画像形成装置
【課題】互いに異なる色のトナー層を重ねて被転写体上に転写する画像形成装置において、いわゆる逆転写の発生を抑制し、形成される画像の色相の安定性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】移動する被転写面上にトナーを転写される被転写体と、それぞれが互いに異なる色のトナーを、被転写面上に順次重ねて転写する少なくとも3つの転写ステーションとを備え、少なくとも3つの転写ステーションにより被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の層厚が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の層厚よりも厚い。
【解決手段】移動する被転写面上にトナーを転写される被転写体と、それぞれが互いに異なる色のトナーを、被転写面上に順次重ねて転写する少なくとも3つの転写ステーションとを備え、少なくとも3つの転写ステーションにより被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の層厚が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の層厚よりも厚い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる色のトナー層を重ねて被転写体上に転写する画像形成装置において、いわゆる逆転写の発生を抑制し、形成される画像の色相の安定性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに異なる色のトナー層を重ねて中間転写ベルト上に転写する構成の画像形成装置として、例えば、いわゆる4連タンデム方式の画像形成装置が知られる。
【0003】
上述のような、4連タンデム方式の画像形成装置において、被転写体移動方向における上流側に位置する転写ステーションにてベルトや紙等の被転写体に転写されたトナー像が、下流側に位置する画像形成ステーションにて被転写体側から感光体側に逆に転写してしまう、いわゆる「逆転写現象」が発生する。
【0004】
上記逆転写現象が発生すると、廃トナーの発生量が増加するばかりでなく、異なる色のトナー層を重ねて2次色を表現する場合における当該2次色の色相の安定性が低下してしまう。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の転写ステーションを備える画像形成装置の場合、イエロー転写ステーションにて被転写体上に転写させたイエロートナー層に、マゼンタ転写ステーションにてさらにマゼンタトナー層を重ねると、被転写体上には赤色に相当するトナー層が積層されることになる。しかしながら、上記逆転写現象によって上記のように積層されたトナー層におけるマゼンタトナーの層の一部やシアントナーの層の一部が剥がれてしまうことがあり、このような場合、本来赤色になるべき色が記録媒体上に朱色で形成されてしまったり、マゼンタにシアンを重ねてつくられるグリーンがブラック転写ステーションを通過することで黄緑色になってしまったりする場合がある。
【0005】
上述のように被転写体から感光体側に逆転写したトナーは、極性が正常なトナー極性に対して反転している。また転写バイアス電圧が高いほど逆転写量は多くなり、また感光体電位(いわゆる「白地電位」)が高いほど逆転写量は多くなる傾向がある。このような逆転写現象は、中間転写ベルトからトナーヘの電荷注入や、各転写ステーションにおける感光体ドラムと中間転写ベルトとが当接して形成されるニップ内およびニップ前後における異常放電等が原因であると考えられている。
【0006】
これに対して、各色の転写ステーション間にて、中間転写ベルト上のトナーを中間転写ベルトに対しては物理的に押し当ててベルト上にしっかりつけることで、後段のステーションを通過してもトナー極性が反転しないようにする対策が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
また、逆転写現象の発生を抑制する対策として、上記中間転写ベルトに当接する転写ローラの最外層を高抵抗にして当該転写ローラへの電荷注入を防止することで、逆転写を抑える例も開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、装置構成が複雑になってしまう上に、トナーを押し付ける部材の汚れの影響等も考慮しなけれぱならなくなるという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法では、中間転写ベルト上に形成されたトナー層が薄い場合には効果があるが、複数色分のトナー層が積層されて厚く(2層以上)なってくると、逆転写を抑える効果はほとんどなくなってしまう。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、互いに異なる色のトナー層を重ねて被転写体上に転写する画像形成装置において、いわゆる逆転写の発生を抑制し、形成される画像の色相の安定性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、移動する被転写面上にトナーを転写される被転写体と、それぞれが互いに異なる色のトナーを、前記被転写面上に順次重ねて転写する少なくとも3つの転写ステーションとを備え、前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の層厚が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の層厚よりも厚い画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0012】
以上に詳述したように、本発明によれば、互いに異なる色のトナー層を重ねて被転写体上に転写する画像形成装置において、いわゆる逆転写の発生を抑制し、形成される画像の色相の安定性を向上させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態による、いわゆる4連タンデム方式の画像形成装置(MFP:Multi Function Peripheral)の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】パッシェンの法則について説明するための図である。
【図3】逆転写発生について説明するための模式図である。
【図4】逆転写発生について説明するための模式図である。
【図5】逆転写発生について説明するための模式図である。
【図6】横軸に、中間転写ベルト121上に転写される見かけ上のトナー層の層厚をトナーの体積平均粒径で割った値をとって、縦軸の逆転写率との関係を測定した結果を示すグラフである。
【図7】イエローとシアンとの混色、マゼンタとシアンとの混色、イエローとマゼンタとシアンとの混色について概算した結果を示す図である。
【図8】試作したトナーについて説明するための図である。
【図9】プロセスユニットPYに対して、プロセスユニットPCの見かけ上のトナー層の厚みを厚くした場合の効果を説明するための図である。
【図10】イエロートナー層のベタ画像時の層厚、およびマゼンタトナー層のベタ画像時の層厚が、ともに約8μmとなるように「YB−3」と「MB−3」のトナーを用い、プロセスユニットPCのベタ層厚を変えて、色重ねをした際の色差(△E)の測定結果を示す図である。
【図11】イエロー+マゼンタ画像の△Eについて、イエロートナーの見かけ上の層厚を8μm、10μm、15μmの3種類において、マゼンタトナーを変更して比較した図である。
【図12】トナー層の空隙率を変えるために、トナーの平均粒径と球形度をかえてトナーを試作した例を示す図である。
【図13】イエロートナーのベタ層厚が12μmとなるようにYC−3トナーを用い、さらにマゼンタ、シアンのベタ層厚を、空隙率を変更したトナー(MBトナー,CCトナー)により同時に変えて、色重ねをした際の色差(△E)を測定した結果である。
【図14】イエロートナーのトナー層のベタ層厚、およびマゼンタトナーのトナー層のベタ層厚が、ともに約12μmとなるように「YC−3」と「MC−4」トナーを用い、プロセスユニットPCのベタ層厚を変えて、色重ねをした際の色差Eを測定した結果である。
【図15】トナーに含まれる顔料の比率を変更した場合と、トナーの空隙率を変更した場合とで、イエローとマゼンタを混色させた画像の△Eについて比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態による、いわゆる4連タンデム方式の画像形成装置(MFP:Multi Function Peripheral)の概略構成を示す縦断面図である。
【0016】
本実施の形態による画像形成装置は、中間転写ベルト(被転写体)121、二次転写ローラ16、駆動ローラ15、従動ローラ13、プロセスユニット(転写ステーションに相当)PY〜PK、一次転写ローラ101Y〜101K、CPU801およびメモリ802を備えている。
【0017】
また、各プロセスユニットPY〜PKは、帯電チャージャ103Y〜103K、現像器104Y〜104Kおよび感光体ドラム105Y〜105Kを備えている。画像形成手段である各プロセスユニットPY〜PKは、レーザ光LY〜LKにより露光された像担持体である感光体ドラム105Y〜105Kの感光面上に、トナー像を形成する。
【0018】
各プロセスユニットPY〜PKでは、例えばスコロトロン方式の帯電チャージャ103Y〜103Kにより、感光体ドラム105Y〜105Kの感光面を一様に負帯電させる。このようにして負帯電させた感光面にレーザ光LY〜LKが露光されると、感光面上に静電潜像が形成される。そして、当該静電潜像を、現像器104Y〜104Kによって反転現像する。
【0019】
ここでの感光体ドラム105Y〜105Kは、例えば直径30mmに設定されており、中間転写ベルト121の幅と感光体ドラム105Y〜105Kの回転軸方向における長さ寸法(幅)とはほぼ同じとなるように設定されている。また、中間転写ベルト121は、半導電性の材料から形成されていることが好ましい。
【0020】
次に、本実施の形態による画像形成装置における大まかな画像形成処理の流れについて説明する。
【0021】
まず、上述のようにしてプロセスユニットPYにおける感光体101Y上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ101Yに印加されたバイアス電圧により、電界により中間転写ベルト121上に転写される。
【0022】
同様に、プロセスユニットPM〜PKにおける感光体の感光面上にそれぞれの色のトナー像が形成され、それぞれの転写ローラ101M〜101Kに印加されたバイアス電圧により中間転写ベルト121のベルト面(被転写面)上に順次転写される。画像パターンによっては、中間転写ベルト121のベルト面上にトナー層として積層されたり、積層されることなく通過したりして、カラー画像が形成される。
【0023】
CPU801は、本実施の形態による画像形成装置における各種処理を行う役割を有しており、またメモリ802に格納されているプログラムを実行することにより種々の機能を実現する役割も有している。また、CPU801は、一次転写を行うために一次転写ローラ101Y〜101Kに対して印加されるバイアス電圧の電圧値の制御も行っている。メモリ802は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、VRAM(Video RAM)等から構成されることができ、本実施の形態による画像形成装置において利用される種々の情報やプログラムを格納する役割を有している。
【0024】
ここで、逆転写発生のメカニズムについて説明する。
【0025】
感光体105Y〜105Kと中間転写ベルト121等との転写ニップTY中では、両者の間にトナー層が存在することになる。トナーは平均粒径が3〜10μmの径の紛体であり、それらが重なって多数存在した場合、静電的な反発力も働いて、トナー層自体はかなりの空隙をもっている。これに伴い、感光体105Y〜105Kと中間転写ベルト121との間の距離もトナー層厚分離れていると考えられる。ここで、感光体105Y〜105Kと中間転写ベルト121との放電は、これらトナー間の空隙をぬって空気中で発生する。
【0026】
一般に、並行平板における放電現象は、パッシェンの法則に従っており、空気中では図2に示すような特性になる。すなわち、放電の発生の有無は、距離(空隙)と電位差によって決まり、両者の距離が7〜8μm程度のときに最も低い電圧差で放電が発生し、それ以上距離が近づきすぎると急激に放電しにくくなることがわかる。
【0027】
転写ニップ中において、中間転写ベルト121のベルト面上に転写されたトナー層が1層のみである場合には、当該トナー層がニップを通過するときの感光体105Y〜105Kと中間転写ベルト121との空隙はトナー1層分となる。この場合、当該トナー層を構成するトナーの粒径によっては放電が発生しない場合もある。しかし、一般にカラートナーのトナー層を重ねて転写することにより二次色の生成を行う画像形成装置では、放電が発生しない領域で、赤や緑等の2次色を含めた画像パターンを形成するのは難しい。
【0028】
転写ニップ中で放電が発生すると逆転写が発生することについては、次のように説明できる。図3〜図5は、逆転写発生について説明するための模式図である。感光体105Y〜105Kと中間転写ベルト121との間で放電が発生すると、マイナス極性の感光体105Y〜105Kは、中間転写ベルト121からプラスの電荷を受け、一方の中間転写ベルト121はマイナスの電荷を受ける。
【0029】
その際、例えば図3のように、中間転写ベルト121側に存在するトナーはマイナスの電荷を受け、図4のように感光体105Y〜105K側に存在するトナーはプラスの電荷を受ける。逆転写現象は、図4のように、感光体105Y〜105K側に存在するトナーがプラスの電荷を受けた結果、トナーの極性自体がプラスに反転することにより発生するものであると考えられる。また実際には、トナー層には相当量の空隙が存在するため、図5のようになっていると考えられる。
【0030】
ここで、「逆転写率」を、「中間転写ベルト121上に存在するトナー量に対して、突入する次工程の転写ステーションにて感光体側に剥ぎ取られる率」と定義するものとする。
【0031】
図6は、横軸に、中間転写ベルト121上に転写される見かけ上のトナー層の層厚(顕微鏡により観察したトナー層の高さの測定値の平均値)をトナーの体積平均粒径で割った値をとって、縦軸の逆転写率との関係を測定した結果を示すグラフである。なお、ここでの「層厚」とは、例えば、中間転写ベルトのベルト面に対する法線方向における厚みを意味し
ている。
【0032】
同図における横軸は、トナー層の厚みが、空隙を含んだ状態でトナー何層分に相当するかということを意味している。図6によれば、見かけ上のトナー層厚がトナーの平均粒径の2倍(すなわち2層分)以下では逆転写率は小さく、2倍以上になると、トナー層の厚みによらず逆転写率はほぼ一定となることがわかる。
【0033】
中間転写ベルト121上に転写されたトナー層がトナー2層分以上の厚みを有している場合に逆転写が増加するのは、転写ニップ中で放電が発生した場合、上層トナーの粒子ひとつの中で、ほぼ全体にプラス電荷が付与されるからであると考えられ、それ以上トナー層厚が厚くなっても逆転写率に大差がないのは、実際には逆転写量は増加しているがベルト上のトナー量も増えているため、プラス電荷を受ける割合でいえば層厚によらず一定であることを示していると思われる。
【0034】
すなわち、「逆転写現象」とは、中間転写ベルト121上に積層された複数層のトナー層の内の上側のトナー層が剥ぎ取られる現象であり、さらに層全体からみた場合の逆転写率は層厚が変化しても変らない。赤や緑等のように異なる色のトナー同士を混色させて得られる2次色では、異なる色のトナー層が重なるように転写されており、見かけ上の層厚は、トナーの平均粒径の2倍以上になっているため、ほとんどの場合で逆転写が発生しやすい条件が成立していることになる。
【0035】
ここで、イエローとマゼンタを混色させることによって2次色を生成する例として、イエロートナーで見かけ上の層厚10μmのトナー層を中間転写ベルト121上に転写した後に、当該イエロートナーのトナー層上にさらにマゼンタトナーで見かけ上の層厚10μmのトナー層を重ねて転写して、積層されたトナー層全体としての層厚が20μmとなる場合について考える。
【0036】
上述のようなトナー層を積層した場合に、仮に逆転写率が4%であるとすると、シアンステーションでは20μm×4%=0.8μm分のマゼンタトナーが剥ぎ取られてしまうことになる。この場合、マゼンタトナーの逆転写率は8%となってしまう。そして、下流側のプロセスユニットPK(ブラック転写ステーション)では、さらに19.2μm×4%=0.768μm分のマゼンタトナーが剥ぎ取られてしまう。すなわち、各ステーションにおける逆転写率が4%なのにも関わらず、(0.8+0.768)/10 =15.7%ものマゼンタトナーが、逆転写により剥ぎ取られることになってしまう。このような大量の逆転写は、色相の変化に大きな影響を及ぼす。
【0037】
そこで本実施の形態では、中間転写ベルト121上に転写するイエロートナーの層厚を例えば10μmとした場合に、マゼンタトナーの層厚を20μmというように、下流側のプロセスユニットにより転写されるトナー層厚を上流側のプロセスユニットにより転写されるトナー層厚よりも厚くする構成となっている。この条件で上記のような計算を行うと、プロセスユニットPCにて剥ぎ取られるマゼンタトナー層厚は30μm×4%=1.2μm、さらにプロセスユニットPCにて剥ぎ取られるマゼンタトナー層厚は1.152μmとなり、あわせて2.352μm分のマゼンタトナーが剥ぎ取られることになる。2.352μm分のマゼンタトナーが剥ぎ取られるというと一見多くなったようにも思えるが、もとのマゼンタトナーの層厚が厚いため、マゼンタトナーの逆転写率は(1.2+1.152)/20=11.76%となり、イエロートナーとマゼンタトナーが同じ層厚のときに比べて改善されていることがわかる。
【0038】
同様に、イエローとシアンとの混色、マゼンタとシアンとの混色、イエローとマゼンタとシアンとの混色についても概算した結果を図7に示す。これは逆転写率を全ステーションで4%として扱った場合の、最上層トナー層の逆転写によって失われる割合を表したものである。同図に示すように、ベルト面移動方向における上流側に位置するプロセスユニットにより転写するトナー層の層厚に比べて、下流側に位置するプロセスユニットにより転写するトナー層の層厚を厚くすると効果があることがわかる。
【0039】
すなわち、少なくとも3つの転写ステーションにより被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の層厚が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の層厚よりも厚い。
【0040】
しかしながら、いたずらにトナー層厚を変更することは画像形成する上で好ましくはなく、色重ねはあくまで画像形成時のべタ画像条件で行うことが好ましい。
【0041】
そこで、このような構成を実現する例としては、ベルト面移動方向において下流側に位置するプロセスユニットにより転写されるトナー層の単位層厚あたりの発色性を上流側に位置するプロセスユニットにより転写されるトナー層の単位層厚あたりの発色性よりも低することが考えられる。すなわち、通常の各プロセスユニットの発色性の配分は、イエロー、マゼンタ、シアンともにほぼ同じトナー量(単位面積当たり)にてベタ濃度になるように設定されているが、本実施の形態では下流側のプロセスユニットの方が上流側のプロセスユニットよりも単位面積当たりのトナー量が多くなる設定とすればよい。
【0042】
すなわち、少なくとも3つのプロセスユニットにより中間転写ベルト121のベルト面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する「第1のトナー層」の画像形成時のベタ付着量が、該第1のトナー層の下側に隣接する「第2のトナー層」の画像形成時のベタ付着量よりも多いことが好ましい。ここで、「ベタ付着量」とは、「ある色のトナーにおける特定の平均反射濃度が得られるような単位面積当たりのトナー量[g/cm2]」を意味している。
【0043】
なお、上述のベタ付着量の関係を満たす構成としては、例えば、トナー中の顔料の含有率が、下流側のプロセスユニットの方が上流側のプロセスユニットよりも低くなる(通常400μg/cm2〜 500μg/cm2)構成や、トナー中の顔料の分散状態が、下流側のプロセスユニットの方が上流側のプロセスユニットよりも低くなる構成が挙げられる。
【0044】
また、トナー層の空隙率を変えることにより、実現することもできる。上述した通り、ベルト上のトナー層はかなりの空隙を持っており、その空隙率はトナーによって異なる。ベルト面移動方向における下流側に位置するプロセスユニットにてベルト面上に転写されるトナー層の空隙率を、上流側に位置するプロセスユニットにてベルト面上に転写されるトナー層の空隙率よりも高くすることで、双方のプロセスユニットにおいて転写するトナー層が互いにベタ濃度である場合でも見かけ上のトナー層厚を十分に異ならせることができる。
【0045】
すなわち、少なくとも3つのプロセスユニットにより中間転写ベルト121のベルト面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する「第1のトナー層」(ここではマゼンタトナー層)の画像形成時の空隙率が、該第1のトナー層の下側に隣接する「第2のトナー層」(ここではシアントナー層)の画像形成時の空隙率よりも大きい構成とすることが望ましい。
【0046】
また、中間転写ベルト121上に積層される複数のトナー層における上層(感光体側)のトナー層の空隙率が高い場合、感光体ドラム105Y〜105Kとトナーとの接触面積も低下する。逆転写現象の発生には、放電の状態だけでなく、感光体とトナーとの物理的な付着力も影響するため、トナー層の空隙率が高い方が逆転写率は低くなる。すなわち、上述のような空隙率の調整を行うことにより、ベルト面移動方向における下流側に位置するプロセスユニットにより転写されるトナー層の空隙率を高くすることで、ベルト面上における見かけ上のトナー層厚を厚くすることができるという効果だけでなく、単位面積当たりの接触面積を減らすことができるという効果を奏する。これにより、互いに異なる色のトナーを混色させて生成される2次色における逆転写による色相変化の影響をより低減させることができる。
【0047】
(実施例)
続いて、本発明の実施例について説明する。
【0048】
中間転写ベルト121のベルト面上に転写されたトナー層の「見かけ上の層厚」は、光学式の顕微鏡や、レーザ顕微鏡等を用いて測定することができる。
【0049】
本実施例では、レーザテック社製のレーザ顕微鏡(LAZER MICROSCOPE 1LM21W)を用いた。ここでは、プロセスユニットPYにおいて、実際の画像形成条件にて5mm四方のベタ画像を中間転写ベルト121上に形成させ、形成されたトナー層の厚み(トナー層の最上面とベルト面との段差)をレーザ顕微鏡により測定した。まず、実際に中間転写ベルト121のベルト面上に転写されるトナー層の厚さにはムラがあるため、ベルト面上におけるトナーが転写されていない部分と転写されている部分との段差付近にて、トナーが転写されていない部分を50μmの長さに亘って走査して測定し、ゼロ点を求めた。続いて、ベルト面上におけるトナーが転写されている部分を50μmの長さに亘って走査して測定して平均値を求め、これを「見かけ上のトナー層厚」とした。
【0050】
上述のような手法によるトナー層厚の測定を5回行い、上下の値を排除した3回分の測定値の平均をとって、トナー層の見かけ上の厚みとして扱った。
【0051】
図8は、試作したトナーについて説明するための図である。本実施例にて試験に用いたトナーは、ポリエステル系の樹脂を用いたものであり、粉砕法により試作した。トナーに添加する着色剤は公知の顔料を用いることができるが、トナーに対する顔料の添加率を変えることで、少ないトナー量で同じベタ濃度を発色させることができる。
【0052】
本実施例においては、これらのトナーの組み合わせにより、プロセスユニットPYにイエロー、プロセスユニットPMにマゼンタ、プロセスユニットPCにシアン、プロセスユニットPKにブラックトナーを用い、フルカラー画像を形成させた。
【0053】
図9は、プロセスユニットPYのイエロートナーのベタ層厚が8μmとなるように「YB−3」トナーを用い、さらにプロセスユニットPM、プロセスユニットPCのベタ層厚をほぼ同時に変えて、色重ねをした際の色差(△E)を測定した結果である。色差は、Xright社製色差測定器(938 Spectrodensitometer)により、実際の画像形成条件にて印字した画像の色濃度から、逆転写が発生していない場合の理想の画像の色濃度との差の絶対値とした。
【0054】
逆転写を発生させない理想の2次色の作成方法は、逆転写が発生するプロセスユニットの転写ローラに印加するバイアス電圧を極端に下げることで作成することができる。この場合、中間転写ベルト121上に重ねて転写したい部分との両立ができず、画像形成条件としての実用性には問題はあるものの、色を特定したサンプル画像の形成は十分に行える。例えば、イエローとマゼンタを混色させることにより赤色を実現したい場合には、プロセスユニットPYとプロセスユニットPMでは、転写ローラに正常な転写バイアス電圧(例えば、800V)を印加し、プロセスユニットPCおよびプロセスユニットPKでは、転写させる必要がないので正常の転写バイアス電圧よりも低くする(例えば300v)。逆転写は転写ニップ内の放電で発生することは前述したが、転写バイアスが低いと図1で示したパッシェン則からもわかるように放電は発生せず、逆転写も発生しないため、理想的な赤色の画像形成を実現することができる。
【0055】
図9によれば、本発明で示すように、プロセスユニットPYに対して、プロセスユニットPCの見かけ上のトナー層の厚みを厚くすることによって、各色(2次色、3次色)とも、マゼンタ+シアンを除き、色差のズレが改善され、大きな効果があることがわかる。マゼンタ+シアンに効果が見られないのは、この2次色はプロセスユニットPCの色のみで構成されるためで、同時に厚みを変更しているため相対的には変化させていないからである。
【0056】
また図10は、プロセスユニットPYによりベルト面上に転写されるイエロートナー層のベタ画像時の層厚、およびプロセスユニットPMによりベルト面上に転写されるマゼンタトナー層のベタ画像時の層厚が、ともに約8μmとなるように「YB−3」と「MB−3」のトナーを用い、プロセスユニットPCのベタ層厚を変えて、色重ねをした際の色差(△E)の測定結果を示す図である。これによれば、イエロー+マゼンタ以外で、いずれも大きな改善効果が見られていることがわかる。イエローとマゼンタとの混色は、プロセスユニットPYとプロセスユニットPMのみにより実現されるため、これも図10では固定としており変化しない。
【0057】
図11は、イエロー+マゼンタ画像の△Eについて、イエロートナーの見かけ上の層厚を8μm、10μm、15μmの3種類において、マゼンタトナーを変更して比較した結果である。グラフの横軸を「マゼンタトナーの見かけ上の層厚)/(イエロートナーの見かけ上の層厚」とすると、3種類とも曲線がほぼ一致している。イエロートナーやマゼンタトナーは、見かけ上のトナー層厚を変更するために、トナーの平均粒径および顔料比率を変更しているが、その影響はほとんど見られず、色層の変化(すなわち、上層のトナー層の逆転写率)は、ほぼ上流側のプロセスユニットにより転写されるトナー層の層厚と下流側のプロセスユニットにより転写されるトナー層の層厚との比率によって決まっていることがわかる。
【0058】
図12は、トナー層の空隙率を変えるために、トナーの平均粒径と球形度をかえてトナーを試作した例を示す。ポリエステル系の粉砕方式でトナーを製造し、球形度は熱処理により調節した。トナー層の空隙率の測定は、トナーを取り出したうえで、圧力を加えて固めて行った。具体的測定方法としては、まず、トナーを30gほど取り出して、直径40mmの錠剤成型器に入れたのち3〜10kg/cm2の圧力をかけてトナーを固める。ここでの固まったトナーの錠剤が、すなわち空隙率がゼロのときのトナー層であり、この重さと厚さ(体積を換算)を基準にして密度を求める。並行して、見かけ上のトナー層の厚さを測定したサンプルや、同様な条件にて作造したトナー層の重さを測定し、当該測定結果に基づいて空隙率を算出する。例えば、作造したベルト上の見かけ上のトナー層厚が20μm、そのときのトナー量が500μg/cm2としたときの、トナー層厚1μmごとのトナー量は25μg/cm2となる。一方、錠剤に成型したトナーの厚さが1mmで重さが1gの場合、空隙率0%におけるトナー層厚1μmごとのトナー量は、10×1000000/(2×2×3.14)×(1/1000)=79.58μg/cm2となる。これらから、作像したトナーの空隙率は、(79.58-25)/79.58=68.6%となることがわかる。
【0059】
これらのトナーを用いて、2次色、3次色の、逆転写による色層変化の様子を比較した。
【0060】
図13は、プロセスユニットPYのイエロートナーのベタ層厚が12μmとなるようにYC−3トナーを用い、さらにプロセスユニットPM、プロセスユニットPCのベタ層厚を、空隙率を変更したトナー(MBトナー,CCトナー)により同時に変えて、色重ねをした際の色差(△E)を測定した結果である。トナー層の空隙率を変えることによって、プロセスユニットPYに対して、プロセスユニットPCの見かけ上のトナー層の厚みを高くすることで、各色(2次色、3次色)とも、マゼンタ+シアンを除き、色差のズレが改善され、大きな効果があることがわかる。ここで注目されるのがトナーの顔料比率を変更して層厚を変えた場合ではマゼンタ+シアンには効果が見られなかったのに対して、空隙率を変更した場合では、それなりの効果が見られていることである。
【0061】
この2次色は、プロセスユニットPCの色のみで構成され、同時に厚みを変更しているため相対的には変化していないことになるが、空隙率の絶対値としては増加していることになる。
【0062】
また図14は、プロセスユニットPYによりベルト面上に転写されるイエロートナーのトナー層のベタ層厚、およびプロセスユニットPMによりベルト面上に転写されるマゼンタトナーのトナー層のベタ層厚が、ともに約12μmとなるように「YC−3」と「MC−4」トナーを用い、プロセスユニットPCのベタ層厚を変えて、色重ねをした際の色差Eを測定した結果である。これによれば、イエロー+マゼンタ以外で、いずれも大きな改善効果が見られていることがわかる。イエロー+マゼンタによるトナー層の転写は、プロセスユニットPYとプロセスユニットPMのみで構成されるため、この場合は12μmで固定され、絶対値も増加しないため、変化することはない。
【0063】
図15は、トナーに含まれる顔料の比率を変更した場合と、トナーの空隙率を変更した場合とで、イエローとマゼンタを混色させた画像の△Eについて比較した図である。トナーの顔料比率を変更した場合は、イエロートナーの見かけ上の層厚を8μm、10μm、15μmの3種類それぞれについて後段のマゼンタトナー層厚をトナーの顔料比率により変更して、トナー層の空隙率を変更した場合は、イエロートナーの見かけ上の層厚を12μmと15μmの2種類について、後段のマゼンタトナーの層厚を、トナー層の空隙率により変更した。同図に示すグラフにおける横軸を(マゼンタトナーの見かけ上の層厚)/(イエロートナーの見かけ上の層厚)とすると、トナーの空隙率を変更して上層と下層のトナー層厚比を変更したほうが、同じ層厚比においても、トナーの顔料比率を調節した場合に比べて色差変動が少ない、すなわち逆転写量が少なくなることがわかる。
【0064】
これは、積層されている複数のトナー層における上層側のトナー層の空隙率が高いほうが、感光体と接触しているトナー量が少なくなり、感光体との物理的な付着力が強い状態になっているトナーが全体的にみて減少することと、感光体側に存在するトナーの密度が低いため、感光体とベルトとの間で放電が発生した際に、感光体側に存在してプラス側の電荷を受け取るトナーの絶対数がトナー層全体からみると、相対的に少なくなること、に起因していると思われる。
【0065】
以上のように、複数の色のトナー層を重ねて2次色や3次色を作る場合、さらに後段の転写ステーションを通過した際の逆転写量を減少させるために、複数の色が重なったトナー層において、上層側の色のトナー層の見かけ上の層厚が他の色のトナー層厚よりも大きくなるようにすると効果がある。例えば、4つのプロセスユニットPY〜PKにより中間転写ベルト121上に重ねて転写される4層のトナー層の内、最上層のトナー層を除く複数のトナー層それぞれの層厚が、上層側に位置するトナー層ほど厚くなるような構成とすることによっても本発明の効果を奏することができる。
【0066】
具体的には、上記効果的な層厚の関係を実現する方法として、上層側のトナー層の空隙率を高くする構成を採用することが有効である。当該構成によれば、トナーの顔料比率を変更する他の手段に比べて、より大きな効果を奏することができる。
【0067】
ここで、複数色のトナー層を中間転写ベルト上に重ねて転写し、トナー像を形成する場合、各プロセスユニットにてベルト面上に転写するトナー層の厚みはいくらでも厚くできるわけではなく、例えば、中間転写ベルトを採用する上記構成例においては、被転写体に画像を転写した後に、さらに紙への2次転写工程がある。また、中間転写ベルトを採用sない構成の画像形成装置においても、シートに転写したトナー層を当該シートに加熱定着させる工程等がある。上記のような種々の工程を考慮すると、トナー層が厚過ぎる場合における不具合の発生が懸念される。すなわち、上述のような2次転写工程や定着工程を考慮すると、重ねて転写されるトナー層の層厚は極力薄い方が、画質や消費電力の点で好ましい。
【0068】
そこで、画像形成装置が、たとえばプロセスユニットPYにイエロー、プロセスユニットPMにマゼンタ、プロセスユニットPCにシアン、プロセスユニットPKにブラックトナーを用いている場合は、プロセスユニットPYのイエロートナー層は極力薄く形成し、プロセスユニットPMのマゼンタトナー層を、プロセスユニットPYにより形成されたイエロートナー層よりも厚く形成する。さらに、プロセスユニットPCにより転写されるシアントナー層も、マゼンタトナー層と同様かそれ以上の層厚で形成することが望ましい。なお、ベルト面移動方向における最下流側に位置するプロセスユニットPKによりベルト面上に転写するブラックトナー層については、極力薄くトナー層を形成するとよい。
【0069】
すなわち、ベルト面移動方向における最下流側に位置するプロセスユニットPKの下流側には、プロセスユニットが存在せず、プロセスユニットPKにより転写したブラックトナーが逆転写することはなく、ブラックトナーが中間転写ベルト121上から剥ぎ取られることはない。したがって、少なくとも3つのプロセスユニットにより被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の層厚が、該最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の層厚よりも薄い関係とすることができる。このように、トナー層の層厚が厚くなるのはプロセスユニットPMとプロセスユニットPCにより転写されるトナー層のみとすることにより、トナー層厚が厚くなることに起因する弊害の発生を抑制することができる。
【0070】
また上述の実施の形態では、各プロセスユニットが、中間転写ベルト121のベルト面の移動方向における上流側から下流側へ向けて、イエロートナーを転写するプロセスユニットPY、マゼンタトナーを転写するプロセスユニットPM、シアントナーを転写するプロセスユニットPC、ブラックトナーを転写するプロセスユニットPK、の順に配列される構成を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、色の順番は任意に変更するできることは言うまでもない。
【0071】
例えば、一般に、ブラックトナーのベタ画像と他のカラートナー層を重ねることが少ないことを考慮すれば、プロセスユニットPKは、中間転写ベルト121のベルト面移動方向における最上流側に配置される構成とすることもできる。この場合、プロセスユニットPKではベルト面上に転写するブラックトナー層の層厚は極力薄くし、続いて後段のプロセスユニットPYによりベルト面上に転写するイエロートナー層の層厚も薄くすることが好ましい。また、プロセスユニットPMによりベルト面上に転写するマゼンタトナー層の層厚はイエロートナー層よりも厚く形成し、最後段のプロセスユニットPCによりベルト面上に転写するシアントナー層の層厚は薄く形成する構成とすることが望ましい。すなわち、ベルト面上に転写されたときの見かけ上のトナー層の層厚を厚く形成すべきトナー層は1色のみでよい。また、中間転写ベルト121のベルト面上にトナー層を転写して重ねてゆく順番は、(1)Y−M−Cの順番、(2)Y−C−Mの順番、(3)C−Y−Mの順番のいずれであってもよい。
【0072】
上述のように、ブラックトナー層を中間転写ベルト121上に転写するプロセスユニットPKは、被転写体に対して重ねて転写される4層のトナー層の内、最上層もしくは最下層のトナー層を転写する。一般に、ブラックトナーは、イエロー、マゼンタおよびシアンといった他の色に比べ、画像形成に利用される頻度が高い。したがって、このように利用頻度が高いブラックトナーにより形成するトナー層の層厚を薄くすることができるようなプロセスユニット配置とすることにより、ブラックトナーを節約することができる。
【0073】
なお、上述の構成の場合、ブラックトナー層の上にイエロートナー層を重ねて転写する場合に、プロセスユニットPKにおける逆転写量が大きくなるように思えるが、実際の使用において、黒ベタトナー層に他の色のトナー層を重ねることはほとんどない。黒にカラー画像を重ねることがありえるのは、黒でグレーを表現したいときであり、そのような場合はベタ画像のブラックトナー層にカラートナーを重ねるのではなく、ドットとして並べて印字することが多い。
【0074】
このように上述の実施の形態によれば、色の順番やプロセスユニット(画像形成ステーション)の数に限定されずに、転写プロセスにおいて、上流側と下流側のトナー層同士の重ね転写の関係を特定の関係とすることにより、逆転写の発生を抑制することができる。
【0075】
なお、上述の実施の形態では、いわゆる4連タンデム方式において、中間転写体に対して一次転写させたトナーを、搬送されるシートに二次転写させる構成を採用した画像形成装置を例示したが、必ずしもこれに限れられるものではない。例えば、感光体上に形成したトナー像を、転写ベルトに吸着させて搬送されるシート上に直接重ねて転写させる構成とすることもできる。
【0076】
また、中間転写体が一回転する間に複数色のトナー層を当該中間転写体上に積層させる上記構成に限らず、複数回(積層させるトナー層の層数分だけ)回転する中間転写体に対して、複数のトナー層を順次積層させてゆく構成を採用することもできる。
【0077】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、互いに色の異なるトナー層を被転写体上に重ねて転写する画像形成装置において、前記被転写体の被転写面の移動方向において下流側に位置するプロセスユニットにおけるトナー層厚を上流側に位置するプロセスユニットのトナー層厚よりも大きくすること、または上流側に位置するプロセスユニットよりも下流側に位置するプロセスユニットのトナー層の空隙率を高くすること、により特に2次色の重ね転写時における逆転写による色相変化の発生を抑制することが可能となる。
【0078】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0079】
121 中間転写ベルト、PY〜PK プロセスユニット、101Y〜101K 二次転写ローラ、105Y〜105K 感光体ドラム、801 CPU、802 メモリ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開7−64366号公報
【0081】
【特許文献2】特開8−202172号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる色のトナー層を重ねて被転写体上に転写する画像形成装置において、いわゆる逆転写の発生を抑制し、形成される画像の色相の安定性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに異なる色のトナー層を重ねて中間転写ベルト上に転写する構成の画像形成装置として、例えば、いわゆる4連タンデム方式の画像形成装置が知られる。
【0003】
上述のような、4連タンデム方式の画像形成装置において、被転写体移動方向における上流側に位置する転写ステーションにてベルトや紙等の被転写体に転写されたトナー像が、下流側に位置する画像形成ステーションにて被転写体側から感光体側に逆に転写してしまう、いわゆる「逆転写現象」が発生する。
【0004】
上記逆転写現象が発生すると、廃トナーの発生量が増加するばかりでなく、異なる色のトナー層を重ねて2次色を表現する場合における当該2次色の色相の安定性が低下してしまう。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の転写ステーションを備える画像形成装置の場合、イエロー転写ステーションにて被転写体上に転写させたイエロートナー層に、マゼンタ転写ステーションにてさらにマゼンタトナー層を重ねると、被転写体上には赤色に相当するトナー層が積層されることになる。しかしながら、上記逆転写現象によって上記のように積層されたトナー層におけるマゼンタトナーの層の一部やシアントナーの層の一部が剥がれてしまうことがあり、このような場合、本来赤色になるべき色が記録媒体上に朱色で形成されてしまったり、マゼンタにシアンを重ねてつくられるグリーンがブラック転写ステーションを通過することで黄緑色になってしまったりする場合がある。
【0005】
上述のように被転写体から感光体側に逆転写したトナーは、極性が正常なトナー極性に対して反転している。また転写バイアス電圧が高いほど逆転写量は多くなり、また感光体電位(いわゆる「白地電位」)が高いほど逆転写量は多くなる傾向がある。このような逆転写現象は、中間転写ベルトからトナーヘの電荷注入や、各転写ステーションにおける感光体ドラムと中間転写ベルトとが当接して形成されるニップ内およびニップ前後における異常放電等が原因であると考えられている。
【0006】
これに対して、各色の転写ステーション間にて、中間転写ベルト上のトナーを中間転写ベルトに対しては物理的に押し当ててベルト上にしっかりつけることで、後段のステーションを通過してもトナー極性が反転しないようにする対策が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
また、逆転写現象の発生を抑制する対策として、上記中間転写ベルトに当接する転写ローラの最外層を高抵抗にして当該転写ローラへの電荷注入を防止することで、逆転写を抑える例も開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、装置構成が複雑になってしまう上に、トナーを押し付ける部材の汚れの影響等も考慮しなけれぱならなくなるという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法では、中間転写ベルト上に形成されたトナー層が薄い場合には効果があるが、複数色分のトナー層が積層されて厚く(2層以上)なってくると、逆転写を抑える効果はほとんどなくなってしまう。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、互いに異なる色のトナー層を重ねて被転写体上に転写する画像形成装置において、いわゆる逆転写の発生を抑制し、形成される画像の色相の安定性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、移動する被転写面上にトナーを転写される被転写体と、それぞれが互いに異なる色のトナーを、前記被転写面上に順次重ねて転写する少なくとも3つの転写ステーションとを備え、前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の層厚が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の層厚よりも厚い画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0012】
以上に詳述したように、本発明によれば、互いに異なる色のトナー層を重ねて被転写体上に転写する画像形成装置において、いわゆる逆転写の発生を抑制し、形成される画像の色相の安定性を向上させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態による、いわゆる4連タンデム方式の画像形成装置(MFP:Multi Function Peripheral)の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】パッシェンの法則について説明するための図である。
【図3】逆転写発生について説明するための模式図である。
【図4】逆転写発生について説明するための模式図である。
【図5】逆転写発生について説明するための模式図である。
【図6】横軸に、中間転写ベルト121上に転写される見かけ上のトナー層の層厚をトナーの体積平均粒径で割った値をとって、縦軸の逆転写率との関係を測定した結果を示すグラフである。
【図7】イエローとシアンとの混色、マゼンタとシアンとの混色、イエローとマゼンタとシアンとの混色について概算した結果を示す図である。
【図8】試作したトナーについて説明するための図である。
【図9】プロセスユニットPYに対して、プロセスユニットPCの見かけ上のトナー層の厚みを厚くした場合の効果を説明するための図である。
【図10】イエロートナー層のベタ画像時の層厚、およびマゼンタトナー層のベタ画像時の層厚が、ともに約8μmとなるように「YB−3」と「MB−3」のトナーを用い、プロセスユニットPCのベタ層厚を変えて、色重ねをした際の色差(△E)の測定結果を示す図である。
【図11】イエロー+マゼンタ画像の△Eについて、イエロートナーの見かけ上の層厚を8μm、10μm、15μmの3種類において、マゼンタトナーを変更して比較した図である。
【図12】トナー層の空隙率を変えるために、トナーの平均粒径と球形度をかえてトナーを試作した例を示す図である。
【図13】イエロートナーのベタ層厚が12μmとなるようにYC−3トナーを用い、さらにマゼンタ、シアンのベタ層厚を、空隙率を変更したトナー(MBトナー,CCトナー)により同時に変えて、色重ねをした際の色差(△E)を測定した結果である。
【図14】イエロートナーのトナー層のベタ層厚、およびマゼンタトナーのトナー層のベタ層厚が、ともに約12μmとなるように「YC−3」と「MC−4」トナーを用い、プロセスユニットPCのベタ層厚を変えて、色重ねをした際の色差Eを測定した結果である。
【図15】トナーに含まれる顔料の比率を変更した場合と、トナーの空隙率を変更した場合とで、イエローとマゼンタを混色させた画像の△Eについて比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態による、いわゆる4連タンデム方式の画像形成装置(MFP:Multi Function Peripheral)の概略構成を示す縦断面図である。
【0016】
本実施の形態による画像形成装置は、中間転写ベルト(被転写体)121、二次転写ローラ16、駆動ローラ15、従動ローラ13、プロセスユニット(転写ステーションに相当)PY〜PK、一次転写ローラ101Y〜101K、CPU801およびメモリ802を備えている。
【0017】
また、各プロセスユニットPY〜PKは、帯電チャージャ103Y〜103K、現像器104Y〜104Kおよび感光体ドラム105Y〜105Kを備えている。画像形成手段である各プロセスユニットPY〜PKは、レーザ光LY〜LKにより露光された像担持体である感光体ドラム105Y〜105Kの感光面上に、トナー像を形成する。
【0018】
各プロセスユニットPY〜PKでは、例えばスコロトロン方式の帯電チャージャ103Y〜103Kにより、感光体ドラム105Y〜105Kの感光面を一様に負帯電させる。このようにして負帯電させた感光面にレーザ光LY〜LKが露光されると、感光面上に静電潜像が形成される。そして、当該静電潜像を、現像器104Y〜104Kによって反転現像する。
【0019】
ここでの感光体ドラム105Y〜105Kは、例えば直径30mmに設定されており、中間転写ベルト121の幅と感光体ドラム105Y〜105Kの回転軸方向における長さ寸法(幅)とはほぼ同じとなるように設定されている。また、中間転写ベルト121は、半導電性の材料から形成されていることが好ましい。
【0020】
次に、本実施の形態による画像形成装置における大まかな画像形成処理の流れについて説明する。
【0021】
まず、上述のようにしてプロセスユニットPYにおける感光体101Y上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ101Yに印加されたバイアス電圧により、電界により中間転写ベルト121上に転写される。
【0022】
同様に、プロセスユニットPM〜PKにおける感光体の感光面上にそれぞれの色のトナー像が形成され、それぞれの転写ローラ101M〜101Kに印加されたバイアス電圧により中間転写ベルト121のベルト面(被転写面)上に順次転写される。画像パターンによっては、中間転写ベルト121のベルト面上にトナー層として積層されたり、積層されることなく通過したりして、カラー画像が形成される。
【0023】
CPU801は、本実施の形態による画像形成装置における各種処理を行う役割を有しており、またメモリ802に格納されているプログラムを実行することにより種々の機能を実現する役割も有している。また、CPU801は、一次転写を行うために一次転写ローラ101Y〜101Kに対して印加されるバイアス電圧の電圧値の制御も行っている。メモリ802は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、VRAM(Video RAM)等から構成されることができ、本実施の形態による画像形成装置において利用される種々の情報やプログラムを格納する役割を有している。
【0024】
ここで、逆転写発生のメカニズムについて説明する。
【0025】
感光体105Y〜105Kと中間転写ベルト121等との転写ニップTY中では、両者の間にトナー層が存在することになる。トナーは平均粒径が3〜10μmの径の紛体であり、それらが重なって多数存在した場合、静電的な反発力も働いて、トナー層自体はかなりの空隙をもっている。これに伴い、感光体105Y〜105Kと中間転写ベルト121との間の距離もトナー層厚分離れていると考えられる。ここで、感光体105Y〜105Kと中間転写ベルト121との放電は、これらトナー間の空隙をぬって空気中で発生する。
【0026】
一般に、並行平板における放電現象は、パッシェンの法則に従っており、空気中では図2に示すような特性になる。すなわち、放電の発生の有無は、距離(空隙)と電位差によって決まり、両者の距離が7〜8μm程度のときに最も低い電圧差で放電が発生し、それ以上距離が近づきすぎると急激に放電しにくくなることがわかる。
【0027】
転写ニップ中において、中間転写ベルト121のベルト面上に転写されたトナー層が1層のみである場合には、当該トナー層がニップを通過するときの感光体105Y〜105Kと中間転写ベルト121との空隙はトナー1層分となる。この場合、当該トナー層を構成するトナーの粒径によっては放電が発生しない場合もある。しかし、一般にカラートナーのトナー層を重ねて転写することにより二次色の生成を行う画像形成装置では、放電が発生しない領域で、赤や緑等の2次色を含めた画像パターンを形成するのは難しい。
【0028】
転写ニップ中で放電が発生すると逆転写が発生することについては、次のように説明できる。図3〜図5は、逆転写発生について説明するための模式図である。感光体105Y〜105Kと中間転写ベルト121との間で放電が発生すると、マイナス極性の感光体105Y〜105Kは、中間転写ベルト121からプラスの電荷を受け、一方の中間転写ベルト121はマイナスの電荷を受ける。
【0029】
その際、例えば図3のように、中間転写ベルト121側に存在するトナーはマイナスの電荷を受け、図4のように感光体105Y〜105K側に存在するトナーはプラスの電荷を受ける。逆転写現象は、図4のように、感光体105Y〜105K側に存在するトナーがプラスの電荷を受けた結果、トナーの極性自体がプラスに反転することにより発生するものであると考えられる。また実際には、トナー層には相当量の空隙が存在するため、図5のようになっていると考えられる。
【0030】
ここで、「逆転写率」を、「中間転写ベルト121上に存在するトナー量に対して、突入する次工程の転写ステーションにて感光体側に剥ぎ取られる率」と定義するものとする。
【0031】
図6は、横軸に、中間転写ベルト121上に転写される見かけ上のトナー層の層厚(顕微鏡により観察したトナー層の高さの測定値の平均値)をトナーの体積平均粒径で割った値をとって、縦軸の逆転写率との関係を測定した結果を示すグラフである。なお、ここでの「層厚」とは、例えば、中間転写ベルトのベルト面に対する法線方向における厚みを意味し
ている。
【0032】
同図における横軸は、トナー層の厚みが、空隙を含んだ状態でトナー何層分に相当するかということを意味している。図6によれば、見かけ上のトナー層厚がトナーの平均粒径の2倍(すなわち2層分)以下では逆転写率は小さく、2倍以上になると、トナー層の厚みによらず逆転写率はほぼ一定となることがわかる。
【0033】
中間転写ベルト121上に転写されたトナー層がトナー2層分以上の厚みを有している場合に逆転写が増加するのは、転写ニップ中で放電が発生した場合、上層トナーの粒子ひとつの中で、ほぼ全体にプラス電荷が付与されるからであると考えられ、それ以上トナー層厚が厚くなっても逆転写率に大差がないのは、実際には逆転写量は増加しているがベルト上のトナー量も増えているため、プラス電荷を受ける割合でいえば層厚によらず一定であることを示していると思われる。
【0034】
すなわち、「逆転写現象」とは、中間転写ベルト121上に積層された複数層のトナー層の内の上側のトナー層が剥ぎ取られる現象であり、さらに層全体からみた場合の逆転写率は層厚が変化しても変らない。赤や緑等のように異なる色のトナー同士を混色させて得られる2次色では、異なる色のトナー層が重なるように転写されており、見かけ上の層厚は、トナーの平均粒径の2倍以上になっているため、ほとんどの場合で逆転写が発生しやすい条件が成立していることになる。
【0035】
ここで、イエローとマゼンタを混色させることによって2次色を生成する例として、イエロートナーで見かけ上の層厚10μmのトナー層を中間転写ベルト121上に転写した後に、当該イエロートナーのトナー層上にさらにマゼンタトナーで見かけ上の層厚10μmのトナー層を重ねて転写して、積層されたトナー層全体としての層厚が20μmとなる場合について考える。
【0036】
上述のようなトナー層を積層した場合に、仮に逆転写率が4%であるとすると、シアンステーションでは20μm×4%=0.8μm分のマゼンタトナーが剥ぎ取られてしまうことになる。この場合、マゼンタトナーの逆転写率は8%となってしまう。そして、下流側のプロセスユニットPK(ブラック転写ステーション)では、さらに19.2μm×4%=0.768μm分のマゼンタトナーが剥ぎ取られてしまう。すなわち、各ステーションにおける逆転写率が4%なのにも関わらず、(0.8+0.768)/10 =15.7%ものマゼンタトナーが、逆転写により剥ぎ取られることになってしまう。このような大量の逆転写は、色相の変化に大きな影響を及ぼす。
【0037】
そこで本実施の形態では、中間転写ベルト121上に転写するイエロートナーの層厚を例えば10μmとした場合に、マゼンタトナーの層厚を20μmというように、下流側のプロセスユニットにより転写されるトナー層厚を上流側のプロセスユニットにより転写されるトナー層厚よりも厚くする構成となっている。この条件で上記のような計算を行うと、プロセスユニットPCにて剥ぎ取られるマゼンタトナー層厚は30μm×4%=1.2μm、さらにプロセスユニットPCにて剥ぎ取られるマゼンタトナー層厚は1.152μmとなり、あわせて2.352μm分のマゼンタトナーが剥ぎ取られることになる。2.352μm分のマゼンタトナーが剥ぎ取られるというと一見多くなったようにも思えるが、もとのマゼンタトナーの層厚が厚いため、マゼンタトナーの逆転写率は(1.2+1.152)/20=11.76%となり、イエロートナーとマゼンタトナーが同じ層厚のときに比べて改善されていることがわかる。
【0038】
同様に、イエローとシアンとの混色、マゼンタとシアンとの混色、イエローとマゼンタとシアンとの混色についても概算した結果を図7に示す。これは逆転写率を全ステーションで4%として扱った場合の、最上層トナー層の逆転写によって失われる割合を表したものである。同図に示すように、ベルト面移動方向における上流側に位置するプロセスユニットにより転写するトナー層の層厚に比べて、下流側に位置するプロセスユニットにより転写するトナー層の層厚を厚くすると効果があることがわかる。
【0039】
すなわち、少なくとも3つの転写ステーションにより被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の層厚が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の層厚よりも厚い。
【0040】
しかしながら、いたずらにトナー層厚を変更することは画像形成する上で好ましくはなく、色重ねはあくまで画像形成時のべタ画像条件で行うことが好ましい。
【0041】
そこで、このような構成を実現する例としては、ベルト面移動方向において下流側に位置するプロセスユニットにより転写されるトナー層の単位層厚あたりの発色性を上流側に位置するプロセスユニットにより転写されるトナー層の単位層厚あたりの発色性よりも低することが考えられる。すなわち、通常の各プロセスユニットの発色性の配分は、イエロー、マゼンタ、シアンともにほぼ同じトナー量(単位面積当たり)にてベタ濃度になるように設定されているが、本実施の形態では下流側のプロセスユニットの方が上流側のプロセスユニットよりも単位面積当たりのトナー量が多くなる設定とすればよい。
【0042】
すなわち、少なくとも3つのプロセスユニットにより中間転写ベルト121のベルト面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する「第1のトナー層」の画像形成時のベタ付着量が、該第1のトナー層の下側に隣接する「第2のトナー層」の画像形成時のベタ付着量よりも多いことが好ましい。ここで、「ベタ付着量」とは、「ある色のトナーにおける特定の平均反射濃度が得られるような単位面積当たりのトナー量[g/cm2]」を意味している。
【0043】
なお、上述のベタ付着量の関係を満たす構成としては、例えば、トナー中の顔料の含有率が、下流側のプロセスユニットの方が上流側のプロセスユニットよりも低くなる(通常400μg/cm2〜 500μg/cm2)構成や、トナー中の顔料の分散状態が、下流側のプロセスユニットの方が上流側のプロセスユニットよりも低くなる構成が挙げられる。
【0044】
また、トナー層の空隙率を変えることにより、実現することもできる。上述した通り、ベルト上のトナー層はかなりの空隙を持っており、その空隙率はトナーによって異なる。ベルト面移動方向における下流側に位置するプロセスユニットにてベルト面上に転写されるトナー層の空隙率を、上流側に位置するプロセスユニットにてベルト面上に転写されるトナー層の空隙率よりも高くすることで、双方のプロセスユニットにおいて転写するトナー層が互いにベタ濃度である場合でも見かけ上のトナー層厚を十分に異ならせることができる。
【0045】
すなわち、少なくとも3つのプロセスユニットにより中間転写ベルト121のベルト面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する「第1のトナー層」(ここではマゼンタトナー層)の画像形成時の空隙率が、該第1のトナー層の下側に隣接する「第2のトナー層」(ここではシアントナー層)の画像形成時の空隙率よりも大きい構成とすることが望ましい。
【0046】
また、中間転写ベルト121上に積層される複数のトナー層における上層(感光体側)のトナー層の空隙率が高い場合、感光体ドラム105Y〜105Kとトナーとの接触面積も低下する。逆転写現象の発生には、放電の状態だけでなく、感光体とトナーとの物理的な付着力も影響するため、トナー層の空隙率が高い方が逆転写率は低くなる。すなわち、上述のような空隙率の調整を行うことにより、ベルト面移動方向における下流側に位置するプロセスユニットにより転写されるトナー層の空隙率を高くすることで、ベルト面上における見かけ上のトナー層厚を厚くすることができるという効果だけでなく、単位面積当たりの接触面積を減らすことができるという効果を奏する。これにより、互いに異なる色のトナーを混色させて生成される2次色における逆転写による色相変化の影響をより低減させることができる。
【0047】
(実施例)
続いて、本発明の実施例について説明する。
【0048】
中間転写ベルト121のベルト面上に転写されたトナー層の「見かけ上の層厚」は、光学式の顕微鏡や、レーザ顕微鏡等を用いて測定することができる。
【0049】
本実施例では、レーザテック社製のレーザ顕微鏡(LAZER MICROSCOPE 1LM21W)を用いた。ここでは、プロセスユニットPYにおいて、実際の画像形成条件にて5mm四方のベタ画像を中間転写ベルト121上に形成させ、形成されたトナー層の厚み(トナー層の最上面とベルト面との段差)をレーザ顕微鏡により測定した。まず、実際に中間転写ベルト121のベルト面上に転写されるトナー層の厚さにはムラがあるため、ベルト面上におけるトナーが転写されていない部分と転写されている部分との段差付近にて、トナーが転写されていない部分を50μmの長さに亘って走査して測定し、ゼロ点を求めた。続いて、ベルト面上におけるトナーが転写されている部分を50μmの長さに亘って走査して測定して平均値を求め、これを「見かけ上のトナー層厚」とした。
【0050】
上述のような手法によるトナー層厚の測定を5回行い、上下の値を排除した3回分の測定値の平均をとって、トナー層の見かけ上の厚みとして扱った。
【0051】
図8は、試作したトナーについて説明するための図である。本実施例にて試験に用いたトナーは、ポリエステル系の樹脂を用いたものであり、粉砕法により試作した。トナーに添加する着色剤は公知の顔料を用いることができるが、トナーに対する顔料の添加率を変えることで、少ないトナー量で同じベタ濃度を発色させることができる。
【0052】
本実施例においては、これらのトナーの組み合わせにより、プロセスユニットPYにイエロー、プロセスユニットPMにマゼンタ、プロセスユニットPCにシアン、プロセスユニットPKにブラックトナーを用い、フルカラー画像を形成させた。
【0053】
図9は、プロセスユニットPYのイエロートナーのベタ層厚が8μmとなるように「YB−3」トナーを用い、さらにプロセスユニットPM、プロセスユニットPCのベタ層厚をほぼ同時に変えて、色重ねをした際の色差(△E)を測定した結果である。色差は、Xright社製色差測定器(938 Spectrodensitometer)により、実際の画像形成条件にて印字した画像の色濃度から、逆転写が発生していない場合の理想の画像の色濃度との差の絶対値とした。
【0054】
逆転写を発生させない理想の2次色の作成方法は、逆転写が発生するプロセスユニットの転写ローラに印加するバイアス電圧を極端に下げることで作成することができる。この場合、中間転写ベルト121上に重ねて転写したい部分との両立ができず、画像形成条件としての実用性には問題はあるものの、色を特定したサンプル画像の形成は十分に行える。例えば、イエローとマゼンタを混色させることにより赤色を実現したい場合には、プロセスユニットPYとプロセスユニットPMでは、転写ローラに正常な転写バイアス電圧(例えば、800V)を印加し、プロセスユニットPCおよびプロセスユニットPKでは、転写させる必要がないので正常の転写バイアス電圧よりも低くする(例えば300v)。逆転写は転写ニップ内の放電で発生することは前述したが、転写バイアスが低いと図1で示したパッシェン則からもわかるように放電は発生せず、逆転写も発生しないため、理想的な赤色の画像形成を実現することができる。
【0055】
図9によれば、本発明で示すように、プロセスユニットPYに対して、プロセスユニットPCの見かけ上のトナー層の厚みを厚くすることによって、各色(2次色、3次色)とも、マゼンタ+シアンを除き、色差のズレが改善され、大きな効果があることがわかる。マゼンタ+シアンに効果が見られないのは、この2次色はプロセスユニットPCの色のみで構成されるためで、同時に厚みを変更しているため相対的には変化させていないからである。
【0056】
また図10は、プロセスユニットPYによりベルト面上に転写されるイエロートナー層のベタ画像時の層厚、およびプロセスユニットPMによりベルト面上に転写されるマゼンタトナー層のベタ画像時の層厚が、ともに約8μmとなるように「YB−3」と「MB−3」のトナーを用い、プロセスユニットPCのベタ層厚を変えて、色重ねをした際の色差(△E)の測定結果を示す図である。これによれば、イエロー+マゼンタ以外で、いずれも大きな改善効果が見られていることがわかる。イエローとマゼンタとの混色は、プロセスユニットPYとプロセスユニットPMのみにより実現されるため、これも図10では固定としており変化しない。
【0057】
図11は、イエロー+マゼンタ画像の△Eについて、イエロートナーの見かけ上の層厚を8μm、10μm、15μmの3種類において、マゼンタトナーを変更して比較した結果である。グラフの横軸を「マゼンタトナーの見かけ上の層厚)/(イエロートナーの見かけ上の層厚」とすると、3種類とも曲線がほぼ一致している。イエロートナーやマゼンタトナーは、見かけ上のトナー層厚を変更するために、トナーの平均粒径および顔料比率を変更しているが、その影響はほとんど見られず、色層の変化(すなわち、上層のトナー層の逆転写率)は、ほぼ上流側のプロセスユニットにより転写されるトナー層の層厚と下流側のプロセスユニットにより転写されるトナー層の層厚との比率によって決まっていることがわかる。
【0058】
図12は、トナー層の空隙率を変えるために、トナーの平均粒径と球形度をかえてトナーを試作した例を示す。ポリエステル系の粉砕方式でトナーを製造し、球形度は熱処理により調節した。トナー層の空隙率の測定は、トナーを取り出したうえで、圧力を加えて固めて行った。具体的測定方法としては、まず、トナーを30gほど取り出して、直径40mmの錠剤成型器に入れたのち3〜10kg/cm2の圧力をかけてトナーを固める。ここでの固まったトナーの錠剤が、すなわち空隙率がゼロのときのトナー層であり、この重さと厚さ(体積を換算)を基準にして密度を求める。並行して、見かけ上のトナー層の厚さを測定したサンプルや、同様な条件にて作造したトナー層の重さを測定し、当該測定結果に基づいて空隙率を算出する。例えば、作造したベルト上の見かけ上のトナー層厚が20μm、そのときのトナー量が500μg/cm2としたときの、トナー層厚1μmごとのトナー量は25μg/cm2となる。一方、錠剤に成型したトナーの厚さが1mmで重さが1gの場合、空隙率0%におけるトナー層厚1μmごとのトナー量は、10×1000000/(2×2×3.14)×(1/1000)=79.58μg/cm2となる。これらから、作像したトナーの空隙率は、(79.58-25)/79.58=68.6%となることがわかる。
【0059】
これらのトナーを用いて、2次色、3次色の、逆転写による色層変化の様子を比較した。
【0060】
図13は、プロセスユニットPYのイエロートナーのベタ層厚が12μmとなるようにYC−3トナーを用い、さらにプロセスユニットPM、プロセスユニットPCのベタ層厚を、空隙率を変更したトナー(MBトナー,CCトナー)により同時に変えて、色重ねをした際の色差(△E)を測定した結果である。トナー層の空隙率を変えることによって、プロセスユニットPYに対して、プロセスユニットPCの見かけ上のトナー層の厚みを高くすることで、各色(2次色、3次色)とも、マゼンタ+シアンを除き、色差のズレが改善され、大きな効果があることがわかる。ここで注目されるのがトナーの顔料比率を変更して層厚を変えた場合ではマゼンタ+シアンには効果が見られなかったのに対して、空隙率を変更した場合では、それなりの効果が見られていることである。
【0061】
この2次色は、プロセスユニットPCの色のみで構成され、同時に厚みを変更しているため相対的には変化していないことになるが、空隙率の絶対値としては増加していることになる。
【0062】
また図14は、プロセスユニットPYによりベルト面上に転写されるイエロートナーのトナー層のベタ層厚、およびプロセスユニットPMによりベルト面上に転写されるマゼンタトナーのトナー層のベタ層厚が、ともに約12μmとなるように「YC−3」と「MC−4」トナーを用い、プロセスユニットPCのベタ層厚を変えて、色重ねをした際の色差Eを測定した結果である。これによれば、イエロー+マゼンタ以外で、いずれも大きな改善効果が見られていることがわかる。イエロー+マゼンタによるトナー層の転写は、プロセスユニットPYとプロセスユニットPMのみで構成されるため、この場合は12μmで固定され、絶対値も増加しないため、変化することはない。
【0063】
図15は、トナーに含まれる顔料の比率を変更した場合と、トナーの空隙率を変更した場合とで、イエローとマゼンタを混色させた画像の△Eについて比較した図である。トナーの顔料比率を変更した場合は、イエロートナーの見かけ上の層厚を8μm、10μm、15μmの3種類それぞれについて後段のマゼンタトナー層厚をトナーの顔料比率により変更して、トナー層の空隙率を変更した場合は、イエロートナーの見かけ上の層厚を12μmと15μmの2種類について、後段のマゼンタトナーの層厚を、トナー層の空隙率により変更した。同図に示すグラフにおける横軸を(マゼンタトナーの見かけ上の層厚)/(イエロートナーの見かけ上の層厚)とすると、トナーの空隙率を変更して上層と下層のトナー層厚比を変更したほうが、同じ層厚比においても、トナーの顔料比率を調節した場合に比べて色差変動が少ない、すなわち逆転写量が少なくなることがわかる。
【0064】
これは、積層されている複数のトナー層における上層側のトナー層の空隙率が高いほうが、感光体と接触しているトナー量が少なくなり、感光体との物理的な付着力が強い状態になっているトナーが全体的にみて減少することと、感光体側に存在するトナーの密度が低いため、感光体とベルトとの間で放電が発生した際に、感光体側に存在してプラス側の電荷を受け取るトナーの絶対数がトナー層全体からみると、相対的に少なくなること、に起因していると思われる。
【0065】
以上のように、複数の色のトナー層を重ねて2次色や3次色を作る場合、さらに後段の転写ステーションを通過した際の逆転写量を減少させるために、複数の色が重なったトナー層において、上層側の色のトナー層の見かけ上の層厚が他の色のトナー層厚よりも大きくなるようにすると効果がある。例えば、4つのプロセスユニットPY〜PKにより中間転写ベルト121上に重ねて転写される4層のトナー層の内、最上層のトナー層を除く複数のトナー層それぞれの層厚が、上層側に位置するトナー層ほど厚くなるような構成とすることによっても本発明の効果を奏することができる。
【0066】
具体的には、上記効果的な層厚の関係を実現する方法として、上層側のトナー層の空隙率を高くする構成を採用することが有効である。当該構成によれば、トナーの顔料比率を変更する他の手段に比べて、より大きな効果を奏することができる。
【0067】
ここで、複数色のトナー層を中間転写ベルト上に重ねて転写し、トナー像を形成する場合、各プロセスユニットにてベルト面上に転写するトナー層の厚みはいくらでも厚くできるわけではなく、例えば、中間転写ベルトを採用する上記構成例においては、被転写体に画像を転写した後に、さらに紙への2次転写工程がある。また、中間転写ベルトを採用sない構成の画像形成装置においても、シートに転写したトナー層を当該シートに加熱定着させる工程等がある。上記のような種々の工程を考慮すると、トナー層が厚過ぎる場合における不具合の発生が懸念される。すなわち、上述のような2次転写工程や定着工程を考慮すると、重ねて転写されるトナー層の層厚は極力薄い方が、画質や消費電力の点で好ましい。
【0068】
そこで、画像形成装置が、たとえばプロセスユニットPYにイエロー、プロセスユニットPMにマゼンタ、プロセスユニットPCにシアン、プロセスユニットPKにブラックトナーを用いている場合は、プロセスユニットPYのイエロートナー層は極力薄く形成し、プロセスユニットPMのマゼンタトナー層を、プロセスユニットPYにより形成されたイエロートナー層よりも厚く形成する。さらに、プロセスユニットPCにより転写されるシアントナー層も、マゼンタトナー層と同様かそれ以上の層厚で形成することが望ましい。なお、ベルト面移動方向における最下流側に位置するプロセスユニットPKによりベルト面上に転写するブラックトナー層については、極力薄くトナー層を形成するとよい。
【0069】
すなわち、ベルト面移動方向における最下流側に位置するプロセスユニットPKの下流側には、プロセスユニットが存在せず、プロセスユニットPKにより転写したブラックトナーが逆転写することはなく、ブラックトナーが中間転写ベルト121上から剥ぎ取られることはない。したがって、少なくとも3つのプロセスユニットにより被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の層厚が、該最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の層厚よりも薄い関係とすることができる。このように、トナー層の層厚が厚くなるのはプロセスユニットPMとプロセスユニットPCにより転写されるトナー層のみとすることにより、トナー層厚が厚くなることに起因する弊害の発生を抑制することができる。
【0070】
また上述の実施の形態では、各プロセスユニットが、中間転写ベルト121のベルト面の移動方向における上流側から下流側へ向けて、イエロートナーを転写するプロセスユニットPY、マゼンタトナーを転写するプロセスユニットPM、シアントナーを転写するプロセスユニットPC、ブラックトナーを転写するプロセスユニットPK、の順に配列される構成を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、色の順番は任意に変更するできることは言うまでもない。
【0071】
例えば、一般に、ブラックトナーのベタ画像と他のカラートナー層を重ねることが少ないことを考慮すれば、プロセスユニットPKは、中間転写ベルト121のベルト面移動方向における最上流側に配置される構成とすることもできる。この場合、プロセスユニットPKではベルト面上に転写するブラックトナー層の層厚は極力薄くし、続いて後段のプロセスユニットPYによりベルト面上に転写するイエロートナー層の層厚も薄くすることが好ましい。また、プロセスユニットPMによりベルト面上に転写するマゼンタトナー層の層厚はイエロートナー層よりも厚く形成し、最後段のプロセスユニットPCによりベルト面上に転写するシアントナー層の層厚は薄く形成する構成とすることが望ましい。すなわち、ベルト面上に転写されたときの見かけ上のトナー層の層厚を厚く形成すべきトナー層は1色のみでよい。また、中間転写ベルト121のベルト面上にトナー層を転写して重ねてゆく順番は、(1)Y−M−Cの順番、(2)Y−C−Mの順番、(3)C−Y−Mの順番のいずれであってもよい。
【0072】
上述のように、ブラックトナー層を中間転写ベルト121上に転写するプロセスユニットPKは、被転写体に対して重ねて転写される4層のトナー層の内、最上層もしくは最下層のトナー層を転写する。一般に、ブラックトナーは、イエロー、マゼンタおよびシアンといった他の色に比べ、画像形成に利用される頻度が高い。したがって、このように利用頻度が高いブラックトナーにより形成するトナー層の層厚を薄くすることができるようなプロセスユニット配置とすることにより、ブラックトナーを節約することができる。
【0073】
なお、上述の構成の場合、ブラックトナー層の上にイエロートナー層を重ねて転写する場合に、プロセスユニットPKにおける逆転写量が大きくなるように思えるが、実際の使用において、黒ベタトナー層に他の色のトナー層を重ねることはほとんどない。黒にカラー画像を重ねることがありえるのは、黒でグレーを表現したいときであり、そのような場合はベタ画像のブラックトナー層にカラートナーを重ねるのではなく、ドットとして並べて印字することが多い。
【0074】
このように上述の実施の形態によれば、色の順番やプロセスユニット(画像形成ステーション)の数に限定されずに、転写プロセスにおいて、上流側と下流側のトナー層同士の重ね転写の関係を特定の関係とすることにより、逆転写の発生を抑制することができる。
【0075】
なお、上述の実施の形態では、いわゆる4連タンデム方式において、中間転写体に対して一次転写させたトナーを、搬送されるシートに二次転写させる構成を採用した画像形成装置を例示したが、必ずしもこれに限れられるものではない。例えば、感光体上に形成したトナー像を、転写ベルトに吸着させて搬送されるシート上に直接重ねて転写させる構成とすることもできる。
【0076】
また、中間転写体が一回転する間に複数色のトナー層を当該中間転写体上に積層させる上記構成に限らず、複数回(積層させるトナー層の層数分だけ)回転する中間転写体に対して、複数のトナー層を順次積層させてゆく構成を採用することもできる。
【0077】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、互いに色の異なるトナー層を被転写体上に重ねて転写する画像形成装置において、前記被転写体の被転写面の移動方向において下流側に位置するプロセスユニットにおけるトナー層厚を上流側に位置するプロセスユニットのトナー層厚よりも大きくすること、または上流側に位置するプロセスユニットよりも下流側に位置するプロセスユニットのトナー層の空隙率を高くすること、により特に2次色の重ね転写時における逆転写による色相変化の発生を抑制することが可能となる。
【0078】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0079】
121 中間転写ベルト、PY〜PK プロセスユニット、101Y〜101K 二次転写ローラ、105Y〜105K 感光体ドラム、801 CPU、802 メモリ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開7−64366号公報
【0081】
【特許文献2】特開8−202172号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する被転写面上にトナーを転写される被転写体と、
それぞれが互いに異なる色のトナーを、前記被転写面上に順次重ねて転写する少なくとも3つの転写ステーションとを備え、
前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の層厚が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の層厚よりも厚い画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の層厚が、該最上層のトナー層の下側に隣接する前記第1のトナー層の層厚よりも薄い画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、
前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の画像形成時のベタ付着量が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の画像形成時のベタ付着量よりも多い画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の画像形成時の空隙率が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の画像形成時の空隙率よりも大きい画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記少なくとも3つの転写ステーションは、ブラックトナーを前記被転写体上に転写するブラック転写ステーションを含み、
前記ブラック転写ステーションは、前記被転写体に対して重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層もしくは最下層のトナー層を転写する画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層を除く複数のトナー層それぞれの層厚は、上層側に位置するトナー層ほど厚い画像形成装置。
【請求項1】
移動する被転写面上にトナーを転写される被転写体と、
それぞれが互いに異なる色のトナーを、前記被転写面上に順次重ねて転写する少なくとも3つの転写ステーションとを備え、
前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の層厚が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の層厚よりも厚い画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の層厚が、該最上層のトナー層の下側に隣接する前記第1のトナー層の層厚よりも薄い画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、
前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の画像形成時のベタ付着量が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の画像形成時のベタ付着量よりも多い画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層の下側に隣接する第1のトナー層の画像形成時の空隙率が、該第1のトナー層の下側に隣接する第2のトナー層の画像形成時の空隙率よりも大きい画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記少なくとも3つの転写ステーションは、ブラックトナーを前記被転写体上に転写するブラック転写ステーションを含み、
前記ブラック転写ステーションは、前記被転写体に対して重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層もしくは最下層のトナー層を転写する画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記少なくとも3つの転写ステーションにより前記被転写面上に重ねて転写される少なくとも3層のトナー層の内、最上層のトナー層を除く複数のトナー層それぞれの層厚は、上層側に位置するトナー層ほど厚い画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−146007(P2010−146007A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289658(P2009−289658)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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