説明

画像形成装置

【課題】用紙(記録シート)に対して供給ローラを強く押し付けることで、用紙を良好に搬送させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置は、供給ローラ110を上下に移動可能に支持する支持機構140と、支持機構140に作用して供給ローラ110を記録シートに当接させる駆動機構150と、支持機構140と手差しトレイ12とを連結する連結機構160を備える。連結機構160は、支持機構140に対して供給ローラ110を下げる方向に付勢力を与える弾性部材(コイルバネ161)と、手差しトレイ12を開く動作に連動して弾性部材を変形させ、手差しトレイ12を閉める動作に連動して弾性部材の変形を解除させる作用部(アーム部材162、カム部材163)と、手差しトレイ12を開くときに作用部と当接することで弾性部材の変形を規制する規制部材165とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手差しトレイ上に載置した記録シートを装置本体内に向けて搬送する供給ローラを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙(記録シート)が載置される手差しトレイと、手差しトレイ上の用紙を装置本体内に搬送する供給ローラと、供給ローラを上下動可能に支持する支持機構と、支持機構を駆動させる駆動機構とを備えた画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
具体的に、この技術では、駆動機構が、支持機構を介して供給ローラを常時上方の待機位置に押さえておき、用紙を1枚給紙するたびに押さえを解除することで、供給ローラの自重により供給ローラを下方に移動させ、用紙に供給ローラを接触させる。これにより、供給ローラと接触した用紙が、供給ローラの回転によって、装置本体内に搬送されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−315797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来技術では、供給ローラの自重で供給ローラを下げているだけなので、用紙の搬送をより良好に行うためには、用紙に対して供給ローラを押し付ける力を強くすることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、用紙(記録シート)に対して供給ローラを強く押し付けることで、用紙を良好に搬送させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、装置本体に揺動可能に支持される手差しトレイと、前記手差しトレイ上に載置した記録シートを前記装置本体内に向けて搬送する供給ローラと、前記供給ローラを上下に移動可能に支持する支持機構と、記録シートを装置本体内に向けて搬送する際に、前記支持機構に作用して前記供給ローラを上方の待機位置から下方に移動させて記録シートに当接させる駆動機構と、を備えた画像形成装置であって、前記支持機構と前記手差しトレイとを連結する連結機構を備え、前記連結機構は、弾性変形可能であり、かつ、前記支持機構に対して前記供給ローラを下げる方向に付勢力を与える弾性部材と、前記手差しトレイを開く動作に連動して前記弾性部材を変形させて前記付勢力を発生させ、前記手差しトレイを閉める動作に連動して前記弾性部材の変形を解除させる作用部と、前記手差しトレイを開くときに前記作用部と当接して当該作用部の動きを規制することで、前記弾性部材の変形を規制する規制部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、手差しトレイを開くと、弾性部材が変形して支持機構が供給ローラを下げる方向に付勢されるので、この付勢力によって供給ローラを記録シートに強く押し当てることができる。また、手差しトレイを閉めたときに弾性部材の変形が解除されるので、弾性部材の耐久性を向上させることができる。さらに、規制部材で弾性部材の変形を規制するので、記録シートに供給ローラを押し付ける力を一定にすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、弾性部材の付勢力によって供給ローラを記録シートに強く押し当てることができるので、記録シートを良好に搬送させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタを示す断面図である。
【図2】手差しトレイを開いた状態を示す断面図である。
【図3】手差し給紙機構を示す斜視図である。
【図4】通常時の駆動機構を示す説明図(a)と、ラッチ機構が外れたときの駆動機構を示す説明図(b)である。
【図5】連結機構の動作を示す説明図(a),(b)である。
【図6】連結機構の変形例を示す説明図(a),(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、画像形成装置の一例としてのカラープリンタの全体構成を説明した後、本発明の特徴部分の詳細を説明することとする。
【0012】
以下の説明において、方向は、カラープリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側(手前側)」、紙面に向かって右側を「後側(奥側)」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0013】
図1に示すように、カラープリンタ1は、装置本体10内に、記録シートの一例としての用紙Pを供給する給紙部20と、給紙された用紙Pに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Pを排出する排紙部90とを備えている。
【0014】
給紙部20は、装置本体10内の下部に設けられ、装置本体10に着脱自在に装着される給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Pを画像形成部30へ搬送する用紙供給機構22を主に備えている。給紙部20では、給紙トレイ21内の用紙Pが、用紙供給機構22によって一枚ずつ分離されて画像形成部30に供給される。
【0015】
画像形成部30は、4つのLEDユニット40と、4つのプロセスカートリッジ50と、転写ユニット70と、定着装置80とから主に構成されている。
【0016】
LEDユニット40は、感光ドラム53を露光するべく、複数のLEDを備えて構成されている。
プロセスカートリッジ50は、感光ドラム53や、符号を省略して示す公知の帯電器、現像ローラ、トナー収容室などを備えて構成されている。
【0017】
転写ユニット70は、給紙部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられ、駆動ローラ71、従動ローラ72、ベルト73および4つの転写ローラ74を備えている。
定着装置80は、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置され加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0018】
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光ドラム53の表面が、帯電器により一様に帯電された後、各LEDユニット40で露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光ドラム53上に画像データに基づく静電潜像が形成される。その後、静電潜像に現像ローラよりトナーが供給されることで、感光ドラム53上にトナー像が担持される。
【0019】
次に、ベルト73上に供給された用紙Pが各感光ドラム53と各転写ローラ74との間を通過することで、各感光ドラム53上に形成されたトナー像が用紙P上に転写される。そして、用紙Pが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙P上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0020】
排紙部90は、複数対の搬送ローラ91と、一対の排紙ローラ92とを主に備えている。そして、この排紙部90では、定着装置80から出た用紙Pが、複数対の搬送ローラ91と一対の排紙ローラ92とで搬送されて、排出トレイ11に排出される。
【0021】
また、装置本体10の前側には、下部が装置本体10に揺動可能に支持される手差しトレイ12と、手差し給紙機構100とが設けられている。手差し給紙機構100は、手差しトレイ12上に載置した用紙Pを装置本体10内に向けて搬送する供給ローラ110と、供給ローラ110から用紙Pが重なった状態で送られてきた際に、重なった用紙Pを1枚ずつに分離する分離ローラ120および分離パッド130を主に備えている。なお、手差し給紙機構100の詳細については、後で説明する。
【0022】
そして、この手差し給紙機構100では、図2に示すように、略水平状態に倒された手差しトレイ12上に用紙Pを載せた状態で、手差しトレイ12上の用紙Pの印字を実行する指令が入力されると、供給ローラ110が一旦下がって用紙Pに接触する。このように用紙Pと接触した供給ローラ110が回転することで、最上位に位置する用紙Pが分離ローラ120等を介して、装置本体10内の画像形成部30に供給される。なお、1枚の用紙Pを送った後は、供給ローラ110は上方の待機位置まで戻され、次の指令が入力されるまで、この待機位置で保持される。
【0023】
<手差し給紙機構の構造>
次に、手差し給紙機構100の構造について詳細に説明する。
図3に示すように、手差し給紙機構100は、支持機構140と、駆動機構150と、連結機構160とを主に備えて構成されている。
【0024】
支持機構140は、供給ローラ110を上下に移動可能に支持する機構であり、主に、供給ローラ110および分離ローラ120を回転可能に支持する軸受部材170と、右端側(一端側)が軸受部材170と係合する長尺状の支持アーム180とを有している。
【0025】
軸受部材170は、下方に開口した容器状に形成されており、その内部には、供給ローラ110および分離ローラ120が回転可能に設けられているとともに、分離ローラ120から供給ローラ110へ駆動力を伝達するためのギア171が設けられている。そして、この軸受部材170は、分離ローラ120を中心に揺動可能となっており、その一部には、支持アーム180の右端側と係合する係合突起172が形成されている。
【0026】
支持アーム180は、第1アーム181と第2アーム182とが組み合わされることで構成されている。具体的に、第1アーム181の左側に形成された一対の孔183に、第2アーム182の右側に形成された一対の凸部184が嵌め合わされることで、長尺状の支持アーム180が構成されている。
【0027】
支持アーム180の中央部(詳しくは一対の凸部184の間)には、第1アーム181と第2アーム182とに貫通する貫通孔185が形成されている。そして、この貫通孔185が装置本体10に回転可能に取り付けられることで、支持アーム180が水平面内にて前後に揺動可能となっている。
【0028】
支持アーム180(第1アーム181)の右端側には、軸受部材170の係合突起172と係合する係合孔186が形成されている。これにより、支持アーム180の右端部が後方に揺動したときには、係合孔186の縁で係合突起172が後方に押されることで、軸受部材170が分離ローラ120を中心にして上方に揺動して、供給ローラ110が上昇するようになっている。また、これとは逆に、支持アーム180の右端部が前方に揺動したときには、係合孔186の縁で係合突起172が前方に押されることで、軸受部材170が分離ローラ120を中心にして下方に揺動して、供給ローラ110が下降するようになっている。
【0029】
支持アーム180(第2アーム182)の左端側には、後述する駆動機構150の保持アーム151と係合する保持用孔187と、後述する連結機構160が連結される鉤状のフック部188とが形成されている。
【0030】
駆動機構150は、用紙Pを装置本体10内に向けて搬送する際(手差し用の印字指令が入力されたとき)に、支持機構140に作用して供給ローラ110を上方の待機位置から下方に移動させて用紙Pに当接させる機構である。具体的に、駆動機構150は、図4(a)に示すように、保持アーム151、分離ローラ駆動ギア152、2段欠歯ギア153、ラッチ機構154およびトーションバネ155を主に備えて構成されている。なお、この図4においては、便宜上、各ギアをピッチ円で示す。
【0031】
保持アーム151は、上方および後方の2方向に延びる略L字状に形成されており、その屈曲部分が分離ローラ駆動ギア152の軸部521に相対回転可能に支持されている。そして、この保持アーム151は、通常時(手差し用の印字指令が入力されていないとき)において、その上端が支持アーム180の保持用孔187の前側の縁に係合するとともに、その後端が、2段欠歯ギア153の支持カム531の膨出部531Aに当接している。これにより、通常時において、供給ローラ110の自重等によって支持アーム180の左端部が後方に移動しようとしても、この移動が保持アーム151によって規制されている。
【0032】
そして、図4(b)に示すように、支持カム531が初期位置から回動することによって、保持アーム151から支持カム531の膨出部531Aが外れると、保持アーム151による規制が解除されて、支持アーム180の左端部が保持アーム151を揺動させつつ後方に移動するようになっている。
【0033】
分離ローラ駆動ギア152は、図3に示すように、分離ローラ120と一体回転するように、連結軸522を介して分離ローラ120に同軸に固定されている。
【0034】
2段欠歯ギア153は、図4(a)に示すように、前述した支持カム531と、始動カム532と、入力側欠歯ギア部533と、出力側欠歯ギア部534と、係合爪535とを備えて構成されている。なお、図4(a)では、便宜上、入力側欠歯ギア部533と出力側欠歯ギア部534に対応するピッチ円を異なる直径で描いている。
【0035】
始動カム532は、2段欠歯ギア153の左右方向内側の端面(支持カム531とは反対側の端面)に設けられており、図4(a)に示す通常時において、その先端部532Aでトーションバネ155を押し縮めた状態に維持している。入力側欠歯ギア部533は、全周の一部がギヤ歯となり、他部が欠歯となるギアであり、通常時において、欠歯部分が入力ギア13と対向している。ここで、入力ギア13には、装置本体10に設けられた図示せぬモータ(駆動源)から駆動力が伝達されるようになっている。
【0036】
出力側欠歯ギア部534は、全周の一部がギヤ歯となり、他部が欠歯となるギアであり、通常時において、欠歯部分が分離ローラ駆動ギア152と対向している。係合爪535は、入力側欠歯ギア部533と出力側欠歯ギア部534との間の外周面から径方向外側に突出するように形成されており、通常時において、ラッチ機構154のラッチアーム541と係合している。
【0037】
ラッチ機構154は、揺動可能なラッチアーム541と、ラッチアーム541の基端部を押し引きするソレノイド542とを備えて構成されている。
【0038】
以上のように構成される駆動機構150では、図4(a)に示す通常時においては、支持アーム180の左端部の後方への移動を、保持アーム151、2段欠歯ギア153およびラッチ機構154によって規制している。そして、この状態からソレノイド542を作動させることで、図4(b)に示すように、2段欠歯ギア153の係合爪535からラッチアーム541を外すと、トーションバネ155の付勢力により始動カム532が図示時計回りに所定量だけ押されて、2段欠歯ギア153が所定量だけ回動する。
【0039】
これにより、2段欠歯ギア153と一体に回動する支持カム531の膨出部531Aが保持アーム151から外れて、保持アーム151が揺動するとともに支持アーム180の左端部が後方へ移動する。また、この際、2段欠歯ギア153と一体に入力側欠歯ギア部533が回動して、入力側欠歯ギア部533のギア歯と入力ギア13とが噛み合う。
【0040】
これにより、モータによって回転する入力ギア13とともに2段欠歯ギア153が回動し始めることとなる。そして、2段欠歯ギア153が入力ギア13の駆動力により回動し始めてから所定時間後に、出力側欠歯ギア部534のギア歯と分離ローラ駆動ギア152とが噛み合って、装置本体10内のモータの駆動力が分離ローラ120および供給ローラ110に伝達される。
【0041】
そして、入力ギア13と入力側欠歯ギア部533の欠歯部分とが対向して入力ギア13からの駆動力の伝達が切れるまでの間において、支持カム531の膨出部531Aで保持アーム151の後端が持ち上げられて初期位置に戻されるとともに、始動カム532によってトーションバネ155が元の押し縮められた状態に戻される。さらに、係合爪535がラッチアーム541と再び係合する。以上により、駆動機構150が初期位置に復帰するようになっている。
【0042】
図3に示すように、連結機構160は、支持機構140と手差しトレイ12とを連結する機構であり、主に、弾性変形可能な弾性部材の一例としてのコイルバネ161と、作用部の一例としてのアーム部材162およびカム部材163と、紐164と、規制部材165とを有する。
【0043】
コイルバネ161は、その軸方向が前後方向に沿うように配置されており、前端が支持アーム180のフック部188に連結され、後端がアーム部材162の下端部162Bに連結されている。そして、このコイルバネ161は、アーム部材162によって後方に引っ張られることで、アーム部材162と支持アーム180との間で伸びるように変形して、支持アーム180の左端に対して後方に向かう付勢力を与えるようになっている。すなわち、コイルバネ161は、支持機構140に対して供給ローラ110を下げる方向に付勢力を与えている。
【0044】
アーム部材162は、略上下方向に延びる長尺の板状部材であり、その上端部162Aが装置本体10に回動可能に支持されることで、前述したコイルバネ161が連結された下端部162B(一端部)が前後に揺動可能となっている。また、アーム部材162の前端縁の下側部分には、カム部材163によって押圧されるフランジ部162Cが右側に突出するように形成されている。
【0045】
カム部材163は、装置本体10に回動可能に支持される回動軸163Aと、回動軸163Aに偏心した状態で固定されてアーム部材162を押圧可能な円板状の押圧部163Bと、回動軸163Aから径方向外側に延びる操作片163Cとを備えている。そして、このカム部材163は、操作片163Cが紐164を介して手差しトレイ12に連結されることで、手差しトレイ12の動きに連動して回動し、アーム部材162をコイルバネ161の付勢力に抗して押圧可能となっている。
【0046】
紐164は、布・麻・化学繊維などで形成される弛張可能な部材であり、一端がカム部材163の操作片163Cに連結され、他端が滑車190によって方向転換されて手差しトレイ12に連結されている。
【0047】
規制部材165は、手差しトレイ12を開くときにアーム部材162と当接して当該アーム部材162の動きを規制することで、コイルバネ161の変形を規制する部材であり、アーム部材162の下端部162Bの後方に配置されて、装置本体10に固定(もしくは一体に形成)されている。
【0048】
そして、このように構成される連結機構160は、図5(a)に示すように、まず、手差しトレイ12が閉じた状態においては、カム部材163でアーム部材162を後方に押さないように構成されている。すなわち、手差しトレイ12の閉塞時には、コイルバネ161は、弾性変形していない状態(もしくは、弾性変形の量が小さい状態)に保持されている。
【0049】
そして、手差しトレイ12を閉状態から開いていくと、カム部材163がアーム部材162を後方に押して、コイルバネ161が徐々に伸びていき、図5(b)に示すように、アーム部材162が規制部材165に当接したときに、コイルバネ161の変形が止められる。これにより、手差しトレイ12の開放時には、常に一定の付勢力が発生するようになっており、この付勢力が支持アーム180の左端部に後方に向けて付与される。
【0050】
すなわち、コイルバネ161は手差しトレイ12の自重によって変形した状態に維持され、変形したコイルバネ161が元に復帰しようとする付勢力が、支持機構140を介して供給ローラ110を用紙Pに押圧させる方向(下方)に働くようになっている。
【0051】
また、手差しトレイ12を開状態から閉じていくと、カム部材163に加わっていた手差しトレイ12の自重による力が弱まっていき、コイルバネ161の付勢力によってアーム部材162とともにカム部材163が前方に揺動する。これにより、図5(a)に示すように、アーム部材162とカム部材163が元の位置に戻って、コイルバネ161の変形が解除される。
【0052】
次に、手差し給紙機構100の作用について説明する。
手差しトレイ12を開放させると、図5(a),(b)に示すように、コイルバネ161が所定量だけ変形することにより、支持アーム180の左端部に対して後方に向かう所定の力が加わる。
【0053】
そして、この状態で、手差し用の印字指令が入力されると、図3に示す保持アーム151による保持が解除され、コイルバネ161の付勢力と供給ローラ110の自重によって、支持アーム180が回動して供給ローラ110が用紙Pに強く押し付けられる(図2参照)。
【0054】
その後は、図4(b)に示す入力ギア13、2段欠歯ギア153および分離ローラ駆動ギア152が互いに噛み合うことで、装置本体10内のモータから駆動力が分離ローラ120および供給ローラ110に伝達され、用紙Pが1枚だけ装置本体10内に供給される。そして、用紙Pの供給後は、保持アーム151が初期位置に復帰することで、保持アーム151で押される支持アーム180も初期位置まで回動して、供給ローラ110が元の待機位置に戻される。
【0055】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
手差しトレイ12を開くと、コイルバネ161が変形して支持機構140が供給ローラ110を下げる方向に付勢されるので、この付勢力によって供給ローラ110を用紙Pに強く押し当てることができる。また、手差しトレイ12を閉めたときにコイルバネ161の変形が解除されるので、コイルバネ161の耐久性を向上させることができる。さらに、規制部材165でコイルバネ161の変形を規制するので、用紙Pに供給ローラ110を押し付ける力を一定にすることができる。
【0056】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、作用部としてのアーム部材162およびカム部材163のうちアーム部材162に規制部材165を当接させることで、コイルバネ161の変形を規制しているが、本発明はこれに限定されず、カム部材163に規制部材を当接させることでコイルバネ161の変形を規制してもよい。
【0057】
また、前記実施形態において、カム部材163を常時初期位置(手差しトレイ12が閉位置のときの位置)に付勢するトーションバネなどの付勢部材をさらに設けてもよい。これによれば、カム部材163が、アーム部材162と支持アーム180の間のコイルバネ161とは別の付勢部材によって初期位置に戻されるので、カム部材163とアーム部材162をより確実に初期位置に戻すことができる。
【0058】
前記実施形態では、作用部としてアーム部材162およびカム部材163を採用したが、本発明はこれに限定されず、図6(a)に示すように、1本のアーム部材262のみを作用部として採用してもよい。なお、図6において、前記実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0059】
図6(a)に示すアーム部材262は、コイルバネ161に連結される下端部262A(一端部)と、紐164が連結されて手差しトレイ12の自重による力を受ける上端部262B(他端部)とを有している。そして、下端部262Aと上端部262Bとの間の部分が装置本体10に対して揺動可能に支持されている。
【0060】
この構造によれば、前記実施形態のようなカム部材163を設ける必要がないので、装置の簡易化を図ることができる。
【0061】
前記実施形態では、カム部材163と手差しトレイ12とを連結させて連動させる部材として紐164を採用したが、本発明はこれに限定されず、金属製のワイヤ、複数のギヤ、ピニオン・ラック機構などを採用してもよい。
【0062】
前記実施形態では、上下に揺動する軸受部材170と前後に揺動する支持アーム180とを組み合わせて支持機構140を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えば上下に揺動するアームの先端で供給ローラを回転可能に支持する機構を支持機構として採用してもよい。また、供給ローラを回転可能に支持するブラケットを上下動させるピニオン・ラック機構と複数のギアとによって支持機構を採用してもよい。
【0063】
前記実施形態では、駆動機構として、カムやラッチ機構を利用した駆動機構150を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、支持アーム180の左端部に対して前後に進退可能なシリンダを駆動機構として、シリンダを後方に退避させたときに支持アーム180の左端部の後方への移動が許容され、シリンダを前進させたときに、支持アーム180の左端部が初期位置で保持されるようにしてもよい。
【0064】
前記実施形態では、弾性部材としてコイルバネ161を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばトーションバネや板バネなどであってもよい。
【0065】
前記実施形態では、手差しトレイ12が閉じているときにはコイルバネ161の変形量がゼロになるようにしたが、本発明はこれに限定されず、僅かに変形していてもよい。この場合であっても、手差しトレイが開いているときよりも閉じているときの方の変形量を小さくできるので、手差しトレイの開閉状態に関わらず常時大きく変形しているバネを用いる構造に比べ、バネのへたりを抑えることができる。
【0066】
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えばモノクロプリンタ、複写機、複合機などに本発明を適用してもよい。
前記実施形態では、記録シートの一例として、厚紙、はがき、薄紙などの用紙Pを採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばOHPシートであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 カラープリンタ
10 装置本体
12 手差しトレイ
100 手差し給紙機構
110 供給ローラ
120 分離ローラ
140 支持機構
150 駆動機構
160 連結機構
161 コイルバネ
162 アーム部材
163 カム部材
164 紐
165 規制部材
170 軸受部材
180 支持アーム
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に揺動可能に支持される手差しトレイと、
前記手差しトレイ上に載置した記録シートを前記装置本体内に向けて搬送する供給ローラと、
前記供給ローラを上下に移動可能に支持する支持機構と、
記録シートを装置本体内に向けて搬送する際に、前記支持機構に作用して前記供給ローラを上方の待機位置から下方に移動させて記録シートに当接させる駆動機構と、を備えた画像形成装置であって、
前記支持機構と前記手差しトレイとを連結する連結機構を備え、
前記連結機構は、
弾性変形可能であり、かつ、前記支持機構に対して前記供給ローラを下げる方向に付勢力を与える弾性部材と、
前記手差しトレイを開く動作に連動して前記弾性部材を変形させて前記付勢力を発生させ、前記手差しトレイを閉める動作に連動して前記弾性部材の変形を解除させる作用部と、
前記手差しトレイを開くときに前記作用部と当接して当該作用部の動きを規制することで、前記弾性部材の変形を規制する規制部材と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記連結機構は、
前記装置本体に揺動可能に支持され、かつ、揺動する一端部が前記弾性部材に連結されたアーム部材と、
前記手差しトレイの動きに応じて回動し、前記アーム部材を前記弾性部材の付勢力に抗して押圧可能なカム部材とを、前記作用部として備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記連結機構は、
前記弾性部材に連結される一端部と、前記手差しトレイの自重による力を受ける他端部とを有し、前記一端部と前記他端部との間の部分が前記装置本体に対して揺動可能に支持されるアーム部材を、前記作用部として備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記供給ローラから記録シートが重なった状態で送られてきた際に、重なった記録シートを1枚ずつに分離する分離ローラをさらに備え、
前記支持機構は、
前記供給ローラおよび前記分離ローラを回転可能に支持するとともに、揺動可能な軸受部材と、
水平面内にて揺動可能であり、かつ、一端側が前記軸受部材と係合して前記供給ローラを上下動させるように前記軸受部材を揺動させる支持アームと、を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−111280(P2011−111280A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268864(P2009−268864)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】