説明

画像形成装置

【課題】汚染物質の蓄積が生じにくく,十分な耐久性能を有する清掃ローラを備えた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】画像形成装置の感光体を帯電する帯電ローラに対し,清掃ローラ70を設ける。清掃ローラ70は,帯電ローラに接触しつつ帯電ローラとともに回転して帯電ローラを清掃するものである。ここにおいて清掃ローラ70は,長尺形状の発泡セル73を有するとともにその発泡セル73の長手方向が互いに揃っている配向性の円筒発泡体72で構成されており,その発泡セル73の配向方向が清掃ローラ70の芯材71方向と交差する方向となるように配置されているものである。このため,清掃ローラ70の表面に開口している発泡セル73の開口形状や,清掃ローラ70の半径方向の圧縮性に異方性がある。この異方性に基づく振動等により,清掃ローラ70は長期間にわたり清掃能力を維持し耐久性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,レーザプリンタや複写機等,トナーを用いて媒体に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,この種の画像形成装置では,感光体を有し,この感光体に露光により静電潜像を形成するようにしている。この静電潜像をトナーで現像して可視像であるトナー像とし,このトナー像を媒体上に転写することで画像を形成するのである。かかる画像形成において感光体は,露光に先立ち均一に帯電される必要がある。画像形成装置はそのための帯電器を備えている。この帯電器としては,コロナ放電現象を利用する非接触式のものと,微小空隙での火花放電現象を利用する接触式のものとがある。接触式の帯電器は,オゾン排気機構を備える必要がないため,ローエンド級の画像形成装置では主流となっている。
【0003】
接触式の帯電器には,感光体に接触する帯電部材として,感光体とともに回転する帯電ローラを用いるものがある。帯電ローラは,像担持体である感光体に接触するものであるため,表面が汚染されることがある。帯電ローラが接触する感光体表面には,転写残トナー等の汚染物質がクリーニングをすり抜けて残存している場合があるからである。これにより帯電ローラの表面が汚染されると,その汚染された部位では当然,帯電作用が阻害されてしまう。このため感光体の帯電状況が不均一となり,画像に濃度ムラが現れてしまう。これを防ぐために例えば特許文献1では,清掃ローラを設けている。回転体である清掃ローラを帯電ローラに接触させてともに回転するようにすることで,帯電ローラを清掃ムラなく清浄に保つようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−39880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら近年,帯電ローラによる帯電方式の利用を,従来のローエンド級限定からより上級の機種に拡大しようとする傾向がある。そうすると帯電ローラの清掃ローラについても,より長寿命化しなければならない。しかし従来の清掃ローラをそのまま使用したのでは,寿命末期において清掃効果の低下が避けられず,前述の濃度ムラが現れてしまう。このため実質的な寿命が清掃ローラの能力により限定されてしまう。清掃効果が低下する理由はむろん,清掃ローラへの汚染物質の蓄積である。なお画像形成装置には帯電ローラ以外にも,トナーと接する回転体(感光体,中間転写体等)があり,これらをローラでクリーニングする場合には同じ問題がある。
【0006】
本発明は,前記した従来のが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,汚染物質の蓄積が生じにくく,十分な耐久性能を有する清掃ローラを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,回転体を用いてトナー像を媒体上に形成する装置であって,回転体に接触しつつ回転体とともに回転して回転体を清掃する清掃ローラを有し,清掃ローラは,発泡質の素材で構成されており,表面に開口している発泡セルの開口形状が軸回りの周方向位置により異なるものである。
【0008】
この画像形成装置では,清掃ローラの発泡質の素材(以下,発泡体という)における発泡セルの開口形状に異方性がある。このため発泡体の圧縮性に異方性があり,清掃ローラは回転とともに微小に振動する。これにより発泡体への汚染物質の蓄積が抑制され,長期にわたり清掃ローラの清掃能力が維持される。
【0009】
ここで清掃ローラを構成する発泡体は,発泡セルが長尺形状であるとともにその長手方向が互いに揃っている配向性のものであり,発泡セルの配向方向が清掃ローラの軸方向と交差する方向となるように配置されていることが望ましい。発泡セルの配向により,前述の開口形状の異方性や圧縮性の異方性が現れる。
【0010】
また,配向性の発泡体を,軸回りの周方向位置により複数の分割片に分割された分割構成とし,分割片により発泡セルの配向方向が異なるように配置したものであってもよい。このような構成でも,開口形状や圧縮性の異方性を実現できる。
【0011】
さらに,清掃ローラの直径と回転体の直径とのいずれもが他方の非整数倍であることが望ましい。このようになっていると,清掃ローラおよび回転体の回転の継続により,回転体の表面のすべての箇所が,清掃ローラの表面の様々な開口形状の箇所で清掃されることになる。これにより,汚染物質の寸法によらず確実に清掃されるからである。
【0012】
本発明の画像形成装置は,静電潜像が形成される感光体と,感光体を帯電させる帯電器と,感光体を露光する露光器と,感光体の静電潜像にトナーを付与してトナー像とする現像器と,感光体のトナー像を媒体に転写する転写器とを少なくとも有することが望ましい。この場合における清掃ローラの清掃対象である回転体は,帯電器または感光体である。帯電器が当該回転体である場合には,その帯電器は,感光体に接触しつつ感光体とともに回転して感光体を帯電させるものである。
【0013】
あるいは本発明の画像形成装置は,感光体と,帯電器と,露光器と,現像器と,感光体からトナー像の転写を受けてそのトナー像を媒体に転写する中間転写体とを少なくとも有するものであってもよい。この場合における清掃ローラの清掃対象である回転体は,帯電器または感光体または中間転写体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,汚染物質の蓄積が生じにくく,十分な耐久性能を有する清掃ローラを備えた画像形成装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置を示す外観斜視図である。
【図2】画像形成部の内部の要素を示す概念図である。
【図3】清掃ローラ(単泡発泡材を用いた例)の断面図である。
【図4】配向性発泡材の構造を示す斜視図である。
【図5】清掃ローラ(連泡発泡材を用いた例)の断面図である。
【図6】清掃ローラの表面における発泡セルの開口形状を示す展開図である。
【図7】小面積の開口の部分が帯電ローラに接触している状況を示す断面図である。
【図8】大面積の開口の部分が帯電ローラに接触している状況を示す断面図である。
【図9】小面積の開口の部分が帯電ローラに接触している状況を示す断面図である。
【図10】大面積の開口の部分が帯電ローラに接触している状況を示す断面図である。
【図11】清掃ローラの食い込み量の時間による変化を示すグラフである。
【図12】清掃ローラの圧縮率の時間による変化を示すグラフである。
【図13】清掃ローラの回転による汚染改善状況を示すグラフである。
【図14】変形例の清掃ローラの断面図である。
【図15】変形例の清掃ローラの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,図1に示すような画像形成装置において本発明を具体化したものである。図1の画像形成装置100は,給紙部1と,画像形成部2と,排紙部3と,読取部4とを有している。給紙部1は,画像形成部2に提供する用紙を収納する部分である。画像形成部2は,後述する感光体ドラム等を内蔵しており,用紙にトナーにより画像を形成する部分である。排紙部3は,画像形成部2で画像形成がなされた用紙が排出される場所である。読取部4は,原稿の画像を読み取る部分である。
【0017】
画像形成装置100の画像形成部2には,図2に示すような,画像形成に必要な各種の要素が内蔵されている。画像形成部2の内部には,感光体ドラム10,帯電ローラ20,露光器30,現像器40,転写ローラ50,クリーナ60が配置されている。これにより,まず感光体ドラム10の表面を帯電ローラ20で所定電位に帯電させ,そこへ露光器30で静電潜像を書き込み,その静電潜像を現像器40で現像してトナー像とし,そのトナー像を転写ローラ50で用紙Pに転写するようになっている。
【0018】
用紙Pはその後トナー像の定着を受けてから排紙部3へ排出される。転写後の感光体ドラム10の表面は,クリーナ60で転写残トナーを除去されてから,再度帯電ローラ20で帯電されることになる。なお図2は,画像形成装置100における画像形成の基本原理を模式的に示すにすぎないものであり,これら各要素の正確な位置関係を示すものではない。また,図2中の「P」が中間転写ベルトであるような装置構成も可能である。
【0019】
そして画像形成装置100では,図2に示されるように,帯電ローラ20に清掃ローラ70を備えている。清掃ローラ70はむろん,帯電ローラ20の表面を清掃するものである。清掃ローラ70が必要な理由は,帯電ローラ20の表面の汚染防止のためである。感光体ドラム10の表面のうち帯電ローラ20が接する位置は,クリーナ60による清掃を受けた位置である。しかしそれでもクリーナ60をすり抜けた転写残トナーや外添材,紙粉等の汚染物質が皆無なわけではないからである。そのため帯電ローラ20も汚染されてしまうので,清掃ローラ70でこれを清掃するのである。帯電ローラ20の直径をR1で,清掃ローラ70の直径をR2で,それぞれ示す。
【0020】
帯電ローラ20の直径R1と清掃ローラ70の直径R2との間には,一方が他方の整数倍ではない,という関係がある。すなわち,nを任意の自然数とすると,
R1 ≠ n*R2
R2 ≠ n*R1
の2つの式がいずれも成り立つ。具体的には,R1がR2の整数倍に対して±0.05の範囲内になく,かつ,R1もR2の整数倍に対して±0.05の範囲内になければよい。このため,帯電ローラ20の表面と清掃ローラ70の表面とは,毎回同じ箇所同士が対面するということはない。帯電ローラ20および清掃ローラ70の回転を続けることにより,帯電ローラ20の表面のすべての箇所が,清掃ローラ70の表面のさまざまな箇所にて清掃されることとなる。
【0021】
清掃ローラ70は,図3にその断面構造を示すように,芯材71とその周囲の円筒発泡体72とを有している。円筒発泡体72は,全体として円筒形状であるとともに,内部に多数の発泡セル(気泡)73を有する発泡質の素材で形成されている。そして各発泡セル73は,球形ではなく長尺状の形状をしている。さらに各発泡セル73の方向には配向性がある。すなわち,各発泡セル73の長手方向が揃っている。各発泡セル73の長手方向は,芯材71の方向と平行でない方向である。図3での各発泡セル73の長手方向は,芯材71の方向と垂直な方向であって図中縦方向とされている。
【0022】
図4に,この発泡材を直方体状に切断したものを斜視図で示す。図4の発泡材では,各発泡セル73の長手方向が図中上下方向に配向している。この発泡材では,発泡セル73の配向方向に垂直な面(図中A面)と平行な面(図中B面およびC面)とで,発泡セル73の開口形状が異なる。A面では発泡セル73がほぼ円形に開口しているのに対し,B面およびC面では上下方向に長い長円形状に開口している。ここで発泡セル73の形状におけるアスペクト比を,セルの長径/セルの短径,で定義する。すると図4の発泡体の場合,アスペクト比は概ね2.8〜3.2程度である。
【0023】
上記のような発泡材として例えば,株式会社イノアックコーポレーション製の「EMM」が挙げられる。この発泡材の基材樹脂はポリウレタンであるが,ポリウレタンに限らず,メラミン樹脂など他の樹脂であってもよい。図3に示した清掃ローラ70は単泡構造の発泡材を用いたものであるが,図5に示すように連泡構造の発泡材を用いてもよい。連泡構造の発泡材を用いると,後述する清掃効果がより高い。
【0024】
清掃ローラ70は,上記のように配向性発泡材を用いたものである。すなわち,図4の発泡材を一点鎖線Dで示すように円筒形状に切り抜き,これを円筒発泡体72とする。この円筒発泡体72を芯材71に組み付けたのが清掃ローラ70である。清掃ローラ70は,円筒発泡体72の発泡セル73の表面への開口により,帯電ローラ20の表面の汚染を除去することができるものである。
【0025】
このため清掃ローラ70では,芯材71の周りの方位により発泡セル73の開口形状が異なる。すなわち,清掃ローラ70における図3中の上下方向位置(Y)の表面では,図4中のA面のように発泡セル73がほぼ円形に開口している。一方,左右方向位置(X)の表面では,図4中のB面およびC面のように発泡セル73が長円形状に開口している。その長円形の長手方向は円筒発泡体72の周方向と平行である。この状況を図6に示す。図6は,円筒発泡体72の表面の展開図の一部である。図6中の左右方向が清掃ローラ70の軸芯方向(幅方向)に相当し,上下方向が円周方向に相当する。図6中のX位置では発泡セル73の開口が長円形状に現れており,Y位置では発泡セル73の開口がほぼ円形に現れている。開口面積としては,X位置の長円形状の開口の方が,Y位置の円形の開口より大面積である。
【0026】
また,発泡セル73の開口の形状のアスペクト比を考えることができる。開口のアスペクト比は,図6のX位置では前述の発泡セル73自体のアスペクト比と同様に2.8〜3.2程度である。一方,Y位置での開口のアスペクト比はほとんど1である。このように清掃ローラ70では,開口のアスペクト比の最大値と最小値との間に1.8〜2.2程度の差がある。この差が,清掃ローラ70を回転させたときの,帯電ローラ20に接する位置の開口のアスペクト比の変化量Δとなる。この変化量Δをアスペクト比の最大値で除した数値が変化率Qである。
【0027】
かかる清掃ローラ70では,上記した円筒発泡体72の発泡セル73の配向性により,以下の2つの効果がある。まず第1の効果は,帯電ローラ20に対する清掃効果が高いことである。その理由は,帯電ローラ20に接触する部位における発泡セル73の開口面積が,清掃ローラ70の回転とともに周期的に変化することにある。すなわち,発泡セル73が円形に開口している部位が帯電ローラ20に接触する状況(図7)と,発泡セル73が長円形状に開口している部位が帯電ローラ20に接触する状況(図8)とが交互に繰り返されることになる。つまりアスペクト比の変化率Qが大きいのである。そして,帯電ローラ20の表面上の汚染物質のサイズは様々である。前述のように汚染物質にもいくつかの種類がある上,塊状化したトナーのように比較的に大粒のものも存在しうるからである。
【0028】
ここで,図7のように小面積の開口で帯電ローラ20の表面を清掃する状況では,主に小サイズの汚染物質21が帯電ローラ20から除去される。一方,図8のように大面積の開口で帯電ローラ20の表面を清掃する状況では,主に大サイズの汚染物質22が帯電ローラ20から除去される。そして,帯電ローラ20と清掃ローラ70との直径についての前述の関係から,帯電ローラ20の表面の各箇所は,図7の状況と図8の状況との両方を経験することになる。このため,帯電ローラ20および清掃ローラ70の回転を続けることにより,帯電ローラ20の表面のすべての箇所にて,小サイズの汚染物質21と大サイズの汚染物質22とがともに除去される。このため,アスペクト比の変化率Qが大きいことにより,帯電ローラ20に対する清掃効果が高いのである。
【0029】
発泡セル73の配向性による第2の効果は,清掃ローラ70自身に汚染物質が蓄積しにくいことである。上記のように清掃ローラ70は円筒発泡体72の発泡セル73の開口により汚染物質を掻き取ることで帯電ローラ20を清掃する。このため円筒発泡体72の発泡セル73には,掻き取った汚染物質が溜まっていく場合がある。こうして発泡セル73に蓄積された汚染物質の量が多くなると,清掃ローラ70の清掃効果は低下してしまう。
【0030】
しかしながら本形態では,円筒発泡体72の配向性により,発泡セル73に汚染物質が蓄積しにくいのである。このため,清掃ローラ70の清掃効果の低下が遅く,耐久使用に向いているのである。
【0031】
それは次のような理由による。発泡セル73の配置に配向性がある円筒発泡体72では,その配向性により,半径方向の圧縮性にも異方性がある。すなわち,発泡セル73の長手方向と垂直な方向(図3中のX−X方向)に圧縮する場合と,長手方向と平行な方向(図3中のY−Y方向)に圧縮する場合とで硬さが異なるのである。長手方向と垂直な方向に圧縮する場合の方が軟らかい。また,清掃ローラ70を支える芯材71は完全な剛体というわけではない。
【0032】
このため,図9に示す,円筒発泡体72が帯電ローラ20により発泡セル73の長手方向と平行な方向に圧縮される場合(図7に相当)と,図10に示す,円筒発泡体72が帯電ローラ20により発泡セル73の長手方向と垂直な方向に圧縮される場合(図8に相当)とで,帯電ローラ20の円筒発泡体72への食い込み量がわずかに異なる。図9の状況の方が図10の状況よりも,円筒発泡体72が圧縮されにくいため食い込みが小さい。
【0033】
このため,帯電ローラ20および清掃ローラ70の回転を続けることにより,図11のグラフに示すように,清掃ローラ70の食い込み量が周期的に変化する。同様に,図12のグラフに示すように,円筒発泡体72の圧縮率も周期的に変化する。このことから清掃ローラ70は回転中,常に微小に振動しているのである。その振動の周期は,図3に示した清掃ローラ70の場合,回転周期の2倍である。この振動のため,発泡セル73の開口に溜まっている汚染物質がはじき出される効果がある。このため,本形態の清掃ローラ70には汚染物質が蓄積しにくいのである。
【0034】
ここで,本発明者らが行った,本発明の有効性を確認する試験の結果を説明する。この試験の試験体としては,図5に示した連泡発泡体の清掃ローラ70(以下,実施例という)と,比較例に係る清掃ローラとの2種類を用いた。比較例の清掃ローラは,円筒発泡体の材質としては実施例と同じものを用いつつ,発泡セル73の長手方向がローラの軸方向と平行になるように作成したものである。したがって比較例の清掃ローラは,圧縮率の異方性がなく,回転させても振動が生じないものである。試験に関するその他の条件は,以下の通りとした。このように実施例ではアスペクト比の変化率Qが大きいのに対し,比較例では変化率Qが小さい。
【0035】
実施例 比較例
帯電ローラ径 9.5mm 9.5mm
清掃ローラの芯材の径 4mm 4mm
清掃ローラの全径 8mm 8mm
セル長手方向と軸方向の角度 90° 0°
発泡体の材質 ウレタン ウレタン
清掃ローラの回転 従動 従動
開口のアスペクト比 1〜3.2 2.8〜3.2
Δ 2.2 0.4
Q 69% 13%
【0036】
ここではこの試験として,振動による清掃ローラ70の清浄化効果を確認する試験と,清掃ローラ70の清掃能力の持続性の試験との2通りを行った。まず,振動による清掃ローラ70の清浄化効果を確認する試験の結果を説明する。この試験は,あらかじめ清掃ローラ70を汚染させておいて,その清掃ローラ70を帯電ローラ20と同等のローラと接触させつつ回転させたときの汚染の減少の程度を見ることにより行った。
【0037】
試験の結果を図13に示す。図13のグラフは,横軸に帯電ローラ20の試験開始からの累積回転数を取り,縦軸に清掃ローラの汚染の改善量,すなわち溜まっている汚染物質の量の減少量を示したものである。縦軸の数値が大きいほど,汚染物質の減少量が多い,すなわち清浄化効果が顕著であることを意味する。図13を見ると,本形態の清掃ローラ70の汚染改善量が,比較例のそれを明らかに上回っている。
【0038】
次に,清掃ローラ70の清掃能力の持続性の試験の結果を説明する。この試験は,実機での耐久使用試験により行った。試験機としては,コニカミノルタ製のmagicolor5550型機を用い,そのイメージングユニットの中に実施例または比較例の清掃ローラを取り付ける改造を施して試験に供した。印刷して得られた画像の汚れ具合と,帯電ローラの汚れ具合とを目視で確認することにより,清掃能力を評価した。良好であれば「○」とし,子細に見れば汚れの存在が分かる程度であれば「△」とし,一見して汚れが明らかであれば「×」とした。結果は表1の通りであった。この結果から,実施例の方が比較例よりも多い印刷枚数にわたって良好な清掃能力を維持することが分かる。
【0039】
【表1】

【0040】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,帯電ローラ20を清掃する清掃ローラ70として,発泡材の円筒発泡体72を用いたものを備えている。そしてその発泡材としては,長尺状の発泡セル73を有しその長手方向が揃った配向性のものを用いている。さらにその発泡材における発泡セル73の長手方向を,清掃ローラ70の芯材71の方向と平行でない方向としている。このため,清掃ローラ70の圧縮性が,芯材71の周りの方位によって異なるようになっている。これにより,清掃ローラ70が回転すると微小に振動するようにして,清掃ローラ70における汚染物質の蓄積を抑制している。こうして,汚染物質の蓄積が生じにくく,十分な耐久性能を有する清掃ローラ70を備えた画像形成装置が実現されている。
【0041】
また,発泡材の配向方向の配置により,発泡セル73の開口形状も芯材71の周りの方位によって異なるようになっている。つまりアスペクト比の変化率Qが大きいのである。また,帯電ローラ20の直径と清掃ローラ70の直径とがいずれも他方の整数倍でないようにしている。これにより,帯電ローラ20の表面のすべての箇所が,回転の継続により清掃ローラ70の表面の様々な箇所で清掃されるようにしている。これにより,大径の汚染物質も小径の汚染物質も確実に帯電ローラ20から除去されるようにしている。こうして,帯電ローラ20の清掃性自体も向上している。
【0042】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,清掃ローラ70の具体的構造は,図3あるいは図5に示したような,円筒発泡体72が全体として一体であるものに限らない。図14あるいは図15に示すように円筒発泡体が分割構成になっているものでもよい。
【0043】
図14に示すのは,円筒発泡体が4分割になっている清掃ローラ74である。すなわち,4つの分割片75,76,77,78が組み合わせられた全体として円筒形をなすようになっている。個々の分割片自体はいずれも,図4に示したような配向性発泡材で形成されている。ただしそのうちの分割片75,77では,前述の清掃ローラ70の場合と同様に,発泡セル73の長手方向が芯材71の方向と交差する方向とされている。残りの分割片76,78では,発泡セル73の長手方向が芯材71の方向と平行な方向とされている。分割片76,78は,配向性のない等方的な発泡材を用いたものであってもよい。清掃ローラ74では,分割片75,77と分割片76,78とが交互に配置されている。このようなものであっても,前述の清掃ローラ70の場合と同様の効果が発揮される。
【0044】
分割片における配向方向の配置は,図14に示したものに限らない。図15に示すようなものでもよい。分割片の個数も「4」には限られない。円筒発泡体が分割構成になっている場合でも,発泡構造は単泡(図3)と連泡(図5)とのいずれでもよいし,両者を混用してもよい。
【0045】
また,清掃ローラ70により清掃される被清掃物は,帯電ローラ20には限らない。清掃ローラ70が他の回転体を清掃するように構成した画像形成装置もあり得る。感光体ドラム10を清掃ローラ70の清掃対象物とするように画像形成装置を構成することもできる。また,中間転写ベルトを清掃ローラ70の清掃対象物とするように画像形成装置を構成することもできる。また,本発明の適用対象たる画像形成装置は,読取部4を有しないものであってもよいし,公衆回線等装置外からプリントジョブを取得して画像形成を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 感光体ドラム
20 帯電ローラ
70 清掃ローラ
71 芯材
72 円筒発泡体
73 発泡セル
74 清掃ローラ
75〜78 分割片
100 画像形成装置
P 用紙または中間転写ベルト
R1 帯電ローラの直径
R2 清掃ローラの直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を用いてトナー像を媒体上に形成する画像形成装置において,
前記回転体に接触しつつ前記回転体とともに回転して前記回転体を清掃する清掃ローラを有し,
前記清掃ローラは,
発泡質の素材で構成されており,
表面に開口している発泡セルの開口形状が軸回りの周方向位置により異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記清掃ローラを構成する発泡質の素材は,
発泡セルが長尺形状であるとともにその長手方向が互いに揃っている配向性のものであり,
発泡セルの配向方向が前記清掃ローラの軸方向と交差する方向となるように配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記清掃ローラを構成する発泡質の素材は,
発泡セルが長尺形状であるとともにその長手方向が互いに揃っている配向性のものであり,
軸回りの周方向位置により複数の分割片に分割されており,分割片により発泡セルの配向方向が異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記清掃ローラの直径と前記回転体の直径とのいずれもが他方の非整数倍であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
静電潜像が形成される感光体と,
前記感光体を帯電させる帯電器と,
前記感光体を露光する露光器と,
前記感光体の静電潜像にトナーを付与してトナー像とする現像器と,
前記感光体のトナー像を媒体に転写する転写器とを少なくとも有し,
前記回転体は,前記帯電器または前記感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
静電潜像が形成される感光体と,
前記感光体を帯電させる帯電器と,
前記感光体を露光する露光器と,
前記感光体の静電潜像にトナーを付与してトナー像とする現像器と,
前記感光体からトナー像の転写を受けてそのトナー像を媒体に転写する中間転写体とを少なくとも有し,
前記回転体は,前記帯電器または前記感光体または前記中間転写体であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−191610(P2011−191610A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58984(P2010−58984)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】