説明

画像形成装置

【課題】定着ユニット近傍を引き回すハーネスに対し、定着ユニットからの放射熱、対流熱を低減しつつ、また安価で組付性に優れた、ハーネス可触保護を提供する。
【解決手段】機体背面の電源部8と、ドア22の開時に電源系統を遮断するためのインタロックスイッチ19を接続するハーネス20が定着ユニット13の近傍を通る。機体上部のトナーカートリッジ14と定着ユニット13を分離するためのガイド板16を備える。ガイド板16は、ユーザによるハーネスへの接触を防止するよう、ハーネスの保護カバーとなっている。また、トナーカートリッジ14と定着ユニット13の間では、ガイド板16は、トナーカートリッジ14と定着ユニット13の間に気流を流すためのダクトであると同時にハーネス保護カバーとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ユニット近傍を引き回すハーネスの可触保護を行える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置においては、機体前面に備えたドアを開けることにより機内へのアクセス行うものがある。この種の画像形成装置では、機体前面のドア開時に、安全のために電源供給を遮断するインタロックスイッチを備えていると同時に、このインタロックスイッチが前ドアの開閉動作により電源供給をオフとし、あるいはオンとすることが可能な構成を採用し得るとともに、機体背面には電源部を有し、インタロックスイッチと電源部とをハーネスにより接続しているものがある。このような構造においては、機内を引き回すハーネスの経路は、安全上、使用者が容易に触れることができないようにする必要がある。また、ハーネス経路については、電気的なノイズの影響を受けにくくするために、できるだけ短くすることが望ましいとされている。
【0003】
この課題に対して、従来の技術においては、ハーネスに接触できないようにするための保護カバーを別個に追加設置して対応していた。しかしながら、従来の保護カバー追加設置という対策では、部品点数を増やすことになることはもちろん、装置の小型化、軽量化、あるいは低コスト化との要求に対して相反することとなる。
【0004】
一方で、ハーネスに接触できないようにするための保護カバーを用いない構成とするならば、最短経路に対し、必要以上に遠回りにハーネスを引き回す必要が生じてしまい、電気的なノイズ等の影響を受けやすくなるといった課題が生じてしまう。
【0005】
また、ハーネスの引き回しにおいては、その最短経路をとり得るようにするために、画像形成装置における定着ユニットの近傍にハーネス経路を設ける必要性が生じる場合がある。定着ユニットは一般に高温となり、かつ、近接する位置にトナーカートリッジ等の熱に弱いユニットを配置せざるを得ない場合が多く、そのため、画像形成装置の品質維持のためには、定着ユニットからの輻射熱、対流熱の影響をいかにして軽減させるかが非常に重要となる。
【0006】
前述のように、定着ユニット近傍にハーネス経路を設けた場合、このような配置とされるハーネスのために保護カバー設けることは、周辺部位の空間容積を減少させることとなり、定着ユニットからの熱の影響を低減するのに不利な構成となってしまう。
【0007】
特許文献1には、簡単な遮熱壁を設けるだけで、定着装置の放射熱、トナークリーニング装置への対流熱による熱の影響を回避することと、吸気抵抗を低減させ、遮熱壁で分流されたトナークリーニング装置近傍の熱を効果的に排出することを目的として、熱定着装置とトナークリーニング装置との間に遮熱壁が配置され、遮熱壁はトナークリーニング装置冷却用空気を導くダクトを形成し、熱定着装置の発生する熱をトナークリーニング装置とは反対側に導く分流板を兼ねている構成とする、画像形成装置について記載されている。しかしながら、この文献においては、画像形成装置内部におけるハーネスの保護について言及されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、画像形成装置内において、定着ユニット近傍を引き回すハーネスに対し、定着ユニットからの放射熱、対流熱を低減しつつ、また安価で組付性に優れた、ハーネス可触保護に対する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像装置のうち請求項1に係るものは、機体上部にトナーカートリッジ、及び定着ユニットをそれぞれ隣接した位置に備えるとともに、前記機体前面に備えたドアを開けることにより前記機体内へのアクセスできるようにした画像形成装置であって、前記機体前面には、前記ドアの開時に電源系統を遮断するためのインタロックスイッチを備え、前記機体背面に電源部を有し、前記インタロックスイッチと前記電源部の接続のためのハーネスが、前記定着ユニットの近傍を通る経路で引き回されており、前記トナーカートリッジと前記定着ユニットの間にはこれらを分離するためのガイド部材を有し、該ガイド部材が、前記トナーカートリッジと前記定着ユニットの間に気流を流すためのダクトと前記ハーネスへの接触を防止するための可触保護部材とを兼ねることを特徴とする。
【0010】
同請求項2に係るものは、請求項1に記載の画像形成装置において、前記ガイド部材は、前記機体を構成する前側板と後側板の間に配置されると共に、前記ハーネスは、前記前側板に設けられた穴部を通って引き回されていることを特徴とする。
【0011】
同請求項3に係るものは、請求項1または2に記載の画像形成装置において、前記ガイド部材を、前記前側板を介してネジにより機体に締結して支持する構成を有し、前記ガイド部材の色を、他の周囲の部材の色との関係で前記前側板の裏側にある前記機体の被締結部のネジ穴の視認性を向上させることができる色としたことを特徴とする。
【0012】
同請求項4に係るものは、請求項3に記載の画像形成装置において、前記ガイド部材は、白系の色に調色された樹脂成型品であることを特徴とする。
【0013】
同請求項5に係るものは、請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記ガイド部材の上方に、印字された転写紙を堆積させるための上カバーを備え、該上カバーと前記ガイド部材の接合部には変形可能な弾性部材を介在させてなることを特徴とする。
【0014】
同請求項6に係るものは、請求項5に記載の画像形成装置において、前記弾性部材が、ゴムまたは発泡ポリウレタンであることを特徴とする。
【0015】
同請求項7に係るものは、請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記弾性部材と前記ガイド部材をエラストマーとの異種材料同士の2色成型として一体化してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、画像形成装置内において、定着ユニット近傍を引き回すハーネスに対し、定着ユニットからの放射熱、対流熱を低減しつつ、同時にハーネスに対する可触保護を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1における、画像形成装置の斜視図(上カバー非表示状態)
【図2】同じく画像形成装置の斜視図(上カバー表示状態)
【図3】本発明の実施例2における、ハーネスの引き回し形態の詳細図
【図4】図3を別の方向から示した図
【図5】本発明の実施例3における、画像形成装置の上面図
【図6】同画像形成装置に対する上カバーとハーネス保護部材の詳細図(前側板は省略)
【図7】比較のために示す、従来技術の画像形成装置から、トナーカートリッジ、中間転写ユニットを取り外した状態を示す図
【図8】本発明の実施対象となる画像形成装置の一例としての複写機を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る画像形成装置は、機体上部にトナーカートリッジ、及び定着ユニットをそれぞれ隣接した位置に備える。定着ユニットの近傍を通る経路でハーネスが引き回されており、また、機体前面に備えたドアを開けることにより機内へのアクセスを行う。また、機体前面にはドア開時における安全確保のため、電源系統を遮断するためのインタロックスイッチを備えている。さらに機体背面に電源部を有し、このインタロックスイッチと電源部の接続のためのハーネスも定着ユニットの近傍を通る構成となっている。機体上部のトナーカートリッジと定着ユニットそれぞれを分離するためのガイド板を有しており、ガイド板はトナーカートリッジと定着ユニットの間に気流を流すためのダクトとなっている。このダクトは、ユーザによるハーネスへの接触を防止するよう、ハーネスの保護カバーとなっている。また、トナーカートリッジと定着ユニットの間の前記ガイド板は、トナーカートリッジと定着ユニットの間に気流を流すためのダクトであると同時にハーネス保護部材とする。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
図8は画像形成装置の一例としての複写機を、機能がわかりやすいように概念的に描いてあり、1は複写機本体、2は原稿台、3は原稿、4は感光体、5は給紙部、6は転写紙、7は定着部である。原稿台2上の原稿3の画像を読み取り、感光体4上に図示しない現像装置等によってトナー像を形成し、これを図示しない転写手段により転写紙6に転写し、定着部7により転写したトナー像を転写紙6上に定着させ、機外へ排出する。なお本発明で対象とする画像形成装置は、もちろん図示のようなタイプ以外の構成を有する装置も含む。
【0020】
<実施例1>
図1、図2において、11は前側板、12は後側板、13は定着ユニット、14はトナーカートリッジ、15は中間転写ユニット、16はハーネス保護部材(以下、ガイド板とも記載する)、18は電源部、19はインタロックスイッチ、20はハーネス、21は上カバー、そして22は前ドアである。前ドア22は図1のみに示す。
【0021】
本実施例装置は、上述した前側板11や後側板12などから構成する機体上部にトナーカートリッジ14及び定着ユニット13をそれぞれ隣接した位置に備える。そして、機体の前面側となる面を構成する前側板11に備えた前ドア22を開けることにより機体内へ外部からアクセスを行えるようにするとともに、機体の前面には、前ドア22の開時に安全のために電源系統を遮断するためのインタロックスイッチ19を備えており、機体の背面には電源部18を有し、インタロックスイッチ19と電源部18の接続のためのハーネス20が、図示のように定着ユニット13の近傍を通る経路で引き回されており、トナーカートリッジ14と定着ユニット13の間にはそれぞれを分離するためのガイド板16を備えている。
【0022】
さらに詳細に構成を説明すると、図に示すように、トナーカートリッジ14及び定着ユニット13の下方には中間転写ユニット15を有している。また中間転写ユニット15の下方にはPCU及び現像ユニット(ともに図示せず)が配置されている。
【0023】
これらトナーカートリッジ14、中間転写ユニット15、ならびに図示せぬPCU、現像ユニットは機体の前面側より挿抜させる構成となっている。そのため既述のように、前ドア22の開閉動作に連動してインタロックスイッチ19のオフ/オンを可能としてある。
【0024】
なお画像形成装置における後方となる後側板12の後方には、高温となった気流を機外へ排出するためのファンモータ及び排気ダクトを有している(図示を省略)。
【0025】
既述のように、ガイド板16は、トナーカートリッジ14と定着ユニット13の間に気流を流すためのダクトであると同時にハーネスへの可触防止用の保護部材である。例えば機体内へのアクセスのために、前ドア22を開放した状態において、定着ユニット13近傍へのハーネス20への接触を防いでハーネスを、あるいは作業者を保護する構成となっている。
【0026】
比較のために示した従来技術を示す図7のように、トナーカートリッジ14の交換時や、中間転写ユニット15の交換時に、トナーカートリッジ14と中間転写ユニット15をそれぞれを機体から取り外した状態において、ユーザによりハーネス20に接触される可能性があったが、トナーカートリッジ14と定着ユニット13の間のガイド板16がハーネス20への接触を防ぎ得るようになっている。図中矢印Xは、ユーザがハーネス20に接触する可能性がある可触部位を示す。
【0027】
すなわち、このような構成とすることによって、トナーカートリッジ14と定着ユニット13の間に気流を流すためのダクト16を、ハーネス20への可触に対する保護部材とし、そのことによって、新たにハーネス保護部材を追加する必要が無く、装置を構成する部品点数の低減、低コスト化、を可能としている。加えて、定着ユニット13近傍に新たなハーネス保護部材を追加する必要が無く、定着ユニット13近傍の空間容積を確保することができ、定着ユニット13で生じる放射熱、対流熱の低減に対して有利である。
【0028】
<実施例2>
図3〜図5により、本発明の実施例2を説明する。この実施例は、トナーカートリッジ14と定着ユニット13の間に気流を流すためのダクト(ハーネス保護部材)16は、実施例1と同様に装置前後に立設する前、後側板11、12間に配置されると共に、定着ユニット13の近傍を通る経路で引き回されているハーネス20は、前側板11に設けられた穴部11aを通って引き回されている。
【0029】
そしてこのような構成とすることにより、ハーネス20を通す穴部11aを、機体内を流れる気流を流すための通気口を兼ねる構成とし、気流の通風抵抗を低減し、より冷却効率を上げることを可能としている。
【0030】
なおこの実施例2の場合、前側板11の穴部11aから引き回されるハーネス20については、前ドア22の内側に備えるインナーカバー等(図示せず)により保護することで、ハーネス20への接触を防止することができる。
【0031】
<実施例3>
図6により、本発明の実施例3を説明する。この実施例は、ダクトを兼ねるハーネス保護部材16を、装置前後に立設する前、後側板11、12間に配置すると共に、前側板11に対してネジ23により締結支持する構成であり、ハーネス保護部材16は、例えば白系の色に調色された樹脂成型品とする。すなわち、前側板11に設けたネジ穴に対してネジ23を締結する際に、前側板11の裏側にある被締結部材のネジ穴が視認できないと、組み付けに支障が生じる怖れがあるが、ハーネス保護部材16として白系の色に調色されているものを用いることにより、ネジ穴の視認性を向上させることができ、組み付け作業をより容易なものとすることができる。また、ハーネス保護部材16を樹脂成型品とすることにより、安価な材料で構成することができ、装置の低コスト化を達成し得る。もちろん、周囲にある他の部材の色との関係で前側板11の裏側にある被締結部材のネジ穴の視認性を向上させることができる色であればガイド板、すなわちハーネス保護部材16の色は白系色には限定されず、種々の色を用いることができる。
【0032】
なお、ハーネス保護部材16の上方には印字された転写紙を堆積させるための上カバー21を備えているが、この上カバー21とハーネス保護部材16の接合部は、弾性部材17によって変形させながら接触させる。このような構成とすることにより、ハーネス保護部材であるダクト16と、上カバー21との密閉性を高めることができ、気流が効率よく機体内を流れ得るようにすることが可能になる。なお弾性部材17には、ゴムや、発泡ポリウレタン等を選択可能であり、特に発泡ポリウレタンのように、自在に変形可能な材質を選択することにより、上カバー21との組み付け性がより向上する。また、ハーネス保護部材16に対し、エラストマーとの異種材料同士の2色成型とすることにより部品を一体化でき、部品点数を減らすとともに、低コスト化も図り得る。
【符号の説明】
【0033】
1:複写機本体
2:原稿台
3:原稿
4:感光体
5:給紙部
6:転写紙
7:定着部
11:前側板
11a:ハーネスを通す穴部
12:後側板
13:定着ユニット
14:トナーカートリッジ
15:中間転写ユニット
16:ハーネス保護部材(ガイド板)
17:弾性部材
18:電源部
19:インタロックスイッチ
20:ハーネス
21:上カバー
22:前ドア
23:ネジ
X:ハーネスへの可触部位
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2002−287602号公報
【特許文献2】特開2003−302892号公報
【特許文献3】特開2008−250284号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体上部にトナーカートリッジ、及び定着ユニットをそれぞれ隣接した位置に備えるとともに、前記機体前面に備えたドアを開けることにより前記機体内へのアクセスできるようにした画像形成装置であって、
前記機体前面には、前記ドアの開時に電源系統を遮断するためのインタロックスイッチを備え、
前記機体背面に電源部を有し、
前記インタロックスイッチと前記電源部の接続のためのハーネスが、前記定着ユニットの近傍を通る経路で引き回されており、
前記トナーカートリッジと前記定着ユニットの間にはこれらを分離するためのガイド部材を有し、
該ガイド部材が、前記トナーカートリッジと前記定着ユニットの間に気流を流すためのダクトと前記ハーネスへの接触を防止するための可触保護部材とを兼ねることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記ガイド部材は、前記機体を構成する前側板と後側板の間に配置されると共に、
前記ハーネスは、前記前側板に設けられた穴部を通って引き回されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記ガイド部材を、前記前側板を介してネジにより機体に締結して支持する構成を有し、
前記ガイド部材の色を、周囲にある他の部材の色との関係で前記前側板の裏側にある前記機体の被締結部のネジ穴の視認性を向上させることができる色としたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記ガイド部材は、白系の色に調色された樹脂成型品であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記ガイド部材の上方に、印字された転写紙を堆積させるための上カバーを備え、
該上カバーと前記ガイド部材の接合部には変形可能な弾性部材を介在させてなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記弾性部材が、ゴムまたは発泡ポリウレタンであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記弾性部材と前記ガイド部材をエラストマーとの異種材料同士の2色成型として一体化してなることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−42692(P2012−42692A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183509(P2010−183509)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】