説明

画像形成装置

【課題】中間転写ベルト50の転写部での電圧と電流との関係を全周に亙って検知する時間の短縮化を図る。
【解決手段】y位置での中間転写ベルト50の電圧と電流との関係は次のように求める。まず、破線部(L−3S)は、一次転写ローラ4aに定電圧を印加して、y位置に流れる電流を検知することにより、電圧と電流との関係を求める。実線部(3S)は、次のように計算で求める。破線部の一部の電圧と電流との関係をy位置とk位置とで検知して、それらの差分を求める。そして、実線部のk位置で検知した結果にこの差分を加えてy位置での結果とする。他の色位置でも同様に検知を行う。これにより、中間転写ベルト50の回転量を少なくでき、中間転写ベルトの各転写部における電圧と電流との関係を全周に亙って求める検知時間を短くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の複写機、プリンタ等の画像形成装置に関し、特に、複数の像担持体から中間転写ベルトにトナー像を静電転写する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いたフルカラー画像形成装置では、中間転写ベルトを使用した構造が知られている。この構造では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した複数の感光体を備え、これら各感光体上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト上に順次重ねて転写(一次転写)したのち、記録材に一括転写(二次転写)する。このような装置では、一次転写工程において、転写手段として金属ローラ上に導電発泡ゴムからなる弾性層をもうけた転写ローラが多用されるが、装置内の温湿度により抵抗値が変化する。また、長期使用にわたる電圧印加により抵抗値が上昇することが知られている。抵抗値が上昇したあとでは、抵抗値を回復させる抜本的な方法はなく、転写ローラを新品に交換する以外に対応方法はなかった。このため、抵抗が継時変化しないように、導電発泡ゴム層を無くした金属ローラを転写ローラに使用した装置が提案されている(特許文献1参照)。金属ローラを使用する利点としては、抵抗の安定化のほかに転写ローラを安価に出来ることが挙げられる。
【0003】
但し、金属ローラはゴム層を有するローラのように弾性変形しないため、金属ローラを感光体側に向けて押圧配置しても、感光体とのあいだに均一な接触圧の一次転写ニップを形成することは難しい。そのため、金属ローラを使用する場合は、金属ローラを感光体と中間転写ベルトの接触ニップよりも下流側に配置し、かつ、中間転写ベルトを外側に湾曲させるようずらして配置する。これにより中間転写ベルトを感光体にわずかに巻き付け、中間転写ベルトのテンションにより均一な圧の転写ニップを形成するようにしている(特許文献2参照)。
【0004】
また、中間転写ベルトとしては、熱硬化性樹脂もしくは熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電フィラーを分散し抵抗調整した材料をベルト状に成形したものが使用される。このようなベルトは、その製造方法、および材料や製造条件のばらつきにより、1個のベルト面内で場所により抵抗が変わる場合がある。このためトナー像の転写効率が場所によって低下し画像中で部分的に濃度低下を起こすことがある。さらには中間転写ベルトを装置内で長期使用した場合、抵抗値が継時変化し、抵抗変化による転写不良を生じることがある。
【0005】
そこで、中間転写ベルトの抵抗値を全周または周方向に分割して検知し、検知された抵抗値に応じて一次転写電圧や二次転写電圧を制御する構造が提案されている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−72247号公報
【特許文献2】特開2006−259639号公報
【特許文献3】特開平08−160767号公報
【特許文献4】特開平11−174869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような中間転写ベルトの抵抗、言い換えれば転写部での電圧と電流との関係を検知するタイミングは、画像形成装置が動作中で転写工程を除いた時間帯に行われる。例えば、画像形成装置の電源が投入されてから装置各部の動作チェックが開始され、画像形成開始が可能となるスタンバイ状態に移行するまでの待機時間中に行われる。また、操作部にある複写キーが押下、もしくは画像形成装置が外部機器からのプリント信号を受信してから一次転写工程が実行されるまでの時間帯(前回転と称す)に行われる。
【0008】
ところで、上述のように中間転写ベルトの抵抗に関する検知を行うためには、中間転写ベルトの通過位置に設けた電流又は電圧の検知手段により全周の電流と電圧との関係(抵抗ムラ)を検知する必要がある。したがって、このよう検知のために、少なくとも中間転写ベルトを1回転させる必要がある。タンデム式フルカラー装置の場合は、トナー像形成部が複数個配置されるため、中間転写ベルトの周長を長くする必要があり1回転の時間も長くなる。中間転写ベルトの回転速度が遅く設定された機種も、当然ながら、1回転の時間が長くなる。
【0009】
これらの理由により中間転写ベルトの抵抗に関する検知時間が長くなると、待機時間や前回転が長くなり、プリント開始が遅れたりプリント終了までに時間がかかったりする。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、中間転写ベルトの転写部での電圧と電流との関係を全周に亙って検知する時間の短縮化を図るべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、回転する中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトの回転方向に沿って並べて配置され、トナー像を担持する第1像担持体及び第2像担持体と、前記第1像担持体と前記中間転写ベルトを挟んで配置され、転写電圧を印加することにより、前記第1像担持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトに転写する第1転写手段と、前記第2像担持体と前記中間転写ベルトを挟んで配置され、転写電圧を印加することにより、前記第2像担持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトに転写する第2転写手段と、前記第1像担持体と前記第1転写手段との間の第1転写部の電圧と電流との関係を検知する第1検知手段と、前記第2像担持体と前記第2転写手段との間の第2転写部の電圧と電流との関係を検知する第2検知手段と、を備えた画像形成装置において、前記中間転写ベルトの前記第1転写部における電圧と電流との関係を全周に亙って求める検知モードを実行可能な制御手段と、前記第1転写部と前記第2転写部との相関関係に基づいて、前記第2検知手段で検知された電圧と電流の関係を、前記第1転写部における電圧と電流の関係に変換する変換部と、を有し、前記検知モードでは、前記第1検知手段で検知を開始する際に、前記中間転写ベルトの回転方向に関して前記第1転写部よりも下流側の予め設定した1周よりも短い前記中間転写ベルトの領域に対しては、前記第2検知手段による検知結果から前記変換部を用いて前記第1転写部における電圧と電流の関係を求め、前記第1検知手段で検知を開始する際に、前記中間転写ベルトの回転方向に関して少なくとも前記第1転写部よりも上流側の予め設定した1周よりも短い前記中間転写ベルトの領域に対しては、前記第1検知手段で前記第1転写部における電圧と電流の関係を検知する、ことを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第2検知手段による検知結果から変換部を用いて第1転写部の電圧と電流との関係を求める領域が存在するため、検知モードでの中間転写ベルトの回転量を少なくできる。この結果、中間転写ベルトの第1転写部における電圧と電流との関係を全周に亙って求める検知時間を短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】一次転写部を抜き出して示す概略構成図。
【図3】中間転写ベルトを抜き出し示す斜視図。
【図4】転写電圧の制御装置のブロック図。
【図5】転写部の電圧と電流との関係を検知する際の中間転写ベルトの周方向の、(a)は検知開始時の位置を、(b)は1回目の検知終了時の位置をそれぞれ示す図。
【図6】3回の電流検知における中間転写ベルトの周方向位置に対する、主としてy位置での検知電流を示す図。
【図7】3回の電流検知におけるy位置での電圧と検知電流との関係を示す図。
【図8】第1の実施形態で目標電圧を決定するためのフローチャート。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る一次転写部を抜き出して示す概略構成図。
【図10】電圧検知における中間転写ベルトの周方向位置に対する、主としてy位置での検知電流を示す図。
【図11】第2の実施形態で目標電圧を決定するためのフローチャート。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る中間転写ベルトの離間手段を抜き出し示す、(a)は中間転写ベルトと全色の感光ドラムとが接触した状態を、(b)は中間転写ベルトとブラック以外の色の感光ドラムとが離間した状態を、それぞれ示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図8を用いて説明する。まず、図1により本実施形態の画像形成装置の概略構成について説明する。
【0015】
[画像形成装置]
図1は本発明に係るカラープリンタの全体断面図である。装置内には第1、第2、第3、第4の画像形成部Py、Pm、Pc、Pkが配置され、潜像、現像、転写のプロセスを経て各々異なった色のトナー像が形成される。
【0016】
複数の像担持体である感光ドラム(感光体)1a、1b、1c、1dは回転可動に支持され、その外周には、帯電器2a、2b、2c、2d、現像器3a、3b、3c、3d、及び転写手段である一次転写ローラ4a、4b、4c、4dが設けられる。また、画像形成部の下方にはさらに露光装置5a、5b、5c、5dが配設されている。
【0017】
感光ドラム1a〜1dは負帯電型の感光ドラムを使用し、不図示のドラムモータにより回転駆動され、帯電器2a〜2dで所定電位に帯電される。その後、画像信号に応じたレーザ光を露光装置5a〜5dから発し感光ドラム1a〜1dの母線上に集光して露光することにより、感光ドラム1a〜1d上に静電潜像が形成される。
【0018】
現像器3a〜3dには、現像剤としてそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックのトナーが所定量充填されている。そして、それぞれ感光ドラム1a〜1d上の潜像を現像して、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックのトナー像として可視化する。本実施形態では反転現像方式を採用し、負極性に帯電したトナーを用いて、トナーを露光部に付着させて画像を形成する。
【0019】
また、感光ドラム1a〜1dに接するように中間転写ベルト50が配置されている。中間転写ベルト50は、テンションローラ11、駆動ローラ12、バックアップローラ13により張架され、駆動ローラ12により矢印A方向に回転駆動される。したがって、感光ドラム1a〜1dは、中間転写ベルト50の回転方向に沿って並べて配置される。
【0020】
また、感光ドラム1a〜1dと中間転写ベルト50を挟んで、一次転写ローラ4a、4b、4c、4dが配置されている。感光ドラム1a〜1dと一次転写ローラ4a〜4dとの間で、一次転写部T1a、T1b、T1c、T1dを構成する。一次転写ローラ4a〜4dは、それぞれ、一次転写高圧電源8a(8b、8c、8d、図2参照)により、トナーの帯電極性とは逆極性の転写電圧(本実施形態では正電圧)が印加される。これにより、一次転写部T1a〜T1dで、感光ドラム1a〜1dの表面に形成された各色のトナー像が中間転写ベルト50に重ね合わせて転写される(一次転写)。そして、4色のトナー像を重畳したカラー画像が得られる。
【0021】
トナー像転写後の感光ドラム1a〜1dの表面上には転写残トナーが残留しており、この転写残トナーは、感光ドラム1a〜1dの回転とともに移動しクリーニング装置6a、6b、6c、6dで除去され不図示のトナー回収容器に回収される。その後、感光ドラム1a〜1dの残留電荷は前露光装置7a、7b、7c、7dにより除電され次回の潜像形成にそなえられる。
【0022】
上述のように中間転写ベルト50上に形成されたトナー像は、不図示の搬送手段により二次転写部T2に搬送された記録材Pに転写される。即ち、記録材Pは、不図示の記録材収納部から搬送手段により、二次転写ローラ14とバックアップローラ13の圧接ニップ部(二次転写部T2)に送られる。そして、二次転写ローラ14にトナーの帯電極性とは逆極性の二次転写電圧(本実施形態では正電圧)が印加されることで、中間転写ベルト50上の4色のトナー像が記録材Pへ一括転写される(二次転写)。
【0023】
トナー像を転写された記録材Pは不図示の定着装置へ搬送され、トナー像の溶融混色及び記録材Pへの固定が行われ、フルカラー画像が形成される。また、中間転写ベルト50上に残留した転写残トナーは中間転写ベルト50の回転とともに移動し、クリーニングブレード20により除去され不図示の回収容器に回収される。
【0024】
ここで、一次転写ローラ4a、4b、4c、4dは、金属製の転写ローラ(金属ローラ)を使用し、軸たわみが生じないよう、例えば外径8mmのローラを採用する。二次転写ローラ14は金属ローラの外周面に導電性の弾性層を設けたもので、NBR、ウレタン、エピクロルヒドリン等の発泡ゴム材料にイオン導電剤を添加し抵抗値を1×10〜1×10(Ω)程度に調整したものを使用する。
【0025】
中間転写ベルト50の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂を用いる。そして、この樹脂にカーボンブラックなどの導電性材料を適量含有させ、例えば、その体積抵抗率を1×10〜1×1013Ω・cm、厚みを50〜100μmで、シームレスベルト状に成形して中間転写ベルト50とする。
【0026】
[一次転写部]
次に、図2を用いて一次転写部の構成について説明する。なお、図2ではイエローの一次転写部T1aを示しているが、他色の一次転写部の構成も同様である。一次転写ローラ4aは感光ドラム1aと中間転写ベルト50の接触領域の中心位置よりも、中間転写ベルト50の回転方向下流にずれた位置に配置されている。具体的には、接触領域の中心位置よりも中間転写ベルト50の回転方向(進行方向)に沿って距離Nだけ離れた位置に配置されている。例えば、感光ドラム1aの外径が30mm,一次転写ローラ4aの外径が8mm,距離Nが7mm,感光ドラム1aの周面と一次転写ローラ4aの周面との距離を1mmとする。
【0027】
一次転写ローラ4aには、一次転写高圧電源8aが接続され、定電圧制御された一定電圧が印加される。また、9aは一次転写部T1aに流れる電流Iを検知するための電流検知回路である。電流Iは一次転写ローラ4aから中間転写ベルト50の距離Nの部分を経由して感光ドラム1aに流れる。図示していないが、感光ドラム1aの芯体は金属管で接地されているため、上記の電流が流れる。電流を検知することで、中間転写ベルト50および感光ドラム1aを合わせた一次転写部T1aの電圧と電流との関係の検知(抵抗検知)を行う。
【0028】
[中間転写ベルトの周方向位置検知]
次に、図3を用いて中間転写ベルト50の周方向位置を検知する構造について説明する。中間転写ベルト50はベルト状であり、その端部の一方にベルト周方向の基準位置を示すマーク51が設けてある。マーク51はマーク検知センサ10(図1参照)により検知することで、基準位置を検出することが可能である。マーク検知センサ10は周知の発光素子と受光センサからなる反射光量検出型のセンサで、中間転写ベルト50とマークからの反射光量の差を検出することでマーク位置を判定するものである。マーク検知センサ10はテンションローラ11に対向する位置に配置している。
【0029】
[一次転写部の転写電圧の制御]
次に、一次転写部の転写電圧の制御について、図4ないし図8を用いて説明する。図4は、転写電圧の制御装置を示すブロック図である。制御手段であるCPU31は信号処理および演算処理を行うマイクロコンピュータ、RAM32は検知された電流値を格納するメモリ、ROM33は後述する制御フローのプログラムが格納されたメモリである。
【0030】
CPU31は、以下のように、中間転写ベルト50の各一次転写部における電圧と電流との関係を全周に亙って求める検知モードと、各一次転写ローラに印加する転写電圧を決定する決定モードとを実行可能である。まず、検知モードでは、ROM33に格納されたプログラムにしたがい、マーク検知センサ10で中間転写ベルト50の基準位置が検出されたあと所定のタイミングで、CPU31の指令により、一次転写高圧電源8a〜8dは所定電圧を出力する。電圧は一次転写ローラ4a〜4dに印加され、一次転写部T1a〜T1dに流れる電流が検知手段である電流検知回路9a〜9dにより検知される。検知された電流信号はCPU31に送られたのちRAM32に順次格納される。そして、決定モードで、RAM32に格納された電流値をもとに、CPU31において最適な転写電圧Vtが演算決定され、作像時の一次転写工程(転写時)において該電圧Vtが一次転写ローラに印加される。
【0031】
なお、作像時には、定電圧制御された電圧を印加する。転写バイアスの印加方法としては、定電圧もしくは定電流のいずれかを採用することが一般的である。中抵抗の中間転写ベルトを採用した場合、定電流制御を行うと、白地部に集中的に電流が流れトナー像部の電流が不足して転写不良が発生する。これを防止するため、作像時の転写中は定電圧を印加することが好ましい。
【0032】
以下、本実施形態の転写電圧の制御について、図5ないし図8により詳細に説明する。本実施形態では、上述のように、中間転写ベルト50の全周に亙って、各一次転写部での電圧と電流との関係、即ち、抵抗に関する検知を行う検知モードを実行してから、転写時に一次転写ローラに印加する転写電圧を決定する決定モードを実行する。また、本実施形態の検知モードでは、定電圧を印加して各電流検知回路で電流を検知する。
【0033】
図5(a)は検知モードの開始時における中間転写ベルト50の位置を示し、図5(b)は検知モードの終了時における中間転写ベルト50の位置を示している。(a)に示すように、隣接する一次転写ローラどうしの中間転写ベルト50に沿った距離はSとし、中間転写ベルト50の全周の長さをLとする。
【0034】
中間転写ベルト50の回転を開始し、中間転写ベルト50上の基準位置が検知されてから所定時間Tt経過後に検知モードを開始する。検知モード開始時において、中間転写ベルト50の周上のy位置(イエローの一次転写位置)をB、k位置(ブラックの一次転写位置)をDとする。中間転写ベルト50の回転方向に沿って、BとDで挟まれ領域のうち狭い方(実線部)の距離は3S、広い方(破線部)の距離はL−3Sである。
【0035】
検知モード開始時から一次転写ローラ4a〜4dに所定の定電圧が印加され、中間転写ベルト50が回転しながら所定時間間隔ΔTおきに電流検知回路9a〜9dで電流が検知される。中間転写ベルト50が回転しD位置がy位置まで移動した時点(図5(b)の状態)で当該電圧での抵抗検知を終了する。この回転中に、破線部に流れる電流はy位置において電流検知回路9aで検知され、実線部に流れる電流はy位置で検知されず、k位置において電流検知回路9dで検知される。また、破線部の一部はk位置において検知される。また、破線部の一部及び実線部の一部はm位置およびc位置において電流検知回路9bおよび9cでも検知される。
【0036】
以下、y位置とk位置との関係を取り出して説明する。まず、感光ドラム1aが第1像担持体に、感光ドラム1dが第2像担持体に、一次転写ローラ4aが第1転写手段に、一次転写ローラ4aが第2転写手段に、電流検知回路9aが第1検知手段に、電流検知回路9dが第2検知手段に、それぞれ相当する。また、一次転写部T1aが第1転写部に、一次転写部T1dが第2転写部に、それぞれ相当する。
【0037】
制御手段であるCPU31が、中間転写ベルト50の第1転写部である一次転写部T1aにおける電圧と電流との関係を全周に亙って求める検知モードを実行する。検知モードでは、中間転写ベルト50を、それぞれ1周よりも短い第1領域と第2領域とに分割する。図5では、破線部が第1領域に相当する。また、第2領域は図5の実線部である。即ち、電流検知回路9aで検知を開始する際に、中間転写ベルト50の回転方向に関して少なくとも一次転写部T1aよりも上流側の予め設定した1周よりも短い中間転写ベルト50の領域(破線部)を第1領域とする。また、電流検知回路9aで検知を開始する際に、中間転写ベルト50の回転方向に関して一次転写部T1aよりも下流側の予め設定した1周よりも短い中間転写ベルト50の領域(実線部)を第2領域とする。なお、これら第1、第2領域は、このような条件を満たせば、長さは任意に設定可能である。
【0038】
また、本実施形態の場合、電流検知回路9aと電流検知回路9dとのそれぞれで検知を行う重複領域を有する。この重複領域は、第2領域を全部含まなければ、中間転写ベルト50の任意の領域に設定可能である。本実施形態では、第1領域の一部を重複領域としている。そして、重複領域を含む第1領域では一次転写ローラ4aに電圧を印加して電流検知回路9aにより一次転写部T1aの電圧と電流との関係を検知する。即ち、y位置での電圧と電流との関係を検知する。また、重複領域及び第2領域では一次転写ローラ4dに電圧を印加して電流検知回路9dにより一次転写部T1dの電圧と電流との関係を検知する。即ち、k位置での電圧と電流との関係を検知する。これにより、第1領域である破線部のy位置における電圧と電流との関係が検知される。また、破線部の一部である重複領域では、y位置とk位置とでそれぞれ電圧と電流との関係が検知される。但し、この時点で、第2領域である実線部に関しては、y位置での電圧と電流との関係は検知されていない。
【0039】
そこで、少なくとも第2領域のy位置での電圧と電流との関係は、電流検知回路9aが重複領域で検知した電流と、電流検知回路9dが重複領域で検知した電流との関係から、第2領域で電流検知回路9dにより検知した電流に基づいて算出する。即ち、y位置とk位置との相関関係に基づいて、電流検知回路9dで検知された電圧と電流の関係を、y位置における電圧と電流の関係に変換する変換部(CPU31)を有する。本実施形態では、CPU31は、電流検知回路9aが重複領域で検知した電流と、電流検知回路9dが重複領域で検知した電流との差を、第2領域で電流検知回路9dにより検知した電流に加えることにより算出している。なお、算出方法は、これに限らず、例えば、電流検知回路9aが重複領域で検知した電流の、電流検知回路9dが重複領域で検知した電流に対する割合を、第2領域で電流検知回路9dにより検知した電流に乗じることにより算出しても良い。要は、重複領域で求めたy位置とk位置との関係を第2領域で反映させれば良い。
【0040】
これにより、中間転写ベルト50の全周に亙るy位置での電圧と電流との関係は、第1領域である破線部では実際に検知することにより、第2領域である実線部ではk位置での検知結果を利用して計算により求めることができる。この結果、中間転写ベルト1周させることなく、中間転写ベルト50の全周に亙るy位置での電圧と電流との関係を求められる。その他のm位置、c位置、k位置においても同様である。
【0041】
図6を用いてより具体的に説明する。図6は、上記のようにして検知した電流分布を示す模式図である。横軸は中間転写ベルト50の周方向の位置を示しており、縦軸は検知電流の大きさを示している。グラフのe,f,gは、それぞれ、電圧V1,V2,V3を印加した時の、y位置における検知電流を示す。電流検知を行うために印加する電圧は、あらかじめ定めた3つの大きさの電圧V1,V2,V3を順番に印加する。
【0042】
グラフeにおいて、横軸の原点は電流検知の開始点である。グラフeの、BからDまでのL−3Sの部分はy位置、すなわち電流検知回路9aで検知された電流である。したがって、このL−3S部分が第1領域に相当する。一方、グラフh(破線)は、k位置、すなわち電流検知回路9dで検知された電流である。したがって、このグラフhが重複領域及び第2領域に相当する。グラフhのうち最初のL−6Sの部分はy位置とk位置の両方で電流を検知している。したがって、このL−6S部分が重複領域に相当する。ここでは、それぞれ検知された電流値は異なる。これは、イエローとブラックの感光ドラム1a、1dの抵抗が異なるためである。感光ドラムの抵抗は感光体表層の膜厚に依存し、初期膜厚のばらつきや、耐久によるの磨耗量の違いにより、抵抗が変化することが知られている。
【0043】
グラフeのうち、y位置で電流検知を行わない3Sの部分、即ち第2領域の電流は、次の手順で算出する。最初のL−6Sの部分(重複領域)で、eとhの電流差は上述のように感光ドラムの抵抗差に起因しており、この抵抗差は中間転写ベルトの位置によらない。そこで、まず、L−6Sにおけるeの電流Iy1(i)(iは、ΔT間隔の周上の検知位置)の平均電流を算出する。即ち、重複領域でのy位置で検知した電流の平均値を算出する。同様に、hの電流Ik1(i)の平均電流を算出する。即ち、重複領域でのk位置で検知した電流の平均値を算出する。
【0044】
次に、両平均電流の差分ΔIyk1(正または負の値をとる)を算出する。この差分をhの3S部分に加算して、y位置での電流結果とする。即ち、この差分を第2領域のk位置での検知結果に加えて、この第2領域のy位置での電流とする。これにより、y位置での全周にわたる電流が求められる。実測された部分と、演算により算出された部分の境界点はわずかに電流値の飛びが生じるが、制御精度への影響は無視できるものであった。
【0045】
一方、グラフhの未測定部分(グラフhの破線が切れた部分)を算出するには、当該部分のeから上記差分ΔIky1(−ΔIyk1)を加えることで算出される。即ち、前述したy位置とk位置とにおける第1と第2との関係を入れ替える。すると、グラフhが第1領域に、グラフeのL−6S部分及び3S部分が重複領域に、上述のグラフhの未測定部分が第2領域に、それぞれ相当することになる。したがって、重複領域で求めた差分を第2領域で検知したy位置の結果に加えることにより、k位置での未測定部分を算出できる。これにより、k位置での全周にわたる電流が求められる。
【0046】
c位置での電流も、同様な手順で算出する。最初のL−5Sの部分はy位置とc位置の両方で電流を検知している。即ち、重複領域となる。したがって、L−5Sについてc位置での検知電流の平均電流を算出し、これとeの平均電流との差分ΔIyc1を算出する。そして、この差分をc位置で検知されていない部分(図6のL−5S〜2S)のeの電流に加算して、c位置での電流を求める。
【0047】
また、m位置の電流についても、同様に算出する。最初のL−4Sの部分はy位置とm位置の両方で電流を検知している。即ち、重複領域となる。したがって、L−4Sについてm位置での検知電流の平均電流を算出し、これとeの平均電流との差分ΔIym1を算出する。そして、この差分をm位置で検知されていない部分(図6のL−4S〜S)のeの電流に加算して、m位置での電流を求める。
【0048】
なお、比較する色位置は、上述の組み合わせに限らない。例えば、m位置やc位置をk位置との組み合わせにより求めても良い。また、何れかの色位置の全周に亙る電流値が求まれば、各色位置との関係から、他の色位置ではこの求められた電流値を基準として電流を算出しても良い。即ち、少なくとも第2領域で上述のような算出結果を使用すれば良く、実際に検知した領域について上述のような算出結果を使用することを否定するものではない。例えば、y位置で全周に亙って電流が求められ、m、c、kの各色位置とy位置とでの電流の関係が算出されれば、この関係をそれぞれy位置の電流に加えることにより、それぞれの色位置での電流が算出できる。即ち、m、c、kの各色位置では、0〜Lの範囲の電流を全て計算で求めても良い。
【0049】
何れにしても、上述のように、電圧V1における各色位置の検知電流が求められる。次に、電圧V2を印加した時の電流検知を、図6のfにより説明する。電圧V1による電流検知が終了した時点(図5(b)の状態)に続けて、電圧をV2に切替えて印加し電流検知を行う。fのうち、y位置で検知する部分はDからKまでの長さL−3Sの部分である。残りの3S部分はk位置で検知する。なお、図6では、k位置で検知した電流分布Ik2(i)は省略してある。D位置を起点として長さL−6Sの部分まではy位置とk位置の両方で検知しているので、前記と同様手順により、L−6Sの部分について両方の平均電流の差分ΔIyk2を算出する。そして、この差分をIk2(i)の3S部分に加算して、y位置における電流Iy2(i)を求める。c位置、m位置の電流についても、前記と同様に算出する。さらに、電圧V3を印加した時の電流分布も、図6のgに示すように同様に算出する。
【0050】
このようにして、電圧Vj(j=1,2,3)に対し、各色位置での電流Iyj(i),Imj(i),Icj(i),Ikj(i)が求められる。この結果をもとに、目標電流に対する最適の転写電圧を決定する(決定モード)。図7に最適電圧の算出方法を示す。図7のグラフはy位置での電圧と電流の関係をプロットし、直線補間したものである。目標電流Iytは、あらかじめ実験により決定しROM33に格納されている。図7より、目標電流Iytを流すための最適電圧はVyt(i)となることがわかる。周上の各位置iごとに最適電圧を決定し、全周にわたりイエローの一次転写電圧を決定する。他色についても同様にして一次転写電圧を決定する。
【0051】
作像時、即ち、トナー像を転写させる転写時は、基準位置マークが検知されてから所定時間Tt後に電圧印加開始し、上記最適電圧を各位置iごと(ΔT間隔ごと)に電圧値を切り替えて印加する。これにより、中間転写ベルト50の抵抗ムラによらず、常に一定の目標電流を流すことができ、中間転写ベルト50の場所によらず一定の転写効率が得られ、濃度低下の無い良好な画像を得ることができる。
【0052】
図8に上述の制御のフローを示す。まず、中間転写ベルト50の回転が開始されると共に基準マークが検知される(S1)。次いで、一次転写電圧Vj(j=1,2,3)が印加され(S2)、各色位置(各一次転写部)において所定の領域の電流が検知される(S3)。これは、回転時間が(L−3S)/v(v:中間転写ベルト50の回転速度)に到達するまで行われる(S4)。即ち、中間転写ベルト50がL−3S移動する間に行われる。また、このよう検知を、電圧を変えて複数回(本実施形態では3回)行う(S5、S6)。次いで、前述したように、各色位置で検知していない部分を他の色位置で検知した結果との関係で算出する(S7)。そして、図7に示したようなグラフを求め、各色位置での転写電圧を決定する(S8)。
【0053】
例えば、各部の数値を以下のように設定した場合について検討する。
検知モード時の中間転写ベルト50の回転速度:v=120mm/sec(作像時と同じ)
中間転写ベルト50の全周長:L=800mm
各一次転写ローラ間の距離:S=65mm
中間転写ベルト50の実線部の長さ:3S=195mm
中間転写ベルト50の破線部の長さ:L−3S=605mm
【0054】
上記より、中間転写ベルト50の1回転にかかる時間は、800mm÷120mm/sec=6.67secである。一方、1回の印加電圧での検知モードにかかる時間は、605mm(L−3S)÷120mm/sec=5.04secとなる。したがって、検知モードにかかる時間は、中間転写ベルト50を1回転させて行った場合の時間に比較して、1回の印加電圧につき1.6sec短縮される。上述の実施形態のように、電圧値を3回切り替えた場合、検知モードにかかる時間は全体で1.6sec×3=4.8sec短縮できることになる。
【0055】
なお、上述した電流の検知時間間隔ΔTは、感光ドラムと一次転写ローラとに挟まれた距離N=7mmの領域が一次転写ローラ位置を通過する時間(7mm÷120mm/sec=58.3msec)より短い時間に設定する。例えば、ΔT=50msecとする。この理由は、一次転写ローラから感光ドラムに流れる電流が距離Nの領域の全体抵抗に依存するため、距離Nより短い間隔で電流を検知すれば、抵抗ムラに起因した電流変動を精度良く検出できるからである。
【0056】
また、本実施形態では、各色の感光体の抵抗差を考慮して検知電流を補正したが、感光体の初期膜厚ばらつきや磨耗量差が十分小さく設計された装置においては、補正フローを省略してもよい。
【0057】
本実施形態によれば、第2検知手段による検知結果から変換部を用いて第1転写部の電圧と電流との関係を求める領域(第2領域)が存在するため、この第2領域を第1検知手段で検知する必要がない。この結果、第2領域を第1検知手段を通過させない分、検知モードでの中間転写ベルトの回転量を少なくできる。そして、中間転写ベルト50の各転写部における電圧と電流との関係を全周に亙って求める検知時間を短くできる。本実施形態では、上述したように1回の印加電圧に対して中間転写ベルト50を1周させることなく、中間転写ベルト50の各転写部における電圧と電流との関係を全周に亙って求められる。このため、中間転写ベルト50の抵抗に関する検知を全周に亙って行う時間を短くできる。
【0058】
特に、本実施形態では、一次転写ローラとして金属ローラを使用している。この金属ローラを用いた装置では、一次転写ローラの抵抗が小さいこと、および、一次転写ローラから感光体までの中間転写ベルトに沿った距離が長くなる。このため、一次転写部に流れる電流の大きさを決める因子として、中間転写ベルトの抵抗が支配的となる。したがって、中間転写ベルトの抵抗ムラによる電流変動が顕著になるため、上記に示した、中間転写ベルトの抵抗に応じた電圧制御が必須の要件となっている。本実施形態では、上述のように検知モードの時間を短くできるため、このような金属ローラを使用した構造に好ましく適用できる。なお、本実施形態では、変換部は重複領域での検知結果から第1転写部と第2転写部との相関関係を求めているが、この相関関係は、予め測定した結果などに基づいたデータであっても良い。例えば、第1転写部と第2転写部とで予め測定を行って、その測定結果から相関関係を求め、その相関関係を装置のメモリに記憶しておき、変化部での計算に使用するようにしても良い。この場合、重複領域及びこの領域の検知結果ら行う計算を省略できる。
【0059】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図9ないし図11を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、3種類の電圧V1,V2,V3を印加するため、中間転写ベルトを複数回、回転させる必要があった。これは、算出すべき最適電圧がV1〜V3の範囲に入るよう、電圧幅を、ある程度、広範囲にとる必要があるためである。本実施形態では、以下に説明するように、検知モードを定電流で行っているため、第1の実施形態よりも回転数を減らし検知時間を短縮できる。
【0060】
図9はイエローの一次転写部T1aの電源構成を示したものである。81aは作像時、定電圧制御された一定電圧を一次転写ローラ4aに印加する定電圧電源、82aは検知モード時、定電流制御された一定電流を一次転写ローラ4aに流す定電流電源である。また、83aは定電流電源82aの出力電圧を検知する電圧検知回路、84aは一次転写ローラ4aに接続する電源を切替えるスイッチである。他色についても同様の構成で、不図示であるが、81b,81c,81dは、それぞれ、マゼンタ,シアン,ブラックの定電圧電源を表わす。定電流電源82b,82c,82d、および、電圧検知回路83b,83c,83dについても同様である。
【0061】
以下、検知モードの開始および終了の状態は、図5(a)、(b)を参照して説明する。まず、検知モード開始時に、各色の一次転写ローラに定電流電源82a〜82dにより、あらかじめ定められた目標電流Iyt,Imt,Ict,Iktを印加する。ついで、中間転写ベルト50を回転しながら所定時間間隔ΔTおきに電圧検知回路83a〜83dにより電圧Vyt,Vmt,Vct,Vktが検知する。
【0062】
前述の第1の実施形態と同様に、第1と第2の関係を設定して、y位置とk位置との関係について説明する。図10に、検知電圧Vyt,Vktの結果を示す。Vytのうち最初のL−3Sの部分(第1領域)はy位置で検知した電圧である。また、破線Vktはk位置で検知した電圧である。Vytのうち残り3Sの部分(第2領域)はk位置での検知電圧Vktをもとに算出する。最初のL−6Sの部分(重複領域)はy位置とk位置の両方で検知しており、両者の検知電圧には差分が見られる。
【0063】
この差分は感光ドラムの抵抗差に加えて、目標電流IytとIktとが異なる場合、それらの電流を流すのに必要な電圧が変わるためである。算出方法としては、L−6Sの部分についてVytとVktの平均電圧を算出し、これらの差分ΔVyktをVktの3S部分に加算しVytとする。これにより、全周にわたるVyt(i)(iは周上のΔT間隔の位置)が求められる。
【0064】
一方、Vktの未測定部分(破線が切れた部分)は、第1の実施形態と同様に、y位置とk位置とで第1と第2の関係を入れ替えることにより算出できる。即ち、当該部分がk位置の第2領域に相当し、この領域のy位置の検知結果Vytから重複領域で求めた差分ΔVkyt(−ΔVykt)を加えることで算出される。これにより、全周にわたるVkt(i)が求められる。m位置,c位置の検知電圧Vmt(i),Vct(i)についても、同様な手順により算出できる。
【0065】
図11に上述の制御のフローを示す。まず、中間転写ベルト50の回転が開始されると共に基準マークが検知される(S11)。次いで、一次転写部に目量電流に設定された定電流を印加する(S12)。そして、各色位置(各一次転写部)において所定の領域の電圧が検知される(S13)。これは、回転時間が(L−3S)/v(v:中間転写ベルト50の回転速度)に到達するまで行われる(S14)。即ち、中間転写ベルト50がL−3S移動する間に行われる。次いで、前述したように、各色位置で検知していない部分を他の色位置で検知した結果との関係で算出する(S15)。そして、検知した結果と求めた結果から、各色位置での転写電圧を決定する。
【0066】
このようにして求めた電圧Vyt(i),Vmt(i),Vct(i),Vkt(i)を、作像時に、定電圧電源81a〜81dにより各位置i毎に切り替えて印加する。これにより、各一次転写部には目標電流Iyt,Imt,Ict,Iktが流れ、トナー像の転写効率を良好に保つことができる。
【0067】
本実施形態の場合、目標電流を定電流で流して電圧を検知するので、検知時に流す電流は1種類で済み、中間転写ベルトは距離L−3Sだけ回転すればよい。このため検知時間をさらに短縮することができる。
【0068】
なお、比較する色位置は、上述の組み合わせに限らない。例えば、m位置やc位置をk位置との組み合わせにより求めても良い。また、何れかの色位置の全周に亙る電圧値が求まれば、各色位置との関係から、他の色位置ではこの求められた電圧値を基準として電圧を算出しても良い。例えば、y位置で全周に亙って電圧が求められ、m、c、kの各色位置とy位置とでの電圧の関係が算出されれば、この関係をそれぞれy位置の電圧に加えることにより、それぞれの色位置での電圧が算出できる。即ち、m、c、kの各色位置では、0〜Lの範囲の電圧を全て計算で求めても良い。その他の構成及び効果は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0069】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図12を用いて説明する。タンデム式カラー画像形成装置では、各色ごとに画像形成部を備えている。本実施形態では、単色画像形成モードである黒単色の作像を行うモノクロ作像時においては、黒用の画像形成部だけを動作させ、他色の画像形成部は停止したままにする。この場合、イエロー,マゼンタ,シアンの感光ドラム1a〜1cは停止したままで中間転写ベルト50は回転しているので、感光ドラムと中間転写ベルトが摺擦して感光ドラム表層が磨耗し感光ドラムの劣化を早めてしまう。そこで、中間転写ベルト50をイエロー,マゼンタ,シアンの感光ドラムから離間させる離間手段をもうけ、モノクロモードの実行時には、中間転写ベルトを離間させた状態で作像することで、感光ドラムの不必要な劣化を防止する。
【0070】
本実施形態では、イエロー,マゼンタ,シアンの感光ドラム1a〜1cを挟むように、中間転写ベルト50を内側から支持する支持ローラ16と、離間手段である離間ローラ15とがそれぞれ配置されている。離間ローラ15は、不図示のカム機構により中間転写ベルト50を支持ローラ16を支点として移動させる。これにより、中間転写ベルト50が感光ドラム1a〜1cに対して接離する方向に移動する。この際、一次転写ローラ4a、4b、4cも一緒に移動する。
【0071】
図12(a)はフルカラー作像時の動作状態で、中間転写ベルト50はすべての感光ドラム1a〜1dに接している。一方、図12(b)はモノクロ作像時の動作状態で、離間ローラ15を矢印方向に退避させ、テンションローラ11の張力により中間転写ベルト50を感光ドラム1a〜1cに非接触状態に保つものである。本実施形態では、感光ドラム1a〜1cが第2像担持体に、感光ドラム1dが第1像担持体にそれぞれ相当する。
【0072】
このような離間手段を有した装置で検知モードを実行する場合は、(b)の状態ではブラックの一次転写部でしか電流又は電圧の検知を行えず、中間転写ベルト50を少なくとも1回転させる必要があり検知時間が長くなる。そこで、検知モードでは、(a)のように、中間転写ベルトをすべての感光ドラムに接触させる。そして、中間転写ベルト50のブラックの一次転写部T1dにおける電圧と電流との関係を全周に亙って求める。この時、前述の第1の実施形態又は第2の実施形態のように、イエロー(或いはマゼンタ或いはシアン)とブラックの一次転写部を用いて電圧又は電流の検知が行えるため、検知時間を短縮することができる。
【0073】
<他の実施形態>
上述の各実施形態では、第1像担持体が各色の感光ドラムのうちの何れか1個で、第2像担持体が他の感光ドラムのうちの1個である場合について説明した。但し、本発明は、このような構成に限らず、第2像担持体が、他の感光ドラムのうちの1個ないし複数個であっても良い。例えば、イエローの感光ドラム1aを第1像担持体、マゼンタ、シアン、ブラックの感光ドラム1b〜1dを第2像担持体とする。そして、第1転写部となるイエローの一次転写部T1aで未検知の第2領域について、他の色との重複領域での検知結果を参照して算出する。この算出方法としては、例えば、各色との差分をそれぞれ求め、それらの平均値を何れかの色の検知結果に加えたり、予め実験などにより求めた条件により最適な色の差分と検知結果を選択して使用したりすることなどが考えられる。要は、少なくとも第2領域において、他の色の検知結果との関係を利用して計算により求めれば、検知モードにおける中間転写ベルト50の回転量を少なくして、検知時間の短縮化を図れる。
【符号の説明】
【0074】
1a、1b、1c、1d・・・感光ドラム(第1像担持体、第2像担持体、複数の像担持体)、4a、4b、4c、4d・・・一次転写ローラ(第1転写手段、第2転写手段)、8a、8b、8c、8d・・・一次転写高圧電源、9a、9b、9c、9d・・・電流検知回路(第1検知手段、第2検知手段)、15・・・離間ローラ(離間手段)、31・・・CPU(制御手段)、50・・・中間転写ベルト、82a、82b、82c、82d・・・定電流電源、83a、83b、83c、83d・・・電圧検知回路(第1検知手段、第2検知手段)、T1a、T1b、T1c、T1d・・・一次転写部(第1転写部、第2転写部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトの回転方向に沿って並べて配置され、トナー像を担持する第1像担持体及び第2像担持体と、
前記第1像担持体と前記中間転写ベルトを挟んで配置され、転写電圧を印加することにより、前記第1像担持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトに転写する第1転写手段と、
前記第2像担持体と前記中間転写ベルトを挟んで配置され、転写電圧を印加することにより、前記第2像担持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトに転写する第2転写手段と、
前記第1像担持体と前記第1転写手段との間の第1転写部の電圧と電流との関係を検知する第1検知手段と、
前記第2像担持体と前記第2転写手段との間の第2転写部の電圧と電流との関係を検知する第2検知手段と、を備えた画像形成装置において、
前記中間転写ベルトの前記第1転写部における電圧と電流との関係を全周に亙って求める検知モードを実行可能な制御手段と、
前記第1転写部と前記第2転写部との相関関係に基づいて、前記第2検知手段で検知された電圧と電流の関係を、前記第1転写部における電圧と電流の関係に変換する変換部と、を有し、
前記検知モードでは、前記第1検知手段で検知を開始する際に、前記中間転写ベルトの回転方向に関して前記第1転写部よりも下流側の予め設定した1周よりも短い前記中間転写ベルトの領域に対しては、前記第2検知手段による検知結果から前記変換部を用いて前記第1転写部における電圧と電流の関係を求め、
前記第1検知手段で検知を開始する際に、前記中間転写ベルトの回転方向に関して少なくとも前記第1転写部よりも上流側の予め設定した1周よりも短い前記中間転写ベルトの領域に対しては、前記第1検知手段で前記第1転写部における電圧と電流の関係を検知する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1検知手段と前記第2検知手段とのそれぞれで検知を行う重複領域を有し、
前記第1転写部と前記第2転写部との相関関係は、前記第1検知手段及び前記第2検知手段が前記重複領域でそれぞれ検知した電圧と電流との関係から算出される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検知モードでは、前記第1転写手段及び前記第2転写手段にそれぞれ定電圧を印加して、前記第1検知手段及び前記第2検知手段により前記第1転写部及び前記第2転写部にそれぞれ流れる電流を検知する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検知モードでは、前記第1転写手段及び前記第2転写手段にそれぞれ定電流を流して、前記第1検知手段及び前記第2検知手段により前記第1転写部及び前記第2転写部にそれぞれ印加される電圧を検知する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記検知モードで求めた、前記第1検知手段で検知した前記第1転写部の電圧と電流との関係、及び、前記変換部を用いて求めた前記第1転写部の電圧と電流との関係から、前記第1像担持体から前記中間転写ベルトにトナー像を転写する転写時に、前記第1転写手段に印加する転写電圧を決定する決定モードを実行可能である、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2像担持体と前記中間転写ベルトとを離間させる離間手段を有し、
前記第1像担持体からのみ前記中間転写ベルトにトナー像を転写して画像形成する単色画像形成モードの実行時には、前記離間手段により前記第2像担持体と前記中間転写ベルトとを離間させ、
前記検知モードでは、前記第2像担持体と前記中間転写ベルトとを接触させて、前記中間転写ベルトの前記第1転写部における電圧と電流との関係を全周に亙って求め、
前記決定モードでは、前記単色画像形成モードで前記第1転写手段に印加する転写電圧を決定する、
ことを特徴とする、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1転写手段及び前記第2転写手段は、それぞれ金属製の転写ローラで、前記中間転写ベルトと前記第1像担持体及び前記第2像担持体とのそれぞれの接触領域の中心位置よりも、前記中間転写ベルトの回転方向下流にずれた位置に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1ないし6のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記中間転写ベルトの回転方向に沿って配置された複数の像担持体を備え、
前記複数の像担持体のうちの1個が前記第1像担持体で、他の像担持体のうちの1個ないし複数個が前記第2像担持体である、
ことを特徴とする、請求項1ないし7のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−3160(P2013−3160A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130509(P2011−130509)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】