説明

画像形成装置

【課題】搬送ガイド部材に進行波型の超音波振動を中央部から端部にかけて与えることで搬送中の用紙に開き力を与え、様々な紙種に対して安定した搬送性を確保し、かつ、搬送ガイド部材と用紙との摩擦係数を低減して搬送ガイド部材の表面電位の上昇を抑え、用紙上のトナー像の乱れを低減する。
【解決手段】本発明にかかる画像形成装置は、トナー像を記録媒体Pに転写する転写部22と記録媒体に転写されたトナー像を同記録媒体に定着する定着装置10との間に配置された搬送ガイド部材31A,31Bを有し、転写部を通過した記録媒体が搬送ガイド部材を介して定着装置へと搬送されるものであり、搬送ガイド部材における媒体搬送方向Aと交差する幅方向Bにおいて、搬送ガイド部材の中央部31A1,31B1から端部31A2,31B2にかけて進行波型の超音波振動を与える超音波振動発生装置50を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写部から定着装置の間に搬送ガイド部材を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、転写後、トナー像が記録媒体となる用紙に静電的に付着した状態で定着装置に搬送され、定着装置によって用紙に固着される。そのため、転写部と定着装置の間(以下、「転写定着間」と記す)には搬送ガイド部材が少なくとも1つは存在しており、用紙が定着装置の定着ニップに到達するように設置されている。転写定着間の用紙の搬送性を確保するためには、一般に定着ローラの中央部の径を両端部よりも小さくする鼓形状とすることで、中央部から各端部にかけて開こうとする力(開き力)が搬送中の用紙に作用させてシワなどの発生を抑制して搬送品質を向上させている。また転写後の用紙が搬送ガイド部材を介して搬送されている時に、搬送ガイド部材の表面電位と用紙上のトナー電荷量に大きな差が生じるとトナー像の乱れが発生することがあるため、搬送ガイド部材の表面には中、あるいは高抵抗の材質が用いられることが既に知られている。
特許文献1には、転写率の向上の目的で、中間転写体に接触して設置されたアース板に、転写前に超音波発生装置を用いて超音波振動を与えることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のように定着ローラの鼓形状による開き力の付与では、同じように開き力を与えても紙種によって搬送中の紙挙動は異なり、また定着熱による定着ローラの膨張で鼓形状の効果が時間的に変化することがあるため、様々な紙種に対応した画像形成装置を提供する場合、シワの発生という搬送品質の低下が懸念される。また、転写定着間の搬送ガイド部材は、表面材質の抵抗を高くしているため、用紙と搬送ガイド部材との接触による摩擦帯電で通紙枚数毎に搬送ガイド部材の表面電位が上昇してしまうことがある。表面電位の上昇については、用紙と搬送ガイド部材の表面の摩擦係数や電気抵抗値、転写電流値や除電方式によって様々なパターンがあるが、何れの場合でも、表面電位の上昇は、転写定着間での用紙上のトナー像の乱れに起因してしまう。
特許文献1のように、中間転写体に接触して設置されたアース板に、転写前に超音波発生装置を用いて超音波振動を与えても、搬送中の用紙に与える開き力や搬送ガイド部材の表面電位の上昇という問題は解消できていない。
本発明は、搬送ガイド部材に進行波型の超音波振動を中央部から端部にかけて与えることで搬送中の用紙に開き力を与え、様々な紙種に対して安定した搬送性を確保し、かつ、搬送ガイド部材と用紙との摩擦係数を低減して搬送ガイド部材の表面電位の上昇を抑え、用紙上のトナー像の乱れを低減すること、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る、トナー像を記録媒体に転写する転写部と記録媒体に転写されたトナー像を同記録媒体に定着する定着装置との間に配置された少なくとも1つ以上の搬送ガイド部材を有し、転写部を通過した記録媒体が搬送ガイド部材を介して定着装置へと搬送する画像形成装置は、搬送ガイド部材における媒体搬送方向と交差する幅方向において、搬送ガイド部材の中央部から端部にかけて進行波型の超音波振動を与える超音波振動発生装置を有している。
【0005】
本発明に係る画像形成装置において、超音波振動発生装置は、搬送ガイド部材の中央部から端部にかけて配列されていて、中央部から端部に進む進行波型の超音波振動を搬送ガイド部材に発生させる超音波発生源と、超音波発生源を振動するための電源となる交流電圧印加装置を有する。
本発明に係る画像形成装置において、搬送ガイド部材は、幅方向において分割されていて、媒体搬送方向へ延びる中心線に対して線対称形状としている。
【0006】
本発明に係る画像形成装置において、超音波振動発生装置により発生する進行波型の超音波振動は、各搬送ガイド部材の中央部から端部にかけて同一の進行速度としている。
本発明に係る画像形成装置において、進行波型の超音波振動の位相は、各搬送ガイド部材で同期している。
本発明に係る画像形成装置において、搬送ガイド部材は、媒体搬送方向において複数の領域に区切られていて、超音波発生源は、区切られた領域毎に異なる進行波を発生させるように構成した。
本発明に係る画像形成装置は、搬送ガイド部材の位置に応じて、超音波発生源による各領域の振動出力を制御する制御手段を有する。
本発明に係る画像形成装置は、超音波発生源により発生する振動出力を、装置本体に通紙する紙種に応じて制御する制御手段を有する。
本発明に係る画像形成装置は、超音波発生源により発生する振動出力を画質モードに応じて増減制御する制御手段を有する。
本発明に係る画像形成装置において、搬送ガイド部材は、転写定着間においてすべて配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転写部と定着装置の間に配置された搬送ガイド部材の中央部から端部にかけて進行波型の超音波振動を与えることによって、ローラ形状に頼ることなく搬送中の用紙にその中央部から端部にかけて開き力が発生させることができるので、シワの発生を抑制では、様々な紙種に対して安定した搬送性を確保することができる。また、搬送ガイド部材に超音波振動を発生させることで、搬送ガイド部材表面の摩擦係数が著しく低下するため、用紙と搬送ガイド部材が搬送中に接触しても接触圧としては小さくなり、摩擦帯電が生じにくく、表面電位が上昇しにくくなるので、用紙上のトナー像の乱れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一形態の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の主要部となる、搬送ガイド部材と超音波振動発生手段の概略構成を説明する図である。
【図3】超音波振動発生手段の超音波発生源の構成と配置例を示す拡大斜視図である。
【図4】超音波振動発生手段の振動による開き力の発生を説明するための図である。
【図5】超音波振動発生手段の配置の別な形態を示す拡大斜視図である。
【図6】超音波振動発生手段による紙種と振動パターンの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明は、転写部と定着装置の間(転写定着間)に配設した搬送ガイド部材において、その中央部からその端部(両端部)にかけて超音波振動発生装置を用いて進行波型の超音波振動を与えることにより、搬送中の用紙に、その中央部から端部にかけて開き力を発生させて、用紙シワの発生を極めて少なくして搬送品質を向上させるとともに、用紙と搬送ガイド部材との摩擦帯電を振動により低減して、転写定着間における用紙上のトナー像の乱れも防止するようにした。
【0010】
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例を示す。この画像形成装置は、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラック(Y,C,M,K)のトナーを用いたタンデム式のカラープリンタである。カラープリンタの装置本体100には、その中央に、無端ベルト状の中間転写体6を備えた中間転写ユニットU1が配設されている。中間転写体6は多層構造となっており、そのベース層を例えば伸びの少ないフッ素樹脂やPVDシート、ポリイミド系樹脂でつくり、表面をフッ素系樹脂等の平滑性のよいコート層で被って構成されている。中間転写体6は、複数のローラ部材となる支持ローラ15、16、18、19に掛け回されていて図中反時計回りに回転搬送するように構成されている。中間転写体6の内側ループ内には、1次転写部を形成する転写ローラ17Y、17C、17M、17Kが配置されている。支持ローラ19の外側には、画像転写後に中間転写体6上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置7が配設されている。支持ローラ16と支持ローラ18間に張り渡した中間転写体6の下方には、その搬送方向に沿って、イエロ、シアン、マゼンタ、ブラックのトナー像を形成する4つの画像形成手段20Y,20C,20M,20Kが横に並べて配置している。画像形成手段20Y,20C,20M,20Kの下方には露光装置5が配置されている。
【0011】
画像形成手段20Y,20C,20M,20Kについて説明するが、各画像形成手段はトナーの色が異なる以外はほぼ同一構成であるので、ここではイエロの画像形成手段20Yを例に、その構成を説明する。画像形成手段20Yは、像担持体となる感光ドラム1Yと、感光体ドラム1Yの周囲に配設された帯電装置2Y(帯電部)、現像装置3Y(現像部)、クリーニング装置4Y(クリーニング部)、図示しない除電部等で構成されたプロセスカートリッジとして構成されていて、装置本体100に対して着脱自在とされている。画像形成手段20Yでは、感光体ドラム1Y上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)が行われて、感光体ドラム1Y上にイエロのトナー像が形成される。
【0012】
他の3つの画像形成手段20C,20M,20Kも、使用されるトナーの色が異なる以外は、イエロに対応した画像形成手段6Yとほぼ同様の構成となっていて、それぞれのトナー色に対応したトナー像が形成される。
【0013】
装置本体100の下部には、給紙部が配設されている。給紙部は用紙Pが積載収納される給紙カセット26と、給紙カセット26から用紙Pを給紙する給紙ローラ27を備えている。
【0014】
中間転写体6の支持ローラ15の対向側となる外側には二次転写装置21が配置されている。図示の例において、二次転写装置21は、支持ローラ15と対向配置されていて、中間転写体6との間に二次転写部22を形成する二次転写ローラ8と、二次転写ローラ8を中間転写体6に向かって押し当てるバネなどの加圧部材9と、図示しない二次転写バイアス印加手段を備えている。二次転写装置21は、二次転写バイアス印加手段により発生する二次転写バイアスにより、中間転写体6上のトナー像を二次転写部22で用紙Pに転写するともとに、二次転写部22(転写ニップ)により二次転写後の用紙Pを定着装置10へ搬送する機能を備えている。
【0015】
二次転写装置21の上方には、用紙P上に転写された転写画像(トナー像)を用紙Pに定着するための定着装置10が配設されている。定着装置10は、定着ローラ12に加圧ローラ13を押し当てて定着ニップ23を形成し、熱と圧力でトナー像を用紙Pに定着する周知のものである。二次転写ローラ8と定着装置10、より詳しくは、二次転写部22と定着ニップ23の間には、搬送ガイド部材31と搬送ガイド部材11が配置されている。
【0016】
このような構成のカラープリンタによると、不図示のスタートスイッチを押すと、不図示の駆動モータで支持ローラ15、16または支持ローラ19の1つが回転駆動して他の4つの支持ローラを従動回転させ、中間転写体6が反時計回り方向に回転搬送する。同時に個々の画像形成手段20Y〜20Kの感光ドラムを回転させてそれぞれイエロー・シアン・マゼンタ・ブラックのトナーで静電潜像を現像して単色トナー像を形成する。現像後の感光体ドラム1Y,1C,1M,1Kの表面は、それぞれ中間転写体6と転写ローラ17Y,17C,17M,17Kとの対向位置に達し、この位置で各感光体ドラム上のトナー像が中間転写体6上に転写されて合成カラー画像が形成される。
【0017】
一方、スタートスイッチが押されると、給紙ローラ27が回転して、給紙カセット26から用紙Pが繰り出され、図示しない分離ローラで1枚ずつ分離されて給紙路29に給紙される。給紙された用紙Pは、給紙路29上の搬送ローラで搬送されてレジストローラ28で突き当てて止められる。中間転写体6上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ28が回転すると、二次転写部22へと用紙Pが送り込まれ、二次転写装置21で用紙P上に合成カラー画像が静電的に二次転写される。画像転写後の用紙Pは、搬送ガイド部材31と搬送ガイド部材11によって案内されて定着装置10へと送り込まれ、定着ニップ23で熱と圧力とを加えられることで転写画像が定着される。定着後の用紙Pは、排出ローラ32により排紙トレイ40上に排紙されてスタックされる。
【0018】
次に、本発明の主要部の構成について説明する。
図2に示すように、画像形成装置は、搬送ガイド部材31を振動させる超音波振動発生装置50と、超音波振動発生装置50を制御する制御手段70を備えている。超音波振動発生装置50は、超音波発生源51と,その電源となる交流電圧印加装置52を備え、交流電圧印加装置52により超音波領域の周波数で交流電圧が印加されることで超音波発生源51が超音波振動するというものである。制御手段70は、交流電圧印加装置52の出力を制御するためのものである。
【0019】
本形態において、金属板または樹脂板からなり搬送ガイド部材11よりも転写出口側に位置する搬送ガイド部材31は、図3に示すように、媒体搬送方向Aと交差する幅方向Bに分割されて配置されていて、媒体搬送方向Aへ延びる中心線80に対して線対称の形状であり、一方を搬送ガイド部材31A、他方を搬送ガイド部材31Bとしている。
【0020】
超音波発生源51は、図3に示すように、PZTなどの圧電素子53と、圧電素子53をはさみ見込む一対の電極板54,54とで構成されていて、一方の電極54を搬送ガイド部材31A、31Bに接着または締結することで、搬送ガイド部材31に取付けられる。本形態では接着対応としている。各電極54は交流電圧印加装置52と電気的に接続されている。
【0021】
圧電素子53は、符号55で示す極性方向を有しており、その方向に+の直流電圧を印加すると圧電素子53が伸び、−の直流電圧を印加すると圧電素子53が縮む特性を有している。図3では搬送ガイド部材31B側の1つ圧電素子53のみに極性方向55を示したが、全ての圧電素子53は同様の特性を有している。超音波振動自体は振動周期が短く、振動振幅が非常に小さいため、搬送ガイド部材31A、31Bと超音波発生装置50の組み合わせた部材の共振周波数が超音波領域の駆動周波数となるように材質や大きさ、形状を決定している。また、搬送ガイド部材31A、31Bの固体ばらつきや環境変動による剛性の変化等によって、共振周波数は変動する場合があるため、交流電圧印加装置52には周波数調整機能が備わっている。
【0022】
超音波振動を各搬送ガイド部材の通紙面表面において各中央部31A1,31B1から幅方向に位置する端部31A2、31B2へ向けて進んでいく進行波型の超音波振動を発生させるように、超音波発生源51は搬送ガイド部材31Aと搬送ガイド部材31Bのそれぞれの中央部31A1,31B1から端部31A2,31B2にかけて複数個配列されている。本形態では、搬送ガイド部材31A,31Bの中央部31A1,31B1から端部31A2、31B2にかけて進行する進行波型の超音波振動を発生させるために、各搬送ガイド部材の中央側31A1,31B1から端部31A2、31B2にかけて、それぞれ超音波発生源512つを1組として2組、計4つずつ配置している。以下、搬送ガイド部材31Aに設けた超音波発生源には、中央側から端部側にかけて51A,51B,51C,51Bの符号を付し、搬送ガイド部材31Bに設けた超音波発生源には中央側から端部側にかけて51A’,51B’,51C’,51D’の符号を付す。
【0023】
超音波発生源51A,51Bと超音波発生源51C,51Dとは間隔S1を空けて配置され、超音波発生源51A’,51B’と超音波発生源51C’,51D’とは、間隔S2を空けて配置されている。搬送ガイド部材31A,31Bの超音波発生源は、中央部と端部の組合せ1組(超音波発生源51A,51C)と(超音波発生源51A’,51C’)で超音波振動の定在波を発生させ、もう1組(超音波発生源51B,51D)と(超音波発生源51B’,51D’)でも超音波振動の定在波を発生させ、2つの定在波を組み合わせて、下記に示す進行波の式1が成立するように位相を合せている。
【0024】
Y(t,x)=Asin(ωt−kx)=Asin(ωt)cos(kx)−Acos(ωt)sin(kx)=Asin(ωt)cos(kx)+Asin(ωt+π/2)cos(kx+π/2)・・・式1
但し、Yは振幅方向の位置、tは時間、xは搬送ガイド部材軸方向位置、Aは振動振幅、ωは各周波数、kは各波数を表す。式1より、空間的に位相がπ/2ずれており、更に時間的にもπ/2位相がずれた定在波を組み合わせる必要があるので、超音波発生源51Aと超音波発生源51B、及び超音波発生源51A’と超音波発生源51B’は進行波の波長のπ/2の長さだけ離すことになる。また超音波発生源51Aと超音波発生源51B、及び超音波発生源51A’と超音波発生源51B’では、時間的にも位相をπ/2ずらして駆動させることになる。各ガイド部材で発生する波振動は、同一の進行速度とされているとともに同期している。
【0025】
図4を用いて、搬送ガイド部材31A、32Bのうち、一方の搬送ガイド部材31Bでの超音波振動の定在波を発生させた場合について説明する。
超音波発生源を、搬送ガイド部材31Bの幅方向B(二次転写ローラ8の軸線方向)に対して複数設置する。具体的には符号56で示す、定在波の腹の位置に超音波発生源51A’、51C’を設置する。但し、狙いの波数となる共振モードが存在することを予め解析計算で把握しておく必要がある。
【0026】
同様に超音波発生源51A’、51C’で形成された定在波aの節の位置(空間的位相がπ/2ずれた位置)にもう1組の超音波発生源51B’、51D’を設置し、新たな定在波bを形成させる。進行波を発生させるためには、更に2つの定在波の時間的位相をπ/2ずらす必要があるため、2組の超音波発生源にはそれぞれ交流電圧印加装置52,52が必要となる。
【0027】
本形態では、媒体搬送方向Aへ延びる中心線80に対して線対称形状であり、分割された搬送ガイド部材31A,31Bを用いているので、搬送ガイド部材31A側にも搬送ガイド部材31B側と対象となるように超音波発生源51A〜51Dを設置して、中央側から端部側に向かって進む進行波を発生させることで左右均等な開き力を搬送ガイド部材31A,31B上で用紙Pに与えることができる。このため、様々な紙種に対して安定した搬送性を確保し、かつ、搬送ガイド部材31A、31Bと用紙Pとの摩擦係数を低減して搬送ガイド部材の表面電位の上昇を抑え、用紙上のトナー像の乱れを低減することができる。さらに、進行波の振動を、各搬送ガイド部材31A、31Bの中央部31A1、31B1から端部中央部31A2、31B2にかけて同一の進行速度としているので、この点からも進行波と用紙Pが接触している場所が常に各搬送ガイド部材31A、31Bで左右対称となり、中央側から端部側に向かって進む進行波を発生させることで左右均等な開き力を搬送ガイド部材31A,31B上で用紙Pに与えることができる。
【0028】
図5を用いて、搬送ガイド部材31A,31Bが媒体搬送方向Aにおいて複数の領域に区切られている場合の例を説明する。
図5に示す例では、搬送ガイド部材31A,31Bを媒体搬送方向Aにおいて複数の領域に分けており、搬送方向上流側から領域311,312,313及び領域311’,312’,313’としている。搬送ガイド部材といっても用紙先端しか接触しない部分もあれば、用紙Pが定着ニップ23(図2参照)に入った後も用紙Pと強く接触する部分もあり、その領域や配設される位置に応じて進行波型の超音波振動の大きさを変えることで効率良く用紙Pに開き力を与えることができる。つまり、この例では、領域毎(配設位置毎)に、超音波発生源51A〜51D及び超音波発生源51A’〜51D’をそれぞれ配置している。
【0029】
このような場合、特に用紙Pが強く接触する領域については、振動出力を大きく設定し、ほとんど接触しない領域については振動出力を小さく設置するといった制御を図2に示す制御手段70で行う。つまり、図5に示す形態の場合、搬送ガイド部材31Aの領域311〜313と搬送ガイド部材31B及び領域311’〜313’毎に独立した交流電圧印加装置52A〜52C及び交流電圧印加装置52A’〜52C’を有しており、それぞれの交流印加電圧V1〜V3、V1’〜V3’を個別に制御手段70によって設定する。
【0030】
このように、搬送ガイド部材31A、31Bが、用紙搬送方向bにおいて複数の領域311〜313及び領域311’〜313’に区切られている場合、領域毎に異なる進行波を発生させるように、交流印加電圧を制御することで、すなわち搬送ガイド部材31A、31Bの搬送経路での位置に応じて各領域の振動出力を制御すると、搬送ガイド部材31A、31Bの下流側端部付近など用紙Pと強く接触する領域313、313’の表面電位の上昇を抑え、且つ用紙Pに効率よく開き力を与えることができる。
【0031】
図6を用いて、制御手段70による紙種や画質モードに応じて振動出力を制御する、すなわち交流印加電圧を制御する場合について説明する。ここではパターン1からパターン3の3つのパターンを例示する。
【0032】
通紙される用紙Pの紙種が普通紙と厚紙では、同じ搬送レイアウトでも搬送ガイド部材31A、31Bが受ける用紙Pからの接触圧が異なるため、その紙種に応じた振動出力を設定可能とする。例えば紙厚が普通紙の場合、接触圧は大きくないが、用紙に開き力を十分に与えないとシワなどの発生が懸念されて搬送品質が低下するおそれがあり、逆に紙厚が厚紙では開き力を与えなくても定着ニップ23内で幅方向Bにすべりが大きく作用しシワにはなり難い反面、搬送ガイド部材31A、31Bとの接触圧が大きくなり、用紙上のトナー像の乱れが発生するおそれがある。
【0033】
そこで普通紙の場合には、開き力を適切に付与できるように振動出力を設定し、厚紙の場合には、必ずしも進行波である必要はなく、単に超音波振動で搬送ガイド部材31A、31Bの摩擦係数を低減させるだけ良い場合もある。すなわち、普通紙の場合は、パターン1で進行波の進行速度を最大として振動振幅を通常とした場合、厚紙の場合は、パターン2のように進行波の進行速度を、普通紙の場合に比べて低く、あるいは定常波とし、振動振幅を普通紙の場合に比べて大きい最大となるように、交流印加電圧を制御手段70で制御する。
【0034】
紙種が同じ普通紙でもパターン3に示すように、高画質モードでは線速が遅くなり、その線速に応じた開き力を与える必要があるため、普通紙の高画質モードの場合には、進行波の進行速度をパターン1に示す普通紙の通常線速の場合よりも小さくなるように、交流印加電圧を制御手段70で制御する。
【0035】
このように通紙する紙種に応じて振動出力を制御するように構成すると、厚紙や普通紙など紙種による外乱に対してもロバスト性の高い用紙Pの搬送性を確保することができる。また、画質モードに応じて振動出力を制御するように構成すると、同じ紙種でも画質モードによって用紙Pの搬送時の線速(速度)が異なる場合でも適した開き力を用紙Pに与えることができ、ロバスト性の高い用紙Pの搬送性を確保することができる。
【0036】
上記形態において、画像形成装置としてカラープリンタを例に説明したが、画像形成装置としてはプリンタに限るものではなく、複写機、ファクシミリの単体、これらの複合機能を備えた複合機に本願発明を適用することができる。また、カラーの画像形成装置ではなく、モノクロの画像形成装置に適用することもできる。その場合、上記形態のような中間転写体6にトナー像を転写しないで、用紙Pを搬送するための搬送ベルトとブラックの感光体ドラムとを対向配置して、搬送ベルトの内側に感光体ドラムと対向するように転写ローラを配置し、この転写ローラと感光体ドラムとの間を転写部として、転写部と定着装置の間に配置される搬送ガイド部材に、上記超音波振動発生装置50を適用すればよい。
【符号の説明】
【0037】
10 定着装置
22 転写部
31(A、B) 搬送ガイド部材
31A1、31B1 記搬送ガイド部材の中央部
31A2、31B2 記搬送ガイド部材の端部
51(A、B、C、D)超音波発生源
51(A’、B’、C’、D’)超音波発生源
52(A、B、C) 交流電圧印加装置
52(A’、B’、C’) 交流電圧印加装置
70 制御手段
80 中心線
311〜313 区切られた領域
311’〜313’ 区切られた領域
A 媒体搬送方向
B 幅方向
P 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2006−313283号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を記録媒体に転写する転写部と当該記録媒体に転写されたトナー像を同記録媒体に定着する定着装置との間に配置された少なくとも1つ以上の搬送ガイド部材を有し、前記転写部を通過した記録媒体が前記搬送ガイド部材を介して前記定着装置へと搬送される画像形成装置において、
前記搬送ガイド部材における媒体搬送方向と交差する幅方向において、前記搬送ガイド部材の中央部から端部にかけて進行波型の超音波振動を与える超音波振動発生装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記超音波振動発生装置は、前記搬送ガイド部材の中央部から端部にかけて配列されていて、前記中央部から端部に進む進行波型の超音波振動を前記搬送ガイド部材に発生させる超音波発生源と、前記超音波発生源を振動するための電源となる交流電圧印加装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記搬送ガイド部材は、前記幅方向において分割されていて、前記媒体搬送方向へ延びる中心線に対して線対称形状であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置において、
前記超音波振動発生装置により発生する進行波型の超音波振動は、前記各搬送ガイド部材の中央部から端部にかけて同一の進行速度であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、
前記進行波型の超音波振動の位相が、各搬送ガイド部材で同期していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項2ないし5の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記搬送ガイド部材は前記媒体搬送方向において複数の領域に区切られていて、前記超音波発生源は、区切られた領域毎に異なる進行波を発生させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において、
前記搬送ガイド部材の位置に応じて、前記超音波発生源による各領域の振動出力を制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項2ないし7の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記超音波発生源により発生する振動出力を、装置本体に通紙する紙種に応じて制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項2ないし7の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記超音波発生源により発生する振動出力を画質モードに応じて増減制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記搬送ガイド部材が、転写定着間においてすべて配置されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−163915(P2012−163915A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26164(P2011−26164)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】