説明

画像形成装置

【課題】開閉カバーの回動支点と光書き込みヘッドとの距離に依存することなく、簡易な構成で開閉カバー開放時に光書き込みヘッドをプロセスユニットより退避させることが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】カバー33と、像担持体3を有するプロセスユニット2と、光書き込みヘッド7とを有し、光書き込みヘッド7はカバー33に支持されカバー33の開閉動作に伴いプロセスユニット2に対して近接・退避可能であり、光書き込みヘッド7は像担持体3との相対位置を決定すべくプロセスユニット2に配置された被係合部2bに係合する係合部7aを有し、カバー33が閉塞位置から開放される際に光書き込みヘッド7は被係合部2bからの係合部7aの離脱動作を行った後にプロセスユニット2からの退避動作を行い、離脱動作と退避動作とにおいて光書き込みヘッド7の移動軌跡が異なる構成とした画像形成装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光書き込み装置により像担持体に静電潜像を形成して画像形成を行う複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体である感光体ドラムの長手方向に発光素子及びロッドレンズを配列した光書き込みヘッド(LEDヘッド)を装置本体に対して開閉可能な開閉カバーに保持し、開閉カバーの開閉に伴い光書き込みヘッドが感光体ドラム近傍に設けられた位置決め部に対して当接・退避する移動手段を備えた電子写真方式のカラー画像形成装置が知られている。
【0003】
上述の画像形成装置では、開閉カバーの開閉に伴い複数の光書き込みヘッドを移動させるために光書き込みヘッドの移動軌跡は開閉カバーの開閉支点からの距離に依存する。用紙に直接画像を転写する直接転写方式では定着装置等が装置本体の後側に配置されるため開閉カバーの開閉支点を光書き込みヘッドから遠い位置に配置できるが、転写ベルト上に画像を形成した後に用紙に一括転写する中間転写方式では装置本体の奥行きが小さく開閉カバーの開閉支点を光書き込みヘッドからあまり遠ざけることができない。従って、開閉カバーの開閉支点に近い位置に配置されている光書き込みヘッドの移動軌跡における曲率半径が小さくなり、光書き込みヘッドが当接・退避する際にプロセスユニットに接触して破損してしまうという問題点があった。
【0004】
そこで、開閉カバーがLEDヘッドを保持する構成の画像形成装置において、開閉カバーを開放して用紙ジャム解除や感光体ユニットの取り出し等の保守作業を行う際に、開閉カバーから突出するLEDヘッドにプロセスユニットが接触しないように、開閉カバーの回動支点近傍に配置された駆動手段によって開閉カバーが所定の角度まで開放した後にLEDヘッドを退避位置まで回動させる技術が、例えば「特許文献1」に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上述の技術においても、LEDヘッドがプロセスユニットに接触することを防止するため、開閉カバーとLEDヘッドとの距離を大きく取らねばならず、装置が大型化してしまうという問題点がある。
【0006】
本発明は上述の問題点を解決し、開閉カバーの回動支点と光書き込みヘッドとの距離に依存することなく、簡易な構成で開閉カバー開放時に光書き込みヘッドをプロセスユニットより退避させることが可能な画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、装置本体と、回動軸において前記装置本体に開閉自在に支持されたカバーと、前記装置本体に配設された像担持体を有するプロセスユニットと、前記像担持体に静電潜像を書き込む光書き込みヘッドとを有し、前記光書き込みヘッドは前記カバーに支持され前記カバーの開閉動作に伴い前記プロセスユニットに対して近接・退避可能な画像形成装置において、前記光書き込みヘッドは前記プロセスユニットに近接した際に前記像担持体との相対位置を決定すべく前記プロセスユニットに配置された被係合部に係合する係合部を有し、前記カバーが閉塞位置から開放される際に前記光書き込みヘッドは前記被係合部からの前記係合部の離脱動作を行った後に前記プロセスユニットからの退避動作を行い、前記離脱動作と前記退避動作とにおいて前記カバーの開放動作に伴う前記光書き込みヘッドの移動軌跡が異なることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、さらに前記回動軸は用紙幅方向と同じ方向に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の画像形成装置において、さらに前記光書き込みヘッドを保持するヘッド保持部材と、前記ヘッド保持部材を回動自在に支持する連結部材と、前記連結部材の一端を上下動自在に支持するガイド部材と、一端を前記カバーに回動自在に支持され他端に前記連結部材の他端を摺動時自在に支持する開口部を有する連結部材保持部材とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の画像形成装置において、さらに前記離脱動作時において前記連結部材が前記ガイド部材に沿って上方へと移動することにより前記光書き込みヘッドが上方へと直線的に移動し、前記退避動作時において上方へと移動した一端を支点として前記連結部材が上方へと回動することにより前記光書き込みヘッドが上方へと曲線的に移動することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の画像形成装置において、さらに前記ヘッド保持部材及び前記連結部材及び前記連結部材保持部材はそれぞれ一対ずつ設けられ、各一対の前記ヘッド保持部材及び前記連結部材及び前記連結部材保持部材は前記プロセスユニットの回動軸方向における両外側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項3または4記載の画像形成装置において、さらに前記ヘッド保持部材及び前記連結部材はそれぞれ一対ずつ設けられ、前記各連結部材の他端を繋ぐ第2連結部材を有し、各一対の前記ヘッド保持部材及び前記連結部材は前記プロセスユニットの回動軸方向における両外側に配置され、前記開口部によって前記連結部材保持部材が第2連結部材を摺動自在に支持することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項3ないし6の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに前記カバーが所定角度開放されたとき、前記開口部の端部に前記連結部材または第2連結部材が接触することにより前記カバーの開放動作が規制されることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の画像形成装置において、さらに前記開口部は前記端部に前記連結部材または第2連結部材を係止する係止部を有し、前記係止部に前記連結部材または第2連結部材が係止されることにより前記カバーの開放状態が維持されることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の画像形成装置において、さらに前記係止部は前記連結部材または第2連結部材が前記開口部に支持される被支持部よりも小径の小径部からなり、該小径部に前記被支持部が嵌合することにより前記連結部材または第2連結部材が係止されることを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項8記載の画像形成装置において、さらに前記係止部は前記連結部材または第2連結部材が前記開口部に支持される被支持部が嵌合する嵌合部を有し、該嵌合部に前記被支持部が嵌合することにより前記連結部材または第2連結部材が係止されることを特徴とする。
【0017】
請求項11記載の発明は、請求項3ないし10の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに前記像担持体及び前記光書き込みヘッドを複数有し、前記各光書き込みヘッドに対応して前記ヘッド保持部材を複数有することを特徴とする。
【0018】
請求項12記載の発明は、請求項3ないし10の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに前記像担持体及び前記光書き込みヘッドを複数有し、前記回動軸に最も近い前記光書き込みヘッドが前記ヘッド保持部材に保持されていることを特徴とする。
【0019】
請求項13記載の発明は、請求項1ないし12の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに前記光書き込みヘッドが発光ダイオードであることを特徴とする。
【0020】
請求項14記載の発明は、請求項1ないし12の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに前記光書き込みヘッドが有機EL素子であることを特徴とする。
【0021】
請求項15記載の発明は、請求項1ないし14の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに定着装置を有し、該定着装置は前記光書き込みヘッドと前記回動軸との間には配置されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、カバーの開放に伴い移動する光書き込みヘッドが被係合部からの係合部の離脱動作とプロセスユニットからの退避動作とを連続して行い、かつ光書き込みヘッドの移動が離脱動作時においては垂直上方へ退避動作時においては円弧を描きつつ上方へと行われ、光書き込みヘッドの移動軌跡が離脱動作時と退避動作時にとにおいて異なることにより、回動軸と光書き込みヘッドとの距離に依存することなくかつ被係合部に対して係合部をこじることなく光書き込みヘッドを離脱することができると共にプロセスユニットと干渉することなく光書き込みヘッドを退避させることができ、簡易な構成でカバーの開放動作に伴う光書き込みヘッドのプロセスユニットからの退避動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態を採用した画像形成装置の概略側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いられるプロセスユニットの概略図である。
【図3】従来の画像形成装置におけるカバー開閉動作に伴う光書き込みヘッドの退避動作を説明する概略図である。
【図4】従来の画像形成装置におけるカバー開閉動作に伴う光書き込みヘッドの退避動作を説明する概略図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に用いられるプロセスユニットに対する光書き込み装置の位置決め機構を説明する概略図である。
【図6】本発明の第1の実施形態を採用した画像形成装置の概略正面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の変形例を採用した画像形成装置の概略正面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態におけるカバー開放動作を説明する概略図である。
【図9】本発明の第1の実施形態におけるカバー開放動作に伴う光書き込みヘッドの移動を説明する概略図である。
【図10】本発明の第1の実施形態におけるカバー開放動作に伴う光書き込みヘッドの移動を説明する概略図である。
【図11】本発明の第1の実施形態におけるカバー開放動作に伴う光書き込みヘッドの移動を説明する概略図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に用いられる連結バー保持部材を説明する概略図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に用いられる連結バー保持部材を説明する概略図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に用いられる連結バー保持部材を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態を採用した画像形成装置としてのカラープリンタ1の概略図である。同図において右側がプリンタ1の前面側、左側がプリンタ1の後面側を示している。プリンタ1は、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成するための4個のプロセスユニット2Y,2M,2C,2Kを備えており、各プロセスユニット2Y,2M,2C,2Kは互いに異なる色のトナー(Y:黄色、M:赤色、C:青色、K:黒色)を用いること以外の構成は同一であり、寿命到達時に交換される。
【0025】
図2は、黒色トナー像を形成するためのプロセスユニット2Kを示している。プロセスユニット2Kは、像担持体としての感光体ドラム3K、ドラムクリーニング装置4K、図示しない除電装置、帯電装置5K、現像装置6K等を有しており、プリンタ1の装置本体に着脱可能であって一度に消耗品を交換可能となるように構成されている。
【0026】
帯電装置5Kは、図示しない駆動手段によって図2において時計回り方向に回転駆動される感光体ドラム3Kの表面を一様に帯電させ、帯電された感光体ドラム3Kの表面は光書き込みヘッド7Kによって露光されて黒色用の静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像装置6Kに貯容された黒色トナーによって顕像化され、ドラムクリーニング装置4Kは転写工程後の感光体ドラム3K表面に付着している転写残トナーを除去する。図示しない除電装置はクリーニング後の感光体ドラム3Kの残留電位を除電し、この除電により感光体ドラム3Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0027】
現像装置6Kは、図示しない黒色トナーを収容する縦長のホッパ部8Kと現像部9Kとを有している。ホッパ部8K内には、図示しない駆動手段によって回転駆動されるアジテータ10K、アジテータ10Kの下方に配設され図示しない駆動手段によって回転駆動される撹拌パドル11K、撹拌パドル11Kの下方に配設され図示しない駆動手段によって回転駆動されるトナー供給ローラ12K等が配設されている。ホッパ部8K内の黒色トナーは、アジテータ10K及び撹拌パドル11Kの回転によって撹拌されつつ、自重によってトナー供給ローラ12Kに向けて移動する。トナー供給ローラ12Kは、金属製の芯金とこの表面に被覆された発泡樹脂等からなるローラ部とを有しており、ホッパ部8K内の黒色トナーをローラ部の表面に付着させながら回転する。
【0028】
現像部9K内には、感光体ドラム3K及びトナー供給ローラ12Kに当接しつつ回転する現像ローラ13K、先端を現像ローラ13Kの表面に当接させた薄層化ブレード14K等が配設されている。トナー供給ローラ12Kに付着した黒色トナーは現像ローラ13Kとの当接部において現像ローラ13Kの表面に供給され、現像ローラ13Kの回転に伴い薄層化ブレード14Kとの当接位置を通過する際に層厚が規制される。層厚規制後の黒色トナーは、現像ローラ13Kと感光体ドラム3Kとの当接部である現像領域において感光体ドラム3Kに形成された静電潜像へと付着し、黒色用の静電潜像が黒色トナーによって顕像化される。他のプロセスユニット2Y,2M,2Cにおいても同様に感光体ドラム3Y,3M,3C上に黄色トナー像、赤色トナー像、青色トナー像がそれぞれ形成され、形成された各色トナー像は後述する転写ベルトを介して用紙Pに転写される。
【0029】
感光体ドラム3Y,3M,3C,3Kの上方近傍には光書き込みヘッド7Y,7M,7C,7Kが配設されている。各光書き込みヘッド7は画像情報に基づいて所定位置の発光素子を発光させることにより各感光体ドラム3を露光し、各感光体ドラム3の表面に黄色用、赤色用、青色用、黒色用の静電潜像をそれぞれ形成する。各光書き込みヘッド7は、例えば発光ダイオード(LED)等の発光素子を各感光体ドラム3の長手方向に配列し、同様に各感光体ドラム3の長手方向に配列されたロッドレンズを介して各感光体ドラム3に照射を行うものである。各光書き込みヘッド7としては、LEDに代えて有機EL素子を用いてもよい。
【0030】
各プロセスユニット2の下方には、走行自在な無端状の中間転写ベルト16、駆動ローラ17、従動ローラ18、4個の1次転写ローラ19Y,19M,19C,19K、2次転写ローラ20、ベルトクリーニング装置21等を有する転写ユニット15が配設されている。中間転写ベルト16は各ローラ17,18,19によって張架されており、図示しない駆動手段によって駆動ローラ17が回転駆動されることにより図1において反時計回り方向に走行駆動される。各1次転写ローラ19は中間転写ベルト16を介して対応する感光体ドラム3にそれぞれ当接されており、中間転写ベルト16と各感光体ドラム3とが当接する部位においてそれぞれ1次転写ニップ部が形成されている。各1次転写ローラ19には図示しない電源から1次転写バイアスが印加され、これにより各感光体ドラム3上のトナー像と各1次転写ローラ19との間に転写電界が形成される。各1次転写ローラ19に代えて、転写チャージャあるいは転写ブラシ等を用いてもよい。
【0031】
感光体ドラム3Yの表面に形成された黄色トナー像は、感光体ドラム3Yの回転に伴って1次転写ニップ部に侵入すると、転写電界及びニップ圧等の作用により感光体ドラム3Yから中間転写ベルト16へと1次転写される。黄色トナー像が1次転写された中間転写ベルト16は、その走行移動に伴い赤色用、青色用、黒色用の各1次転写ニップ部を通過する際に各色のトナー像を順次重ね合わせられ、結果として中間転写ベルト16上には4色トナー像が形成される。
【0032】
2次転写ローラ20は中間転写ベルト16を介して駆動ローラ17と当接する位置に配設されており、中間転写ベルト16と2次転写ローラ20とが当接する部位において2次転写ニップ部が形成されている。2次転写ローラ20には図示しない電源から2次転写バイアスが印加され、これにより2次転写ローラ20とアース接続されている駆動ローラ17との間には2次転写電界が形成される。
【0033】
転写ユニット15の下方には、記録紙Pを複数枚重ねた用紙束の状態で収容する給紙カセット22が配設されており、給紙カセット22はプリンタ1の装置本体に対してスライド着脱可能に構成されている。給紙カセット22が収容する用紙束の最上位の記録紙Pに当接する位置には、図1において反時計回り方向に回転することにより記録紙Pを給紙後搬送路23に向けて給送する給紙ローラ24が配設されており、給紙後搬送路23の末端付近にはレジストローラ対25が配設されている。レジストローラ対25は給紙カセット22から給送された記録紙Pをローラ間に挟み込むと停止し、記録紙Pが中間転写ベルト16上に形成された4色トナー像と同期するタイミングで回転を再開し、記録紙Pを2次転写ニップ部に向けて給送する。
【0034】
2次転写ニップ部において記録紙Pに密着された中間転写ベルト16上の4色トナー像は、2次転写電界及びニップ圧の影響を受けて記録紙P上に一括して2次転写され、記録紙P上にフルカラートナー像が転写される。表面にフルカラートナー像を転写された記録紙Pは、2次転写ニップ部を通過すると2次転写ローラ20及び中間転写ベルト16から曲率分離した後、転写後搬送路26を経由して定着装置27へと送られる。2次転写ニップ部通過後の中間転写ベルト16には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着しており、この転写残トナーはベルトクリーニング装置21によってクリーニングされる。
【0035】
定着装置27は、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ28と、これに所定の圧力で圧接しつつ回転する加圧ローラ29とを有しており、各ローラ28,29の圧接部において定着ニップ部を形成している。定着装置27内に送り込まれた記録紙Pは未定着トナー像担持面を定着ローラ28に密着させる態様で定着ニップ部に挟持され、加熱及び加圧の影響によってトナーが軟化されることによりフルカラー画像が記録紙Pに定着される。定着装置27から排出された記録紙Pは、定着後搬送路30、排紙路31を介して排紙ローラ対32により機外へと排出され、装置本体上部に装置本体に対して開閉自在に設けられたカバー33の上面に設けられたスタック部にスタックされる。
【0036】
上述した構成のプリンタ1において、消耗品であるプロセスユニット2を交換する際に感光体ドラム3の近傍に配設されている光書き込みヘッド7が邪魔となり、プロセスユニット2を装置本体から取り出せない場合があることから、装置本体に対して開閉自在であるカバー33に光書き込みヘッド7を保持させ、交換作業時にカバー33を開放することにより光書き込みヘッド7を退避させる構成が知られている。本実施形態では、カバー33は記録紙Pの幅方向に延在する回動軸34によって装置本体に開閉自在に支持されており、各光書き込みヘッド7はそれぞれヘッド保持部材であるヘッドホルダ35を介してカバー33に保持されている。各光書き込みヘッド7の保持機構については後述する。
【0037】
ここで、上述したプロセスユニット2の交換作業時にカバーを開放することにより書き込みヘッドを退避させる従来例の構成を説明する。
図3に示す従来例のプリンタ50において、上述したプリンタ1と同等の構成には同様の符号を付し、個々の詳細な説明は省略する。このプリンタ50は、各プロセスユニット2において形成したトナー像を転写ユニット51において記録紙P上に順次転写し、記録紙P上においてフルカラー画像を形成するいわゆる直接転写方式である。各光書き込みヘッド7はそれぞれヘッドホルダ35に保持されており、各ヘッドホルダ35はカバー33にそれぞれ固定されている。転写ユニット51における転写動作後、トナー像が転写された記録紙Pは定着装置27によってトナー像を定着された後、排紙ローラ対32によって機外へと排出され、カバー33の上面に設けられたスタック部にスタックされる。
【0038】
カバー33は回動軸34を支点として上方へと開放可能であり、この従来例では各光書き込みヘッド7も図中矢印の軌跡に沿ってカバー33と一体で移動し、カバー33及び各光書き込みヘッド7は開放時に破線で示す状態となる。このプリンタ50の構成では、定着装置27が光書き込みヘッド7と回動軸34との間に配置されており、回動軸34を光書き込みヘッド7から遠い位置に配置することが可能であるため、カバー33の開放時において各光書き込みヘッド7が各プロセスユニット2に干渉することなく退避位置(カバー33が開放位置を占めた位置)まで移動することが可能である。
【0039】
図4は、別構成である従来例のプリンタ52を示しており、上述したプリンタ1と同等の構成には同様の符号を付し、個々の詳細な説明は省略する。このプリンタ52は、光書き込みヘッド7の保持機構を除いてプリンタ1と同様に構成されており、各光書き込みヘッド7はそれぞれヘッドホルダ35に保持され、各ヘッドホルダ35は回動部材53を介してカバー33に回動可能に支持されている。各光書き込みヘッド7は、カバー33が開放された際にこの開放動作に伴い、回動部材53を支点として回動することによりヘッドホルダ35が鉛直方向を向いた状態を維持しつつ退避位置へと移動する。
【0040】
上述した構成のプリンタ52では、カバー33を開放することにより各光書き込みヘッド7を各プロセスユニット2に干渉することなく退避させることが可能である。しかし、各光書き込みヘッド7は対応する各感光体ドラム3に対して位置決めされる必要があり、図5に示すように光書き込みヘッド7には係合部である位置決め穴7aが、プロセスユニット2を構成するケース2aには被係合部である位置決め突起2bがそれぞれ設けられている。図4に示したプリンタ52あるいは図1に示したプリンタ1のように、光書き込みヘッド7と回動軸34との間に定着装置27が配設されておらず、カバー33の開放動作に伴い退避動作を行う各光書き込みヘッド7のうち、光書き込みヘッド7Kあるいは光書き込みヘッド7Cのように移動軌跡の曲率半径が小さい場合には、位置決め穴7aが位置決め突起2bに対して斜め上方から当接する状態となり、位置決め穴7aが位置決め突起2bに嵌合できず、正確な位置決めが行われない虞が生じる。このような事態となると、感光体ドラム3と光書き込みヘッド7との相対位置がずれ、感光体ドラム3上の所定位置に静電潜像が書き込まれないため、中間転写ベルト16に各感光体ドラム3より画像が1次転写された際に位置ずれが生じ、画像不良が発生してしまうという問題点がある。また、カバー33が閉じられて位置決め穴7aが位置決め突起2bに嵌合されている状態からカバー33を開放する場合においても、斜め上方に各光書き込みヘッド7が移動しようとすると嵌合している部分がこじれたり位置決め突起2bが破損したりする虞がある。これによっても上述と同様に画像不良が発生してしまう。
【0041】
上述した画像不良の発生を防止しつつ、位置決め突起2bに対して位置決め穴7aが確実に係合(嵌合)・離脱可能である構成を本発明の第1の実施形態として以下に説明する。図1において、各光書き込みヘッド7はそれぞれヘッドホルダ35の一端に保持され、図示しない付勢手段によって感光体ドラム3に向けて付勢されている。各ヘッドホルダ35の他端は、回動部材36を介して連結部材である連結バー37にそれぞれ回動自在に支持されている。連結バー37は、その一端を装置本体に配設されたガイド部材38によって上下動自在に支持されており、他端は回動部材36を介してその一端を回動部材39によってカバー33に回動自在に連結された連結部材保持部材である連結バー保持部材40の他端に形成された開口部40aに摺動自在に支持されている。連結バー37の一端は図示しない付勢手段によって鉛直上方へと付勢されており、図示しないロック機構により付勢手段の付勢力が連結バー37の一端に作用しないようにロックされている。図示しないロック機構は、カバー33の開放動作に伴って自動的に解除される。ガイド部材38は、連結バー37の一端を鉛直方向に案内する直線部38aと、連結バー37の一端を回動自在に支持する円弧部38bとを有している。
【0042】
図6は、プリンタ1を正面から見た図であり、装置本体の左側壁41の内側には左フレーム42が、右側壁43の内側には右フレーム44がそれぞれ配設されている。ヘッドホルダ35は一対の脚部を有する略U字形状を呈しており、光書き込みヘッド7を保持しつつ各脚部を一対の連結バー37にそれぞれ回動可能に支持されている。各連結バー37はヘッドホルダ35の各脚部の内側に配設され、ヘッドホルダ35の各脚部の外側には一対の連結バー保持部材40がそれぞれ配設されている。ヘッドホルダ35の各脚部、各連結バー37、各連結バー保持部材40はそれぞれ各プロセスユニット2と各フレーム42,44との間の位置に配設されており、各光書き込みヘッド7が退避位置へと移動する際に各プロセスユニット2と干渉しないように構成されている。なお、ヘッドホルダ35の各脚部、各連結バー37、各連結バー保持部材40の配設順序はこれに限られず、各プロセスユニット2と各フレーム42,44との間の位置に配設されていればどのような順序でもよい。また、図7に示すように各連結バー37の他端を繋ぐ第2連結部材としての接続部材45を設け、開口部40aによって接続部材45のほぼ中央部を支持する態様で、連結バー保持部材40を1個のみ設ける構成としてもよい。
【0043】
上述したプリンタ1における、カバー33の開放動作に伴う各光書き込みヘッド7の退避動作を説明する。図1に示す状態からカバー33を上方へと開放させると、図8に示す位置までは連結バー37の他端に対して開口部40aが摺動するため、連結バー保持部材40のみがカバー33と共に上方へと移動し、連結バー37及び各ヘッドホルダ35及び各光書き込みヘッド7は移動しない。
【0044】
図8に示す状態からさらにカバー33が開放されると、図9に示すように連結バー37の他端は開口部40aの端面に当接して連結バー保持部材40の上方への移動に伴い上方へと持ち上げられ、一端は図示しないロック機構が解除されることにより直線部38aに沿って上方へと移動する。この動作により位置決め穴7aが位置決め突起2bよりこじることなく良好に離脱し、この一連の動作によって各光書き込みヘッド7の離脱動作が完了する。
【0045】
図9に示す状態からさらにカバー33が開放されると、図10に示すように連結バー37の他端は連結バー保持部材40によってさらに上方へと持ち上げられ、一端は直線部38aを登り切って円弧部38bへと達し、連結バー37は円弧部38bを支点として回動する。そして、カバー33が最終的に図11に示す位置まで開放されると、回動軸34近傍に設けられた図示しない保持部材によってカバー33が開放された状態で保持され、この一連の動作により各光書き込みヘッド7の退避動作が完了する。また、上述した動作を逆に行うことにより、カバー33の閉塞動作に伴い各光書き込みヘッド7の各プロセスユニット2に対する近接動作及び位置決め動作が行われる。
【0046】
上述したカバー33の開放動作において、カバー33の開放に伴い移動する各光書き込みヘッド7が位置決め突起2bからの位置決め穴7aの離脱動作とプロセスユニット2からの退避動作とを連続して行い、かつ各光書き込みヘッド7の移動が離脱動作時においては垂直上方へ退避動作時においては円弧を描きつつ上方へと行われ、各光書き込みヘッド7の移動軌跡が離脱動作時と退避動作時にとにおいて異なることにより、回動軸34と各光書き込みヘッド7との距離に依存することなくかつ位置決め突起2bに対して位置決め穴7aをこじることなく各光書き込みヘッド7を離脱することができると共に各プロセスユニット2と干渉することなく各光書き込みヘッド7を退避させることができ、簡易な構成でカバー33の開放動作に伴う各光書き込みヘッド7の各プロセスユニット2からの退避動作を行うことができる。
【0047】
図12は、本発明の第2の実施形態を示している。この第2の実施形態は上述した第1の実施形態と比較すると、連結バー保持部材40に代えて連結部材保持部材である連結バー保持部材46を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。連結バー保持部材46は被支持部である連結バー37の他端に設けられた回動部材36または接続部材45を摺動自在に支持する開口部46aを有しており、開口部46aの下方側端部には弾性部材により形成され回動部材36または接続部材45よりも小径に形成された小径部46bが設けられている。この構成とすることにより、カバー33が図8に示す状態から図10に示す状態まで開放される際には、回動部材36または接続部材45は図12に示すように小径部46bの手前に位置した状態を占め、カバー33が図11に示す完全に開放された状態となると、図13に示すように回動部材36または接続部材45が小径部46bに嵌合し、カバー33が開放状態を維持することができる。これにより、上述した図示しない保持部材を省略することができる。
【0048】
図14は、本発明の第3の実施形態に用いられる連結部材保持部材としての連結バー保持部材47を示している。連結バー保持部材47は回動部材36または接続部材45を摺動自在に支持する開口部47aを有しており、開口部47aの下方側端部近傍には弾性部材により形成され開口部47aの幅Lが回動部材36または接続部材45よりも小さくなるように形成された突起部47bが設けられている。この構成とすることにより、カバー33が図8に示す状態から図10に示す状態まで開放される際には、回動部材36または接続部材45は突起部47bの手前に位置した状態を占め、カバー33が図11に示す完全に開放された状態となると回動部材36または接続部材45が突起部47bを乗り越え、突起部47bの下方に形成された嵌合部47cに嵌合することによりカバー33が開放状態を維持することができる。これにより、上述した図示しない保持部材を省略することができる。
【0049】
上記各実施形態では、光書き込みヘッド7を複数有し、全ての光書き込みヘッド7に対して離脱動作時と退避動作時とにおいて移動軌跡が異なる構成としたが、図3に示すように回動軸34と光書き込みヘッド7との距離を十分に取ることが可能であれば全ての光書き込みヘッドに上述した構成を適用する必要はなく、少なくとも回動軸34に最も近い光書き込みヘッド7に上述した構成を適用すればよい。
【0050】
上記実施形態では画像形成装置としてカラープリンタを用いた例を示したが、本発明が適用可能な画像形成装置はこれに限定されず、複写機、プロッタ、ファクシミリ、印刷機、これらの複合機等の他の画像形成装置にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 画像形成装置(複写機)
2 プロセスユニット
2b 被係合部(位置決め突起)
3 像担持体(感光体ドラム)
7 光書き込みヘッド
7a 係合部(位置決め穴)
27 定着装置
33 カバー
34 回動軸
35 ヘッド保持部材(ヘッドホルダ)
37 連結部材(連結バー)
38 ガイド部材
40,46,47 連結部材保持部材(連結バー保持部材)
45 第2連結部材(接続部材)
46b 小径部
47c 嵌合部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2007−65125号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、回動軸において前記装置本体に開閉自在に支持されたカバーと、前記装置本体に配設された像担持体を有するプロセスユニットと、前記像担持体に静電潜像を書き込む光書き込みヘッドとを有し、前記光書き込みヘッドは前記カバーに支持され前記カバーの開閉動作に伴い前記プロセスユニットに対して近接・退避可能な画像形成装置において、
前記光書き込みヘッドは前記プロセスユニットに近接した際に前記像担持体との相対位置を決定すべく前記プロセスユニットに配置された被係合部に係合する係合部を有し、前記カバーが閉塞位置から開放される際に前記光書き込みヘッドは前記被係合部からの前記係合部の離脱動作を行った後に前記プロセスユニットからの退避動作を行い、前記離脱動作と前記退避動作とにおいて前記カバーの開放動作に伴う前記光書き込みヘッドの移動軌跡が異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記回動軸は用紙幅方向と同じ方向に設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記光書き込みヘッドを保持するヘッド保持部材と、前記ヘッド保持部材を回動自在に支持する連結部材と、前記連結部材の一端を上下動自在に支持するガイド部材と、一端を前記カバーに回動自在に支持され他端に前記連結部材の他端を摺動時自在に支持する開口部を有する連結部材保持部材とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置において、
前記離脱動作時において前記連結部材が前記ガイド部材に沿って上方へと移動することにより前記光書き込みヘッドが上方へと直線的に移動し、前記退避動作時において上方へと移動した一端を支点として前記連結部材が上方へと回動することにより前記光書き込みヘッドが上方へと曲線的に移動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の画像形成装置において、
前記ヘッド保持部材及び前記連結部材及び前記連結部材保持部材はそれぞれ一対ずつ設けられ、各一対の前記ヘッド保持部材及び前記連結部材及び前記連結部材保持部材は前記プロセスユニットの回動軸方向における両外側に配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3または4記載の画像形成装置において、
前記ヘッド保持部材及び前記連結部材はそれぞれ一対ずつ設けられ、前記各連結部材の他端を繋ぐ第2連結部材を有し、各一対の前記ヘッド保持部材及び前記連結部材は前記プロセスユニットの回動軸方向における両外側に配置され、前記開口部によって前記連結部材保持部材が第2連結部材を摺動自在に支持することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項3ないし6の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記カバーが所定角度開放されたとき、前記開口部の端部に前記連結部材または第2連結部材が接触することにより前記カバーの開放動作が規制されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像形成装置において、
前記開口部は前記端部に前記連結部材または第2連結部材を係止する係止部を有し、前記係止部に前記連結部材または第2連結部材が係止されることにより前記カバーの開放状態が維持されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8記載の画像形成装置において、
前記係止部は前記連結部材または第2連結部材が前記開口部に支持される被支持部よりも小径の小径部からなり、該小径部に前記被支持部が嵌合することにより前記連結部材または第2連結部材が係止されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項8記載の画像形成装置において、
前記係止部は前記連結部材または第2連結部材が前記開口部に支持される被支持部が嵌合する嵌合部を有し、該嵌合部に前記被支持部が嵌合することにより前記連結部材または第2連結部材が係止されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項3ないし10の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記像担持体及び前記光書き込みヘッドを複数有し、前記各光書き込みヘッドに対応して前記ヘッド保持部材を複数有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項3ないし10の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記像担持体及び前記光書き込みヘッドを複数有し、前記回動軸に最も近い前記光書き込みヘッドが前記ヘッド保持部材に保持されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1ないし12の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記光書き込みヘッドが発光ダイオードであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項1ないし12の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記光書き込みヘッドが有機EL素子であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れか1つに記載の画像形成装置において、
定着装置を有し、該定着装置は前記光書き込みヘッドと前記回動軸との間には配置されていないことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−58287(P2012−58287A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198352(P2010−198352)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】