画像形成装置
【課題】転写搬送ベルト面をうねらせて転写材に腰を与えることで、転写搬送ベルトからの転写材の分離を補助する機構を備え、かつ転写搬送ベルト上に画像調整用のトナーパッチを転写してセンサーで読み込むことにより画像補正、並び画像制御を行う画像形成装置において、トナーパッチ濃度を適正に検知できて安定した画像補正、および画像制御を行うことが出来る画像形成装置を提供することである。
【解決手段】パッチ検知センサーS1が分離補助部材41を除く転写搬送ベルト10の懸架ローラの内、トナー像を転写材に転写する転写部の下流側最近接位置に配設される懸架ローラ33の対向位置に配置され、かつトナーパッチが転写搬送ベルト上の画像形成主走査方向における分離補助部材の各押し上げコロとは異なる位置に形成されることを特徴とする。
【解決手段】パッチ検知センサーS1が分離補助部材41を除く転写搬送ベルト10の懸架ローラの内、トナー像を転写材に転写する転写部の下流側最近接位置に配設される懸架ローラ33の対向位置に配置され、かつトナーパッチが転写搬送ベルト上の画像形成主走査方向における分離補助部材の各押し上げコロとは異なる位置に形成されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機・ファクシミリ・プリンタやそれらの機能を集約した複合機等の画像形成装置に関するものである。より詳しくは、転写材を担持搬送するための転写搬送ベルトを備えた電子写真方式等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転写搬送部材に直接転写された画像濃度検知用トナーパターンを濃度検知用センサーで読み取り画像補正制御を行う従来の画像形成装置の代表例としては、特許文献1と特許文献2が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、濃度検知用パターンが用紙の代わりに転写ローラへ二次転写され、濃度検知センサーにより濃度検知用パターンの濃度の検出が行われる技術が開示されている。転写ローラは導電性付与剤として白色のウィスカーを用いており、転写ローラ自身の色を白色にしたため、画像濃度の検知を簡略に行うことができる。また、二次転写後の画像濃度を測定することによって、より実際の画像(用紙上の画像)に近い濃度を検出することができる。
【0004】
特許文献2は、画像濃度制御が転写材上で実施するのと同様の状態で行うことができる中間転写体を備えたカラー画像形成装置の例が開示されている。カラー画像形成装置の二次転写搬送ベルト上に濃度パターンを形成し、そのパターンを濃度検知センサーで読み込んで濃度制御をおこなうことができる技術である。
【0005】
ここで、転写材である紙の坪量が小さくなると一般的に紙の厚みが薄くなるために紙の剛性が低くなる。その紙の剛性が極端に低くなった場合(例えば坪量64g/m2程度未満)には、トナー像の転写材への転写部、あるいは転写搬送ベルトからの分離部において、分離不良が発生し易くなる。紙が持つ腰が弱いために、転写部、あるいは転写搬送ベルトから分離しようとする力(モーメント)が、トナー像を紙に転写するために、紙と転写部、あるいは紙と転写搬送ベルトの間に作用している静電気力に負けてしまうためである。
【0006】
紙の腰が弱いときの搬送不良を解消させる技術として特許文献3がある。これは、凹型のローラと平行もしくは凸型のローラとの組み合わせを、長手方向にいくつか持ち、紙にうねりを与えて紙が曲げモーメントに対する抵抗力つまりこしを上げるという技術がある。この技術を転写搬送ベルトで用いている例が特許文献4で、転写搬送ベルトの張架ローラのうち転写搬送ベルトからの分離を行うローラの表面もしくは転写搬送ベルトの表面に突起を形成しておくという構成をとっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−044122号公報
【特許文献2】特開平11−194578号公報
【特許文献3】特開平8−113408号公報
【特許文献4】特開平9−015987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、こうした転写搬送ベルト面をうねらせて紙に腰を与える画像形成装置では、転写搬送ベルトのうねり部分において、一般的に用いられている光学式パッチ画像検知センサーにより画像調整用トナーパッチを検知する場合に問題が指摘された。すなわち、ベルト反射面にうねりが発生しているために反射特性が劣化して、正しくパッチ濃度検知が出来なくなり、適切な画像補正、および画像制御を行うことが困難となる。一方、特許文献2の例では、センサーSが、二次転写ベルトの分離ローラの下流側に配置されている。二次転写ベルト上に形成されたトナーパッチが分離ローラを通過、離脱する際にベルト−分離ローラ間の剥離放電の影響を受け易い。それがトナーパッチを劣化させるために、正しくパッチ濃度検知が出来なくなり、この場合にも適切な画像補正、および画像制御を行う事が困難となる。
【0009】
本発明は、転写搬送ベルト面をうねらせて転写材に腰を与えることで、ベルトからの転写材の分離を補助する機構を備え、かつベルト上に画像調整用トナーパッチを転写してセンサーで読み込むことにより画像補正、並び画像制御を行う画像形成装置の改善に係る。その目的とするところは、トナーパッチ濃度を適正に検知できて安定した画像補正、および画像制御を行うことが出来る画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、トナー像が形成される像担持体と、複数の懸架部材の間に張架されて循環移動する弾性を有するエンドレスのベルトであって、転写材を担持して前記像担持体から前記転写材に前記トナー像を転写する転写部に搬送するベルトと、前記ベルトの内側に配設されている転写材分離補助部材であって、前記複数の懸架部材のうちの前記転写部よりもベルト移動方向下流側に配設されていて前記ベルトから前記転写材を曲率分離させる転写材分離用懸架部材よりもベルト移動方向上流側で前記転写材分離用懸架部材に近接した位置において前記ベルトをベルト裏面側からベルトの弾性に抗して局所的に押し上げた動作位置と前記動作位置から退避した退避位置との間を移動可能な転写材分離補助部材と、前記ベルトの転写材搬送領域外のベルト面領域に形成された画像調整用トナーパッチを光電読み取りするためのセンサーと、前記センサーの光電読み取り情報に基づいて画像制御を行う画像制御手段と、前記ベルトにより搬送される転写材に関する情報を認識する転写材情報認識手段と、前記転写材情報認識手段によって得られた情報に応じて前記転写材分離補助部材の移動を制御する分離補助制御手段と、を有し、前記センサーが、前記ベルト面領域に対応する位置であって、かつ前記転写材分離用懸架部材に対向する位置に配置されており、前記転写材分離補助部材は、前記ベルト面領域に対応する位置には位置していないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベルト上の画像調整用トナーパッチの形成面のうねり、並びトナーパッチのトナーの飛散りの両方が抑制される。これにより、センサーによりトナーパッチ濃度を適正に検知できて安定した画像補正、および画像制御を行うことが出来る画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における転写搬送ベルトの平面模式図であり、(a)は搬送される転写材が坪量64g/m2程度未満の薄紙の場合の説明図、(b)は坪量64g/m2程度を超過している場合の説明図である
【図2】(a)は実施例1における画像形成装置の構成概略図、(b)は制御系統のブロック回路図である。
【図3】(a)はリーダー部とプリンタ部のブロック回路図、(b)は出力画像の階調再現特性を示す四限チャートである。
【図4】(a)はパッチ検知センサーの濃度検知に関するブロック回路図、(b)はパッチ検知センサーの動作フローチャートである。
【図5】(a)は転写材情報認識手段の構成概略図、(b)は転写材情報認識手段の検知結果を表す剛性特性図である。
【図6】転写材分離補助手段の説明図である。
【図7】(a)は分離補助部材が動作している際の転写搬送ベルトからの転写材の分離状態を表す概略図、(b)は分離補助部材が動作している状態図である。
【図8】分離補助部材の動作フローチャートである。
【図9】パッチ検知センサーの動作フローチャートである。
【図10】比較例の説明図である。
【図11】実施例2の説明図である。
【図12】実施例3の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
【0014】
[実施例1]
(1)画像形成装置の概要
図2の(a)は本実施例における画像形成装置500の概略構成を示す縦断面図、(b)は制御系統のブロック回路図である。本実施例の装置500は転写搬送ベルト10を用いた電子写真画像形成装置であり、リーダー部200とプリンタ部300を有する。リーダー部200から制御回路部(画像制御手段:CPU)60に入力する電気的な画像情報に基づいてシート状の転写材(記録材、記録媒体)Pにモノクロ画像(ブラック(Bk)単色)を形成して出力することができる。回路部60は装置500の動作を統括的に制御しており、リーダー部200や装置操作部501からの信号や、プリンタ部300内の各種のセンサー類からの信号に応じて所定の画像形成シーケンスに従ってプリンタ部300の画像形成動作を制御する。転写材Pは装置500によって画像が形成されるものであって、例えば、紙、OHTシート、はがき、封筒、ラベル等が含まれる。リーダー部200は原稿の画像をCCDセンサー(固体撮像素子)201(図3の(a))によって電気的な画像情報として光電読み取りする機構部であり、その光電読み取り画像情報が回路部60に入力する。回路部60にインターフェイスを介して、パソコン、ファクシミリ等の外部ホスト装置(不図示)を接続して画像情報を入力してプリンタ部300に画像形成を実行させることもできる。
【0015】
プリンタ部200は電子写真画像形成機構部であり、回転可能な像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)1を有する。回路部60は、プリント開始信号に基づいて駆動源(メインモータ)Mを起動してドラム1を所定の速度(プロセススピード)にて矢印の時計方向に回転駆動する。ドラム1の外周囲にはドラム1の回転方向に沿ってドラム1に作用するプロセス手段としての、一次帯電器2、露光装置3、現像器4、転写帯電器31、及びクリーナ5が配設されている。帯電器2は、ドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する帯電手段であり、非接触帯電手段であるコロナ放電器、接触帯電手段である接触帯電ローラや接触帯電ブレードなど適宜の帯電手段を用いることが可能である。露光装置3は、ドラム1の帯電処理面を画像露光して露光パターンに対応した静電潜像を形成する潜像形成手段である。本実施例においてはこの露光装置3はレーザスキャナである。光源装置から発せられたレーザ光(画像情報に対応して変調されたレーザ光)をポリゴンミラーを回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって変更し、fθレンズによりドラム1の母線上に集光して露光(主走査露光)Lする。これにより、ドラム面の露光部分の電位が減衰して、明部電位Vlと非露光部分の暗部電位Vdとの静電コントラストによりドラム面に静電潜像が形成される。現像器4はドラム面の静電潜像を現像剤(トナー)により現像剤像(トナー像)として可視化する現像手段である。本実施例においては、現像器4には、ネガ帯電極性を有する非磁性トナーとポジ帯電極性を有する磁性キャリアが所定の混合比で混合された現像剤が所定量充填されている。ドラム1上の静電潜像に対して現像器4により静電的にトナーを転移させることで可視トナー像を形成する。画像形成方式としては、バックグランド露光方式と正規現像方式とによる方式と、イメージ露光方式と反転現像方式とによる方式とが有る。前者は、帯電したドラム表面に画像情報のバックグランド部に対応して露光し、バックグランド部以外の部分を現像する方式である。後者は、画像情報部に対応して露光し、非露光部分を現像する方式である。それぞれの特徴を生かして用いられている。
【0016】
ドラム1の下側には転写搬送ベルトユニット30が配設されている。このユニット30の構成については後述する。転写材Pはユニット30の下方に配設されている給送カセット(給紙部)80に積載して収容されている。給紙ロ−ラ81が所定の制御タイミングで駆動されることによりカセット80内の転写材Pが一枚分離給送され、搬送路82で搬送されてレジストローラ対6に搬送される。ローラ対6は回路部60で制御されるレジ駆動部(レジスト駆動部)61により回転停止状態と駆動状態とに制御される。搬送路82で搬送された転写材Pはその時点では回転停止状態のローラ対6のニップ部に先端部が受け止められて斜行が矯正される。そして、ローラ対6はドラム1に対する画像形成と同期して所定の制御タイミングで駆動状態にされる。これにより、記録材Pがユニット30に対して搬送され、ユニット30の転写搬送ベルト10上に乗って転写部7に搬送される。転写材Pが転写部7を通過している間、転写帯電器31に対して回路部60で制御される転写制御部(転写バイアス電源部)13から、定電圧、又は定電流の所定の転写バイアスが所定の制御タイミングで印加される。これにより、転写部7において、ドラム1側のトナー像がベルト10で搬送される転写材Pの面に順次に静電的に転写される。
【0017】
転写部7を通過した転写材Pは引き続きベルト10に乗って搬送され、分離ローラ33の部分においてベルト10の上面から曲率分離し、分離爪29の上側を通り、定着入口ガイド93に導かれて定着装置(定着部)9へと搬送される。装置9は定着ローラ92、加圧ローラ91を有する。また、図には省略したけれども、その各ローラ92、91をクリーニングする耐熱性クリーニング部材と、各ローラ内に設置された加熱ヒータを有する。また、ローラ92にジメチルシリコンオイルなどの離型剤オイルを塗布する塗布ローラと、そのオイル溜めと、ローラ92の表面温度を検知して定着温度を制御するサーミスタを有する。転写材Pはローラ92とローラ91との圧接部である定着ニップ部で挟持搬送されていく過程で加熱及び加圧される。これにより、転写材P上の未定着トナー像が固着像として定着され、画像形成物として、排紙ローラ11により装置外の排出トレイ12に排出されて積載される。転写部7で転写材Pにトナー像を転写した後のドラム1は表面に残留したトナーがクリーナ5によって除去されて清掃され、次の画像形成に供される。
【0018】
(2)転写搬送ベルトユニット30
ユニット30は、転写搬送ベルト10としての可撓性の無端ベルト(エンドレスのベルト)を有する。ベルト10は複数の懸架部材としての並行3本の、駆動ローラ32、分離ローラ33、張架ローラ34の間に懸回張設されている。ローラ32とローラ33は、それぞれ、ドラム1よりも転写材搬送方向に関して上流側と下流側とに位置している。以下の説明において、上流側と下流側とは転写材搬送方向もしくはベルト移動方向に関して上流側と下流側である。ローラ34はローラ32とローラ33の間においてベルト10の下行側のベルト部分に接触している。ベルト10の上行側ベルト部分の上面とドラム1の下面とが接触している。その接触部が転写部7である。帯電器31は転写部7においてベルト10を介してドラム1に対向して配設されている。
【0019】
ベルト10の材質としては、CR、ウレタン等の弾性特性を有するゴム材料であることが望ましい。本実施例においては、ベルト10は、周長440mm、厚み500μmtのCR系のゴム材料を用いた。引っ張り試験法(JIS−K6301)で測定したヤング率Eの値が、0.1MPa≦E≦10MPa、ゴム硬度Hs(JIS−K6253準拠)の値が、60°≦Hs≦75°となるような弾性体のものを使用している。ヤング率Eについては、0.1MPa未満となるとベルトの伸縮が大きくなるために転写材Pの搬送が不安定となり画像ズレ等の不良が生じる易くなる。一方、10MPaを超過する領域では弾性特性が無くなってくるために、後述する分離補助部材41(図6)によるベルト10の押し上げが困難になる。また、ゴム硬度Hsについては、60°未満となると画像形成装置を長期間動作させずに停止させている時に、ベルト10の懸架ローラ対向部にてCセット(ゴム潰れ)を起し易くなる。一方、ゴム硬度が75°以上ではベルトの表層割れ等が発生しベルト10の耐久性が低下する傾向にある。ベルト10の抵抗値は、体積抵抗率5.0×109 〜1.0×1012Ω・cm(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧100V、印加時間60sec、23℃50%RH)の範囲内で抵抗水準を振ったものを用いた。体積抵抗率5.0×109Ω・cm未満では特に高湿環境において、ベルト10を通じたリーク現象が発生し易い。一方、体積抵抗率1.0×1012Ω・cm超では、特に低湿環境において電荷の蓄積が顕著となり除電がなされ難くなる。ベルト10は、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトによって無端ベルトとし、駆動ローラ32及び従動回転する分離ローラ33、張架ローラ34に懸架されている。
【0020】
ローラ32は、外径φ20mmのSUS製芯金の周囲に厚み1.5mmtの導電性(体積抵抗値<105Ωcm以下)のゴムを成形したものを用いた。ローラ33は、不図示のバネ加圧機構に支持されており、ベルト10をその内周面側より押圧することでベルト10に張力を付与する機能も兼ねている。ローラ33の外径はφ19mmのSUS製のローラを用いた。ローラ33は、複数のベルト懸架部材32、33、34のうちの転写部7よりもベルト移動方向下流側に配置されていてベルト10から転写材Pを曲率分離する機能も兼ねる転写材分離用懸架部材である。ローラ34の外径はφ20mmのSUS製のローラを用い、ベルト10を挟んでクリーニングファーブラシ35を対向配置させた。ブラシ35はベルト上に残留するトナーを清掃除去する。また、ベルト10を挟んだローラ33の対向位置には、図1のように、ベルト10の転写材搬送領域外のベルト面領域W10Bに形成された画像調整用トナーパッチT1を光電読み取りするためのセンサーS1が配置されている。このパッチT1及びセンサーS1については後述する。
【0021】
ベルト10は、所定の制御タイミングでローラ32が回転駆動されることで、矢印Bの反時計方向にドラム1の回転速度に対応した速度で循環移動する。ベルト10が回転し、一定速度に達すると、転写材Pがローラ対6からベルト10の上行側ベルト部分上に送り出され、転写材Pがベルト10により転写部7へ向けて搬送される。ローラ対6の転写材搬送速度とベルト10の移動速度はほぼ対応している。これと同時に画像書き出し信号がONとなり、それを基準として所定の制御タイミングでドラム1に対して画像形成を行う。その後、転写部7にて、帯電器31に制御部13から所定の転写バイアスが印加されることにより、ドラム1上に形成されたトナー像が転写材Pに静電的に転写される。帯電器31にはコロナ放電のような非接触帯電器、または帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレードのような帯電部材を用いた接触帯電器を用いることができるが、本実施例においては帯電ローラを用いた。帯電ローラ31は、φ7.0mmの導電性の芯金と、厚さ3.5mmtの中抵抗の抵抗値を有するEPDM発泡弾性層からなる。ローラ硬度(Asker−C)は30°である。抵抗値は、4.9N(500g重)の荷重の下で接地(アース面)に対して該ローラ31を50mm/secの周速で回転させ、芯金に1000Vの電圧を印加して測定された電流の関係から求められ、その値は約106Ω(23℃/50%RH)であった。
【0022】
トナー像を転写された転写材Pは、ベルト10の搬送方向下流部にあるローラ33にて、ベルト10から分離離脱(曲率分離)して、分離爪29、ガイド93に導かれて定着装置9へと搬送される。また、転写材Pを分離した後のベルト10はブラシ35により清掃される。ブラシ35は、導電性ファーブラシであり、ベルト10を挟んでローラ34に対向配置した回転体であり、ベルト10の表面を摺擦する。これにより、ベルト10上に残留したトナー及びその他の異物を清掃すると共に、蓄積した電荷の除去(除電)を行っている。ブラシ35、並びローラ34の各軸芯は接地されている。ブラシ35としては、導電性ウェブ(不織布)を用いることもできる。
【0023】
(3)画像処理の概要
図3の(a)は、階調画像を得るための画像処理部の構成例を示すブロック図である。CCDセンサー201によって得られた画像の輝度信号は、画像処理部202において面順次の濃度信号に変換される。変換後の濃度信号は、初期設定時のプリンタのガンマ特性に応じた信号になるように、つまり原画像の濃度と出力画像の濃度とが一致するように、ルックアップテーブルLUT(ガンマルックアップテーブルγLUT)25によって特性が補正される。図3の(b)は本実施例の装置500における出力画像の階調が再現される様子を示す四限チャートである。第I象限は、原画像の濃度を濃度信号に変換するリーダー部200の読取特性を示す。第II象限は、濃度信号をレーザ出力信号に変換するためのLUT25の変換特性を示す。第III象限は、レーザ出力信号を出力画像の濃度に変換するプリンタ部300の記録特性を示す。第IV象限は、原画像の濃度と出力画像の濃度との関係を示す。即ち、装置のトータルの階調再現特性を示す。装置トータルの階調特性、つまり第IV象限の階調特性をリニアにするために、第III象限のプリンタ特性がノンリニアな分を第II象限のLUT25によって補正する。LUT25により、階調特性が変換された画像信号は、レーザドライバのパルス幅変調(PWM)回路26によってドット幅に対応するパルス信号に変換される。そのパルス信号がレーザ光源(不図示:図2の(a)中のレーザ光Lの発光源)のオン/オフを制御するLDドライバ27へ送られる。なお、本実施例では、Bk単色(モノクロ画像)のみだが、4色フルカラー画像形成装置の場合にはY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)およびBk(ブラック)の全色ともにパルス幅変調による階調再現方法を用いる。そして、レーザ光源から出力されるレーザ光Lの走査によってドラム1上には、ドット面積の変化により階調が制御された、所定の階調特性を有する静電潜像が形成され、前述した現像、転写および定着という過程をへて階調画像が再生される。
【0024】
(4)パッチT1の形成とセンサーS1
センサーS1は、形成される画像の状態をモニターするためにベルト10の転写材搬送領域外のベルト面領域W10B(図1)に形成された画像調整用トナーパッチ(トナーパターン)T1を光電読み取りする。本実施例においては、センサーS1として、電子写真方式画像形成装置に一般的に用いられる光学式センサーを用いた。パッチT1は、現像器4にトナーを補給する量を判定するための画像濃度補正用パッチ画像、帯電・露光の補正量を判定するために画像データの階調性を保証するための中間調の階調補正用パッチ画像などのシステム制御用現像剤像(システム制御用トナー像)である。
【0025】
図1において、W10はベルト10の長さ寸法(ベルト面においてベルト移動方向(副走査方向)Bに直交する方向(主走査方向)の寸法)である。WPは転写材Pの最大通紙幅(転写材搬送領域)である。本実施例において転写材Pの通紙は転写材幅中心の中央基準搬送である。W10>WPである。本実施例においては、パッチT1は、ドラム1の非画像部(ドラム端部領域:最大通紙幅WPの外側のドラム面領域)に形成され、それが転写部7において、ベルト10における最大通紙幅WPの外側(転写材搬送領域外)のベルト面領域W10Bに転写される。そして、そのベルト10上のパッチT1がセンサーS1により光電読み取りされ、その読み取り情報が回路部(画像制御手段)60に入力する。センサーS1は、前記ベルト面領域W10Bに対応する位置であって、かつローラ33(転写材分離用懸架部材)に対向する位置に配置されている。回路部60はセンサーS1から入力したパッチ読み取り情報に基づいて所要のシステム制御を実行する。即ち、回路部60は、センサーS1の光電読み取り情報に基づいて画像制御を行う。センサーS1で情報読み取りされたベルト10上のパッチT1は引き続くベルト10の移動でブラシ35の位置に至りベルト10上から除去される。
【0026】
図4の(a)は、センサーS1の出力信号を処理する回路構成例を示すブロック回路図である。センサーS1に入力されるベルト10上に形成されたパッチT1からの反射光(近赤外光)は、電気信号に変換される。その電気信号は、A/D変換回路51によりディジタル信号に変換され、濃度換算回路52によって濃度情報に変換されて回路部(CPU)60に送られる。図4の(b)はγLUT補正テーブルを作成する処理を示すフローチャートで、通常の画像形成の開始に伴い開始される。まず、前回の画像形成動作中になされた画像補正フローにより得られたγLUT補正テーブルによりLUT25のテーブルデータを補正し(S21)、補正結果のテーブルデータをLUT25に設定し(S22)、LUT25を使用して画像を出力する(S23)。その際、ベルト10にパッチT1を形成してパッチT1の濃度を読み取る(S24)。そして、ΔDnを算出し(S25)、積算値ΔD=ΔD+ΔDnを得て(S26)、γLUT補正テーブルを作成する(S27)。その後、プリントジョブを継続するか否かを判定し(S28)、ジョブが継続する場合は処理をステップS21へ戻し、ジョブが終了する場合は処理を終了する。
【0027】
(5)転写材情報認識手段100
本実施例の装置500においては、カセット80からローラ対6に至る搬送路82の途中に、給紙された転写材Pの転写材情報認識手段(紙情報認識手段)100が配設されている。認識手段100はベルト10により搬送される転写材Pに関する情報を認識する手段である。本実施例の手段100は、超音波を用いて転写材Pの剛性を検知する転写材剛性検知手段である。図5の(a)は手段100の模式図である。カセット80から一枚分離給紙された転写材Pは搬送路82中を、上流側の搬送ローラ対104・105と下流側の搬送ローラ対106・107により挟持されてローラ対6に向かって矢印Cの方向に搬送されている。その搬送路途中にて、超音波発信素子101と受信素子102を搬送される転写材Pと接触する様に上流側と下流側に配置する。画像形成動作中などに、転写材Pが素子101と素子102の双方に接する位置に搬送されると、素子101より超音波信号103が発信される。信号103としては、ある一定の周波数/出力の信号を発信しており、発信された信号103は転写材Pの剛性特性に応じて信号が変化する。その変化した信号が素子102に受信される。回路部60は、素子101からの発信信号と素子102による受信信号の変化分(減衰率)を計算する。減衰率は、図5の(b)のように、転写材Pの剛性特性値と相関がある。回路部60にはその相関特性データが参照テーブルとして記憶されている。回路部60は、その相関特性データに基づいて、通紙された転写材Pに関して計算される減衰率Y1に対応する剛性特性値X1を導出する。転写材Pとして紙の米坪量が50g/m2紙、64g/m2紙、80g/m2紙を、本実施例の装置500に通紙して、手段100により剛性特性値を求めたところ表1に示すような結果となった。
【0028】
【表1】
【0029】
(6)転写材分離補助手段40
ユニット30のベルト10の内側には、ローラ33寄りの位置に転写材分離補助機構(転写材分離補助手段)40が配設されている。この機構40は、ベルト10により転写部7に搬送されてトナー像の転写を受け、更に搬送されてローラ33に至った転写材Pのベルト10からの分離を補助するための手段である。本実施例における機構40の構成を図6により説明する。(a)は機構40の要部の斜視図、(b)は機構40の待機時(非動作時)の状態図、(c)は機構40の動作時の状態図である。
【0030】
機構40は、分離ローラ33に並行に配列されている駆動軸47と固定軸43を有する。軸47は両端部がそれぞれユニット30のベルト長手方向の一方側と他方側のフレーム(不図示)間に軸受部材を介して回転可能に支持されている。軸43は両端部がそれぞれ同フレーム間に非回転に固定して支持されている。該両軸47・43は所定の間隔をあけて離間している。軸47は回路部60で制御される分離補助制御部(分離補助制御手段)50によって駆動されるモータ(パルスモータ等)46で正回転又は逆回転される。軸47には軸に沿って間隔をあけて複数個の駆動ギア45が配設されている。本実施例においては、軸47の長手方向の中央部と、その中央部よりも軸の一方端寄り及び他方端寄りとの3箇所に間隔をあけて3つのギア45が設けられている。ギア45は軸47に固定して配設されており、軸47と一体に正回転又は逆回転する。軸43側には、軸47側の各ギア45に対応する位置に、それぞれ、ベアリング48を介してアーム42が回転可能に間隔をあけて配設されている。アーム42の基部外面には軸43と同心にギア44が形成されていて、ギア45と噛合している。各アーム42の先端部(自由端部)には転写材分離補助部材としてのコロ41が横軸49に枢支されて回転可能に配設されている。各アーム42およびコロ41は同じ形状、大きさであり、各アーム42は互いに同じ位相をもって軸43を中心に揺動(回動)する構成とされている。
【0031】
各アーム42は、常時は、図6の(b)のように、軸43を中心に略水平に倒れ込んでいる回転角度姿勢の待機位置Jに位置している。この状態において、コロ41はベルト10の内面から離間して退避した退避位置Hに位置している。図6の(b)の状態が機構40の待機時の状態である。機構40の待機時の状態において、所定の制御タイミングにおいて、モータ46が制御部50によって正回転方向に所定の回転角駆動される。これにより、軸47及びこの軸47に一体のギア45が図6の(c)の矢印Dの正回転方向に所定の角度回転駆動される。これに連動して、ギア45とギア44の噛合いにより、軸43側の各アーム42が軸43を中心に矢印Eの起立方向に所定の角度回動したベルト押し上げ位置Kに移動してその位置に保持される。この状態において、ローラ33の近傍においてベルト10の上行側ベルト部分の内面に対してコロ41が接し、更にコロ41がベルト10の弾性に抗してベルト10を押し上げた動作位置Iに位置する。図6の(c)の状態が機構40の動作時の状態である。また、機構40の動作時の状態において、所定の制御タイミングにおいて、モータ46が制御部50によって逆回転方向に所定の回転角駆動される。これにより、軸47及びこの軸47に一体のギア45が図6の(c)の矢印Fの逆回転方向に所定の角度回転駆動される。これに連動して、ギア45とギア44の噛合いにより、軸43側の各アーム42が軸43を中心に矢印Gの倒れ込み方向に所定の角度回動してベルト押し上げ位置Kから図6の(b)の待機位置Jに戻し移動されその位置に保持される。これにより、コロ41が動作位置Iから退避位置Hに戻り移動して、ベルト10の押し上げが解除される。
【0032】
ここで、コロ41は導電性を有する金属材料製であり、本実施例ではアルミニウム製のものを用い、外径は6〜10mm(本実施例では8mm)、長手方向の幅は5〜15mm程度(本実施例では10mm)である。そして、コロ41同士の間隔が50mm〜120mm程度(本実施例では80mm)の間隔となるように配置されている。コロ41を軸43に沿って複数有することで、コロ41によって得られる転写材Pのこしが大きくなるため、より安定して、ベルト10からの転写材Pの分離を達成することが可能になる。
【0033】
上記の転写材分離補助手段40をまとめると次のとおりである。ベルト10の内側に配設されている転写材分離補助部材としてのコロ41を有する。コロ41は、分離ローラ33よりもベルト移動方向上流側で分離ローラ33に近接した位置においてベルト10をベルト裏面側からベルト10の弾性に抗して局所的に押し上げた動作位置Iと前記動作位置Iから退避した退避位置Hとの間を移動可能である。コロ41は、ベルト移動方向Bに直交するベルト長手方向において間隔をあけて複数配設されている。コロ41は前記動作位置Iにおいてベルト10の裏面に接してベルト10の移動に従動して回転する。
【0034】
本実施例において、機構40は、給紙された転写材Pの情報を検知する転写材情報認識手段100によって得られた情報に応じて動作が制御される。即ち、前記のように手段100の検知結果より、回路部60にて給紙された転写材Pの剛性特性値が算出される。その剛性特性値が分離補助制御部50に伝えられる。そして、その情報に応じて機構40の動作、即ち転写材分離補助部材であるコロ41の移動が制御される。より具体的には、転写材Pの剛性特性値より、転写材Pが自身の剛性によりローラ33の位置においてベルト10から十分に分離可能であると判断された場合は、機構40は、図6の(b)の待機時の状態に保持される。一方、転写材Pの剛性特性値より、転写材Pがベルト10からの分離が厳しいと判断された場合には、機構40は、図6の(c)の動作時の状態に転換される。即ち、ローラ33の近傍においてベルト10の上行側ベルト部分の内面に対してコロ41が接し、更にコロ41がベルト10の弾性に抗してベルト10を局部的に押し上げている状態に保持される。コロ41とローラ33の間の距離(ローラ表面間距離)は4〜8mm程度(本実施例では6mm)である。コロ41はベルト10を待機時の状態よりも1〜10mm程度(本実施例では5mm)押し上げていて、ベルト10とローラ33の最上流の接点が変化するようになっている。ここで、ベルト長手方向に間隔をあけて配設されている複数個の各コロ41によってベルト10の長手方向に生じるうねりが、ローラ33とベルト10の接点に達することで、分離部で転写材Pに与えるこしが大きくなる。そのため、より安定した、ベルト10からの転写材Pの分離を達成することが可能になる。
【0035】
機構40の動作時の状態において、ベルト長手方向に間隔をあけて配列されているコロ41は全てベルト10をベルトの弾性に抗して局所的に押し上げている。このようにコロ41によってベルト10が局所的に押し上げられている状態で、転写材Pがローラ33の位置に来たときの状態を示しているのが図7の(a)である。すなわち、ベルト10およびベルト10に沿って静電的に貼りついている転写材Pは、各コロ41によってベルト10の長手方向に生じているうねりに対応して、転写材幅方向(転写材搬送方向に直交する方向)においてうねりを生じている。そのために、転写材Pは搬送方向での曲げ応力に対する腰の強さが大きくなっている。
【0036】
機構40の動作フローチャートを図8に示す。装置500の回路部60に複数枚の連続した画像形成ジョブが入力されると、転写材Pがカセット80より給紙される(S51)。そして、転写材情報認識手段(剛性検知手段)100を通過して転写材Pの剛性検知がなされる(S52)。さらにローラ対6に搬送され、画像形成と同期してベルト10に給送されて、転写部7に順次送られる。転写材Pが連続通紙される場合には、転写材1枚毎に手段100を通過する際に前述した様に転写材Pの剛性特性値が検知される(S52)。従来の画像形成装置において、転写搬送ベルトからの分離時に分離不良が発生し易かったのは、坪量64g/m2程度未満の転写材であった。そこで、坪量64g/m2の転写材を手段100により、剛性特性値X1を求めたところX1=2.0であった。
【0037】
本実施例においては、剛性特性値X1が2.0以下の場合には、S54〜S60に示すフローに従い、機構40を動作時の状態(図6の(c))にして画像形成動作が実行される。即ち、ベルト10のコロ41による押し上げ動作、トナー像の形成、レジ駆動モータの動作、トナー像の転写材Pへの転写、ベルト10のコロ41による押し上げ解除、定着〜排紙に至る画像形成動作がなされる。コロ41は、転写材Pの先端がコロ41に到達する以前からベルト10の下流側に位置する分離爪29に到達するまでの間、継続してベルト10を押し上げる方向に動作する。これにより、超薄紙(30gsm紙)においてもベルト10からの分離が良好になされる。また、機構40の動作制御方法としては、転写材Pがコロ41を通過している間中は、コロ41がベルト10を押し上げる方向に動作させても構わない。
【0038】
一方、S53において、前記剛性特性値X1が2.0超過の場合には、S61〜S64に示すフローに従い、トナー像の形成、レジ駆動モータの動作、トナー像の転写材Pへの転写、定着〜排紙に至る画像形成動作がなされる。この場合には、転写材Pが前記した様な腰の弱い薄紙ではないために、機構40は待機時の状態(図6の(b))のままに保持される。即ち、コロ41によるベルト10の押し上げ動作(転写材分離補助動作)はなされない。
【0039】
(7)センサーS1の動作概要説明
画像形成中における画像形成装置のセンサーS1の動作を表すフローチャートを図9に示す。通紙する転写材Pの剛性特性値X1によらず(コロ41によるベルト10の押し上げ動作の有無によらず)、センサーS1によるパッチT1の検知フローは図9のS31〜S37に示す通りである。
【0040】
図1の(a)はベルト10を画像形成装置の上部位置から見た図であり、通紙された転写材Pが坪量64g/m2程度未満の薄紙の場合である。したがって、回路部60は機構40を動作時の状態に制御をすることになる。そして、転写材Pが転写部7でドラム1よりトナー像の転写を受け、並びにベルト10が転写部7でパッチT1の転写を受けた後、動作時の状態の機構40に向けて矢印Aの方向にベルト10上を担持搬送されている様子を示している。転写材Pにおいて、P1部分(網掛部分)がコロ41の位置を通過する時には、コロ41が退避位置Hから動作位置Iに移動される(図6の(c))。コロ41は、転写材Pの先端がベルト10の下流側に位置する分離爪29に到達した後に、退避位置Hに戻るように制御される。パッチT1は、コロ41が動作するベルト10上の部分、つまり転写材PにおけるP1部分、コロ41が動作していないベルト10上の部分に関わらず、ベルト10における最大通紙幅WPの外側のベルト面領域W10Bにベルト搬送方向に沿って形成される。
【0041】
ベルト10上に形成されるパッチT1の大きさは、本実施例においては、主走査方向(ベルトの移動方向に直交する方向)/副走査方向(ベルトの移動方向)に20mm四方とした。また、パッチT1は、ベルト10の長手方向において、コロ41の先端とは異なる位置に形成されている。具体的には、ベルト10上に形成されるパッチT1の主走査方向用紙搬送領域側と、パッチT1に最も近い位置のコロ41の主走査方向トナーパッチT1側との間の距離を5mmとした。図1の(a)では、パッチT1は、ベルト10上の画像形成主走査方向(以降、長手方向)における転写材Pの外側の領域にのみ描かれているが、転写材Pの存在に関わらず、ベルト10上の用紙搬送領域外であれば、パッチT1は形成されることが出来る。ベルト10上に形成されたパッチT1はセンサーS1によって検知される。図7の(a)と(b)において、10Aはベルト10がコロ41によって押し上げられている部分の転写材担持面の位置を、10BはパッチT1の担持面の位置を表している。ベルト10の長手方向において、パッチT1はコロ41とは所定の距離を置いて異なる位置に形成されている。そのために、センサーS1とベルト10のパッチT1の担持面10Bとは正対した位置関係(ベルト10の反射面がコロ41による押し上げの影響により傾かない状態(うねりがない状態))を確保できる。センサーS1により検知された信号値は必要な信号変換を経て回路部60にまで送られ画像補正のために用いられる(図4の(a))。また、パッチT1を担持しているベルト部分10Bの内周面がコロ41に対して接触通過することが無いために、ベルト10とコロ41の間に生ずる剥離放電によるトナーパッチT1の飛散りも防止できる。
【0042】
図1の(b)は転写材Pは坪量64g/m2程度を超過している場合である。したがって、回路部60は機構40を待機時の状態(図6の(b))に保持する。図1の(a)と同様に、転写材Pが転写部7でドラム1よりトナー像の転写を受け、並びにベルト10がパッチT1の転写を受けた後、待機時の状態の機構40に向けて矢印Aの方向にベルト10上を担持搬送されている様子を示している。パッチT1はセンサーS1によって検知され、必要な信号変換を経て回路部60にまで送られ画像補正のために用いられる。
【0043】
以下、本実施例1の効果について、図10に示す比較例との対比により説明する。比較例においては、機構40のコロ41が、ベルト10のパッチ形成領域W10B、即ち、ベルト10における最大通紙幅WPの外側のベルト面領域W10Bに対応した位置に配設されている。したがって、通紙された転写材Pが薄紙の場合に機構40が動作すると、パッチT1が形成されているベルト面領域W10Bもコロ41により押し上げられてうねりが発生する。その他の装置構成は実施例1と同様である。
【0044】
図10の(a)は、比較例におけるベルト10を画像形成装置の上部位置から見た図である。転写材Pが、転写部7でドラム1よりトナー像の転写を受け、並びにベルト10が転写部7でパッチT1の転写を受けた後、動作時の状態の機構40に向けて矢印Aの方向にベルト10上を担持搬送されている様子を示している。パッチT2は、ベルト10の長手方向においてコロ41と重なる位置に形成されている。転写材Pは剛性特性値X1が2.0以下、坪量64g/m2程度未満の薄紙の場合である。したがって、転写材PにおけるP1部分(網掛部分)がコロ41を通過する時には、コロ41がベルト10を内側から押し上げる方向に動作する。パッチT1が形成されているベルト面領域W10Bも図10の(b)のようにコロ41により押し上げられる。この状態において、センサーS1によりパッチT1の読み込みがなされる。その他の装置構成は実施例1と同様である。
【0045】
図10の(c)は、実施例1と比較例の各々について、パッチT1をセンサーS1で読み込んだ時のパッチT1の実濃度に対する検知信号特性S1sg、並びS2sgを表す略図である。検知信号特性S1sgが実施例1の場合、検知信号特性S2sgが比較例の場合である。比較例は、コロ41がベルト10を内側から押し上げる方向に動作している時の特性を示している。パッチT1の実濃度が実施例1と比較例とにおいて同一であっても、検知信号値は「S1sg>S2sg」となる。
【0046】
この理由を以下に説明する。実施例1ではパッチT1がベルト10上の画像形成主走査方向におけるコロ41とは異なる位置に形成される。そのために、ベルト10上のパッチT1の形成面のうねりを抑制できて、かつパッチT1を担持しているベルト10の内周面がコロ41に接触通過することが無いためにパッチT1のトナー飛散も抑制できる。一方、比較例ではパッチT1は、ベルト10上の画像形成主走査方向におけるコロ41と重なる位置に形成される。そのために、ベルト10上のパッチT1の形成面がうねり、かつパッチT1を担持しているベルト10の内周面がコロ41に接触通過するためにパッチT1のトナーが飛散することでトナーパターンが劣し易くなる。
【0047】
よって、本実施例1に示す画像形成装置では、パッチT1がベルト10上の画像形成主走査方向におけるコロ41とは異なる位置に形成されるために、ベルト上のパッチT1の形成面のうねりを抑制できる。かつ、パッチT1を担持しているベルト10の内周面がコロ41に接触通過することが無いためにパッチT1のトナー飛散も抑制できる。これにより、センサーS1によるパッチT1の濃度検知の劣化が抑制されるために、安定した画像補正、および画像制御を行うことが出来る。即ち、ベルト上の画像調整用トナーパッチの形成面のうねり、並びトナーパッチの飛散りの両方が抑制される。これにより、センサーS1によるパッチT1の濃度検知の劣化が抑制されるために、安定した画像補正、および画像制御を行うことが出来る。
【0048】
また、転写材情報認識手段が紙剛性検知手段であることにより、ベルト面をうねらせて転写材に腰を与える必要がある薄紙以外の場合には、コロ41を動作させない様に制御出来る。これにより、ベルト面に対して必要以上にうねりを与えることを抑制できるために、センサーS1によるパッチT1の濃度検知の劣化が抑制されて、安定した画像補正、および画像制御を行うことが出来る。
【0049】
[実施例2]
センサーS1は、図11のように、分離ローラ33の対向位置、かつ分離爪29よりもベルト移動方向下流側に配設されてもよい。その他の装置構成・装置制御は実施例1の画像形成装置と同様であるから説明を省略する。(a)は機構40の待機時の状態、(b)は動作時の状態を示している。本実施例の装置も、コロ41がベルト10を内側から押し上げている時(図11の(b))にもセンサーS1がベルト10のベルト面領域W10Bに形成されているパッチT1の濃度を適正に検知できて、安定した画像補正、並びに画像制御を行うことが出来る。
【0050】
[実施例3]
(1)画像形成装置例の概要
図12の(a)は本実施例における画像形成装置500の概略構成を示す縦断面図である。実施例1の装置500と共通する構成部材・部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施例の装置500はフルカラー電子写真方式画像形成装置であり、第1乃至第4の4つの電子写真画像形成部U(UY・UM・UC・UK)が並設されている。各画像形成部Uは実施例1の装置500の画像形成部と同様にドラム(第1の像担持体)1、1次帯電器2、露光装置3、現像器4、クリーナ5を有する。ドラム1は矢印Rの反時計方向に所定の速度(例えば250〜300mm/sec)で回転駆動される。第1の画像形成部UYはドラム1にイエロー色(Y色)のトナー像を形成する。第2の画像形成部UMはドラム1にマゼンタ色(M色)のトナー像を形成する。第3の画像形成部UCはドラム1にシアン色(C色)のトナー像を形成する。第4の画像形成部UKはドラム1にブラック色(Bk色)のトナー像を形成する。
【0051】
第1乃至第4の画像形成部UY・UM・UC・UKの下側には中間転写ベルトユニット70が配設されている。ユニット70は、可撓性を有するエンドレスの中間転写ベルト(第2の像担持体)74と、そのベルト74を張架する複数本の張架ローラとしての、テンションローラ71、駆動ローラ72、2次転写対向ローラ73、の3本のローラを有する。ベルト74はローラ72が駆動されることで矢印Zの時計方向に所定の速度(例えば250〜300mm/sec)で循環移動される。ローラ71とローラ72との間の上行側ベルト部分の内側には各画像形成部UY・UM・UC・UKのドラム下面に対応する位置に1次転写ローラ75が配設されている。各ローラ75はベルト74を介してドラム1の下面に圧接している。ベルト74とドラム下面との圧接部が1次転写部である。ベルト74として、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂または各種ゴム等に帯電防止剤としてカーボンブラックを適当量含有させ、その体積抵抗率を1E+9〜1E+14[Ω・cm]、厚みを0.07〜0.1[mm]としたものを用いている。
【0052】
ユニット70の下側には、実施例1の装置500と同様の構成の転写搬送ベルトユニット30が配設されている。帯電器(2次転写ローラ)31は、ベルト10とベルト74を介して2次転写対向ローラ73に対向している。ベルト74とベルト10との圧接部がベルト74に形成されたトナー像をベルト10に担持されて搬送される転写材Pに転写する転写部(2次転写部)77である。ベルト10として、引っ張り試験法(JIS−K−6301)で測定したヤング率の値が10MPa以下となるような弾性体のものを使用している。ベルト10はローラ32により矢印Bの反時計方向に所定の速度(例えば250〜300mm/sec)で循環移動される。ベルト10として、引っ張り試験法(JIS−K−6301)で測定したヤング率の値が10MPa以下となるような弾性体のものを使用している。ベルト10の引っ張り試験におけるヤング率を10MPa以下程度の十分に弾性変形が可能な部材を使用することで、機構40のコロ41によって転写材Pに効果的にうねり発生させて、より効果的なベルト10からの転写材Pの分離を達成することが可能になる。また、十分に弾性変形が可能な部材は、突起物を引っ込めたときの部材の緩和現象も起こりやすいため、コロ41によるベルト10の寿命低下も防ぐことが可能になる。
【0053】
第1乃至第4の各画像形成部UY・UM・UC・UKのドラム1に形成されるY色トナー像、M色トナー像、C色トナー像、Bk色トナー像が1次転写において、循環移動するベルト74の面に順次に重畳されて1次転写される。これにより、第4の画像形成部UKの1次転写部を通過したベルト面には4色フルカラーのトナー像が形成される。そのトナー像が引き続くベルト74の移動で2次転写部77に搬送される。一方、所定の制御タイミングでベルト10により転写材Pが2次転写部77に搬送されて、ベルト74上のトナー像が転写材P上に2次転写される。即ち、ローラ31によってトナーと逆極性の2次転写電流が印加されることによってベルト74上のトナー像が転写材P上へ一括して転写される。本実施例では、例えば+30〜60uAの電流を流している。2次転写電流が変化するのは、記録材Pの乾燥状態、環境、転写するトナーの量等の要因によって、必要な電流量が変化するためである。ローラ31には、イオン導電系発泡ゴム(NBRゴム)の弾性層と芯金からなり、外径が24mm、ローラ表面粗さRz=6.0〜12.0(μm)、抵抗値がN/N(23℃、50%RH)測定、2kV印加で1E+5〜1E+7Ωの転写ローラを使用している。ローラ31には、供給バイアスが可変となっている、2次転写高圧電源13が取り付けられている。
【0054】
2次転写部77で未定着トナー像が載った転写材Pは引き続きベルト10で搬送されて、ローラ33位置でベルト10から分離される。その後、定着装置9に運ばれ、トナー像を定着した後、機械の外に排出される。ここで、分離を補助するための手段として、ローラ33の下流側には分離爪29、ローラ33の近接上流位置にはベルト10の裏面側に、実施例1と同様に、転写材分離補助機構(分離補助手段手段)40が設けられている。ローラ33は、SUS製で、外径が16mmのローラとなっている。
【0055】
機構40は、実施例1と同様に、給紙された転写材Pの転写材情報を検知する転写材情報認識手段100の検知結果より動作制御される。また、ベルト10のベルト10の転写材搬送領域外のベルト面領域W10Bは画像調整用トナーパターン(トナーパッチ)T1が形成されてセンサーS1により読み込みがなされる。本実施例においては、センサーS1は、実施例2のように、分離ローラ33の対向位置、かつ分離爪29よりもベルト移動方向下流側に配設されている。本実施例3の画像形成装置における、ベルト10上に形成されるパッチT1の概略図を図12の(b)に示した。
【0056】
尚、画像処理、分離補助手段の構成/動作制御、およびセンサーS1の構成/動作制御については、フルカラー画像形成のための動作、並び制御を除き、実施例1、2と同様であるために説明を省略する。
【0057】
本実施例の場合も、実施例1、2の結果と同様に、コロ41がベルト10を内側から押し上げている時にもセンサーS1がベルト10上のパッチT1の濃度を適正に検知できて、安定した画像補正、並び画像制御を行うことが出来る。
【0058】
[その他]
1)画像形成装置のトナー像形成方式は実施例の電子写真画像形成プロセスに限られない。像担持体として静電記録誘電体を用いた静電記録画像形成プロセス、像担持体として磁気記録磁性体を用いた磁気記録画像形成プロセスなどの他の画像形成プロセスであってもよい。
【0059】
2)転写材情報認識手段100は、実施例の転写材剛性検知手段に限られない。転写材を挟持搬送するローラ対の転写材の厚みに対応した離間量から転写材の厚みを検知する転写材厚み検知手段であってもよい。装置に通紙して使用する転写材の種類等の情報を使用者があらかじめ回路部60にマニュアルで入力する情報入力手段であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1・・電子写真感光ドラム(第1の像担持体)、74・・中間転写ベルト(第2の像担持体)、10・・転写搬送ベルト、32〜34・・複数の懸架部材、33・・転写材分離用懸架部材、P・・転写材、7・77・・転写部、41・・転写材分離補助部材、I・・動作位置、H・・退避位置、W10B・・転写材搬送領域外のベルト面領域、S1・・センサー、T1・・画像調整用トナーパッチ、100・・転写材情報認識手段、50・・分離補助制御手段、60・・画像制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機・ファクシミリ・プリンタやそれらの機能を集約した複合機等の画像形成装置に関するものである。より詳しくは、転写材を担持搬送するための転写搬送ベルトを備えた電子写真方式等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転写搬送部材に直接転写された画像濃度検知用トナーパターンを濃度検知用センサーで読み取り画像補正制御を行う従来の画像形成装置の代表例としては、特許文献1と特許文献2が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、濃度検知用パターンが用紙の代わりに転写ローラへ二次転写され、濃度検知センサーにより濃度検知用パターンの濃度の検出が行われる技術が開示されている。転写ローラは導電性付与剤として白色のウィスカーを用いており、転写ローラ自身の色を白色にしたため、画像濃度の検知を簡略に行うことができる。また、二次転写後の画像濃度を測定することによって、より実際の画像(用紙上の画像)に近い濃度を検出することができる。
【0004】
特許文献2は、画像濃度制御が転写材上で実施するのと同様の状態で行うことができる中間転写体を備えたカラー画像形成装置の例が開示されている。カラー画像形成装置の二次転写搬送ベルト上に濃度パターンを形成し、そのパターンを濃度検知センサーで読み込んで濃度制御をおこなうことができる技術である。
【0005】
ここで、転写材である紙の坪量が小さくなると一般的に紙の厚みが薄くなるために紙の剛性が低くなる。その紙の剛性が極端に低くなった場合(例えば坪量64g/m2程度未満)には、トナー像の転写材への転写部、あるいは転写搬送ベルトからの分離部において、分離不良が発生し易くなる。紙が持つ腰が弱いために、転写部、あるいは転写搬送ベルトから分離しようとする力(モーメント)が、トナー像を紙に転写するために、紙と転写部、あるいは紙と転写搬送ベルトの間に作用している静電気力に負けてしまうためである。
【0006】
紙の腰が弱いときの搬送不良を解消させる技術として特許文献3がある。これは、凹型のローラと平行もしくは凸型のローラとの組み合わせを、長手方向にいくつか持ち、紙にうねりを与えて紙が曲げモーメントに対する抵抗力つまりこしを上げるという技術がある。この技術を転写搬送ベルトで用いている例が特許文献4で、転写搬送ベルトの張架ローラのうち転写搬送ベルトからの分離を行うローラの表面もしくは転写搬送ベルトの表面に突起を形成しておくという構成をとっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−044122号公報
【特許文献2】特開平11−194578号公報
【特許文献3】特開平8−113408号公報
【特許文献4】特開平9−015987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、こうした転写搬送ベルト面をうねらせて紙に腰を与える画像形成装置では、転写搬送ベルトのうねり部分において、一般的に用いられている光学式パッチ画像検知センサーにより画像調整用トナーパッチを検知する場合に問題が指摘された。すなわち、ベルト反射面にうねりが発生しているために反射特性が劣化して、正しくパッチ濃度検知が出来なくなり、適切な画像補正、および画像制御を行うことが困難となる。一方、特許文献2の例では、センサーSが、二次転写ベルトの分離ローラの下流側に配置されている。二次転写ベルト上に形成されたトナーパッチが分離ローラを通過、離脱する際にベルト−分離ローラ間の剥離放電の影響を受け易い。それがトナーパッチを劣化させるために、正しくパッチ濃度検知が出来なくなり、この場合にも適切な画像補正、および画像制御を行う事が困難となる。
【0009】
本発明は、転写搬送ベルト面をうねらせて転写材に腰を与えることで、ベルトからの転写材の分離を補助する機構を備え、かつベルト上に画像調整用トナーパッチを転写してセンサーで読み込むことにより画像補正、並び画像制御を行う画像形成装置の改善に係る。その目的とするところは、トナーパッチ濃度を適正に検知できて安定した画像補正、および画像制御を行うことが出来る画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、トナー像が形成される像担持体と、複数の懸架部材の間に張架されて循環移動する弾性を有するエンドレスのベルトであって、転写材を担持して前記像担持体から前記転写材に前記トナー像を転写する転写部に搬送するベルトと、前記ベルトの内側に配設されている転写材分離補助部材であって、前記複数の懸架部材のうちの前記転写部よりもベルト移動方向下流側に配設されていて前記ベルトから前記転写材を曲率分離させる転写材分離用懸架部材よりもベルト移動方向上流側で前記転写材分離用懸架部材に近接した位置において前記ベルトをベルト裏面側からベルトの弾性に抗して局所的に押し上げた動作位置と前記動作位置から退避した退避位置との間を移動可能な転写材分離補助部材と、前記ベルトの転写材搬送領域外のベルト面領域に形成された画像調整用トナーパッチを光電読み取りするためのセンサーと、前記センサーの光電読み取り情報に基づいて画像制御を行う画像制御手段と、前記ベルトにより搬送される転写材に関する情報を認識する転写材情報認識手段と、前記転写材情報認識手段によって得られた情報に応じて前記転写材分離補助部材の移動を制御する分離補助制御手段と、を有し、前記センサーが、前記ベルト面領域に対応する位置であって、かつ前記転写材分離用懸架部材に対向する位置に配置されており、前記転写材分離補助部材は、前記ベルト面領域に対応する位置には位置していないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベルト上の画像調整用トナーパッチの形成面のうねり、並びトナーパッチのトナーの飛散りの両方が抑制される。これにより、センサーによりトナーパッチ濃度を適正に検知できて安定した画像補正、および画像制御を行うことが出来る画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における転写搬送ベルトの平面模式図であり、(a)は搬送される転写材が坪量64g/m2程度未満の薄紙の場合の説明図、(b)は坪量64g/m2程度を超過している場合の説明図である
【図2】(a)は実施例1における画像形成装置の構成概略図、(b)は制御系統のブロック回路図である。
【図3】(a)はリーダー部とプリンタ部のブロック回路図、(b)は出力画像の階調再現特性を示す四限チャートである。
【図4】(a)はパッチ検知センサーの濃度検知に関するブロック回路図、(b)はパッチ検知センサーの動作フローチャートである。
【図5】(a)は転写材情報認識手段の構成概略図、(b)は転写材情報認識手段の検知結果を表す剛性特性図である。
【図6】転写材分離補助手段の説明図である。
【図7】(a)は分離補助部材が動作している際の転写搬送ベルトからの転写材の分離状態を表す概略図、(b)は分離補助部材が動作している状態図である。
【図8】分離補助部材の動作フローチャートである。
【図9】パッチ検知センサーの動作フローチャートである。
【図10】比較例の説明図である。
【図11】実施例2の説明図である。
【図12】実施例3の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
【0014】
[実施例1]
(1)画像形成装置の概要
図2の(a)は本実施例における画像形成装置500の概略構成を示す縦断面図、(b)は制御系統のブロック回路図である。本実施例の装置500は転写搬送ベルト10を用いた電子写真画像形成装置であり、リーダー部200とプリンタ部300を有する。リーダー部200から制御回路部(画像制御手段:CPU)60に入力する電気的な画像情報に基づいてシート状の転写材(記録材、記録媒体)Pにモノクロ画像(ブラック(Bk)単色)を形成して出力することができる。回路部60は装置500の動作を統括的に制御しており、リーダー部200や装置操作部501からの信号や、プリンタ部300内の各種のセンサー類からの信号に応じて所定の画像形成シーケンスに従ってプリンタ部300の画像形成動作を制御する。転写材Pは装置500によって画像が形成されるものであって、例えば、紙、OHTシート、はがき、封筒、ラベル等が含まれる。リーダー部200は原稿の画像をCCDセンサー(固体撮像素子)201(図3の(a))によって電気的な画像情報として光電読み取りする機構部であり、その光電読み取り画像情報が回路部60に入力する。回路部60にインターフェイスを介して、パソコン、ファクシミリ等の外部ホスト装置(不図示)を接続して画像情報を入力してプリンタ部300に画像形成を実行させることもできる。
【0015】
プリンタ部200は電子写真画像形成機構部であり、回転可能な像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)1を有する。回路部60は、プリント開始信号に基づいて駆動源(メインモータ)Mを起動してドラム1を所定の速度(プロセススピード)にて矢印の時計方向に回転駆動する。ドラム1の外周囲にはドラム1の回転方向に沿ってドラム1に作用するプロセス手段としての、一次帯電器2、露光装置3、現像器4、転写帯電器31、及びクリーナ5が配設されている。帯電器2は、ドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する帯電手段であり、非接触帯電手段であるコロナ放電器、接触帯電手段である接触帯電ローラや接触帯電ブレードなど適宜の帯電手段を用いることが可能である。露光装置3は、ドラム1の帯電処理面を画像露光して露光パターンに対応した静電潜像を形成する潜像形成手段である。本実施例においてはこの露光装置3はレーザスキャナである。光源装置から発せられたレーザ光(画像情報に対応して変調されたレーザ光)をポリゴンミラーを回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって変更し、fθレンズによりドラム1の母線上に集光して露光(主走査露光)Lする。これにより、ドラム面の露光部分の電位が減衰して、明部電位Vlと非露光部分の暗部電位Vdとの静電コントラストによりドラム面に静電潜像が形成される。現像器4はドラム面の静電潜像を現像剤(トナー)により現像剤像(トナー像)として可視化する現像手段である。本実施例においては、現像器4には、ネガ帯電極性を有する非磁性トナーとポジ帯電極性を有する磁性キャリアが所定の混合比で混合された現像剤が所定量充填されている。ドラム1上の静電潜像に対して現像器4により静電的にトナーを転移させることで可視トナー像を形成する。画像形成方式としては、バックグランド露光方式と正規現像方式とによる方式と、イメージ露光方式と反転現像方式とによる方式とが有る。前者は、帯電したドラム表面に画像情報のバックグランド部に対応して露光し、バックグランド部以外の部分を現像する方式である。後者は、画像情報部に対応して露光し、非露光部分を現像する方式である。それぞれの特徴を生かして用いられている。
【0016】
ドラム1の下側には転写搬送ベルトユニット30が配設されている。このユニット30の構成については後述する。転写材Pはユニット30の下方に配設されている給送カセット(給紙部)80に積載して収容されている。給紙ロ−ラ81が所定の制御タイミングで駆動されることによりカセット80内の転写材Pが一枚分離給送され、搬送路82で搬送されてレジストローラ対6に搬送される。ローラ対6は回路部60で制御されるレジ駆動部(レジスト駆動部)61により回転停止状態と駆動状態とに制御される。搬送路82で搬送された転写材Pはその時点では回転停止状態のローラ対6のニップ部に先端部が受け止められて斜行が矯正される。そして、ローラ対6はドラム1に対する画像形成と同期して所定の制御タイミングで駆動状態にされる。これにより、記録材Pがユニット30に対して搬送され、ユニット30の転写搬送ベルト10上に乗って転写部7に搬送される。転写材Pが転写部7を通過している間、転写帯電器31に対して回路部60で制御される転写制御部(転写バイアス電源部)13から、定電圧、又は定電流の所定の転写バイアスが所定の制御タイミングで印加される。これにより、転写部7において、ドラム1側のトナー像がベルト10で搬送される転写材Pの面に順次に静電的に転写される。
【0017】
転写部7を通過した転写材Pは引き続きベルト10に乗って搬送され、分離ローラ33の部分においてベルト10の上面から曲率分離し、分離爪29の上側を通り、定着入口ガイド93に導かれて定着装置(定着部)9へと搬送される。装置9は定着ローラ92、加圧ローラ91を有する。また、図には省略したけれども、その各ローラ92、91をクリーニングする耐熱性クリーニング部材と、各ローラ内に設置された加熱ヒータを有する。また、ローラ92にジメチルシリコンオイルなどの離型剤オイルを塗布する塗布ローラと、そのオイル溜めと、ローラ92の表面温度を検知して定着温度を制御するサーミスタを有する。転写材Pはローラ92とローラ91との圧接部である定着ニップ部で挟持搬送されていく過程で加熱及び加圧される。これにより、転写材P上の未定着トナー像が固着像として定着され、画像形成物として、排紙ローラ11により装置外の排出トレイ12に排出されて積載される。転写部7で転写材Pにトナー像を転写した後のドラム1は表面に残留したトナーがクリーナ5によって除去されて清掃され、次の画像形成に供される。
【0018】
(2)転写搬送ベルトユニット30
ユニット30は、転写搬送ベルト10としての可撓性の無端ベルト(エンドレスのベルト)を有する。ベルト10は複数の懸架部材としての並行3本の、駆動ローラ32、分離ローラ33、張架ローラ34の間に懸回張設されている。ローラ32とローラ33は、それぞれ、ドラム1よりも転写材搬送方向に関して上流側と下流側とに位置している。以下の説明において、上流側と下流側とは転写材搬送方向もしくはベルト移動方向に関して上流側と下流側である。ローラ34はローラ32とローラ33の間においてベルト10の下行側のベルト部分に接触している。ベルト10の上行側ベルト部分の上面とドラム1の下面とが接触している。その接触部が転写部7である。帯電器31は転写部7においてベルト10を介してドラム1に対向して配設されている。
【0019】
ベルト10の材質としては、CR、ウレタン等の弾性特性を有するゴム材料であることが望ましい。本実施例においては、ベルト10は、周長440mm、厚み500μmtのCR系のゴム材料を用いた。引っ張り試験法(JIS−K6301)で測定したヤング率Eの値が、0.1MPa≦E≦10MPa、ゴム硬度Hs(JIS−K6253準拠)の値が、60°≦Hs≦75°となるような弾性体のものを使用している。ヤング率Eについては、0.1MPa未満となるとベルトの伸縮が大きくなるために転写材Pの搬送が不安定となり画像ズレ等の不良が生じる易くなる。一方、10MPaを超過する領域では弾性特性が無くなってくるために、後述する分離補助部材41(図6)によるベルト10の押し上げが困難になる。また、ゴム硬度Hsについては、60°未満となると画像形成装置を長期間動作させずに停止させている時に、ベルト10の懸架ローラ対向部にてCセット(ゴム潰れ)を起し易くなる。一方、ゴム硬度が75°以上ではベルトの表層割れ等が発生しベルト10の耐久性が低下する傾向にある。ベルト10の抵抗値は、体積抵抗率5.0×109 〜1.0×1012Ω・cm(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧100V、印加時間60sec、23℃50%RH)の範囲内で抵抗水準を振ったものを用いた。体積抵抗率5.0×109Ω・cm未満では特に高湿環境において、ベルト10を通じたリーク現象が発生し易い。一方、体積抵抗率1.0×1012Ω・cm超では、特に低湿環境において電荷の蓄積が顕著となり除電がなされ難くなる。ベルト10は、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトによって無端ベルトとし、駆動ローラ32及び従動回転する分離ローラ33、張架ローラ34に懸架されている。
【0020】
ローラ32は、外径φ20mmのSUS製芯金の周囲に厚み1.5mmtの導電性(体積抵抗値<105Ωcm以下)のゴムを成形したものを用いた。ローラ33は、不図示のバネ加圧機構に支持されており、ベルト10をその内周面側より押圧することでベルト10に張力を付与する機能も兼ねている。ローラ33の外径はφ19mmのSUS製のローラを用いた。ローラ33は、複数のベルト懸架部材32、33、34のうちの転写部7よりもベルト移動方向下流側に配置されていてベルト10から転写材Pを曲率分離する機能も兼ねる転写材分離用懸架部材である。ローラ34の外径はφ20mmのSUS製のローラを用い、ベルト10を挟んでクリーニングファーブラシ35を対向配置させた。ブラシ35はベルト上に残留するトナーを清掃除去する。また、ベルト10を挟んだローラ33の対向位置には、図1のように、ベルト10の転写材搬送領域外のベルト面領域W10Bに形成された画像調整用トナーパッチT1を光電読み取りするためのセンサーS1が配置されている。このパッチT1及びセンサーS1については後述する。
【0021】
ベルト10は、所定の制御タイミングでローラ32が回転駆動されることで、矢印Bの反時計方向にドラム1の回転速度に対応した速度で循環移動する。ベルト10が回転し、一定速度に達すると、転写材Pがローラ対6からベルト10の上行側ベルト部分上に送り出され、転写材Pがベルト10により転写部7へ向けて搬送される。ローラ対6の転写材搬送速度とベルト10の移動速度はほぼ対応している。これと同時に画像書き出し信号がONとなり、それを基準として所定の制御タイミングでドラム1に対して画像形成を行う。その後、転写部7にて、帯電器31に制御部13から所定の転写バイアスが印加されることにより、ドラム1上に形成されたトナー像が転写材Pに静電的に転写される。帯電器31にはコロナ放電のような非接触帯電器、または帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレードのような帯電部材を用いた接触帯電器を用いることができるが、本実施例においては帯電ローラを用いた。帯電ローラ31は、φ7.0mmの導電性の芯金と、厚さ3.5mmtの中抵抗の抵抗値を有するEPDM発泡弾性層からなる。ローラ硬度(Asker−C)は30°である。抵抗値は、4.9N(500g重)の荷重の下で接地(アース面)に対して該ローラ31を50mm/secの周速で回転させ、芯金に1000Vの電圧を印加して測定された電流の関係から求められ、その値は約106Ω(23℃/50%RH)であった。
【0022】
トナー像を転写された転写材Pは、ベルト10の搬送方向下流部にあるローラ33にて、ベルト10から分離離脱(曲率分離)して、分離爪29、ガイド93に導かれて定着装置9へと搬送される。また、転写材Pを分離した後のベルト10はブラシ35により清掃される。ブラシ35は、導電性ファーブラシであり、ベルト10を挟んでローラ34に対向配置した回転体であり、ベルト10の表面を摺擦する。これにより、ベルト10上に残留したトナー及びその他の異物を清掃すると共に、蓄積した電荷の除去(除電)を行っている。ブラシ35、並びローラ34の各軸芯は接地されている。ブラシ35としては、導電性ウェブ(不織布)を用いることもできる。
【0023】
(3)画像処理の概要
図3の(a)は、階調画像を得るための画像処理部の構成例を示すブロック図である。CCDセンサー201によって得られた画像の輝度信号は、画像処理部202において面順次の濃度信号に変換される。変換後の濃度信号は、初期設定時のプリンタのガンマ特性に応じた信号になるように、つまり原画像の濃度と出力画像の濃度とが一致するように、ルックアップテーブルLUT(ガンマルックアップテーブルγLUT)25によって特性が補正される。図3の(b)は本実施例の装置500における出力画像の階調が再現される様子を示す四限チャートである。第I象限は、原画像の濃度を濃度信号に変換するリーダー部200の読取特性を示す。第II象限は、濃度信号をレーザ出力信号に変換するためのLUT25の変換特性を示す。第III象限は、レーザ出力信号を出力画像の濃度に変換するプリンタ部300の記録特性を示す。第IV象限は、原画像の濃度と出力画像の濃度との関係を示す。即ち、装置のトータルの階調再現特性を示す。装置トータルの階調特性、つまり第IV象限の階調特性をリニアにするために、第III象限のプリンタ特性がノンリニアな分を第II象限のLUT25によって補正する。LUT25により、階調特性が変換された画像信号は、レーザドライバのパルス幅変調(PWM)回路26によってドット幅に対応するパルス信号に変換される。そのパルス信号がレーザ光源(不図示:図2の(a)中のレーザ光Lの発光源)のオン/オフを制御するLDドライバ27へ送られる。なお、本実施例では、Bk単色(モノクロ画像)のみだが、4色フルカラー画像形成装置の場合にはY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)およびBk(ブラック)の全色ともにパルス幅変調による階調再現方法を用いる。そして、レーザ光源から出力されるレーザ光Lの走査によってドラム1上には、ドット面積の変化により階調が制御された、所定の階調特性を有する静電潜像が形成され、前述した現像、転写および定着という過程をへて階調画像が再生される。
【0024】
(4)パッチT1の形成とセンサーS1
センサーS1は、形成される画像の状態をモニターするためにベルト10の転写材搬送領域外のベルト面領域W10B(図1)に形成された画像調整用トナーパッチ(トナーパターン)T1を光電読み取りする。本実施例においては、センサーS1として、電子写真方式画像形成装置に一般的に用いられる光学式センサーを用いた。パッチT1は、現像器4にトナーを補給する量を判定するための画像濃度補正用パッチ画像、帯電・露光の補正量を判定するために画像データの階調性を保証するための中間調の階調補正用パッチ画像などのシステム制御用現像剤像(システム制御用トナー像)である。
【0025】
図1において、W10はベルト10の長さ寸法(ベルト面においてベルト移動方向(副走査方向)Bに直交する方向(主走査方向)の寸法)である。WPは転写材Pの最大通紙幅(転写材搬送領域)である。本実施例において転写材Pの通紙は転写材幅中心の中央基準搬送である。W10>WPである。本実施例においては、パッチT1は、ドラム1の非画像部(ドラム端部領域:最大通紙幅WPの外側のドラム面領域)に形成され、それが転写部7において、ベルト10における最大通紙幅WPの外側(転写材搬送領域外)のベルト面領域W10Bに転写される。そして、そのベルト10上のパッチT1がセンサーS1により光電読み取りされ、その読み取り情報が回路部(画像制御手段)60に入力する。センサーS1は、前記ベルト面領域W10Bに対応する位置であって、かつローラ33(転写材分離用懸架部材)に対向する位置に配置されている。回路部60はセンサーS1から入力したパッチ読み取り情報に基づいて所要のシステム制御を実行する。即ち、回路部60は、センサーS1の光電読み取り情報に基づいて画像制御を行う。センサーS1で情報読み取りされたベルト10上のパッチT1は引き続くベルト10の移動でブラシ35の位置に至りベルト10上から除去される。
【0026】
図4の(a)は、センサーS1の出力信号を処理する回路構成例を示すブロック回路図である。センサーS1に入力されるベルト10上に形成されたパッチT1からの反射光(近赤外光)は、電気信号に変換される。その電気信号は、A/D変換回路51によりディジタル信号に変換され、濃度換算回路52によって濃度情報に変換されて回路部(CPU)60に送られる。図4の(b)はγLUT補正テーブルを作成する処理を示すフローチャートで、通常の画像形成の開始に伴い開始される。まず、前回の画像形成動作中になされた画像補正フローにより得られたγLUT補正テーブルによりLUT25のテーブルデータを補正し(S21)、補正結果のテーブルデータをLUT25に設定し(S22)、LUT25を使用して画像を出力する(S23)。その際、ベルト10にパッチT1を形成してパッチT1の濃度を読み取る(S24)。そして、ΔDnを算出し(S25)、積算値ΔD=ΔD+ΔDnを得て(S26)、γLUT補正テーブルを作成する(S27)。その後、プリントジョブを継続するか否かを判定し(S28)、ジョブが継続する場合は処理をステップS21へ戻し、ジョブが終了する場合は処理を終了する。
【0027】
(5)転写材情報認識手段100
本実施例の装置500においては、カセット80からローラ対6に至る搬送路82の途中に、給紙された転写材Pの転写材情報認識手段(紙情報認識手段)100が配設されている。認識手段100はベルト10により搬送される転写材Pに関する情報を認識する手段である。本実施例の手段100は、超音波を用いて転写材Pの剛性を検知する転写材剛性検知手段である。図5の(a)は手段100の模式図である。カセット80から一枚分離給紙された転写材Pは搬送路82中を、上流側の搬送ローラ対104・105と下流側の搬送ローラ対106・107により挟持されてローラ対6に向かって矢印Cの方向に搬送されている。その搬送路途中にて、超音波発信素子101と受信素子102を搬送される転写材Pと接触する様に上流側と下流側に配置する。画像形成動作中などに、転写材Pが素子101と素子102の双方に接する位置に搬送されると、素子101より超音波信号103が発信される。信号103としては、ある一定の周波数/出力の信号を発信しており、発信された信号103は転写材Pの剛性特性に応じて信号が変化する。その変化した信号が素子102に受信される。回路部60は、素子101からの発信信号と素子102による受信信号の変化分(減衰率)を計算する。減衰率は、図5の(b)のように、転写材Pの剛性特性値と相関がある。回路部60にはその相関特性データが参照テーブルとして記憶されている。回路部60は、その相関特性データに基づいて、通紙された転写材Pに関して計算される減衰率Y1に対応する剛性特性値X1を導出する。転写材Pとして紙の米坪量が50g/m2紙、64g/m2紙、80g/m2紙を、本実施例の装置500に通紙して、手段100により剛性特性値を求めたところ表1に示すような結果となった。
【0028】
【表1】
【0029】
(6)転写材分離補助手段40
ユニット30のベルト10の内側には、ローラ33寄りの位置に転写材分離補助機構(転写材分離補助手段)40が配設されている。この機構40は、ベルト10により転写部7に搬送されてトナー像の転写を受け、更に搬送されてローラ33に至った転写材Pのベルト10からの分離を補助するための手段である。本実施例における機構40の構成を図6により説明する。(a)は機構40の要部の斜視図、(b)は機構40の待機時(非動作時)の状態図、(c)は機構40の動作時の状態図である。
【0030】
機構40は、分離ローラ33に並行に配列されている駆動軸47と固定軸43を有する。軸47は両端部がそれぞれユニット30のベルト長手方向の一方側と他方側のフレーム(不図示)間に軸受部材を介して回転可能に支持されている。軸43は両端部がそれぞれ同フレーム間に非回転に固定して支持されている。該両軸47・43は所定の間隔をあけて離間している。軸47は回路部60で制御される分離補助制御部(分離補助制御手段)50によって駆動されるモータ(パルスモータ等)46で正回転又は逆回転される。軸47には軸に沿って間隔をあけて複数個の駆動ギア45が配設されている。本実施例においては、軸47の長手方向の中央部と、その中央部よりも軸の一方端寄り及び他方端寄りとの3箇所に間隔をあけて3つのギア45が設けられている。ギア45は軸47に固定して配設されており、軸47と一体に正回転又は逆回転する。軸43側には、軸47側の各ギア45に対応する位置に、それぞれ、ベアリング48を介してアーム42が回転可能に間隔をあけて配設されている。アーム42の基部外面には軸43と同心にギア44が形成されていて、ギア45と噛合している。各アーム42の先端部(自由端部)には転写材分離補助部材としてのコロ41が横軸49に枢支されて回転可能に配設されている。各アーム42およびコロ41は同じ形状、大きさであり、各アーム42は互いに同じ位相をもって軸43を中心に揺動(回動)する構成とされている。
【0031】
各アーム42は、常時は、図6の(b)のように、軸43を中心に略水平に倒れ込んでいる回転角度姿勢の待機位置Jに位置している。この状態において、コロ41はベルト10の内面から離間して退避した退避位置Hに位置している。図6の(b)の状態が機構40の待機時の状態である。機構40の待機時の状態において、所定の制御タイミングにおいて、モータ46が制御部50によって正回転方向に所定の回転角駆動される。これにより、軸47及びこの軸47に一体のギア45が図6の(c)の矢印Dの正回転方向に所定の角度回転駆動される。これに連動して、ギア45とギア44の噛合いにより、軸43側の各アーム42が軸43を中心に矢印Eの起立方向に所定の角度回動したベルト押し上げ位置Kに移動してその位置に保持される。この状態において、ローラ33の近傍においてベルト10の上行側ベルト部分の内面に対してコロ41が接し、更にコロ41がベルト10の弾性に抗してベルト10を押し上げた動作位置Iに位置する。図6の(c)の状態が機構40の動作時の状態である。また、機構40の動作時の状態において、所定の制御タイミングにおいて、モータ46が制御部50によって逆回転方向に所定の回転角駆動される。これにより、軸47及びこの軸47に一体のギア45が図6の(c)の矢印Fの逆回転方向に所定の角度回転駆動される。これに連動して、ギア45とギア44の噛合いにより、軸43側の各アーム42が軸43を中心に矢印Gの倒れ込み方向に所定の角度回動してベルト押し上げ位置Kから図6の(b)の待機位置Jに戻し移動されその位置に保持される。これにより、コロ41が動作位置Iから退避位置Hに戻り移動して、ベルト10の押し上げが解除される。
【0032】
ここで、コロ41は導電性を有する金属材料製であり、本実施例ではアルミニウム製のものを用い、外径は6〜10mm(本実施例では8mm)、長手方向の幅は5〜15mm程度(本実施例では10mm)である。そして、コロ41同士の間隔が50mm〜120mm程度(本実施例では80mm)の間隔となるように配置されている。コロ41を軸43に沿って複数有することで、コロ41によって得られる転写材Pのこしが大きくなるため、より安定して、ベルト10からの転写材Pの分離を達成することが可能になる。
【0033】
上記の転写材分離補助手段40をまとめると次のとおりである。ベルト10の内側に配設されている転写材分離補助部材としてのコロ41を有する。コロ41は、分離ローラ33よりもベルト移動方向上流側で分離ローラ33に近接した位置においてベルト10をベルト裏面側からベルト10の弾性に抗して局所的に押し上げた動作位置Iと前記動作位置Iから退避した退避位置Hとの間を移動可能である。コロ41は、ベルト移動方向Bに直交するベルト長手方向において間隔をあけて複数配設されている。コロ41は前記動作位置Iにおいてベルト10の裏面に接してベルト10の移動に従動して回転する。
【0034】
本実施例において、機構40は、給紙された転写材Pの情報を検知する転写材情報認識手段100によって得られた情報に応じて動作が制御される。即ち、前記のように手段100の検知結果より、回路部60にて給紙された転写材Pの剛性特性値が算出される。その剛性特性値が分離補助制御部50に伝えられる。そして、その情報に応じて機構40の動作、即ち転写材分離補助部材であるコロ41の移動が制御される。より具体的には、転写材Pの剛性特性値より、転写材Pが自身の剛性によりローラ33の位置においてベルト10から十分に分離可能であると判断された場合は、機構40は、図6の(b)の待機時の状態に保持される。一方、転写材Pの剛性特性値より、転写材Pがベルト10からの分離が厳しいと判断された場合には、機構40は、図6の(c)の動作時の状態に転換される。即ち、ローラ33の近傍においてベルト10の上行側ベルト部分の内面に対してコロ41が接し、更にコロ41がベルト10の弾性に抗してベルト10を局部的に押し上げている状態に保持される。コロ41とローラ33の間の距離(ローラ表面間距離)は4〜8mm程度(本実施例では6mm)である。コロ41はベルト10を待機時の状態よりも1〜10mm程度(本実施例では5mm)押し上げていて、ベルト10とローラ33の最上流の接点が変化するようになっている。ここで、ベルト長手方向に間隔をあけて配設されている複数個の各コロ41によってベルト10の長手方向に生じるうねりが、ローラ33とベルト10の接点に達することで、分離部で転写材Pに与えるこしが大きくなる。そのため、より安定した、ベルト10からの転写材Pの分離を達成することが可能になる。
【0035】
機構40の動作時の状態において、ベルト長手方向に間隔をあけて配列されているコロ41は全てベルト10をベルトの弾性に抗して局所的に押し上げている。このようにコロ41によってベルト10が局所的に押し上げられている状態で、転写材Pがローラ33の位置に来たときの状態を示しているのが図7の(a)である。すなわち、ベルト10およびベルト10に沿って静電的に貼りついている転写材Pは、各コロ41によってベルト10の長手方向に生じているうねりに対応して、転写材幅方向(転写材搬送方向に直交する方向)においてうねりを生じている。そのために、転写材Pは搬送方向での曲げ応力に対する腰の強さが大きくなっている。
【0036】
機構40の動作フローチャートを図8に示す。装置500の回路部60に複数枚の連続した画像形成ジョブが入力されると、転写材Pがカセット80より給紙される(S51)。そして、転写材情報認識手段(剛性検知手段)100を通過して転写材Pの剛性検知がなされる(S52)。さらにローラ対6に搬送され、画像形成と同期してベルト10に給送されて、転写部7に順次送られる。転写材Pが連続通紙される場合には、転写材1枚毎に手段100を通過する際に前述した様に転写材Pの剛性特性値が検知される(S52)。従来の画像形成装置において、転写搬送ベルトからの分離時に分離不良が発生し易かったのは、坪量64g/m2程度未満の転写材であった。そこで、坪量64g/m2の転写材を手段100により、剛性特性値X1を求めたところX1=2.0であった。
【0037】
本実施例においては、剛性特性値X1が2.0以下の場合には、S54〜S60に示すフローに従い、機構40を動作時の状態(図6の(c))にして画像形成動作が実行される。即ち、ベルト10のコロ41による押し上げ動作、トナー像の形成、レジ駆動モータの動作、トナー像の転写材Pへの転写、ベルト10のコロ41による押し上げ解除、定着〜排紙に至る画像形成動作がなされる。コロ41は、転写材Pの先端がコロ41に到達する以前からベルト10の下流側に位置する分離爪29に到達するまでの間、継続してベルト10を押し上げる方向に動作する。これにより、超薄紙(30gsm紙)においてもベルト10からの分離が良好になされる。また、機構40の動作制御方法としては、転写材Pがコロ41を通過している間中は、コロ41がベルト10を押し上げる方向に動作させても構わない。
【0038】
一方、S53において、前記剛性特性値X1が2.0超過の場合には、S61〜S64に示すフローに従い、トナー像の形成、レジ駆動モータの動作、トナー像の転写材Pへの転写、定着〜排紙に至る画像形成動作がなされる。この場合には、転写材Pが前記した様な腰の弱い薄紙ではないために、機構40は待機時の状態(図6の(b))のままに保持される。即ち、コロ41によるベルト10の押し上げ動作(転写材分離補助動作)はなされない。
【0039】
(7)センサーS1の動作概要説明
画像形成中における画像形成装置のセンサーS1の動作を表すフローチャートを図9に示す。通紙する転写材Pの剛性特性値X1によらず(コロ41によるベルト10の押し上げ動作の有無によらず)、センサーS1によるパッチT1の検知フローは図9のS31〜S37に示す通りである。
【0040】
図1の(a)はベルト10を画像形成装置の上部位置から見た図であり、通紙された転写材Pが坪量64g/m2程度未満の薄紙の場合である。したがって、回路部60は機構40を動作時の状態に制御をすることになる。そして、転写材Pが転写部7でドラム1よりトナー像の転写を受け、並びにベルト10が転写部7でパッチT1の転写を受けた後、動作時の状態の機構40に向けて矢印Aの方向にベルト10上を担持搬送されている様子を示している。転写材Pにおいて、P1部分(網掛部分)がコロ41の位置を通過する時には、コロ41が退避位置Hから動作位置Iに移動される(図6の(c))。コロ41は、転写材Pの先端がベルト10の下流側に位置する分離爪29に到達した後に、退避位置Hに戻るように制御される。パッチT1は、コロ41が動作するベルト10上の部分、つまり転写材PにおけるP1部分、コロ41が動作していないベルト10上の部分に関わらず、ベルト10における最大通紙幅WPの外側のベルト面領域W10Bにベルト搬送方向に沿って形成される。
【0041】
ベルト10上に形成されるパッチT1の大きさは、本実施例においては、主走査方向(ベルトの移動方向に直交する方向)/副走査方向(ベルトの移動方向)に20mm四方とした。また、パッチT1は、ベルト10の長手方向において、コロ41の先端とは異なる位置に形成されている。具体的には、ベルト10上に形成されるパッチT1の主走査方向用紙搬送領域側と、パッチT1に最も近い位置のコロ41の主走査方向トナーパッチT1側との間の距離を5mmとした。図1の(a)では、パッチT1は、ベルト10上の画像形成主走査方向(以降、長手方向)における転写材Pの外側の領域にのみ描かれているが、転写材Pの存在に関わらず、ベルト10上の用紙搬送領域外であれば、パッチT1は形成されることが出来る。ベルト10上に形成されたパッチT1はセンサーS1によって検知される。図7の(a)と(b)において、10Aはベルト10がコロ41によって押し上げられている部分の転写材担持面の位置を、10BはパッチT1の担持面の位置を表している。ベルト10の長手方向において、パッチT1はコロ41とは所定の距離を置いて異なる位置に形成されている。そのために、センサーS1とベルト10のパッチT1の担持面10Bとは正対した位置関係(ベルト10の反射面がコロ41による押し上げの影響により傾かない状態(うねりがない状態))を確保できる。センサーS1により検知された信号値は必要な信号変換を経て回路部60にまで送られ画像補正のために用いられる(図4の(a))。また、パッチT1を担持しているベルト部分10Bの内周面がコロ41に対して接触通過することが無いために、ベルト10とコロ41の間に生ずる剥離放電によるトナーパッチT1の飛散りも防止できる。
【0042】
図1の(b)は転写材Pは坪量64g/m2程度を超過している場合である。したがって、回路部60は機構40を待機時の状態(図6の(b))に保持する。図1の(a)と同様に、転写材Pが転写部7でドラム1よりトナー像の転写を受け、並びにベルト10がパッチT1の転写を受けた後、待機時の状態の機構40に向けて矢印Aの方向にベルト10上を担持搬送されている様子を示している。パッチT1はセンサーS1によって検知され、必要な信号変換を経て回路部60にまで送られ画像補正のために用いられる。
【0043】
以下、本実施例1の効果について、図10に示す比較例との対比により説明する。比較例においては、機構40のコロ41が、ベルト10のパッチ形成領域W10B、即ち、ベルト10における最大通紙幅WPの外側のベルト面領域W10Bに対応した位置に配設されている。したがって、通紙された転写材Pが薄紙の場合に機構40が動作すると、パッチT1が形成されているベルト面領域W10Bもコロ41により押し上げられてうねりが発生する。その他の装置構成は実施例1と同様である。
【0044】
図10の(a)は、比較例におけるベルト10を画像形成装置の上部位置から見た図である。転写材Pが、転写部7でドラム1よりトナー像の転写を受け、並びにベルト10が転写部7でパッチT1の転写を受けた後、動作時の状態の機構40に向けて矢印Aの方向にベルト10上を担持搬送されている様子を示している。パッチT2は、ベルト10の長手方向においてコロ41と重なる位置に形成されている。転写材Pは剛性特性値X1が2.0以下、坪量64g/m2程度未満の薄紙の場合である。したがって、転写材PにおけるP1部分(網掛部分)がコロ41を通過する時には、コロ41がベルト10を内側から押し上げる方向に動作する。パッチT1が形成されているベルト面領域W10Bも図10の(b)のようにコロ41により押し上げられる。この状態において、センサーS1によりパッチT1の読み込みがなされる。その他の装置構成は実施例1と同様である。
【0045】
図10の(c)は、実施例1と比較例の各々について、パッチT1をセンサーS1で読み込んだ時のパッチT1の実濃度に対する検知信号特性S1sg、並びS2sgを表す略図である。検知信号特性S1sgが実施例1の場合、検知信号特性S2sgが比較例の場合である。比較例は、コロ41がベルト10を内側から押し上げる方向に動作している時の特性を示している。パッチT1の実濃度が実施例1と比較例とにおいて同一であっても、検知信号値は「S1sg>S2sg」となる。
【0046】
この理由を以下に説明する。実施例1ではパッチT1がベルト10上の画像形成主走査方向におけるコロ41とは異なる位置に形成される。そのために、ベルト10上のパッチT1の形成面のうねりを抑制できて、かつパッチT1を担持しているベルト10の内周面がコロ41に接触通過することが無いためにパッチT1のトナー飛散も抑制できる。一方、比較例ではパッチT1は、ベルト10上の画像形成主走査方向におけるコロ41と重なる位置に形成される。そのために、ベルト10上のパッチT1の形成面がうねり、かつパッチT1を担持しているベルト10の内周面がコロ41に接触通過するためにパッチT1のトナーが飛散することでトナーパターンが劣し易くなる。
【0047】
よって、本実施例1に示す画像形成装置では、パッチT1がベルト10上の画像形成主走査方向におけるコロ41とは異なる位置に形成されるために、ベルト上のパッチT1の形成面のうねりを抑制できる。かつ、パッチT1を担持しているベルト10の内周面がコロ41に接触通過することが無いためにパッチT1のトナー飛散も抑制できる。これにより、センサーS1によるパッチT1の濃度検知の劣化が抑制されるために、安定した画像補正、および画像制御を行うことが出来る。即ち、ベルト上の画像調整用トナーパッチの形成面のうねり、並びトナーパッチの飛散りの両方が抑制される。これにより、センサーS1によるパッチT1の濃度検知の劣化が抑制されるために、安定した画像補正、および画像制御を行うことが出来る。
【0048】
また、転写材情報認識手段が紙剛性検知手段であることにより、ベルト面をうねらせて転写材に腰を与える必要がある薄紙以外の場合には、コロ41を動作させない様に制御出来る。これにより、ベルト面に対して必要以上にうねりを与えることを抑制できるために、センサーS1によるパッチT1の濃度検知の劣化が抑制されて、安定した画像補正、および画像制御を行うことが出来る。
【0049】
[実施例2]
センサーS1は、図11のように、分離ローラ33の対向位置、かつ分離爪29よりもベルト移動方向下流側に配設されてもよい。その他の装置構成・装置制御は実施例1の画像形成装置と同様であるから説明を省略する。(a)は機構40の待機時の状態、(b)は動作時の状態を示している。本実施例の装置も、コロ41がベルト10を内側から押し上げている時(図11の(b))にもセンサーS1がベルト10のベルト面領域W10Bに形成されているパッチT1の濃度を適正に検知できて、安定した画像補正、並びに画像制御を行うことが出来る。
【0050】
[実施例3]
(1)画像形成装置例の概要
図12の(a)は本実施例における画像形成装置500の概略構成を示す縦断面図である。実施例1の装置500と共通する構成部材・部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施例の装置500はフルカラー電子写真方式画像形成装置であり、第1乃至第4の4つの電子写真画像形成部U(UY・UM・UC・UK)が並設されている。各画像形成部Uは実施例1の装置500の画像形成部と同様にドラム(第1の像担持体)1、1次帯電器2、露光装置3、現像器4、クリーナ5を有する。ドラム1は矢印Rの反時計方向に所定の速度(例えば250〜300mm/sec)で回転駆動される。第1の画像形成部UYはドラム1にイエロー色(Y色)のトナー像を形成する。第2の画像形成部UMはドラム1にマゼンタ色(M色)のトナー像を形成する。第3の画像形成部UCはドラム1にシアン色(C色)のトナー像を形成する。第4の画像形成部UKはドラム1にブラック色(Bk色)のトナー像を形成する。
【0051】
第1乃至第4の画像形成部UY・UM・UC・UKの下側には中間転写ベルトユニット70が配設されている。ユニット70は、可撓性を有するエンドレスの中間転写ベルト(第2の像担持体)74と、そのベルト74を張架する複数本の張架ローラとしての、テンションローラ71、駆動ローラ72、2次転写対向ローラ73、の3本のローラを有する。ベルト74はローラ72が駆動されることで矢印Zの時計方向に所定の速度(例えば250〜300mm/sec)で循環移動される。ローラ71とローラ72との間の上行側ベルト部分の内側には各画像形成部UY・UM・UC・UKのドラム下面に対応する位置に1次転写ローラ75が配設されている。各ローラ75はベルト74を介してドラム1の下面に圧接している。ベルト74とドラム下面との圧接部が1次転写部である。ベルト74として、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂または各種ゴム等に帯電防止剤としてカーボンブラックを適当量含有させ、その体積抵抗率を1E+9〜1E+14[Ω・cm]、厚みを0.07〜0.1[mm]としたものを用いている。
【0052】
ユニット70の下側には、実施例1の装置500と同様の構成の転写搬送ベルトユニット30が配設されている。帯電器(2次転写ローラ)31は、ベルト10とベルト74を介して2次転写対向ローラ73に対向している。ベルト74とベルト10との圧接部がベルト74に形成されたトナー像をベルト10に担持されて搬送される転写材Pに転写する転写部(2次転写部)77である。ベルト10として、引っ張り試験法(JIS−K−6301)で測定したヤング率の値が10MPa以下となるような弾性体のものを使用している。ベルト10はローラ32により矢印Bの反時計方向に所定の速度(例えば250〜300mm/sec)で循環移動される。ベルト10として、引っ張り試験法(JIS−K−6301)で測定したヤング率の値が10MPa以下となるような弾性体のものを使用している。ベルト10の引っ張り試験におけるヤング率を10MPa以下程度の十分に弾性変形が可能な部材を使用することで、機構40のコロ41によって転写材Pに効果的にうねり発生させて、より効果的なベルト10からの転写材Pの分離を達成することが可能になる。また、十分に弾性変形が可能な部材は、突起物を引っ込めたときの部材の緩和現象も起こりやすいため、コロ41によるベルト10の寿命低下も防ぐことが可能になる。
【0053】
第1乃至第4の各画像形成部UY・UM・UC・UKのドラム1に形成されるY色トナー像、M色トナー像、C色トナー像、Bk色トナー像が1次転写において、循環移動するベルト74の面に順次に重畳されて1次転写される。これにより、第4の画像形成部UKの1次転写部を通過したベルト面には4色フルカラーのトナー像が形成される。そのトナー像が引き続くベルト74の移動で2次転写部77に搬送される。一方、所定の制御タイミングでベルト10により転写材Pが2次転写部77に搬送されて、ベルト74上のトナー像が転写材P上に2次転写される。即ち、ローラ31によってトナーと逆極性の2次転写電流が印加されることによってベルト74上のトナー像が転写材P上へ一括して転写される。本実施例では、例えば+30〜60uAの電流を流している。2次転写電流が変化するのは、記録材Pの乾燥状態、環境、転写するトナーの量等の要因によって、必要な電流量が変化するためである。ローラ31には、イオン導電系発泡ゴム(NBRゴム)の弾性層と芯金からなり、外径が24mm、ローラ表面粗さRz=6.0〜12.0(μm)、抵抗値がN/N(23℃、50%RH)測定、2kV印加で1E+5〜1E+7Ωの転写ローラを使用している。ローラ31には、供給バイアスが可変となっている、2次転写高圧電源13が取り付けられている。
【0054】
2次転写部77で未定着トナー像が載った転写材Pは引き続きベルト10で搬送されて、ローラ33位置でベルト10から分離される。その後、定着装置9に運ばれ、トナー像を定着した後、機械の外に排出される。ここで、分離を補助するための手段として、ローラ33の下流側には分離爪29、ローラ33の近接上流位置にはベルト10の裏面側に、実施例1と同様に、転写材分離補助機構(分離補助手段手段)40が設けられている。ローラ33は、SUS製で、外径が16mmのローラとなっている。
【0055】
機構40は、実施例1と同様に、給紙された転写材Pの転写材情報を検知する転写材情報認識手段100の検知結果より動作制御される。また、ベルト10のベルト10の転写材搬送領域外のベルト面領域W10Bは画像調整用トナーパターン(トナーパッチ)T1が形成されてセンサーS1により読み込みがなされる。本実施例においては、センサーS1は、実施例2のように、分離ローラ33の対向位置、かつ分離爪29よりもベルト移動方向下流側に配設されている。本実施例3の画像形成装置における、ベルト10上に形成されるパッチT1の概略図を図12の(b)に示した。
【0056】
尚、画像処理、分離補助手段の構成/動作制御、およびセンサーS1の構成/動作制御については、フルカラー画像形成のための動作、並び制御を除き、実施例1、2と同様であるために説明を省略する。
【0057】
本実施例の場合も、実施例1、2の結果と同様に、コロ41がベルト10を内側から押し上げている時にもセンサーS1がベルト10上のパッチT1の濃度を適正に検知できて、安定した画像補正、並び画像制御を行うことが出来る。
【0058】
[その他]
1)画像形成装置のトナー像形成方式は実施例の電子写真画像形成プロセスに限られない。像担持体として静電記録誘電体を用いた静電記録画像形成プロセス、像担持体として磁気記録磁性体を用いた磁気記録画像形成プロセスなどの他の画像形成プロセスであってもよい。
【0059】
2)転写材情報認識手段100は、実施例の転写材剛性検知手段に限られない。転写材を挟持搬送するローラ対の転写材の厚みに対応した離間量から転写材の厚みを検知する転写材厚み検知手段であってもよい。装置に通紙して使用する転写材の種類等の情報を使用者があらかじめ回路部60にマニュアルで入力する情報入力手段であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1・・電子写真感光ドラム(第1の像担持体)、74・・中間転写ベルト(第2の像担持体)、10・・転写搬送ベルト、32〜34・・複数の懸架部材、33・・転写材分離用懸架部材、P・・転写材、7・77・・転写部、41・・転写材分離補助部材、I・・動作位置、H・・退避位置、W10B・・転写材搬送領域外のベルト面領域、S1・・センサー、T1・・画像調整用トナーパッチ、100・・転写材情報認識手段、50・・分離補助制御手段、60・・画像制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成される像担持体と、
複数の懸架部材の間に張架されて循環移動する弾性を有するエンドレスのベルトであって、転写材を担持して前記像担持体から前記転写材に前記トナー像を転写する転写部に搬送する前記ベルトと、
前記ベルトの内側に配設されている転写材分離補助部材であって、前記複数の懸架部材のうちの前記転写部よりもベルト移動方向下流側に配設されていて前記ベルトから前記転写材を曲率分離させる転写材分離用懸架部材よりもベルト移動方向上流側で前記転写材分離用懸架部材に近接した位置において前記ベルトをベルト裏面側からベルトの弾性に抗して局所的に押し上げた動作位置と前記動作位置から退避した退避位置との間を移動可能な前記転写材分離補助部材と、
前記ベルトの転写材搬送領域外のベルト面領域に形成された画像調整用トナーパッチを光電読み取りするためのセンサーと、
前記センサーの光電読み取り情報に基づいて画像制御を行う画像制御手段と、
前記ベルトにより搬送される転写材に関する情報を認識する転写材情報認識手段と、
前記転写材情報認識手段によって得られた情報に応じて前記転写材分離補助部材の移動を制御する分離補助制御手段と、
を有し、前記センサーが、前記ベルト面領域に対応する位置であって、かつ前記転写材分離用懸架部材に対向する位置に配置されており、前記転写材分離補助部材は、前記ベルト面領域に対応する位置には位置していないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写材分離補助部材はベルト移動方向に直交するベルト長手方向において間隔をあけて複数配設されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写材分離補助部材は前記動作位置において前記ベルトの裏面に接してベルトの移動に従動して回転するコロであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写材情報認識手段が前記転写材の剛性を検知する転写材剛性検知手段であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
トナー像が形成される像担持体と、
複数の懸架部材の間に張架されて循環移動する弾性を有するエンドレスのベルトであって、転写材を担持して前記像担持体から前記転写材に前記トナー像を転写する転写部に搬送する前記ベルトと、
前記ベルトの内側に配設されている転写材分離補助部材であって、前記複数の懸架部材のうちの前記転写部よりもベルト移動方向下流側に配設されていて前記ベルトから前記転写材を曲率分離させる転写材分離用懸架部材よりもベルト移動方向上流側で前記転写材分離用懸架部材に近接した位置において前記ベルトをベルト裏面側からベルトの弾性に抗して局所的に押し上げた動作位置と前記動作位置から退避した退避位置との間を移動可能な前記転写材分離補助部材と、
前記ベルトの転写材搬送領域外のベルト面領域に形成された画像調整用トナーパッチを光電読み取りするためのセンサーと、
前記センサーの光電読み取り情報に基づいて画像制御を行う画像制御手段と、
前記ベルトにより搬送される転写材に関する情報を認識する転写材情報認識手段と、
前記転写材情報認識手段によって得られた情報に応じて前記転写材分離補助部材の移動を制御する分離補助制御手段と、
を有し、前記センサーが、前記ベルト面領域に対応する位置であって、かつ前記転写材分離用懸架部材に対向する位置に配置されており、前記転写材分離補助部材は、前記ベルト面領域に対応する位置には位置していないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写材分離補助部材はベルト移動方向に直交するベルト長手方向において間隔をあけて複数配設されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写材分離補助部材は前記動作位置において前記ベルトの裏面に接してベルトの移動に従動して回転するコロであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写材情報認識手段が前記転写材の剛性を検知する転写材剛性検知手段であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−2998(P2012−2998A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137236(P2010−137236)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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