説明

画像形成装置

【課題】転写材が高湿環境にあっても転写抜け画像が生じることを防止でき、吸着バイアスを印加せずに搬送ベルトに転写材を静電的に吸着でき、かつ簡易な構成でコストダウンすることが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】本画像形成装置100は、搬送ベルト24に接触するテンションローラ25と、テンションローラ25に対向配置され、通過する転写材Pに接触する吸着ローラ28とを備えている。このテンションローラ25を接地電位に接続すると共に吸着ローラ28を電気的にフロートの状態に構成することで、転写材Pを静電的に搬送ベルト24に吸着させる。高湿環境の転写材を介して二次転写ローラ9からの二次転写バイアスが吸着ローラ28に流れ込むことが防止され、転写抜け画像が防止される。また、吸着ローラ28から吸着バイアスを印加することが不要となるので、電源を不要として簡易な構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の画像形成装置に係り、特に転写材を静電的に搬送ベルトに吸着させて、像担持体から転写材にトナー像を転写する転写部に搬送する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽印刷市場などでの画像形成装置の用途拡大に伴って、多様な転写材への対応、特に薄い紙等、剛性の低い転写材への対応が求められている。しかしながら、剛度の低い薄紙などは、トナー像が転写材に転写される転写工程(転写部)にたどり着くまでに、紙先端のカール状態やガイドとの摺擦に起因して、紙先端が変形・遅れたりなどし、安定した転写ができない虞がある。
【0003】
そこで、転写材を搬送ベルトに静電的に吸着させて転写部に導くことで、安定した転写を行おうとしたものが種々提案されている(特許文献1〜4参照)。これら特許文献1〜4のものは、吸着ローラから転写材に吸着バイアスを印加することで、転写材に電荷を与え、転写材を搬送ベルトに静電的に吸着させることで転写材の搬送を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−261470号公報
【特許文献2】特開平9−212009号公報
【特許文献3】特開平9−269621号公報
【特許文献4】特開2002−49252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜4のものは、転写材に電荷を与えるために吸着ローラに吸着バイアスを印加するバイアス印加装置が必要であり、大掛かりで複雑な構成となって、画像形成装置のコストアップを招くという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献1〜4のもののように、転写材に吸着バイアスを印加する場合は、転写材にトナー画像を転写する転写バイアスとは逆の極性、つまりトナーが保持している電荷と同じ極性の吸着バイアスを転写材の表面に印加している。そうすることにより、転写材の表面はトナーと同極性に帯電されるので、トナー像の転写以前に像担持体上に保持しているトナー像と近接しても、そのトナー像を電気的に乱すことを防止している。しかし、例えば高湿環境において、吸湿による転写材の抵抗値の低下が生じると、転写材を媒体として上述のようにお互いに逆の極性である転写バイアスと吸着バイアスが流れ込み、干渉が起って転写抜け画像が生じる虞があるという問題がある。
【0007】
そこで、特許文献3のものは、転写バイアスが転写材を通って流出してしまうことを防止するためにツェナダイオードを設けている。また、特許文献4のものは、転写部に流れ込む干渉電流を検知する回路と、該検知に応じて吸着バイアスの出力値を可変(補正)するコントローラとを設けている。しかしながら、このような特許文献3,4等のものは、ツェナダイオード(バリスタでもよい)や、検知回路及びコントローラ等の専用回路を設けるため、画像形成装置が複雑な構成となり、コストアップを招くという問題がある。
【0008】
さらに、搬送ベルトに半導電性材料を用いることも検討されているが、半導電性の搬送ベルトを用いた場合、吸着バイアスが転写材と搬送ベルトの両方を突き抜けてしまう。すると、転写材に十分な電荷が残らない為、搬送ベルトに対する転写材の吸着が弱まってしまうという問題がある。従って、吸着バイアスを印加せずに搬送ベルトに転写材を静電的に吸着する手法の開発が望まれる。
【0009】
そこで本発明は、転写材が高湿環境にあっても転写抜け画像が生じることを防止でき、吸着バイアスを印加せずに搬送ベルトに転写材を静電的に吸着でき、かつ簡易な構成でコストダウンすることが可能な画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体のトナー像を転写する転写部を形成する転写ローラと、前記転写ローラに転写用バイアス電圧を印加する転写電圧印加手段と、前記転写部を通過するように転写材を搬送する搬送ベルトと、を備えた画像形成装置において、前記搬送ベルトに接触する第1接触部材と、前記搬送ベルトを挟んで前記第1接触部材に対向配置され、通過する転写材に接触する第2接触部材と、を備え、前記第1接触部材を接地電位に接続すると共に前記第2接触部材を電気的にフロートの状態で構成し、転写材を静電的に前記搬送ベルトに吸着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、通過する転写材に接触する第2接触部材を電気的にフロートの状態に構成したので、例えば高湿環境において吸湿による転写材の抵抗値の低下が生じても、転写材を媒体として転写バイアスが流れ込むことを防止できる。それにより、転写抜け画像が生じることを防止できる。また、吸着バイアスを印加せずに搬送ベルトに転写材を静電的に吸着させることを可能とすることができる。そして、吸着バイアスを印加するバイアス印加装置を不要とすることができるので、簡易な構成でコストダウンした画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置を示す概略図。
【図2】第1の実施の形態に係る制御部を示すブロック図。
【図3】吸着装置による吸着原理を示す模式説明図。
【図4】転写電流の流れ込みが防止された状態を示す模式説明図。
【図5】吸着ローラに対する残トナー付着が防止された状態を示す模式説明図。
【図6】中間転写ベルトのトナー像に対する干渉が防止された状態を示す模式説明図。
【図7】第1の実施の形態に係る吸着装置の制御を示すフローチャート。
【図8】体積抵抗率を測定する円形電極を示す図で、(a)は上方視図、(b)は側面断面図。
【図9】第2の実施の形態に係る吸着装置を示す概略図。
【図10】第2の実施の形態に係る制御部を示すブロック図。
【図11】第2の実施の形態に係る吸着装置の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態について図1乃至図8に沿って説明する。まず、本発明に係る画像形成装置100の概略構成について図1に沿って説明する。
【0014】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る画像形成装置100は、中間転写ベルト6の直線区間に、4つの画像形成部PY(イエロー)、PM(マゼンダ)、PC(シアン)、PK(ブラック)を配列したタンデム型中間転写方式のフルカラー複写機である。画像形成部PYでは、感光ドラム1Yにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト6に一次転写される。画像形成部PMでは、感光ドラム1Mにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト6のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部PC、PKでは、それぞれ感光ドラム1C、1Kにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて同様に中間転写ベルト6に順次重ねて一次転写される。
【0015】
画像形成部PY、PM、PC、PKは、付設された現像装置4Y、4M、4C、4Kで用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、ほぼ同一に構成される。以下では、画像形成部PYについて説明し、他の画像形成部PM、PC、PKについては、説明中の符号末尾のYを、M、C、Kに読み替えて説明されるものとする。
【0016】
画像形成部PYは、感光ドラム1Yの周囲に、帯電装置2Y、露光装置3Y、現像装置4Y、一次転写ローラ5Y、クリーニング装置11Yが配置されて構成されている。感光ドラム1Yは、例えばアルミニウム製シリンダの外周面に、帯電極性が負極性の感光層が形成されてある。感光ドラム1Yは、両端部を回転自在に支持され、一方の端部に不図示の駆動モータから駆動力を伝達して所定の周速度で矢印A方向に回転する。
【0017】
帯電装置2Yは、感光ドラム1Yに例えば帯電ローラを圧接して従動回転させ、該帯電ローラに直流電圧と交流電圧とを重畳した電圧を印加して、感光ドラム1Yの表面を一様な負極性の電位に帯電する。露光装置3Yは、イエローの分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラム1Yの表面に画像の静電像を書き込む。現像装置4Yは、二成分現像剤を攪拌して帯電させて、感光ドラム1Yとカウンタ方向に回転する現像スリーブに穂立ち状態で担持させて、感光ドラム1Yを摺擦させる。そして、負極性の直流電圧に交流電圧を重畳した現像電圧を現像スリーブに印加して、現像スリーブよりも相対的に正極性となった感光ドラム1Yの静電像へ負極性に帯電したトナーを付着させて、静電像を反転現像する。
【0018】
一次転写ローラ5Yは、感光ドラム1Yとの間に中間転写ベルト6を挟み込み、感光ドラム1Yと中間転写ベルト6との間に一次転写部を形成する。そして、一次転写ローラ5Yに正極性の直流電圧を印加して、感光ドラム1Yに担持された負極性のトナー像を、一次転写部を通過する中間転写ベルト6へ一次転写する。クリーニング装置11Yは、クリーニングブレードを感光ドラム1Yに摺擦して、一次転写部を通過して感光ドラム1Yの表面に残留した転写残トナーを除去する。
【0019】
像担持体の一例である中間転写ベルト6は、無端のベルト状に形成され、テンションローラ22、駆動ローラ20、及びバックアップローラ21に支持されて、所定のプロセススピードで矢印G方向に回転する。中間転写ベルト6は、テンションローラ22によって張架力を付与され、駆動ローラ20の端部に不図示の駆動モータから駆動力を伝達して駆動される。バックアップローラ21は、例えばステンレス製の円筒材料で形成されて接地電位に接続されている。そして、中間転写ベルト6は、各画像形成部PY、PM、PC、PKの一次転写部で一次転写されたトナー像を担持して後述する二次転写部Nへ搬送する。また、二次転写後の中間転写ベルト6は、クリーニング装置12で転写残トナーや紙粉等がクリーニングされ、繰り返し作像工程に入る。
【0020】
一方、不図示の給紙カセットには、例えば多数の転写材Pが積層されて収納されており、給紙スタート信号に基づいて不図示の給紙ローラが駆動され、給紙カセット内の転写材Pが1枚ずつレジストローラ対8まで給紙される。レジストローラ対8は、例えば駆動ローラ8aと従動ローラ8bとからなる。該駆動ローラ8aは、上記中間転写ベルト6に担持されて搬送されてくるトナー像の先端部が二次転写部Nに到達するタイミングと、転写材Pの先端部が二次転写部Nに到達するタイミングとが同期するようにして駆動開始され、矢印Bの向きに転写材Pが搬送される。レジストローラ対8で搬送された転写材Pは、詳しくは後述する吸着装置30により静電的に搬送ベルト24に吸着される。
【0021】
搬送ベルト24は、無端のベルト状に形成され、テンションローラ25、駆動ローラ26、及びバックアップローラ27に支持されて、所定のプロセススピードで矢印B方向に回転する。搬送ベルト24は、テンションローラ25によって張架力を付与され、駆動ローラ26の端部に不図示の駆動モータから駆動力を伝達して駆動される。また、テンションローラ25は、例えばステンレス製の円筒材料で形成されて接地電位に接続されている。
【0022】
上記中間転写ベルト6及び搬送ベルト24を挟んで上記バックアップローラ21に対向する位置には、二次転写ローラ9が配置され、該バックアップローラ21と該二次転写ローラ9とで二次転写部N(二次転写ニップ)を形成する。二次転写部Nに導入された転写材Pは、二次転写部Nで挟持搬送されると共に、二次転写ローラ9には二次転写バイアス電源(転写電圧印加手段)13から所定の値に制御された定電圧バイアス(転写用バイアス電圧)が印加される。二次転写ローラ9には、トナーと逆極性の転写バイアスが印加されることで二次転写部Nにて中間転写ベルト6上に重ね合わされた4色のフルカラー画像を転写材Pへ一括転写して、転写材P上にフルカラーの未定着トナー像が移動される。
【0023】
二次転写部Nを通過した転写材Pは、搬送ベルト24によって駆動ローラ26まで搬送され、分離爪29で搬送ベルト24から分離される。その後、不図示の定着装置に導入され、転写材P上のトナー像が加熱加圧されて定着された後に画像形成装置100の外部へ排出される。なお、両面印刷時は、転写材Pの表裏が反転されてレジストローラ対8に戻される。一方、分離後の搬送ベルト24はクリーニング装置31で意図せず付着したトナーや紙粉等がクリーニングされ、繰り返し搬送工程に入る。
【0024】
次に本発明の要部となる吸着装置30について説明する。吸着装置30は、大まかに、吸着ローラ(第2接触部材)28、テンションローラ(第1接触部材、接地ローラ)25、駆動モータ(駆動手段)32等により構成されている。このうちのテンションローラ25は、搬送ベルト24が張架されている(搬送ベルト24に接触する)と共に吸着ローラ28に対向配置された対向電極として接地電位に接続されて構成されている。一方、吸着ローラ28は、該テンションローラ25に対して搬送ベルト24を挟んで対向配置されると共に、該搬送ベルト24により搬送される転写材Pの表面側に接触するように構成されている。該吸着ローラ28は、バイアス印加電源には接続されておらず、電気的にフロートの状態となるように構成されている。
【0025】
即ち、吸着ローラ28から吸着バイアスの印加を行わない場合、転写材Pと搬送ベルト24の吸着力を得られなくなる。そこで本実施の形態では、図3に示すように、吸着ローラ28の表面28a、つまり転写材Pと接触する部分を絶縁性の高分子材料(即ち、絶縁材料)で被覆した構成とした。特にこの絶縁性の高分子材料は、体積抵抗率は1×1014Ω・cm〜1×1017Ω・cmの範囲内であって、負極の帯電特性を持ったものが好ましい。これにより、少なくとも吸着ローラ28の表面28aは、画像形成装置本体に対して電気的に絶縁され、つまり電気的にフロートの状態となる。
【0026】
なお、この高分子材料としては、ポリエチレン、ポリアミド系樹脂、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを用いることができる。さらに、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)なども用いることができる。
【0027】
ここで、吸着装置30による吸着の原理について説明する。吸着ローラ28の表面28aの絶縁性の高分子材料、即ち高抵抗の材質が転写材Pと摺動すると、図3に示すように、高分子材料が自己帯電して、その表面に電荷を保持する状態になる。ここで、例えば吸着ローラ28の表面28aに−3kVの帯電電位が生じるとする。この時、転写材Pと接地電位のテンションローラ25に接触する搬送ベルト24との間に電位差3kVの電界が形成される。転写材Pの表面は、吸着ローラ28による微小ギャップでの放電により負に帯電され、搬送ベルト24の背面には正の電荷が誘起され正に帯電される。この電荷の静電気力により、転写材Pは搬送ベルト24に吸着される。これにより、吸着バイアスを印加せずに転写材Pが搬送ベルト24に吸着する効果が得られるようになる。
【0028】
ここで、上述のように、吸着ローラ28の表面28aの絶縁性高分子材料における体積抵抗率は1×1014Ω・cm〜1×1017Ω・cmの範囲内が望ましい。該体積抵抗がこの範囲を上まわった場合は、低湿環境下において帯電量が過剰になる。すると、坪量の少ない転写材、例えば50g/m以下のものでは転写材自体の剛度が少ないので、搬送ベルト24に倣って平滑に張り付かない現象が生じ、端部で波打ちなどの貼り付け位置ズレを起こしてしまうことがある。また、体積抵抗が上記範囲を下まわった場合は、高湿環境下において帯電量が不足し、静電容量の大きな転写材の吸着力不足、特に先端部の浮きが発生してしまい、二次転写部へ正しく転写材を搬送することが出来なくなる。
【0029】
なお、体積抵抗率は、円形電極50(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPのHRプローブ)を用い、JIS K6991に従って測定することができる。体積抵抗率の測定方法を図8に沿って説明する。円形電極50は、図8に示すように、第一電圧印加電極51と第二電圧印加電極52とを備える。第一電圧印加電極51は、円柱状電極部51aと、該円柱状電極部51aの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部51aを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部51bとを備える。測定時には、まず、第一電圧印加電極51における円柱状電極部51a及びリング状電極部51bと第二電圧印加電極52との間に高分子材料Wを挟持する。そして、第一電圧印加電極51における円柱状電極部51aと第二電圧印加電極52との間に電圧V[V]を印可したときに流れる電流I[A]を測定する。すると、下記式(1)により、高分子材料Wの体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出することができる。ここで、下記式(1)中、tは、高分子材料Wの厚さを示す。
ρv=19.6×(V/I)×t・・・(1)
【0030】
以上のように、吸着ローラ28を電気的にフロート(絶縁)で構成することで、図4に示すように、高湿環境において吸湿した転写材Pの抵抗値低下が生じても、転写材Pを媒体として二次転写バイアスが吸着ローラ28へ流れ込むことが防止される。この二次転写バイアスの流れ込み防止により、バイアスの干渉が起こって転写抜け画像が生じることを防止する効果が得られる。
【0031】
また、上述のように本実施の形態で使用した吸着ローラ28の表面28aの絶縁性高分子材料は、トナーと同極性の帯電特性を持つ物性があるものとした。このような構成にすることで、図5に示すように、極性的にトナーを反発させることができる。即ち、搬送ベルト24に残トナーTが付着していたとしても、吸着ローラ28の表面28aがトナーTを反発してトナーTを吸着することがない。これにより、吸着ローラ28のトナー汚れ防止の効果が得られる。
【0032】
更に図6に示すように、転写材Pに中間転写ベルト6のトナー像Tiが転写される前にあって、吸着ローラ28と中間転写ベルト6上のトナー像Tiとが近接しても、吸着ローラ28が同極性の帯電であるので、転写前のトナー像Tiを静電的に乱さない。これにより、吸着ローラ28、中間転写ベルト6、及び搬送ベルト24の位置関係において、位置設計に関する自由度が大きくなる利点も得られる。
【0033】
次に、本発明に係る吸着装置30の動作、及び制御について説明する。吸着装置30の吸着ローラ28は、図1及び図2に示すように、駆動モータ32に接続されており、該駆動モータ32に接続された制御手段(CPU)33からの指令により回転速度が変更自在に駆動可能となるように構成されている。即ち、搬送ベルト24による転写材Pの搬送速度に対して、吸着ローラ28の周速を高くすることが可能となっている。
【0034】
また、上記制御手段(CPU)としての制御部33には、図2に示すように、画像形成装置100の内部の温度及び湿度を検知(温湿度検知)する温湿度センサ35が接続されており、温湿度データが入力される。更に、該制御部33には、上述した画像形成部PY、PM、PC、PKが接続されており、画像形成実行指令を出力し得ると共に、画像形成を実行した際に画像形成実行信号が入力される。そして、該制御部33には、図示を省略した給紙ローラやレジストローラ対8を含む給紙駆動部34に接続されている。即ち、温湿度センサ35の温湿度データ(検知結果)をトリガとして、制御部33から、給紙駆動部34のスタート指令と、駆動モータ32の駆動開始タイミング及びその周速度の指令と、画像形成部PY、PM、PC、PKの画像形成実行指令とを送る。これにより給紙駆動部34は、上記画像形成実行に応じてタイミングを合わせる形で転写材Pを二次転写部Nに供給する。
【0035】
上記のように本実施の形態では、温湿度センサ35からの温湿度データ(検知結果)に応じて、吸着ローラ28の周速度(駆動速度)や駆動開始タイミングが自由に変更設定できるようになっている。しかし、転写材Pの搬送速度に対しての吸着ローラ28の周速差(相対速度差)は、3%以内であることが望ましい。これは、坪量の低い転写材において、3%以上の周速差をつけてしまうと、転写材の先端に搬送方向への強い張力が作用して、搬送ベルト24に対する吸着位置ズレを起こしてしまうからである。これらのことを踏まえ、本実施の形態で設定した、各環境(温湿度)での絶対水分量と吸着ローラ28の周速差との関係を、下記表1に示す。即ち、静電容量の大きな転写材の吸着力不足を解消するべく、高湿環境下において、最大の吸着ローラ周速差をつけて対応している。
【0036】
【表1】

【0037】
次に、本実施の形態に係る作像動作について、図7のフローチャートに沿って説明する。まず、画像形成装置の電源がオンされると(S1)、初めに温湿度センサによる温湿度データを読みに行き、上記表1で分類した環境区分の低湿環境以外であるか否かを判定する(S2)。具体的に本実施の形態では、空気中の絶対水分量で区分を行ない、「0.86」、「8.5」、「21.6」[g/kg‐dry air]の3つの区分をそれぞれ閾値として設定した。低湿環境以外(0.86g/kg‐dry air以外)であった場合は(S2のYES)、ステップS3に進む。ステップS3では、常湿環境(8.5g/kg‐dry air)又は高湿環境(21.6g/kg‐dry air)に応じて、吸着ローラ28の周速度を搬送ベルト24による転写材Pの搬送速度よりも高く設定する。またステップS2で低湿環境が判定された場合は(S2のNO)、そのままステップS4に進む。
【0038】
ステップS4に進み、画像形成動作を開始すると、両面画像形成動作の1面目なのか2面目なのかを確認する(S5)。もし、画像形成動作が両面2面目の画像形成動作であった場合は(S5のYES)、吸着ローラ28の周速度を搬送ベルト24による転写材Pの搬送速度と同じに設定する(S6)。これは、両面2面目の画像形成では、転写材Pが1回定着装置を通過して加熱されている為、高湿環境下においても転写材Pの水分量は低くなっていると考えられる。そこで、吸着ローラ28の周速度を高くしてしまうと、転写材Pに過剰な吸着電荷を与えることになってしまい、貼り付き位置不良等を生じてしまうからである。
【0039】
そして、以上のように吸着ローラ28の周速度が設定されると、転写材Pの先端が吸着ローラ28に到達する前の段階で、その設定された周速度で吸着ローラ28を駆動させる(S7)。その後、画像形成動作を続けるか、否かを判断し(S8)、続ける場合は(S8のYES)の場合はステップS2に戻り、画像形成動作を続ける。画像形成動作を続けない場合は(S8のNO)、つまり画像形成動作を終了し、以上で作像動作の制御を終了する。
【0040】
以上のように、特に低湿環境以外において、吸着ローラ28の周速度を搬送ベルト24の搬送速度に対して相対的に高めることで、転写材Pと摺擦する量を増やすことができる。すると、吸着ローラ28の表面28aを覆っている絶縁性高分子材料の帯電量がより上昇して、特に高湿環境下にあっても、静電容量の大きな転写材の吸着力不足が解消される。
【0041】
また、上述のように、吸着ローラ28の駆動開始タイミングとしては、転写材Pの先端が吸着ローラ28に到達する前の段階から行うことが望ましい。即ち、転写材Pの先端が吸着ローラ28にニップされる前の段階から吸着ローラ28を駆動することで、搬送ベルト24と吸着ローラ28との間で摺擦が起り、吸着ローラ28の表面電荷を十分に蓄えることができる。そうすると、転写材Pがレジストローラ対8から搬送され、その先端が吸着ローラ28とニップする際には、吸着ローラ28の表面電荷が飽和電荷量近傍まで蓄えられているので、転写材Pの先端の搬送ベルト24への吸着不良を防止できる効果を得られる。
【0042】
<第2の実施の形態>
次に上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について、図9乃至図11に沿って説明する。なお、本第2の実施の形態の説明において、上記第1の実施の形態と同様な部分は、同符号を付して、その説明を省略する。
【0043】
本第2の実施の形態に係る吸着装置130は、図9に示すように、吸着ローラ128の表面の外周側に絶縁性の高分子素材のブラシ状からなるブラシ部128aを備えたものである。このような吸着ローラ128のブラシ部128aで転写材Pを摺擦する場合は、第1の実施の形態のように絶縁性高分子素材がソリッド状態となっている場合に比較して、接触圧力を低く、接触面積も大きくすることが可能となる。これにより、転写材Pの搬送速度に対しての吸着ローラ128の周速差を、第1の実施の形態と比較して高くした場合でも、該第1の実施の形態で懸念していた転写材Pの吸着位置ズレを起こさないようになる。
【0044】
また、吸着ローラ128の外周側をブラシ状にすることで、接触面積の増大と周速差アップが可能となることにより、絶縁性高分子素材の帯電量が第1の実施の形態よりも上昇できる。これにより、坪量の高い厚紙やOHPシートなどの電気容量の多い転写材であっても十分に静電的な吸着力を付与することができ、特に広い範囲のメディアに対しての吸着力不足を解消するといった効果を、簡単な構成で得ることができる。これらのことを踏まえ、本第2の実施の形態で設定した、各環境(温湿度)での絶対水分量及び転写材種類(坪量)と吸着ローラ128の周速差との関係を、下記表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
次に、本第2の実施の形態に係る作像動作について、図11のフローチャートに沿って説明する。なお、本第2の実施の形態においては、第1の実施の形態における制御部(CPU)33の構成に加え(図2参照)、転写材種類データDが入力され得るように構成されている。この転写材種類データDは、例えばパーソナルコンピュータに対する入力操作の結果、画像形成装置の操作パネルに対する入力操作の結果、給紙カセットの種別設定の結果など、ユーザの設定作業に基づくものが考えられる。更に、転写材の種類を判別する装置等を画像形成装置内に設けて、その判別結果に基づき転写材種類データDを生成することも考えられる。
【0047】
まず、画像形成装置の電源がオンされると(S11)、初めに温湿度センサの検知データを読みに行き、上記表2で分類した3つの環境区分のどこに該当するかを確認する(S12)。ここで得られたデータを、「情報DA」とする。また、本第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、空気中の絶対水分量で区分を行ない、「0.86」、「8.5」、「21.6」[g/kg‐dry air]の3つの区分をそれぞれ閾値として設定した。更に、本第2の実施の形態では、転写材種類データDを取得し(図10参照)、表2で分類した転写材区分の何れに該当するかを分類する(S13)。ここで得られたデータを、「情報DB」とする。そして、これら「情報DA」、「情報DB」を上記表2に当てはめて、該当した吸着ローラ128の駆動速度(周速度)を決定する(S14)。
【0048】
その後は、第1の実施の形態と同様に、画像形成動作を開始すると(S15)、両面画像形成動作の1面目なのか2面目なのかを確認する(S16)。もし、画像形成動作が両面2面目の画像形成動作であった場合は(S16のYES)、吸着ローラ128の周速度を搬送ベルト24による転写材Pの搬送速度と同じに設定する(S17)。これは、両面2面目の画像形成では、転写材Pが1回定着装置を通過して加熱されている為、高湿環境下においても転写材Pの水分量は低くなっていると考えられる。そこで、吸着ローラ128の周速度を高くしてしまうと、転写材Pに過剰な吸着電荷を与えることになってしまい、貼り付き位置不良等を生じてしまうからである。
【0049】
そして、上記のように吸着ローラ128の周速度(駆動速度)が設定されると、転写材Pの先端が吸着ローラ128に到達する前の段階で、その設定された周速度で吸着ローラ128を駆動させる(S18)。その後、画像形成動作を続けるか、否かを判断し(S19)、続ける場合は(S19のYES)の場合はステップS12に戻り、画像形成動作を続ける。画像形成動作を続けない場合は(S19のNO)、つまり画像形成動作を終了し、以上で作像動作の制御を終了する。
【0050】
以上のように、本第2の実施の形態では、吸着ローラ128の表面の外周側を絶縁性高分子素材のブラシ状で形成することで、厚紙やOHPシートなどの電気容量の多い転写材であっても十分に静電的な吸着力を付与することができる。また、坪量が高くなるほど、かつ湿度が高くなるほど、吸着ローラ128の搬送ベルト24に対する周速度を大きくすることで、吸着力不足を解消する効果を得ることができる。
【0051】
なお、以上説明した第1及び第2の実施の形態における吸着装置30,130においては、静電電荷を付与する手段として吸着ローラを用いているが、特にローラ(回転するもの)でなくても本発明を実現できる。例えば吸着ローラの代わりに、平板状の高分子材料(第2接触部材)で構成し、レジストローラ対8で搬送される転写材の表面に接触して摺擦させるように構成することも考えられる。また、その第2接触部材に対向配置され、接地電位により電界を形成する部材も、搬送ベルト24に接触する部材(第1接触部材)であれば足り、特にローラである必要はない。
【0052】
また、本発明を適用する画像形成装置として、4色のフルカラー画像を形成するレーザービームプリンタを一例として説明したが、これに限らず、複数色や単色(モノクロ)の画像形成装置であってもよい。さらに、本発明を適用する画像形成装置として、中間転写ベルトにトナー像を形成して、転写材に二次転写するものを一例として説明したが、感光ドラムから直接転写材にトナー像を転写するものであってもよい。つまり、転写材を搬送ベルトに吸着させて転写部に搬送する画像形成装置であれば、本発明を適用し得る。
【符号の説明】
【0053】
1…像担持体(中間転写ベルト):9…転写ローラ(二次転写ローラ):13…転写電圧印加手段(二次転写バイアス電源):24…搬送ベルト:25…第1接触部材、接地ローラ(テンションローラ):28、128…第2接触部材、吸着ローラ:28a、128a…吸着ローラの表面:32…駆動手段(駆動モータ):33…制御手段(制御部):35…温湿度検知手段(温湿度センサ):100…画像形成装置:N…転写部(二次転写部):P…転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体のトナー像を転写する転写部を形成する転写ローラと、前記転写ローラに転写用バイアス電圧を印加する転写電圧印加手段と、前記転写部を通過するように転写材を搬送する搬送ベルトと、を備えた画像形成装置において、
前記搬送ベルトに接触する第1接触部材と、
前記搬送ベルトを挟んで前記第1接触部材に対向配置され、通過する転写材に接触する第2接触部材と、を備え、
前記第1接触部材を接地電位に接続すると共に前記第2接触部材を電気的にフロートの状態で構成し、転写材を静電的に前記搬送ベルトに吸着させる、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1接触部材は、前記搬送ベルトに接触する接地ローラからなり、
前記第2接触部材は、通過する転写材に接触する吸着ローラからなり、
前記吸着ローラの表面を、絶縁材料により形成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記吸着ローラの表面の絶縁材料は、トナーの帯電極性と同極性の帯電極性を有する高分子素材からなる、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記吸着ローラの表面の絶縁材料は、体積抵抗率が1×1014Ω・cm〜1×1017Ω・cmの絶縁性を有する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記吸着ローラの表面の絶縁材料は、外周側がブラシ状に形成されてなる、
ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記吸着ローラの表面の周速度と前記搬送ベルトの転写材の搬送速度との相対速度を変更自在に前記吸着ローラを駆動可能な駆動手段と、
前記駆動手段による前記吸着ローラの駆動速度を制御する制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成装置の内部の温度及び湿度を検知する温湿度検知手段を備え、
前記制御手段は、前記温湿度検知手段の検知結果に応じて前記相対速度を変更設定する、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、転写材の種別に関する情報を取得し、該転写材の種別に応じて前記相対速度を変更設定する、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−248286(P2011−248286A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124200(P2010−124200)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】