説明

画像形成装置

【課題】開封確認要求付きの電子メールの送信者に開封通知を返信可能であって、省電力性に優れた画像形成装置を提供する。
【解決手段】複合機(画像形成装置)は、画像形成部と、ネットワークアダプタと、フラッシュメモリと、制御部と、を備える。画像形成部は、用紙に画像を形成する。ネットワークアダプタは、開封確認要求付きの電子メールを受信可能であるとともに、開封通知を送信可能である。フラッシュメモリは、省電力モード中に受信した開封確認要求付きの電子メールについて、開封通知期限を記憶する。制御部は、開封確認要求付きの電子メールを省電力モード中に受信したときに省電力モードを維持させるとともに、当該開封通知期限が経過する前に省電力モードからの復帰処理を行い、省電力モードからの復帰後に、電子メールの内容の印刷を画像形成部に行わせるとともに、当該電子メールについての開封通知の送信をネットワークアダプタに行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力モードを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタ等の画像形成装置において、待機電力を平常時よりも小さくした省電力モードを有するものが知られている。この省電力モードは、一部の部品で消費される電力を抑える(又はゼロにする)ことで実現される。
【0003】
この種の画像処理装置において、省電力性を向上させる観点からは、省電力モードから頻繁に復帰させることは好ましくない。特許文献1及び2は、省電力モードから復帰させる頻度を減らす制御を行う画像形成装置を開示する。
【0004】
特許文献1の画像処理装置は、ユーザから受けた指示(要求)を記憶するための要求記憶手段を備えている。この要求記憶手段に記憶された要求内容は、画像処理装置が省電力モードから復帰した際にまとめて行われる。この構成により、省電力モードから復帰させる頻度を減らすことができる。
【0005】
また、この画像処理装置は、省電力モード中にユーザから指示を受けた場合、この指示を要求記憶手段に記憶するか、省電力モードから即座に復帰してこの指示を行うか、を所定の条件に応じて切り替える制御を行っている。特許文献1には、この所定の条件の具体例として、画像処理装置の各部の通電状況、要求記憶手段の空き容量、要求記憶手段に記憶された指示の個数、指示を行った者の権限、及び即座に処理を行う旨の設定がされた指示か否か、等が開示されている。
【0006】
特許文献2の画像形成装置は、通常の動作状態よりも消費電力が低い省電力状態に移行する機能を有している。また、画像形成装置は、当該装置が備える機器に関する情報(機器情報)について所定の処理を求める要求としての機器情報処理要求を記憶するための要求記憶手段を備えている。そして、画像形成装置において設定時刻になる等の所定の通電開始条件が成立すると、記憶手段に記憶された複数の機器情報処理要求がまとめて処理される。この構成により、省電力状態から復帰する頻度を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−88499号公報
【特許文献2】特開2007−267235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年では、ネットワークに接続して電子メールを送受信可能な画像形成装置が知られている。この画像形成装置は、受信した電子メールの内容(題名、本文、及び添付された画像ファイル等)を印刷することが可能となっている。また、画像形成装置が画像読取部を備える場合は、読み取った画像を添付した電子メールを送信すること等が可能となっている。
【0009】
また、電子メールの送受信が可能な画像形成装置では、開封確認要求付きの電子メールを受信したときに、メールヘッダ等から開封確認要求の内容を認識することができる構成も知られている。このような画像形成装置は、開封確認要求付きの電子メールの内容を印刷した後に(画像形成装置は印刷を行うことで電子メールを開封したと判断する)、適切な情報(メール毎に一意的に付けられるID情報等)を送信者に電子メールで返信する。この開封確認要求には返信期限(開封通知期限)が設定されることがあり、この返信期限内に開封通知を返信しなかった場合、電子メールが開封されていないと送信者側に判断されることになる。
【0010】
この開封通知期限は、個々の電子メールにおいて、送信者が状況に応じて任意に設定するのが通常である。従って、開封確認要求の内容を認識することができる画像形成装置において、上記特許文献1及び2の考え方を適用して、省電力モードからの復帰頻度を減らすために開封確認要求付きの電子メールの処理を複数まとめて行うような制御を行うと、例えば返信期限が短い電子メールを受信した場合に、返信期限内に開封通知を返信できないことがある。これを防止するためには、特許文献1の構成では、開封確認要求付きの電子メールを受信するごとに、常に省電力モードから復帰させる制御等を行う必要がある。一方、特許文献2の構成では、処理をまとめて行う時刻を小刻みにする設定等を行う必要がある。
【0011】
しかし、このような制御及び設定では、省電力モードから復帰させる頻度が増えてしまい、画像形成装置等で消費される電力が増加してしまう。
【0012】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、開封確認要求付きの電子メールの送信者に開封通知を返信可能であって、省電力性に優れた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0014】
本発明の観点によれば、以下の構成の画像形成装置が提供される。即ち、この画像形成装置は、画像形成部と、送受信部と、記憶部と、制御部と、を備える。前記画像形成部は、記録媒体に画像を形成する。前記送受信部は、開封確認要求付きの電子メールを受信可能であるとともに、当該開封確認要求に対する開封通知を送信可能である。前記記憶部は、前記画像形成部に供給される電力が抑えられた省電力モード中に受信した開封確認要求付きの電子メールについて、前記開封通知を送信する期限として当該電子メールに設定されている開封通知期限を記憶する。前記制御部は、開封確認要求付きの電子メールを省電力モード中に受信したときに前記開封通知期限に基づいて省電力モードを維持させるとともに、当該開封通知期限が経過する前に省電力モードからの復帰処理を行い、当該省電力モードからの復帰後に、当該開封通知期限が設定された電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせるとともに、当該電子メールについての前記開封通知の送信を前記送受信部に行わせる。
【0015】
これにより、開封通知期限に基づいて省電力モードからの復帰及び開封通知の送信等を行っているため、画像形成装置を頻繁に省電力モードから復帰させないようにすることができる。従って、省電力モードから復帰させる頻度を減らして、画像形成装置の消費電力を低減させることができる。
【0016】
前記の画像形成装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記記憶部は、少なくとも、第1電子メールについての前記開封通知期限である第1開封通知期限と、第2電子メールについての前記開封通知期限であって前記第1開封通知期限よりも遅い期限が設定された第2開封通知期限と、を記憶可能である。前記制御部は、前記第1開封通知期限に基づいて省電力モードからの復帰処理を行ったときに、前記第1電子メールだけでなく前記第2電子メールについても、電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせるとともに、当該電子メールについての前記開封通知の送信を前記送受信部に行わせる。
【0017】
これにより、記憶部が複数の開封通知期限を記憶しているときに画像形成装置が省電力モードから復帰した場合、開封確認要求付きの電子メールに対応する処理をまとめて行うことができる。従って、複数の開封通知期限を用いてそれぞれの開封通知期限のタイミングに応じて省電力モードから復帰させる構成と比較して、省電力モードから復帰させる頻度を減らすことができる。従って、画像形成装置の消費電力を一層低減させることができる。
【0018】
前記の画像形成装置においては、前記制御部は、前記第1開封通知期限に基づいて省電力モードからの復帰処理を行ったときに、前記第1電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせた後に、前記第2電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせることが好ましい。
【0019】
これにより、復帰の要因となった(期限が迫っている)開封通知期限が設定された電子メールについて、他の電子メールよりも素早く処理(印刷及び開封通知の送信)を完了させることができる。従って、上記処理中に開封通知期限が経過することを防止できる。
【0020】
前記の画像形成装置においては、前記制御部は、前記開封通知期限に基づいて省電力モードからの復帰処理を行ったときに、電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせるとともに、当該電子メールについての前記開封通知の送信を前記送受信部に行わせ、省電力モード中に即座に行うことが要求されない印刷処理の指示を受けていた場合の当該印刷を前記画像形成部に行わせることが好ましい。
【0021】
これにより、画像形成装置が省電力モードから復帰したときに、開封確認要求付きの電子メールに対応する処理だけでなく、他の印刷処理もまとめて行うことができる。従って、省電力モードから復帰させる頻度を減らすことができるので、画像形成装置の消費電力を一層低減させることができる。
【0022】
前記の画像形成装置においては、前記制御部は、印刷処理の指示に対応するために省電力モードからの復帰処理を行ったときに、当該印刷を前記画像形成部に行わせるだけでなく、開封確認要求付き電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせるとともに、当該電子メールについての前記開封通知の送信を前記送受信部に行わせることが好ましい。
【0023】
これにより、省電力モードから復帰したときに、当該復帰の原因に関係なく、開封確認要求付きの電子メールに対応する処理を行うことができる。従って、省電力モードから復帰する頻度を減らすことができるので、画像形成装置の消費電力を一層低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るコピーファクシミリ複合機の機能ブロック図。
【図2】省電力モード中に開封確認要求付きの電子メールを受信したときの処理を示すフローチャート。
【図3】開封通知期限テーブル及び一括返信時刻の例を示す表。
【図4】省電力モードから復帰するタイミングを判断する処理の流れ及び省電力モードから復帰してからの処理の流れを示すフローチャート。
【図5】その他の印刷処理を行うために省電力モードから復帰したときの処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係るコピーファクシミリ複合機のブロック図である。画像形成装置としてのコピーファクシミリ複合機(以下、複合機90)は、ファクシミリ機能、コピー機能、スキャナ機能、及びネットワークプリンタ機能を備える多機能周辺装置(Multi−Function Peripheral、MFP)として構成される。
【0026】
図1に示すように、複合機90は、画像読取部21と、画像形成部22と、画像メモリ25と、ファクシミリ送受信部26と、操作部12と、制御部13と、フラッシュメモリ(記憶部)14と、表示部15と、バス60と、を備える。また、本実施形態の複合機90には、当該複合機90をLAN81に接続するためのネットワークアダプタ(送受信部)40が取り付けられている。
【0027】
画像読取部21は、スキャナ機能を実現するためのものである。本実施形態の画像読取部21は、CCDセンサ又は密着型イメージセンサ等の読取装置を備えており、この読取装置によって原稿を読み取り、当該原稿の画像データを取得する。
【0028】
画像形成部22は、プリンタ機能を実現するためのものであり、画像データを紙等の記録媒体に記録するための出力装置を備える。例えば、出力装置としては、LED等の光源を用いて感光体にトナーを選択的に付着させて、ヒートローラ及びプレスローラによってそのトナーを記録媒体に熱転写して印刷を行う方式を採用することができる。
【0029】
画像メモリ25は、画像読取部21で取得した画像データを保存し及び一時記憶するためのものである。
【0030】
ファクシミリ送受信部26は、電話回線を通じたファクシミリ機能を実現するためのものである。ファクシミリ送受信部26は、ネットワークコントロールユニット(NCU)、FAXモデム及びコーデック部等で構成されている。ファクシミリ送受信部26は、前記NCUを介して公衆交換電話網(PSTN)31に接続されており、変換復調装置としてのFAXモデムによって音声信号とデータ列とを相互変換する。コーデック部は、画像データを送信するためにMH、MR、MMR等の適宜の形式で圧縮を行う機能を有している。また、コーデック部は、受信した画像データを適宜の形式に展開する機能を有している。
【0031】
操作部12は、画像情報のファクシミリ送信、原稿の読取り又はコピー指示等をユーザが行うためのものである。操作部12は、ユーザによって操作されるテンキー、送信ボタン、スリープボタン等の各種操作手段を備えている。表示部15はディスプレイ等で構成され、操作部12を用いて行われた操作に応じて各種情報を表示することができる。
【0032】
制御部13は、装置全体の制御を行うためのものであり、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びROM(リードオンリーメモリ)等で構成される。ROMには、装置の各部のハードウェアを制御するためのプログラム(ファームウェア等)が記憶されている。RAMは、プログラムのロード及び実行に使用されるほか、一時的なデータの記憶メモリとして用いられる。CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行する演算部として用いられる。フラッシュメモリ14は、各種のソフトウェア及び複合機90の各種の設定等を記憶することができる。
【0033】
なお、ユーザは、操作部12を操作して所定の時間帯(又は時刻)及びファイルを指定して、指定した時間帯にこのデータを印刷させることができる(印刷予約)。なお、ここで指定された時間帯等の印刷予約情報は、フラッシュメモリ14に記憶される。また、指定可能なデータとしては、例えば、フラッシュメモリ14が記憶するファクシミリ通信記録等を挙げることができる。
【0034】
バス60は、図1に示すように、上述した装置の各部を互いに接続するものである。バス60としては、例えばPCI(Peripheral Component Interconnect)の規格に従って構成されたものを用いることができる。
【0035】
ネットワークアダプタ40は、複合機90がLAN81に接続するためのインタフェースであり、複合機90本体内の各部(制御部13及びフラッシュメモリ14等)と前記バス60を介して接続されている。図1に示すように、ネットワークアダプタ40はLAN81に接続されており、このLAN81には、ユーザが使用するパーソナルコンピュータ71が接続されている。この構成により、パーソナルコンピュータ71は、複合機90に対して印刷指示及び設定変更等を行うことができる。
【0036】
また、LAN81は、ルータ72を介してインターネット82に接続されている。従って、複合機90は、インターネット82を介して、例えばファームウェアの書換えを行うことができる他、以下に示すように、電子メールの送受信を行うこともできるように構成されている。
【0037】
即ち、複合機90は、前記ハードウェア及びソフトウェアの組合せにより、SMTP部及びPOP部等を構成することができるように構成されている。SMTP部は、簡易電子メール転送プロトコル(SMTP)を利用して、電子メールを送信可能に構成されている。また、POP部は、POP3プロトコルを利用して電子メールを受信可能に構成されている。
【0038】
なお、複合機90は、画像データが添付された電子メールを受信したときは、当該電子メールから画像データを取り出して展開し、画像形成部22で印刷できるようになっている。また、複合機90は、開封確認要求付きの電子メールを受信したときに、開封確認要求が付けられていることを認識可能となっている。そして、開封確認要求が付けられた電子メールを印刷した後に、当該電子メールの送信者に開封通知を返信するように構成されている。なお、複合機90が開封確認要求付きの電子メールに対応するために省電力モード中に行う処理の詳細については後述する。
【0039】
次に、複合機90が有する省電力モードについて説明する。複合機90は、画像形成部22のヒートローラ等に供給する電力を抑えた省電力モードを有している。複合機90が省電力モードに移行する条件は任意に設定できるが、例えば、印刷の指示が所定時間以上行われなかったこと、又は操作部12において前記スリープボタンの操作が行われたこと等が考えられる。この省電力モード中では、ヒートローラの温度が低くなっているため、即座に印刷を行うことができない。
【0040】
省電力モードに移行後の複合機90が印刷の指示を受けた場合は、制御部13は、初めにヒートローラに電力を供給して当該ヒートローラの温度を上昇させる(ウォームアップ)。その後、制御部13は、印刷が行える程度にヒートローラの温度が上昇した後に(省電力モードから復帰した後に)、指示された印刷を開始する。以下の説明では、上記のようにヒートローラに電力を供給する等して制御部13が複合機90を省電力モードから復帰させる処理を「省電力モードからの復帰処理」と称することがある。
【0041】
なお、この省電力モードにおいては制御部13等は通常通り動作しており、操作部12等を介したユーザからの指示を受けること、ファクシミリ原稿を受信すること、及び電子メールを受信すること等は可能である。また、複合機90は、省電力モードから復帰させる条件について、様々な設定を行うことができる。例えば、ファクシミリ原稿又は電子メールを受信した時点で省電力モードから即座に復帰するように複合機90を設定することができる。あるいは、ファクシミリ原稿又は電子メールを受信しても省電力モードから復帰せず、その他の要因で省電力モードから復帰したときに当該ファクシミリ原稿又は電子メールの印刷をまとめて行う設定を行うことができる(印刷待機)。なお、印刷待機の設定を行った場合は、受信した電子メール等の情報は、印刷待機情報としてフラッシュメモリ14に記憶される。
【0042】
次に、開封確認要求付きの電子メールについて詳細に説明する。電子メールの送信者は、開封確認を要求する電子メールであることを示す情報を例えばメールヘッダに記述することにより、受信者に開封通知を要求することができる。この場合、メールヘッダには、上記の情報のほか、開封通知の送信先のメールアドレス(通常は電子メールの送信者のメールアドレス)等を示す情報が記述されることになる。なお、開封確認を希望する送信者は、この開封通知がされるべき期限(開封通知期限、返信期限)を設定することができる。
【0043】
複合機90は、省電力モード中でない場合は、この開封確認要求付きの電子メールを受信すると、当該電子メールを即座に印刷する。そして、印刷の完了後に、指定されたメールアドレスに開封通知のメールを送信(返信)する。なお、この開封通知の内容には、自身(複合機90)のメールアドレスの他、メール毎に一意的に付けられるID情報及び複合機90のメールアドレス等が含まれる。
【0044】
しかし、省電力モード中において、仮に、開封確認要求付きの電子メールを受信する度に省電力モードから復帰させる場合、ヒートローラの温度を頻繁に上昇させる必要が生じるため、複合機90で消費される電力が大きくなってしまう。この点、本実施形態の複合機90は、開封通知期限に基づいて以下で示すような処理を行うことで、複合機90で消費される電力を抑えている。
【0045】
初めに、省電力モード中に開封確認要求付きの電子メールを受信したときに制御部13が行う処理について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、省電力モード中に開封確認要求付きの電子メールを受信したときの処理を示すフローチャートである。図3は、開封通知期限テーブルの例を示す表である。
【0046】
制御部13は、開封確認要求付きの電子メールを省電力モード中に受信した場合(S101)、当該電子メールのメールヘッダ等に記述された情報に基づいて、この電子メールの開封通知の開封通知期限を取得する(S102)。制御部13は、この取得した開封通知期限に基づいて、開封通知期限テーブルを更新(又は作成)する(S103)。
【0047】
開封通知期限テーブルとは、図3に示すように、省電力モード中に受信した開封確認要求付きの電子メールのうち未処理のものについて、当該電子メールの名称(又は当該電子メールのID情報)と、その電子メールに対する開封通知期限と、を対応付けたテーブルである。例えば図3に示すメールAについての開封通知期限は、2010年5月31日の13時51分である。そして、省電力モード中に開封確認要求付きの電子メールを受信した場合は、この開封通知期限テーブルの行が1つ追加され、受信した電子メールの名称と開封通知期限が記録される。なお、この開封通知期限テーブルは、フラッシュメモリ14に記憶される。
【0048】
制御部13は、上記のように開封通知期限テーブルを更新した後に、一括返信時刻を再計算(計算)する(S104)。本実施形態では、一括返信時刻は、開封通知期限テーブルに記載された開封通知期限のうち、最も期限が近い(期限が迫っている)開封通知期限より所定時間(図3に示す例では5分)だけ前の時刻として計算される。図3(a)に示す例では、メールCに対する開封通知期限(2010年5月30日の10時05分)が最も期限が近い。従って、この場合の一括返信時刻は、図3(b)に示すように、2010年5月30日の10時00分である。
【0049】
制御部13は、省電力モード中に開封確認要求付きの電子メールを受信する毎に、以上の処理(S101からS104)を行っている。
【0050】
次に、省電力モードから復帰するタイミングを判断する制御及び省電力モードから復帰してからの制御部13の制御について、図4を参照して説明する。図4は、これらの制御を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【0051】
制御部13は、S104で求めた一括返信時刻と現在の時刻とを比較して、一括返信時刻を経過しているか否かを判断している(S201)。そして、一括返信時刻を経過しているときは、上述のように、画像形成部22のヒートローラ等に電力を供給して温度を上昇させて、複合機を省電力モードから復帰させる(S202)。
【0052】
制御部13は、ヒートローラ等の温度が上昇して印刷が可能な状態になると、開封通知期限が一番迫っている電子メール(即ち、一括返信時刻を求める際に用いた電子メール、図3においてはメールC)の内容の印刷を画像形成部22に行わせる(S203)。そして、制御部13は、印刷が終了した後に、ネットワークアダプタ40及びSMTP部を適宜制御して、この電子メールについての開封通知を、指定されたアドレスに送信させる(S203)。
【0053】
その後、制御部13は、開封通知期限テーブル等を参照して、省電力モード中に受信した開封確認要求付きの電子メールのうち未処理のものがあるか否かを判断する(S204)。そして、未処理の電子メールがあれば(図3においては、メールA,B,D)、当該電子メールについても、電子メールの内容の印刷を画像形成部22に行わせるとともに、開封通知の送信をネットワークアダプタ40等に行わせる(S205)。この処理により、省電力モードから復帰した機会を利用して、残っている開封確認要求付きの電子メールを(開封通知期限に余裕があるものも含めて)まとめて処理し、開封通知を送信することができる。
【0054】
次に、制御部13は、フラッシュメモリ14に記憶された前記印刷予約情報及び前記印刷待機情報を参照して、未処理の印刷処理があるか否かを調べる(S206)。そして、現在の時刻が印刷予約情報に記載された時間帯に含まれていれば、該当する印刷を画像形成部22に行わせる(S207)。また、印刷待機情報があった場合は、当該印刷待機情報に基づいて、該当する印刷を画像形成部22に行わせる(S207)。
【0055】
以上の処理を行うことにより、開封確認要求付きの電子メールに対して、開封通知期限が過ぎることを防止しつつ、複数件をできるだけまとめた形で対応することができる。従って、省電力モードから復帰させる頻度を抑えて、複合機90で消費される電力を抑えることができる。また、開封通知を行うために省電力モードから復帰したときにおいても、予約又は待機していた印刷処理を実行可能となっているため、省電力モードから復帰させる頻度を更に少なくして、複合機90で消費される電力を一層抑えることができる。
【0056】
次に、他の要因で省電力モードから復帰したときの制御部13の制御について、図5を参照して説明する。図5は、この制御を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
上記のように一括返信時刻を経過する前であっても、制御部13は、例えばパーソナルコンピュータ71からの印刷指示を受信した場合(S301)、制御部13は、省電力モードからの復帰処理を行う(S302)。そして、制御部13は、省電力モードからの復帰後に、指示に応じた印刷を画像形成部22に行わせる(S303)。
【0058】
その後、制御部13は、上記のS204及びS205と同等の処理を行う。即ち、制御部13は、開封通知期限テーブル等を参照して、省電力モード中に受信した開封確認要求付きの電子メールのうち未処理のものがあるか否かを判断し(S304)、未処理の電子メールがあれば、当該電子メールの内容の印刷を画像形成部22に行わせるとともに、開封通知の送信をネットワークアダプタ40等に行わせる(S305)。
【0059】
次に、制御部13は、上記のS206及びS207と同等の処理を行う。即ち、制御部13は、フラッシュメモリ14を参照して未処理の印刷処理があるか否かを調べ(S306)、参照した内容に応じた印刷を画像形成部22に行わせる(S307)。
【0060】
以上の処理を行うことにより、開封通知を行う以外の要因で省電力モードから復帰した場合においても、その機会を利用して、開封通知の送信及び未処理の印刷処理等を行うことができる。従って、省電力モードから復帰させる頻度を更に少なくして、複合機90で消費される電力を一層抑えることができる。
【0061】
以上に示したように、本実施形態の複合機90は、画像形成部22と、ネットワークアダプタ40と、フラッシュメモリ14と、制御部13と、を備える。画像形成部22は、記録媒体としての用紙に画像を形成する。ネットワークアダプタ40は、開封確認要求付きの電子メールを受信可能であるとともに、当該開封確認要求に対する開封通知を送信可能である。フラッシュメモリ14は、画像形成部22に供給される電力が抑えられた省電力モード中に受信した開封確認要求付きの電子メールについて、開封通知を送信する期限として当該電子メールに設定されている開封通知期限を記憶する。制御部13は、開封確認要求付きの電子メールを省電力モード中に受信したときに開封通知期限に基づいて省電力モードを維持させるとともに、当該開封通知期限が経過する前に省電力モードからの復帰処理を行い、当該省電力モードからの復帰後に、当該開封通知期限が設定された電子メールの内容の印刷を画像形成部22に行わせるとともに、当該電子メールについての開封通知の送信をネットワークアダプタ40に行わせる。
【0062】
これにより、開封通知期限に基づいて省電力モードからの復帰及び開封通知の送信等を行っているため、複合機90を頻繁に省電力モードから復帰させないようにすることができる。従って、省電力モードから復帰させる頻度を減らして、複合機90の消費電力を低減させることができる。
【0063】
また、本実施形態の複合機90において、フラッシュメモリ14は、電子メールCについての開封通知期限と、電子メールAについての開封通知期限と、を記憶可能である。なお、電子メールCについての開封通知期限の方が、電子メールAについての開封通知期限よりも近い。また、制御部13は、電子メールCについての開封通知期限に基づいて省電力モードからの復帰処理を行ったときに、電子メールCだけでなく電子メールAについても、電子メールの内容の印刷を画像形成部22に行わせるとともに、当該電子メールについての開封通知の送信をネットワークアダプタ40に行わせる。
【0064】
これにより、フラッシュメモリ14が複数の開封通知期限を記憶しているときに複合機90が省電力モードから復帰した場合、開封確認要求付きの電子メールに対応する処理をまとめて行うことができる。従って、複数の開封通知期限を用いてそれぞれの開封通知期限のタイミングに応じて省電力モードから復帰させる構成と比較して、省電力モードから復帰させる頻度を減らすことができる。従って、複合機90の消費電力を一層低減させることができる。
【0065】
また、本実施形態の複合機90においては、制御部13は、電子メールCについての開封通知期限に基づいて省電力モードからの復帰処理を行ったときに、電子メールCの内容の印刷を画像形成部22に行わせた後に、電子メールAの内容の印刷を画像形成部22に行わせる。
【0066】
これにより、復帰の要因となった(期限が迫っている)開封通知期限が設定された電子メールCについて、他の電子メールよりも素早く処理(印刷及び開封通知の送信)を完了させることができる。従って、上記処理中に開封通知期限が経過することを防止できる。
【0067】
また、本実施形態の複合機90においては、制御部13は、開封通知期限に基づいて省電力モードからの復帰処理を行ったときに、電子メールの内容の印刷を画像形成部22に行わせるとともに、当該電子メールについての開封通知の送信をネットワークアダプタ40に行わせ、省電力モード中に即座に行うことが要求されない印刷処理の指示を受けていた場合の当該印刷を画像形成部22に行わせる。
【0068】
これにより、複合機90が省電力モードから復帰したときに、開封確認要求付きの電子メールに対応する処理だけでなく、他の印刷処理もまとめて行うことができる。従って、省電力モードから復帰させる頻度を減らすことができるので、複合機90の消費電力を一層低減させることができる。
【0069】
また、本実施形態の複合機90においては、制御部13は、印刷処理の指示に対応するために省電力モードからの復帰処理を行ったときに、当該印刷を画像形成部22に行わせるだけでなく、開封確認要求付き電子メールの内容の印刷を画像形成部22に行わせるとともに、当該電子メールについての開封通知の送信をネットワークアダプタ40に行わせる。
【0070】
これにより、省電力モードから復帰したときに、当該復帰の原因に関係なく、開封確認要求付きの電子メールに対応する処理を行うことができる。従って、省電力モードから復帰する頻度を減らすことができるので、複合機90の消費電力を一層低減させることができる。
【0071】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0072】
省電力モードから復帰させるタイミングは、開封通知期限に基づいていれば良く、上記で示した例に限られない。例えば、開封通知期限テーブルを更新する毎に一括返信時刻を計算して記憶しておく構成に代えて、S201の判断時に、一括返信時刻を計算する構成にしても良い。
【0073】
上記では、S301において、複合機90が省電力モードから復帰する例として、パーソナルコンピュータ71からの印刷指示を受信した場合を説明したが、これは例示である。上記の他にも、例えば、上記印刷予約等によって複合機90が省電力モードから復帰したときに、開封通知の送信等を行っても良い。
【0074】
複合機90本体において選択基準情報等のデータをフラッシュメモリ14に記憶させることに代えて、例えばハードディスクドライブ(HDD)等に記憶させることができる。
【0075】
上記実施形態では、画像形成装置として複合機90を用いたが、この他にも、ファクシミリ機能、コピー機能、スキャナ機能、及びネットワークプリンタ機能のうち少なくとも何れかの機能を有する装置にも、本発明の構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
13 制御部
14 フラッシュメモリ(記憶部)
22 画像形成部
40 ネットワークアダプタ(送受信部)
90 コピーファクシミリ複合機(画像形成装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成するための画像形成部と、
開封確認要求付きの電子メールを受信可能であるとともに、当該開封確認要求に対する開封通知を送信可能な送受信部と、
前記画像形成部に供給される電力が抑えられた省電力モード中に受信した開封確認要求付きの電子メールについて、前記開封通知を送信する期限として当該電子メールに設定されている開封通知期限を記憶する記憶部と、
開封確認要求付きの電子メールを省電力モード中に受信したときに前記開封通知期限に基づいて省電力モードを維持させるとともに、当該開封通知期限が経過する前に省電力モードからの復帰処理を行い、当該省電力モードからの復帰後に、当該開封通知期限が設定された電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせるとともに、当該電子メールについての前記開封通知の送信を前記送受信部に行わせる制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記記憶部は、少なくとも、第1電子メールについての前記開封通知期限である第1開封通知期限と、第2電子メールについての前記開封通知期限であって前記第1開封通知期限よりも遅い期限が設定された第2開封通知期限と、を記憶可能であり、
前記制御部は、前記第1開封通知期限に基づいて省電力モードからの復帰処理を行ったときに、前記第1電子メールだけでなく前記第2電子メールについても、電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせるとともに、当該電子メールについての前記開封通知の送信を前記送受信部に行わせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、前記第1開封通知期限に基づいて省電力モードからの復帰処理を行ったときに、前記第1電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせた後に、前記第2電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、前記開封通知期限に基づいて省電力モードからの復帰処理を行ったときに、電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせるとともに、当該電子メールについての前記開封通知の送信を前記送受信部に行わせ、省電力モード中に即座に行うことが要求されない印刷処理の指示を受けていた場合の当該印刷を前記画像形成部に行わせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、印刷処理の指示に対応するために省電力モードからの復帰処理を行ったときに、当該印刷を前記画像形成部に行わせるだけでなく、開封確認要求付き電子メールの内容の印刷を前記画像形成部に行わせるとともに、当該電子メールについての前記開封通知の送信を前記送受信部に行わせることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−143876(P2012−143876A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1445(P2011−1445)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】