説明

画像形成装置

【課題】比較的大型の扉を精度よく装置本体に設置でき、用紙搬送性を高め、紙詰まりの処理が容易な画像形成装置を得る。
【解決手段】装置本体の側面部に開閉可能な1枚の扉60を備えた画像形成装置。扉60を水平面上で回動可能に支持する支点部(ブラケット71,72,73、軸部61,62,63)を装置本体の奥側に備え、該支点部は扉の上段、中段及び下段の3箇所に配置され、中段の支点部を基準として、上段及び下段の支点部が位置調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、特に、装置本体の側面部に開閉可能な扉を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法によって画像を形成する複写機、プリンタなどの画像形成装置においては、装置本体の下段部に給紙部を設け、装置本体の側面部に用紙の搬送経路(縦方向の搬送経路及び必要であれば両面印字用の反転搬送経路)、あるいは、手差し給紙部を設けている。先行技術文献としては多々存在し、代表的なものとして特許文献1,2,3を挙げることができる。
【0003】
ところで、各種の用紙搬送経路が装置本体に対して開閉可能な複数の扉に設置されていると、それぞれの扉の装置本体に対する位置決め機構が多数必要となり、各用紙搬送経路ごとに位置のばらつきが発生しやすく、用紙のスキューや位置ずれなど搬送性能が悪化し、画像品質への影響が懸念される。また、紙詰まりの処理時に多くの操作が必要であるという問題点を有している。
【0004】
一方、装置本体の側面部に配置する扉を分割せずに一体的に構成することが考えられるが、扉が大型化すると扉自体にねじれ、歪、変形が生じやすく、扉の閉止を確実にロックするための機構が必要とされる。さらには、扉の開閉の検出不良が発生しやすくなるので、扉を確実に閉止するための構造が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−219286号公報
【特許文献2】特開2002−148881号公報
【特許文献3】特開2005−138967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の第1の目的は、扉を精度よく装置本体に設置でき、用紙搬送性能を高め、紙詰まりの処理が容易な画像形成装置を提供することにある。
【0007】
本発明の第2の目的は、前記第1の目的を達成するとともに、扉を歪みを極力抑制して確実に閉止できる画像形成装置を提供することにある。
【0008】
本発明の第3の目的は、前記第1及び第2の目的を達成するとともに、扉の閉止状態を確実に検出できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するため、本発明の一形態である画像形成装置は、
装置本体の側面部に開閉可能な扉を備えた画像形成装置において、
前記扉を水平面上で回動可能に支持する支点部を装置本体の奥側に備え、
前記支点部は前記扉の上段、中段及び下段の3箇所に配置され、
中段の支点部を基準として、上段及び下段の支点部が調整可能であること、
を特徴とする。
【0010】
前記画像形成装置においては、扉を水平面上で回動可能に支持する支点部を扉の上段、中段及び下段の3箇所に配置したため、扉を歪みなどを極力抑えて装置本体に取り付けることができる。しかも、中段に設けた支点部を基準として上段及び下段の支点部を調整するため、扉の位置決め精度が向上する。このように、精度よく位置決めされた扉に用紙の搬送経路を構成する部材を一体的に取り付けることにより、用紙の搬送性能が向上し、紙詰まり処理の操作性も向上する。
【0011】
また、前記画像形成装置においては、装置本体の正面側に、扉を閉止位置にロックするためのロック爪及びロック部材が、上段、中段及び下段の3箇所に配置されていることが好ましい。扉の閉止状態時における歪みや変形などを極力抑制するとともに、確実に閉止することができる。この場合、それぞれのロック爪の形状が異なっていることが好ましい。扉を閉止する際に各ロック爪がロック部材に当接するタイミングが異なるので、扉が反力を同時に受けることがなく、扉の変形を防止できる。
【0012】
さらに、扉の閉止状態を検出するための検出部材が該扉の上段又は下段に対応する位置に配置されており、前記ロック爪は、それぞれ1本の支軸に固定され、かつ、検出部材が配置された上段又は下段に近いものほどロック部材に対する突出量が大きいことが好ましい。扉を閉止する際に、検出部材に近い突出量の大きいロック爪がまずロック部材に当接するが、このときロック爪が反力を受けて扉がねじれて確実に閉止されない状態が生じ得る。検出部材を突出量の大きいロック爪に近い部分に設置することで、扉の閉止状態を確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的大型の扉を精度よく装置本体に設置でき、用紙搬送性能を高め、紙詰まりの処理が容易になる。また、扉を歪みなどを極力抑制して確実に閉止できる。さらに、扉の閉止状態を確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る画像形成装置であるプリンタを示す概略構成図である。
【図2】前記プリンタの本体側面部に取り付けられている扉を示す概略構成図である。
【図3】前記扉を本体の内側から見た概略説明図である。
【図4】前記扉のロック爪とロック部材の位置関係を示す説明図である。
【図5】前記扉のロック爪の突出量を示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各図面において、同一部材、部分に関しては同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
(画像形成装置の概略構成)
本発明に係る画像形成装置の一実施例について、図1を参照して説明する。この画像形成装置は、タンデム方式のカラープリンタであり、概略、Y,M,C,Kの各色のトナー画像を形成するためのプロセスユニット10(10y,10m,10c,10k)とレーザ走査ユニット20と、中間転写ユニット30を中心として構成されている。
【0017】
プロセスユニット10は、それぞれ、筺体の内部に、感光体ドラム12、図示しない帯電ローラ、現像器、残留トナーや残留電荷のクリーニング部材などを配置したもので、図1の紙面に垂直な方向に装置本体から出し入れ可能である。このプロセスユニット10においては、レーザ走査ユニット20から照射されるレーザによって感光体ドラム12に描画された静電潜像を現像してトナー像を形成する。
【0018】
中間転写ユニット30は、矢印X方向に無端状に回転駆動される中間転写ベルト31を備え、各感光体ドラム12と対向する転写ローラ32から付与される電界にて、各感光体ドラム12上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト31上に1次転写して合成する。なお、このような電子写真法による画像形成プロセスは周知であり、詳細な説明は省略する。
【0019】
装置本体の下部には記録シートを1枚ずつ給紙する第1の給紙ユニット41及び第2給紙ユニット42が配置され、記録シートは各給紙ローラ43から搬送ローラ対44,45を経てタイミングローラ対46から前記中間転写ベルト31と2次転写ローラ35とのニップ部に搬送され、ここでトナー画像(カラー合成画像)が2次転写される。その後、記録シートは定着ユニット47に搬送されてトナーの加熱定着を施され、排出ローラ対48から装置本体の上面に配置されたトレイ部(図示せず)に排出される。
【0020】
用紙の両面に印字する際、第1面に印字処理及び定着処理を施された用紙は、排出ローラ対48にてスイッチバックされ、両面印字用の反転搬送経路50を下方に搬送され、タイミングローラ対46に戻され、第2面に印字処理及び定着処理が施され、排出ローラ対48から排出される。また、手差し給紙部51からはトレイ52上に載置された用紙が1枚ずつタイミングローラ対46へと給紙される。
【0021】
装置本体の側面部には、比較的大型の1枚の扉60が奥側(図1の紙面奥側)で回動自在に支持されて開閉可能に設置されている。この扉60には、図2に示すように、反転搬送経路50、反転搬送用のガイド部材55、2次転写ローラ35とタイミングローラ対46の一方のローラ46aを含む縦搬送ユニット56、搬送ローラ対44,45の一方のローラ44a,45a、手差し給紙部51が一体的に取り付けられている。
【0022】
前記扉60は、装置本体の奥側において、装置本体に固定された支持用ブラケット71,72,73の穴に軸部61,62,63を垂直方向に挿入することで、軸部61,62,63を支点として水平面上で回動可能に支持されている。ブラケット71,72,73及び軸部61,62,63は扉60の上段、中段及び下段の3箇所に配置されている。各ブラケット71,72,73はそれぞれの取付け用穴71a,72a,73aにねじ(図示せず)を挿入して該ねじを装置本体に螺着することで固定される。
【0023】
中段のブラケット72の取付け用穴72aは円形であって装置本体に対して所定位置に固定される。上段及び下段のブラケット71,73の取付け用穴71a,73aは水平方向に延在する長穴であって装置本体に対して若干のガタつきを有して固定可能である。また、扉60の正面側に突設した位置決めピン64は装置本体の基準穴(図示せず)に挿入される。
【0024】
この支持構造においては、まず、装置本体に固定された中段のブラケット72の穴に軸部62を挿入するとともに、位置決めピン64を装置本体の基準穴(図示せず)に挿入することで扉60を装置本体に対して平行になるように位置決めする。このとき、上段及び下段のブラケット71,73は装置本体に仮止めされており、長穴71a,73aの範囲で左右に若干のガタつきを有している。ブラケット72と位置決めピン64による扉60の装置本体に対する位置調整が終了した後、ブラケット71,73が取付け用穴71a,73aにてねじ締めされることにより、扉60が装置本体に回動可能に固定されることになる。
【0025】
以上の構成において、本実施例では以下の作用効果を有する。即ち、扉60を水平面上で回動可能に支持する支点部を扉60の上段、中段及び下段の3箇所に配置したため、大型化した扉60を歪みなどを極力抑えて装置本体に取り付けることができる。しかも、中段に設けた支点部を基準として上段及び下段の支点部を調整するため、扉60の位置決め精度が向上する。
【0026】
そして、このように、精度よく位置決めされた1枚の扉60に用紙の搬送経路を構成する部材、即ち、反転搬送経路50、反転搬送用のガイド部材55、2次転写ローラ35とローラ46aを含む縦搬送ユニット56、ローラ44a,45a、手差し給紙部51が一体的に取り付けられているため、これらの部材の位置精度も複数の扉に別々に取り付けることと比較すると極めて高くなり、用紙の搬送性能が向上する。また、紙詰まり処理は扉60を開放するだけでよく、複数の扉を開放する煩雑性はなく、紙詰まり処理での操作性が良好である。
【0027】
次に、扉60のロック機構について説明する。図3に示すように、装置本体の正面側に、扉60を閉止位置にロックするためのロック爪81,82,83及びロック部材85(図4参照)が、上段、中段及び下段の3箇所に配置されている。各ロック爪81,82,83は扉60に回転自在に取り付けたロック軸84に一体的に固定されている。ロック部材85は装置本体に固定されている。
【0028】
各ロック爪81,82,83は扉60が閉止されるとき、図4に示すように、傾斜面81a,82a,83aがロック部材85の傾斜面85aに当接して矢印Y方向に一体的に回動し、段差部81b,82b,83bがロック部材85の段差部85bに係合することで扉60が閉止状態にロックされる。ロック軸84は図示しないばね部材によって矢印Yとは逆方向に弾性的に付勢されており、かつ、ロック軸84を矢印Y方向に強制的に回動させることでロックが解除される。
【0029】
各ロック爪81,82,83の形状はそれぞれ異なっている。詳しくは、傾斜面81a,82a,83aの角度がそれぞれ微小に異なっており、かつ、図4及び図5に示すように、ロック位置からの突出高さA,B,Cの関係がA>B>Cとされている。
【0030】
以上のごとく、装置本体の正面側に、扉60を閉止位置にロックするためのロック爪81,82,83及びロック部材85が、上段、中段及び下段の3箇所に配置されているため、大型化した扉60の閉止状態時における歪みや変形などが極力抑制され、扉60を確実に閉止することができる。つまり、扉60は、閉止状態において、ローラなどから複数の箇所で反力を受けることになるが、上段、中段及び下段でロックされることにより、反力を複数個所で受けて歪みや変形などの発生が抑制される。
【0031】
また、それぞれのロック爪81,82,83の形状が異なっており、特に、ロック位置からの突出高さA,B,Cがそれぞれ異なっているため、扉60を閉止する際に各ロック爪81,82,83がロック部材85に当接するタイミングが異なるので、扉60が反力を同時に受けることがなく、扉60の変形を防止できる。
【0032】
次に、扉60の開閉を検出する機構について説明する。図5に示すように、扉60の閉止状態を検出するためのセンサ90が装置本体に取り付けられている。該センサ90の取付け位置は扉60の上段に対応する位置である。センサ90はアクチュエータを用いた接触方式及び光学的な非接触方式のいずれでもよく、扉60の開閉に感応してその開閉状態を検出する。
【0033】
前記ロック爪81,82,83は、センサ90が配置された上段に近いものほどロック部材85に対する突出量A,B,Cが大きく設定されている。即ち、扉60を閉止する際に、センサ90に近い突出量の大きいロック爪81がまずロック部材85に当接する。ロック爪81の回動に同期してロック軸84で一体化されている他のロック爪82,83も同期して回動する。仮に、扉60の下側を手で押して扉60を閉止しようとした場合、下段のロック爪83がロックされたとしても、上段のロック爪81は反力を受けて扉60がねじれて確実にロックされない状態が生じ得る。一方、扉60の上側を手で押して扉60を閉止しようとした場合、上段のロック爪81が最初にロックされ、他のロック爪82,83もロック部材85に当接する前にロック爪81に同期して回動し、ロックされる。従って、本実施例のように、センサ90を突出量の大きいロック爪81に近い部分に設置することで、大型化した扉60の閉止状態を確実に検出することができる。
【0034】
なお、センサ90は扉60の下段に対応する位置に配置されていてもよい。この場合、センサ90が配置された下段に近いロック爪83ほどロック部材85に対する突出量が大きく設定される。
【0035】
(他の実施例)
なお、本発明に係る画像形成装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0036】
特に、扉自体の構造の細部、該扉に取り付けられる部品の種類、ロック機構や開閉検出機構の細部は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明は、画像形成装置に有用であり、特に、装置本体の側面部に設けた扉を精度よく設置できる点で優れている。
【符号の説明】
【0038】
60…扉
61,62,63…軸部
64…位置決め用ピン
71,72,73…ブラケット(支点部)
71a,72a,73a…取付け用穴
81,82,83…ロック爪
84…ロック軸
85…ロック部材
90…開閉検出用センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の側面部に開閉可能な扉を備えた画像形成装置において、
前記扉を水平面上で回動可能に支持する支点部を装置本体の奥側に備え、
前記支点部は前記扉の上段、中段及び下段の3箇所に配置され、
中段の支点部を基準として、上段及び下段の支点部が調整可能であること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記扉に用紙の搬送経路を構成する部材が一体的に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
装置本体の正面側に、前記扉を閉止位置にロックするためのロック爪及びロック部材が、上段、中段及び下段の3箇所に配置されていること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記3個のロック爪はそれぞれの形状が異なっていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記扉の閉止状態を検出するための検出部材が該扉の上段又は下段に対応する位置に配置されており、
前記ロック爪は、それぞれ1本の支軸に固定され、かつ、前記検出部材が配置された上段又は下段に近いものほど前記ロック部材に対する突出量が大きいこと、
を特徴とする請求項3又は請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−13307(P2011−13307A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155374(P2009−155374)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】