説明

画像形成装置

【課題】 複数の現像スリーブをもつ現像装置で溝形状の現像スリーブを使用する場合、溝形状のバンディングが残ってしまうが、各現像スリーブの溝の形状が同じ場合にはバンディングが重なりあって、より顕在化してしまう。
【解決手段】 溝形状の処理を施した現像スリーブを複数備えた現像装置において、各々の溝を現像スリーブのスラスト方向に対して斜めにすると共に各々の溝の角度を変える。こうすることにより、各現像スリーブの溝の角度で発生するバンディングが打ち消しあうことで、フルカラー出力画像においてバンディングが見えにくくなることを実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式等によって像担持体上に形成された静電潜像を現像して可視画像を形成する現像装置に関する。特に、トナー及びキャリアからなる二成分現像剤を使用する現像装置を備えた、複写機、プリンタ、記録画像表示装置、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【0002】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式等によって像担持体上に形成された静電潜像を現像して可視画像を形成する現像装置を有する画像形成装置に関し、特に、表面が溝加工されている複数の現像剤担持体にて現像する現像装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0003】
電子写真方式を用いた複写機などの画像形成装置では、感光体ドラムなどの像担持体上に形成された静電潜像に現像剤を付着させて可視像化する現像装置が設けられる。このような現像装置では、感光体ドラムと対向する現像位置に現像剤を担持搬送させる現像スリーブが設けられている。現像スリーブの表面には、搬送性を向上させるためにサンドブラストによって表面に凹凸を形成した現像スリーブがある。サンドブラストを用いて凹凸を持たせた現像スリーブは、使用して表面が摩耗すると凹凸量が小さくなり現像剤搬送能力が低下する問題があった。現像剤搬送能力を上げる為に凹凸量を大きくすると、加工時に砥粒を強く当ててブラストする必要があり現像スリーブを変形させるという問題があった。そこで、特許文献1及び2のように、現像スリーブ回転軸に対して平行に延びる複数の溝を備えた現像スリーブが提案されている。切削工具等による溝の加工ではサンドブラストのように現像スリーブを変形させることなく凹凸量を大きくすることが可能である。
【0004】
さらには、以下のような現像装置が知られている。
これまで、感光体ドラムの回転移動速度が比較的低い場合には、つまり比較的低速な複写機の場合には、現像時間が短くても充分に良好な現像画像が得られるので、現像スリーブが1本でもよかった。しかしながら、最近の複写機の高速化の要求の流れの中で、感光体ドラムの回転移動速度が速くなった場合は、現像スリーブが1本では必ずしも好適な画像形成ができるとは限らなくなった。
【0005】
その対策として、現像スリーブの周速度を大きくすることで、現像効率を上げる方法がある。しかし、現像スリーブの周速度を大きくすると、磁気ブラシを形成している現像剤に働く遠心力が大きくなり、現像剤の飛散が多くなり、複写機内部の汚染を引き起こし、装置機能の低下のおそれがある。
【0006】
そこで、別の対策として、複数(2本以上)の現像スリーブを互いに隣り合うように周面を近接させて配置し、現像剤をそれぞれの周面を伝わるように搬送させる。こうすることで、現像時間を延ばし現像能力を上げるいわゆる多段磁気ブラシ現像方法が提案されてきている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−333691号
【特許文献2】特開2007−127907号
【特許文献3】特登録02699968号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2のように表面に溝を備えた現像スリーブは、以下のような課題がある。即ち、現像スリーブのコート量を規制するために、現像スリーブには現像剤規制部材が対向して設けられている。現像スリーブの表面が現像剤規制部材との対向部を通過する際に溝の領域と溝のない領域でスリーブ表面に搬送される現像剤の量が変わる。このため、溝のある領域と溝のない領域で感光体ドラム上に移動するトナーの量が変化してしまい、出力画像状には溝のピッチでムラ(バンディング)が発生してしまう場合がある。
【0009】
また、あやめ形状の溝を形成した現像スリーブを用いる場合にも、各溝のあるなしによって発生する上記のバンディングは発生してしまう。
【0010】
とりわけ、現像スリーブを複数備えた現像装置の場合、各々の現像スリーブの溝形状が同じであると、各々の現像スリーブによるバンディングが重なり合ってしまう。そのため、1本の現像スリーブのみを備えた現像装置で画像出力する場合よりもより顕著にバンディングが発生してしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、複数の現像剤担持体にて現像する現像装置において、各現像剤担持体の溝によって生じたピッチムラが画像上で重なりあってしまうことによる画像不良を低減可能な現像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
少なくともトナーを含む現像剤を表面に担持して像担持体との対向部である現像領域に該現像剤を搬送する複数の現像剤担持体を備え、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置において、前記複数の現像剤担持体は、表面に溝が形成された現像剤担持体を少なくとも2つ以上有し、前記溝と前記現像剤担持体の軸線方向とのなす角が各現像剤担持体で異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の現像剤担持体にて現像する現像装置において、各現像剤担持体の溝によって生じたピッチムラが画像上で重なりあってしまうことによる画像不良を低減可能な現像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1、2、3に係る画像形成装置の概略構成説明図である。
【図2】本発明に係る現像装置の横断面図である。
【図3】本発明に係る現像装置の現像スリーブの断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係る現像スリーブの概略説明図である。
【図5】本発明の実施例1に係る現像スリーブの概略説明図である。
【図6】本発明の実施例2に係る現像スリーブの概略説明図である。
【図7】回転方向および長手方向への搬送力の溝角度依存を説明する図である。
【図8】本発明の実施例3に係る現像スリーブの概略説明図である。
【図9】従来の現像装置の概略説明図である。
【図10】従来の現像装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例1)
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、現像スリーブを複数本備えた構成において、各現像スリーブに形成された溝の角度が異なる構成とする限りにおいては、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0016】
従って、画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、中間転写型/直接転型の区別無く実施でき、さらに、二成分現像剤/一成分現像剤の区別も無く実施できる。本実施形態では、トナー像の形成に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0017】
なお、特許文献1〜3に示される画像形成装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0018】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図2、3は現像装置の構成の説明図である。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト5に沿って各色の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。中間的な転写媒体に沿って無彩色の画像形成部とともに有彩色の画像形成部を複数配置している。
【0020】
画像形成部Paでは、像担持体としての感光ドラム1aにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト5に一次転写される。画像形成部Pbでは、感光ドラム1bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト5のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部Pc、Pdでは、それぞれ感光ドラム1c、1dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて同様に中間転写ベルト5に順次重ねて一次転写される。
【0021】
中間転写ベルト5に一次転写された四色のトナー像は、二次転写部へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。四色のトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置8で加熱加圧を受けて表面にトナー像を定着された後に、積載トレイ9へ排出される。
【0022】
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、静電像の現像に用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、ほぼ同一に構成される。以下では、画像形成部Paについて説明し、他の画像形成部Pb、Pc、Pdについては、説明中の符号末尾のaを、b、c、dに読み替えて説明されるものとする。
【0023】
画像形成部Paは、感光ドラム1aの周囲に、コロナ帯電器2a、露光装置3a、現像装置4a、一次転写ローラ6a、クリーニング装置7aを配置している。
【0024】
感光ドラム1aは、アルミニウムシリンダの外周面に負極性の帯電極性を持たせた感光層が形成され、273mm/secのプロセススピードで矢印方向に回転する。コロナ帯電器2aは、コロナ放電に伴う荷電粒子を感光ドラム1aに照射して、感光ドラム1aの表面を一様な負極性の電位に帯電する。露光装置3aは、イエローの分解色画像を展開した走査線画像データに応じてON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラム1aの表面に画像の静電像を書き込む。
【0025】
現像装置4aは、磁性キャリアと非磁性トナーとを主成分とする二成分現像剤を攪拌して、磁性キャリアを正極性に、非磁性トナーを負極性にそれぞれ帯電させる。帯電した二成分現像剤は、固定磁極の周囲で回転する現像スリーブに担持されて感光ドラム1aを摺擦する。負極性の直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧が現像スリーブへ印加されることによって、負極性に帯電したトナーが、現像スリーブよりも相対的に正極性になった感光ドラム1aの静電像へ移転して静電像が反転現像される。
【0026】
一次転写ローラ6aは、中間転写ベルト5を押圧して、感光ドラム1aと中間転写ベルト5との間に一次転写部を形成する。正極性の直流電圧が一次転写ローラ6aに印加されることによって、感光ドラム1aに担持された負極性のトナー像が、一次転写部を通過する中間転写ベルト5へ一次転写される。
【0027】
クリーニング装置7aは、感光ドラム1aにクリーニングブレードを摺擦させて、中間転写ベルト5への一次転写を逃れて感光ドラム1aに残った転写残トナーを回収する。転写ベルトクリーニング装置10は記録材Pへの二次転写を逃れて中間転写ベルト5に残った転写残トナーを回収する。
【0028】
<現像装置>
図2、3を用いて現像装置4の詳細な説明を行う。
本発明は現像剤担持体としての現像スリーブを複数本備えた現像装置における課題を解決することが目的であるので、以下に順番に詳述する。
【0029】
現像器4は現像剤容器22を備え、その内部は隔壁23によって現像室R1と撹拌室R2に区画される。一方、現像室R1および撹拌室R2内には、トナーと磁性キャリアが混合された現像剤が収容されている。本発明で用いる磁気キャリアはフェライトキャリアやバインダ樹脂と磁性金属酸化物及び非磁性金属酸化物からなる樹脂磁性キャリア等を用いればよい。
【0030】
現像室R1内には搬送スクリュー24が収容されており、回転駆動により現像剤を、現像スリーブ26、28の長手方向に沿って搬送する。攪拌室R2内に収容されたスクリュー25による現像剤搬送方向はスクリュー24によるそれとは反対方向である。
【0031】
隔壁23には手前側と奥側に開口が設けられており、スクリュー24で搬送された現像剤がこの開口の1つからスクリェー25に受渡され、スクリュー25で搬送された現像剤が、上記の開口の他の1つからスクリュー24に受渡される。
【0032】
現像剤容器22の感光体ドラム1に近接する部位には開口部が設けられ、上流現像スリーブ26および下流現像スリーブ28の2本の現像スリーブ設けられている。なお、2本の現像スリーブはそれぞれ厚さが1mm、外径が25mm、スラスト方向の長さが350mmである。
【0033】
上流現像スリーブ26内にはローラ状の第1のマグローラ27が固定配置されている。上流現像スリーブ26は矢印R26の方向(感光体回転方向とは逆方向)に回転し、現像剤を担持搬送する。上流現像スリーブ26の上方には規制ブレード21が配置されており、マグローラの規制ブレード近傍には磁極N2が配置されている。磁極N2の磁力に拘束されて溜った現像剤は、規制ブレードにて適正な現像剤層厚に規制された後、該現像剤を感光体ドラム1との対向部である第1の現像領域A1に担持搬送される。第1のマグローラ27は、第1の現像領域A1に対向する現像磁極S1を有している。現像磁極S1が、第1の現像領域A1に形成する現像磁界により現像剤の磁気ブラシが形成され、この磁気ブラシが第1の現像領域A1で矢印a方向に回転する感光体ドラム1に接触して静電潜像をこの第1の現像領域A1で現像する。その際、磁気ブラシに付着しているトナーと、現像スリーブ表面に付着しているトナーも、該静電潜像の画像領域に転移して現像する。本実施例では、第1のマグローラ27は上記磁極S1やN2の他にN1,N3,S2極を有しており、このうちN2極とN3極は同極で隣り合っており反撥磁界が形成されるため、現像剤に対してバリアが形成されている。
【0034】
上記上流現像スリーブ26の下部であって、上流現像スリーブ26および感光体ドラム1の双方に略対向した領域に第2の現像剤担持手段である下流現像スリーブ28を矢印R28方向(上流現像スリーブとは同一方向)に回転可能に配設している。この下流現像スリーブ28は上流現像スリーブ26と同様に非磁性材料で構成されている。その内部には磁界発生手段であるローラ状の第2のマグローラ29が非回転状態で設置されており、この第2のマグローラ29は磁極S3、N4、S4、N5、S5の5極を有している。このうち、N4極上の磁気ブラシは第2の現像領域A2で感光体ドラム1に接触しており、第1の現像領域A1を通過後の感光体に対し、更に2度目の現像を行う。またS3極とS5極は同極でありS3極とS4極の間には反発磁界が形成され、現像剤に対してバリアが形成されている。このうちS3極は上流現像スリーブ6に内包された第1のマグローラ7のN3極に、両スリーブが最も接近している位置の近傍で対向している。以下、現像剤の流れを第1の現像スリーブ26と第2の現像スリー28付近の拡大図(図3)を用いて説明する。第1の現像スリーブ26のN3極とN2極間には反発磁界が形成されており、また、第2の現像スリーブ28のS3極とS5極間にも反発磁界が形成されている。このため、第1の現像スリーブ26上を搬送され現像領域を通過してきた現像剤はN3極へ至り、反発磁界によって両スリーブの最近接位置を通過することができず、矢印dのようにN3極からS3極方向へのびる磁力線に従って下流現像スリーブ28側へ移動する。そして下流現像スリーブ28上を攪拌室内の搬送スクリュー5まで搬送される。本実施例のように上流現像スリーブ26の下に下流現像スリーブ28を設けることで、現像剤の流れは上流現像スリーブ26をN2→S2→N1→S1→N3と搬送される。その後、上流現像スリーブ26上の現像剤は両スリーブの反発磁界によりブロックされ、下流現像スリーブ28へと移動する。そして、下流現像スリーブ28上をS3→N4→S4→N5→S5と搬送され、S5極で反発磁界にブロックされ攪拌室R2へと現像剤が剥ぎ落とされる。
【0035】
なお、受渡極であるN3とS3は完全に対向している必要はない。完全に対向している状態から45°のズレの範囲内で略対向していれば、現像剤の受渡はスムーズに行うことが可能である。
【0036】
<現像スリーブ>
以下、本実施例で使用した現像スリーブ26、28の条件について詳細に説明する。
図4は現像スリーブ26、28表面の拡大図である。本実施例の現像スリーブ26、28表面上には斜線状の溝を形成している。斜線状溝とは、現像スリーブの軸方向(スラスト方向)に対して傾斜した複数の溝によって形成されるものである。このような斜線状溝のスリーブによれば、現像剤が現像剤量をある一定量に規制する規制ブレード21を通過する際に、搬送溝が斜めでストレスを受けることがなくなる。そのため、現像剤寿命を延ばすことが出来ると共に、剤搬送溝が斜めのため規制ブレード21通過時の衝撃が緩和できショックジターも改善される。
【0037】
本実施例で使用している現像装置は複数の現像スリーブ(本実施例では2本の現像スリーブ26,28)を備えた現像装置である。本実施例においては図4に記載しているように各現像スリーブで斜線状の溝を形成する際、各現像スリーブ26、28のスラスト方向に対する溝の角度を変化させたことが特徴である。
【0038】
各々の現像スリーブ26,28に対して、溝の角度θをそれぞれθa、θbとして溝を形成した。本実施例では各角度の一例として、θa=約150度、θb=約110度となるように溝の角度を調整し、各々異なる色のトナーの現像を行うようにした。
【0039】
解決すべき課題の項でも述べたように、溝が現像スリーブ26,28の軸方向(スラスト方向)に向かって形成された場合、各現像スリーブ26,28でわずかに発生するバンディングが強調されて出力されることが起こりうる。この時、スラスト全域が強調されることになるので、非常に目立ちやすいという問題がある。各スリーブ26,28の溝のピッチを変えても、スラスト全域が強調されうることは変わらない。
【0040】
本実施例のように、上流現像スリーブ26と下流現像スリーブ28で溝の角度を変えた場合、上流現像スリーブ26で溝スリーブの角度方向にわずかに現れていたバンディングが下流現像スリーブ28の溝の角度が変わることによって強調されることを抑制できる。それに加え、各々の角度で現れていたバンディングが打ち消しあう効果が得られて、結果として最終的な出力画像においてバンディングを低減することが可能となる。
【0041】
本実施例で現像装置4の各現像スリーブ26、28に対してどの角度の溝スリーブを採用するかについては、どの組み合わせを用いても、各現像スリーブ26、28の溝の角度が異なっていさえすればバンディング低減の効果を得ることができる。ただし、より効果を得るためには15°以上異なっていることが好ましい。逆に10°以下ならば角度があまり違わないためバンディングがスラストの広い範囲で強調しあってしまう懸念がある。
【0042】
また、本実施例では上述のように斜線状の溝を形成した現像スリーブ26、28を採用したが、図5に示すようなあやめ状の溝を形成した現像スリーブを用いても同様の効果を得ることができる。あやめ状の溝とは、現像スリーブのスラスト方向に対して傾斜した複数の溝と、スラスト方向に対して反対側に傾斜した複数の溝とが交差するように形成されるものである。前者の複数の溝における傾斜の角度と、後者の複数の溝における傾斜の角度とは、必ずしも互いに同一でなくてもよい。
【0043】
ここで、本実施例で採用した溝スリーブの製造方法について説明する。本実勢例の溝スリーブは切削加工により作成する。円形形状に溝本数分の刃物が存在するダイスを用いることで、現像スリーブ表面を切削し溝スリーブを作成することができる。ここで、本実施例で採用した斜線状の溝の角度のつけ方について説明する。上記の切削加工機において現像ローラの回転軸両端を支持し、現像スリーブを回転させながらダイスに向かって長手方向に現像スリーブを押しだすことで、所定の角度をもった溝を切削することが可能となる。
本実施例で採用している斜線状の角度を変えた溝スリーブは、上述の切削方法において現像スリーブの回転速度を変更し、現像スリーブを押しだし切削加工することで角度を変化させた溝スリーブの角度調整品を作成することができる。
【0044】
尚、現像スリーブが3本以上有する現像装置である場合、全ての現像スリーブに溝が形成されている必要はない。この場合、表面に溝が形成される現像スリーブが少なくとも2つ以上有すれば本発明を適用することができ、溝が形成された現像スリーブの各々について、溝の角度が異なっていれば本発明の効果を奏する。
【0045】
(実施例2)
実施例1記載の画像形成装置において、各現像スリーブの溝の傾きを変えた場合、それぞれの現像スリーブでの現像剤の搬送性が異なってきてしまう。
【0046】
溝形状のスリーブの搬送性は溝の垂直方向に対して搬送力が働く。斜線状の溝の場合、図6に示すように溝と現像スリーブのスラスト方向からなる角度をθとした時、斜線状の溝の垂直方向に対してcosθ分の搬送力がスリーブの回転方向に働く。
【0047】
このため、斜線状の溝の傾きが変わると現像スリーブの搬送力が変わるために、現像スリーブ上に搬送される現像剤の量が変わってくる。現像スリーブ上の現像剤の量が変わると、現像特性が変わってきてしまう。ここでいう現像特性は、現像スリーブと感光体ドラム間に所定の電界を印加したときのトナーの移動量を意味している。そのため、本実施例においては、複数の現像スリーブの斜線状の溝の角度が異なる現像装置でも現像特性の変わらない現像装置を提供する。
【0048】
斜線状の溝の角度が変わっても現像スリーブの搬送力を変えないようにするためには、斜線状の溝の数を溝の角度に応じて変化させたほうが良い。現像スリーブの搬送力は溝の数に比例するので、溝の角度が大きくなってくると、現像スリーブの回転方向の搬送力cosθ成分が小さくなってくるので、その分、溝の数を増加させた方が好ましい。これにより、溝の角度が変わっても搬送力をなるべく変化させない斜線形状の現像スリーブを提供することが可能となる。
【0049】
図6において溝の角度が変わった場合と溝の数について、モデル図を示している。
【0050】
現像スリーブの回転速度をVと単位長さ当たりの溝本数をNとした場合、現像スリーブの回転に伴う搬送力はVとNの各々に比例する。本発明のように溝が斜線状である場合、溝が軸線方向に対してなす角度をθとすると(図7(a)参照)、斜線状の溝の垂直方向への搬送力はV*N*cosθに比例する。さらに、先述のように斜線状の溝の垂直方向に対してcosθ分の搬送力がスリーブの回転方向に働く。このため、斜線状の溝スリーブの回転に伴う搬送力の回転方向への力は回転方向への搬送力はV*N*cosθ*cosθ=V*N*{(1/2)+(1/2)cos2θ}に比例すると見積もることができる。参考のためにcosθ*cosθのグラフを図7(b)に示した。溝の角度が90°つまり溝が軸方向に対して垂直となる時に搬送力は極小となる。
【0051】
複数の現像スリーブの斜線状の溝の角度が異なる現像装置で、溝の角度が変わっても搬送力をなるべく変化させないためには、cosθ*cosθの値がより小さい現像スリーブのV*Nを大きくしておくことが好ましい。特に、複数の現像スリーブの回転速度が同じ場合は、cosθ*cosθの値がより小さい現像スリーブの溝の本数Nを大きくしておくことが好ましい。本実施例の場合は、2本の現像スリーブの回転速度が同じなのでcosθ*cosθの値が下流現像スリーブ28より小さい上流現像スリーブ26の溝本数Nを下流現像スリーブ28より多くしている。
【0052】
このとき、以下の関係式(1)を満たせば、上流現像スリーブ26に対して下流現像スリーブ27の搬送力を同一にできる。
(1)V1*N1*cosθ1*cosθ1=V2*N2*cosθ2*cosθ2
この関係(式(1))を保つことにより、各現像器で現像スリーブの溝の角度を変化させても、各現像器の現像特性を変えることなく使用することが可能となり、その結果、バンディングが低減しかつ、階調特性の優れた高画質の画像形成装置の提供が可能となる。
【0053】
上記のように上流現像スリーブ26に対して下流現像スリーブ27の搬送力を同一にできるのは理想的であるが、完全に同一にするのは難しい場合もある。その場合、上流現像スリーブ26に対して下流現像スリーブ28の搬送力が小さいと、上流現像スリーブ26が搬送してきた現像剤を下流現像スリーブ28が搬送しきれず、両現像スリーブの間で現像剤滞留しやすい。そのため、上流現像スリーブ26に対して下流現像スリーブ28の搬送力を大きくしておくことが好ましい。これは(2)の関係式を満たすことを意味する。N1cosθ1が上流現像スリーブ26の搬送力、N2cosθ2が下流現像スリーブ28の搬送力を表す。
(2)V1*N1cosθ1*cosθ1 ≦ V2*N2cosθ2 *cosθ2
なお、本実施例においても上記では一例として斜線状の溝を形成した現像スリーブを採用したが、あやめ状の溝を形成した現像スリーブを用いても同様の効果を得ることができる。
【0054】
(実施例3)
斜線状の溝はスリーブ回転方向以外に軸(スラスト)方向にも搬送力を持ってしまう。そのため、現像スリーブ上を搬送される間に現像剤がスラストの片側に偏りやすいという懸念が起こりうる。実施例1では斜線状の溝の角度をどちらも90°以上としたが、その場合、各スリーブでの現像剤のスラスト搬送方向が同一になってしまい。現像剤が2つの現像スリーブを搬送される間に、より偏りやすくなる懸念がある。偏りが生じると、スリーブ端部の搬送領域外に現像剤が漏れだす懸念が生じる。
【0055】
そこで、本実施例では、図8のように、現像剤搬送方向上流側に配置された上流スリーブ26と、現像剤搬送方向下流側に配置された下流スリーブ28と、でスラスト方向の搬送力が互いに逆方向となるように斜線状の溝の角度を設定している。こうすることで、偏りを軽減することが可能となる。
【0056】
現像スリーブの回転に伴って溝によって得られる搬送力は、溝が現像スリーブの軸線方向に対してなす角度がθの場合(図7(a)参照)、スラスト方向への搬送力はsinθcosθ=F*(1/2)sin2θに比例すると見積もることができる。図7(b)にはsinθcosθをグラフで示したが、各現像スリーブのスラスト方向への搬送力を互いに逆方向にするにはθを各々0〜90°、90°〜180°のどちらかから1つずつ選べばよいことが分かる。
【0057】
なお、スラスト方向への搬送力の絶対値を各現像スリーブで同じとすることで、偏りの軽減をより効果的に行える。
(3)|V1*N1cosθ1*sinθ1|=|V2*N2cosθ2*sinθ2|
上記のように上流現像スリーブ26に対して下流現像スリーブ27のスラスト方向の搬送力(の絶対値)を同一にできるのは理想的であるが、完全に同一にするのは難しい場合もある。
【0058】
その場合、少なくとも下流現像スリーブ28を以下の関係式(4)を満たすように設定しておくことで、下流現像スリーブ28での戻し過ぎによるさらなる偏りの悪化を無くすことができる。
(4)|V1*N1cosθ1*sinθ1|≦|V2*N2cosθ2*sinθ2|
即ち、上流スリーブ26と下流スリーブ28でスラスト方向の搬送力が互いに逆方向であって、上流現像スリーブ26と下流現像スリーブ27のスラスト方向の搬送力(の絶対値)が異なる場合は、以下の構成が好ましい。つまり、スラスト方向の搬送力が大きい方を下流現像スリーブとなるように配置する方が好ましい。即ち、下流現像スリーブの方が上流現像スリーブよりもスラスト方向の搬送力が大きい方が好ましい。その理由は以下の通りである。
【0059】
上流現像スリーブの方が下流現像スリーブよりもスラスト方向の搬送力が大きい場合、初めに上流現像スリーブ上の現像剤は現像剤担持領域外に向かってスラスト方向に大きく力を受け、その後下流現像スリーブによってスラスト方向逆側に戻される動きをとる。このため、スラスト方向の剤の変動(最大振幅)は、|V2*N2cosθ2*sinθ2|となる。一方、逆の場合は、予め上流現像スリーブ上の現像剤は現像剤担持領域外に向かってスラスト方向に比較的小さい力を受けて移動している。このため、その後下流現像スリーブによって比較的大きなスラスト方向逆側に戻されてもスラスト方向の剤の変動(最大振幅)が|V2*N2cosθ2*sinθ2|よりも小さくすることができる。(但し、現像剤が上流及び下流スリーブにて搬送され、最終的にスラスト方向に移動されて到達する位置は同じである)
なお、関係式(1)、(3)は|cosθ1/sinθ1|=|cosθ2/sinθ2|の関係を満たす時に同時に満たすことが可能である。本発明はθ1≠θ2なので、θ2=180°―θ1を満たす時に(1)、(3)式を同時に満たすことが可能となり、より好ましい構成となる。
【符号の説明】
【0060】
1 感光体ドラム(像担持体)
4 現像装置
22 現像容器
23 現像室
24 撹拌室
25、26 搬送スクリュー(現像剤撹拌・搬送手段)
28 現像スリーブ(現像剤担持手段)
30 現像剤補給口
31 トナーホッパー(補給手段)
32 搬送部材
80 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトナーを含む現像剤を表面に担持して像担持体との対向部である現像領域に該現像剤を搬送する複数の現像剤担持体を備え、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置において、前記複数の現像剤担持体は、表面に溝が形成された現像剤担持体を少なくとも2つ以上有し、前記溝と前記現像剤担持体の軸線方向とのなす角が各現像剤担持体で異なることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
現像剤担持体の単位長さ当たりの溝の本数をN、現像剤担持体の回転速度をV、現像剤担持体の軸線方向と溝とのなす角をθとしたとき、V*N*cosθ*cosθが複数の現像剤担持体で同じか、現像剤搬送方向下流に配置された現像剤担持体で大きくなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記溝による前記現像剤担持体の軸線方向への搬送力の向きが、前記複数の現像剤担持体で異なることを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記複数の現像剤担持体の軸方向の搬送力の大きさが異なっており、現像剤搬送方向上流に配置された現像剤担持体の方が現像剤搬送方向下流に配置された現像剤担持体よりも前記現像剤担持体の軸方向の搬送力が小さいことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−114081(P2013−114081A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260885(P2011−260885)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】