画像形成装置
【課題】クロストークの発生を抑制する画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される記録媒体に液滴を吐出する吐出口を備えた液室と、複数の前記液室の各々に液体を供給する流路とを備えた液滴吐出ヘッドと、同一流路における少なくとも一部の複数の吐出口を、前記記録媒体に形成する画像を示す画像情報に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように液滴を吐出する吐出口と、前記基準記録率と比較して促進した促進記録率となるように液滴を吐出する吐出口とが近接するように前記液滴吐出ヘッドを制御する制御手段と、を有する画像形成装置。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される記録媒体に液滴を吐出する吐出口を備えた液室と、複数の前記液室の各々に液体を供給する流路とを備えた液滴吐出ヘッドと、同一流路における少なくとも一部の複数の吐出口を、前記記録媒体に形成する画像を示す画像情報に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように液滴を吐出する吐出口と、前記基準記録率と比較して促進した促進記録率となるように液滴を吐出する吐出口とが近接するように前記液滴吐出ヘッドを制御する制御手段と、を有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に係り、特に1つの流路から複数の液室に液滴を供給する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク室の圧力を上げることでインク滴を吐出するインクジェットプリンタは、近傍ノズルの同時吐出の有無により、吐出インク量ならびに吐出速度が変化すること(以下クロストークと呼ぶ)が知られており、これらはインク室のインク量減少に伴い生じるメニスカス力、または吐出に伴う圧力波に起因する。吐出速度の変化例を図12に示す。図12には、1つの流路と、その流路からインクが供給されることでインク滴を吐出する複数のノズルが示されている。黒いノズルを基準として、ノズル間距離が近いほど、同図に示されるように速度誤差が大きいことが示されている。
【0003】
近年、インクジェットプリンタに対する高速化、低電力化、高画質化の要求から、二次元的にノズルが配列されたラインヘッドを使ったシングルパスによるインクジェットプリンタが注目されているが、これらのインクジェットプリンタは上記クロストークの影響を受けやすい。上述したクロストークは特に高濃度部で濃度ムラ、スジムラ、ジャギーとして画像上に姿を現し、画質の劣化要因となる。
【0004】
クロストークによる濃度ムラを抑制するものとして、特許文献1、2が提案されている。特許文献1では同時に多数のインク滴が吐出された際に生じる濃度ムラ、すなわち上記課題に対するムラ補正方法が開示されており、吐出誤差のうち滴量誤差については、インク通路の容積変化にフィードバックをかけることにより画質を向上させる方法が示されている。
【0005】
一方、特許文献2では主に時間的に同一ノズルからインク滴が頻繁に吐出される際に生じる滴量の減少により生じる濃度ムラ補正方法が開示されている。この文献によると作成した印字データより背圧変動を予測し、予測した背圧から濃度変動を予測しその変動をもとに印字データを補正する。
【0006】
また、隣接ノズルの同時吐出を抑制するというアイデアがあり、特許文献3では、シリアル方式の印刷機においてマスクパターンを使用してスキャン内で隣接ノズルの同時吐出を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−218823号公報
【特許文献2】特開2007−237477号公報
【特許文献3】特開2003−266666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、同機構を盛り込むことは製造コストの高騰につながる。また滴量をコントロールすることは一般に困難であるため、濃度ムラを消しきることができないことが問題である。
【0009】
また、特許文献2に開示された方法だと補正後の印字データによってもメニスカス変動が生じるはずであり、その濃度ムラを予測するためには、さらにもう一度予測をしなおす必要があり実用上困難である。また特許文献1、2ともに速度変動によって生じるジャギーなどには対応できない。更に特許文献3に開示された技術はシングルパス方式の印刷機の場合は適用できない。
【0010】
このように、従来の技術では、クロストークによる濃度ムラ、スジムラ、ジャギーのうちの少なくとも1つを含む画像劣化を簡易に抑制できないという問題点があった。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑み、クロストークの発生を抑制する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される記録媒体に液滴を吐出する吐出口を備えた液室と、複数の前記液室の各々に液体を供給する流路とを備えた液滴吐出ヘッドと、同一流路における少なくとも一部の複数の吐出口を、前記記録媒体に形成する画像を示す画像情報に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように液滴を吐出する吐出口と、前記基準記録率と比較して促進した促進記録率となるように液滴を吐出する吐出口とが近接するように前記液滴吐出ヘッドを制御する制御手段と、を有する。
【0013】
請求項1の発明によれば、同一流路における少なくとも一部の複数の吐出口を、前記記録媒体に形成する画像を示す画像情報に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように液滴を吐出する吐出口と、前記基準記録率と比較して促進した促進記録率となるように液滴を吐出する吐出口とが近接するように前記液滴吐出ヘッドを制御する。これにより近接吐出口からの同時吐出が抑制されるので、クロストークの発生を抑制することができる。
【0014】
請求項2の発明は、前記制御手段は、前記抑制記録率となるガンマ特性と、前記促進記録率となるガンマ特性とを用いて前記画像情報をガンマ補正することにより前記液滴吐出ヘッドを制御する。
【0015】
請求項2の発明によれば、画像情報を吐出を抑制する吐出口については通常記録率より低いガンマ特性を、吐出を促進する吐出口については高いガンマ特性を用いてガンマ変換することにより、一方の吐出口の記録率を上げ、もう片方を下げることができ、近接する吐出口からの同時吐出を抑制することができるので、クロストークの発生を抑制することができる。
【0016】
請求項3の発明は、前記制御手段は、誤差拡散法における閾値を、前記抑制記録率となる閾値と、前記促進記録率となる閾値とを用いて前記画像情報を誤差拡散法によりハーフトーン処理することにより前記液滴吐出ヘッドを制御する。
【0017】
請求項3の発明によれば、画像情報を誤差拡散法によりハーフトーン処理する際に抑制と促進の少なくとも2種類の閾値を近接する吐出口について用いることにより、該吐出口での同時吐出が抑制できるので、クロストークの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クロストークの発生を抑制する画像形成装置を提供することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す断面側面図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係るヘッドの構造例を示す平面透視図である。
【図4】実施形態に係るヘッドの構造例の拡大図である。
【図5】実施形態に係る液滴吐出素子の立体的構成を示す断面図である。
【図6】実施形態に係るヘッドのノズル配列の一例を示す概略図である。
【図7】流路と流路とノズル配置例を示す図である。
【図8】用紙とノズルとの対応を示す図である。
【図9】用紙と抑制ノズル及び促進ノズルとの対応を示す図である。
【図10】ガンマ特性を示す図である。
【図11】誤差拡散法における閾値を示す図である。
【図12】速度誤差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、インク滴により画像を形成する所謂インクジェットプリンタ(以下、「画像形成装置」という。)に適用した場合について説明する。また、画像を形成することを、印刷する、と表現することがある。
【0021】
まず、本実施の形態に係る画像形成装置10の全体構成について説明する。
【0022】
[画像形成装置]
図1に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置10には、記録媒体としての枚葉紙(以下、「用紙」という)の搬送方向上流側に、用紙を給紙搬送する給紙搬送部12が設けられている。この給紙搬送部12の下流側には、用紙の搬送方向に沿って、用紙の記録面(画像形成面)に処理液を塗布する処理液塗布部14、用紙の記録面に画像を形成する画像形成部16、記録面に形成された画像を乾燥させるインク乾燥部18、乾燥した画像を用紙に定着させる画像定着部20、画像が定着した用紙を排出する排出部21が設けられている。
【0023】
以下、各処理部について説明する。
【0024】
(給紙搬送部)
給紙搬送部12には、用紙が積載される積載部22が設けられており、積載部22の用紙の搬送方向下流側(以下、「用紙の搬送方向」を省略する場合もある)には、該積載部22に積載された用紙を一枚ずつ給紙する給紙部24が設けられている。この給紙部24によって給紙された用紙は、複数のローラ26対で構成された搬送部28を経て、処理液塗布部14へ搬送される。
【0025】
(処理液塗布部)
処理液塗布部14では、処理液塗布ドラム30が回転可能に配設されている。この処理液塗布ドラム30には、用紙の先端部を挟持して用紙を保持する保持部材32が設けられており、該保持部材32を介して、処理液塗布ドラム30の表面に用紙を保持した状態で、処理液塗布ドラム30の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
【0026】
なお、後述する中間搬送ドラム34、画像形成ドラム36、インク乾燥ドラム38、および定着ドラム40についても、処理液塗布ドラム30と同様に保持部材32が設けられている。そして、この保持部材32によって、上流側のドラムから下流側のドラムへの用紙の受け渡しが行われる。
【0027】
処理液塗布ドラム30の上部には、処理液塗布ドラム30の周方向に沿って、処理液塗布装置42および処理液乾燥装置44が配設されており、処理液塗布装置42によって、用紙の記録面に処理液が塗布され、処理液乾燥装置44によって、該処理液が乾燥される。
【0028】
ここで、処理液はインクと反応して色材(顔料)を凝集し、色材(顔料)と溶媒を分離促進する効果を有している。処理液塗布装置42には、処理液が貯留している貯留部46が設けられており、グラビアローラ48の一部が処理液に浸されている。
【0029】
このグラビアローラ48にはゴムローラ50が圧接して配置されており、該ゴムローラ50が用紙の記録面(表面)側に接触して処理液が塗布される。また、グラビアローラ48にはスキージ(図示省略)が接触しており、用紙の記録面に塗布する処理液塗布量を制御する。
【0030】
処理液膜厚はヘッド打滴の液滴より十分小さいことが理想である。例えば2plの打滴量の場合、ヘッド打滴の液滴の平均直径は15.6μmであり、処理液膜厚が厚い場合、インクドットは用紙の記録面と接触することなく処理液内で浮遊する。2plの打滴量で着弾ドット径を30μm以上得るには処理液膜厚を3μm以下にすることが好ましい。
【0031】
一方、処理液乾燥装置44には、熱風ノズル54および赤外線ヒータ56(以下、「IRヒータ56」という)が処理液塗布ドラム30の表面に近接して配設されている。この熱風ノズル54およびIRヒータ56により、処理液中の水などの溶媒を蒸発させ、固体もしくは薄膜処理液層を用紙の記録面側に形成する。処理液乾燥工程で処理液を薄層化することで、画像形成部16でインク打滴したドットが用紙表面と接触して必要なドット径が得られると共に、薄層化した処理液と反応し色材凝集して用紙表面に固定する作用が得られやすい。
【0032】
このようにして、処理液塗布部14で記録面に処理液が塗布、乾燥された用紙は、処理液塗布部14と画像形成部16の間に設けられた中間搬送部58へ搬送される。
【0033】
(中間搬送部)
中間搬送部58には、中間搬送ドラム34が回転可能に設けられており、中間搬送ドラム34に設けられた保持部材32を介して、中間搬送ドラム34の表面に用紙を保持し、中間搬送ドラム34の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
【0034】
(画像形成部)
画像形成部16には、搬送手段に対応する画像形成ドラム36が回転可能に設けられており、画像形成ドラム36に設けられた保持部材32を介して、画像形成ドラム36の表面に用紙を保持し、画像形成ドラム36の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
【0035】
画像形成ドラム36の上部には、画像形成ドラム36の表面に近接して、搬送手段により搬送される用紙にインク滴を吐出するノズル(吐出口)が2次元状に設けられたシングルパス方式のインクジェットラインヘッド64(以下、「ヘッド64」という。)を有するヘッドユニット66が配設されている。このヘッドユニット66では、少なくとも基本色であるY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)のヘッド64が画像形成ドラム36の周方向に沿って配列され、処理液塗布部14で用紙の記録面に形成された処理液層上に各色の画像を形成する。
【0036】
処理液はインク中に分散する色材(顔料)とラテックス粒子を処理液に凝集する効果を持たせ、用紙上で色材流れなど発生しない凝集体を形成する。インクと処理液の反応の一例として、処理液内に酸を含有しPHダウンにより顔料分散を破壊し、凝集するメカニズムを用い色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避する。
【0037】
ヘッド64は、画像形成ドラム36に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図示省略)に同期して打滴を行うことで、高精度に着弾位置を決定すると共に、画像形成ドラム36の振れ、回転軸68の精度、ドラム表面速度に依存せず、打滴斑を低減することが可能となる。
【0038】
なお、ヘッドユニット66は画像形成ドラム36の上部から退避可能とされており、ヘッド64のノズル面清掃や増粘インク排出などのメンテナンス動作は、該ヘッドユニット66を画像形成ドラム36の上部から退避させることで実施される。
【0039】
記録面に画像が形成された用紙は、画像形成ドラム36の回転によって、画像形成部16とインク乾燥部18の間に設けられた中間搬送部70へ搬送されるが、中間搬送部70については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0040】
(インク乾燥部)
インク乾燥部18には、インク乾燥ドラム38が回転可能に設けられており、インク乾燥ドラム38の上部には、インク乾燥ドラム38の表面に近接して、熱風ノズル72およびIRヒータ74が複数配設されている。この熱風ノズル72およびIRヒータ74による温風によって、用紙の画像形成部では、色材凝集作用により分離された溶媒が乾燥され、薄膜の画像層が形成される。
【0041】
温風は用紙の搬送速度によっても異なるが、通常は50℃〜70℃に設定されている。蒸発した溶媒はエアーと共に画像形成装置10の外部へ排出されるが、エアーは回収される。このエアーは、冷却器/ラジエータ等で冷却して液体として回収しても良い。
【0042】
記録面の画像が乾燥した用紙は、インク乾燥ドラム38の回転によって、インク乾燥部18と画像定着部20の間に設けられた中間搬送部76へ搬送されるが、中間搬送部76については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0043】
(画像定着部)
画像定着部20には、画像定着ドラム40が回転可能に設けられており、画像定着部20では、インク乾燥ドラム38上で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が加熱/加圧されて溶融し、用紙上に固着定着する機能を有する。
【0044】
画像定着ドラム40の上部には、画像定着ドラム40の表面に近接して、加熱ローラ78が配設されている。この加熱ローラ78は熱伝導率の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプが組み込まれており、該加熱ローラ78によって、ラテックスのTg温度以上の熱エネルギーが付与される。これにより、ラテックス粒子を溶融し、用紙上の凹凸に押し込み定着を行うと共に画像表面の凹凸をレベリングし光沢性を得ることを可能とする。
【0045】
加熱ローラ78の下流側には、定着ローラ80が設けられている。この定着ローラ80は画像定着ドラム40の表面に圧接した状態で配置され、画像定着ドラム40との間でニップ力を得るようにしている。このため、定着ローラ80又は画像定着ドラム40のうち、少なくとも一方は表面に弾性層を持ち、用紙に対して均一なニップ幅を持つ構成とする。
【0046】
以上のような工程により、記録面の画像が定着した用紙は、画像定着ドラム40の回転によって、画像定着部20の下流側に設けられた排出部21側へ搬送される。
【0047】
なお、本実施の形態では、画像定着部20について説明したが、インク乾燥部18で記録面に形成された画像を乾燥・定着させることができれば良いため、この画像定着部20は必ずしも必要ではない。
【0048】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置10のシステム構成を説明する。
【0049】
同図に示されるように、画像形成装置10は、通信インタフェース83、システムコントローラ84、画像メモリ85、ROM86、モータドライバ87、ヒータドライバ88、ファン・モータドライバ81、プリント制御部89、画像バッファメモリ90、画像処理部91、ヘッドドライバ92等を備えている。
【0050】
通信インタフェース83は、ユーザが画像形成装置10に対して画像形成の指示等を行うため等に用いられるホスト装置99とのインタフェース部である。通信インタフェース83にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインタフェースやセントロニクスなどのパラレルインタフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0051】
ホスト装置99から送出された画像情報は通信インタフェース83を介して画像形成装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ85に記憶される。画像メモリ85は、通信インタフェース83を介して入力された画像情報を記憶する記憶手段であり、システムコントローラ84を通じて情報の読み書きが行われる。画像メモリ85は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0052】
システムコントローラ84は、中央演算処理装置(CPU)およびその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って画像形成装置10の全体を制御する制御装置として機能すると共に、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ84は、通信インタフェース83、画像メモリ85、モータドライバ87、ヒータドライバ88、ファン・モータドライバ81等の各部を制御し、ホスト装置99との間の通信制御、画像メモリ85およびROM86の読み書き制御等を行うと共に、用紙搬送系のモータ93やIRヒータ56,74,72を制御する制御信号を生成する。なお、プリント制御部89に対しては、制御信号の他に、画像メモリ85に記憶された画像情報を送信する。
【0053】
また、ROM86には、システムコントローラ84のCPUが実行するプログラムおよび制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM86は、書き換え不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段を用いることが好ましい。
【0054】
画像メモリ85は、画像情報の一時記憶領域として利用されると共に、プログラムの展開領域およびCPUの演算作業領域としても利用される。
【0055】
モータドライバ87は、システムコントローラ84からの指示に従って用紙搬送系のモータ93を駆動するドライバ(駆動回路)である。また、ヒータドライバ88は、システムコントローラ84からの指示に従ってIRヒータ56,74,72を駆動するドライバである。
【0056】
また、ファン・モータドライバ81は、システムコントローラ84からの指示に従って、各ファン・モータ73およびファン・モータ結線回路71を駆動するドライバである。
【0057】
一方、プリント制御部89は、CPUおよびその周辺回路等から構成され、システムコントローラ84の制御に従い、画像処理部91と協働して画像メモリ85内の画像情報から吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正等の処理を行うと共に、生成したインク吐出データをヘッドドライバ92に供給してヘッドユニット66の吐出駆動を制御する。
【0058】
プリント制御部89には、プリント制御部89のCPUが実行するプログラムおよび制御に必要な各種データなどが格納されているROM94が接続されている。ROM94もまた書き換え不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段を用いることが好ましい。
【0059】
画像処理部91は、入力された画像情報からインク色別のドット配置データを生成するものであり、入力画像情報に対してハーフトーニング処理(中間階調処理)を行って高品質のドット位置を決定する。
【0060】
なお、図2において、画像処理部91は、システムコントローラ84やプリント制御部89とは別個のものとして図示しているが、例えば、画像処理部91は、システムコントローラ84或いはプリント制御部89に含まれて、その一部を構成するようにしてもよい。
【0061】
また、プリント制御部89は、画像処理部91で生成されたドット配置データに基づいてインクの吐出データ(ヘッド64のノズルに対応するアクチュエータの制御信号)を生成するインク吐出データ生成機能と、駆動波形生成機能とを有している。
【0062】
インク吐出データ生成機能にて生成されたインク吐出データはヘッドドライバ92に与えられ、ヘッドユニット66のインク吐出動作が制御される。
【0063】
駆動波形生成機能は、ヘッド64の各ノズルに対応したアクチュエータを駆動するための駆動信号波形を生成する機能であり、当該駆動波形生成機能にて生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ92に供給される。なお、駆動波形生成機能にて生成される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0064】
プリント制御部89には画像バッファメモリ90が備えられており、プリント制御部89における画像情報処理時に画像情報やパラメータ等のデータが画像バッファメモリ90に一時的に格納される。なお、図2において画像バッファメモリ90はプリント制御部89に付随する態様で示されているが、画像メモリ85と兼用することも可能である。
【0065】
なお、プリント制御部89とシステムコントローラ84とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0066】
図3はヘッド64の構造例を示す平面透視図であり、図4はその一部の拡大図である。また、図5は1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室(液室)ユニット)の立体的構成を示す断面図(図4中の33−33線に沿う断面図)である。
【0067】
記録紙116上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド64におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド64は、図3、図4に示したように、ノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0068】
なお、記録紙116の送り方向と交差する方向に記録紙116の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。
【0069】
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており(図3、図4参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0070】
図5に示したように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
【0071】
圧力室152の一部の面(図5において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0072】
画像情報から生成さるドット配置データに応じて各ノズル151に対応したアクチュエータ158の駆動を制御することにより、ノズル151からインク滴を吐出させることができる。図1で説明したように、記録媒体たる記録紙116を一定の速度で搬送方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル151のインク吐出タイミングを制御することによって、記録紙116上に所望の画像を記録することができる。
【0073】
上述した構造を有するインク室ユニット153を図6に示す如く搬送方向と交差する交差方向に沿う行方向及び交差方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0074】
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0075】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示した例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ158の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0076】
以下、同一流路における少なくとも一部の複数のノズル151を、用紙に印刷する画像を示す画像情報に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるようにインク滴を吐出するノズル151と、基準記録率と比較して促進した促進記録率となるようにインク滴を吐出するノズル151とが近接するようにヘッド64を制御する内容について説明する。なお、以下の説明では、基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるようにインク滴を吐出するノズルを抑制ノズル、基準記録率と比較して促進した促進記録率となるようにインク滴を吐出するノズルを促進ノズルと表現する。
【0077】
また、記録率はノズルから吐出されたインク滴により印刷された面積の占める割合である。基準記録率は、本実施の形態を適用しない場合に適用される記録率を示している。この基準記録率は、画像形成装置の動作環境等により個々の画像形成装置毎に予め定められている。抑制記録率は、基準記録率と比較して記録率を抑制させた記録率であり、促進記録率は、基準記録率と比較して記録率を促進させた記録率である。
【0078】
記録率を抑制すると、ノズルからインク滴が吐出されることが減少し、促進するとノズルからインク滴が吐出されることが増加する。抑制ノズルからインク滴が吐出する確率をpとし、促進ノズルからインク滴が吐出される確率をqとしたとき同時に吐出される確率はpqである。濃度を一定に保つにはp+q=一定であることが望ましいがこの条件下では同時に吐出される確率pqはp=qの時最大となるので、抑制・促進ノズルの吐出率をq>pと設定しかつ、同一流路内の近接するノズルを抑制・促進ノズルと設定すると、同一流路内で近接するノズルが同時に吐出する確率が小さくなる。すると図12で示されるように、同一流路内で同時に吐出されるノズル間の距離が長くなるので、クロストークの発生を抑制することができる。
【0079】
次に、抑制ノズルと促進ノズルの配置例を流路とノズル配置例が示された図7を用いて説明する。同図(A)はノズル配置例を示し、同図(B)は特に一つの流路に着目した配置を示している。
【0080】
同図(A)には、直線で示された5つの流路200と、矩形で示された複数のノズルとが示されている。各流路200には、図において接触している流路からインクが供給されるノズルが5個ずつ配置されている。そして、流路には左から番号が付されている。また、同図に示すノズル配置において、同一流路からインクが供給されるノズルは、そのノズルから右方向に1つずれ、縦方向に4つずらした位置か、その逆の位置に互いに存在するようになっている。なおノズル配置は上記例によらない。上記例では2次元的にノズルが配列されているが、1次元的に配列されたものでも良い。
【0081】
このうちの2番目の流路200を描いたのが同図(B)である。この流路において、ノズルAを抑制ノズルとし、ノズルBを促進ノズルとする。このように抑制ノズルと促進ノズルとを交互に並べることで、隣り合うノズル同士が同時にインク滴を吐出する確率を低減することができるため、クロストークの発生を抑制することができる。なお、抑制ノズルと促進ノズルとが交互に並ぶように制御する対象は、全ノズルでも良いし、特定の流路からインクが供給されるノズルでも良いし、更に例えば流路の中間付近のノズルのみのように一部のノズルであっても良い。
【0082】
以下では、上記図7(A)に示されるノズル配置例の場合に全ノズルを抑制・もしくは促進ノズルに指定する例を示す。本ノズル配列例の場合、図8に示されるようにインク滴が各ノズルから吐出される。図8は、用紙上の各画素とノズルとの対応を示す図である。同図に示される矩形がノズルから吐出されたインク滴が着弾する領域を示し、矩形内の番号は吐出タイミングを示している。すなわち、同じ数字の領域には同じタイミングで液滴が吐出される。
【0083】
図8に示したノズルと用紙上の各画素との対応がある場合、図9に示されるように抑制ノズルと促進ノズルとを用紙に対応させるようにしてもよい。図9は、各画素と抑制ノズル及び促進ノズルとの対応を示す図である。同図に示されるように、領域を白色と灰色で示されるように抑制ノズルと促進ノズルとに対応させる。
【0084】
同図では吐出タイミング(用紙送り方向 )ごとに促進ノズルと抑制ノズルを入れ替えることで用紙送り方向について促進画素と抑制画素が均等に配置されている。また用紙送り方向に直交する方向についても促進・抑制画素が均等に配置されている。このように促進画素と抑制画素は均等に配置されることが望ましい。促進画素は濃度が高く、抑制画素は濃度が低くなる傾向にあるが、このように均等配置することで各ノズルの記録率を変えた際の濃度むらを低減することができる。
【0085】
またこの配置では、同一タイミングにおいては隣接するノズルが抑制・あるいは促進と設定されているので同一流路上の隣り合うノズル同士が同時に吐出する確率を低減することができる。
【0086】
なお本例では抑制ノズルと促進ノズルを交互に並べたが、抑制ノズルと促進ノズルは近接しておればよく、隣接する必要はない。例えば同一流路内にて「基準・促進・基準:抑制・基準・促進」としても良い。この場合においても近接ノズルの同時吐出は抑制される。また本例では促進と基準を周期的に配置したが、これも周期的である必要はない。
【0087】
次に、抑制記録率となるガンマ特性と、促進記録率となるガンマ特性とを用いて画像情報をガンマ補正することによりヘッド64を制御する内容について説明する。上述したように、画像処理部91は、入力された画像情報に対してハーフトーニング処理を行うが、その前に、図10に示されるガンマ特性を用いてガンマ補正を行なう。図10は、横軸が入力階調値を示し、縦軸が実際に印刷する場合に用いられる実階調値を示している。このグラフでは、階調値が0〜255の場合を例にしている。
【0088】
また、実線は基準記録率におけるガンマ特性に対応し、点線は抑制記録率におけるガンマ特性に対応し、一点破線は促進記録率におけるガンマ特性に対応する。すなわち、画像処理部91は、抑制ノズルの領域に対応する階調値(画像情報)に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように一点破線のグラフを用いて実階調値を導出し、促進ノズルの領域に対応する階調値に応じて基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように点線のグラフを用いて実階調値を導出する。
【0089】
これにより片方のノズルは記録率が促進されもう片方では抑制される。またマクロで見るとガンマ特性は基準記録率に対応する実線のグラフとなるので濃度は保持される。
【0090】
なお、画質の劣化としてムラが最も見えるのは中間調からシャドウよりである。図10ではそれらの階調において抑制記録率と促進記録率が大きく異なるように設定実階調値が設定されている。このように最もムラが目立つ階調(中間調)にて、抑制記録率のガンマ特性と、促進記録率のガンマ特性の差が最大となるように設定することが望ましい。シャドウ部、及びハイライト部では設定実階調値がほぼ同じであるが、画質の劣化としてムラが最も見えるのは中間調であるので問題となりにくい。
【0091】
次に、誤差拡散法における閾値を、抑制記録率となる閾値と、促進記録率となる閾値とを用いて前記画像情報を誤差拡散法によりハーフトーン処理することによりヘッド64を制御する内容について説明する。
【0092】
画像処理部91は、図11に示される閾値を用いて誤差拡散法により画像情報をハーフトーン処理するようにする。図11は、横軸が入力階調値を示し、縦軸が閾値を示している。このグラフでは、階調値が0〜255の場合を例にしている。
【0093】
また、実線は基準記録率における閾値に対応し、一点破線は抑制記録率における閾値に対応し、点線は促進記録率における閾値に対応する。誤差拡散法の場合、閾値が小さいほど他の画素に分散されないため、記録率は促進され、閾値が高いほど他の画素に分散するため、記録率は抑制される。
【0094】
すなわち、画像処理部91は、抑制ノズルの領域に対応する階調値(画像情報)に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように点線のグラフに示される閾値を用い、促進ノズルの領域に対応する階調値に応じて基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように一点破線のグラフの閾値を用い誤差拡散法によりハーフトーン処理を行なうようにする。
【0095】
図11では二種類の閾値を用いたが、閾値の数はさらに増やしてもよい。例えば二種類の抑制パラメータを使っても良いし、一部については基準値を使っても良い。
【符号の説明】
【0096】
10 画像形成装置
16 画像形成部
36 画像形成ドラム
64 ヘッド
66 ヘッドユニット
84 システムコントローラ
89 プリント制御部
91 画像処理部
92 ヘッドドライバ
151 ノズル
153 インク室ユニット
200 流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に係り、特に1つの流路から複数の液室に液滴を供給する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク室の圧力を上げることでインク滴を吐出するインクジェットプリンタは、近傍ノズルの同時吐出の有無により、吐出インク量ならびに吐出速度が変化すること(以下クロストークと呼ぶ)が知られており、これらはインク室のインク量減少に伴い生じるメニスカス力、または吐出に伴う圧力波に起因する。吐出速度の変化例を図12に示す。図12には、1つの流路と、その流路からインクが供給されることでインク滴を吐出する複数のノズルが示されている。黒いノズルを基準として、ノズル間距離が近いほど、同図に示されるように速度誤差が大きいことが示されている。
【0003】
近年、インクジェットプリンタに対する高速化、低電力化、高画質化の要求から、二次元的にノズルが配列されたラインヘッドを使ったシングルパスによるインクジェットプリンタが注目されているが、これらのインクジェットプリンタは上記クロストークの影響を受けやすい。上述したクロストークは特に高濃度部で濃度ムラ、スジムラ、ジャギーとして画像上に姿を現し、画質の劣化要因となる。
【0004】
クロストークによる濃度ムラを抑制するものとして、特許文献1、2が提案されている。特許文献1では同時に多数のインク滴が吐出された際に生じる濃度ムラ、すなわち上記課題に対するムラ補正方法が開示されており、吐出誤差のうち滴量誤差については、インク通路の容積変化にフィードバックをかけることにより画質を向上させる方法が示されている。
【0005】
一方、特許文献2では主に時間的に同一ノズルからインク滴が頻繁に吐出される際に生じる滴量の減少により生じる濃度ムラ補正方法が開示されている。この文献によると作成した印字データより背圧変動を予測し、予測した背圧から濃度変動を予測しその変動をもとに印字データを補正する。
【0006】
また、隣接ノズルの同時吐出を抑制するというアイデアがあり、特許文献3では、シリアル方式の印刷機においてマスクパターンを使用してスキャン内で隣接ノズルの同時吐出を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−218823号公報
【特許文献2】特開2007−237477号公報
【特許文献3】特開2003−266666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、同機構を盛り込むことは製造コストの高騰につながる。また滴量をコントロールすることは一般に困難であるため、濃度ムラを消しきることができないことが問題である。
【0009】
また、特許文献2に開示された方法だと補正後の印字データによってもメニスカス変動が生じるはずであり、その濃度ムラを予測するためには、さらにもう一度予測をしなおす必要があり実用上困難である。また特許文献1、2ともに速度変動によって生じるジャギーなどには対応できない。更に特許文献3に開示された技術はシングルパス方式の印刷機の場合は適用できない。
【0010】
このように、従来の技術では、クロストークによる濃度ムラ、スジムラ、ジャギーのうちの少なくとも1つを含む画像劣化を簡易に抑制できないという問題点があった。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑み、クロストークの発生を抑制する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される記録媒体に液滴を吐出する吐出口を備えた液室と、複数の前記液室の各々に液体を供給する流路とを備えた液滴吐出ヘッドと、同一流路における少なくとも一部の複数の吐出口を、前記記録媒体に形成する画像を示す画像情報に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように液滴を吐出する吐出口と、前記基準記録率と比較して促進した促進記録率となるように液滴を吐出する吐出口とが近接するように前記液滴吐出ヘッドを制御する制御手段と、を有する。
【0013】
請求項1の発明によれば、同一流路における少なくとも一部の複数の吐出口を、前記記録媒体に形成する画像を示す画像情報に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように液滴を吐出する吐出口と、前記基準記録率と比較して促進した促進記録率となるように液滴を吐出する吐出口とが近接するように前記液滴吐出ヘッドを制御する。これにより近接吐出口からの同時吐出が抑制されるので、クロストークの発生を抑制することができる。
【0014】
請求項2の発明は、前記制御手段は、前記抑制記録率となるガンマ特性と、前記促進記録率となるガンマ特性とを用いて前記画像情報をガンマ補正することにより前記液滴吐出ヘッドを制御する。
【0015】
請求項2の発明によれば、画像情報を吐出を抑制する吐出口については通常記録率より低いガンマ特性を、吐出を促進する吐出口については高いガンマ特性を用いてガンマ変換することにより、一方の吐出口の記録率を上げ、もう片方を下げることができ、近接する吐出口からの同時吐出を抑制することができるので、クロストークの発生を抑制することができる。
【0016】
請求項3の発明は、前記制御手段は、誤差拡散法における閾値を、前記抑制記録率となる閾値と、前記促進記録率となる閾値とを用いて前記画像情報を誤差拡散法によりハーフトーン処理することにより前記液滴吐出ヘッドを制御する。
【0017】
請求項3の発明によれば、画像情報を誤差拡散法によりハーフトーン処理する際に抑制と促進の少なくとも2種類の閾値を近接する吐出口について用いることにより、該吐出口での同時吐出が抑制できるので、クロストークの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クロストークの発生を抑制する画像形成装置を提供することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す断面側面図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係るヘッドの構造例を示す平面透視図である。
【図4】実施形態に係るヘッドの構造例の拡大図である。
【図5】実施形態に係る液滴吐出素子の立体的構成を示す断面図である。
【図6】実施形態に係るヘッドのノズル配列の一例を示す概略図である。
【図7】流路と流路とノズル配置例を示す図である。
【図8】用紙とノズルとの対応を示す図である。
【図9】用紙と抑制ノズル及び促進ノズルとの対応を示す図である。
【図10】ガンマ特性を示す図である。
【図11】誤差拡散法における閾値を示す図である。
【図12】速度誤差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、インク滴により画像を形成する所謂インクジェットプリンタ(以下、「画像形成装置」という。)に適用した場合について説明する。また、画像を形成することを、印刷する、と表現することがある。
【0021】
まず、本実施の形態に係る画像形成装置10の全体構成について説明する。
【0022】
[画像形成装置]
図1に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置10には、記録媒体としての枚葉紙(以下、「用紙」という)の搬送方向上流側に、用紙を給紙搬送する給紙搬送部12が設けられている。この給紙搬送部12の下流側には、用紙の搬送方向に沿って、用紙の記録面(画像形成面)に処理液を塗布する処理液塗布部14、用紙の記録面に画像を形成する画像形成部16、記録面に形成された画像を乾燥させるインク乾燥部18、乾燥した画像を用紙に定着させる画像定着部20、画像が定着した用紙を排出する排出部21が設けられている。
【0023】
以下、各処理部について説明する。
【0024】
(給紙搬送部)
給紙搬送部12には、用紙が積載される積載部22が設けられており、積載部22の用紙の搬送方向下流側(以下、「用紙の搬送方向」を省略する場合もある)には、該積載部22に積載された用紙を一枚ずつ給紙する給紙部24が設けられている。この給紙部24によって給紙された用紙は、複数のローラ26対で構成された搬送部28を経て、処理液塗布部14へ搬送される。
【0025】
(処理液塗布部)
処理液塗布部14では、処理液塗布ドラム30が回転可能に配設されている。この処理液塗布ドラム30には、用紙の先端部を挟持して用紙を保持する保持部材32が設けられており、該保持部材32を介して、処理液塗布ドラム30の表面に用紙を保持した状態で、処理液塗布ドラム30の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
【0026】
なお、後述する中間搬送ドラム34、画像形成ドラム36、インク乾燥ドラム38、および定着ドラム40についても、処理液塗布ドラム30と同様に保持部材32が設けられている。そして、この保持部材32によって、上流側のドラムから下流側のドラムへの用紙の受け渡しが行われる。
【0027】
処理液塗布ドラム30の上部には、処理液塗布ドラム30の周方向に沿って、処理液塗布装置42および処理液乾燥装置44が配設されており、処理液塗布装置42によって、用紙の記録面に処理液が塗布され、処理液乾燥装置44によって、該処理液が乾燥される。
【0028】
ここで、処理液はインクと反応して色材(顔料)を凝集し、色材(顔料)と溶媒を分離促進する効果を有している。処理液塗布装置42には、処理液が貯留している貯留部46が設けられており、グラビアローラ48の一部が処理液に浸されている。
【0029】
このグラビアローラ48にはゴムローラ50が圧接して配置されており、該ゴムローラ50が用紙の記録面(表面)側に接触して処理液が塗布される。また、グラビアローラ48にはスキージ(図示省略)が接触しており、用紙の記録面に塗布する処理液塗布量を制御する。
【0030】
処理液膜厚はヘッド打滴の液滴より十分小さいことが理想である。例えば2plの打滴量の場合、ヘッド打滴の液滴の平均直径は15.6μmであり、処理液膜厚が厚い場合、インクドットは用紙の記録面と接触することなく処理液内で浮遊する。2plの打滴量で着弾ドット径を30μm以上得るには処理液膜厚を3μm以下にすることが好ましい。
【0031】
一方、処理液乾燥装置44には、熱風ノズル54および赤外線ヒータ56(以下、「IRヒータ56」という)が処理液塗布ドラム30の表面に近接して配設されている。この熱風ノズル54およびIRヒータ56により、処理液中の水などの溶媒を蒸発させ、固体もしくは薄膜処理液層を用紙の記録面側に形成する。処理液乾燥工程で処理液を薄層化することで、画像形成部16でインク打滴したドットが用紙表面と接触して必要なドット径が得られると共に、薄層化した処理液と反応し色材凝集して用紙表面に固定する作用が得られやすい。
【0032】
このようにして、処理液塗布部14で記録面に処理液が塗布、乾燥された用紙は、処理液塗布部14と画像形成部16の間に設けられた中間搬送部58へ搬送される。
【0033】
(中間搬送部)
中間搬送部58には、中間搬送ドラム34が回転可能に設けられており、中間搬送ドラム34に設けられた保持部材32を介して、中間搬送ドラム34の表面に用紙を保持し、中間搬送ドラム34の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
【0034】
(画像形成部)
画像形成部16には、搬送手段に対応する画像形成ドラム36が回転可能に設けられており、画像形成ドラム36に設けられた保持部材32を介して、画像形成ドラム36の表面に用紙を保持し、画像形成ドラム36の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
【0035】
画像形成ドラム36の上部には、画像形成ドラム36の表面に近接して、搬送手段により搬送される用紙にインク滴を吐出するノズル(吐出口)が2次元状に設けられたシングルパス方式のインクジェットラインヘッド64(以下、「ヘッド64」という。)を有するヘッドユニット66が配設されている。このヘッドユニット66では、少なくとも基本色であるY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)のヘッド64が画像形成ドラム36の周方向に沿って配列され、処理液塗布部14で用紙の記録面に形成された処理液層上に各色の画像を形成する。
【0036】
処理液はインク中に分散する色材(顔料)とラテックス粒子を処理液に凝集する効果を持たせ、用紙上で色材流れなど発生しない凝集体を形成する。インクと処理液の反応の一例として、処理液内に酸を含有しPHダウンにより顔料分散を破壊し、凝集するメカニズムを用い色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避する。
【0037】
ヘッド64は、画像形成ドラム36に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図示省略)に同期して打滴を行うことで、高精度に着弾位置を決定すると共に、画像形成ドラム36の振れ、回転軸68の精度、ドラム表面速度に依存せず、打滴斑を低減することが可能となる。
【0038】
なお、ヘッドユニット66は画像形成ドラム36の上部から退避可能とされており、ヘッド64のノズル面清掃や増粘インク排出などのメンテナンス動作は、該ヘッドユニット66を画像形成ドラム36の上部から退避させることで実施される。
【0039】
記録面に画像が形成された用紙は、画像形成ドラム36の回転によって、画像形成部16とインク乾燥部18の間に設けられた中間搬送部70へ搬送されるが、中間搬送部70については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0040】
(インク乾燥部)
インク乾燥部18には、インク乾燥ドラム38が回転可能に設けられており、インク乾燥ドラム38の上部には、インク乾燥ドラム38の表面に近接して、熱風ノズル72およびIRヒータ74が複数配設されている。この熱風ノズル72およびIRヒータ74による温風によって、用紙の画像形成部では、色材凝集作用により分離された溶媒が乾燥され、薄膜の画像層が形成される。
【0041】
温風は用紙の搬送速度によっても異なるが、通常は50℃〜70℃に設定されている。蒸発した溶媒はエアーと共に画像形成装置10の外部へ排出されるが、エアーは回収される。このエアーは、冷却器/ラジエータ等で冷却して液体として回収しても良い。
【0042】
記録面の画像が乾燥した用紙は、インク乾燥ドラム38の回転によって、インク乾燥部18と画像定着部20の間に設けられた中間搬送部76へ搬送されるが、中間搬送部76については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0043】
(画像定着部)
画像定着部20には、画像定着ドラム40が回転可能に設けられており、画像定着部20では、インク乾燥ドラム38上で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が加熱/加圧されて溶融し、用紙上に固着定着する機能を有する。
【0044】
画像定着ドラム40の上部には、画像定着ドラム40の表面に近接して、加熱ローラ78が配設されている。この加熱ローラ78は熱伝導率の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプが組み込まれており、該加熱ローラ78によって、ラテックスのTg温度以上の熱エネルギーが付与される。これにより、ラテックス粒子を溶融し、用紙上の凹凸に押し込み定着を行うと共に画像表面の凹凸をレベリングし光沢性を得ることを可能とする。
【0045】
加熱ローラ78の下流側には、定着ローラ80が設けられている。この定着ローラ80は画像定着ドラム40の表面に圧接した状態で配置され、画像定着ドラム40との間でニップ力を得るようにしている。このため、定着ローラ80又は画像定着ドラム40のうち、少なくとも一方は表面に弾性層を持ち、用紙に対して均一なニップ幅を持つ構成とする。
【0046】
以上のような工程により、記録面の画像が定着した用紙は、画像定着ドラム40の回転によって、画像定着部20の下流側に設けられた排出部21側へ搬送される。
【0047】
なお、本実施の形態では、画像定着部20について説明したが、インク乾燥部18で記録面に形成された画像を乾燥・定着させることができれば良いため、この画像定着部20は必ずしも必要ではない。
【0048】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置10のシステム構成を説明する。
【0049】
同図に示されるように、画像形成装置10は、通信インタフェース83、システムコントローラ84、画像メモリ85、ROM86、モータドライバ87、ヒータドライバ88、ファン・モータドライバ81、プリント制御部89、画像バッファメモリ90、画像処理部91、ヘッドドライバ92等を備えている。
【0050】
通信インタフェース83は、ユーザが画像形成装置10に対して画像形成の指示等を行うため等に用いられるホスト装置99とのインタフェース部である。通信インタフェース83にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインタフェースやセントロニクスなどのパラレルインタフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0051】
ホスト装置99から送出された画像情報は通信インタフェース83を介して画像形成装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ85に記憶される。画像メモリ85は、通信インタフェース83を介して入力された画像情報を記憶する記憶手段であり、システムコントローラ84を通じて情報の読み書きが行われる。画像メモリ85は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0052】
システムコントローラ84は、中央演算処理装置(CPU)およびその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って画像形成装置10の全体を制御する制御装置として機能すると共に、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ84は、通信インタフェース83、画像メモリ85、モータドライバ87、ヒータドライバ88、ファン・モータドライバ81等の各部を制御し、ホスト装置99との間の通信制御、画像メモリ85およびROM86の読み書き制御等を行うと共に、用紙搬送系のモータ93やIRヒータ56,74,72を制御する制御信号を生成する。なお、プリント制御部89に対しては、制御信号の他に、画像メモリ85に記憶された画像情報を送信する。
【0053】
また、ROM86には、システムコントローラ84のCPUが実行するプログラムおよび制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM86は、書き換え不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段を用いることが好ましい。
【0054】
画像メモリ85は、画像情報の一時記憶領域として利用されると共に、プログラムの展開領域およびCPUの演算作業領域としても利用される。
【0055】
モータドライバ87は、システムコントローラ84からの指示に従って用紙搬送系のモータ93を駆動するドライバ(駆動回路)である。また、ヒータドライバ88は、システムコントローラ84からの指示に従ってIRヒータ56,74,72を駆動するドライバである。
【0056】
また、ファン・モータドライバ81は、システムコントローラ84からの指示に従って、各ファン・モータ73およびファン・モータ結線回路71を駆動するドライバである。
【0057】
一方、プリント制御部89は、CPUおよびその周辺回路等から構成され、システムコントローラ84の制御に従い、画像処理部91と協働して画像メモリ85内の画像情報から吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正等の処理を行うと共に、生成したインク吐出データをヘッドドライバ92に供給してヘッドユニット66の吐出駆動を制御する。
【0058】
プリント制御部89には、プリント制御部89のCPUが実行するプログラムおよび制御に必要な各種データなどが格納されているROM94が接続されている。ROM94もまた書き換え不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段を用いることが好ましい。
【0059】
画像処理部91は、入力された画像情報からインク色別のドット配置データを生成するものであり、入力画像情報に対してハーフトーニング処理(中間階調処理)を行って高品質のドット位置を決定する。
【0060】
なお、図2において、画像処理部91は、システムコントローラ84やプリント制御部89とは別個のものとして図示しているが、例えば、画像処理部91は、システムコントローラ84或いはプリント制御部89に含まれて、その一部を構成するようにしてもよい。
【0061】
また、プリント制御部89は、画像処理部91で生成されたドット配置データに基づいてインクの吐出データ(ヘッド64のノズルに対応するアクチュエータの制御信号)を生成するインク吐出データ生成機能と、駆動波形生成機能とを有している。
【0062】
インク吐出データ生成機能にて生成されたインク吐出データはヘッドドライバ92に与えられ、ヘッドユニット66のインク吐出動作が制御される。
【0063】
駆動波形生成機能は、ヘッド64の各ノズルに対応したアクチュエータを駆動するための駆動信号波形を生成する機能であり、当該駆動波形生成機能にて生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ92に供給される。なお、駆動波形生成機能にて生成される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0064】
プリント制御部89には画像バッファメモリ90が備えられており、プリント制御部89における画像情報処理時に画像情報やパラメータ等のデータが画像バッファメモリ90に一時的に格納される。なお、図2において画像バッファメモリ90はプリント制御部89に付随する態様で示されているが、画像メモリ85と兼用することも可能である。
【0065】
なお、プリント制御部89とシステムコントローラ84とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0066】
図3はヘッド64の構造例を示す平面透視図であり、図4はその一部の拡大図である。また、図5は1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室(液室)ユニット)の立体的構成を示す断面図(図4中の33−33線に沿う断面図)である。
【0067】
記録紙116上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド64におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド64は、図3、図4に示したように、ノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0068】
なお、記録紙116の送り方向と交差する方向に記録紙116の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。
【0069】
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており(図3、図4参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0070】
図5に示したように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
【0071】
圧力室152の一部の面(図5において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0072】
画像情報から生成さるドット配置データに応じて各ノズル151に対応したアクチュエータ158の駆動を制御することにより、ノズル151からインク滴を吐出させることができる。図1で説明したように、記録媒体たる記録紙116を一定の速度で搬送方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル151のインク吐出タイミングを制御することによって、記録紙116上に所望の画像を記録することができる。
【0073】
上述した構造を有するインク室ユニット153を図6に示す如く搬送方向と交差する交差方向に沿う行方向及び交差方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0074】
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0075】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示した例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ158の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0076】
以下、同一流路における少なくとも一部の複数のノズル151を、用紙に印刷する画像を示す画像情報に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるようにインク滴を吐出するノズル151と、基準記録率と比較して促進した促進記録率となるようにインク滴を吐出するノズル151とが近接するようにヘッド64を制御する内容について説明する。なお、以下の説明では、基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるようにインク滴を吐出するノズルを抑制ノズル、基準記録率と比較して促進した促進記録率となるようにインク滴を吐出するノズルを促進ノズルと表現する。
【0077】
また、記録率はノズルから吐出されたインク滴により印刷された面積の占める割合である。基準記録率は、本実施の形態を適用しない場合に適用される記録率を示している。この基準記録率は、画像形成装置の動作環境等により個々の画像形成装置毎に予め定められている。抑制記録率は、基準記録率と比較して記録率を抑制させた記録率であり、促進記録率は、基準記録率と比較して記録率を促進させた記録率である。
【0078】
記録率を抑制すると、ノズルからインク滴が吐出されることが減少し、促進するとノズルからインク滴が吐出されることが増加する。抑制ノズルからインク滴が吐出する確率をpとし、促進ノズルからインク滴が吐出される確率をqとしたとき同時に吐出される確率はpqである。濃度を一定に保つにはp+q=一定であることが望ましいがこの条件下では同時に吐出される確率pqはp=qの時最大となるので、抑制・促進ノズルの吐出率をq>pと設定しかつ、同一流路内の近接するノズルを抑制・促進ノズルと設定すると、同一流路内で近接するノズルが同時に吐出する確率が小さくなる。すると図12で示されるように、同一流路内で同時に吐出されるノズル間の距離が長くなるので、クロストークの発生を抑制することができる。
【0079】
次に、抑制ノズルと促進ノズルの配置例を流路とノズル配置例が示された図7を用いて説明する。同図(A)はノズル配置例を示し、同図(B)は特に一つの流路に着目した配置を示している。
【0080】
同図(A)には、直線で示された5つの流路200と、矩形で示された複数のノズルとが示されている。各流路200には、図において接触している流路からインクが供給されるノズルが5個ずつ配置されている。そして、流路には左から番号が付されている。また、同図に示すノズル配置において、同一流路からインクが供給されるノズルは、そのノズルから右方向に1つずれ、縦方向に4つずらした位置か、その逆の位置に互いに存在するようになっている。なおノズル配置は上記例によらない。上記例では2次元的にノズルが配列されているが、1次元的に配列されたものでも良い。
【0081】
このうちの2番目の流路200を描いたのが同図(B)である。この流路において、ノズルAを抑制ノズルとし、ノズルBを促進ノズルとする。このように抑制ノズルと促進ノズルとを交互に並べることで、隣り合うノズル同士が同時にインク滴を吐出する確率を低減することができるため、クロストークの発生を抑制することができる。なお、抑制ノズルと促進ノズルとが交互に並ぶように制御する対象は、全ノズルでも良いし、特定の流路からインクが供給されるノズルでも良いし、更に例えば流路の中間付近のノズルのみのように一部のノズルであっても良い。
【0082】
以下では、上記図7(A)に示されるノズル配置例の場合に全ノズルを抑制・もしくは促進ノズルに指定する例を示す。本ノズル配列例の場合、図8に示されるようにインク滴が各ノズルから吐出される。図8は、用紙上の各画素とノズルとの対応を示す図である。同図に示される矩形がノズルから吐出されたインク滴が着弾する領域を示し、矩形内の番号は吐出タイミングを示している。すなわち、同じ数字の領域には同じタイミングで液滴が吐出される。
【0083】
図8に示したノズルと用紙上の各画素との対応がある場合、図9に示されるように抑制ノズルと促進ノズルとを用紙に対応させるようにしてもよい。図9は、各画素と抑制ノズル及び促進ノズルとの対応を示す図である。同図に示されるように、領域を白色と灰色で示されるように抑制ノズルと促進ノズルとに対応させる。
【0084】
同図では吐出タイミング(用紙送り方向 )ごとに促進ノズルと抑制ノズルを入れ替えることで用紙送り方向について促進画素と抑制画素が均等に配置されている。また用紙送り方向に直交する方向についても促進・抑制画素が均等に配置されている。このように促進画素と抑制画素は均等に配置されることが望ましい。促進画素は濃度が高く、抑制画素は濃度が低くなる傾向にあるが、このように均等配置することで各ノズルの記録率を変えた際の濃度むらを低減することができる。
【0085】
またこの配置では、同一タイミングにおいては隣接するノズルが抑制・あるいは促進と設定されているので同一流路上の隣り合うノズル同士が同時に吐出する確率を低減することができる。
【0086】
なお本例では抑制ノズルと促進ノズルを交互に並べたが、抑制ノズルと促進ノズルは近接しておればよく、隣接する必要はない。例えば同一流路内にて「基準・促進・基準:抑制・基準・促進」としても良い。この場合においても近接ノズルの同時吐出は抑制される。また本例では促進と基準を周期的に配置したが、これも周期的である必要はない。
【0087】
次に、抑制記録率となるガンマ特性と、促進記録率となるガンマ特性とを用いて画像情報をガンマ補正することによりヘッド64を制御する内容について説明する。上述したように、画像処理部91は、入力された画像情報に対してハーフトーニング処理を行うが、その前に、図10に示されるガンマ特性を用いてガンマ補正を行なう。図10は、横軸が入力階調値を示し、縦軸が実際に印刷する場合に用いられる実階調値を示している。このグラフでは、階調値が0〜255の場合を例にしている。
【0088】
また、実線は基準記録率におけるガンマ特性に対応し、点線は抑制記録率におけるガンマ特性に対応し、一点破線は促進記録率におけるガンマ特性に対応する。すなわち、画像処理部91は、抑制ノズルの領域に対応する階調値(画像情報)に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように一点破線のグラフを用いて実階調値を導出し、促進ノズルの領域に対応する階調値に応じて基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように点線のグラフを用いて実階調値を導出する。
【0089】
これにより片方のノズルは記録率が促進されもう片方では抑制される。またマクロで見るとガンマ特性は基準記録率に対応する実線のグラフとなるので濃度は保持される。
【0090】
なお、画質の劣化としてムラが最も見えるのは中間調からシャドウよりである。図10ではそれらの階調において抑制記録率と促進記録率が大きく異なるように設定実階調値が設定されている。このように最もムラが目立つ階調(中間調)にて、抑制記録率のガンマ特性と、促進記録率のガンマ特性の差が最大となるように設定することが望ましい。シャドウ部、及びハイライト部では設定実階調値がほぼ同じであるが、画質の劣化としてムラが最も見えるのは中間調であるので問題となりにくい。
【0091】
次に、誤差拡散法における閾値を、抑制記録率となる閾値と、促進記録率となる閾値とを用いて前記画像情報を誤差拡散法によりハーフトーン処理することによりヘッド64を制御する内容について説明する。
【0092】
画像処理部91は、図11に示される閾値を用いて誤差拡散法により画像情報をハーフトーン処理するようにする。図11は、横軸が入力階調値を示し、縦軸が閾値を示している。このグラフでは、階調値が0〜255の場合を例にしている。
【0093】
また、実線は基準記録率における閾値に対応し、一点破線は抑制記録率における閾値に対応し、点線は促進記録率における閾値に対応する。誤差拡散法の場合、閾値が小さいほど他の画素に分散されないため、記録率は促進され、閾値が高いほど他の画素に分散するため、記録率は抑制される。
【0094】
すなわち、画像処理部91は、抑制ノズルの領域に対応する階調値(画像情報)に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように点線のグラフに示される閾値を用い、促進ノズルの領域に対応する階調値に応じて基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように一点破線のグラフの閾値を用い誤差拡散法によりハーフトーン処理を行なうようにする。
【0095】
図11では二種類の閾値を用いたが、閾値の数はさらに増やしてもよい。例えば二種類の抑制パラメータを使っても良いし、一部については基準値を使っても良い。
【符号の説明】
【0096】
10 画像形成装置
16 画像形成部
36 画像形成ドラム
64 ヘッド
66 ヘッドユニット
84 システムコントローラ
89 プリント制御部
91 画像処理部
92 ヘッドドライバ
151 ノズル
153 インク室ユニット
200 流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される記録媒体に液滴を吐出する吐出口を備えた液室と、複数の前記液室の各々に液体を供給または回収する流路とを備えた液滴吐出ヘッドと、
同一流路における少なくとも一部の複数の吐出口を、前記記録媒体に形成する画像を示す画像情報に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように液滴を吐出する吐出口と、前記基準記録率と比較して促進した促進記録率となるように液滴を吐出する吐出口とが近接するように前記液滴吐出ヘッドを制御する制御手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記抑制記録率となるガンマ特性と、前記促進記録率となるガンマ特性とを用いて前記画像情報をガンマ補正することにより前記液滴吐出ヘッドを制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、誤差拡散法における閾値を、前記抑制記録率となる閾値と、前記促進記録率となる閾値とを用いて前記画像情報を誤差拡散法により画像をハーフトーン処理することにより前記液滴吐出ヘッドを制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される記録媒体に液滴を吐出する吐出口を備えた液室と、複数の前記液室の各々に液体を供給または回収する流路とを備えた液滴吐出ヘッドと、
同一流路における少なくとも一部の複数の吐出口を、前記記録媒体に形成する画像を示す画像情報に応じて予め定められた基準記録率と比較して抑制した抑制記録率となるように液滴を吐出する吐出口と、前記基準記録率と比較して促進した促進記録率となるように液滴を吐出する吐出口とが近接するように前記液滴吐出ヘッドを制御する制御手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記抑制記録率となるガンマ特性と、前記促進記録率となるガンマ特性とを用いて前記画像情報をガンマ補正することにより前記液滴吐出ヘッドを制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、誤差拡散法における閾値を、前記抑制記録率となる閾値と、前記促進記録率となる閾値とを用いて前記画像情報を誤差拡散法により画像をハーフトーン処理することにより前記液滴吐出ヘッドを制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−234551(P2010−234551A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82374(P2009−82374)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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