で一致した場合は、ステップS603でその特定事象と対応付けて、通信I/F部207を介して管理装置110へ付随情報を送信する。このとき、付随情報の送信は特定事象の情報とセットで送信するようにしても良いし、対応付ける情報を共通して付加するようにして特定事象の情報の送信とはタイミングを分けて個別に送信するようにしても良い。
【0015】
以上、詳細に説明した本発明を適用できる本実施形態では、事象の発生とは非同期に付随情報を取得して管理装置へ送信する場合において、画像形成装置は事象と正しい対応付けが保証される付随情報のみを、正しく対応付けて送信することができる。付随情報の取得までの間に別の事象が発生して付随情報が更新された場合に、元の事象に正しく対応する付随情報ではないと判断し、正しく対応しないものについては元の事象に対する付随情報の送信は行わない。これにより、画像形成装置の事象発生に対して適切な解析を可能とするための情報を、管理装置に提供することができる。
【実施例2】
【0016】
第一の実施形態では、画像形成制御部204から送信処理部205へ送られる処理の指示に対し、特定事象を含む事象の処理であることが明らかである場合には有効に働く。しかしながら、画像形成制御部204からの指示が付随情報の更新を伴わない事象と混在して送られ、また、指示に含まれる情報からは特定情報を含む事象の処理指示であるかが明らかでないような場合には、事象と付随情報との対応付けが正しく行えない。
【0017】
本実施例では、この課題を解決する実施の形態を例示する。
【0018】
機器構成および付随情報のテーブル、通知指示パケットの構成は、第1の実施形態における図1乃至図4と同様である。
【0019】
図7は、本実施例において、エラーやアラームなどの事象の発生を検知したときの画像形成制御部204の動作を示すフローチャートである。画像形成制御部204は、画像形成装置100の機器の処理でエラーなどの事象が発生したことを検知する(ステップS701)と、その事象が付随情報を保持すべき対象の特定事象であるかを判断する(ステップS702)。ステップS702で特定事象であると判断した場合には、事象発生時の制御に関連する付随情報として、画像形成部201のセンサ情報などの情報を記憶部206の付随情報テーブル300に記憶する(ステップS703)。そして、ステップS704で事象通知情報として、例えばシーケンス番号のような通知指示を一意に特定できる通知IDを発行し、保持する。この通知IDは、最後に発行した通知IDが特定できるように、例えば最新の通知IDのみを保持するように構成する。そして画像形成制御部204は、続くステップS705で通知IDを付加して送信処理部205へ特定事象発生に対する通知処理を指示する(通知指示パケット400を送る)。
【0020】
図8は、画像形成制御部204からの指示を受けて付随情報を送信する送信処理部205の動作を示すフローチャートである。送信処理部205は、第1の実施形態と同様に、画像形成制御部204からの処理の指示をキュー形式などで待ち受ける。ステップS801で通知処理の指示を受けると、処理対象の事象に付随情報保持対象の特定事象を含むかを判断する(ステップS802)。ステップS802で特定事象を含むと判断した場合には、発生した特定事象を特定、または対応付けの取れる特定事象発生情報を生成し、最新のもののみを保持する(ステップS803)。特定事象発生情報が既に存在していた場合には、付随情報の送信前に画像形成制御部204の処理により付随情報が更新されたと判断して、特定事象発生情報もまた、上書きして更新する。このときの特定事象発生情報は、事象発生の情報を付随情報とは分けて送信する際の対応付け情報として利用しても良い。そして、ステップS804で特定事象発生情報が存在している場合には、送信すべき付随情報があると判断し、続くステップS805で、指示に付加されている通知ID404と画像形成制御部204がステップS704で保持した最新の通知IDとを比較する。このとき、画像形成制御部204がステップS705で通知処理を指示してから送信処理部205で通知処理の指示を受けてステップS805の処理を行うまでに、画像形成制御部204から新たな通知処理の指示が出ていなければ、両者の通知IDは一致する。つまり、ステップS805で一致しなかった場合は、新たに別の事象が発生しているため、付随情報が書き換わっている可能性があると判断して、続く指示に対する処理で通知IDが一致するまで付随情報の送信処理は見送る。ステップS805で一致した場合には、そのとき保持されている特定事象発生情報に対応する特定事象が、記憶部206に記憶されている付随情報と対応すると判断できる。そこで、ステップS805で一致した場合は、ステップS806でその特定事象と対応付けて、通信I/F部207を介して管理装置110へ付随情報を送信する。このとき、付随情報の送信は特定事象発生の情報とセットで送信するようにしても良いし、対応付ける情報を共通して付加するようにして特定事象発生の情報の送信とはタイミングを分けて個別に送信するようにしても良い。そして、ステップS806で付随情報の送信を行ったら送信すべき付随情報はなくなるため、ステップS807で特定事象発生情報は削除する。
【0021】
以上、詳細に説明した本発明を適用できる本実施形態では、付随情報の更新を伴わない事象と混在して事象発生が送信処理部に通知される場合においても、画像形成装置は事象と正しい対応付けが保証される付随情報のみを正しく対応付けて送信することができる。付随情報の取得までの間に別の事象が発生して付随情報が更新された場合に、元の事象に正しく対応する付随情報ではないと判断し、正しく対応しないものについては元の事象に対する付随情報の送信は行わない。これにより、画像形成装置の事象発生に対して適切な解析を可能とするための情報を、管理装置に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】システム全体の概略図である。
【図2】画像形成装置100内部の構成図である。
【図3】記憶部206が記憶する付随情報の一例を表す図である。
【図4】画像形成制御部204が送信処理部205に送る通知指示に含まれる情報の一例を表す図である。
【図5】第1実施例の画像形成制御部204の処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施例の送信処理部205の処理を示すフローチャートである。
【図7】第2実施例の画像形成制御部204の処理を示すフローチャートである。
【図8】第2実施例の送信処理部205の処理を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定事象発生時の最新の付随情報(300)を保持する手段(206、S502)を有し、ネットワーク(120)を介して管理装置(110)と接続される画像形成装置(100)において、
前記特定事象を含む事象発生時に事象通知情報を発行して最新の前記事象通知情報を保持しておく事象通知情報保持手段(S503)と、
前記事象通知情報を付加して特定事象発生の通知処理を指示する通知指示手段(S504)と、
前記通知指示手段からの前記指示を受け付ける指示受付手段(S601)と、
前記指示受付手段で指示を受け付けると、前記指示に含まれる前記事象通知情報と前記事象通知情報保持手段による前記最新の事象通知情報とが一致するかを比較する比較手段(S602)と、
前記比較手段で一致していた場合に、特定事象に関連する前記付随情報を前記特定事象と対応付けて前記管理装置に送信する送信手段(S603)と、
を備えることを特徴とする画像形成装置(100)。
【請求項2】
特定事象発生時の最新の付随情報(300)を保持する手段(206、S703)を有し、ネットワーク(120)を介して管理装置(110)と接続される画像形成装置(100)において、
事象発生時に事象通知情報を発行して最新の前記事象通知情報を保持しておく事象通知情報保持手段(S704)と、
前記事象通知情報を付加して事象発生の通知処理を指示する通知指示手段(S705)と、
前記処理指示手段からの前記指示を受け付ける指示受付手段(S801)と、
前記指示受付手段で指示を受け付けると、発生した前記事象に前記特定事象を含むか否かを判断する特定事象判断手段(S802)と、
前記特定事象判断手段によって前記特定事象を含むと判断された場合に、前記特定事象の発生情報を保持する特定事象発生情報保持手段(S803)と、
前記特定事象発生情報保持手段によって前記発生情報が保持されている場合(S804)に、前記指示に含まれる前記事象通知情報と前記事象通知情報保持手段による前記最新の事象通知情報とが一致するかを比較する比較手段(S805)と、
前記比較手段で一致していた場合に、特定事象に関連する前記付随情報を前記特定事象と対応付けて前記管理装置に送信する送信手段(S806)と、
前記発生情報を削除する発生情報削除手段(S807)と、
を備えることを特徴とする画像形成装置(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−142975(P2010−142975A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319747(P2008−319747)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】